発電システム
【課題】本発明は、電力源を切り換えるときに電力不足が発生することを抑制することができる発電システムを提供する。
【解決手段】本発明の発電システムは、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部21と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部2と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部22と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部12と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部10と、制御部17とを備え、前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする。
【解決手段】本発明の発電システムは、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部21と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部2と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部22と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部12と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部10と、制御部17とを備え、前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用した発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と、その光起電力を利用し電解液を電気分解することにより水素を発生させる水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【0006】
また、発電機器、蓄電機器、蓄熱機器および水素貯蔵機器を備え、エネルギーの運用を最適化する分散エネルギーシステムが知られており(例えば、特許文献2)、燃料電池と水電解槽とを一体化した燃料電池が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【特許文献2】特開2004−312798号公報
【特許文献3】特許第4035313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のエネルギーシステムでは、電力源の切り換えについて十分に検討されていないため、効率よく安定した電力供給が行われていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率よく安定して発電および電力の供給を行うことのできる発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする発電システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵する水素貯蔵部とを備えるため、電力需要が多い場合には、光電変換部の光起電力を外部出力することができる。また、電力需要が少ない場合には、光電変換部の光起電力を水電解部に出力し水を電気分解し水素ガスを発生させることができ、発生させた水素ガスを水素貯蔵部に貯蔵することができる。このことにより、太陽光のエネルギーを燃料電池の燃料となる水素ガスとして貯蔵することができる。
本発明によれば、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部とを備えるため、光電変換部の光起電力が低下した場合や電力需要が多くなった場合に、燃料電池部により発電し電力需要を満たすように電力を外部出力することができる。このことにより、電力不足が生じることを抑制することができる。また、燃料電池部は、水電解部により発生させ、水素貯蔵部に貯蔵した水素ガスを燃料とすることができるため、太陽光をエネルギー源として電力を外部出力することができる。
本発明によれば、制御部は光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて調湿部を制御する機能を有するため、燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に調湿部が加湿可能な状態となるように調湿部を制御することができる。このことにより、燃料電池部へ迅速に加湿された水素ガスまたは空気を供給することができ、燃料電池部が迅速に発電電力を外部出力することができる。このことにより、電力源に燃料電池部が加わった場合でも電力需要にすぐに対応することができ、効率よく安定して発電および電力の供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の発電システムの概念図である。
【図2】本発明の一実施形態の発電システムの概略配管図である。
【図3】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図4】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図5】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図6】図5の点線A−Aにおける水素製造装置の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図8】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる燃料電池部の構成を示す概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図17】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図18】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図19】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【図20】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発電システムは、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の発電システムにおいて、前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記調湿部が加湿可能な状態となるように前記調湿部を制御する機能を備えることが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池部へ迅速に加湿された水素ガスまたは空気を供給することができ、燃料電池部が迅速に発電電力を外部出力することができる。このことにより、電力源に燃料電池部が加わった場合でも電力需要にすぐに対応することができ、効率よく安定して発電および電力の供給を行うことができる。
本発明の発電システムにおいて、制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記燃料電池部が作動温度以下の所定の温度に昇温するように前記燃料電池部を制御する機能をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池部を迅速に作動温度に昇温することができ、燃料電池部が迅速に発電電力を外部出力することができる。このことにより、電力源に燃料電池部が加わった場合でも電力需要にすぐに対応することができ、一時的な電力不足が生じるのを抑制することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記調湿部は、前記水素貯蔵部に貯蔵する水素ガスの湿度を調節することが好ましい。
このような構成によれば、水電解部により発生させた水素ガスを調湿部により除湿し水素貯蔵部に貯蔵することができる。
【0014】
本発明の発電システムにおいて、前記調湿部は、加湿部および除湿部を有することが好ましい。
このような構成によれば、調湿部により燃料電池部に供給する水素ガスおよび空気の加湿を行うことができる。また、調湿部により水電解部により発生させた水素ガスの除湿を行うことができる。
本発明の発電システムにおいて、水素流路をさらに備え、前記水素流路は、前記水電解部により発生させた水素ガスが前記除湿部を流れ、前記水素貯蔵部に貯蔵される経路と、前記燃料電池部の燃料となる水素ガスが前記加湿部を流れ前記燃料電池部に供給される経路とを有することが好ましい。
このような構成によれば、水電解部により発生させた水素ガスを水素貯蔵部に貯蔵することができ、燃料電池部の燃料となる水素ガスを加湿して燃料電池部に供給することができる。
【0015】
本発明の発電システムにおいて、前記水素流路は、水素ガスが流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有することが好ましい。
このような構成によれば、複数のバルブにより水素ガスが流れる経路を変更することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部の光起電力を前記水電解部に出力する回路と、前記光電変換部の光起電力を外部出力する回路とを切り換える切換部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、切換部により光電変換部の光起電力の出力先を変更することができる。
【0016】
本発明の発電システムにおいて、前記切換部は、前記光電変換部の光起電力および前記燃料電池部の発電電力のうちどちらか一方または両方を回路を切り換えて外部出力できるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、切換部により光電変換部の光起電力および燃料電池部の発電電力のうちどちらか一方または両方を切り換えて外部出力することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記発電システムの制御モードを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記発電システムの構成要素に出力する出力手段とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部により発電システムの制御モードを切り換えることができる。
【0017】
本発明の発電システムにおいて、日射量計または照度センサを含むセンサ部をさらに備え、前記入力手段は、前記センサ部からの情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、制御部がセンサ部からの情報に基づき発電システムの制御モードを切り換えることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、制御部が電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報に基づき発電システムの制御モードを切り換えることができる。
【0018】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、受光面とその裏面を有し、前記水電解部は、前記光電変換部の裏面側に設けられ、前記光電変換部および前記水電解部は、水素製造装置を構成することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部と水電解部との配線距離を短くすることができ、オーミックロスを少なくすることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、前記光電変換部の裏面上にそれぞれ設けられた第1電解用電極および第2電解用電極を有し、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素ガスであり他方は酸素ガスであることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置を構成する第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。また、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。また、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0019】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置に含まれる光電変換部に積層構造のものを利用することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置において第2電解用電極と光電変換部の裏面との間にリーク電流が発生するのを防止することができる。
【0020】
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置内の内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0021】
本発明の発電システムにおいて、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を少ない工程で設けることができ、製造コストを低減することができる。
【0022】
本発明の発電システムにおいて、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を設けることなく、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に光を入射させることにより起電力を生じさせることができる。
【0023】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の第1区域と第2区域との間生じた起電力を第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1区域と第2区域との間に、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく発生させることができる。
【0024】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に起電力を生じさせることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を透光性基板の上に形成することができる。
【0025】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に高電圧の起電力を第1および第2電解用電極に出力することができる。
本発明の発電システムにおいて、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により燃料電池の燃料となる水素ガスを製造することができる。
【0026】
本発明の発電システムにおいて、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により、より効率的に水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、水素ガスまたは酸素ガスが発生する反応の触媒面積を広くすることができる。
【0027】
本発明の発電システムにおいて、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により電解液から水素ガスを効率よく発生させることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により電解液から酸素ガスを効率よく発生させることができる。
【0028】
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とをさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面とを電解液室に面して設けることができ、第1および第2電解用電極を電解液に接触させることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、隔壁により第1気体と第2気体を分離することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡を容易に解消することができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0030】
