説明

発酵飲食品、えぐ味のマスキング方法、及び甘味の低減方法

【課題】ミネラル分を除去することなく、デーツのえぐ味がマスキングされ、甘味の低減された発酵飲食品、及びえぐ味のマスキング方法及び甘味の低減方法を提供することを目的とする。
【解決手段】デーツが、すんき漬け由来の植物性乳酸菌であるLactobacillus delbrueckii、 Lactobacillus fermentum、 Pediococcus pentosaceus、 Lactobacillus plantarum、 Leuconostoc garlicum、 Leuconostoc gelidum、 Leuconostoc citreum、 及びLactobacillus brevisの少なくとも一つによって発酵処理されたことを特徴とする発酵飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デーツの発酵飲食品、えぐ味をマスキングする方法、甘味を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デーツは、ナツメヤシの果実である。デーツの形状は、直径2〜3cm、長さ3〜7cmの楕円球形であり、内部には種子が一つ入っている。デーツの色は、品質等にもよるが明るい赤から黄色である。デーツは、ブドウ糖や果糖を中心とした炭水化物が多く含まれるほか、ビタミンやミネラル、食物繊維も含まれ、さらに抗酸化作用も有することから機能性の高い食品として知られており、イラク、アラブ諸国、モロッコなどの広い地域において古くから重要な食物とされている。これらの国では、例えば、保存食として乾燥したデーツが食される。
【0003】
日本における食品としてのデーツの利用は、デーツと同じように乾燥して食することができるプルーンやレーズン、ブルーベリーに比べると少ない。デーツを焼酎の原料にしたり(特許文献1)、酢の原料にしたり(特許文献2,特許文献3)してはいるが、一部の特定の食品にデーツがわずかに利用されている程度である。したがって、機能性の高い食品であるデーツの利用が、日本においても広くなされることが望まれる。
【0004】
【特許文献1】特公昭63−066195
【特許文献2】特開昭61−254178
【特許文献3】特開昭62−55070
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、デーツには、舌に違和感を与え、後味を悪いものにする独特のえぐ味が存在し、これが飲食品への利用を妨げるという問題を有する。この問題を解決するために、えぐ味に関与していると思われる、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリンなどのミネラル分を除去することも考えられる。しかし、ミネラル分を除去するには、イオン交換樹脂やイオン交換膜による処理が必要であり、装置が大掛かりになるという問題を有する。また、栄養成分としてのミネラル分を除去してしまうことは、デーツの価値を下げることになるという問題も有する。
【0006】
一方、近年の健康志向の高まり等から、甘味の強すぎるものは好まれない傾向にあるが、デーツにおいても糖質の主成分がブドウ糖と果糖であるため甘味が強く、これも飲食品への利用を妨げる一因になっているという問題を有する。この問題を解決するために、クエン酸などの酸味料を添加して甘味を低減させたり、デーツを水で希釈させたりすることが考えられる。しかし、クエン酸や乳酸などの酸味料を添加したのみでは酸味が人工的な味になってしまい甘味の低減効果は弱くなってしまう。また、甘味を下げるために水で希釈してしまえば、デーツの持つミネラルなどの栄養成分を充分に摂取することができないという問題を有する。
【0007】
