説明

発酵菌含有二酸化炭素外用組成物

【課題】少量を薄く短時間塗布するだけで強い美容及び医療効果を得ることができる二酸化炭素外用組成物並びにその製造方法の提供。
【解決手段】少なくとも水と増粘剤とからなる粘性物に二酸化炭素が非気泡状態で溶解している二酸化炭素外用組成物。該組成物は不透過性密閉型混合機を使用して、簡単に大量生産できる。他の二酸化炭素外用組成物の製造方法は、密閉可能容器中で発酵菌に二酸化炭素を産生させることにより、二酸化炭素外用組成物の製造と密閉容器への充填が一度ですむだけでなく、菌株により二酸化炭素の美容及び医療効果に相加的もしくは相乗的に作用する二次代謝産物が産生され、より付加価値の高い二酸化炭素外用組成物が得られる。他の二酸化炭素外用組成物は、少なくとも発酵菌と該菌の代謝産物、増粘剤、水、及び二酸化炭素を含んでいる。このような二酸化炭素外用組成物により、少量で強い美容及び医療効果が簡便に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容及び医療効果が簡便に得られる二酸化炭素外用組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡状二酸化炭素含有粘性組成物である二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が水虫、虫さされ、アトピー性皮膚炎、貨幣状湿疹、乾皮症、脂漏性湿疹、蕁麻疹、痒疹、主婦湿疹、尋常性ざ瘡、膿痂疹、毛包炎、癰、せつ、蜂窩織炎、膿皮症、乾癬、魚鱗癬、掌蹠角化症、苔癬、粃糠疹、創傷、熱傷、き裂、びらん、凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴う痒み、褥創、創傷、熱傷、口角炎、口内炎、皮膚潰瘍、き裂、びらん、凍瘡、壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片、皮弁などの生着不全;歯肉炎、歯槽膿漏、義歯性潰瘍、黒色化歯肉、口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病性末梢循環障害、下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感、しびれ感;慢性関節リウマチ、頸肩腕症候群、筋肉痛、関節痛、腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛、多発性神経炎、スモン病などの神経系疾患;乾癬、鶏眼、たこ、魚鱗癬、掌蹠角化症、苔癬、粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡、膿痂疹、毛包炎、癰、せつ、蜂窩織炎、膿皮症、化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす、肌荒れ、肌のくすみ、肌の張りや肌の艶の衰え、髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題及び部分肥満に有効であることが特開2000−319187号公報に開示されている。しかしながら、該組成物を用いて美容もしくは医療効果を得るには、長期間大量に使用しなければならず、効果も弱い。該組成物を用いて顔痩せ効果を得るには、例えば毎日26.2gを1ヶ月間使用しなければならない。
【0003】
炭酸ガス(以下、「二酸化炭素」と同義)の血行促進効果を得るための炭酸ガスのシップ剤が特開昭62−286922号公報に提案されている。該シップ剤は、炭酸塩と有機酸を含んだ布に、水を含んだ布を重ねて炭酸ガスを発生させ、布に含まれた水に溶かして溶存炭酸ガスとして利用するものであるが、炭酸塩と有機酸の反応は通常非常に急激であり、水への溶解量よりも大気中への発散量が多いため、二酸化炭素の経皮経粘膜吸収による美容もしくは医療効果は期待できない。
【0004】
二酸化炭素外用組成物の製造において、二酸化炭素の溶解方法としては、例えば疎水性多孔質中空糸を用いた気液接触装置(実公昭59−33461号公報)を用いる方法や、非多孔質ガス透過膜を隔てて炭酸ガスもしくは炭酸ガス含有混合気体と水もしくは水溶液を配置し、該膜を透過した炭酸ガスを水もしくは水溶液に溶解する方法(特開平7−779号公報)などが提案されているが、これらの方法は、中空糸や透過膜に増粘剤が目詰まりするおそれがあるため、増粘剤の水溶液もしくは懸濁液に二酸化炭素を溶解する方法としては適用できない。また、多孔質中空糸を用いて増粘剤の水溶液もしくは懸濁液に二酸化炭素を溶解する方法では、二酸化炭素が気泡の形で水層に供給され、気泡状二酸化炭素含有組成物が形成されるだけでなく、そのまま大気中に放出されてしまうガスが多く、効率が悪い。
【0005】
したがって本発明は、少量で強い美容及び医療効果が簡便に得られる二酸化炭素外用組成物と、その製造方法を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−319187号公報
【特許文献2】特開昭62−286922号公報
【特許文献3】実公昭59−33461号公報
【特許文献4】特開平7−779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の二酸化炭素外用組成物の一つ(以下、「二酸化炭素外用組成物1」という)は、少なくとも水と増粘剤からなる粘性物に二酸化炭素が非気泡状態で溶解していることを特徴とする。本発明者は鋭意検討した結果、粘性物に二酸化炭素が非気泡状態で溶解した組成物が、少量で強い美容及び医療効果を示すことを見いだし、本発明を完成した。なお、本発明でいう「粘性物に二酸化炭素が非気泡状態で溶解している」とは、該粘性物中に二酸化炭素の気泡を含まず、該粘性物中の二酸化炭素が少なくとも分子状二酸化炭素として溶存しており、一部が電離して、炭酸イオンと重炭酸イオンの少なくともいずれか一方として溶存する場合もあることを意味する。
