説明

発電システム

【課題】光エネルギーを利用して、電気エネルギーおよび熱エネルギーの双方を得ることが可能な発電システムを提供する。
【解決手段】発電システム1は、容器11内に、電解液Aと、光電変換機能を有する複数の半導体チップ12とが封入されてなり、光エネルギーを吸収してガスを発生するガス生成部10と、ガス生成部10により発生したガスを利用して電気エネルギーを生成する発電部20と、容器11内部から熱エネルギーを吸収する給湯器30とを備えている。ガス生成部10では、容器11内へ入射した光が複数の半導体チップ12により吸収され、電解液Aにおいて電気分解が生じる。容器11内でガス(例えば水素)が発生し、この発生ガスを利用して、発電部20が電気エネルギーを生成する。容器11内部では、上記電気分解による反応熱や、太陽光による輻射熱により温度上昇を生じるが、給湯器30により、容器11内部から熱エネルギーが吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽光を利用して発電を行う発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン系のソーラーセル(太陽電池)の大型化、高光電変換効率の実現へ向けて様々な開発が進められている(例えば、特許文献1,2)。太陽電池は、一般に家やビル等の外壁や屋根に設置されて使用されるものが多く、そのため、光電変換機能を持つ結晶材料を平板状に敷詰めたパネル型のデバイスとして形成される。
【0003】
ところが、このようなパネル型の太陽電池では、所望の電力量を得るためには、大面積化が必要とされ、その設置面積も大きく確保しなければならない。また、電極配線の設置や、屋外環境での耐性を得るための表面コーティング等を行う必要があるため、発電効率が犠牲になることがある。
【0004】
更には、屋根等に固定設置するパネル型の太陽電池では、時間帯や季節によって大きく角度を変える太陽の光を十分に吸収できない。例えば、日が浅い角度へ傾くに従って、平面に対する照射面積は縮小するため、光吸収効率は低下する。パネル型の太陽電池において光吸収効率が最大となるのは、太陽光がほぼ垂直にパネルへ入射する南中時(日の出と日の入との中間の時間帯)のみである。従って、実際には、一日を通してほぼ傾斜している太陽からの光エネルギーを十分に受け取っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−163285号公報
【特許文献2】特開昭57−13185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記特許文献1,2では、ウェハの状態から細分化して形成した微小な太陽電池素子を、容器内に満たした電解液に懸濁させてなる電気分解装置が提案されている。これにより、パネル型の太陽電池に比べ、狭小な設置面積で効率的に太陽光を取り込むことができる。このような構造により、光エネルギーに基づいて電気分解を生じさせ、水素等のガスを発生させることが記載されている。
【0007】
また、このようにして発生させたガスを燃料電池へ供給することにより電気エネルギーを生成することができ、即ち太陽光による発電システムを実現できる。一方近年、太陽熱給湯システムが見直されている。これは、太陽光発電に比べて、エネルギー変換効率が高いためである。しかしながら、一般家庭の限られたスペースでは、太陽光発電と給湯システムを同時に設置することは難しく、電気の利便性から、太陽光発電を選ぶ家庭が多いようである。電力供給だけでなく、例えば給湯等を同時に行うことが可能なハイブリッド型のシステムが可能になれば、一つの装置を設置することで、電気を使える利便性と、両者を合わせたこれまでにないような高いエネルギー変換効率が期待できる。即ち、電気エネルギーだけでなく、熱エネルギーをも得ることが可能な夢の発電システムが実現されることになる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光エネルギーを利用して、電気エネルギーおよび熱エネルギーの双方を得ることが可能な発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発電システムは、容器内に、電解液と、光電変換機能を有する複数の半導体素子とが封入されてなり、光エネルギーを吸収してガスを発生するガス生成部と、ガス生成部により発生したガスを利用して電気エネルギーを生成する発電部と、容器内部から熱エネルギーを吸収する熱交換部とを備えたものである。
