説明

発酵食品製造用ミックス粉、それを使用して製造した発酵食品及び発酵食品の製造方法

【課題】風味がよく且つ食感のよい発酵食品を提供する。風味がよく且つ食感のよい発酵食品を製造する方法を提供する。
【解決手段】パン粉と精製乳蛋白質を含有することを特徴とする発酵食品製造用ミックス粉;穀粉100質量部に対して、パン粉が2〜50質量部及び精製乳蛋白質が0.05〜5質量部配合されている発酵食品製造用ミックス粉;該パン粉が粒径10mm未満である上記の発酵食品製造用ミックス粉;該パン粉が粒径0.5mm未満である上記の発酵食品製造用ミックス粉;上記の発酵食品製造用ミックス粉を使用して製造された発酵食品;穀粉100質量部に対して、パン粉を2〜50質量部及び精製乳蛋白質を0.05〜5質量部配合することを特徴とする発酵食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンなどの発酵食品を製造するのに適したミックス粉、それを使用して製造された発酵食品、及び発酵食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホットケーキにパン粉を添加すること(特許文献1参照)やお好み焼きミックス粉にパン粉を添加すること(特許文献2参照)などが知られている。また、ベーカリー製品の差別化、食感の改善を目的として、各種原材料が利用されているが、従来の範囲内では効果には限度がある。また、食品添加物も使用されるが、好ましくない影響を伴う。例えば老化防止の目的で広く使用される乳化剤は特有の風味があり、また口中で食品がダンゴ状になりやすい。
一方発酵食品にパン粉を配合することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。粒径の細かいパン粉を使用することで発酵食品をシットリとさせることができるが、一方でダンゴ状になる傾向がある。
従って、いっそう風味がよく且つ食感のよいベーカリー製品等の発酵食品が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−158446号公報
【特許文献2】特開平2−69166号公報
【特許文献3】特開平11−289969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、風味がよく且つ食感のよい発酵食品を提供することにある。本発明の目的はまた、風味がよく且つ食感のよい発酵食品を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、発酵食品の製造に当って、穀粉類にパン粉と精製乳蛋白質を配合することによって、内相はシットリとして歯切れや口溶けが良く、クラストはパリっとして香ばしい自然の風味をもった製品ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って本発明は、パン粉と精製乳蛋白質を含有することを特徴とする発酵食品製造用ミックス粉である。本発明はまた、パン粉及び精製乳蛋白質を配合することを特徴とする発酵食品の製造方法である。
本発明の発酵食品製造用ミックス粉あるいは発酵食品の製造方法の実施態様として、穀粉100質量部に対して、パン粉を2〜50質量部及び精製乳蛋白質を0.05〜5質量部配合することが挙げられる。また、本発明の好ましい実施態様として、粒径10mm以下のパン粉を使用することが挙げられる。本発明のさらに好ましい実施態様として、粒径0.5mm以下のパン粉を使用することが挙げられる。
本発明はまた、上記の発酵食品製造用ミックス粉を使用して製造された発酵食品に向けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発酵食品製造用ミックス粉あるいは、発酵食品の製造方法によれば、内相はシットリして歯切れや口溶けが良く、クラストはパリっとして香ばしい自然の風味をもった発酵食品を提供することができる。また、本発明の発酵食品製造用ミックス粉はミックス粉として流通させることができ、このミックス粉を使用して発酵食品を製造することで同様の効果が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明が対象とする発酵食品とは、各種パン類(食パン、菓子パン、ハードロール、デニッシュ等)、イーストドーナツ、ピザ等を意味する。
本発明では上記の発酵食品に適した穀粉を使用する。本発明で使用する穀粉は、目的とする発酵食品に応じて変更しうるが、一般的に小麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、及びそれらの混合物を意味する。
【0008】
パン粉には製法、水分含量、粒度等により多くの種類があるが、本発明ではそのいずれも使用できる。また、それらの混合物を使用することができる。
本発明で使用するパン粉の具体的な種類としては、例えば水分11.0〜13.0%程度の焙焼パン粉、電極式パン粉、カラーパン粉、白パン粉とカラーパン粉をミックスしたミックスパン粉、微粉パン粉や赤パン粉、水分36〜38%程度の生パン粉がある。また、クラッカー、ビスケット風に焼き上げ、粉砕、乾燥したものや、マイクロ波で焼き上げたもの、エクストルーダーを使用したものがある。
このようなパン粉は一般に入手することができる。
本発明では一般に水分7〜40%の範囲にあるパン粉を使用することができる。
ミックス粉の形態で流通させる発酵食品製造用ミックス粉を対象とするときには、水分含量15%以下、好ましくは10%以下のパン粉を穀粉に配合することが望ましい。
【0009】
本発明で使用するパン粉は、粒径10mm以下のものが好ましい。このような粒径のパン粉はミックス粉に配合されたときに及び生地中で分散性がよく、また製品にシットリとした食感を与えることができる。粒径10mm以下のパン粉は、粒径が大きなパン粉をピンミル、レッチミルなどの粉砕機で粉砕し、篩にかけることによって製造できるほか、フライ食品の衣用に市販されているパン粉も使用することができる。なお、粒径10mm以下のパン粉とは目開き10mmの篩を通過する大きさのパン粉をいう。
本発明で使用するパン粉は、更に好ましくは粒径0.5mm以下のものである。すなわち、目開き0.5mmの篩を通過する大きさのパン粉が好ましく使用できる。このような粒径のパン粉を使用することで、生地中にパン粉がいっそう均一に分散し、製品表面が滑らかとなり、シットリとした食感を達成できる。
