説明

発電システム内の故障検出及び故障緩和のための熱制御システム

【課題】発電システム内の故障検出及び故障緩和のための熱制御システムを提供する。
【解決手段】システム10は、熱交換器34、54内へと至る流体流路に沿った少なくとも1つの導管に向けて視野を配向するように構成された放射センサ66を含む。この放射センサ66は、少なくとも1つの導管の温度を示す信号を出力するように構成される。システム10は更に、放射センサ66に通信可能に結合されたコントローラ68を含む。このコントローラ68は、信号に基づいて温度を判定し、この温度と閾値範囲とを比較して、温度が閾値範囲から外れる場合に流体流路又は少なくとも1つの導管を通る流体流を調節するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の主題は、発電システム内の故障検出及び故障緩和のための熱制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの発電システムは、燃料と圧縮空気との混合物を燃焼させて、高温燃焼ガスを生成するように構成されたガスタービンエンジンを含む。燃焼ガスは、タービンを通り、発電機等の負荷のための動力を生じる。効率を高めるために、幾つかの発電システムは、排熱回収ボイラ(HRSG)を用いて、タービンから排出される高温燃焼ガスからエネルギーを取り出す。一般に、HRSGでは、複数の導管を用いて、水等の流体を排ガスの流れに対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に導く。排ガスが導管を流れると、熱が排ガスから水に伝達されることで、蒸気が生成される。この蒸気は、その後、蒸気タービンを通って回転運動を生じ、発電機等の負荷を駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0143090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幾つかのHRSGは、フィンを有する導管を有し、この導管を介して排ガスと水との間の伝熱を増大させるように構成されている。残念ながら、フィンが導管から分離すると、HRSGの効率が低下する。加えて、排気流の一部分が所望の温度よりも高温の場合は、幾つかの導管が過剰な蒸気圧を受けることがあり、その結果、HRSGの幾つかの部品が早期摩耗することがある。
【0005】
また、幾つかの発電システムは、発電機からの電気出力及び/又はガスタービンエンジン用の電気始動モータ等の様々な電気システムの動作を調整するように構成されたスイッチギヤを含む。高い電圧と電流がスイッチギヤを通るので、スイッチギヤは通常、発電システムの起動前に熱放射線カメラでスキャンされる。例えば、技術者は、スイッチギヤの各々の電気筺体を開けた後、熱放射線カメラを各筺体の内部に向けて配向し、温度が所望の限度内にあることを確認する。過剰な温度は、スイッチギヤ内の短絡又は接触不良を意味することがあるので、過剰な温度が検出されると是正措置が講じられる。残念ながら、スイッチギヤをマニュアルでスキャンするプロセスには費用と時間がかかるので、発電システムの運転コストが増大する。
【0006】
加えて、幾つかの発電システムは、発電機の電圧を送電用の所望レベルに高めるための、発電機用昇圧変圧器(GSU)を含む。GSUは、相分離母線等の電気接点を介して発電機に電気的に結合される。一般に、相分離母線は、発電機によってGSUに出力される三相電力の各相を個別に伝送するように構成された3つの電気導管を含む。相分離母線の各々の電気導管は通常、筺体内に配置された導電体アセンブリを含む。導電体アセンブリは、筺体内の導電体アセンブリを支持する役割も果たす一連の絶縁体によって、筺体から電気的に絶縁されている。導電体アセンブリは、例えばファスナによって互いに結合された一連の導体を含む。明らかなように、導電体が時間の経過に伴って互いに分離し、それによって導体間の接点で熱が発生することがある。その結果、相分離母線の送電効率が実質的に低下し、発電システムの効率が低下することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
もとより特許を受けようとする発明に該当する幾つかの実施形態を以下に要約する。これらの実施形態に、特許を受けようとする発明の範囲を限定する意図はなく、これらの実施形態は、本発明に想到される形態の概要を提示することのみを意図している。勿論、本発明は、下記のものに類似の、或いは下記のものとは異なる様々な形態を包含する。
【0008】
第1の実施形態において、システムは熱交換器内へと至る流体流路に沿った少なくとも1つの導管に向けて視野(フィールドビュー)を配向するように構成された放射センサを含む。放射センサは、この少なくとも1つの導管の温度を示す信号を出力するように構成される。システムは更に、放射センサに通信可能に結合されたコントローラを含む。コントローラは、信号に基づいて温度を判定し、その温度を閾値範囲と比較して、温度が閾値範囲から外れている場合は、流体流路又は少なくとも1つの導管を通る流体流を調節するように構成される。
【0009】
第2の実施形態において、システムは、複数の部品を有する第1の電気筺体の内部に向けて視野を配向し、第1の電気筺体の内部の温度を示す信号を出力するように構成された放射センサを含む。システムは更に、放射センサに通信可能に結合されたコントローラを含む。コントローラは、信号に基づいて部品間の電気的故障を検出し、電気的故障が検出されると送電経路を第2の電気筺体へと変更するように構成される。
【0010】
第3の実施形態において、システムは、第1組の導電体間の少なくとも1つの接点を含む領域に向けて視野を配向し、その領域の温度を示す信号を出力するように構成された放射センサを含む。システムは更に、放射センサに通信可能に結合されたコントローラを含む。コントローラは、信号に基づいて少なくとも1つの接点における第1組の導電体の少なくとも部分的な分離を検出し、少なくとも部分的な分離が検出されると送電経路を第2組の導電体へと変更するように構成される。
【0011】
全図面を通じて同様の符号で同様の部品を示す添付図面を参照しながら下記の発明を実施するための形態を読むと、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガスタービンと、HRSGと、復水器と、スイッチギヤと、相分離母線と、HRSG、復水器、スイッチギヤ、及び相分離母線内の温度を検出するように構成された熱制御システムと、を有する複合サイクル発電システムの実施形態の概略図である。
【図2】HRSG内の流体導管に向けて配向された熱制御システムの実施形態の概略図である。
【図3】流体導管の上流のHRSGの断面に向かって配向された熱制御システムの実施形態の概略図である。
【図4】スイッチギヤの内部に向けて配向された熱制御システムの実施形態の概略図である。
【図5】相分離母線の導管内の2つの導電体間の接点に向けて配向された熱制御システムの実施形態の概略図である。
【図6】補助配線と二次相分離母線とを含む相分離母線の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の1つ以上の具体的な実施形態を説明する。これらの実施形態の説明を簡単にするために、本明細書では、実際の実施形態の特徴の全てを記載しないことがある。こうしたいかなる実際の実施形態の開発においても、いかなる工学的又は設計上の計画においても、実施形態ごとに異なり得るシステム上及びビジネス上の制約に合わせるといった、開発者の特定の目的を達成するための多くの選択が必要であることを理解されたい。また、このような開発努力は、煩雑で時間がかかるものであるが、本開示による利益を享受する当業者にとっては、日常的な設計、製作、製造上の仕事であることも理解されたい。
【0014】
本発明の様々な実施形態の要素を説明するにあたり、数詞がないことや「前記」などの冠詞は、その要素が1つ以上存在し得ることを意図している。「備える」「含む」「有する」といった表現は、包括的な意味で、列挙した要素以外にも追加の要素が存在し得ることを意図している。
【0015】
本開示の幾つかの実施形態では、熱交換器内の温度変動を検出し、緩和することにより、熱交換器の効率を高め、且つ/又は熱交換器部品の早期摩耗の可能性を低下させることができる。例えば、幾つかの発電システムは、タービン(例えばガスタービン又は蒸気タービン)から熱交換器(例えばHRSG又は復水器)内へと至る流体流路内の少なくとも1つの導管に向けて視野が配向された放射センサを有する熱制御システムを含む。放射センサは、導管から発される熱放射を検出し、導管の温度を示す信号を出力するように構成される。熱制御システムは更に、放射センサに通信可能に結合され、信号に基づいて導管の温度を判定するように構成されたコントローラを含み得る。コントローラは更に、温度を閾値範囲と比較して、導管内の故障を特定するように構成されてもよい。例えば、導管の温度が過剰に高いと導管に過剰な圧力がかかり、結果として導管及び/又はHRSG又は復水器内のその他の部品の早期摩耗が生じることがある。また、導管の温度が過剰に低いことは、導管からフィンの少なくとも一部分が分離し、導管表面上にデブリが堆積していること、及び/又は導管から流体が漏れていることを示すことがある。そのため、熱制御システムは、各導管を連続的に監視することにより、このような温度変動を検出し、HRSG又は復水器を通る流体流を自動的に調節して補償するように構成される。例えば、過剰に高い導管温度が検出されると、コントローラはHRSGを通る排ガス流を減少させ、且つ/又は導管を通る水流を増加させる。逆に、過剰に低い導管温度が検出された場合は、コントローラは、導管を通る水流を減少させる。熱制御システムは、検出された温度変動を補償することにより、熱交換器効率を高め、且つ/又は熱交換器部品の早期摩耗の可能性を実質的に低下又は解消する。
