説明

発電システム

【課題】 生ごみや生活排水などの有機性物質のエネルギーリサイクルを可能とし、そのリサイクル効率を高めた廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】 ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水やし尿を含むトイレ排水やその他排水などの生活排水と、を集合し、濃縮し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、様々な建築物内で塵芥、し尿、排水等の形で発生する有機性物質を、メタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、家庭などの人間が居住する建築物から排出される有機性物質の生ごみは、一般廃棄物と一緒に埋め立てされるか焼却処分されていた。埋め立てに関しては、埋め立て場所の不足や国土の汚染が大きな問題であった。焼却に関しては、温室効果ガスCO2やダイオキシンを発生させることから好ましくないことがわかっている。このような問題を解決するために、例えば特開平11−162494(生ゴミ処理システムおよび生ゴミを利用した燃料電池用ガス供給方法並びにその装置)のように、生ごみを発酵させて得られるメタンガスを燃料電池に供給して電力を得る方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この従来技術は、埋め立てによって国土を汚染することもなく、焼却によるCO2の発生やダイオキシンの発生もなく、燃料電池による高効率な発電により廃棄物をエネルギーとしてリサイクルできる非常に優れた方法である。しかしながら、このような従来技術においても次のような問題があった。
1)生ごみ以外の生活排水の処理ができないため、生ごみ処理系とその他の生活排水処理系の二系統の廃棄物処理システムが必要となり、設備コスト、ランニングコストの増大を招いていた。
2)生ごみ以外の生活排水にも有機性の廃棄物が含有されているにも関わらず、メタンガスとして回収することができないため、廃棄物のリサイクル効率を低下させていた。
3)燃料電池は、電力と熱を同時に発生させることができるコージェネレーションシステムであるにも関わらず、熱の利用が考慮されておらず総合効率をさらに向上させる余地を残していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記のような問題を解決するために、請求項1による発電システムは、建築物から排出される有機性物質含有排水を一時的に貯溜して濃縮し、メタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する事を特徴とする。かかる構成により、建築物から不可避的に排出される有規性物質を有効利用して、熱と電気とを回収することができる。また、有機性物質含有排水を濃縮することにより、メタン発酵プロセスにおいてメタンガスを効率的に発生させることができる。ここで、建築物とは、再利用可能な有機性物質を排出するものは全て含まれ、一戸建て住宅、集合住宅、ホテル等の人間が居住する建築物はもとより、オフィスビル、デパート、水族館、工場施設等の人間が一時的に滞在する建築物、畜舎等の動物飼育用の建築物、等も当然含まれる。また、有規性物質含有水としては、塵芥等の有機性廃棄物のスラリーを含む水や、洗濯排水、浴槽排水等の生活排水等を全て含む。
【0005】請求項2に記載の発明は、人間が居住する建築物から排出される有機性物質をメタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムにおいて、ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水や、し尿等の汚水、その他の排水からなる生活排水とを集合し、濃縮し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させることを特徴とする。一般に、メタン発酵プロセスは高濃度の有機性排水を対象とする排水プロセスであるため、台所排水やし尿を含むトイレ排水やその他排水などの低濃度の有機性排水と、高濃度の厨芥スラリーとを集合した後に、さらに濃縮して高濃度の有機性排水として、メタン発酵プロセスに導入するのが望ましい。これにより、人間が居住する建築物内で発生するすべての有機性物質からメタンガスを生成することが可能となる。
【0006】請求項3による発電システムは、人間が居住する建築物から排出される有機性物質をメタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムにおいて、 ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水や、し尿等の汚水、その他の排水からなる生活排水を濃縮した濃縮生活排水と、を集合し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させることを特徴とする。前述のように、メタン発酵プロセスは高濃度の有機性排水を対象とする排水プロセスであるため、台所排水やし尿を含むトイレ排水やその他排水などの低濃度の有機性排水を集合濃縮して高濃度の有機性排水とし、高濃度の厨芥スラリーと集合して、メタン発酵プロセスに導入するのが好ましい。これにより、人間が居住する建築物内で発生するすべての有機性物質を、より効率的にメタンガスに変換しエネルギーとして回収することが可能となる。