そこで本発明は、ミネラル分を除去することなく、デーツのえぐ味がマスキングされ、甘味の低減された発酵飲食品、えぐ味のマスキング方法及び甘味の低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、デーツを乳酸菌によって発酵処理することによってデーツのミネラル分を損なうことなく、えぐ味をマスキングし、甘味を低減することができることを見出した。すなわち、本発明は、デーツが乳酸菌によって発酵処理されたことを特徴とする発酵飲食品である。また、デーツを乳酸菌によって発酵処理することにより、デーツのえぐ味をマスキングすることを特徴とするえぐ味のマスキング方法である。さらにまた、デーツを乳酸菌によって発酵処理することにより、甘味を低減することを特徴とする甘味の低減方法である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、デーツのえぐ味がマスキングされ、甘味の低減された発酵飲食品、えぐ味のマスキング方法及び甘味の低減方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る発酵飲食品に用いられる乳酸菌としては、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus plantarum、及びLactobacillus brevis等のLactobacillus属、Lactococcus lactis等のLactococcus属、Pediococcus pentosaceus等のPediococcus属、Enterococus faecalis、及びEnterococus faecium等のEnterococus属、Streptococcus thermophilus等のStreptococcus属、並びにLeuconostoc gelidum、及びLeuconostoc citreum等のLeuconostoc属に属する乳酸菌などが挙げらる。これらの中でも、デーツが植物であることから、植物性乳酸菌が好ましく、すんき漬け由来の植物性乳酸菌がさらに好ましい。すんき漬とは、長野県の木曽地方で生産・食されている漬物のことをいい、その製造においては、塩を一切使用せず、乳酸発酵によってのみ味付けを行い、日持ちを向上させるという特徴を有する。すんき漬から植物性乳酸菌は、既知の方法により分離することができる。例えば、漬け汁中に遊離している乳酸菌を乳酸菌分離用培地で分離する方法、漬け汁を集積培養後に乳酸菌分離用培地で分離する方法、漬物を集積培養し乳酸菌分離用培地で分離する方法、漬物に付着した乳酸菌を攪拌、ホモジナイズ、又は超音波等で処理後、乳酸菌分離用培地で分離する方法、及びすんき漬の漬け種から分離する方法が挙げられる。すんき漬け由来の植物性乳酸菌としては、Lactobacillus delbrueckii、 Lactobacillus fermentum、 Pediococcus pentosaceus、 Lactobacillus plantarum、 Leuconostoc garlicum、 Leuconostoc gelidum、 Leuconostoc citreum、 及びLactobacillus brevisなどが挙げられる。これらの乳酸菌はいずれか1以上を用いることができる。
【0011】
デーツを乳酸菌によって発酵処理させる方法としては、培地で乳酸菌を前培養し、培養された乳酸菌をデーツに植菌する方法が挙げられる。培地は、乳酸菌においては、M.R.S培地等を用いることができる。発酵させる対象は、果実、乾燥果実、果汁などのデーツが用いられる。乾燥果実は、ペースト状に加工したものが好ましい。果汁は、生果汁又は乾燥果実より熱水で抽出したものでもよい。果汁を発酵させる場合は、果汁に水を添加して糖度を調整するのが好ましい。糖度は、1〜70が好ましく、3〜50がさらに好ましく、5〜40が特に好ましい。糖度が上記範囲外であると乳酸菌の生育が悪くなり、マスキング効果等を得るのに時間を要するため好ましくない。発酵させる際の温度は、乳酸菌が生育する温度であればよく、−2℃〜50℃が好ましく、10℃〜45℃がさらに好ましく、15℃〜37℃が特に好ましい。温度が上記範囲外であると、乳酸菌の生育が悪くなるので好ましくない。発酵時間は、一般に温度が低い場合には長く、温度が高い場合には短くする。温度が−2℃〜50℃の場合、発酵時間は6時間〜1年が好ましく、6時間〜30日がさらに好ましく、1日〜20日が特に好ましく、1日〜10日が最も好ましい。6時間より短いと発酵が不十分となり、また1年より長くてしても効果が高くなることはないので好ましくない。