【0010】
本発明の発電システムでは、ガス生成部において、容器内に入射した光が、複数の半導体素子により吸収されると、電解液において電気分解が生じる。これにより、容器内ではガス(例えば水素)が発生する(光エネルギーがガスに変換される)。発電部は、そのようにして発生したガスを利用して、電気エネルギーを生成する。一方、容器内部では、上記電気分解による反応熱や、太陽光による輻射熱により温度上昇を生じるが、熱交換部により、容器内部から熱エネルギーが吸収される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発電システムによれば、ガス生成部において、容器内に電解液と光電変換機能を有する複数の半導体素子とを封入したので、容器内に入射した光を、複数の半導体素子により吸収して、電解液において電気分解を起こすことができる。これにより、容器内においてガス(例えば水素)を発生させることができ、発電部はその発生したガスを利用して、電気エネルギーを生成することが可能となる。一方、容器内部では、上記電気分解による反応熱や、太陽光による輻射熱により温度上昇を生じるが、熱交換部により容器内部から熱エネルギーを吸収することができる。よって、光エネルギーを利用して、電気エネルギーおよび熱エネルギーの双方を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発電システムの全体構成を表すブロック図である。
【図2】図1に示したガス生成部の概略構成を表す斜視図および断面図である。
【図3】図1に示した容器の詳細構成を表す断面図である。
【図4】図1に示したガス生成部の配置構成の一例である。
【図5】図1に示したpn接合素子の断面構成を表す模式図である。
【図6】図1に示した燃料電池の断面構成を表す模式図である。
【図7】実測(光照射なし)による電圧と電流密度との関係図である。
【図8】実測(光照射あり)による電圧と電流密度との関係図である。
【図9】発電システム1全体における入射波長と光吸収率の関係図である。
【図10】シミュレーションに用いた素子構造(平板、150nmピッチ)を表す図である。
【図11】実測によるインピーダンス測定結果を表す図である。
【図12】ピッチとC60(フラーレン)単層膜の抵抗値(実測値)との関係を表す特性図である。
【図13】シミュレーションモデルの等価回路を表す図である。
【図14】平板を用いた場合の等価回路によるシミュレーション結果(電流−電圧特性)を示す図である。
【図15】立体構造を有する場合の等価回路によるシミュレーション結果(電流−電圧特性)を示す図である。
【図16】光電変換効率を平板比で表した図である。
【図17】実際に作製した太陽電池のTEM写真である。
【図18】本発明の太陽電池の一変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(熱交換部に接続された冷却管を容器内部に設けた例)
2.変形例(冷却管を容器側面に隣接して設けた(リフレクタを利用した)例)
3.他の変形例(容器およびリフレクタの形状の他の例)
【0014】
<実施の形態>
[発電システム1の構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る発電システム(発電システム1)の全体構成を表したものである。発電システム1は、太陽光エネルギーを利用して電気エネルギーを生成する太陽電池システムであり、ガス生成部10と、ガス分離フィルタ13と、発電部20と、配管31と、給湯器30(熱交換部)とを備えている。
【0015】
図2は、ガス生成部10およびガス分離フィルタ13の一構成例を表したものであり、(A)は斜視図、(B)はガス生成部10の横断面図である。ガス生成部10は、容器11の内部に電解液Aが充填されたものであり、この電解液A中に、複数の半導体チップ12を分散して含んでいる。容器11は、その側面の一部にリフレクタ(後述のリフレクタ11a)を有しており、容器11内に入射してきた光を乱反射させて光吸収効率を高めるようになっている。電解液Aは、例えば所定の濃度のリン酸(H3PO4)水溶液であり、その濃度は、電気二重層を考慮して適切な値に設定されている。半導体チップ12は、光電変換機能を有する微細な太陽電池素子である。以下、各部の具体的な構成について説明する。
【0016】
(容器11)