発電システムの構成
図1は本実施形態の発電システムの概念図であり、図2は本実施形態の発電システムの概略配管図であり、図3、図4は本実施形態の発電システムの概略回路図である。
本実施形態の発電システムは、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部21と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または水電解部21に出力する光電変換部2と、需要電力または光電変換部2の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部22と、水電解部21により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを記燃料電池部22に供給する水素貯蔵部12と、燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部10と、制御部17とを備え、制御部17は、光電変換部2の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、調湿部10を制御する機能を有することを特徴とする。
【0031】
1.光電変換部2
光電変換部2は、太陽光を受光することにより光起電力が生じる部分であり、この起電力を外部出力または水電解部21に出力する。光電変換部2の光起電力を外部出力することにより、この電力を外部回路において利用することができる。また、光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することにより、光起電力を利用して水を電気分解し、水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。このことにより、電力需要が少ない場合や光電変換部2の光起電力が大きい場合に、光電変換部2の光起電力により水素ガスを発生させることができる。この水素ガスは、水電解部21から水素流路を流通させ除湿部49により除湿した後、水素貯蔵部12に貯蔵することができる。
【0032】
光電変換部2は、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または水電解部21に出力するために、切換部29と電気的に接続することができる。このことにより、切換部29により光電変換部2の光起電力の出力先を切り換えることができる。
【0033】
光電変換部2は、太陽光を受光することにより光起電力が生じるものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
また、光電変換部2は、後述する水素製造装置23に含まれてもよい。この場合の光電変換部2についての説明は後述する。また、水素製造装置23に含まれる光電変換部2についての説明は、水素製造装置23に含まれない光電変換部2についても矛盾がない限り当てはまる。
また、光電変換部2は、複数であってもよい。例えば、複数の太陽電池パネルと後述の水素製造装置からなってもよい。この場合、水素製造装置に含まれる光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力し、太陽電池パネルの光起電力を外部出力してもよい。また、太陽電池パネルの光起電力を水電解部21に出力してもよい。また、水素製造装置に含まれる光電変換部2の光起電力および太陽電池パネルの光起電力のすべてを外部出力してもよい。この場合、発電システムは、図4のような回路図を有することができる。
【0034】
2.水電解部
水電解部21は、光電変換部2の光起電力を利用して水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。水電解部21は第1電解用電極8と第2電解用電極7とを含む電解槽とすることができる。この電解槽に電解液を溜めて、光電変換部2の光起電力を第1および第2電解用電極8、7に出力することにより、電解液に含まれる水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。
また、水電解部21は後述する水素製造装置23に含まれてもよい。この場合の第1電解用電極8および第2電解用電極7についての説明は後述する。また、水素製造装置23に含まれる第1電解用電極8および第2電解用電極7についての説明は、水素製造装置23に含まれない第1電解用電極8および第2電解用電極7についても矛盾がない限り当てはまる。
【0035】
3.水素製造装置
図5は、本実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略平面図であり、図6は、図5の点線A−Aにおける水素製造装置の概略断面図であり、図7は、本実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略裏面図である。
また、図8〜14は、それぞれ本実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図であり、図6に対応する概略断面図である。
水素製造装置23は、受光面とその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた水電解部21を有することができる。
また、水素製造装置23は、光電変換部2の裏面上にそれぞれ設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7を有し、光電変換部2の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素ガスであり他方は酸素ガスである。
【0036】
第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極8の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極7の表面で第2気体を発生させることができる。また、第1気体および第2気体のうち一方は水素ガスであるため、水素ガスを製造することができる。
また、光電変換部2の裏面上に第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けるため、光電変換部2の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部2へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
さらに、光電変換部2の裏面上に第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極8、7、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部2へ入射する光量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0037】
また、水素製造装置23は、透光性基板1、第1電極4、第2電極5、第1導電部9などを有することもできる。
以下、水素製造装置23について説明する。
【0038】
3−1.透光性基板
透光性基板1は、水素製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0039】
また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するため、透光性基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0040】
3−2.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図13、14のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図6、9、12のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図11のように第2電解用電極7と接触してもよい。また、第1電極4は、図8、10のような場合、切換部29および配線50を介して第2電解用電極7と電気的に接続することができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0041】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いていることができる。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0042】
3−3.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面側に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図6、8〜12のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図13、14のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図13、14のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0043】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素ガスであり、他方が酸素ガスの場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素ガスと酸素ガスが発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図12、14のように並べて設けられた光電変換層を第4導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0044】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0045】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0046】
3−3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0047】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0048】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0049】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0050】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0051】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0052】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図13、14のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図13のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第4導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0053】
3−3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0054】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素ガスをキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0055】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0056】
3−3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0057】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0058】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0059】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0060】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0061】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0062】
3−3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0063】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0064】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0065】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0066】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0067】
3−4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。また、第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることもできる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、切換部29および配線50を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0068】
3−5.第1導電部
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図6、9のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図12のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0069】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0070】
3−6.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図6、9のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図6、8〜12のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図13、14のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0071】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0072】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0073】
3−7.第2導電部、第3導電部、第4導電部
第2導電部24、第3導電部25は、絶縁部11と第2電解用電極7との間、または、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部24、第3導電部25を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部24、第3導電部25は、例えば、図12〜14に示すように設けることができる。
第2導電部24、第3導電部25は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第4導電部33は、図12、14のように光電変換層を直列接続するように設けることができる。
【0074】
第2導電部24、第3導電部25または第4導電部33は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0075】