【0007】請求項4による発電システムは、人間が居住する建築物から排出される有機性物質をメタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムにおいて、 ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水や、し尿等の汚水、その他の排水からなる生活排水を一次濃縮した一次濃縮生活排水と、を集合し、二次濃縮し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させることを特徴とする。前述のように、メタン発酵プロセスは高濃度の有機性排水を対象とする排水プロセスであるため、台所排水やし尿を含むトイレ排水やその他排水などの低濃度の有機性排水を集合濃縮して一次濃縮有機性排水とし、高濃度の厨芥スラリーと集合した後に二次濃縮を行い、非常に高濃度の二次濃縮生活排水としてメタン発酵プロセスに導入するのが好ましい。これにより、人間が居住する建築物内で発生するすべての有機性物質から、さらに効率的にメタンガスを生成することが可能となる。
【0008】請求項5による発電システムは、燃料電池から生成される熱の少なくとも一部を、メタン発酵槽の加温用熱源として利用することを特徴とする。メタン発酵プロセスのメタンの発生率を高めるためにはメタン発酵槽を55℃程度に保つことが望ましい。一方、燃料電池は電力と熱を同時に発生することができるコージェネレーション装置である。従って、燃料電池で発生する熱をメタン発酵槽の加温用熱源として使用することが可能であり、これにより加温用の熱源を別に設ける必要がなくなる。若しくは小型化することができる。
【0009】請求項6による発電システムは、燃料電池が固体高分子型燃料電池であることを特徴とする。燃料電池で電力が発生する際には、燃料ガスの水素と酸化剤の酸素が反応して水が生成するが、固体高分子型燃料電池の反応温度は80℃であるため、生成した水は80℃の温水として排出される。従って、この80℃の温水は、メタン発酵槽の温度を55℃に維持するために非常に好適な熱源である。ちなみに、リン酸型燃料電池の反応温度は約250℃、溶融炭酸塩型燃料電池は約650℃、固体酸化物型燃料電池にあっては約1000℃という高温であるため、メタン発酵槽を55℃に加温するための熱源として使用するためには何らかの手段により温度を下げてやる必要があり、エネルギーロスを伴うため必ずしも好適とは言い難い。なお、本発明において濃縮とは、排水中の有機物濃度を高める操作全般を含み、分離やろ過などのように、液体と固体とを分けることにより結果的に有機物濃度を高める操作もここで言う濃縮に含まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の発電システムのシステム構成図である。台所などから排出される厨芥は、ディスポーザにより粉砕され厨芥スラリーとして濃縮装置に導入される。一般に、ディスポーザは台所のシンクに取り付けられる生ごみを粉砕する装置である。生ごみは約80%が水分のため流動性のある厨芥スラリーとなるが、排水配管中での流動性をさらに高めるために水で希釈されることが多い。一般的に4人家族の1家庭から1日に排出される厨芥量は約1kgであり、ディスポーザの希釈水は約20L程度である。このときの厨芥スラリーのBOD汚濁度は約5500mg/Lである。台所排水は、台所のシンクから排水配管により濃縮装置に搬送される。一般的に1家庭から1日に排出される台所排水は、約120LでBOD汚濁度は約670mg/Lである。トイレ排水は排水配管により濃縮装置に搬送される。一般的に1家庭から1日に排出されるトイレ排水は、約200LでBOD汚濁度は約260mg/Lである。その他の風呂排水、洗濯排水なども排水配管により濃縮装置に搬送される。一般的に1家庭から1日に排出される風呂排水、洗濯排水などは、約600LでBOD汚濁度は約110mg/Lである。図1では、これらの厨芥スラリーと生活排水すべてが濃縮装置に導入されるため、一般的に1家庭の1日の総排水量は、約940LでBOD汚濁度は約320mg/Lとなる。
【0011】濃縮装置は、加熱により水分を蒸発させて濃度を高める加熱濃縮装置、多孔性のスクリーンを用いて固形分と水分とを分離して濃度を高める分離濃縮装置、分離膜を用いる分離膜濃縮装置、遠心力を用いて固形分と水分とを分離して濃度を高める遠心分離濃縮装置などを用いることができる。濃縮装置は、対象プロセスの規模、排水の組成などの条件に基づいて適宜選定することができる。濃縮装置では、前述の濃縮操作が行われBOD汚濁度の高い濃縮排水として、メタン発酵装置に送られる。なお、ディスポーザの前、排水配管の途中、濃縮装置の前後などに異物を除去するためのストレーナなどを必要に応じて設置することができる。また、必要に応じて排水ストレージタンクなどを設けて排水量の変動に対応できるようにすることもできる。