容器11は、電解液Aおよび複数の半導体チップ12を収容するものであり、内部において発生したガスを外部へ取り出し可能となっている。この容器11は、また、太陽光等の光を透過させ、内部へ取り込む役割を有している。容器11は、太陽光に対して透明な材料(例えばガラス)で構成されている。理想的には太陽光に対する透過率が97%以上の超透過ガラスが挙げられる。これは、例えば、ガラス表面に、SiO2からなる厚みが100nmの反射防止(AR)膜が被覆されたものである。このような超透過ガラスは、例えばナノサイズのSiO2粉末を溶剤に溶き、ガラス表面に塗布した後、約700℃で焼成することによって作製することができる。また、このような容器11に使用されるガラスは、表面に凹凸(梨地模様)を有していてもよい。また、通常の窓ガラスなどよりも鉄の成分比が少なく、透明度が高い白板ガラスを用いてもよい。更に、内部保護のために、特殊な熱処理が施されていてもよい。尚、ガラス材料としては、石英(天然、または合成(二酸化珪素を更に特殊な化学プロセスにより高純度の塩化珪素に合成したもの)等が挙げられる。
【0017】
容器11の全体形状は、その内部への光取り込み効率(光閉じ込め効率)を考慮した形状であることが望ましい。例えば、図2(A)に示したように、一軸方向に沿って延在する円筒形状となっている。換言すると、図2(B)に示したように、容器11の横断面形状は円形状となっている。但し、所望の光取り込み効率を確保可能であれば、他の形状であってもよく、例えば横断面形状が矩形状等の多角形状であってもよい。
【0018】
容器11の側面(光入射面と反対側の背面)の一部には、リフレクタ11aが設けられている。リフレクタ11aは、例えば、容器11の側面に沿って、複数の突状部11a1が並設されてなり、透明材料、例えばBK7,合成石英により構成されている。突条部11a1は、容器11と互いに同一方向に延在するかまぼこ型(平凸型)のシリンドリカル(Cylindrical)形状を有している。換言すると、突状部11a1の横断面形状は、図2(B)に示したように、半円状または楕円状となっている。この突条部11a1の本数は、特に限定されないが、望ましくはより広い角度範囲で太陽光を取り込み可能となるように設定されている。例えば、方位角100°の方向から容器11へと向かう光が、容器11内へ入射する前に、リフレクタ11aによって遮断されないような(リフレクタ11aに当たることなく容器11へ入射し得るような)本数となっていることが望ましい。また、リフレクタ11aは、容器11の側面に、完全に密着することなく、所定のギャップ(エアギャップ,空隙)を介して設けられていることが望ましい。このようなリフレクタ形状および配置により、容器11内部で光を効率的に乱反射させ、半導体チップ12における光吸収率を向上させることができる。
【0019】
この容器11aの上部には、内部において発生したガス、ここでは水素(H2)および酸素(O2)をそれぞれ分離するためのガス分離フィルタ13が取り付けられている。ガス分離フィルタ13によって分離された水素および酸素のうち、水素は、水素取出口13a、酸素は酸素取出口13bからそれぞれ取り出し可能となっている。
【0020】
一方、容器11a内には、複数(ここでは3本)の配管31が配設され、この配管31の内部を熱交換液体Bが流れるようになっている。配管31は、給湯器30に接続されており、給湯器30と容器11との間において熱交換液体Bを循環させるためのものである。この配管31のうち容器11に内設される部分(冷却管31a)において、容器11の内部を冷却しつつ、容器11内の熱を吸収するようになっている。尚、熱交換液体Bが本発明における熱交換媒体の一具体例に相当するが、この熱交換媒体としては、配管31内を循環可能なものであれば、液体状のものに限らず、気体(ガス)状または固体状のものであってもよい。
【0021】
配管31に用いられる材料の屈折率は、光の遮蔽効果を抑えるために、電解液Aの屈折率とほぼ同値(例えば±0.05以内)となっていることが望ましい。また、より望ましくは、この配管31における冷却管31aが、容器11内の局所的な領域に偏って配設されている。これは容器11内の一部のみを冷やすことによって、容器11内に温度勾配を生じさせ、電解液Aの対流を起こし易くなるためである。この対流によって、半導体チップ12が攪拌され、その沈殿が抑制されるというメリットがある。
【0022】