【0016】
本開示の別の実施形態では、スイッチギヤ内の電気故障を検出し、これを自動的に緩和できる。例えば、幾つかの発電システムは、複数の部品を含む第1の電気筺体の内部に向けて視野が配向された放射センサを有する、熱制御システムを含む。放射センサは、部品が発する熱放射を検出し、第1の電気筺体内部の温度を示す信号を出力するように構成される。熱制御システムは更に、放射センサに通信可能に結合された、信号に基づいて部品間の電気故障を検出するように構成されたコントローラを含み得る。電気的故障が検出されると、コントローラは、故障部分をバイパスするように、送電経路を第1の電気筺体から第2の電気筺体に変更する。熱制御システムは、スイッチギヤの温度を連続的に監視し、故障が検出された場合に送電経路を自動的に変更するように構成されているので、発電システムを作動させる前に携帯用の赤外線カメラでスイッチギヤをマニュアルでスキャンする必要がなくなる。そのため、始動動作に付随する運転コストを大幅に削減できる。加えて、発電システムの運転中に電気的故障を検出し、緩和することができるので、1つのスイッチギヤ筺体内で電気的故障が生じたとしても電力を連続的に出力できる。
【0017】
本開示の更に別の実施形態では、母線内の導電体間の接点の温度を監視することによって、電気母線内の導電効率の低下を検出し、これを緩和できる。例えば、幾つかの発電システムは、第1組の導電体間の少なくとも1つの接点を含む領域に向けて視野が配向された放射センサを有する、熱制御システムを含む。放射センサは、接点から発さられる熱放射を検出し、領域の温度を示す信号を出力するように構成される。熱制御システムは更に、放射センサに通信可能に結合された、信号に基づいて少なくとも1つの接点における、第1組の導電体の少なくとも部分的な分離を検出するように構成されたコントローラを含み得る。分離が検出されると、コントローラは、送電先を第1組の導電体から第2組の導電体に変更して、故障部分をバイパスする。熱制御システムは、分離が検出されると直ぐに送電経路を変更するように構成されているので、発電システムの効率的な運転を維持できる。
【0018】
図1は、ガスタービンと、HRSGと、復水器と、スイッチギヤと、相分離母線と、これらのガスタービン、HRSG、復水器、スイッチギヤ、及び相分離母線内の温度を検出するように構成された熱制御システムと、を有する複合サイクル発電システムの実施形態の概略図である。以下、様々な電気システムと流体導管内の故障を検出し、これを緩和するように構成された熱制御システムの実施形態のコンテクストを示す目的で、システム10について説明する。下記の熱制御システムは、その他の発電システム、タービンシステム、処理プラント、或いは、熱交換器、電気筺体、又は電気母線を含むその他のシステム内の故障の検出及び緩和にも利用できることを理解されたい。本実施形態において、システム10は、燃焼器14、タービン16、駆動シャフト18、及び圧縮機20を有するガスタービンエンジン12を含む。燃焼器14は、燃料ノズルから圧力下で噴射される天然ガス等の燃料を受け取る。この燃料が圧縮空気と混合され、燃焼器14内で燃焼することにより、高温の加圧排ガスが発生する。燃焼器14は、この排ガスをタービン16の排気口へと導く。燃焼器14からの排ガスがタービン16を通ると、タービン16のブレードが駆動されて回転し、駆動シャフト18がガスタービンエンジン12の軸に沿って回転する。図示のように、駆動シャフト18は、圧縮機20を含むガスタービンエンジン12の様々な部品に接続可能である。
【0019】
駆動シャフト18は、タービン16と、ブレードを含む圧縮機20のロータとを接続する。これにより、タービン16内のタービンブレードが回転することで、タービン16と圧縮機20とを接続する駆動シャフト18が、圧縮機20内のブレードを回転させる。圧縮機20のブレードが回転することにより、圧縮機20は、吸気口から受け取った空気を圧縮する。圧縮空気は、その後、燃焼器14に送られ、燃料と混合され、燃焼を促進する。駆動シャフト18は、電力を生成する発電機22にも接続される。図示のように、スイッチギヤ24は、発電機22に結合されており、その他の機能の中でもとりわけ、発電機22から出力される電力及び/又はガスタービンエンジン12の始動等、発電システム10の幾つかの機能を調整するように構成される。以下に詳細に記載するように、スイッチギヤ24は、発電システムの機能を調整する、スイッチ及び回路遮断器を含む様々な部品を含む。
【0020】
本実施形態では、相分離母線26は、発電機22を発電機昇圧変圧器(GSU)28に結合する。GSU28は、配電網30を通して送電するための所望レベルに発電機電圧を昇圧するように構成される。更に、図示のように、相分離母線26は、発電機22から出力される三相電力22の各相をGSU28に個別に伝送するように構成された3つの電気導管を含む。相分離母線26の各々の電気導管は、筺体内に配置された導電体アセンブリを含む。導電体アセンブリは、筺体内の導電体アセンブリを支持する役割も果たす一連の絶縁体によって、筺体から電気的に絶縁されている。導電体アセンブリは、例えばファスナによって互いに結合された一連の導体を含む。本実施形態では、発電機22からGSU28に電力を伝送するにあたり相分離母線26を使用しているが、別の実施形態ではその他の母線を使用してもよいことを理解されたい。
【0021】
ガスタービンエンジン12からの排ガス32は、HRSG34へと導かれる。以下に詳述するように、HRSG34は、HRSG34を通る排ガス32の流れに対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に、水等の二次流体を導くように構成された複数の導管を含む熱交換器である。排ガス32が導管を流れると、熱が排ガスから水に伝達され、蒸気が発生する。加えて、排ガスの温度が大幅に低下する。HRSG34を通過した後、冷却された排ガスは、矢印38で示すように、排気筒36から大気中に放出される。図示のように、発生した蒸気40は、蒸気タービン42へと導かれる。
【0022】
高圧蒸気40が蒸気タービン42を通過すると、タービン42内のブレードが駆動されて回転し、第2の発電機44を駆動させる。なお、本実施形態は、2つの発電機22及び44を含むが、別の実施形態では、ガスタービンエンジン12及び蒸気タービン42が同じ負荷に結合されていてもよい。図示のように、第2の発電機44の出力を調整するために、第2のスイッチギヤ46が、第2の発電機44に結合されている。加えて、第2の相分離母線48と第2のGSU50が、第2の発電機44から出力された電力を送電網30に送る役割を果たす。
【0023】
蒸気が蒸気タービン42を通過すると、圧力が低下して、低圧蒸気52がタービン42から放出される。図示のように、低圧蒸気52は復水器54内に流入し、蒸気が凝縮される。HRSG34と同様に、復水器54は、蒸気の流れに対して交差する(例えば実質的に垂直な)方向に水等の二次流体を導くように構成された複数の導管を含む熱交換器である。蒸気が導管を流れると、蒸気の熱が水56に伝達されることで、蒸気が凝縮されて水58になる。水58は、HRSG34に戻り、排ガス32で加熱されて、より高圧の蒸気40が生成される。冷却水56は、復水器54内で加熱され、熱水60となって流出する。熱水60は、この熱水60を冷却して復水器54用の冷水56を生成する冷却塔62へと導かれる。
【0024】
図示のように、発電システム10は、HRSG34、復水器54、スイッチギヤ24及び46、及び/又は相分離母線26及び48内の温度を判定するように構成された熱制御システム64を含む。本実施形態において、熱制御システム64は、各々が発電システム10のそれぞれの対象部品に向けて配向された、図示の熱放射センサ66等の6つの放射センサを含む。具体的には、1つの熱放射センサ66が、HRSG34内の導管に向けて配向され、導管の温度を測定する。同様に、第2の熱放射センサ66が、復水器54内の導管に向けて配向され、導管の温度を判定する。加えて、第3及び第4の熱放射センサ66が、スイッチギヤ24及び46に向けて配向されており、測定されたスイッチギヤ部品の温度に基づいて、電気故障を検出する。更に、第5及び第6の熱放射センサ66が、相分離母線26及び48に向けて配向されており、測定された相分離母線導管の接点の温度に基づいて導電体の分離を検出する。本実施形態において、熱放射センサ66は、対象部品の温度を示す信号を出力するように構成される。例えば、以下に詳細に説明するように、各熱放射センサ66は、検出された熱放射に基づいて温度を出力するように構成されたサーモパイルであってよい。幾つかの実施形態において、熱放射センサ66は、サーモパイル素子の配列(即ち、サーモパイルアレイ)から成り、対象の物体の多次元(例えば二次元又は三次元)の温度プロファイルを構築できる。発電システムの様々な部品内の温度を監視することで、熱制御システム64は部品内の故障を検出でき、それによって保守作業を容易にできる。様々な発電システム部品内の温度を監視することにより、熱制御システム64は、部品内の故障を検出し、これらの故障を自動的に緩和するので、発電システム10を連続的且つ効率的に運転できるようになる。
【0025】