【0008】
本発明の他の二酸化炭素外用組成物(以下、「二酸化炭素外用組成物2」という)は、少なくとも発酵菌と該菌の代謝産物、増粘剤、水、及び二酸化炭素を含むことを特徴とする。発酵菌は二酸化炭素を産生するだけでなく、菌株により、代謝産物として各種のアミノ酸や有機酸、ビタミン、酵素、多糖類などの生理活性物質等を産生するものがあるため、目的に応じて発酵菌の種類を選ぶことにより、該菌の代謝産物が、二酸化炭素の美容もしくは医療効果に相加的もしくは相乗的な効果を与える二酸化炭素外用組成物となる。
【0009】
前記2種の二酸化炭素外用組成物1及び2において、前記増粘剤が組成物全量に対して0.01〜15重量%含むことが好ましい。適当な粘性を与えることにより、本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2は、皮膚粘膜に適度に密着し、垂れないために、塗布部位で確実に美容もしくは医療効果が得られるだけでなく、該組成物が衣服などに落ちて汚すことがない。
【0010】
前記2種の二酸化炭素外用組成物1及び2において、前記増粘剤が、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。前記増粘剤は皮膚粘膜との親和性が高く、使用感も良好であり、本発明の二酸化炭素外用組成物1及び2を美容及び医療目的で好適に使用できる。
【0011】
本発明の二酸化炭素外用組成物1の製造方法は、二酸化炭素不透過性密閉型混合機に、原料として少なくとも水及び増粘剤を導入して密閉し、該混合機内部を減圧して原料を脱気し、二酸化炭素を充填して該混合機内部が二酸化炭素で満たされた状態で、該原料を混合して二酸化炭素が非気泡状態で溶解した粘性物を調製する工程を含むことを特徴とする。二酸化炭素は空気の数十倍水に溶解しやすいため、脱気後の原料は容易に二酸化炭素を吸収溶解し、本発明の二酸化炭素外用組成物1が容易に製造できる。原料の混合などにより二酸化炭素の気泡が生じても、一定時間放置すれば気泡は該原料に溶解するか、もしくは上部に集まり、最後には完全に気泡が抜けて、二酸化炭素が非気泡状態で溶解した二酸化炭素外用組成物が容易に製造できる。
【0012】
本発明の二酸化炭素外用組成物1の他の製造方法は、二酸化炭素不透過性密閉型混合機に、原料として少なくとも水及び増粘剤を導入して密閉し、該混合機に大気圧以上の圧力で二酸化炭素を充填し、該原料を混合して二酸化炭素を非気泡状態で溶解し、原料混合物内に気泡が発生しないように徐々に減圧して二酸化炭素が非気泡状態で溶解した粘性物を調製する工程を含むことを特徴としている。このようにしても二酸化炭素が非気泡状態で溶解した二酸化炭素外用組成物を得ることができる。
【0013】
本発明の二酸化炭素外用組成物2の製造方法は、二酸化炭素不透過性密閉可能容器に、原料として少なくとも発酵菌と該菌用培地、増粘剤、及び水を入れ、密閉する工程を含むことを特徴とする。発酵菌の呼吸により、二酸化炭素不透過性密閉可能容器内で二酸化炭素が産生されるが、密閉状態のために外部に二酸化炭素が一切漏れることがなく、無駄なく二酸化炭素外用組成物に利用されるとともに、該組成物の製造と密閉容器への小分け充填、保存が同時にできる。
【0014】
前記二酸化炭素外用組成物2およびその製造方法において、前記発酵菌が酵母または乳酸菌であることが好ましい。発酵菌の中でも酵母と乳酸菌は食品工業などにおいて菌体そのものを食することができるなどの実績があり、美容もしくは医療目的に好適に使用される。
【0015】
本発明の二酸化炭素外用組成物1は、少なくとも水と増粘剤からなる粘性物に二酸化炭素が非気泡状態で溶解している。該粘性物において、増粘剤は水に溶解していても、あるいは懸濁していても、あるいは水で膨潤していても良い。二酸化炭素が水に溶解した場合、その体積はほとんど無視できる程度であるため、一定体積の二酸化炭素含有組成物が含有できる二酸化炭素の量は、気泡状二酸化炭素含有組成物よりも、二酸化炭素が溶解している本発明の二酸化炭素外用組成物1の方が多い。したがって、同じ量、すなわち同じ体積でも、本発明の二酸化炭素外用組成物1は、気泡状二酸化炭素含有組成物よりも多くの二酸化炭素を含有でき、同じ量でより強力な美容もしくは医療効果が得られる。あるいは、同じ程度の美容もしくは医療効果を得るために必要な組成物の量が少なくて済む。
【0016】
本発明の二酸化炭素外用組成物2は、少なくとも発酵菌と該菌の代謝産物、増粘剤、水、及び二酸化炭素を含む。発酵菌は化粧品や医薬品等の外用剤に利用されてきたが、いずれも発酵菌の代謝産物等を分離精製し、外用剤に配合するものが主である。二酸化炭素外用組成物2は、発酵菌を製造時に生菌として含み、該菌に二酸化炭素を産生させるだけでなく、その代謝産物等を分離精製することなく、外用組成物に含有させたまま使用する。そのため、産生された二酸化炭素も代謝産物等も無駄なく使用できるだけでなく、代謝産物等により、二酸化炭素単独では得られない相加もしくは相乗効果も得られる。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus Pyogenes)をはじめとするストレプト属のヒアルロン酸産生菌株を用いると、ヒアルロン酸の持つ創傷治癒促進作用やウイルス感染防止作用などが、二酸化炭素の創傷治癒促進作用に相加的、もしくは相乗的に作用し、傷の治りを早め、ウイルス感染を防止する、優れた医薬用外用剤が提供される。化粧料としては、ヒアルロン酸の保湿作用が二酸化炭素の美容効果に付加された、保湿効果の高い化粧料が得られる。あるいは、例えばストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus Thermophilus)をはじめとするストレプト属の酪農乳酸菌株を用いると、乳酸、ブドウ糖、リン酸などの保湿成分が産生され、二酸化炭素の美容効果に相加的、もしくは相乗的に作用する、保湿効果に優れた化粧料が得られる。ここに例示した以外にも、発酵菌の菌株を目的に応じて適宜選択することにより、二酸化炭素の美容もしくは医療効果に相加、もしくは相乗効果を有する二酸化炭素外用組成物が得られる。本発明の二酸化炭素外用組成物2における二酸化炭素は、気泡状態及び非気泡状態のいずれの状態で含まれていてもよい。