3−8.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面上にそれぞれ設けられる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面とをそれぞれ有することができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図6、12のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図13、14のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0076】
図9、10のように第1電解用電極8が光電変換部2の裏面または第2電極5と接触していない場合、第1電解用電極8は、切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図8、10のような場合、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と切換部29を介して電気的に接続することができる。
【0077】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であってもよく、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有してもよく、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0078】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素ガスであり、他方は酸素ガスである。
【0079】
3−9.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒を含んでよく、水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素ガスを発生させることができる。
【0080】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0081】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0082】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0083】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0084】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0085】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0086】
3−10.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素ガスを発生させることができる。
【0087】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0088】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「3−9.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0089】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0090】
3−11.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。
また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、背面基板14に箱状のものを用いる場合、背面基板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0091】
また、背面基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な背面基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0092】
3−12.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0093】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0094】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0095】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0096】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0097】
3−13.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、水素製造装置23内の電解液および水素製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。背面基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0098】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と背面基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0099】
3−14.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0100】
3−15.給水口
給水口18は、水素製造装置23に含まれるシール材16の一部、もしくは背面基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく水素製造装置23へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0101】
3−16.第1気体排出口、第2気体排出口
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、第1電解用電極8の端部および第2電解用電極7の端部にそれぞれ近接して設けられる。このことにより、第1気体排出口20から第1気体を回収することができ、第2気体排出口19から第2気体を回収することができる。
【0102】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置23を設置したとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置23を設置したとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、水素製造装置23を光電変換部2の受光面が水平面に対して傾斜するように設置し、前記受光面に太陽光を入射させた場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、例えば、シール材16に開口を設けることにより形成することができる。また、第1気体排出口20、第2気体排出口19に電解液が流入しないように流入防止弁を設けることもできる。
【0103】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路と導通することができる。また、第1気体排出路は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、水素製造装置23で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。また、第1気体排出路または第2気体排出路は、水素貯蔵部12と接続することができる。このことにより水素製造装置23で発生させた水素ガスを水素貯蔵部12で貯蔵することができる。なお、第1気体排出路および第2気体排出路のうち一方は、水素流路を構成することができ、他方は、空気流路を構成することができる。
【0104】
3−17.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる。
【0105】
4.燃料電池部
燃料電池部22は、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する。また、燃料電池部22は、電力需要および光電変換部2の光起電力に応じて発電することができる。このことにより、光電変換部2の変動や電力需要の変動により供給電力の不足が生じることを抑制することができる。
図15は、本実施形態の発電システムに含まれる燃料電池部22の概略断面図である。
燃料電池部22は、燃料極51と、空気極52と、燃料極51と空気極52との挟まれた電解質膜53を有することができる。燃料極51に水素ガスを供給し、空気極52に空気または酸素ガスを供給することにより、燃料極51と空気極52との間に起電力を発生させることができる。燃料極51および空気極52は、起電力を外部出力するため外部回路と電気的に接続することができる。燃料極51および空気極52は、切換部29を介して起電力を外部回路に出力することもできる。
【0106】
また、電解質膜53は、湿潤した状態でイオン導電性を示す電解質膜であってもよい。また、電解質膜53は、イオン導電種をH+とするものであってもよく、OH-とするものであってもよい。
燃料電池部22は、例えば、固体高分子形燃料電池とすることができる。この場合、電解質膜53は、固体高分子膜とすることができ、電解質膜53、燃料極51および空気極52は、膜電極接合体(MEA)を構成することができる。
電解質膜53としては、例えば、パーフルオロスルホン酸基ポリマーを含む電解質膜とすることができる。このような電解質膜53は、水分を含まなければイオン導電性は示さないため、電解質膜53に水分を供給する必要がある。また、このようなイオン導電性を示すために水分が必要な電解質膜53は、適度な湿潤状態を維持する必要があり、燃料電池部22に水分を適切に供給する必要がある。燃料電池部22に供給する水分量が多すぎると、電解質膜53の含水率が高くなり電解質膜53の機械的強度が低下する場合や燃料極51内または空気極52内の細孔がふさがれ反応ガスの拡散を低下しセル電圧を低下させる場合(フラディング現象)などがある。また、燃料電池部22に供給する水分量が少なすぎると、電解質膜53のイオン伝導率が低下し、セル電圧が低下する場合がある。従って、電解質膜53が適度な湿潤状態で維持されるように燃料電池部22に水分を供給する必要がある。
【0107】
燃料電池部22に水分を供給する方法として、燃料である水素ガスを加湿して燃料極51に供給する方法がある。また、空気極52に供給する空気(または酸素ガス)を加湿してもよい。この方法によれば、水素ガス、空気(酸素ガス)の湿度を制御することにより燃料電池部22に供給する水分量を制御することができ、燃料電池部22に水分を適切に供給することができる。
燃料電池部22に供給する水素ガス、空気(酸素ガス)には、調湿部10により加湿できる。調湿部10による水素ガス、空気(酸素ガス)の加湿については後述する。
【0108】
燃料電池部22は、発電するためには一定の温度以上である必要がある。例えば、燃料電池部22が固体高分子形燃料電池である場合、その作動温度は、60〜100℃である。従って、特に燃料電池部22の起動時において、迅速に燃料電池部22を作動温度に昇温する必要がある。なお、燃料電池部22は、燃料電池部22を昇温するために加熱部を有することができる。
また、燃料電池部22が発電を開始した後は、水素ガスなどが燃料極51、空気極52で化学反応することにより反応熱が生じるため、燃料電池部22を冷却する必要がある。このため、燃料電池部22は、ラジエターなどの冷却器を備えることができる。
【0109】
従って、燃料電池部22による発電を迅速に開始するためには、燃料電池部22を迅速に作動温度に昇温することと、電解質膜53が適度な湿潤状態で維持されるように燃料電池部22に水分を迅速に供給することと、燃料極51に水素ガスを供給し空気極52に空気(酸素ガス)を供給することが必要である。
なお、燃料電池部22は、燃料電池発電準備モードとすることができる。具体的には、制御部17からの信号により、燃料電池部22を作動温度以下の所定の温度に昇温することができる。このことにより、燃料電池部22の発電電力を外部出力したいときに燃料電池部22を迅速に作動温度とすることができ、燃料電池部22の発電電力を迅速に外部術力することができる。また、燃料電池部22と共に調湿部10も燃料電池準備モードとすることができる。
【0110】
燃料電池部22の燃料極51に供給する水素ガスは、水素貯蔵部12に貯蔵した水素ガスであってもよく、水素ボンベから供給される水素ガスであってもよい。また、メタノールやガソリンや都市ガスを改質することにより発生させた水素ガスであってもよい。
また、燃料電池部22の空気極52に供給する空気(酸素ガス)は、空気圧縮機から供給される空気または酸素ガスであってもよく、ボンベから供給される空気または酸素ガスであってもよく、外気から取り込んだ空気であってもよい。
また、燃料電池部22は、図1のように信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、燃料電池部22と制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。
さらに燃料電池部22は、制御部17から入力される情報により電力負荷追従運転できるように設けられてもよい。
【0111】
5.切換部
切換部29は例えば図3または図4のような電気回路を有することができる。また、図16〜18は、それぞれ本実施形態の発電システムの概略回路図である。なお、図面では1つの切換部29を示しているが、複数の切換部29からなってもよい。
切換部29は、光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力する回路と、光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力する回路とを切り換えることができるように設けられる。このことにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて水を電気分解し水素ガスを製造することができる。
【0112】
また、切換部29は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液から水素ガスおよび酸素ガスを発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる。例えば、深夜電力を用いて水素ガスを製造することができる。切換部29が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部29が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
また、切換部29は、図1のように信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、切換部29と制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。
【0113】
例えば、水素製造装置23が図10のような断面を有し、発電システムが図3のような電気回路を有する場合、例えば、SW(スイッチ)1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。
また、SW1、SW2、SW5、SW6がOFF状態であり、SW3、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW3、SW4がOFF状態であり、SW5、SW6がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5、SW6がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0114】
また、発電システムが複数の光電変換部2を有する場合、例えば、水素製造装置23と太陽電池パネルとの両方を備える場合であって、発電システムが図4のような電気回路を有する場合、SW1、SW2、SW11、SW12をON状態であり、SW3、SW4、SW9、SW10がOFF状態である場合、複数の光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力することができる。なお、図4では、発電システムが2つの光電変換部2を有する場合についての回路図であるが、発電システムは3つ以上の光電変換部2を有することもできる。例えば、発電システムは、水素製造装置32と複数の太陽電池パネルを備える場合である。