明らかなように、熱放射センサ66は、物体からの電磁エネルギーを測定することで、その物体の温度を判定する。例えば、センサ66は、赤外スペクトルの範囲内の波長を有する熱放射を測定できる。以下に詳述するように、或る赤外線放射の強さが物体の温度に比例することがある。幾つかの実施形態において、熱放射センサ66は、このような放射を検出して、温度を示す信号を出力するように構成される。また、明らかなように、様々な熱放射センサの構成を用いて、発電システム10内の部品の温度を判定できる。前述のように、センサ66は、サーモパイル又は一連のサーモパイル素子(即ち、サーモパイルアレイ)から成る。明らかなように、サーモパイルは、より強い信号出力を得るために直列接続された、複数の熱電対から成る。熱電対は、熱接点と冷接点との間で起電力(emf)を生じることによってこれらの接点間の温度差を測定する。例えば、熱接点を物体の方に向けて熱放射を測定し、冷接点の温度が周囲温度と実質的に等しくなるように冷接点をヒートシンクに結合させる。熱電対が直列に接続されているので、サーモパイルは全ての熱電対のemfを総計して、より高い電圧出力を供給する。サーモパイル素子の配列を設置することで、各サーモパイル素子がそれぞれの監視領域の温度を示すことを用いて、対象の物体の二次元又は三次元の温度プロファイルを生成できる。幾つかの実施形態において、サーモパイル又はサーモパイルアレイは、サーモパイル又はサーモパイル素子が装置の表面上に形成された、単一の固体装置であってよい。別の実施形態では、放射パイロメーター、赤外線検出器(例えば電荷結合素子(CCD)、焦点面アレイ素子(FPA)等)、又は対象の物体の温度を出力するように構成されたその他の熱放射センサを用いてよい。
【0026】
本実施形態では、各熱放射センサ66は、コントローラ68に通信可能に結合されている。コントローラ68は、熱放射センサ66によって出力された信号に基づいて対象の物体の温度を判定するように構成される。幾つかの実施形態においては、熱放射センサ66が、対象の物体の平均温度を示す信号を出力するように構成されたサーモパイルである。このような実施形態においては、平均温度を閾値範囲と比較して、対象の物体内の故障を特定するようにコントローラ68を構成してもよい。例えば、HRSG34内の導管の温度が閾値範囲の下限に満たないとコントローラ68が判定すると、コントローラ68は、導管が損傷(例えば流体漏れ、フィンの離脱等)していると判定する。逆に、導管の温度が閾値範囲の上限を超えているとコントローラ68が判定すると、コントローラ68は、導管に過剰な圧力がかかっており、導管の耐用寿命が短縮する可能性があると判定する。加えて、スイッチギヤ24又は46の温度が閾値を上回っているとコントローラ68が判定すると、スイッチギヤ24又は46内の部品間に電気故障が存在する可能性がある。また、相分離母線26又は48の導管の、導体間の接点の温度が閾値を超えているとコントローラ68が判定すると、導体どうしが分離していることによって相分離母線26又は48を通る電力の伝送効率が低下している可能性がある。また別の実施形態では、熱放射センサ66が、サーモパイルアレイを形成する複数のサーモパイル素子から成る。このような実施形態において、センサ66は、対象の物体の多次元(例えば二次元又は三次元)の温度プロファイルを示す信号を出力することにより、コントローラ68に追加の温度情報を提供する。
【0027】
本実施形態では、単一の熱放射センサ66が発電システム10の各部品(例えばHRSG34、スイッチギヤ24又は46、及び相分離母線26又は48)に向けて配向されているが、別の実施形態では、複数のセンサ66を使用して、各部品の様々な領域を監視してもよいことを理解されたい。例えば、複数の熱放射センサ66をHRSG34及び/又は復水器54の様々な導管に向けて配向してもよい。加えて、1つ以上の熱放射センサ66を、スイッチギヤ24又は46内の各々の電気筺体内部に向けて配向してもよい。更に、1つ以上の熱放射センサ66を相分離母線26又は48内の各導管に向けて配向してもよい。
【0028】
以下に詳述するように、コントローラ68は、発電システム10の部品内で検出された故障を緩和するように構成される。例えば、HRSG導管の温度が閾値範囲の上限を超えると、コントローラ68は、ガスタービンエンジン12からHRSG34内へと至る排ガス32の流量を低下させる。図示のように、コントローラ68は、燃焼器14に通信可能に結合される。幾つかの実施形態において、コントローラ68は、燃焼器14への燃料流を調整することにより、ガスタービンエンジン12を減速させるように構成される。このような実施形態では、過剰な導管温度がHRSG34内において検出されると、コントローラ68は燃焼器14への燃料流を減少させることにより、HRSG34への排ガス32の流量を低下させる。明らかなように、HRSG34内への排ガス流が減少すると、導管への伝熱が減少するので、導管温度が低下する。別の実施形態において、コントローラ68は、燃焼器14内の燃料と空気との混合比を調整することにより、排ガス32の温度を調節するように構成される。例えば、過剰な導管温度が検出されると、排ガス温度を低下させるために、コントローラ68で希薄混合(例えば理論比よりも低い混合比)に設定する。
【0029】
加えて、コントローラ68は、HRSG34に通信可能に結合されており、導管内への水58の流量を調整する。例えば、平均導管温度が閾値範囲の上限を超える場合は、追加の冷却水58を導管に供給して導管温度を低下させることができる。逆に、平均導管温度が閾値範囲の下限より低い場合は、導管への水58の流量を低減させることができる。幾つかの実施形態では、各導管又は導管群への水流を個別に調節可能にすることで、導管間の熱勾配を小さくできる。例えば、排ガス流32の幾つかの領域が排ガス流の残りの領域よりも高温の場合は、より高温に曝されている導管に追加の水を供給することで、各導管の温度を所望の範囲内に維持できる。各導管の温度を制限することにより、過圧及び/又は熱応力による早期摩耗の可能性を実質的に低下させること又は解消することができる。更に、各導管の温度を閾値範囲の下限よりも確実に高温に維持することにより、HRSG34を効率的に運転できるようになる。
【0030】
同様に、コントローラ68は、復水器54に通信可能に結合されており、導管内への水56の流量を調整する。例えば、平均導管温度が閾値範囲の上限を超える場合は、追加の冷却水56を導管に供給して導管温度を低下させる。逆に、平均導管温度が閾値範囲の下限よりも低い場合は、導管への水56の流量を減少させる。幾つかの実施形態において、各導管又は導管群への水流を個別に調節可能にすることで、導管間の熱勾配を小さくできる。例えば、蒸気流52の幾つかの領域が蒸気流の残りの領域よりも高温の場合は、より高温に曝される導管に追加の水を供給することで、各導管の温度を所望の範囲内に維持できる。各導管の温度を制限することにより、過圧及び/又は熱応力による早期摩耗の可能性を実質的に低下させること又は解消することができる。更に、復水器54内の各導管を確実に実質的に等しい温度に維持することにより、蒸気流52内の密度変動を低減させ、蒸気タービンブレードの早期摩耗の可能性を実質的に低下させること又は解消することができる。
【0031】
図示のように、コントローラ68は、スイッチギヤ24及び46にも通信可能に結合される。以下に詳述するように、スイッチギヤ24及び26は、複数の電気筺体を含む。過剰な高温が1つの電気筺体内で検出されると、コントローラ68は、送電経路をスイッチギヤ24及び46内の別の筺体に変更する。図示の実施形態では、第1の発電機22が二次スイッチギヤ69を含み、第2の発電機44が二次スイッチギヤ71を含む。コントローラ68が一次スイッチギヤ24又は46内に電気故障を検出すると、コントローラ68は、発電システム10を連続的に運転できるように、送電経路を自動的に二次スイッチギヤ69又は71に変更する。幾つかの実施形態において、コントローラ68は、第1の電気故障が検出された場合に、送電経路をスイッチギヤ24又は46内の1つの筺体から別の筺体に変更し、次の故障が検出された場合には、送電経路を二次スイッチギヤ69又は71に変更するように構成される。
【0032】
更に、コントローラ68は、相分離母線26及び48に通信可能に結合される。前述のように、各相分離母線26及び48は、発電機22による三相電力出力の各相をGSU28に個別に伝送するように構成された3つの導管を含む。幾つかの実施形態では、各相分離母線26及び48が、3つの主配線の予備としての役割を果たすように構成された補助配線を含む。例えば、コントローラ68が1つの主配線内に導体分離を検出した場合に、コントローラ68で送電先を補助配線に変更できる。別の実施形態では、主配線内で故障が検出された場合に電力を供給できるように、二次相分離母線を設ける。このような実施形態において、コントローラ68は、1つ以上の主配線内で導管分離が検出されると、送電先を主配線から二次相分離母線に変更する。別の実施形態において、コントローラ68は、第1の故障が検出された場合に送電先を1つの主配線から補助配線に変更し、次の故障が検出された場合には送電先を二次相分離母線に変更するように構成される。
【0033】
本実施形態は更に、コントローラ68に通信可能に結合されたユーザーインターフェース70を含む。ユーザーインターフェース70は、各熱放射センサ66により検出された温度を表示するように構成された、数字表示器及び/又は温度を時間の関数として表示するように構成されたグラフィカルインターフェースを含み得る。このようにして、オペレータは、温度プロファイルを監視し、温度が閾値範囲から外れているか否かを判定できる。加えて、ユーザーインターフェース70は、過剰な高温又は低温が検出された場合にオペレータに警告を行うように構成された視覚及び/又は可聴アラームを含み得る。例えば、HRSG34内の導管の温度が閾値範囲の下限に満たないこと、又は閾値範囲の上限を超えていることをコントローラ68が判定すると、音声及び/又は視覚アラームが作動する。