【0017】
本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2において、増粘剤の配合量は組成物全量に対して0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜8重量%がより好ましく、さらに0.5〜4重量%が好ましい。0.01重量%以下では組成物の粘度が低すぎて塗布したときに垂れてしまい、塗布部位での美容もしくは医療効果が期待できないだけでなく、垂れ落ちて衣服などを汚してしまう。15重量%以上では粘度が高すぎて組成物の延びが悪くなるとともに、塗布が困難になり使用性が劣る。
本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2に用いる増粘剤としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子、無機物からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0018】
天然高分子としては、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクタン、寒天、クインスシード、グアガム、トラガント、ペクチン、マンナン、ローカストビーンガム、小麦澱粉、米澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉などの植物系高分子、カードラン、キサンタンガム、サクシノグルカン、デキストラン、ヒアルロン酸、プルランなどの微生物系高分子、アルブミン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロインなどの蛋白系高分子があげられ、これらの1種以上が使用される。これらのなかでも使用性等の点でアラビアゴム、カラギーナン、キサンタンガム、トラガント、ヒアルロン酸、プルラン、ペクチン、マンナン、ローカストビーンガムが好ましく、皮膚粘膜との親和性等の点でカラギーナン、ペクチンが特に好ましく用いられる。
【0019】
半合成高分子としては、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチ、クロスカルメロース、結晶セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子、アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉、カルボキシメチル澱粉、デキストリン、メチル澱粉などの澱粉系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどのその他の多糖類系高分子があげられ、これらの1種以上が使用される。これらのなかでも使用性等の点でアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースが好ましく、皮膚粘膜との親和性などの点からアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸ナトリウムが特に好ましく用いられる。
【0020】
合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メタアクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸−メタアクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマーなどがあげられ、これらの1種以上が使用される。これらのなかでも皮膚粘膜との親和性や使用性等の点からカルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが特に好ましく用いられる。
【0021】
無機物としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、コロイダルアルミナ、ベントナイト、ラポナイトなどがあげられ、これらの1種以上が用いられる。
本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2の二酸化炭素溶解濃度は、60ppm以上が好ましく、300ppm以上がより好ましく、1,000ppm以上が最も好ましい。60ppm以下では美容もしくは医療効果が得られない。二酸化炭素溶解濃度が高いと効果が高いが、飽和濃度まで上げる必要はない。
【0022】
溶存二酸化炭素はその溶解液のpHが高いと電離しやすくなり、美容効果もしくは医療効果が得られる分子状二酸化炭素の比率が少なくなるため、本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2の水素イオン濃度はpH2〜9が好ましく、pH4〜8がより好ましく、pH4〜5が更に好ましい。pH2以下では皮膚粘膜等の蛋白変性を起こす場合がある。pH9以上では、溶解した二酸化炭素のほとんどが電離してしまい、美容及び医療効果が得られる分子状二酸化炭素の存在比率が少なくなる。本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2のpHは、使用する増粘剤等の原料の種類によりpH2〜9の間に収まる場合があるが、この範囲を逸脱する場合、もしくは任意のpHに調整したい場合は、任意の酸もしくは塩基を用いて組成物のpHを調整できる。
【0023】