また、SW3、SW4、SW9、SW10がON状態であり、SW1、SW2、SW11、SW12をOFF状態である場合、複数の光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することができる。
また、SW3、SW4、SW11、SW12がON状態であり、SW1、SW2、SW9、SW10がOFF状態の場合、一方の光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力することができ、他方の光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することができる。
【0115】
例えば、水素製造装置23が図8のような断面を有し、発電システムが図16のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0116】
例えば、水素製造装置23が図9のような断面を有し、発電システムが図17のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0117】
例えば、水素製造装置23が図6、11〜14のような断面を有し、発電システムが図18のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達しない場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。
また、SW1、SW2、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部2が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達する場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7へ出力することができる。従って、図18のような電気回路を有する場合でも、切換部29により、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力させる回路とを切り換えることができる。
また、SW3、SW4がON状態であり、SW1,SW2がOFF状態の場合、第2外部回路から入力される起電力、または第2外部回路から入力される起電力と光電変換部2が受光することにより生じる起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0118】
また、切換部29は、制御部12からの情報を入力することができ、入力した情報に基づき回路の切換を行うことができる。このことにより、切換部29は、制御部12が選択した回路に切り換えることができる。
また、切換部29は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じている場合、第1外部回路に光電変換部2で生じた起電力を出力することができ、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じていない場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7に光電変換部2で生じた起電力を出力することができる。
さらに切換部29は、第2外部回路の起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第2外部回路が供給する電力が電気需要より大きくなっている場合、第2外部回路が供給する電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができる。
【0119】
6.調湿部
調湿部10は、燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気(酸素ガス)の湿度を調節する部分である。また、調湿部10は、水電解部21により発生させ、水素貯蔵部12に貯蔵する水素ガスを除湿する部分であってもよい。
調湿部10は、加湿部48または除湿部49を有することができる。また、調湿部10は、加湿部48と除湿部49の両方を有することもできる。また、離れて設けられた加湿部48と除湿部49からなってもよい。また、調湿部10は、水素流路の経路内および空気(酸素ガス)流路の経路内にそれぞれ設けられてもよい。
調湿部10は、燃料電池部22の燃料となる水素ガスの湿度および水素貯蔵部12に貯蔵する水素ガスの湿度を調節するように設けることができる。このことにより、加湿された水素ガスを燃料電池部22の燃料極51に供給することができ、水電解部21により発生させた水素ガスを除湿した後、水素貯蔵部12に貯蔵することができる。
また、調湿部10は、燃料電池部22の空気極52に供給する空気または酸素ガスの湿度を調節するように設けられてもよく、水電解部21により発生させた酸素ガスを除湿するように設けられてもよい。
【0120】
加湿部48としては、例えば、昇温した水に気体をバブリングするバブラー加湿方式のものや気体に水蒸気を直接供給する水蒸気添加方式のものが挙げられる。
なお、「調湿部10が加湿可能な状態となる」とは、調湿部10がすぐに燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気(酸素ガス)の加湿を行える状態となることをいう。例えば、調湿部10がバブラー加湿方式である場合、水素ガスまたは空気をバブリングさせる水の温度を昇温した状態とすることをいう。この昇温された水に水素ガス又は空気をバブリングさせることにより加湿された水素ガス又は空気を燃料電池部22に供給することができる。また、例えば、調湿部48が水蒸気添加方式の場合、調湿部48が水素流路または空気流路にすぐに水蒸気を添加できる状態とすることをいう。なお、加湿部48が他の方式であってもよい。調湿部10を加湿可能な状態にすることにより、調湿部10を燃料電池発電準備モードとすることができる。
【0121】
また、除湿部49としては、例えば、気体を露点温度以下に冷却して除湿を行う冷却方式のものや圧縮機で気体を圧縮することにより除湿を行う圧縮方式のものや水分を吸着しやすい固体に気体を通過させる吸着方式のものであってもよい。
また、調湿部10は燃料電池部22に供給する気体の湿度または水素貯蔵部12に貯蔵する水素ガスの湿度を検知する湿度センサを備えてもよい。このことにより、湿度センサの測定値に基づき調湿部10を制御することができる。なお、この湿度センサは、センサ部41に含まれてもよい。
また、調湿部10は、図1のように信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、調湿部10と制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。また、調湿部10は、制御部17からの信号により「加湿可能な状態となる」ことができる。
【0122】
7.水素貯蔵部
水素貯蔵部12は、水電解部21により発生させた水素ガスを貯蔵することができるように設けられ、また、貯蔵した水素ガスを燃料電池部22に供給できるように設けられる。また、水素貯蔵部12は水素流路を介して水電解部21または燃料電池部22と導通することができる。
水素貯蔵部12は、例えば、圧縮水素タンク、水素吸蔵合金である。また、水素貯蔵部12が圧縮水素タンクの場合、水素貯蔵部12は、水電解部21により発生させた水素ガスを圧縮させるための圧縮機を備えてもよい。なお、除湿部49が圧縮方式である場合、除湿部49で圧縮した水素ガスを圧縮水素タンクに貯蔵することができ、水素貯蔵部12が圧縮機を備えなくてもよい。
【0123】
8.水素流路、空気(酸素ガス)流路
水素流路は、水電解部21により発生させた水素ガスが除湿部49を流れ、水素貯蔵部12に貯蔵される経路と、燃料電池部22の燃料となる水素ガスが加湿部48を流れ燃料電池部22の燃料極51に供給される経路とを有してもよい。また、水素流路は、水素ガスが流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有してもよい。このことにより水電解部21の稼働状況および燃料電池部22の稼働状況に合わせて水素流路を変更することができる。なお、これらのバルブは信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、これらのバルブと制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。また、バルブは、水素流路または空気流路を流れる気体の流量を調節できるように設けられてもよい。また、水素流路または空気流路は、流量調節弁を備えてもよく、流量計を備えてもよい。
【0124】
また、水素流路は、燃料電池部22に含まれる燃料流路60を流通した水素ガスが再び燃料電池部22に供給されるような経路を有してもよく、水素ボンベの水素ガスが燃料電池部22に供給されるような経路を有してもよい。これらの経路もバルブにより変更することができ、制御部17により制御されてもよい。なお、燃料流路60を流通した水素ガスは、凝縮器45により水素ガスに含まれる水が除去されてもよい。
水素流路は、例えば、図2のように設けることができる。
【0125】
空気流路は、水電解部21により発生させた酸素ガスが除湿部49を流れ、空気圧縮機44に貯蔵される経路と、空気圧縮機44の空気または酸素ガスが加湿部48を流れ燃料電池部22の空気極52に供給される経路とを有してもよい。また、空気流路は、空気(酸素ガス)が流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有してもよい。このことにより水電解部21の稼働状況および燃料電池部22の稼働状況に合わせて空気流路を変更することができる。なお、これらのバルブは信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、これらのバルブと制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。また、空気流路は、燃料電池部22に含まれる空気流路61を流れた空気(酸素ガス)が外部へ排出されるように設けられてもよい。また、空気(酸素ガス)を排出する前に凝縮器45により空気(酸素ガス)に含まれる水を除去してもよい。
空気流路は、例えば、図2のように設けることができる。
【0126】
9.水流路
水流路は、調湿部10(加湿部48、除湿部49)、水電解部21および凝縮器45と水タンク46とを導通させるように設けることができる。水流路は、水を流通させるためにポンプまたはバルブを有することができる。
水流路は、例えば図2のように設けることができる。図2を用いて説明すると、水タンク46に溜めた水をポンプ1(P1)により水電解部21に供給することにより水電解部21中の電解液の減少を防止することができる。また、凝縮器45により分離した水をバルブ9、10(V9、V10)を開くことにより水タンク46に回収することができる。また、除湿部49により発生した水は加湿部48で利用することができ、また、P2、P3で加湿部48に水タンク46の水を供給することができる。
なお、これらのバルブ、ポンプは信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、これらのバルブ、ポンプと制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。
【0127】
10.センサ部
センサ部41は、日射量計または照度センサを含むことができる。このことにより、光電変換部2に入射する光量に関する情報を得ることができる。また、センサ部41に含まれる日射量計または照度センサの出力は、「光電変換部2の光起電力に関する情報」となってもよい。
また、センサ部41は、燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気(酸素ガス)の湿度を検知する湿度センサを含むことができる。
センサ部41は制御部17に検知信号を出力することができる。このことにより、センサ部41の検知信号に基づき制御部17により本実施形態の発電システムを制御することができる。
【0128】
11.制御部
制御部17は、光電変換部2の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて発電システムを制御する機能を備える。また、制御部17は、切換部29、燃料電池部22、調湿部10、センサ部41、バルブおよびポンプと信号線または無線により接続することができる。また、制御部17は、外部の情報通信網と接続することができる。このことにより、制御部17により本実施形態の発電システムを制御することができる。
【0129】
制御部17は、入力手段、設定手段、出力手段を有することができる。また、制御部17は、入力手段による入力をするため、または出力手段により出力をするために、有線または無線の信号線によりセンサ部14、外部情報網、サーバー、調湿部10、燃料電池部22、切換部29、バルブ、ポンプ、光電変換部2などと接続することができる。
【0130】
入力手段は、例えば、センサ部41からの信号または光電変換部2の光起電力の測定値の信号を入力することができる。このことにより、制御部17は、「光電変換部2の光起電力に関する情報」を入力することができる。
また、入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することができる。このことにより、制御部17は、「需要電力に関する情報」を入力することができる。
設定手段は、入力手段に入力された情報に基づき、切換部29に含まれるスイッチのオン・オフ、燃料電池部22の起動・停止・出力の調整、調湿部10の起動・停止、バルブの開閉、ポンプの起動・停止などを設定することができる。
出力手段は、設定手段で設定した情報を調湿部10、燃料電池部22、切換部29、バルブ、ポンプなどに出力することができる。調湿部10、燃料電池部22、切換部29、バルブ、ポンプなどはこの出力手段から出力された情報により制御されることができる。
これらの手段により本実施形態の発電システムを制御することができる。
【0131】
図19は、制御部により発電システムを制御するフローチャートである。このフローチャートのように制御することにより、発電システムを燃料電池発電モード、水素生成モード、太陽電池+燃料電池発電モード、太陽電池発電モード、太陽電池発電+水素生成モードを切り換えることができる。
ここでは、図1〜4、図19により発電システムの各モードについて説明する。なお、ここでは、上述の水素製造装置23と燃料電池部22を備えた発電システムについて説明する。また、水素製造装置23の他に太陽電池パネルを備えた発電システムについても説明する。この場合、光電変換部2は、水素製造装置23に含まれるものと、太陽電池パネルに含まれるものとになり、複数となる。
【0132】
まず、制御部17は、入力手段により光電変換部2の光起電力(光電変換部2の光起電力に関する情報)および需要電力(需要電力に関する情報)を入力することができる。光電変換部2の光起電力は、光電変換部2の配線や切換部29の配線から測定した光電変換部2の光起電力であってもよく、センサ部41に含まれる日射計や照度計などから予測される光電変換部2の光起電力であってもよい。後者の場合、入力部に入力されるのは、日射量や照度となり、制御部17により光起電力を計算することもできる。
需要電力は、入力手段が外部情報網、サーバーより入力することができる。消費される電力を供給するために必要な電力であり、サーバーなどにより予測された電力量を入力することができる。
【0133】
次に、制御部17は、光電変換部2の光起電力および需要電力のうちどちらか一方が所定値を上回っているか否かを判断する。ここで所定値とは、光電変換部2の光起電力の場合、光起電力を外部回路に出力、または水電解部21に出力するのに十分な所定の電力量である。また、需要電力の所定値とは、光電変換部2または燃料電池部22からの電力の供給を必要としない所定の需要電力量である。例えば、電力系統からの電力のみで満たすことができる需要電力量である。
制御部17が光電変換部2の光起電力および需要電力の両方が所定値を下回っていると判断する場合には、制御部17は、出力手段から、発電システムを待機モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、夜間であり、発電システムが電力を供給する施設の電力需要がほとんどない場合などである。
このような場合、例えば、制御部17は、切換部29に対して、すべてのスイッチをOFFとする信号を出力することができ、バルブに対しては閉じる信号、ポンプ、燃料電池部22、調湿部10に対してはOFFとする信号を出力することができる。このことにより発電システムを待機モードとすることができる。
【0134】