【0034】
図2は、HRSG34内の流体導管に向けて配向される熱制御システム64の実施形態の概略図である。図示のように、排ガス32は、下流方向72にHRSG34内へと流入する。HRSG34は、下流方向72に対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に、水等の二次流体を導くように構成された複数の導管74を含む。排ガス32が導管74を通ると、熱が排ガス32から水に伝達され、蒸気が生成される。図示のように、導管74は、排ガス32と水との間の伝熱を促進するように構成されたフィン76を含む。幾つかの実施形態では、フィン76は締り嵌めによって導管74に結合される。例えば、導管74の外径よりもやや大きい内径を有するフィン76を、導管74に沿った所望の位置に配置する。そして、導管74に玉軸受を押し込み、導管76の直径が膨張してフィン76の内径よりも大きくなるようにする。最終的には、実質的にフィン76が導管74に堅固に結合される。本実施形態は、円形のフィンを使用しているが、別の実施形態では、別のフィン構造(例えば多角形、楕円形等)を使用してもよい。加えて、別の実施形態では、フィン76をその他の技術(例えば溶接、締結等)を用いて結合してもよい。更に、本実施形態では、4つのフィン76が各導管74に結合されているが、別の実施形態では、実質的に更に多数のフィン76を使用してもよいことを理解されたい。例えば、幾つかのHRSG構造は、導管74の長さ方向に沿って1インチあたり1、2、3、4、5個、又はそれ以上のフィン76を使用してもよい。別の実施形態では、フィン76が導管74に全く結合されていなくてもよい。
【0035】
本実施形態では、水58は、第1のマニホルド78から導管74に供給され、蒸気40は第2のマニホルド80から放出される。前述のように、蒸気40は、発電機44を駆動させるべく蒸気タービン42へと導かれ、冷却された排気は、排気筒36へと導かれる。図示のHRSG34内には、3つの導管74が用いられているが、明らかなように、その他のHRSG構成では、それよりも大幅に多数の導管を使用可能である。幾つかの実施形態では、導管74は、下流方向72且つ流路に対して垂直な方向に沿って分布する。更に他の実施形態において、HRSG34は、別途の蒸気タービン用の蒸気を生成するように構成された複数の各段を含み得る。図示の熱放射センサ66は、上流の導管74に向けて配向されているが、別の実施形態では、HRSG34内のその他の導管74を監視できることを理解されたい。
【0036】
図示の構成において、熱放射センサ66は、HRSG34の外側に配置されており、これによって、熱制御システム64はHRSG34を通過する高温の排ガス32から保護されている。図示のように、HRSG34は、熱放射センサ66がHRSG34内の導管74により発せられる熱放射を受け取るように構成された覗き窓82を含む。明らかなように、覗き窓82は熱放射センサ66により測定される波長を実質的に透過させる材料で構成される。例えば、センサ66が赤外線スペクトルの範囲内の熱放射を監視するように構成される場合、覗き窓82は、例えば赤外線放射を実質的に透過させるゲルマニウム又はケイ素等の材料により構成される。明らかなように、材料の選択は、HRSG34を通る流体流の予想温度にも依存し得る。幾つかの実施形態では、覗き窓82は、摂氏約50、100、300、500、600、700、800、900、1000、1100、1100、又は1200度以上の温度よりも高温の流体温度に曝されることがある。そのため、透過性材料は、こうした温度に耐えるように選択される。覗き窓82により、センサ66をHRSG34の外側に設置できるので、熱放射センサ66は、高温の排ガスに曝されることなく、HRSG34内の導管74の温度を測定でき、したがって、センサ66の運用寿命を実質的に延ばすことができる。
【0037】
本実施形態では、フィルタ84及びレンズ86が覗き窓82と熱放射センサ66との間に配置される。幾つかの実施形態では、センサ66は、導管74により発せられる熱放射を測定するように構成されたサーモパイルから成る。こうした実施形態において、サーモパイルは、より強い出力信号を供給するために、直列に電気接続された複数の熱電対を含む。明らかなように、サーモパイルは、様々な波長の熱放射を検出できる。例えば、幾つかのサーモパイルは、約0.8〜40ミクロンに亘る赤外線スペクトルの範囲内の電磁波長を検出できる。これもまた明らかなように、赤外線スペクトルの範囲内の特定の部分集合を構成する波長が温度測定に好適なことがある。そのため、帯域フィルタ84を用いて、センサ66に入射する波長範囲を制限できる。例えば、幾つかの実施形態において、帯域フィルタ84は、約2〜20、4〜18、6〜16、8〜14、又は約7.2〜12.4ミクロンの範囲を外れた波長を有する電磁放射を遮断するように構成される。そのため、フィルタ84は、測定された温度に比例する強さの信号をサーモパイルが出力するに適した波長範囲を有する熱放射をセンサ66まで通過させる。センサ66は、HRSG34の導管74の温度を示す信号をコントローラ68に出力する。
【0038】
明らかなように、別の実施形態では、その他の波長範囲を有するその他の帯域フィルタを用いてもよい。また、幾つかの実施形態では、ハイパスフィルタ又はローパスフィルタを用いても、フィルタを除去してもよい。また別の実施形態では、フィルタを覗き窓82に組み込んでもよい。更に、本実施形態では、サーモパイルを利用した熱放射センサ66を用いているが、別の実施形態では電荷結合素子(CCD)、焦点面アレイ(FPA)、又はパイロメーター等のその他の検出器素子を使用してもよい。
【0039】
本発明の熱制御システム64は更に、熱放射をセンサ66上に集束させるように構成されたレンズ86等の光学合焦装置を含む。明らかなように、レンズ86は、プラスチック又はガラス等の任意の適当な材料により構成される。幾つかの実施形態では、レンズ86をフィルタ84と組み合わせて単一の要素にできる。また別の実施形態では、レンズ86を除去して、熱放射を熱放射センサ66上へと直接通過させるようにしてもよい。
【0040】
本実施形態は更に、図示の鏡88等の第2の光学合焦装置を含む。鏡88は、導管74からの熱放射を熱放射センサ66上へと導くように構成される。幾つかの実施形態において、鏡88は、基板(例えばガラス、プラスチック等)、及び基板上に設けられた反射コーティング(例えば銀、クロム等)を含み得る。或いは、鏡88を、研磨されたステンレス鋼等の反射材料により形成してもよい。本実施形態では、凹面鏡88を用いて所望の視野90を得る。鏡88の形状と熱放射センサ66の位置により、角度92を有する視野90が得られる。例えば、幾つかの実施形態において、角度92は、約5、10、20、40、60、80、100、120、140、又は160度以上であってよい。幾つかの実施形態において、熱放射センサ66をHRSG34の断面94全体に向けて配向することで、断面94内の各導管74の平均温度が得られる。そのため、角度92は、視野90が所望の測定位置においてHRSG断面94全体を含むように選択される。結果として、熱制御システム64は、視野90内の各導管74における流体の漏れ、フィンの離脱、及び/又は過剰な圧力を検出できる。明らかなように、別の実施形態では、凸面鏡又は実質的に平面状の鏡を用いて、熱放射をセンサ66に向けてもよい。また別の実施形態では、鏡88を除去してもよく、熱放射センサ66を導管74に向けてもよい。このような実施形態において、レンズ86を設ける場合、このレンズ86によって、レンズ86の形状及び光学的特性に基づいた所望の視野90を構築できる。
【0041】
前述のように、本発明の熱放射センサ66は、検出された熱放射を出力信号に変換するように構成されたサーモパイルを含む。サーモパイルは、直列に接続された複数の熱電対を含むので、サーモパイルは、視野90内の領域の温度に比例する強さを有する電気信号を出力する。センサ66は、コントローラ68に対して、HRSG34内の導管74の温度を示す信号を出力する。コントローラ68はこの信号を受け取り、信号に基づいて(例えばルックアップテーブル、アルゴリズム等により)HRSG断面94内の導管74の平均温度を判定するように構成される。本実施形態において、コントローラ68は、表示96とアラーム98を含むユーザーインターフェース70に通信可能に結合される。表示96は、熱放射センサ66により検出された温度を時間の関数として表したグラフを提示するように構成される。
【0042】
図示のように、表示96は、時間を表すx軸102と温度を表すy軸104とから成るグラフ100を含む。前述のように、センサ66は、視野90内の導管74の平均温度を示す信号を出力するように構成される。本実施形態では、グラフ100は、導管の平均温度を時間の関数として表す曲線106を含む。グラフ100は、導管74の時間平均温度を示す破線108も含む。明らかなように、排ガスの温度は、HRSG34の断面94の全域で異なる。結果的に、幾つかの導管74が所望の閾値を超える温度に曝されることから、導管74内に過剰な蒸気圧が生じることがある。前述のように、過剰な蒸気圧は、導管74及び/又はHRSG34内のその他の部品の早期摩耗に繋がることがある。したがって、グラフ100は、導管の所望の最高温度を示す上限閾値110を含む。曲線106が上限閾値110を超える場合は、視野90内の少なくとも1つの導管74内に、過剰な蒸気圧が存在する可能性がある。