酸としては、通常の外用剤に使用される無機酸及び有機酸からなる群より選ばれる1種以上が使え、特に制限はない。無機酸としては、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、スルファミン酸などがあげられ、これらの1種以上が使用される。
【0024】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の直鎖脂肪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸などがあげられ、これらの1種以上が使用される。
【0025】
塩基としては、通常の外用剤に使用される塩基性化合物が使用され、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、ピリジン、ピペリジン、モルフォリン等のアミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸などがあげられ、これらの1種以上が使用される。
【0026】
本発明の二酸化炭素外用組成物1は、前記必須成分の他に、通常外用剤や化粧品に用いられる原料、例えば香料、色素、界面活性剤、油分、保湿剤、アルコール類、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、着色防止剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、アルブチン、コウジ酸、栄養剤、抗炎症剤、血管拡張剤、ホルモン剤、収斂剤、抗ヒスタミン剤、殺菌剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤、抗脂漏剤、鎮痒剤などの薬剤などが配合でき、化粧料もしくは医薬外用剤として一層好適に使用される。
【0027】
本発明の二酸化炭素外用組成物2は、前記必須成分の他に、通常外用剤や化粧品に用いられる原料、例えば香料、色素、界面活性剤、油分、保湿剤、アルコール類、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、着色防止剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、アルブチン、コウジ酸、栄養剤、抗炎症剤、血管拡張剤、ホルモン剤、収斂剤、抗ヒスタミン剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤、抗脂漏剤、鎮痒剤などの薬剤などが配合でき、化粧料もしくは医薬外用剤として一層好適に使用される。ただし、殺菌、滅菌、静菌作用等を有する、発酵菌の活動を妨げる原料は好ましくない。
【0028】
本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2は、皮膚粘膜に通常の外用剤のように薄く塗布するだけで美容及び医療効果が得られるが、皮膚粘膜に擦り込む必要はなく、皮膚粘膜を覆うように塗布するだけでよい。塗布時間は1分以上が好ましく、5分以上が更に好ましい。1分以下では充分な美容もしくは医療効果が得られない。長時間の塗布が好ましいが、該組成物中の二酸化炭素が経皮吸収や大気中への散逸で低下し、60ppm以下になると、それ以上の効果が得られない。本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2の塗布面を、シートやフィルムなどで被覆閉鎖する閉鎖療法を用いることより、美容及び医療効果が増強される。医療目的で閉鎖療法を行う場合は、24時間以上の連続塗布が可能であり、治療に便利である。閉鎖療法に使用する被覆材としては、二酸化炭素の透過性が低いシートやフィルムなどであれば特に制限はなく、例えば合成ポリマーシートやフィルムなどが使用できる。特に創傷治療などの医療目的には、合成ポリマーからなる粘着性創傷被覆材などが好適に使用される。
【0029】
本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2は、塗布後はそのままでも良いが、べたつきが持続することがあるので除去することが好ましい。除去方法としては、布やティッシュペーパーなどで拭き取っても良いし、水などで洗い流してもよく、特に制限されない。
【0030】
本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2は、二酸化炭素不透過性密閉容器に保存することが好ましい。該容器の材質としては、本発明の2種の二酸化炭素外用組成物1及び2の水素イオン濃度がpH2〜9であることが好ましいため、このpH範囲で物理的、化学的に安定かつ二酸化炭素不透過性であれば特に制限されず、ポリマー、金属、ガラスなどから適宜選んで使用できるが、加工性や使用性からポリマーが好ましい。また、該組成物に溶解した二酸化炭素が高温環境下等において、二酸化炭素不透過性密閉容器中で万一気泡化した場合に備えて、該容器の材質は伸縮性に富んでいるか、物理的強度が高いかの、少なくともいずれか一方であることが好ましい。ポリマーとしては、例えばエチレンビニルアルコール、ナイロンとエチレンビニルアルコールの複合物、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、メタキシリレンジアミンとアジピン酸のポリアミド、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリプロピレン等が挙げられ、これらの1種以上が使用される。
【0031】
二酸化炭素不透過性密閉容器の形状としては、チューブ、袋、パウチ、シリンジ(注射器)、アンプル、密栓付きカップやビンなど、密閉可能で内容物を容易に取り出せるものであればよく、ここに例示された以外でも、通常用いられる形状であれば特に制限されない。これらの容器は1回使い切りでもよいし、必要量を随時取り出し、ふたや栓、ジッパーなどにより、残りの二酸化炭素外用組成物を完全密閉保存でき、開封後も使える構造でもよく、用途に合わせて適宜選択できる。