図3は、上記のような容器11の最適形状(一例)についてのシミュレーション結果を表したものであり、(A)は横断面図、(B)は容器11側面とリフレクタ11aとの境界部分の拡大横断面図である。尚、このシミュレーションでは、容器11およびリフレクタ11aの材料としていずれも、屈折率1.466のガラスを用いた。シミュレーションの結果、容器11の最適形状は、外径が860mm、高さ(外寸)が1030mm、内径が834mm、高さ(内寸)が1000mmとなった。また、リフレクタ11aの最適形状、即ち、各突条部11a1の最適形状は、その横断面形状が直径60mmの半円形状で、高さが1030mmとなり、そのような突条部11a1の最適本数は11となった。更に、これらの容器11の側面とリフレクタ11aとの間には、エアギャップを設けることが望ましいが、このエアギャップDの最適寸法は4mmとなった。
【0023】
上記形状により、容器11(およびリフレクタ11a)では、例えば夏至の日の太陽がほぼ水平方向に移動する際の方位角の範囲(−100°〜100°)および所定の仰角の範囲(15°〜90°)に位置する太陽からの照射光を容器11内に効率的に(計算上最大の効率で)取り込むことができる。また、例えば、冬至の日では、太陽の位置は浅い仰角(30°以下)をとるが、そのような角度方向からの光に対しても効率的な光取り込みが可能である。
【0024】
(半導体チップ12)
半導体チップ12は、光電変換機能を有する半導体材料、例えば微結晶シリコン、アモルファスシリコン、CIGS系材料またはGaInP系材料等により構成されている。ここでは、p型シリコン(例えばボロン(B)ドープ)とn型シリコン(例えばヒ素(As)ドープ)の積層構造(タンデム構造)を有するpn接合素子を例に挙げて説明する。尚、この他にも、PIN多重量子構造を有するものであってもよい。半導体チップ12は、半導体ウェハの状態から多分割されて作製されたものである。その分割数や寸法は特に限定されるものではないが、例えば、半導体ウェハとして、60mm(Z)×620mm(X)×800mm(Y)のスケールのものを用いた場合、例えば図4(A)〜(H)に示したような分割数に設定することができる。尚、図4(A)〜(E)は、縦方向(Z方向)には分割せずにXY平面のみでの分割した例であり、図4(F)〜(H)は、図4(E)に示した分割状態から更に、Z方向に沿って2分割,3分割,5分割した各場合に相当する。あるいは、図5(A)〜(C)に示したように、図4(E)に示した分割状態から更に、Z方向の分割(2分割,3分割,5分割)をランダムに行うようにしてもよい。
【0025】
この半導体チップ12は、具体的には次のようなタンデム構造を有している。図6は、半導体チップ12の断面構造を表したものである。このように、半導体チップ12は、p型Si層120aとn型Si層120bとからなるpn接合部120を複数(ここでは9つ)積層したものである。換言すると、p型Si層120aとn型Si層120bとが交互に9層ずつ積層されている。p型Si層120aおよびn型Si層120bの厚みはそれぞれ、例えば1μmである。但し、最下層のn型Si層120b1については、ウェハ形成時におけるバッファ層として機能し、例えば厚みが2μmの低ドープ層となっている。一方、最上層のp型Si層120a1については、キャップ層として機能し、高ドープ層となっている。尚、図示は省略するが、このような積層構造の下層にはn型のシリコン基板、上層にはAuとTiとを積層したドット電極(例えば直径2μm,ピッチ5μm)が配設されている。
【0026】
半導体チップ12における積層数(pn接合部120の数)は、電気二重層に要する電圧と水の電気分解に要する電圧とを予め算出しておき、これら2つの合計電圧以上の起電力を生じるように設定されることが望ましい。尚、本実施の形態では、半導体チップ12として、p型シリコンおよびn型シリコン、電解液Aとして濃度5%のリン酸水溶液を用いた場合、上記のようなpn9層ずつの積層構造において、上記合計電圧を達成できることが確認された。
【0027】
この半導体チップ12は、例えば次のようにして作製することができる。即ち、まず、n型シリコン基板上に、バッファとなる低ドープのn型Si層120b1を2μm成膜した後、p型Si層120aを1μm、n型Si層120bを1μmそれぞれ成膜する。この際、p型Si層120aおよびn型Si層120bのいずれも、例えばCVD法により成膜することができる。これらのp型Si層120aおよびn型Si層120bを計9ペア積層する。尚、最後に成膜するp型Si層120a1は高ドープ層とする。このようにして形成したウェハ表面(p型Si層120a1上)に、金(Au)、チタン(Ti)および金をこの順に積層してなるドット電極を、例えば真空蒸着法およびフォトリソグラフィ法により形成する。