【0012】
本発明に係る発酵飲食品としては、例えば、果汁飲料、果実、調味料、フルーツスプレッドなどのペースト状食品、菓子素材、甘味料、介護食品、及び栄養補助食品が挙げられる。従来は、デーツのえぐ味や甘みが理由で用途や使用量が限られていたが、本発明によれば、種々の食品に応用できる。
【0013】
本発明に係る発酵飲食品は、乳酸菌により発酵処理させることによって、えぐ味がマスキングされる。えぐ味がマスキングされる理由については、必ずしも明確ではないが、乳酸菌がえぐ味の原因のひとつであると考えられるミネラル分等を栄養源として使用し細胞内に閉じ込めてしまうことや、乳酸菌が発生する酸味や二酸化炭素などの代謝産物により、えぐ味成分がマスキングされることが考えられる。
【0014】
本発明に係る発酵飲食品は、乳酸菌により発酵処理させることによって、甘味が低減される。5訂栄養成分表では、乾物のデーツ(なつめやし)のエネルギーは266kcal/100gである。デーツの成分は、炭水化物71.3g、食物繊維7.0g、及び水分24.8gであり、糖質がほとんどを占める。糖質としてはブドウ糖と果糖が主成分であり、ブドウ糖が果糖より多く存在している。本発明に係る発酵飲食品においては、乳酸菌によって発酵処理させることにより、ブドウ糖の存在比率が低減され、一方、果糖の存在比率が上昇する。果糖はインスリン代謝に依存しないので、糖尿病を患う患者等においても食することができるデーツを提供することができる。
【0015】
本発明に係る発酵飲食品は、乳酸菌によりデーツのえぐ味がマスキングされ、甘味が低減されるのみならず、乳酸菌が有する効果も合わせて得られる。例えば、乳酸菌により発酵させれば、整腸作用によりお腹の調子を整えたり、免疫機能の調整作用等の効果も奏し得る。また、すんき漬け由来の乳酸菌には、抗アレルギー作用やピロリ菌の生育阻害作用が知られており(特願2005−256445)、これらの効果も奏し得る。これらの効果により、乳酸菌の機能が付加された、より付加価値の高い発酵飲食品を得ることができる。デーツの栄養を効率よく利用するために、乳酸菌で発酵させ、さらに機能性を持たせることは、従来は行われていなかった。
【実施例】
【0016】
次に、本発明に係る発酵飲食品及びマスキング方法の実施例について説明する。実施例において用いられた乳酸菌の入手方法及び同定方法は以下の通りである。
【0017】
表1及び9中において、*1は、市販ヨーグルトから単離された乳酸菌である。具体的には、乳酸菌用集積培地で集積培養後、滅菌生理食塩水で任意に希釈し、薬剤を添加した乳酸菌分離用寒天培地(用GYP白亜寒天培地)で培養して乳酸菌の分離を行った。検出されたコロニーを個々に純培養し、細菌同定検査キットであるアピ50CHL(日本ビオメリュー社製)により同定した。
【0018】
表1乃至8中において、*2は、野菜の漬物から、「漬物の微生物」(R&Dプランニング社発刊)を参考に単離された乳酸菌である。細菌同定検査キットであるアピ50CHL(日本ビオメリュー社製)により同定した。
【0019】
表1中において、*3は、野菜の漬物から、「漬物の微生物」(R&Dプランニング社発刊)を参考に単離された乳酸菌である。Bergey's Manual of Determinative Bacteriology(Ninth Edition,Williams&Wilkins)の記載に従って同定した。
【0020】
表9において、*4は、すんき漬け(木曽地方のもの)の一部を乳酸菌用集積培地で集積培養後、滅菌食塩水で任意に希釈し、その後、薬剤を添加した乳酸菌分離用寒天培地(GYP白亜寒天培地)で培養して乳酸菌を単離したものである。乳酸菌分離用寒天培地上に検出されたコロニーを個々に純培養し、常法によりグラム染色や顕微鏡による形態観察を行い、その後、16SrRNAをコードするSSUrDNAのPCRを行って、細菌同定検査キットであるアピ50CHL(日本ビオメリュー社製)により同定した。
【0021】
実施例1乃至10、比較例1