【0010】
本発明で使用する粒径10mm以下のパン粉として、例えば粒径が0.5mmよりも大きく10mm以下のパン粉を使用することができる。すなわち、目開き10mmの篩を通過し0.5mmに残る大きさのパン粉を使用することができる。本発明の別の実施態様では、使用するパン粉のすべてを粒径0.5mm以下のパン粉としてもよい。
本発明ではまた、粒径0.5mm以下のパン粉と、粒径が0.5mmよりも大きく10mm以下のパン粉との混合物を使用してもよい。例えば、粒径0.5mm以下のパン粉と粒径が0.5mmよりも大きく10mm以下のパン粉とを質量比で100:0〜20:80程度の比率で使用することが挙げられる。
【0011】
本発明では上記のパン粉とともに、精製乳蛋白質を使用する。ここで精製乳蛋白質とは、牛乳などの天然の乳からカゼインなどの蛋白質を単離精製したものを意味する。該精製乳蛋白質は、脱脂粉乳やチーズホエー(チーズ乳清)などの乳蛋白質含有食品は包含しない。精製乳蛋白質は一般に市販されているものが使用できる。その例として、カゼイン、トータルミルクプロテイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトアルブミン、ラクトグロブリンなどの乳清蛋白質(ホエー蛋白質)又はこれらの塩類もしくは濃縮物、例えばカゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエープロテインコンセントレート、ミルクプロテインコンセントレートなどが挙げられる。本発明では、これらの精製乳蛋白質を一種単独で、あるいは二種以上を組合せて使用することができる。中でも粉末状で市販されているカゼイン、その塩類、又は乳清蛋白質が好ましく使用できる。
【0012】
本発明の具体的な実施態様では、穀粉100質量部に対してパン粉を2〜50質量部配合し、精製乳蛋白質を0.05〜5質量部配合するのが適当である。パン粉及び精製乳蛋白質の配合量が上記の範囲内にあると、食感の改善効果が十分であり、且つ製品ボリュームが適度で、製品の外観及び内相ともに良好で食感が軽く適度である。また生地の機械耐性が適当にあり機械生産に適する。
本発明では好ましくは、穀粉100質量部に対してパン粉を3〜15質量部配合し、精製乳蛋白質を0.1〜1質量部配合する。
【0013】
本発明の発酵食品製造用ミックス粉は、上述のように穀粉、パン粉及び精製乳蛋白質を配合したものである。本発明の発酵食品製造用ミックス粉において具体的には、穀粉100質量部に対して、パン粉が2〜50質量部及び精製乳蛋白質が0.05〜5質量部配合されている。
また、本発明の発酵食品の製造方法は具体的には、上述のように穀粉100質量部に対して、パン粉を2〜50質量部及び精製乳蛋白質を0.05〜5質量部配合し、生地を調製することを含む。
本発明の発酵食品製造用ミックス粉において、あるいは発酵食品の製造方法において、上記の穀粉、パン粉及び精製乳蛋白質の他に、目的とする発酵食品の種類に応じて通常使用するような副資材を適宜の量で混合することができる。そのような副資材の例として、砂糖、食塩、粉乳(例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー)、油脂類(ショートニング、マーガリン、バター)、イースト、イーストフード、植物由来の蛋白類(大豆蛋白、小麦蛋白など)、卵、ベーキングパウダー、ビタミンCなどが挙げられる。
【0014】
各種パン類などの発酵食品には、全脂粉乳や脱脂粉乳といった粉乳を配合することが一般的になされ、これらの粉乳は乳蛋白質を含有している。生地において粉乳の配合量が多いと、生地を焼成あるいはフライ後に色調が黒くなる傾向がある。従って本発明の実施にあたり、このような粉乳を含ませるとき、穀粉100質量部に対して5質量部までの量で使用することが適当である。
発酵食品の製造にあたり生地を製造するときの加水量は、使用するパン粉の水分により変動するが、生地が適切な固さになるように適宜選択すればよい。
【0015】
本発明の発酵食品製造用ミックス粉には、上記の穀粉、パン粉及び精製乳蛋白質の他に、例えば砂糖、食塩、粉乳、油脂、植物由来の蛋白類、乾燥卵、ベーキングパウダーなど、通常使用するような副資材を適宜な量で配合することができ、また、該発酵食品製造用ミックス粉を流通させることができる。
本発明の発酵食品の製造方法、あるいは本発明の発酵食品製造用ミックス粉を使用した発酵食品の製造において、その手順は、目的とする発酵食品の種類に応じて常法に従って実施することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳しく説明する。
[実施例1〜12及び比較例1]
表1及び表2の組成(単位:質量部)にて、食パンを製造した。表1にはパン粉及び乳蛋白質の双方を用いない例、及び穀粉100質量部に対してカゼインナトリウムを0.1質量部配合した例をまとめ、表2には穀粉100質量部に対してパン粉を10質量部配合した例をまとめた。なお、使用したパン粉は目開き0.5mmの篩を通過するものであり、水分含量は11.5%であった。
食パンの製法:小麦粉、砂糖、脱脂粉乳、食塩、カゼインナトリウム及びパン粉をブレンダーで攪拌しミックス粉とした。ミキサーボールに水とイーストを入れ、予備混合し、そこへ該ミックス粉を投入後、下記工程のように操作した。
(1)ミキシング:低速2分及び中速5分、そこへショートニングを入れ、低速1分、中速5分及び高速1分
(2)生地温度:27℃
(3)発酵時間:90分
(4)分割:220g/個×4個
(5)ベンチタイム:25分
(6)ホイロ時間:50分
(7)焼成:200℃ 35分
なお、別法として、水とイーストを入れたミキサーボールに、その他の各原材料を個別に投入し、上述の工程(1)〜(7)を行って食パンを製造することができる。その際、各原材料を投入する順序は特に制限されない。
【0017】
<評価方法>
上記のように食パンを製造してから24時間後に、10名のパネラーにより、シットリ感、歯切れ感、風味及びクラスト感について官能評価を行った。判定基準は各項目について以下のとおりであり、10名の平均値を求めた。さらに各例における合計点数を求めた。この合計点数が12点以上であれば優れていると判断した。
5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い
それらの結果を表1及び表2に併せて示す。
【0018】
【表1】