【0032】
本発明の二酸化炭素外用組成物1において、粘性液への二酸化炭素の溶解方法としては、二酸化炭素が気泡にならずに溶解される方法であればよく、また、二酸化炭素の溶解度は飽和濃度もしくはそれ以下でも、また過飽和でもよい。二酸化炭素が過飽和に溶解した本発明の二酸化炭素外用組成物1は、使用される増粘剤の種類や濃度等と、溶解した二酸化炭素の濃度によっては、該組成物の粘性と表面張力により二酸化炭素の発散が抑制される。また、発散が抑えられなかった場合でも、溶解した二酸化炭素が全部発散することはなく、該組成物の粘性と表面張力により、溶存二酸化炭素の分圧と外気圧の差があまり大きくない溶解度で発散が止まるため、該組成物には美容もしくは医療効果が得られるだけの二酸化炭素が残存し、何ら問題はない。
【0033】
本発明の二酸化炭素外用組成物1の好ましい製造方法は、二酸化炭素不透過性密閉型混合機に、原料として少なくとも水及び増粘剤を導入し、該混合機内部を減圧して原料を脱気し、二酸化炭素を充填して密閉状態を持続する工程において、少なくとも二酸化炭素を充填して密閉状態を持続する工程の間、原料を混合して増粘剤を溶解もしくは膨潤させる工程を含むことを特徴とする(以下、「製造方法1−1」という)。原料の脱気方法としては、該混合機内を外気圧以下に減圧できれば特に制限されず、真空ポンプなどが使える。密閉可能かつ内部を減圧できる混合機で、増粘剤の水溶液もしくは懸濁液、もしくは膨潤液を製造できるものとしては、例えば真空乳化機があげられ、市販の機械をそのまま使うこともできるし、本発明の製造方法に適した製造装置を製造してもよい。製造手順としては、例えば、二酸化炭素不透過性密閉型混合機の内部に必須原料として水と増粘剤、及び必要であれば他の原料を入れ、そのままもしくは混合しながら内部を減圧して原料を脱気するが、このとき、原料を機械的に撹拌して脱気促進と原料混合を同時に行ってもよく、更に超音波や振動を与えたり、あるいは加熱することなどにより脱気を促進してもよい。脱気の条件は使用する原料の種類と量などにより様々であるが、脱気工程において気体だけでなく水も減少するため、製造方法1−1においては、それらの条件をすべて勘案して、水の仕込量は脱気工程における減少分を考慮した量にすることが好ましい。脱気の程度は高いほど好ましいが、完全に脱気する必要はない。また、脱気しながら二酸化炭素を充填することもできるが、脱気により二酸化炭素が奪われるため、製造効率に問題がある。
【0034】
脱気が終了したら、次の工程として二酸化炭素を該混合機内に充填するが、原料混合物全体に迅速かつまんべんなく二酸化炭素が溶解するように、原料を機械的撹拌などにより混合しながら充填することが好ましい。二酸化炭素の溶解量は、一定液温では飽和濃度に達するまで二酸化炭素の充填量にほぼ依存するため、充填量により原料混合物への二酸化炭素溶解量を調節することができる。また、二酸化炭素は液温が低いほど溶解量が多くなるため、原料の混合に差し支えない範囲で液温を下げることが好ましい。
【0035】
原料混合物に二酸化炭素を溶解させ、本発明の二酸化炭素外用組成物1を調製したら、二酸化炭素不透過性密閉容器に充填し、密閉することが好ましい。充填は、該組成物の表面張力が、溶解した二酸化炭素の発散を充分防げる強さであれば、充填装置に移して通常の充填が可能である。そうでない場合は、該組成物に溶解した二酸化炭素の発散を防ぐために、調製に用いた二酸化炭素不透過性密閉型混合機から取り出して外気中で充填を行うより、該混合機に直結した、外気の影響を受けない閉鎖型充填機を用い、必要であれば該充填機内部の空気を充填開始前に二酸化炭素で置換しておき、二酸化炭素不透過性密閉容器に充填し、直ちに密閉することが好ましい。充填量は、二酸化炭素不透過性密閉容器の容積一杯でも、あるいはそれ以下でもよいが、後者の場合は該容器内に隙間が生じるため、その部分の気体を二酸化炭素で置換することが好ましい。外気中で充填する場合の二酸化炭素外用組成物1の二酸化炭素消失量が、二酸化炭素外用組成物1の美容もしくは医療効果に影響を与えない範囲であれば、外気中で充填を行ってもよい。
【0036】
本発明の二酸化炭素外用組成物1のもう一つの好ましい製造方法(以下、「製造方法1−2」という)は、二酸化炭素不透過性密閉型混合機に、原料として少なくとも水及び増粘剤を導入して混合し、該混合機中に二酸化炭素を大気圧(外気圧)以上の圧力で充填し、必要な量の二酸化炭素を非気泡状態で溶解させる。次に、二酸化炭素外用組成物1の内部に気泡が発生しないように徐々に減圧して、二酸化炭素が非気泡状態で溶解した粘性物(二酸化炭素外用組成物1)を得、これを速やかに密閉容器等に充填する。充填時に二酸化炭素雰囲気下で充填することが、該組成物から二酸化炭素の散逸を防ぐために好ましい。
【0037】
本発明の二酸化炭素外用組成物2の好ましい製造方法は、二酸化炭素不透過性密閉容器に、原料として少なくとも発酵菌と該菌用培地、増粘剤、及び水を入れ、密封する工程を含むことを特徴とする(以下、「製造方法2」という)。製造方法2によれば、高価で大がかりな製造装置を必要とせず、製造が容易で製造原料も比較的安価である。製造手順としては、上記原料、及び必要があればその他の原料を二酸化炭素不透過性密閉容器にいれ、密閉して、必要な量の二酸化炭素が産生されるまで、その菌の発酵が可能な温度範囲が保たれればよい。ただし、その他の原料としては、殺菌、滅菌、静菌作用等を有する、菌の活動を妨げる原料は好ましくない。また、発酵菌以外の微生物の影響を防ぐため、該菌以外の原料は殺菌もしくは滅菌しておくことが好ましい。
【0038】
製造方法2は、菌体の増殖を主目的とせず、二酸化炭素が必要量産生されればよいため、使用する菌株に応じて、二酸化炭素産生量が多くなる温度と時間を適宜選べばよい。発酵工業に用いられる菌株は通常中温菌であり、常温での発酵が可能であるため、これらの菌を用いれば、二酸化炭素産生と溶解のための加熱や冷却などの工程が不要である。製造時間を短縮したい場合は、使用する発酵菌の菌株に応じて、二酸化炭素産生が活発になる温度に加熱しても良い。