先ず、デーツ濃縮果汁(アラブ首長国連邦製,糖度78)に水を加え糖度20とした。このように糖度が調整されたデーツ果汁1000gを110℃で20分間滅菌し、25℃に冷却後、表1に示した乳酸菌を10個/mLレベルで植菌した。植菌において、微生物である乳酸菌はM.R.S培地で前培養を行った。植菌後、表1記載の発酵条件で発酵させ、実施例1乃至10に係る発酵飲食品を得た。また、乳酸菌を用いない以外は実施例1乃至10と同様にして比較例1に係る飲食品を得た。
【0022】
(えぐ味)
実施例1乃至10及び比較例1に係るデーツについて、官能検査を行った。評価は、パネラー10名によって、10℃に冷却した実施例1乃至10及び比較例1に係る発酵飲食品を試飲してもらうことにより行った。判定基準は、比較例1に係るデーツよりもえぐ味を感じるかどうかであり、えぐ味を感じないと答えたパネラー1人を1ポイントとして評価した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例11乃至19
次に、表2記載の乳酸菌を用い、表2記載の発酵条件とした以外は、実施例1乃至13と同様にして、実施例11乃至19に係る発酵飲食品を得た。また、実施例1乃至10と同様に、えぐ味試験を行った。結果を表2及び3に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
実施例20乃至40、比較例2乃至29
次に、表3乃至5記載の乳酸菌を用い、表3乃至5記載の発酵条件で、かつ糖度を水の添加量によって調整した以外は、実施例1乃至10と同様にして、実施例20乃至40に係る発酵飲食品を得た。また、乳酸菌を用いない以外は実施例20乃至40と同様にして比較例2乃至22に係る飲食品を得た。
【0027】
(えぐ味)
実施例1乃至10に係る発酵飲食品と同様に官能検査を行った。ただし、判定基準となる比較例1の代わりに、実施例と同一処理条件であり、かつ乳酸菌を用いていない比較例を用いた。例えば、実施例20に係る発酵飲食品は、比較例2に係る飲食品と比較した。結果を表3乃至5に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
実施例41、44、47、比較例23、26、29
表6乃至8に示した乳酸菌及び発酵条件に基づいて実施例41、44、及び47に係る発酵飲食品を得た。先ず、デーツ乾燥果実(アラブ首長国連邦製)に水を加え糖度40とした。このように糖度が調整されたデーツ乾燥果実500gを、110℃で10分間滅菌し、25℃に冷却後、表6乃至8に示した乳酸菌を10個植菌した。植菌において、乳酸菌はM.R.S培地で前培養を行った。植菌後、表6乃至8記載の発酵条件で発酵させ、実施例41、44、及び47に係る発酵飲食品を得た。また、乳酸菌を用いない以外は実施例41、44、及び47と同様にして比較例23、26、及び29に係る飲食品を得た。
【0032】
実施例42、45、48、比較例24、27、30
表6乃至8に示した乳酸菌及び発酵条件に基づいて実施例42、45、及び48に係る発酵飲食品を得た。先ず、デーツペースト(アラブ首長国連邦製,糖度78)に水を加え糖度40とした。このように糖度が調整されたデーツペースト500gを110℃で10分間滅菌し、25℃に冷却後、表6乃至8に示した乳酸菌を10個植菌した。植菌において、乳酸菌はM.R.S培地で前培養を行った。植菌後、表6乃至8記載の発酵条件で発酵させ、実施例42、45、及び48に係る発酵飲食品を得た。また、乳酸菌を用いない以外は実施例42、45、及び48と同様にして比較例24、27、及び30に係る飲食品を得た。
【0033】
実施例43、46、49、比較例25、28、31
表6乃至8に示した乳酸菌及び発酵条件に基づいて実施例43、46、及び49に係る発酵飲食品を得た。先ず、デーツ濃縮果汁(アラブ首長国連邦製,糖度78)に水を加え糖度40とした。このように糖度が調整されたデーツ果汁1000gを110℃で10分間滅菌し、25℃に冷却後、表6乃至8に示した乳酸菌を10個/mLレベルで植菌した。植菌において、乳酸菌はM.R.S培地で前培養を行った。植菌後、表6乃至8記載の発酵条件で発酵させ、実施例43、46、及び49に係る発酵飲食品を得た。また、乳酸菌を用いない以外は実施例43、46、及び49と同様にして比較例25、28、及び31に係る飲食品を得た。
