説明

発酵食品

【課題】乳成分を介在させずに、乳酸発酵された好ましい味や臭いの発酵食品を提供することである。
【解決手段】すんき漬由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌及びペディオコッカス属に属する乳酸菌の少なくとも1以上の乳酸菌によって、リモネン、シトラール、ヌートカトン、ペリラアルデヒド、フラネオール、マルトール、エチル2−メチルブチレートなどの香気成分を含有する植物を発酵させたことを特徴とする発酵食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すんき漬由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌及びペディオコッカス属に属する乳酸菌の少なくとも1以上の乳酸菌によって植物を発酵させたことを特徴とする発酵食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、我が国においては、野菜を日持ちさせるため、野菜を乳酸発酵させた漬け物が食されている。例えば、長野県の木曽地方の伝統的な漬物がある「すんき漬け」、京都の伝統的な漬け物である「すぐき漬け」などがある。韓国のキムチなども乳酸発酵させた漬物である。また、野菜などを乳酸発酵させた発酵食品としては、様々なものが研究されている(特許文献1乃至3)。
【特許文献1】特開昭60−248131号公報
【特許文献2】特開平1−181745号公報
【特許文献3】特開平3−39066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら特許文献1乃至3などに記載されたものは、いずれも乳成分を介在させて乳酸発酵させたものであり、酸味と発酵臭が強いという問題があり、このような酸味は、発酵の際に添加される様々な調味料によって抑えられている。例えば、白菜キムチにおいては、発酵の際に添加されるトウガラシや塩などによって酸味が抑えられている。このため、乳成分を介在させて乳酸発酵させているものは、酸味が強いか、又は調味料の味によって、味が制限されるので、様々な野菜などに利用できない。
【0004】
そこで、本発明は、乳成分や調味料を介在させずに、乳酸発酵された好ましい味や臭いの発酵食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、すんき漬由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌及びペディオコッカス属に属する乳酸菌の少なくとも1以上の乳酸菌を用いて、所定の香気成分が含有された植物を乳成分や調味料を介在させずに発酵させることができ、その食物の本来の香気成分によって、乳酸発酵による酸味が緩和され、好ましい味や臭いを得ることができることを見出した。すなわち、本発明は、すんき漬由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌及びベディオコッカス属に属する乳酸菌の少なくとも1以上の乳酸菌によって、リモネン、シトラール、ヌートカトン、ペリラアルデヒド、フラネオール、マルトール、エチル2−メチルブチレート、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、ピーチアルデヒド、ベンズアルデヒド、イソアミルアルコール、ヘキセノール、セダノライド、セダノール酸、シンナムアルデヒド、アリシン、ショウガオール、ジンゲロン、αーピネン酸、メトキシピラジン類、リナロール、アリルイソチオシアネート、ミルセン、酢酸エチル、酪酸メチル、カプロン酸エチル、酢酸イソアミル、カプサイシン及びカコチン臭の少なくとも1以上の香気成分を含有する植物を発酵させたことを特徴とする発酵食品である。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、乳成分や調味料を介在させずに、乳酸発酵された好ましい味や臭いの発酵食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る発酵食品において、すんき漬由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌及びペディオコッカス属に属する乳酸菌は、すんき漬から抽出することができる。具体的には、すんき漬の一部を乳酸菌用集積培地で集積培養後、滅菌生理食塩水で任意に希釈し、薬剤を添加した乳酸菌分離用寒天培地(GYP白亜寒天培地)で培養して乳酸菌の分離を行うことにより作製した。乳酸菌の確認および発酵性の確認は乳酸菌分離用寒天培地上に検出されたコロニーを個々に純培養し、常法によりグラム染色や顕微鏡による形態観察を行った後、細菌同定検査キット(アピ50CHL(日本ビオメリュー(株))により確認を行った。さらに、16S rRNAをコードするSSU rDNAのPCR産物のシークエンスを行い、その塩基配列より乳酸菌の同定を行った。分離した乳酸菌は、単独或いは数種類を乳酸菌増殖培地で増殖させ、必要に応じてスケールアップし、発酵用スタータを作製した。
【0008】
これら乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキーに属する乳酸菌、ラクトバチルス・ブレビスに属する乳酸菌、ラクトバチルス・サケイに属する乳酸菌、ラクトバチルス・クリアタスに属する乳酸菌、ラクトバチルス・プランタムに属する乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタムに属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌などがある。
【0009】
また、本発明に係る発酵食品において、香気成分リモネンやシトラールは、オレンジ、レモン、柚子、スダチ及びカボスなどに含まれており、香気成分ヌートカトンは、グレープフルーツなどに含まれており、香気成分ペリラアルデヒドは、紫蘇などに含まれており、香気成分フラネオールやマルトール、酪酸メチルは、イチゴなどに含まれており、香気成分エチル2−メチルブチレートやヘキセナールは、林檎などに含まれており、香気成分メチルアンスラニレートやエチルアンスラニレートは、葡萄などに含まれており、香気成分ピーチアルデヒドやベンズアルデヒドは、桃などに含まれており、香気成分イソアミルアルコールやヘキセノール、カプロン酸エチル、酢酸イソアミルは、バナナなどに含まれており、香気成分セダノライドやセダノール酸は、セロリなどに含まれており、香気成分シンナムアルデヒドは、ニッケイなどに含まれており、香気成分アリシンは、ニンニクなどに含まれており、香気成分ショーガオールやジンゲロンは、生姜などに含まれており、香気成分αーピネン酸やメトキシピラジン類は、みょうがなどに含まれており、香気成分アリルイソチオシアネートは、わさび菜などに含まれており、ミルセンや酢酸エチルは、きんかんなどに含まれており、カプサイシンやカコチン臭は、ロコトトウガラシなどに含まれている。
【実施例】
【0010】
次に、本発明に係る発酵食品の実施例について説明する。先ず、本実施例に係る発酵食品の発酵に用いられる乳酸菌の抽出方法について説明する。木曽王滝村より調達した赤カブ菜のすんき漬けの1株を乳酸菌用集積培地で30℃、48時間集積培養後、滅菌生理食塩水で任意に希釈した。希釈液はアジ化ナトリウムとシクロヘキシミドの抗菌剤を添加した乳酸菌分離用寒天培地(GYP白亜寒天培地)で30℃、72時間培養して乳酸菌の分離を行った。乳酸菌の確認および発酵性の確認は乳酸菌分離用寒天培地上に検出されたコロニーを個々にMRS培地(OXOID社製)で30℃、72時間で純培養し、常法によりグラム染色や顕微鏡による形態観察を行った後、細菌同定検査キット(アピ50CHL(日本ビオメリュー(株))により確認を行った。さらに、16SrRNAをコードするSSU rDNAのPCR産物のシークエンスを行ったところ、その塩基配列より乳酸菌であることが確認できた。分離した乳酸菌は、単独或いは数種類を乳酸菌増殖培地で増殖させ、必要に応じてスケールアップし、1.0×10個/gの発酵用スタータとしての乳酸菌溶液を作製できた。