制御部17が光電変換部2の光起電力および需要電力のうちどちらか一方が所定値を上回っていると判断する場合、制御部17は、光電変換部2の光起電力が所定値を上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が所定値を下回り、需要電力が所定値を上回ると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを燃料電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、夜間であり、発電システムにより電力を供給する必要がある場合である。
このような場合、例えば、制御部17は、燃料電池部22が起動する信号を燃料電池部22に対して出力し、加湿部48に対してONとする信号を出力し、V1(バルブ1)またはV2、V3、V4、V5、V6を開ける信号を各バルブに出力する。また、制御部17は、切換部29に対して、SW7(スイッチ7)およびSW8をONとする信号を出力する。このことにより、第1外部回路に燃料電池部22が発電した電力を供給することができ、燃料電池発電モードにすることができる。
この後、制御部17は、燃料電池発電制御信号を燃料電池部22などに出力することができる。具体的には、制御部17は、入力手段により需要電力を入力し、この入力した需要電力に基づいて燃料電池部22の発電電力を変動させ、電力負荷追従運転をするような信号を燃料電池部22、調湿部10、バルブなどに出力することができる。
【0135】
制御部17が、光電変換部2に光起電力が所定値を上回っていると判断する場合、制御部17は、需要電力が所定値を上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が所定値を上回り、需要電力が所定値を下回ると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを水素生成モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、発電システムが電力を供給する施設の電力需要がほとんどない場合などである。
このような場合、制御部17は、切換部29に対しSW1、SW2をOFFとし、SW3、SW4をONとする信号を出力する。このことにより、光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することができ、水電解部21により水素ガスを製造することができる。また、発電システムが太陽電池パネルを備える場合、具体的には、発電システムが図4のような電気回路図を有する場合、制御部17は、切換部29に対しSW1、SW2、SW11、SW12をOFFとし、SW3、SW4、SW9、SW10をONとする信号を出力する。このことにより、水素製造装置23に含まれる光電変換部2の光起電力と、太陽電池パネルの光起電力との両方を利用して水電解部21により水素ガスを製造することができる。
また、制御部17は、除湿部49、空気圧縮機44、水素貯蔵部12に対してONとする信号を出力し、V2(バルブ2)、V3、V7、V8に対してバルブを開く信号を出力することができる。このことにより、水電解部21で発生させた水素ガスおよび酸素ガスを除湿部49で除湿した後、それぞれ水素貯蔵部12および空気圧縮機44に貯蔵することができる。この貯蔵した水素ガスおよび酸素ガスは、燃料電池部22を稼動させたときに燃料電池部22に供給することができる。
【0136】
制御部17が、光電変換部2の光起電力および需要電力の両方が所定値を上回っていると判断する場合、制御部17は、光電変換部2の光起電力が需要電力を上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を下回っていると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池+燃料電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、発電システムが電力を供給する施設の電力需要が多い場合などである。
このような場合、制御部17は、例えば、燃料電池部22が起動する信号を燃料電池部22に対して出力し、加湿部48に対してONとする信号を出力し、V1(バルブ1)またはV2、V3、V4、V5、V6を開ける信号を各バルブに出力する。また、制御部17は、切換部29に対して、SW1、SW2、SW7およびSW8をONとし、SW3、SW4をOFFとする信号を出力する。このことにより、燃料電池部22が発電した電力と、光電変換部2の光起電力との両方を第1外部回路に供給することができ、太陽電池+燃料電池発電モードにすることができる。
この後、制御部17は、燃料電池発電制御信号を燃料電池部22などに出力することができる。具体的には、制御部17は、入力手段により需要電力および光電変換部2の光起電力を入力し、この入力した需要電力および光起電力に基づいて燃料電池部22の発電電力を変動させ、電力負荷追従運転をするような信号を燃料電池部22、調湿部10、バルブなどに出力することができる。
【0137】
制御部17が、光電変換部2の光起電力が需要電力を上回っていると判断する場合、制御部17は、光電変換部2の光起電力が需要電力を大きく上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を大きく上回っていないと判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、需要電力を光電変換部2の光起電力で満たすことができ、余剰電力があまりない場合などである。
このような場合、制御部17は、例えば、切換部29に対して、SW1、SW2をONとし、SW3、SW4、SW7およびSW8をOFFとする信号を出力する。このことにより、光電変換部2の光起電力を第1外部回路に供給することができ、太陽電池発電モードにすることができる。
【0138】
制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を大きく上回っていると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池発電+水素生成モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、需要電力を光電変換部2の光起電力で満たすことができ、余剰電力がある場合などである。
例えば、図4のように発電システムが複数の光電変換部2を有する場合、一部の光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力し、他の光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力することができる。切換部29が図4のような電気回路を有する場合、制御部17は、切換部29に対してSW3、SW4、SW11、SW12をONとし、SW1、SW2、SW9、SW10をOFFとする信号を出力することができる。このことにより光電変換部2の光起電力を水電解部21と第1外部回路の両方に出力することができ、太陽電池発電+水素生成モードとすることができる。
【0139】
図19のようなフローチャートにより、発電システムを各モードに切り換えることができるが、例えば、太陽電池発電モードから太陽電池+燃料電池発電モードに切り換える場合、燃料電池部22が起動し一定の電力を供給するために一定の時間を要するために一時的に電力不足が生じるおそれがある。この電力不足が生じるのを抑制するために、需要電力をある程度大きくすることが考えられるが、この場合、燃料電池部22の起動が早くなりエネルギー損失が生じるおそれがある。
このような電力不足が生じるのを抑制することができ、エネルギー損失をできるだけ少なくする方法として、燃料電池部22による発電を開始する前に燃料電池部22、調湿部10を燃料電池発電準備モードとすることが考えられる。
【0140】
図20は、制御部17により発電システムを太陽電池発電モードから太陽電池+燃料電池発電モードに切り換える場合のフローチャートである。図20を用いて燃料電池発電準備モードについて説明する。なお、ここでは太陽電池発電モードから太陽電池+燃料電池発電モードへの切り換えについて説明するが、他の場合で燃料電池部22を起動させるときにも光電変換部2の光起電力または需要電力に基づいて燃料電池部22および調湿部10を燃料電池発電準備モードとすることもできる。
光電変換部2の光起電力が需要電力を上回り、余剰電力があまりないとき、発電システムは、太陽電池発電モード制御される。この場合、光電変換部2に入射する光量の減少による光起電力の減少や、需要電力の増加が生じると、発電システムを太陽電池+燃料電池発電モードに切り換える必要が生じる。
この切り換えのため、まず、制御部17は、入力手段により光電変換部2の光起電力および需要電力を入力することができる。次に、制御部17は、光起電力から需要電力を引いた差が所定値を下回っているか否かを判断する。この所定値は、電力不足が生じないための値に設定することができる。
【0141】
制御部17が光起電力から需要電力を引いた差が所定値を下回っていると判断した場合、制御部17は、出力手段から、燃料電池部22および調湿部10を燃料電池発電準備モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、制御部17は、燃料電池部22に対し、作動温度以下の所定温度まで昇温する信号を出力し、水素流路内および空気流路内の加湿部48をONとする信号を出力することができる。このことにより、燃料電池部22をすぐに作動温度とすることができ、燃料電池部22にすぐに加湿された水素ガスと加湿された空気とを供給できる状態である燃料電池発電準備モードとすることができる。
この後、制御部17は、光電変換部2の光起電力が需要電力を下回っているか否かを判断する。制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を下回っていると判断した場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池+燃料電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。
このとき、燃料電池部22および調湿部10をあらかじめ燃料電池発電準備モードとしているため、燃料電池部22は、早く発電電力を第1外部回路に出力することができ、電力不足が生じるのを抑制することができる。また、燃料電池部22をあらかじめ燃料電池発電準備モードとすることにより、燃料電池部22を早めに起動する必要がなくなり、エネルギー損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0142】
1:透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:調湿部 11:絶縁部 12:水素貯蔵部 13:隔壁 14:第2基板 15:電解液室 16:シール材 17:制御部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:水電解部 22:燃料電池部 23:水素製造装置 24:第2導電部 25:第3導電部 28:光電変換層 29:切換部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第4導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 41:センサ部 42:水素ボンベ 44:空気圧縮機 45:凝縮器 46:水タンク 48:加湿部 49:除湿部 50:配線 51:燃料極 52:空気極 53:電解質膜 55:集電板 57:セパレータ 58:接続板 60:燃料流路 61:空気流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用した発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と、その光起電力を利用し電解液を電気分解することにより水素を発生させる水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【0006】
また、発電機器、蓄電機器、蓄熱機器および水素貯蔵機器を備え、エネルギーの運用を最適化する分散エネルギーシステムが知られており(例えば、特許文献2)、燃料電池と水電解槽とを一体化した燃料電池が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【特許文献2】特開2004−312798号公報
【特許文献3】特許第4035313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のエネルギーシステムでは、電力源の切り換えについて十分に検討されていないため、効率よく安定した電力供給が行われていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率よく安定して発電および電力の供給を行うことのできる発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする発電システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵する水素貯蔵部とを備えるため、電力需要が多い場合には、光電変換部の光起電力を外部出力することができる。また、電力需要が少ない場合には、光電変換部の光起電力を水電解部に出力し水を電気分解し水素ガスを発生させることができ、発生させた水素ガスを水素貯蔵部に貯蔵することができる。このことにより、太陽光のエネルギーを燃料電池の燃料となる水素ガスとして貯蔵することができる。
本発明によれば、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部とを備えるため、光電変換部の光起電力が低下した場合や電力需要が多くなった場合に、燃料電池部により発電し電力需要を満たすように電力を外部出力することができる。このことにより、電力不足が生じることを抑制することができる。また、燃料電池部は、水電解部により発生させ、水素貯蔵部に貯蔵した水素ガスを燃料とすることができるため、太陽光をエネルギー源として電力を外部出力することができる。
本発明によれば、制御部は光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて調湿部を制御する機能を有するため、燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に調湿部が加湿可能な状態となるように調湿部を制御することができる。このことにより、燃料電池部へ迅速に加湿された水素ガスまたは空気を供給することができ、燃料電池部が迅速に発電電力を外部出力することができる。このことにより、電力源に燃料電池部が加わった場合でも電力需要にすぐに対応することができ、効率よく安定して発電および電力の供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の発電システムの概念図である。
【図2】本発明の一実施形態の発電システムの概略配管図である。
【図3】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図4】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図5】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図6】図5の点線A−Aにおける水素製造装置の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図8】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる燃料電池部の構成を示す概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図17】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図18】本発明の一実施形態の発電システムの概略回路図である。
【図19】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【図20】本発明の一実施形態の発電システムに含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発電システムは、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の発電システムにおいて、前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記調湿部が加湿可能な状態となるように前記調湿部を制御する機能を備えることが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池部へ迅速に加湿された水素ガスまたは空気を供給することができ、燃料電池部が迅速に発電電力を外部出力することができる。このことにより、電力源に燃料電池部が加わった場合でも電力需要にすぐに対応することができ、効率よく安定して発電および電力の供給を行うことができる。