【0034】
(えぐ味)
実施例1乃至10に係る発酵飲食品と同様に官能検査を行った。ただし、判定基準となる比較例1の代わりに、実施例と同一処理条件であり、かつ乳酸菌を用いていない比較例を用いた。例えば、実施例41に係る発酵飲食品は、比較例23に係る飲食品と比較した。結果を表6乃至8に示す。
【0035】
【表6】

【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
実施例50乃至60
次に、表9記載の乳酸菌を用い、表9記載の発酵条件とした以外は、実施例1乃至10と同様にして、実施例50乃至60に係る発酵飲食品を得た。
【0039】
(えぐ味)
実施例1乃至10に係る発酵飲食品と同様に官能検査を行った。判定は、比較例1を基準として判断した。結果を表9に示す。
(飲みやすさ)
実施例50乃至60に係るデーツ(飲料)の飲みやすさを評価した。評価は、10人のパネラーの評価を以下の基準により判断した。結果を表9に示す。
◎:比較例1に比べ甘味が減少し且つ酸味のバランスがとれ飲みやすい
○:比較例1に比べ甘味が減少し且つ酸味のバランスが若干強いが飲みやすい
なお、例えば、◎10は、◎と評価したパネラーが10人いたことを示す。
【0040】
【表9】

【0041】
実施例61乃至81、比較例32
次に、実施例1乃至10及び実施例50乃至60に係る発酵飲食品を用いて、実施例61乃至81に係る発酵飲食品(デーツ果汁入り飲料)を得た。先ず、実施例1乃至10及び実施例50乃至60により得られた発酵飲食品100gに水を等量加え、pHをクエン酸で3.8に調整した。これを容器に充填し、85℃で30分間殺菌を行い、実施例61乃至81に係る発酵飲食品(デーツ果汁入り飲料)を得た。比較例32として、先ず、濃縮果汁(アラブ首長国連邦製,糖度78)に水を加え、糖度10に調整したものを200g作製し、pHをクエン酸で3.8に調整した。これを容器に充填し、85℃で30分間殺菌を行い、比較例32に係る飲食品(デーツ果汁入り飲料)を得た。
【0042】
(えぐ味)
実施例1乃至10及び比較例1に係る発酵飲食品と同様に官能検査を行った。ただし、判定基準となる比較例1の代わりに比較例32を用いた。結果を表10に示す。
【0043】
【表10】

【0044】
実施例82、比較例33
次に、実施例45に係る発酵飲食品を用いて、実施例82に係る発酵飲食品(スプレッド)を得た。先ず、実施例45によって得られた発酵飲食品300gに、グラニュー糖(東洋精糖社製)500g、液糖(エスイー30;日研化学社製)180g、及びクエン酸(磐田化学社製)20gを添加し、実施例82に係る飲食品(スプレッド)を得た。実施例45によって得られた発酵飲食品の代わりに、比較例27によって得られた飲食品を用いた以外は、実施例82と同様にして、比較例33に係る飲食品(スプレッド)を得た。
【0045】
実施例83、比較例34
次に、実施例42に係る発酵飲食品を用いて、実施例83に係る発酵飲食品(栄養補助食品)を得た。先ず、水420gに、寒天(ウルトラ寒天UX−30;伊那食品工業社製)10gを添加し加熱溶解後、実施例42によって得られた発酵乳酸菌300g、グラニュー糖(東洋精糖社製)200g、大豆タンパク(ソヤサワー;不二製油社製)50g、及び複合ビタミン(DR−300;理研ビタミン社製)20gを混合し、冷却して実施例83に係る発酵飲食品(栄養補助食品)を得た。実施例42によって得られた発酵飲食品の代わりに、比較例24によって得られた飲食品を用いた以外は、実施例83と同様にして、比較例34に係る飲食品(栄養補助食品)を得た。
【0046】
(えぐ味)
実施例1乃至10及び比較例1に係る発酵飲食品と同様に官能検査を行った。ただし、判定基準となる比較例1の代わりに、乳酸菌を用いていない比較例を用いた。例えば、実施例82に係る発酵飲食品は、比較例33に係る飲食品と比較した。結果を表11に示す。