【0011】
実施例1(ミョウガ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ロイコノストック・ガーリカムを用いて、ミョウガを発酵させた。すなわち、先ず、縦半分にカットしたミョウガ1kgに対し、乳酸菌ロイコノストック・ガーリカム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例1に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ5.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.5であった。実施例1に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行なったところ、乳酸による酸味とミョウガ本来の香味(αーピネン酸やメトキシピラジン類など)が合わさって、単なる酢漬けと違い好ましいとの評価を得た。
【0012】
実施例2(生姜)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタムを用いて、生姜を発酵させた。すなわち、先ず、スライスした生姜1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例2に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ2.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.5であった。実施例2に係る発酵食品について15名のパネラーによって官能試験を行なったところ、乳酸による酸味と生姜本来の香味(シトラールやリナロールなど)・辛味(ジンゲロンやショーガオールなど)が合わさって、単なる酢漬けと違い好ましいとの評価を得た。
【0013】
実施例3(わさび菜)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ロイコノストック・ガーリカムを用いて、わさび菜を発酵させた。すなわち、先ず、2〜3cm幅にカットしたわさび菜1kgに対し、乳酸菌ロイコノストック・ガーリカム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例3に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ8.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ5.0であった。実施例3に係る発酵食品について15名のパネラーによって官能試験を行なったところ、乳酸による酸味とわさび菜本来の香味(アリルイソチオシアネート)があり、辛味が残っていて好ましいとの評価を得た。
【0014】
実施例4(セロリ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ロイコノストック・ガーリカムを用いて、セロリを発酵させた。すなわち、先ず、斜め切りにしたセロリ1kgに対し、乳酸菌ロイコノストック・ガーリカム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例4に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ3.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.1であった。実施例4に係る発酵食品について15名のパネラーによって官能試験を行なったところ、乳酸による酸味とセロリ本来の香味(セダノライドやセダノール酸など)が合わさって、かつ食塩を使わないのでシャキシャキ感が残り好ましいとの評価を得た。
【0015】
実施例5(きんかん)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ロイコノストック・ガーリカムを用いて、きんかんを発酵させた。すなわち、先ず、スライスしたきんかん1kgに対し、乳酸菌ロイコノストック・ガーリカム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例5に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ2.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.0であった。実施例5に係る発酵食品について15名のパネラーによって官能試験を行なったところ、乳酸による酸味ときんかん本来の香味(リモネン、ミルセン及び酢酸エチルなど)が合わさって、非常に好ましいとの評価を得た。
【0016】
実施例6(リンゴ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・プランタムを用いて、りんごを発酵させた。すなわち、芯を抜いて1個を16等分したりんご1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・プランタム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例6に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ5.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.0であった。実施例6に係る発酵食品について15名のパネラーによって官能試験を行なったところ、乳酸による酸味とリンゴの酸味や香味(エチル2−メチルブチレートなど)が合わさって、シャッキリ感も残り好ましいとの評価を得た。
【0017】
実施例7(トウガラシ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ロイコノストック・ガーリカムを用いて、トウガラシを発酵させた。すなわち、芯を抜いて荒くみじん切りしたロコトトウガラシ1kgに対し、乳酸菌ロイコノストック・ガーリカム50ml(1.0×10/ml)を接種し、37℃嫌気的条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施7に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ8.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.2であった。実施例7に係る発酵食品について15名のパネラーによって官能試験を行なったところ、乳酸による酸味とトウガラジの辛味(カプサイシンなど)・香味(カコチン臭など)が合わさって好ましいとの評価を得た。
【0018】
実施例8(グレープフルーツ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・デルブルッキーを用いて、グレープフルーツを発酵させた。すなわち、まず、皮付きのまま2cmの厚さにスライスしたグレープフルーツ1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・デルブルッキーの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例8に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ3.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ3.4であった。実施例8に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味とグレープフルーツ本来の香味(ヌートカトンやシトラール、リナロール)が合わさって、好ましいとの評価を得た。
【0019】