【0012】メタン発酵装置では、嫌気性雰囲気下でメタン菌の働きによりメタン発酵反応が行われメタンと二酸化炭素が発生する。メタン発酵反応には、約55℃で反応速度が最も高くなる高温メタン発酵反応が用いられることが多いため、メタン発酵槽は約55℃を維持するように加温される。図1では、後述する燃料電池から生成される熱の少なくとも一部を用いて加温用の熱源としている。メタン発酵装置から生成されたバイオガスは、メタン約60〜70%、二酸化炭素約30〜40%の主成分からなり、その他微少成分としてアンモニア、硫化水素などを含む。ガス精製装置では、前記アンモニアの除去、硫化水素の除去、メタンの改質による水素生成、一酸化炭素の除去などが行われ水素リッチガスに精製されて燃料電池に導入される。ガス精製装置には、都市ガス若しくはプロパンガスなどの一般的な燃料ガスも別系統から導入される構造になっている。これは有機性物質から発生したメタンガスのみでは、電力や熱を賄えない場合に一般的な燃料ガスに切り替えて使用するためである。なお、有機性物質から発生したメタンガスと一般的な燃料ガスとを予め混合させて、ガス精製装置により水素リッチガスを精製する方法も可能である。
【0013】図2では、厨芥スラリーはディスポーザにより粉砕して直接メタン発酵装置に搬送される。また、台所排水とトイレ排水とその他排水は排水配管により濃縮装置に集められ、前述の濃縮操作によりBOD汚濁度が高められた濃縮生活排水としてメタン発酵装置に搬送される。その他については図1と同様である。
【0014】図3では、厨芥スラリーはディスポーザにより粉砕して二次濃縮装置に搬送される。また、台所排水とトイレ排水とその他排水は排水配管により一次濃縮装置に集められ、前述の濃縮操作によりBOD汚濁度が高められた一次濃縮生活排水とした上で二次濃縮装置に搬送される。二次濃縮装置では、厨芥スラリーと一次濃縮生活排水が集合されて、前述の濃縮操作によりさらにBOD汚濁度が高められた二次濃縮生活排水としてメタン発酵装置に搬送される。その他については図1、図2と同様である。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、家庭内から排出される有機性物質(厨芥、有機性の生活排水)をすべて、エネルギー(電力、熱)として回収できるるという優れた効果を得ることができる。これは、エネルギー回収によるコストメリットを得ることができるばかりでなく、生ゴミを焼却する必要がなくなることによるCO2削減、ダイオキシンの発生防止を図ることができる。さらに生ごみを家庭の外に排出しないため市街地の汚染することがなくなる。また、下水道に有機性汚濁物を排出しないため、下水道処理施設の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示すシステム構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示すシステム構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 建築物から排出される有機性物質含有排水を一時的に貯溜して濃縮し、メタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する事を特徴とする発電システム。
【請求項2】 人間が居住する建築物から排出される有機性物質をメタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムにおいて、ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水や、し尿等の汚水、その他の排水からなる生活排水とを集合し、濃縮し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させることを特徴とする発電システム。
【請求項3】 人間が居住する建築物から排出される有機性物質をメタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムにおいて、ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水や、し尿等の汚水、その他の排水からなる生活排水を濃縮した濃縮生活排水と、を集合し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させることを特徴とする発電システム。
【請求項4】 人間が居住する建築物から排出される有機性物質をメタン発酵プロセスによりメタンガスを発生させ、水素リッチガスに転換して燃料ガスとして燃料電池に供給し、電力と熱を回収する発電システムにおいて、ディスポーザによって微粉砕された厨芥スラリーと、台所排水や、し尿等の汚水、その他の排水からなる生活排水を一次濃縮した一次濃縮生活排水と、を集合し、二次濃縮し、メタン発酵プロセスによってメタンガスを発生させ、該メタンガスを燃料電池に燃料として供給し、該燃料電池から電力と熱を生成させることを特徴とする発電システム。
【請求項5】 燃料電池から生成される熱の少なくとも一部を、メタン発酵槽の加温用熱源として利用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つ記載の発電システム。
【請求項6】 燃料電池が固体高分子型燃料電池であることを特徴とする請求項5記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−229955(P2001−229955A)
【公開日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−35583(P2000−35583)
【出願日】平成12年2月14日(2000.2.14)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】