【0028】
上記のようにして作製したウェハを、所望のサイズにダイシングして数ミリ角のダイス形状(チップ)に細かく切断(分割)する。このダイシングによって露出した積層膜の側面は熱酸化処理によってコーティングする。このコーティングにより、積層膜側面部分が電解液Aと接触して光触媒反応による分解が抑制されると共に、側面で結晶欠陥が生じた場合に、この結晶欠陥を伝ってリークする暗電流が防止される。更に、半導体チップ12におけるプラス極とマイナス極とを分離絶縁させる機能も有している。これにより、p型Si層120aおよびn型Si層120bの多層構造を有する半導体チップ12を複数、作製することができる。
【0029】
尚、半導体チップ12の作製手法としては、上記のものに限らず、半導体ウェハに対し、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、基板上において複数の積層膜をそれぞれ柱状に(全体としては凹凸状に)加工した後、それらを分離するようにしてもよい。
【0030】
(発電部20)
発電部20は、例えば水素ボンベ21と、酸素ボンベ22と、燃料電池23とを備えたものである。水素ボンベ21は、水素ガスを貯蔵するものであり、ガス分離フィルタ13によって分離後の水素(図2(A)における水素取出口13aから取り出された水素)を収容すると共に、その水素を燃料電池23へ供給するものである。酸素ボンベ22は、酸素ガスを貯蔵するものであり、ガス分離フィルタ13によって分離後の酸素(図2(A)における酸素取出口13bから取り出された酸素)を収容すると共に、その酸素を燃料電池23へ供給するものである。燃料電池23は、水素および酸素の化学反応によって電気エネルギーを生成するものである。
【0031】
図7は、燃料電池23の一構成例を表したものである。このように、燃料電池23は、例えば、アノード電極23Aとカソード電極23Cとにより、電解質層23Bを挟み込んだものである。アノード電極23A側には、水素供給口23a1が設けられており、水素ボンベ21から水素が導入されるようになっている。カソード電極23C側には、酸素供給口23c1が設けられており、酸素ボンベ22から酸素が導入されるようになっている。カソード電極23C側には、また、反応生成物としての水(H2O)を排出するための排出口が設けられている。
【0032】
(給湯器30)
給湯器30は、容器11の内部から熱エネルギーを吸収(回収)する機能を有し、このような機能を利用して例えば温水Cを供給可能となっている。この給湯器30は、配管31に連結された熱変換部30aを有しており、配管31内の熱交換液体Bに吸収された熱エネルギーを回収しつつ、エネルギー回収後の熱交換液体Bを再び配管31へ戻して循環させるものである。これにより、配管31内を循環する熱交換液体Bは、冷却管31aを通過する過程において、容器11内を冷却しつつ熱エネルギーを吸収した後、配管31を伝って熱変換部30aの一端e1へ流れ込む。この後、熱変換部30aにおいて、熱交換液体Bに吸収された熱エネルギーが回収され、他端e2より、再び配管31へ流れ出す。このようにして、この給湯器30により、容器11内の熱エネルギーが吸収されるようになっている。
【0033】
[発電システム1の作用・効果]
(電気エネルギーの生成)
本実施の形態では、ガス生成部10において、容器11の内部へ取り込まれた光は、リフレクタ11aによって乱反射され、複数の半導体チップ12により吸収される。半導体チップ12では、p型Si層120aとn型Si層120bとからなるpn接合部120が複数層(ここでは9層)積層されているので、十分な起電力を生じる。例えば、pn接合部120を9層直列に積層してなる本実施の形態では、4.5V相当の起電力を得ることができる。これにより、容器11内では、ガス(水素および酸素)が気泡となって激しく発生し(光エネルギーがガスに変換され)、発生したガスは、ガス分離フィルタ13において水素と酸素とに分離される。
【0034】