*1 商品名サンラクトS、太陽化学(株)製







【0019】
【表2】

*1 商品名サンラクトS、太陽化学(株)製
表1及び2の結果から、特に実施例2〜5及び実施例8〜11で得られた食パンが優れた品質であることが判る。
【0020】
[実施例12]
イーストドーナツの製造
以下の組成(単位:質量部)にてイーストドーナツを製造した。
小麦粉 100
砂糖 10
食塩 2
脱脂粉乳 3
ベーキングパウダー 1
ショートニング 5
パン粉*1 20
乳清蛋白質*2
イースト 3.5
全卵 5
水 60
*1:目開き0.5mmを通過するものが70質量%及び目開き10mmを通過し0.5mmに残るものが30質量%。水分含量:15%。
*2:商品名サンラクトN2、太陽化学(株)製
【0021】
イーストドーナツの製法:イースト、全卵及び水をミキサーボールに入れ予備混合し、小麦粉、砂糖、食塩、脱脂粉乳、ベーキングパウダー、パン粉及び乳清蛋白質をそこへ投入した後、下記工程のとおり操作した。
(1)ミキシング:低速2分及び中速12分、そこへショートニングを入れ、低速1分及び中速10分
(2)生地温度:28℃
(3)発酵時間:30分
(4)分割:50g/個
(5)ベンチタイム:15分
(6)ホイロ時間:40分
(7)ラックタイム:15分
(8)フライ:180℃ 1分 反転 1分
その結果、内相はシットリして歯切れ、口溶けが良く、クラストはパリッとして香ばしい自然の風味をもった製品が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン粉と精製乳蛋白質を含有することを特徴とする発酵食品製造用ミックス粉。
【請求項2】
穀粉100質量部に対して、パン粉が2〜50質量部及び精製乳蛋白質が0.05〜5質量部配合されていることを特徴とする発酵食品製造用ミックス粉。
【請求項3】
該パン粉が粒径10mm以下である請求項1又は2記載の発酵食品製造用ミックス粉。
【請求項4】
該パン粉が粒径0.5mm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の発酵食品製造用ミックス粉。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の発酵食品製造用ミックス粉を使用して製造された発酵食品。
【請求項6】
パン粉及び精製乳蛋白質を配合することを特徴とする発酵食品の製造方法。
【請求項7】
穀粉100質量部に対して、パン粉を2〜50質量部及び精製乳蛋白質を0.05〜5質量部配合することを特徴とする発酵食品の製造方法。