【0043】
逆に、フィン76が少なくとも部分的に導管74から離脱すると、排ガス32と導管74との間の伝熱が減少するので、視野90内の平均温度が低下する。同様に、導管74に粒子状物質(例えば塵、未燃炭化水素等)が堆積しても、導管74の温度が低下することがある。加えて、導管74内に亀裂が生じると、水が排ガス流中に漏出し、導管の温度低下に繋がることがある。したがって、グラフ100に、管の所望の最低温度を示す下限閾値112を含めてもよい。曲線106が下限閾値112を割り込む場合は、導管74内の排ガス32と水との間の伝熱が減少しているため、HRSG34の効率が低下している可能性がある。そのため、上限閾値110は、閾値範囲の上限を画定し、下限閾値112は閾値範囲の下限を画定する。温度を閾値範囲内に維持することにより、確実にHRSG34を効率的に運転し、且つ/又はHRSG部品の摩耗を低減できる。
【0044】
図示の実施形態では、単一の熱放射センサ66をHRSG34の断面94の全体に向けて配向している。その結果、センサ66は、視野90内の各導管74の平均温度を示す熱放射を受け取る。しかし、別の実施形態では、各々のセンサ66がHRSGの断面94の様々な領域に向けて視野90が配向されるように構成された、複数のセンサ66を使用してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、単一の導管74の熱放射を測定するように各センサ66を構成してもよい。このような実施形態では、どの導管74が閾値範囲外の温度になっているか否かを特定するようにコントローラ68を構成することにより、緩和動作が更に容易になる。また別の実施形態では、複数のセンサから成る熱制御システム64の各センサ66が、視野90内の2、3、4、5、6、7、8個又はそれ以上の導管74を監視する。
【0045】
温度が上昇して上限閾値110を超えるか、又は温度が低下して下限閾値112を割り込むと、コントローラ68は、ユーザーインターフェース70内のアラーム98を作動させる。前述のように、アラーム98は、検出された状態をオペレータに警告するように構成された、可聴アラーム及び/又は視覚アラームであってよい。また、コントローラ68を、検出された条件を後の解析のために記録するように構成してもよい。加えて、コントローラ68で、HRSG34及び/又は導管74を通る流体流を調節することにより、過剰な高温又は過剰な低温を補償できる。例えば、導管温度が上限閾値110を超える場合は、コントローラ68でタービンエンジン出力を低下させることにより、HRSG34を通る排ガス流を減少させる。また、コントローラ68で、導管74を通る水流を増加させて更なる熱を排ガス32から水58に伝達することにより、導管74を冷却できる。逆に、導管温度が下限閾値112に満たない場合は、導管74への水58の流量を低下させる。導管74を通る水流を容易に調節できるように、コントローラ68は、第1のマニホルド78の上流に配置された弁113に通信可能に結合される。この弁の位置を変更することにより、コントローラ68で導管74内への水流を調整し、導管温度を閾値範囲内に維持できる。
【0046】
なお、熱制御システム64は、HRSG34内の温度変動を検出及び/又は緩和するための、その他の部品を有してもよい。例えば、幾つかの実施形態において、熱電対がコントローラ68に通信可能に結合されており、表面温度を示す信号を出力するように構成される。例えば、到来する水58の温度を監視するために、熱電対が第1のマニホルド78に結合される。コントローラ68は、水58の温度と断面94内の温度とを比較して、水58と排ガス32との間の伝熱効率を算出するように構成される。伝熱効率が低下し、閾値に満たない場合は、コントローラ68がアラーム98を作動させ、オペレータに警告を行う。
【0047】
以上、熱制御システム64をHRSG34に関連して記載したが、ガス化装置、合成ガス冷却器、又はガス処理装置にみられるような、その他の熱交換器内の導管の過剰な温度を検出し緩和するためにも熱制御システム64を使用できることを理解されたい。例えば、熱制御システム64を使用して、復水器54内の導管の過剰な温度を検出し、これを緩和できる。HRSG34と同様に、復水器54は、復水器54を通る蒸気の流れと交差する方向に水等の二次流体を搬送するように構成された複数の導管を含む。蒸気が導管を流れると、蒸気からの熱が水56に伝達され、これによって蒸気が凝縮して水58になる。HRSG34と同様に、復水器54を流れる蒸気が過剰に高温な場合、導管に過剰な圧力がかかることがある。加えて、導管に漏れがあると復水器54の効率が低下する。結果的に、熱制御システム64が復水器54内の上記のような欠陥を検出し、これを補償するように復水器54を通る水流を自動的に調節できる。
【0048】
図3は、流体導管74の上流においてHRSG34の断面に向かって配向された熱制御システム64の実施形態の概略図である。前述のように、排ガス32は、下流方向72にHRSG34に流入する。HRSG34は、下流方向72に対して交差する(例えば実質的に垂直な)方向に水等の二次流体を導くように構成された複数の導管74を含む。排ガス32が導管74を流れると、熱が排ガス32から水に伝達されることで、蒸気が生成される。本実施形態では、水58が第1のマニホルド78から導管74に供給され、蒸気40が第2のマニホルド80から放出される。その後、蒸気40は蒸気タービン42の方へと流れ、冷却された排ガスは排気筒36の方へと流れる。本実施形態では4つの導管74を用いるが、別の実施形態ではより多数又は少数の導管74を用いてもよいことを理解されたい。例えば、幾つかのHRSG34は、約50、75、100、125、150、175、又は200以上よりも多数の導管74を含み得る。
【0049】
図示の熱放射センサ66は、HRSG34の断面全体がセンサ66の視野90内に入るように、導管74に向けて配向される。このようにして、センサ66で各導管74の温度を監視することによって、特定の測定箇所における実質的にあらゆる温度変化を確実に検出できる。前述のように、熱放射センサ66は、視野90内の導管74の平均温度を測定するように構成された単一のサーモパイルから成る。しかし、図示の実施形態では、熱放射センサ66は、各々のサーモパイル素子が断面94の様々な領域に向けて配向された複数のサーモパイル素子114から成る。この構成では、熱放射センサ66が各領域の温度を示す信号を出力することで、コントローラ68が断面94の多次元の温度プロファイル(例えば二次元又は三次元のプロファイル)を構築する。
【0050】
本実施形態において、熱放射センサ66は、4×4のマトリックス状のサーモパイル素子114を含む。この構成では、熱放射センサ66の各列をそれぞれの導管74に向かって配向することにより、各導管の温度プロファイルを個別に監視できるようになっている。しかし、別の熱放射センサ66は、N×N又はM×Nのマトリックスを形成する、より多数又は少数のサーモパイル素子114を含み得ることを理解されたい。例えば、幾つかの熱放射センサ66は約1〜1000以上の行及び/又は約1〜1000以上の列を含み得る。加えて、図示の放射センサは、矩形のアレイを成す素子114から成るが、幾つかの熱放射センサ66は円形、楕円形、又は多角形のアレイを成す素子114を含み得ることを理解されたい。また別の熱放射センサ(例えばCCD、FPA、パイロメーター等)で、熱放射センサ66の素子を形成してもよいことも理解されたい。また、前述のように、センサ66に、HRSG34の様々な二次元領域に向かって配向された複数のN×N又はM×Nの素子アレイを含めることにより、コントローラ68でHRSG34内の導管74の三次元温度プロファイルを生成するようにしてもよいことを理解されたい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上の二次元アレイを流れの方向に沿って緊密に離間させることで、L×N×N又はL×M×N個の三次元センサ66を構築できる。
【0051】
明らかなように、熱制御システム64の全体的な感度は、その他のファクターの中でもとりわけ、サーモパイル素子114の感度、熱放射センサ66の精度、システム64内の光学ノイズ及び/電気ノイズ、コントローラ68内の信号コンディショナの精度、熱放射センサ光学系の品質、各サーモパイル素子の視野、及び/又は温度を計算するためにコントローラ68が用いる技術に依存することがある。例えば、幾つかの実施形態において、熱制御システム64は、摂氏約2、1、0.75、0.5、又は0.25度以下の温度変動を識別可能である。そのため、熱制御システム64で、HRSG効率が大幅に低下する前にHRSG導管74内の熱変動を検出し、これを緩和することにより、発電システム10の効率を維持することができる。熱制御システム64の感度は、少なくとも部分的には各サーモパイル素子114の視野に依存するので、より多数のサーモパイル素子114を用いることによって熱制御システムの感度を高めることができることを理解されたい。このようにして、各サーモパイル素子114に流体流路のより小さい領域を監視させることにより、各素子114の感度を高めることができる。
【0052】
図2を参照して上述した熱制御システム64と同様に、図示の熱制御システム64は、コントローラ68に通信可能に結合されたユーザーインターフェース70を含む。図示のユーザーインターフェース70は、センサ66の視野90内の各領域の温度を数的に表現して表示するように構成された数字表示116を含む。本実施形態において、表示116は、各監視領域の平均温度と断面94の平均温度との差を出力するように構成される。別の実施形態では、各領域の絶対温度を表示するように構成された表示116を含めてもよいことを理解されたい。本実施形態では、温度値を摂氏温度で示す。