【0039】
製造方法2の製造条件としては、使用する発酵菌の二酸化炭素産生量が多い原料、発酵温度や発酵時間、水素イオン濃度などを、使用する菌株ごとに選ぶことが好ましい。該菌用培地の栄養源には、二酸化炭素源として炭素化合物が必須であり、その他の栄養源として、窒素源や無機物質等も必要な場合があり、使用する菌株に応じて適宜栄養源を選べばよい。炭素化合物の中でも炭水化物が発酵菌の利用効率等の面から好ましく、例えばグルコース、フルクトースなどの単糖類、シュークロース、マルトース、ラクトースなどの二糖類、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸などの有機酸などがあげられ、これらの1種以上が使用される。これらの中でも単糖類が最も利用されやすいため特に好ましい。製造方法2では菌体の増殖を主目的にしないため、窒素源や無機物質等の栄養源は特に添加しなくても、いずれかの原料に不純物等として含まれる場合が多いため、通常は不要である。
【0040】
一般に発酵菌は利用しやすい栄養源を通常優先的に消費し、発酵を行うので、発酵菌用培地の栄養源が消費され尽くすと、発酵菌は、その他の栄養源を発酵に利用することがある。増粘剤が有機化合物である場合は、発酵菌がこれを炭素源として利用することによる増粘剤の濃度低下、すなわち二酸化炭素外用組成物の粘度低下を防ぐため、製造方法2において、必要な量の二酸化炭素が産生されたら、該菌の活動を抑えることが好ましい。活動を抑える方法としては、高温加熱や放射線・電子線などの照射、原料混合物の凍結、融解による菌体の破壊などがあげられ、二酸化炭素外用組成物2の調製に支障を来さない範囲で、適宜方法を選ぶことができる。
【0041】
発酵菌としては、かび類、酵母類、細菌類、放線菌類からなる群の1種以上を使用することができる。使用する菌株は目的に応じて発酵工業等で使用される発酵菌のなかから菌株を選ぶか、もしくは二酸化炭素の発生量が多い変異株を、自然から採取するか、もしくは既存の菌株を元に、熱処理、酸処理、放射線照射などの物理的処理、ナイトロジェンマスタードなどのアルキル化剤、5−ブロモデオキシウリジンなどの塩基類似物、アクリジンオレンジなどの色素類、亜硝酸やヒドラジンなどの、その他の化合物を用いる化学的処理、さらには細胞融合や遺伝子組換えなどのバイオテクノロジーにより、目的に適った新株を作製してもよい。また、目的に応じて各種のアミノ酸や有機酸、ビタミン、酵素、多糖類などの生理活性物質等を産生する菌株を選ぶか、作製することにより、二酸化炭素の美容及び医療効果に、更に相加もしくは相乗効果が得られる二酸化炭素外用組成物2の製造が可能である。例えば、コリネバクテリウム属やブレビバクテリウム属、バチルス属などのアミノ酸産生株を用いれば、アミノ酸の保湿効果が、ラクトバチルス属の乳酸産生株を用いれば、乳酸の保湿効果が付加され、酢酸菌、シュードモナス属、バチルス属などの好気性菌や、乳酸菌、大腸菌などの通性嫌気性菌を用いれば、カタラーゼやスーパーオキシドディスムターゼなどの活性酸素除去酵素が産生されて、皮膚の老化などを抑制するため、美容に好適に用いられる二酸化炭素外用組成物が製造できる。
【0042】
製造方法2において、発酵菌の中でも、乳酸菌と酵母は食品等での使用経験が長く、直接菌体が飲食されてきた実績があること、一般に活動が酸性領域で活発であること、などから特に好ましい。一般に発酵菌は酸素が豊富な環境では炭素源から主に二酸化炭素と水を産生するため、製造方法2においては、酸素を豊富に含む原料を用いる方法、及び、原料を二酸化炭素不透過性密閉型混合機に入れるときに、酸素もしくは酸素を豊富に含んだ空気を同時に入れて密閉する方法の、少なくとも一方からなる工程を含むことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
真空乳化機に、その内容積の50容量%の精製水を水として入れ、該精製水の量を95.4重量部とし、これに増粘剤として3重量部のアルギン酸ナトリウム、1.5重量部のカルボキシメチルセルロースナトリウム、防腐剤として0.1重量部のメチルパラベンを徐々に加えながら回転式プロペラで撹拌し、10分間で該乳化機内圧を外気圧(760mmHg)から360mmHgに減圧した。撹拌を続けながら、次に該乳化機内に圧力1kg/cmに調整した二酸化炭素を導入し、内圧を外気圧に戻した後、該乳化機の気体排出用バルブを開けて気体を外部に出せるようにし、更に二酸化炭素を5分間導入し続け、該乳化機内の気体を二酸化炭素で置換した。該気体排出用バルブを閉じ、二酸化炭素の導入も中断して該真空乳化機を密閉状態にし、更に撹拌を続けながら、内圧が外気圧より低くなると外気圧に戻るように二酸化炭素を導入した。内圧が外気圧と同等になり、一定値を示した状態で3時間撹拌し、その後密閉状態のまま一日放置し、製造方法1−1による二酸化炭素外用組成物1を調製した。
【実施例2】
【0045】
ポリプロピレン製チューブ中で水として精製水95重量部、増粘剤としてアルギン酸プロピレングリコールエステル3重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1重量部、発酵菌用培地としてグルコース0.5重量部を混合して粘性組成物を調製し、更に発酵菌としてイースト菌0.5重量部を加えて撹拌し、直ちに密栓で密閉した。これを室温で1週間静置した後、オートクレーブで120℃20分間加熱殺菌し、製造方法2による二酸化炭素外用組成物2を調製した。
【実施例3】
【0046】
ポリプロピレン製チューブ中で水として精製水94重量部、増粘剤としてアルギン酸ナトリウム4重量部、発酵菌としてイースト菌1重量部、該菌用培地としてグルコース1重量部を混合して直ちに密栓で密閉した。これを室温で2日間静置した後、80℃の湯に20分間浸け、製造方法2による二酸化炭素外用組成物2を調製した。
【実施例4】