本発明の発電システムにおいて、制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記燃料電池部が作動温度以下の所定の温度に昇温するように前記燃料電池部を制御する機能をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池部を迅速に作動温度に昇温することができ、燃料電池部が迅速に発電電力を外部出力することができる。このことにより、電力源に燃料電池部が加わった場合でも電力需要にすぐに対応することができ、一時的な電力不足が生じるのを抑制することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記調湿部は、前記水素貯蔵部に貯蔵する水素ガスの湿度を調節することが好ましい。
このような構成によれば、水電解部により発生させた水素ガスを調湿部により除湿し水素貯蔵部に貯蔵することができる。
【0014】
本発明の発電システムにおいて、前記調湿部は、加湿部および除湿部を有することが好ましい。
このような構成によれば、調湿部により燃料電池部に供給する水素ガスおよび空気の加湿を行うことができる。また、調湿部により水電解部により発生させた水素ガスの除湿を行うことができる。
本発明の発電システムにおいて、水素流路をさらに備え、前記水素流路は、前記水電解部により発生させた水素ガスが前記除湿部を流れ、前記水素貯蔵部に貯蔵される経路と、前記燃料電池部の燃料となる水素ガスが前記加湿部を流れ前記燃料電池部に供給される経路とを有することが好ましい。
このような構成によれば、水電解部により発生させた水素ガスを水素貯蔵部に貯蔵することができ、燃料電池部の燃料となる水素ガスを加湿して燃料電池部に供給することができる。
【0015】
本発明の発電システムにおいて、前記水素流路は、水素ガスが流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有することが好ましい。
このような構成によれば、複数のバルブにより水素ガスが流れる経路を変更することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部の光起電力を前記水電解部に出力する回路と、前記光電変換部の光起電力を外部出力する回路とを切り換える切換部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、切換部により光電変換部の光起電力の出力先を変更することができる。
【0016】
本発明の発電システムにおいて、前記切換部は、前記光電変換部の光起電力および前記燃料電池部の発電電力のうちどちらか一方または両方を回路を切り換えて外部出力できるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、切換部により光電変換部の光起電力および燃料電池部の発電電力のうちどちらか一方または両方を切り換えて外部出力することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記発電システムの制御モードを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記発電システムの構成要素に出力する出力手段とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部により発電システムの制御モードを切り換えることができる。
【0017】
本発明の発電システムにおいて、日射量計または照度センサを含むセンサ部をさらに備え、前記入力手段は、前記センサ部からの情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、制御部がセンサ部からの情報に基づき発電システムの制御モードを切り換えることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、制御部が電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報に基づき発電システムの制御モードを切り換えることができる。
【0018】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、受光面とその裏面を有し、前記水電解部は、前記光電変換部の裏面側に設けられ、前記光電変換部および前記水電解部は、水素製造装置を構成することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部と水電解部との配線距離を短くすることができ、オーミックロスを少なくすることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、前記光電変換部の裏面上にそれぞれ設けられた第1電解用電極および第2電解用電極を有し、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素ガスであり他方は酸素ガスであることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置を構成する第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。また、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。また、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0019】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置に含まれる光電変換部に積層構造のものを利用することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置において第2電解用電極と光電変換部の裏面との間にリーク電流が発生するのを防止することができる。
【0020】
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置内の内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0021】
本発明の発電システムにおいて、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を少ない工程で設けることができ、製造コストを低減することができる。
【0022】
本発明の発電システムにおいて、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を設けることなく、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に光を入射させることにより起電力を生じさせることができる。
【0023】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の第1区域と第2区域との間生じた起電力を第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1区域と第2区域との間に、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく発生させることができる。
【0024】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に起電力を生じさせることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を透光性基板の上に形成することができる。
【0025】
本発明の発電システムにおいて、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に高電圧の起電力を第1および第2電解用電極に出力することができる。
本発明の発電システムにおいて、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により燃料電池の燃料となる水素ガスを製造することができる。
【0026】
本発明の発電システムにおいて、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により、より効率的に水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、水素ガスまたは酸素ガスが発生する反応の触媒面積を広くすることができる。
【0027】
本発明の発電システムにおいて、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により電解液から水素ガスを効率よく発生させることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置により電解液から酸素ガスを効率よく発生させることができる。
【0028】
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とをさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面とを電解液室に面して設けることができ、第1および第2電解用電極を電解液に接触させることができる。
本発明の発電システムにおいて、前記水素製造装置は、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、隔壁により第1気体と第2気体を分離することができる。
本発明の発電システムにおいて、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡を容易に解消することができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0030】
発電システムの構成
図1は本実施形態の発電システムの概念図であり、図2は本実施形態の発電システムの概略配管図であり、図3、図4は本実施形態の発電システムの概略回路図である。
本実施形態の発電システムは、水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部21と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または水電解部21に出力する光電変換部2と、需要電力または光電変換部2の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部22と、水電解部21により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを記燃料電池部22に供給する水素貯蔵部12と、燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部10と、制御部17とを備え、制御部17は、光電変換部2の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、調湿部10を制御する機能を有することを特徴とする。
【0031】
1.光電変換部2
光電変換部2は、太陽光を受光することにより光起電力が生じる部分であり、この起電力を外部出力または水電解部21に出力する。光電変換部2の光起電力を外部出力することにより、この電力を外部回路において利用することができる。また、光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することにより、光起電力を利用して水を電気分解し、水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。このことにより、電力需要が少ない場合や光電変換部2の光起電力が大きい場合に、光電変換部2の光起電力により水素ガスを発生させることができる。この水素ガスは、水電解部21から水素流路を流通させ除湿部49により除湿した後、水素貯蔵部12に貯蔵することができる。
【0032】
光電変換部2は、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または水電解部21に出力するために、切換部29と電気的に接続することができる。このことにより、切換部29により光電変換部2の光起電力の出力先を切り換えることができる。
【0033】
光電変換部2は、太陽光を受光することにより光起電力が生じるものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
また、光電変換部2は、後述する水素製造装置23に含まれてもよい。この場合の光電変換部2についての説明は後述する。また、水素製造装置23に含まれる光電変換部2についての説明は、水素製造装置23に含まれない光電変換部2についても矛盾がない限り当てはまる。
また、光電変換部2は、複数であってもよい。例えば、複数の太陽電池パネルと後述の水素製造装置からなってもよい。この場合、水素製造装置に含まれる光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力し、太陽電池パネルの光起電力を外部出力してもよい。また、太陽電池パネルの光起電力を水電解部21に出力してもよい。また、水素製造装置に含まれる光電変換部2の光起電力および太陽電池パネルの光起電力のすべてを外部出力してもよい。この場合、発電システムは、図4のような回路図を有することができる。
【0034】
2.水電解部
水電解部21は、光電変換部2の光起電力を利用して水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。水電解部21は第1電解用電極8と第2電解用電極7とを含む電解槽とすることができる。この電解槽に電解液を溜めて、光電変換部2の光起電力を第1および第2電解用電極8、7に出力することにより、電解液に含まれる水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。
また、水電解部21は後述する水素製造装置23に含まれてもよい。この場合の第1電解用電極8および第2電解用電極7についての説明は後述する。また、水素製造装置23に含まれる第1電解用電極8および第2電解用電極7についての説明は、水素製造装置23に含まれない第1電解用電極8および第2電解用電極7についても矛盾がない限り当てはまる。
【0035】
3.水素製造装置
図5は、本実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略平面図であり、図6は、図5の点線A−Aにおける水素製造装置の概略断面図であり、図7は、本実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略裏面図である。
また、図8〜14は、それぞれ本実施形態の発電システムに含まれる水素製造装置の構成を示す概略断面図であり、図6に対応する概略断面図である。
水素製造装置23は、受光面とその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた水電解部21を有することができる。
また、水素製造装置23は、光電変換部2の裏面上にそれぞれ設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7を有し、光電変換部2の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素ガスであり他方は酸素ガスである。
【0036】
第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極8の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極7の表面で第2気体を発生させることができる。また、第1気体および第2気体のうち一方は水素ガスであるため、水素ガスを製造することができる。
また、光電変換部2の裏面上に第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けるため、光電変換部2の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部2へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