【0053】
本実施形態では、監視対象の各領域と視野90の平均温度との差を閾値と比較することによって、1つの導管74内の過剰な温度を検出するようにコントローラ68を構成している。図示の実施形態において、導管74間での所望の最高温度変化に対応する閾値は、摂氏5度である。前述のように、1つの導管74内の温度が過剰なときは、過剰な圧力がかかり、それによってHRSG34内の導管74及び/又はその他の部品(例えばマニホルド、コネクタ等)の耐用寿命が短縮することがある。明らかなように、別の実施形態では、閾値を更に低くしたり高くしたりしてもよい。図示の熱放射センサ66は、4行のサーモパイル素子114を含むので、各行でそれぞれの導管74の温度を測定する。図示のように、表示116の左列内の各温度は、平均温度から摂氏5度未満の温度差であることがわかる。同様に、右列及び左から2つ目の列内の各温度差は、5度の許容差の範囲内である。そのため、表示116からわかるように、対応する導管74は所望の許容差の範囲内の流体流を受け取っている。これに対して、右から2つ目の導管74に対応する温度測定値は、この導管74が周囲の導管74よりも実質的に高温の流体流を受け取っていることを示している。具体的には、右から2つ目の導管74に対応する各領域の温度は、平均温度よりも摂氏5度超高い。したがって、コントローラ68は、導管74の過剰な温度変動を検出すると、アラームを作動させ、HRSG34内への流体流を減少させ且つ/又は影響を受けた導管74への水流を増加させる。別の実施形態では、各導管74の温度を閾値と直接比較して、どの導管74に過剰な圧力がかかっているかを判定してもよい。
【0054】
加えて、監視対象の各領域の温度と視野90の平均温度との差を閾値と比較することによって、1つの導管74内が過剰に低温であることを検出するようにコントローラ68を構成してもよい。例えば、導管74の温度が視野90の平均温度よりも摂氏5度超低くなると、コントローラ68はオペレータにアラームを発するアラームを作動させ、且つ/又は影響を受けた導管への水流を減少させる。前述のように、1つの導管74の温度が過剰に低いことは、HRSG34内の故障を示していることがある。例えば、1つ以上のフィン76が少なくとも部分的に導管74から離脱すると、導管74の温度は所望値よりも低くなる。加えて、導管74内に亀裂が生じると、導管74から水が漏出し、それによって導管74の温度が更に低下する。更に、導管74に粒子状物質(例えば塵、未燃炭化水素等)が堆積すると、導管74の温度が低下することがある。このような状態を検出することによって、コントローラ68は、発電システム10が重大な効率損を被る前に、是正措置を講じるようにオペレータにアラームを発し、且つ/又はHRSG34及び/又は導管74を通る流体の流れを自動的に調節する。
【0055】
更に別の実施形態において、時間の関数として各導管74の温度を解析することによりHRSG34内の故障を特定するように、コントローラ68を構成してもよい。例えば、前述のように、導管の温度が過剰になると導管74に過剰な圧力がかかることがある。明らかなように、このような過剰な圧力によって導管74内に亀裂が生じることがある。亀裂によって水が導管74から漏出すると、導管74の温度が低下する。そこで、過剰に高温の導管74を通知し、引き続き温度が低下する場合は導管74内の漏れを特定するようにコントローラ68を構成してもよい。このような構成により、各導管74の瞬間的な温度を監視する場合よりも、正確に漏れを検出できる。加えて、各導管74の温度を時間の関数として損傷モデル内で利用して、HRSG34の信頼性を予測し、且つ/又は前後の保守作業間の継続時間を試算することができる。
【0056】
本実施形態において、コントローラ68は、各導管74内へと至る水58の流れを調整するように構成された一連の弁117に通信可能に結合される。図示のように、各弁117は、第1のマニホルド78とそれぞれの導管74との間に配置される。この構成では、各導管74への水流を個別に調整できる。例えば、図示の実施形態では、右から2つ目の導管74の温度が所望の最高動作温度を超える。そこで、コントローラ68で弁117を調節し、問題の導管74への水流を増加させることによって、導管温度を低下させる。逆に、導管74の温度が所望の最低動作温度よりも低い場合は、コントローラ68で弁117を調節して問題の導管74への水流を減少させることにより、導管温度を上昇させることができる。このようにして、HRSG34内の各導管74を所望の温度範囲内に維持できる。図示の実施形態の各導管74は、それぞれの導管74内に流入する水流を調整するように構成された弁117を含むが、別の実施形態では、単一の弁117に結合された1群の導管74を含み、弁117でその群への水流を調節できるようにしてよいことを理解されたい。
【0057】
図4は、スイッチギヤ24の内部に向けられる熱制御システム64の実施形態の概略図である。前述のように、スイッチギヤ24は、発電機22及び/又はガスタービンエンジン12用の電気始動モータからの電気出力等の、様々な電気システムの動作を調整するように構成される。図示のように、スイッチギヤ24は、第1の導電体120と第2の導電体122とに結合された電気筺体118を含む。本実施形態において、各導電体120、122は、第1の筺体118内のそれぞれのコネクタ124に電気的に結合されている。一方、コネクタ124は、内部導体128を介して第1の筺体118内の部品126に電気的に結合されている。明らかなように、部品126は、各種スイッチ、回路遮断器、及び/又は第1の導体120と第2の導体122との間の電流の流れを調整するように構成されたその他の回路を含み得る。例えば、発電システム10内に故障が検出された場合は、部品126によって、オペレータが発電機22を送電網30から遮断できる。
【0058】
図示のように、熱放射センサ66は、第1の電気筺体118の内部に向けて配向される。本実施形態において、視野90は、コネクタ124、部品126、及び内部導体128を含む筺体118の内部全体を包含している。その結果、熱放射センサ66は、筺体118の内部の平均温度を示す信号を出力する。図示の熱放射センサ66は、単一の温度を出力するように構成された単一のサーモパイルから成るが、別の実施形態は、図3に関連して前述したようなサーモパイル素子の配列から成るセンサ66を含み得ることを理解されたい。このような実施形態において、センサ66は、電気筺体118の様々な領域内の温度を測定することにより、筺体内部の温度プロファイルに関する追加情報を提供する。
【0059】
明らかなように、熱放射センサ66は、筺体118の内部から発される放射熱の捕捉に適した任意の位置に取り付けられる。例えば、幾つかの実施形態では、第1の筺体118の内部にセンサ66を取り付けることによって、センサ66に部品126への直線的な視野を与えるようにしてもよい。例えば、筺体118を密封するように構成されたドアの内表面にセンサ66を取り付けてもよい。このような構成では、センサ66が、コントローラ68に連続的な温度信号を供給し、電気部品126が筺体118内に封入される。更に別の実施形態では、センサ66を筺体118の外側に取り付けることによって、熱制御システム64を筺体118内に生じ得る高温から保護するようにしてもよい。このような実施形態において、電気筺体118は、筺体118内の部品126が発する熱放射を熱放射センサ66で受け取れるように構成された覗き窓を含み得る。前述のように、覗き窓は、熱放射センサ66によって測定される波長(例えば赤外線放射)を実質的に透過する材料から成る。
【0060】
本実施形態において、コントローラ68は、電気筺体118内の温度が閾値を超えると、スイッチギヤ24の部品126間の故障を特定するように構成される。明らかなように、電気故障(例えば短絡、漏洩経路、接地故障等)では、電気抵抗が高い物質(例えば空気)を電流が流れることに起因して、熱が生じることがある。したがって、筺体内部の温度を閾値と比較することによって、このような故障を特定するようにコントローラ68を構成してもよい。例えば、図示のユーザーインターフェース70は、グラフ100を含む表示96を含む。図示の実施形態において、曲線106は時間の関数として筺体内部の温度を示す。温度が上限閾値110を超えると、コントローラ68はユーザーインターフェース70内のアラーム98を作動させ、オペレータにその状態を警告する。加えて、前述のように、発電システム10を連続運転できるように、コントローラ68で自動的に送電経路を二次スイッチギヤ69へと変更できる。
【0061】
本実施形態では、コントローラ68は、電力を第1の電気筺体118又は第2の電気筺体121へと選択的に送るように構成されたスイッチ119に、通信可能に結合される。図示のように、スイッチ119は、入力導体123と、第1の筺体118まで延在する第1の導体120と、第2の筺体121まで延在する第3の導体125とに電気的に結合される。スイッチ119の位置を調節することにより、電力は第1の導体120を通って第1の電気筺体118へ、又は第3の導体125を通って第2の電気筺体121へと送られる。図示のように、第4の導体127が第2の筺体121から延在し、第2の導体122及び出力導体129と接合するように構成される。この構成において、電気は入力導体123から出力導体129へと、スイッチ119の位置に応じて第1の筺体118又は第2の筺体121を介して流れる。通常の動作条件下において、コントローラ68は、第1の筺体118を介して電力を送る第1の位置にスイッチを維持する。しかし、過剰な温度が第1の筺体118内で検出されると、コントローラ68は、第1の筺体118内で検出された電気故障をバイパスできるように、スイッチ119を、第2の筺体121を介して電力を送るように経路を変更する第2の位置に移動させる。そのため、第1の筺体118内で電気故障が生じても、入力導体123から出力導体129へと至る電力の流れは実質的に中断されない。