【0047】
ポリプロピレン製チューブ中で水として精製水94重量部、増粘剤としてアルギン酸ナトリウム4重量部、発酵菌用培地としてグルコース1重量部を混合して粘性組成物を調製し、更に発酵菌としてイースト菌1重量部を混合して直ちに密栓で密閉した。これを40℃で4時間静置した後、80℃の湯に20分間浸け、製造方法2による二酸化炭素外用組成物2を調製した。
【実施例5】
【0048】
ポリプロピレン製チューブ中で水として精製水98.2重量部、増粘剤としてカラギーナン1重量部、発酵菌としてイースト菌0.4重量部、該菌用培地としてグルコース0.4重量部を混合して直ちに密栓で密閉した。これを室温で2日間静置した後、80℃の湯に20分間浸け、製造方法2による二酸化炭素外用組成物2を調製した。
【実施例6】
【0049】
ポリプロピレン製チューブ中で水として精製水93重量部、増粘剤としてカルボキシビニルポリマー5重量部、発酵菌用培地としてグルコース1重量部を混合して粘性組成物を調製し、更に発酵菌としてイースト菌1重量部を混合し、直ちに密栓で密閉した。これを40℃で3時間静置した後、80℃の湯に20分間浸け、製造方法2による二酸化炭素外用組成物2を調製した。
【実施例7】
【0050】
ポリプロピレン製チューブ中で水として精製水94重量部、増粘剤としてペクチン4重量部、発酵菌としてイースト菌1重量部、該菌用培地としてグルコース1重量部を混合して直ちに密栓で密閉した。これを40℃で1時間静置した後、80℃の湯に20分間浸け、製造方法2による二酸化炭素外用組成物2を調製した。
【実施例8】
【0051】
真空乳化機に、その内容積の50容量%の精製水を水として入れ、該精製水の量を95.4重量部とし、これに増粘剤として3重量部のアルギン酸ナトリウム、1.5重量部のカルボキシメチルセルロースナトリウム、防腐剤として0.1重量部のメチルパラベンを徐々に加えながら回転式プロペラで撹拌した後、該乳化機の内圧を大気圧(760mmHg)から1100mmHgにし、二酸化炭素を導入して、二酸化炭素を非気泡状態で溶解した。その後、原料混合物の内部に気泡が発生しないように徐々に減圧して大気圧まで戻した。その後、速やかに密閉容器に充填して、製造方法1−2による二酸化炭素外用組成物1を調製した。
【0052】
比較例
二酸化炭素を気泡状で含む外用剤(以下、「比較例の外用剤」)を、炭酸塩と酸の反応により二酸化炭素を発生させる組成物の一つである特開2000−319187号公報の実施例109に従い以下のように製造した。
【0053】
酸含有物の製造
クエン酸25重量%、エチルセルロース25重量%、クロスカルメロースナトリウム50重量%を用い、湿式押し出し造粒法により長さ約4mm、直径約1mmの多孔性柱状顆粒を製造した。
【0054】
炭酸塩含有組成物の製造
精製水89.6重量%に炭酸水素ナトリウム2.4重量%を溶かし、60℃まで徐々に加温しながらアルギン酸ナトリウム4.0重量%、エチルセルロース2.0重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.0重量%を徐々に加えて攪拌しながら溶かし、溶解後一夜放置し、室温まで冷まして粘性組成物を製造した。
上記酸含有物1重量部と上記粘性組成物20重量部を混合して気泡状二酸化炭素含有二酸化炭素外用剤を調製した。
【0055】
評価試験
このようにして製造した二酸化炭素外用組成物を次のようにして評価した。
【0056】
評価1:手の美白、美肌効果
21〜41歳の女性7人に対し、左手甲に5gの実施例1〜8の二酸化炭素外用組成物のいずれか一つを、右手甲に5gの比較例の外用剤を、それぞれ手の甲全体に薄く塗布した。実施例1〜8の二酸化炭素外用組成物を塗布した全員の左手甲が直ちに赤くなり、血流増加が認められたが、比較例の外用剤を塗布した右手甲には血流増加が認められなかった。5分後に各組成物を完全に取り去ったところ、実施例1〜8の二酸化炭素外用組成物を塗布した全員の左手甲が塗布前、及び右手甲と比較して白く、透明感があり、しっとりとしたなめらかな肌になった。特に実施例4の二酸化炭素外用組成物の効果が強かった。比較例の外用剤を塗布した右手甲には、塗布前と比較して前記のような美容効果は、誰一人認められなかった。
【0057】
評価2:顔の部分痩せ、美白、美肌効果
21〜41歳の女性7人に対し、右半顔に実施例4の二酸化炭素外用組成物10gを、比較例の気泡状二酸化炭素含有二酸化炭素外用剤10gを左半顔に薄く塗布した。実施例4の二酸化炭素外用組成物を塗布した全員の右半顔は直ちに赤くなり、血流増加が認められたが、比較例の外用剤を塗布した女性の左半顔には血流増加が認められなかった。7分後に各組成物を完全に取り去ったところ、実施例4の二酸化炭素外用組成物を塗布した全員の右半顔は、左半顔と比較して白く、透明感があり、しっとりとしたなめらかな肌になるとともに、口角があがり、頬が小さくなった。比較例の外用剤を塗布した女性の左半顔は、塗布前と比較して前記のような効果は誰一人認められなかった。
【0058】
評価3:擦過傷に対する効果
12才男子の右大腿部擦過傷(約4cm×7cm)に実施例1の二酸化炭素外用組成物5gを塗布し、その上から創傷被覆材(商品名テガダーム、スリーエムヘルスケア社製)を貼付した。この治療を1日1回行ったところ、2日目に出血は完全に止まり、5日目に傷跡を残すことなく治癒した。
【0059】
評価4:アトピー性皮膚炎に対する効果
29歳男性の両手甲のかさぶたに出血を伴うアトピー性皮膚炎に対し、実施例3の二酸化炭素外用組成物10gを1日1回10分間塗布したところ、12日目にはかさぶたを伴うものの、全体に青黒い皮膚の色がほぼ正常化した。その後1週間に2回の塗布を続け、2ヶ月目にはかさぶたはなくなり、皮膚の色は完全に正常化した。
【0060】
評価5:にきびの治療