分離された水素は発電部20の水素ボンベ21へ、酸素は酸素ボンベ22へそれぞれ貯蔵される。発電部20では、このようにして水素ボンベ21および酸素ボンベ22へ貯蔵された水素および酸素を利用して、電気エネルギーを生成する。具体的には、燃料電池23では、図7に示したアノード電極23A側に水素が供給されると、アノード電極23Aにおいて、式(1)の反応が起こる。一方、カソード電極23C側に酸素が供給されると、カソード電極23Cでは、以下の式(2)の反応が起こる。このような電気化学反応によって、電気エネルギーが生成される(化学エネルギーが電気エネルギーに変換される)。尚、カソード電極23Cにおいて生成された水は、排出口23c2を介して外部へ排出される。
2→2H+2e- ………(1)
(1/2)O2+2H++2e-→ 3H2 ………(2)
【0035】
(熱エネルギーの取得)
この一方で、容器11内では、上記のような電気分解による反応熱や、太陽光による輻射熱により温度上昇を生じる。本実施の形態では、容器11と給湯器30とが、配管31によって接続され、この配管31は、その一部(容器11側)が冷却管31aとして容器11の内部に設けられる一方、給湯器30において所定の熱変換器30aに連結されている。このような配管31内において熱交換液体Bを循環させることにより、熱交換液体Bは、冷却管31aを通過する過程において、容器11内を冷却しつつ熱エネルギーを吸収した後、配管31を伝って熱変換部30aの一端e1へ流れ込む。その後、熱変換部30aにおいて、熱交換液体Bが吸収した熱エネルギーが回収され、他端e2より、再び配管31へ流れ出す。このように、給湯器30では、熱交換液体Bの循環を利用して、容器11内部の熱エネルギーを吸収する。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、ガス生成部10において、容器11内に電解液Aと光電変換機能を有する複数の半導体チップ12とを封入したので、容器11内に入射した光を、複数の半導体チップ12により吸収させ、電解液Aにおいて電気分解を起こすことができる。これにより、容器内においてガス(水素および酸素)を発生させることができ、発電部20はその発生したガスを利用して、電気エネルギーを生成することが可能となる。一方、容器11内部では、上記電気分解による反応熱や、太陽光による輻射熱により温度上昇を生じるが、給湯部30により容器11内部から熱エネルギーを吸収することができる。よって、光エネルギーを利用して、電気エネルギーおよび熱エネルギーの双方を得ることが可能となる。
【0037】
即ち、太陽からの光エネルギーを、電気エネルギーとしてだけでなく熱エネルギーとしても利用することができ、光エネルギーを余すことなく活用することができる。このようなシステムの実現により、ハイブリッド型の発電システムとして様々な応用化が期待できる。
【0038】
また、容器11内に、冷却管31aを設ける(望ましくは容器11内の光入射側と反対の背面側に設ける)ことにより、上述のように、容器11内部から熱エネルギーを吸収できるだけでなく、容器11内で温度勾配を生じさせて、熱対流を起こすことができる。ここで、容器11内に封入された複数の半導体チップ12は、容器11の底部に沈殿することがあるが、沈殿した状態では、光利用効率が低下して起電力が生じにくい。上記のような熱対流が容器11内で起きると、電解液Aが攪拌され、半導体チップ12が均等に分散され、光利用効率が向上し易くなる。
【0039】
また、上記のような熱エネルギーの吸収により、次のような効果も期待できる。即ち、PN接合を用いた太陽電池素子では、温度上昇によってその変換効率が低下することが知られているが、このような素子の冷却効果も期待できる。
【0040】
更に、ガス生成部10において、容器11が所定の円筒形状を有すると共に、容器11に所定のリフレクタ11aが設けられているので、入射光を取り込み易い(取り込み可能な入射角度範囲が広い)ため、容器11の設置の自由度が高い。例えば、容器11を立てた状態においても使用可能であるため、例えばベランダ等の狭小な領域にも設置可能であり、特に家庭での設置に便利である。勿論、外壁や屋根等の平らな場所に、容器11を寝かした状態で複数並設することもできる(図8)。
【0041】
加えて、容器11が上記のような所定の円筒形状を有し、また側面の一部に所定のリフレクタ11aが設けられていることにより、例えば方位角−100°〜100°の範囲内および仰角15°〜90°の範囲内に位置する太陽から、容器11内部へ効率良く光が取り込まれる。つまり、従来のような平板状のパネル型太陽電池に比べ、季節や時刻を問わず、太陽光を効率的に取り込み易くなる。
【0042】