【0062】
幾つかの実施形態において、コントローラ68は、第1の電気故障が検出された場合に送電経路を第1の電気筺体118から第2の電気筺体121に変更し、次の故障が検出された場合には送電経路を一次スイッチギヤ24から二次スイッチギヤ69に変更するように構成される。例えば、熱制御システム64は、両方の筺体118及び121内の温度を監視するように構成される。第1の筺体118内で故障が検出されると、送電経路は筺体121へと変更される。しかし、電気故障が両方の筺体118及び121内で検出された場合は、送電経路は二次スイッチギヤ69へと変更される。本実施形態では、2つの電気筺体118及び121を示しているが、追加の筺体をその他のスイッチギヤ構成内に用いてもよいことを理解されたい。例えば、幾つかのスイッチギヤ24は、1、2、3、4、5、6、7、又は8つ以上の電気筺体118及び121を含む。
【0063】
前述のように、幾つかのスイッチギヤ24は、コネクタ124、部品126、及び内部導体128を含む複数の電気筺体118又は121を含み得る。このような構成では、筺体の温度を個別に監視するように、熱放射センサ66を各々の筺体118又は121に向けて配向する。加えて、筺体118又は121間の温度差を閾値と比較して1つ又は複数の筺体118又は121内の故障を特定するように、コントローラ68を構成してもよい。例えば、スイッチギヤ24内の各筺体118又は121にわたる平均温度を算出するように、コントローラ68を構成できる。このとき、コントローラ68は、各筺体118又は121の温度を平均温度と比較することによって、電気故障を特定できる。例えば、1つの電気筺体118又は121の温度が平均温度よりも高く第1の閾値を超える場合は、筺体118又は121内に電気故障が存在する可能性がある。逆に、1つの筺体118又は121の温度がこの平均温度よりも低く第2の閾値を超える場合は、電気筺体118又は121が所望の性能で動作していない可能性がある。例えば、筺体の温度が低い場合は、特定の電気筺体118又は121への電力を制限する、スイッチギヤ24内の電気故障を示している可能性がある。
【0064】
熱制御システム64は、スイッチギヤ24の温度を連続的に監視し、故障が検出された場合に送電経路を自動的に変更するように構成されるので、発電システム10を作動させる前に携帯用の赤外線カメラでスイッチギヤ24をマニュアルでスキャンする必要がなくなる。そのため、始動動作に付随する運転コストを大幅に削減できる。加えて、発電システム10の運転中に電気的故障を検出し、緩和できるので、1つのスイッチギヤ筺体118内で電気的故障が生じたとしても、電力を連続的に出力できる。以上、スイッチギヤ24を参照しながら熱制御システム64を説明したが、熱制御システム64を用いて、特に、ヒューズ盤、回路遮断器ハウジング、配電センター及び産業用管理センター等、その他の電気筺体内の故障を検出できることを理解されたい。
【0065】
図5は、相分離母線26の導管内で、2つの導電体間の接点に向けて配向された熱制御システム64の実施形態の概略図である。前述のように、相分離母線26は、発電機22が出力した三相電力の各々の層を、GSU28に個別に伝送するように構成された3つの電気導管129を含む。相分離母線26の各々の電気導管129は、筺体132内に設置された導電体アセンブリ130を含む。導電体アセンブリ130は、筺体132内の導電体アセンブリ130を支持する役割も果たす一連の絶縁体134によって筺体132から電気的に絶縁されている。導電体アセンブリ130は、図示のボルト136等のファスナによって互いに結合された一連の導体135を含む。この構成では、導体アセンブリ130の電気的な接地、及び/又は導管129どうしの誘導障害の可能性が大幅に低減するか又は排除される。
【0066】
本実施形態では、円形の断面を有する筺体132を採用しているが、別の実施形態では、別の断面形状(例えば多角形、楕円形等)を有する筺体を含み得ることを理解されたい。加えて、本実施形態は、導管129に沿った各々の軸方向位置に4つの絶縁体を採用しているが、別の実施形態では、更に多数又は少数の絶縁体を含み得る。例えば、幾つかの実施形態において、各軸方向位置に1、2、3、4、5、6、7、8個、又はそれ以上の絶縁体134を使用してもよいことを理解されたい。更に、本実施形態では、矩形断面を有する導体135を採用しているが、別の実施形態は、その他の断面形状の他に円形断面、中空矩形断面、又は中空円形断面を有する導体を含み得ることを理解されたい。
【0067】
図示のように、熱放射センサ66は、導体135間の接点138に向けて配向されている。本実施形態では、視野90が2つの導電体135間の重複領域全体を包含している。したがって、熱放射センサ66は、接点138の平均温度を示す信号を出力する。図示の熱放射センサ66は、単一の温度を出力するように構成された単一のサーモパイルから成るが、別の実施形態では、図3に関連して前述したようなサーモパイル素子の配列から成るセンサ66を含み得ることを理解されたい。このような実施形態において、センサ66は、接点138の様々な領域内の温度を測定することによって、導体135間の接点の温度プロファイルに関する追加情報を提供する。
【0068】
明らかなように、熱放射センサ66は、導電体135間の接点138から発せられる放射の捕捉に適した任意の位置に取り付けられる。例えば、幾つかの実施形態では、筺体132の内部にセンサ66を取り付けることによって、センサ66に接点138への直線的な視野を与えるようにしてもよい。例えば、導体135間の境界と位置合わせされた面に直交する筺体132の内表面上にセンサ66を取り付けてもよい。別の実施形態では、センサ66を筺体132の外側に取り付けることによって、導管129内に生じ得る高温から熱制御システム64を保護するようにしてもよい。このような実施形態において、筺体132は、接点138が発する熱放射を熱放射センサ66が受け取れるように構成された覗き窓を含み得る。前述のように、覗き窓は、熱放射センサ66によって測定される波長(例えば赤外線放射)を実質的に透過する材料から成るものでよい。
【0069】
本実施形態において、コントローラ68は、接点138の温度が閾値を超えると、接点138における導体135の少なくとも部分的な分離を検出するように構成される。明らかなように、導電体135が時間の経過に伴って少なくとも部分的に互いに分離することによって、導電体135どうしの間の接点が減少する。その結果、接点138で熱が生じ、発電機22とGSU28との間の電力の伝送効率が低下することがある。したがって、接点138の温度を閾値と比較することによって、このような導体の分離を特定するようにコントローラ68を構成してもよい。例えば、図示のユーザーインターフェース70は、グラフ100を含む表示96を含む。図示の実施形態において、曲線106は、時間の関数として接点138の温度を示す。温度が上限閾値110を超えると、コントローラ68は、ユーザーインターフェース70内のアラーム98を作動させ、オペレータにその状態を警告する。加えて、以下に詳説するように、コントローラ68で、相分離母線26の別の補助配線を通るように、且つ/又は二次相分離母線を通るように送電経路を変更することによって、導体135どうしが分離した接点138をバイパスするようにしてもよい。
【0070】
前述のように、相分離母線26は、発電機22によってGSU28に出力された三相電力の各相を個別に伝送するように構成された3つの電気導管129を含む。幾つかの実施形態においては、導管の温度を個別に監視するように、熱放射センサ66を各導管129の1つ以上の接点138に向けて配向する。このような実施形態では、導管129どうしの温度差を閾値と比較して、1つの導管129内の故障を特定するようにコントローラ68を構成してもよい。例えば、相分離母線26内の各導管129にまたがる平均温度を算出するようにコントローラ68を構成してもよい。そこで、コントローラ68は、各導管129の温度を平均温度と比較して電気故障を特定し得る。例えば、1つの電気導管129の温度が平均温度よりも高く第1の閾値を超える場合は、導管129内に電気故障が存在する可能性がある。逆に、1つの導管129の温度が平均温度よりも低く第2の閾値を超える場合は、電気導管129は所望の性能で動作していない可能性がある。例えば、導管の温度が低い場合は、電力を相分離母線26の特定の位相に制限する、発電システム10内の電気故障を示している可能性がある。
【0071】