17歳男性の額にできた赤みを伴う多数のにきびに対し、実施例5の二酸化炭素外用組成物5gを1日1回10分間塗布したところ、1日目の塗布後に赤みが薄くなり、皮膚全体のざらつきも改善され、6日でにきびが完全に消失し、皮膚が白くなめらかになった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上より、本発明の二酸化炭素外用組成物は、少量を薄く短時間塗布するだけで強い美容及び医療効果を得ることができる。本発明の二酸化炭素外用組成物の製造方法は、二酸化炭素不透過性密閉型混合機を使用して、粘性物に二酸化炭素が非気泡状態で溶解している本発明の二酸化炭素外用組成物を簡単に大量生産できる。本発明の他の二酸化炭素外用組成物の製造方法は、密閉可能容器中で発酵菌に二酸化炭素を産生させることにより、二酸化炭素外用組成物の製造と密閉容器への充填が一度ですむだけでなく、菌株により二酸化炭素の美容及び医療効果に相加的もしくは相乗的に作用する二次代謝産物が産生され、より付加価値の高い二酸化炭素外用組成物が得られる。したがって、このような二酸化炭素外用組成物は、化粧料や医薬用外用剤などとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発酵菌と該菌の代謝産物、増粘剤、水、及び非気泡状態の二酸化炭素を含むことを特徴とする二酸化炭素外用組成物。
【請求項2】
前記発酵菌が、カビ類、酵母類、細菌類、放線菌類からなる群より選択される1種類以上である請求項1記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項3】
前記発酵菌が、酵母または乳酸菌からなる群より選択される1種類以上である請求項1記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項4】
カビ類、酵母類、細菌類、放線菌類からなる群より選択される1種類以上の発酵菌及びこれらの代謝産物であるアミノ酸、有機酸、ビタミン、酵素または多糖類と、
アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上の増粘剤と、
水と、非気泡状態の二酸化炭素と、を含む、pH4〜5の二酸化炭素外用組成物。
【請求項5】
前記増粘剤を、組成物全量に対して0.01〜15重量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項6】
除毛後の再発毛抑制、そばかす、肌荒れ、肌のくすみ、肌の張りや肌の艶の衰え、髪の艶の衰え、部分肥満の改善、及び美白から選択される1種又は2種以上の用途に使用される、請求項4記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項7】
美白用の請求項4記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項8】
水虫、虫さされ、アトピー性皮膚炎、貨幣状湿疹、乾皮症、脂漏性湿疹、蕁麻疹、痒疹、主婦湿疹、尋常性ざ瘡、膿痂疹、毛包炎、癰、せつ、蜂窩織炎、膿皮症、乾癬、魚鱗癬、掌蹠角化症、苔癬、粃糠疹、創傷、熱傷、き裂、びらん、凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴う痒み;(←区切りを入れました)褥創、創傷、熱傷、口角炎、口内炎、皮膚潰瘍、き裂、びらん、凍瘡、壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片、皮弁などの生着不全;歯肉炎、歯槽膿漏、義歯性潰瘍、黒色化歯肉、口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病性末梢循環障害、下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感、しびれ感;慢性関節リウマチ、頸肩腕症候群、筋肉痛、関節痛、腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛、多発性神経炎、スモン病などの神経系疾患;乾癬、鶏眼、たこ、魚鱗癬、掌蹠角化症、苔癬、粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡、膿痂疹、毛包炎、癰、せつ、蜂窩織炎、膿皮症および化膿性湿疹から選択される1種又は2種以上の改善の用途に使用される、請求項4記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項9】
創傷、アトピー性皮膚炎または尋常性ざ瘡から選択される1種又は2種以上の改善の用途に使用される、請求項4記載の二酸化炭素外用組成物。
【請求項10】
二酸化炭素不透過性密閉可能容器に、
原料としてカビ類、酵母類、細菌類、放線菌類からなる群より選択される1種類以上の発酵菌と、
グルコース、フルクトースなどの単糖類;シュークロース、マルトース、ラクトースなどの二糖類、およびクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸などの有機酸からなる群より選ばれる1種以上を含む菌用培地と、
増粘剤と、水と、を入れ、密閉する工程を含む、非気泡状態の二酸化炭素を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の二酸化炭素外用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−13453(P2010−13453A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191171(P2009−191171)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2003−557586(P2003−557586)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(301039505)ネオケミア株式会社 (15)
【Fターム(参考)】