ここで、図9に、太陽の位置(方位角,仰角)と日光照射量との関係を示す。このように、方位角−100°〜100°の範囲および仰角15°〜90°の範囲をカバーし得るのであれば、大部分の太陽光をロス無く取り込み可能であることがわかる。また、図10には、太陽の位置による光取り込み効率について示す。
【0043】
更に、図11(A)には、太陽の方位角と吸収エネルギーについての関係について示す。ここでは、実施例1が、本実施の形態で説明したようなリフレクタ11aを有する円筒形状の容器11を用いた場合の特性を表している。尚、実施例2として、リフレクタを設けていない直方体形状(ボックス状)の容器を用いた場合の特性を示す。また、比較例としてウェハを用いた場合(パネル型の太陽電池)の特性と、夏至の日の地表到達照射量(W/m2)についても示す。但し、比較例で用いたウェハの平面積と、実施例1,2で用いたチップの総面積は同一とする。これにより、実施例1では、ウェハ状態の比較例に比べて、吸収エネルギーが大幅に向上していることがわかる。また、図11(B)には、仰角45°における太陽光の吸収エネルギー(棒グラフ)および吸収効率(折れ線グラフ)について、上記比較例および実施例1,2と、円筒形状の容器11にリフレクタを設けていない容器を用いた場合の例(実施例3)についても示す。これにより、太陽の仰角45°の場合の入射光に対する吸収エネルギーは、実施例3では595.44Wであるのに対し、実施例1では622.47Wとなることがわかり、円筒形状の容器11に対してリフレクタ11aを設けることにより、光取り込み効率を約4.5%向上させることができる。また、実施例1では、直方体の箱型容器の実施例2と比較しても、13%以上も吸収エネルギーが向上する。更に、パネル型の比較例と比較すると、約293%も向上している。
【0044】
また、図12には、ウェハの分割数毎の光入射角度と吸収光量の関係について示す。このように、ウェハの状態から分割数を増やすに連れて、吸収光量は入射角度に依存しにくくなることがわかる。より分割数が多い程、即ち容器11内に、より微細な半導体チップが数多く分散している程、光吸収率が高まることがわかる。
【0045】
次に、上記実施の形態の変形例について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の、構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0046】
(変形例)
図13は、変形例1に係るガス生成部の構成を説明するための図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。本変形例のガス生成部も、上記実施の形態と同様の、ガス分離部13、発電部20および給湯器30を備えた発電システムへ適用可能なものである。本変形例においても、ガス生成部は、容器11の内部に電解液Aが充填されたものであり、この電解液A中に複数の半導体チップ12を分散して含んでいる。また、容器11は、その全体形状が円筒形状となっており、側面の一部にリフレクタ41aを有している。また、リフレクタ41aは、例えば、容器11の側面に沿って、複数の突状部が並設されてなり、これらの突条部は、上記実施の形態の突条部11a1と同様の材料により構成され、上述した理由からその配置や本数が設定されている。また、各突状部の外形状は、シリンドリカル形状となっており、横断面形状における外形(輪郭)は、図13(B)に示したように、半円状または楕円状となっている。
【0047】
但し、本変形例では、このリフレクタ41aが中空状に成型されており、その内部を熱交換液体Bが流れるようになっている。即ち、本変形例では、リフレクタ41aが、上記実施の形態で説明した冷却管として機能し、このリフレクタ41aが、上述した配管31の一部として設けられている。この場合、リフレクタ41aは、上記実施の形態と異なり、容器11の側面に密着して設けられることが望ましい。これにより、容器11内の冷却効果を高めると共に、熱エネルギーを吸収し易くなるためである。
【0048】
本変形例のように、熱エネルギーを吸収するための冷却管は、容器11の内部に限らず、容器11の側面に隣接して設けるようにしてもよい。これにより、上記実施の形態と同等の効果を得ることができると共に、リフレクタ41aを冷却管として併用することができる。これにより、冷却管を容器11内部へ配設した場合に比べ、容器11内に熱対流の妨げとなるものがなくなるため、容器11内での攪拌効果をより効果的なものすることができる。