図6は、補助配線と二次相分離母線とを含む相分離母線26の実施形態の概略図である。本実施形態において、相分離母線26は、発電機22からの三相電力の各相をGSU28に伝送するように構成された、3つの主配線140を含む。加えて、相分離母線26は、これらの3つの主配線140の予備としての役割を果たすように構成された補助配線142を含む。例えば、コントローラ68が1つの主配線140内に導体分離を検出すると、コントローラ68で送電先を補助配線に変更できる。図示の実施形態において、各主配線140は、導管140を通る電力の流れを遮断するように構成されたスイッチ144を含む。加えて、補助配線142は、補助配線142を通る電力の流れを選択的に可能にするように構成されたスイッチ146を含む。図示のように、各スイッチ144及び146はコントローラ68に通信可能に結合される。熱制御システム64が1つの導管140内に導体分離を検出すると、コントローラ68は、問題の導管140に結合されたスイッチ144を開き、この導管140を通る電力の流れを阻止する。コントローラ68は、更に、補助配線142に結合されたスイッチ146を閉じて、それまでは導体分離が存在する導管140を通っていた電力を流す。このようにして、1つの主配線140内で故障が生じたとしても、相分離母線26を介して三相電力の各相を送ることができる。
【0072】
更に、主配線140内に故障が検出されたときに電力を伝送できるように、二次相分離母線148を設けてもよい。本実施形態において、コントローラ68は、1つ以上の主配線140内に導体分離が検出された場合に、送電先を主配線140から二次相分離母線148の導管150に変更するように構成される。例えば、1つの導管140内で故障が検出された場合に、各スイッチ144を開位置へと移動させ、主配線140を通る電力の流れを阻止する。加えて、二次相分離母線148の導管150に結合されたスイッチ152を閉位置に移動させ、発電機22からGSU28へ電力を流す。幾つかの実施形態において、コントローラ68は、第1の故障が検出された場合に送電先を1つの主配線140から補助配線142に変更し、次の故障が検出された場合には送電先を二次相分離母線148に変更するように構成される。このようにして、相分離母線26内で1つ以上の電気故障が生じたとしても、電力を連続的且つ効率的に発電機22からGSU28へと伝送できる。
【0073】
熱制御システム64は、接点138の温度を継続的に監視し、その温度に基づいて導体の分離を自動的に特定するように構成されているので、相分離母線26全体について、導電効率の低下を迅速に特定し、これを緩和できる。例えば、分離が検出されると直ちに送電経路を変更することによって、確実に発電システム10を効率的に運転できる。以上、熱制御システム64を相分離母線26に関連して記載したが、熱制御システム64を使用して、例えばスイッチギヤ内で使用される母線バー、配電盤、又は変電施設等の、その他の導電体どうしの分離を検出できることを理解されたい。加えて、熱制御システム64を使用して、変圧器接点、母線ダクト接点、発電機接点、及び/又はスイッチギヤ接点等を監視できる。
【0074】
本明細書では、最適な態様も含め、例を用いて本発明を開示しており、これによって当業者は、あらゆる装置又はシステムの作製及び使用、並びに付随するあらゆる方法の実行を含め、本発明を実施できる。本発明の特許請求の範囲は、請求項に明示されると共に、当業者に想到可能なその他の例も含む。こうしたその他の例は、請求項の文言と相違ない構成要素を含む場合、又は請求項の文言と実質的な差異を有さない等価の構成要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【符号の説明】
【0075】
10 発電システム
12 ガスタービンエンジン
14 燃焼器
16 タービン
18 シャフト
20 圧縮機
22 発電機
24 スイッチギヤ
26 相分離母線
28 発電機用昇圧変圧器
30 送電網
32 排ガス
34 排熱回収ボイラ
36 排気筒
38 冷却された排ガスの流れの方向
40 高圧蒸気
42 蒸気タービン
44 発電機
46 スイッチギヤ
48 相分離母線
50 発電機用昇圧変圧器
52 低圧蒸気
54 復水器
56 冷却水
58 水
60 熱水
62 冷却塔
64 熱制御システム
66 熱放射センサ
68 コントローラ
69 二次スイッチギヤ
70 ユーザーインターフェース
71 二次スイッチギヤ
72 下流方向
74 導管
76 フィン
78 第1のマニホルド
80 第2のマニホルド
82 覗き窓
84 フィルタ
86 レンズ
88 鏡
90 視野
92 視野角
94 HRSG断面
96 表示
98 アラーム
100 グラフ
102 X軸
104 Y軸
106 曲線
108 平均温度
110 上限閾値
112 下限閾値
113 弁
114 サーモパイル素子
116 数字表示
117 弁
118 第1の電気筺体
119 スイッチ
120 第1の導電体
121 第2の電気筺体
122 第2の導電体
123 入力導体
124 電気コネクタ
125 第3の導電体
126 電気部品
127 第4の導電体
128 内部導電体
129 電気導管
130 導電体アセンブリ
132 電気筺体
134 電気絶縁体
135 導電体
136 ボルト
138 接点
140 主配線
142 補助配線
144 スイッチ
146 スイッチ
148 二次相分離母線
150 二次相分離母線導管
152 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(34、54)内へと至る流体流路に沿った少なくとも1つの導管(74)に向けて視野(90)を配向するように構成された、前記少なくとも1つの導管(74)の温度を示す信号を出力するように構成された放射センサ(66)と、
前記放射センサ(66)に通信可能に結合されており、前記信号に基づいて前記温度を判定し、前記温度と閾値範囲とを比較して、前記温度が前記閾値範囲から外れる場合に、前記流体流路又は前記少なくとも1つの導管を通る流体流を調節するように構成されたコントローラ(68)と、を有するシステム(10)。
【請求項2】
前記放射センサ(66)が、前記流体流路に沿った前記少なくとも1つの導管(74)の平均温度を示す第2の信号を出力するように構成されたサーモパイル、又は前記流体流路に沿った前記少なくとも1つの導管(74)の多次元温度プロファイルを示す第3の信号を出力するように構成されたサーモパイルアレイから成る、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記閾値範囲の上限(110)が前記少なくとも1つの導管(74)の所望最高動作温度を示すか、又は前記閾値範囲の下限(112)が前記少なくとも1つの導管(74)内における流体漏れを示すか、又は、前記閾値範囲の上限(110)が前記少なくとも1つの導管(74)の所望最高動作温度を示し且つ前記閾値範囲の下限(112)が前記少なくとも1つの導管(74)内における流体漏れを示す、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導管(74)に結合された複数のフィン(76)を有するシステムであって、前記閾値範囲の下限(112)が、前記少なくとも1つの導管(74)から、少なくとも1つのフィン(76)が少なくとも部分的に分離していることを示す、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記流体流路に沿って複数の導管(74)を有するシステムであって、前記コントローラ(68)が前記信号に基づいて各導管の前記温度を判定し、前記導管(74)の各々の温度と前記閾値範囲とを比較して、前記温度が前記閾値範囲を外れる場合に各導管(74)を通る前記流体流を個別に調節するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記コントローラ(68)が、前記温度が前記閾値範囲の上限(110)を超える場合に前記少なくとも1つの導管(74)を通る前記流体流を増加させるか、又は、前記温度が前記閾値範囲の下限(112)よりも低い場合に前記少なくとも1つの導管(74)を通る前記流体流を減少させるか、又は、前記温度が前記閾値範囲の上限(110)を超える場合に前記少なくとも1つの導管(74)を通る前記流体流を増加させ且つ前記温度が前記閾値範囲の下限(112)よりも低い場合に前記少なくとも1つの導管(74)を通る前記流体流を減少させるように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項7】
コントローラ(68)が、前記温度が前記閾値範囲の上限(110)を超える場合に、前記流体流路を通る前記流体流を減少させるように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項8】
タービン(16、42)と熱交換器(34、54)とを有するシステムであって、前記タービン(16、42)がガスタービン(16)又は蒸気タービン(42)から成り、前記熱交換器(34、54)が排熱回収ボイラ(34)又は復水器(54)から成る、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記放射センサ(66)が、赤外線スペクトルの範囲内の波長を有する熱放射を検出するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記視野(90)が、前記流体流路内に通じる覗き窓(82)に向けて配向されており、前記覗き窓(82)が、前記放射センサ(66)により測定される波長を実質的に透過させる、請求項1に記載のシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−36894(P2012−36894A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170604(P2011−170604)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】