実施例9(紫蘇)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・ブレビスを用いて、紫蘇を発酵させた。すなわち、まず、1〜2cmの幅にカットした紫蘇1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・ブレビスの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例9に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ7.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.5であった。実施例9に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味と紫蘇本来の香味(ペリラアルデヒド)が合わさって、シャキシャキ感も残り好ましいとの評価を得た。
【0020】
実施例10(イチゴ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・サケイを用いて、イチゴを発酵させた。すなわち、まず、1/4カットしたイチゴ1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・サケイの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例10に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ4.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.6であった。実施例10に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味とイチゴ本来の香味(フラネオールやマルトール、酪酸メチル)が合わさって、好ましいとの評価を得た。
【0021】
実施例11(葡萄)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・クリアタスを用いて、葡萄を発酵させた。すなわち、まず、皮付きのまま半分にカットしたマスカット1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・クリアタスの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例11に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ1.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.3であった。実施例11に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味と葡萄本来の香味(酢酸エチルやメチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート)が合わさって、好ましいとの評価を得た。
【0022】
実施例12(桃)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスを用いて、桃を発酵させた。すなわち、まず、皮付きのまま1/8カットした桃1kgに対し、乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例12に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ6.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.6であった。実施例12に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味と桃本来の香味(ピーチアルデヒドやベンズアルデヒド)が合わさって、好ましいとの評価を得た。
【0023】
実施例13(バナナ)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ラクトバチルス・サケイを用いて、バナナを発酵させた。すなわち、まず、皮を剥いて2cmの厚さにスライスしたバナナ1kgに対し、乳酸菌ラクトバチルス・サケイの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例13に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ7.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.4であった。実施例13に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味とバナナ本来の香味(イソアミルアルコールや酢酸イソアミル、ヘキセノール、カプロン酸エチル)が合わさって、好ましいとの評価を得た。
【0024】
実施例14(ニッケイとニンニク)
次に、上述の方法ですんき漬けから抽出された乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスを用いて、ニッケイとニンニクを発酵させた。すなわち、まず、皮を剥いたニンニク0.9kgと棒状のニッケイ0.1kgに対し、乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスの培養液50ml(1.0×10/ml)を摂取し、37℃嫌気条件下で約15時間前培養した後、5℃で約2週間乳酸発酵させることによって実施例14に係る発酵食品を得た。発酵後、乳酸菌生菌数を測定したところ2.0×10個で、その他の菌については増殖がなく腐敗臭も認められなかった。pHを測定したところ4.6であった。実施例14に係る発酵食品について15名のパネラーにより官能試験を行ったところ、乳酸による酸味とニッケイとニンニクの本来の香味(シンナムアルデヒドやアリシン)が合わさって、単なる酢漬けと違い好ましいとの評価を得た。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
すんき漬由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌及びぺディオコッカス属に属する乳酸菌の少なくとも1以上の乳酸菌によって、リモネン、シトラール、ヌートカトン、ペリラアルデヒド、フラネオール、マルトール、エチル2−メチルブチレート、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、ピーチアルデヒド、ベンズアルデヒド、イソアミルアルコール、ヘキセノール、セダノライド、セダノール酸、シンナムアルデヒド、アリシン、ショウガオール、ジンゲロン、αーピネン酸、メトキシピラジン類、リナロール、アリルイソチオシアネート、ミルセン、酢酸エチル、酪酸メチル、カプロン酸エチル、酢酸イソアミル、カプサイシン及びカコチン臭の少なくとも1以上の香気成分を含有する植物を発酵させたことを特徴とする発酵食品。
【請求項2】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス・デルブルッキーに属する乳酸菌、ラクトバチルス・ブレビスに属する乳酸菌、ラクトバチルス・サケイに属する乳酸菌、ラクトバチルス・クリアタスに属する乳酸菌、ラクトバチルス・プランタムに属する乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタムに属する乳酸菌、ロイコノストック属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌の少なくとも1以上であることを特徴とする発酵食品。

【公開番号】特開2008−79534(P2008−79534A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262572(P2006−262572)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】