【0049】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、容器11およびリフレクタ11aの最適形状として、図3に示した形状を例に挙げたが、本発明の容器およびリフレクタの形状はこれに限らず、様々な形状を取り得る。例えば、図14(A)〜(D)、図15(A)〜(C)、図16(A)〜(C)、図17(A),(B)、図18(A)〜(C)の各図に示したような形状としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…太陽電池、21A…光射出面、21B…界面、22…透明基板、22A,24A…立体構造、22B…凸部、22C…頂部、22D…谷部、23…受光素子、24…透明電極、24B…谷部、25…光電変換層、26…反射電極、30…原盤、30A…型ロール、30B…板状原盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に、電解液と、光電変換機能を有する複数の半導体素子とが封入されてなり、光エネルギーを吸収してガスを発生するガス生成部と、
前記ガス生成部により発生したガスを利用して電気エネルギーを生成する発電部と、
前記容器内部から熱エネルギーを吸収する熱交換部と
を備えた発電システム。
【請求項2】
前記容器と前記熱交換部との間において熱交換媒体を循環させるための配管を備え、
前記配管の一部に相当する冷却管が、前記容器の内部に設けられるか、または前記容器の側面に隣接して設けられている
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記冷却管は、前記容器の内部において、局所的な領域に偏って1または複数設けられている
請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記冷却管は、前記容器の内部において、光入射側と反対側の領域に設けられている
請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記容器の側面に隣接して中空構造のリフレクタが設けられ、
前記リフレクタが前記冷却管として機能する
請求項2に記載の発電システム。
【請求項6】
前記容器の横断面形状は、多角形または円形である
請求項1に記載の発電システム。
【請求項7】
前記容器の側面の一部にリフレクタが設けられている
請求項6に記載の発電システム。
【請求項8】
前記リフレクタは、前記容器の側面との間に空隙を有する
請求項7に記載の発電システム。
【請求項9】
前記リフレクタは、複数の突条部を有する
請求項7に記載の発電システム。
【請求項10】
前記複数の突条部はそれぞれ、横断面形状が半円形または楕円形である
請求項9に記載の発電システム。
【請求項11】
前記容器は、複数並設されている
請求項1に記載の発電システム。
【請求項12】
前記半導体素子は、半導体ウェハを複数個分割して作製されたものである
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項13】
前記半導体素子は、p型シリコン層とn型シリコン層とが交互に複数積層されたものである
請求項12に記載の発電システム。
【請求項14】
前記ガスは、少なくとも水素(H2)を含むものである
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項15】
前記ガスは、前記水素と酸素(O2)とを含むものである
請求項14に記載の発電システム。
【請求項16】
前記ガス生成部により発生した水素および酸素を分離するガス分離フィルタを備えた
請求項15に記載の発電システム。
【請求項17】
前記発電部は、
前記ガス分離フィルタにより分離された水素および酸素をそれぞれ貯蔵するガス貯蔵部と、
前記ガス貯蔵部に貯蔵された水素および酸素を利用して電気エネルギーを生成する燃料電池と
を有する
請求項16に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−59664(P2012−59664A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204377(P2010−204377)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】