【0047】
【表11】

【0048】
実施例1乃至83及び比較例1乃至34から、乳酸菌によりデーツのえぐ味がマスキングされることが分かる。実施例50乃至60においては、すべてマスキング効果を有していたが、すんき漬由来の乳酸菌により発酵させられた実施例50乃至57に係る発酵飲食品の方が、ヨーグルト由来の乳酸菌により作用させられた実施例58乃至60に係る発酵飲食品より甘みと酸味のバランスが調和され、より飲みやすいことが分かる。
【0049】
実施例84及び85、比較例35乃至39
次に、糖度を18とした以外は比較例1と同様にして比較例35に係る飲食品を得た。さらに、比較例35に係る飲食品に乳酸(50%品、ピューラックジャパン社製)を1.0%,1.6%(W/W)、結晶クエン酸(磐田化学社製)を0.5%,0.8%(W/W)をそれぞれ添加して、比較例36乃至39に係る飲食品を得た。また、糖度を18とした以外は実施例51及び54と同様にして実施例84及び85に係る飲食品を得た。
【0050】
(飲みやすさ)
実施例84及び85並びに比較例35乃至39に係る飲食品の飲みやすさを評価した。評価は、10人のパネラーの評価を以下の基準により判断した。結果を表12に示す。
評価は、10人のパネラーの評価を以下の基準により判断した。
◎:比較例35に比べ甘味が減少し且つ酸味のバランスがとれ飲みやすい
○:比較例35に比べ甘味が減少し且つ酸味のバランスが若干強いが飲みやすい
×:酸味が目立つ
【0051】
【表12】

【0052】
比較例35乃至39並びに実施例84及び85から、乳酸やクエン酸を添加したものは甘味と酸味のバランスが悪く、酸味が目立つのに対し、発酵で生じた酸を含むものは甘味と酸味のバランスが取れて飲みやすいことが分かる。
【0053】
参考例
次に、糖組成の分析を行った。比較例1、実施例51及び54に係る飲食品を0.45μmのフィルターでろ過を行った。ろ液の糖組成をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定した。結果を図1乃至3に示す。また、ブドウ糖と果糖の合計を100とした場合の糖組成を表13に示す。生じた乳酸量はHPLCにより測定した。
【0054】
【表13】

【0055】
比較例1並びに実施例51及び54に係る飲食品のHPLC分析より、乳酸菌によって発酵処理させることにより、ブドウ糖の存在比率が低減され、一方、果糖の存在比率が上昇することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】比較例1に係る飲食品のHPLCによる分析結果である。
【図2】実施例51に係る飲食品のHPLCによる分析結果である。
【図3】実施例54に係る飲食品のHPLCによる分析結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デーツが乳酸菌によって発酵処理されたことを特徴とする発酵飲食品。
【請求項2】
前記乳酸菌が植物性乳酸菌であることを特徴とする請求項1記載の発酵飲食品。
【請求項3】
前記植物性乳酸菌がすんき漬け由来であることを特徴とする請求項2記載の発酵飲食品。
【請求項4】
デーツ中のブドウ糖及び果糖含有割合においてブトウ糖比率が発酵前に比し低減されたことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の発酵飲食品。
【請求項5】
デーツを乳酸菌によって発酵処理することにより、デーツのえぐ味をマスキングすることを特徴とするえぐ味のマスキング方法。
【請求項6】
デーツを乳酸菌によって発酵処理することにより、甘味を低減することを特徴とする甘味の低減方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−4756(P2010−4756A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164848(P2008−164848)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】