さらに、光電変換部2の裏面上に第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極8、7、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部2へ入射する光量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0037】
また、水素製造装置23は、透光性基板1、第1電極4、第2電極5、第1導電部9などを有することもできる。
以下、水素製造装置23について説明する。
【0038】
3−1.透光性基板
透光性基板1は、水素製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0039】
また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するため、透光性基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0040】
3−2.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図13、14のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図6、9、12のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図11のように第2電解用電極7と接触してもよい。また、第1電極4は、図8、10のような場合、切換部29および配線50を介して第2電解用電極7と電気的に接続することができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0041】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いていることができる。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0042】
3−3.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面側に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図6、8〜12のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図13、14のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図13、14のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0043】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素ガスであり、他方が酸素ガスの場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素ガスと酸素ガスが発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図12、14のように並べて設けられた光電変換層を第4導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0044】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0045】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0046】
3−3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0047】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0048】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0049】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0050】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0051】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0052】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図13、14のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図13のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第4導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0053】
3−3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0054】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素ガスをキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0055】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0056】
3−3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0057】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0058】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0059】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0060】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0061】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0062】
3−3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0063】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0064】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0065】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0066】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0067】
3−4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。また、第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることもできる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、切換部29および配線50を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0068】
3−5.第1導電部
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図6、9のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図12のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0069】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0070】
3−6.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図6、9のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図6、8〜12のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図13、14のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0071】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0072】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0073】
3−7.第2導電部、第3導電部、第4導電部
第2導電部24、第3導電部25は、絶縁部11と第2電解用電極7との間、または、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部24、第3導電部25を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部24、第3導電部25は、例えば、図12〜14に示すように設けることができる。
第2導電部24、第3導電部25は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第4導電部33は、図12、14のように光電変換層を直列接続するように設けることができる。
【0074】
第2導電部24、第3導電部25または第4導電部33は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0075】
3−8.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面上にそれぞれ設けられる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面とをそれぞれ有することができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図6、12のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図13、14のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0076】
図9、10のように第1電解用電極8が光電変換部2の裏面または第2電極5と接触していない場合、第1電解用電極8は、切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図8、10のような場合、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と切換部29を介して電気的に接続することができる。
【0077】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であってもよく、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有してもよく、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0078】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素ガスであり、他方は酸素ガスである。
【0079】
3−9.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒を含んでよく、水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素ガスを発生させることができる。
【0080】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0081】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0082】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0083】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0084】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0085】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0086】
3−10.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素ガスを発生させることができる。
【0087】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0088】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「3−9.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0089】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0090】
3−11.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。
また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、背面基板14に箱状のものを用いる場合、背面基板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0091】
また、背面基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な背面基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0092】
3−12.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0093】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0094】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0095】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0096】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0097】
3−13.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、水素製造装置23内の電解液および水素製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。背面基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0098】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と背面基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0099】
3−14.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0100】
3−15.給水口
給水口18は、水素製造装置23に含まれるシール材16の一部、もしくは背面基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく水素製造装置23へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0101】
3−16.第1気体排出口、第2気体排出口
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、第1電解用電極8の端部および第2電解用電極7の端部にそれぞれ近接して設けられる。このことにより、第1気体排出口20から第1気体を回収することができ、第2気体排出口19から第2気体を回収することができる。
【0102】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置23を設置したとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置23を設置したとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、水素製造装置23を光電変換部2の受光面が水平面に対して傾斜するように設置し、前記受光面に太陽光を入射させた場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、例えば、シール材16に開口を設けることにより形成することができる。また、第1気体排出口20、第2気体排出口19に電解液が流入しないように流入防止弁を設けることもできる。
【0103】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路と導通することができる。また、第1気体排出路は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、水素製造装置23で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。また、第1気体排出路または第2気体排出路は、水素貯蔵部12と接続することができる。このことにより水素製造装置23で発生させた水素ガスを水素貯蔵部12で貯蔵することができる。なお、第1気体排出路および第2気体排出路のうち一方は、水素流路を構成することができ、他方は、空気流路を構成することができる。
【0104】
3−17.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる。
【0105】
4.燃料電池部
燃料電池部22は、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する。また、燃料電池部22は、電力需要および光電変換部2の光起電力に応じて発電することができる。このことにより、光電変換部2の変動や電力需要の変動により供給電力の不足が生じることを抑制することができる。
図15は、本実施形態の発電システムに含まれる燃料電池部22の概略断面図である。
燃料電池部22は、燃料極51と、空気極52と、燃料極51と空気極52との挟まれた電解質膜53を有することができる。燃料極51に水素ガスを供給し、空気極52に空気または酸素ガスを供給することにより、燃料極51と空気極52との間に起電力を発生させることができる。燃料極51および空気極52は、起電力を外部出力するため外部回路と電気的に接続することができる。燃料極51および空気極52は、切換部29を介して起電力を外部回路に出力することもできる。
【0106】
また、電解質膜53は、湿潤した状態でイオン導電性を示す電解質膜であってもよい。また、電解質膜53は、イオン導電種をH+とするものであってもよく、OH-とするものであってもよい。
燃料電池部22は、例えば、固体高分子形燃料電池とすることができる。この場合、電解質膜53は、固体高分子膜とすることができ、電解質膜53、燃料極51および空気極52は、膜電極接合体(MEA)を構成することができる。
電解質膜53としては、例えば、パーフルオロスルホン酸基ポリマーを含む電解質膜とすることができる。このような電解質膜53は、水分を含まなければイオン導電性は示さないため、電解質膜53に水分を供給する必要がある。また、このようなイオン導電性を示すために水分が必要な電解質膜53は、適度な湿潤状態を維持する必要があり、燃料電池部22に水分を適切に供給する必要がある。燃料電池部22に供給する水分量が多すぎると、電解質膜53の含水率が高くなり電解質膜53の機械的強度が低下する場合や燃料極51内または空気極52内の細孔がふさがれ反応ガスの拡散を低下しセル電圧を低下させる場合(フラディング現象)などがある。また、燃料電池部22に供給する水分量が少なすぎると、電解質膜53のイオン伝導率が低下し、セル電圧が低下する場合がある。従って、電解質膜53が適度な湿潤状態で維持されるように燃料電池部22に水分を供給する必要がある。
【0107】
燃料電池部22に水分を供給する方法として、燃料である水素ガスを加湿して燃料極51に供給する方法がある。また、空気極52に供給する空気(または酸素ガス)を加湿してもよい。この方法によれば、水素ガス、空気(酸素ガス)の湿度を制御することにより燃料電池部22に供給する水分量を制御することができ、燃料電池部22に水分を適切に供給することができる。
燃料電池部22に供給する水素ガス、空気(酸素ガス)には、調湿部10により加湿できる。調湿部10による水素ガス、空気(酸素ガス)の加湿については後述する。
【0108】
燃料電池部22は、発電するためには一定の温度以上である必要がある。例えば、燃料電池部22が固体高分子形燃料電池である場合、その作動温度は、60〜100℃である。従って、特に燃料電池部22の起動時において、迅速に燃料電池部22を作動温度に昇温する必要がある。なお、燃料電池部22は、燃料電池部22を昇温するために加熱部を有することができる。
また、燃料電池部22が発電を開始した後は、水素ガスなどが燃料極51、空気極52で化学反応することにより反応熱が生じるため、燃料電池部22を冷却する必要がある。このため、燃料電池部22は、ラジエターなどの冷却器を備えることができる。
【0109】
従って、燃料電池部22による発電を迅速に開始するためには、燃料電池部22を迅速に作動温度に昇温することと、電解質膜53が適度な湿潤状態で維持されるように燃料電池部22に水分を迅速に供給することと、燃料極51に水素ガスを供給し空気極52に空気(酸素ガス)を供給することが必要である。
なお、燃料電池部22は、燃料電池発電準備モードとすることができる。具体的には、制御部17からの信号により、燃料電池部22を作動温度以下の所定の温度に昇温することができる。このことにより、燃料電池部22の発電電力を外部出力したいときに燃料電池部22を迅速に作動温度とすることができ、燃料電池部22の発電電力を迅速に外部術力することができる。また、燃料電池部22と共に調湿部10も燃料電池準備モードとすることができる。
【0110】
燃料電池部22の燃料極51に供給する水素ガスは、水素貯蔵部12に貯蔵した水素ガスであってもよく、水素ボンベから供給される水素ガスであってもよい。また、メタノールやガソリンや都市ガスを改質することにより発生させた水素ガスであってもよい。
また、燃料電池部22の空気極52に供給する空気(酸素ガス)は、空気圧縮機から供給される空気または酸素ガスであってもよく、ボンベから供給される空気または酸素ガスであってもよく、外気から取り込んだ空気であってもよい。
また、燃料電池部22は、図1のように信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、燃料電池部22と制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。
さらに燃料電池部22は、制御部17から入力される情報により電力負荷追従運転できるように設けられてもよい。
【0111】
5.切換部
切換部29は例えば図3または図4のような電気回路を有することができる。また、図16〜18は、それぞれ本実施形態の発電システムの概略回路図である。なお、図面では1つの切換部29を示しているが、複数の切換部29からなってもよい。
切換部29は、光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力する回路と、光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力する回路とを切り換えることができるように設けられる。このことにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて水を電気分解し水素ガスを製造することができる。
【0112】
また、切換部29は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液から水素ガスおよび酸素ガスを発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる。例えば、深夜電力を用いて水素ガスを製造することができる。切換部29が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部29が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
また、切換部29は、図1のように信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、切換部29と制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。
【0113】
例えば、水素製造装置23が図10のような断面を有し、発電システムが図3のような電気回路を有する場合、例えば、SW(スイッチ)1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。
また、SW1、SW2、SW5、SW6がOFF状態であり、SW3、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW3、SW4がOFF状態であり、SW5、SW6がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5、SW6がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0114】
また、発電システムが複数の光電変換部2を有する場合、例えば、水素製造装置23と太陽電池パネルとの両方を備える場合であって、発電システムが図4のような電気回路を有する場合、SW1、SW2、SW11、SW12をON状態であり、SW3、SW4、SW9、SW10がOFF状態である場合、複数の光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力することができる。なお、図4では、発電システムが2つの光電変換部2を有する場合についての回路図であるが、発電システムは3つ以上の光電変換部2を有することもできる。例えば、発電システムは、水素製造装置32と複数の太陽電池パネルを備える場合である。
また、SW3、SW4、SW9、SW10がON状態であり、SW1、SW2、SW11、SW12をOFF状態である場合、複数の光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することができる。
また、SW3、SW4、SW11、SW12がON状態であり、SW1、SW2、SW9、SW10がOFF状態の場合、一方の光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力することができ、他方の光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することができる。
【0115】
例えば、水素製造装置23が図8のような断面を有し、発電システムが図16のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0116】
例えば、水素製造装置23が図9のような断面を有し、発電システムが図17のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0117】
例えば、水素製造装置23が図6、11〜14のような断面を有し、発電システムが図18のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達しない場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、この場合で燃料電池部22により発電する場合、SW7、SW8をON状態とすることにより、光電変換部2の光起電力と燃料電池部22の発電電力の両方を第1外部回路に出力することができる。
また、SW1、SW2、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部2が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達する場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7へ出力することができる。従って、図18のような電気回路を有する場合でも、切換部29により、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力させる回路とを切り換えることができる。
また、SW3、SW4がON状態であり、SW1,SW2がOFF状態の場合、第2外部回路から入力される起電力、または第2外部回路から入力される起電力と光電変換部2が受光することにより生じる起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0118】
また、切換部29は、制御部12からの情報を入力することができ、入力した情報に基づき回路の切換を行うことができる。このことにより、切換部29は、制御部12が選択した回路に切り換えることができる。
また、切換部29は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じている場合、第1外部回路に光電変換部2で生じた起電力を出力することができ、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じていない場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7に光電変換部2で生じた起電力を出力することができる。
さらに切換部29は、第2外部回路の起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第2外部回路が供給する電力が電気需要より大きくなっている場合、第2外部回路が供給する電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができる。
【0119】
6.調湿部
調湿部10は、燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気(酸素ガス)の湿度を調節する部分である。また、調湿部10は、水電解部21により発生させ、水素貯蔵部12に貯蔵する水素ガスを除湿する部分であってもよい。
調湿部10は、加湿部48または除湿部49を有することができる。また、調湿部10は、加湿部48と除湿部49の両方を有することもできる。また、離れて設けられた加湿部48と除湿部49からなってもよい。また、調湿部10は、水素流路の経路内および空気(酸素ガス)流路の経路内にそれぞれ設けられてもよい。
調湿部10は、燃料電池部22の燃料となる水素ガスの湿度および水素貯蔵部12に貯蔵する水素ガスの湿度を調節するように設けることができる。このことにより、加湿された水素ガスを燃料電池部22の燃料極51に供給することができ、水電解部21により発生させた水素ガスを除湿した後、水素貯蔵部12に貯蔵することができる。
また、調湿部10は、燃料電池部22の空気極52に供給する空気または酸素ガスの湿度を調節するように設けられてもよく、水電解部21により発生させた酸素ガスを除湿するように設けられてもよい。
【0120】
加湿部48としては、例えば、昇温した水に気体をバブリングするバブラー加湿方式のものや気体に水蒸気を直接供給する水蒸気添加方式のものが挙げられる。
なお、「調湿部10が加湿可能な状態となる」とは、調湿部10がすぐに燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気(酸素ガス)の加湿を行える状態となることをいう。例えば、調湿部10がバブラー加湿方式である場合、水素ガスまたは空気をバブリングさせる水の温度を昇温した状態とすることをいう。この昇温された水に水素ガス又は空気をバブリングさせることにより加湿された水素ガス又は空気を燃料電池部22に供給することができる。また、例えば、調湿部48が水蒸気添加方式の場合、調湿部48が水素流路または空気流路にすぐに水蒸気を添加できる状態とすることをいう。なお、加湿部48が他の方式であってもよい。調湿部10を加湿可能な状態にすることにより、調湿部10を燃料電池発電準備モードとすることができる。
【0121】
また、除湿部49としては、例えば、気体を露点温度以下に冷却して除湿を行う冷却方式のものや圧縮機で気体を圧縮することにより除湿を行う圧縮方式のものや水分を吸着しやすい固体に気体を通過させる吸着方式のものであってもよい。
また、調湿部10は燃料電池部22に供給する気体の湿度または水素貯蔵部12に貯蔵する水素ガスの湿度を検知する湿度センサを備えてもよい。このことにより、湿度センサの測定値に基づき調湿部10を制御することができる。なお、この湿度センサは、センサ部41に含まれてもよい。
また、調湿部10は、図1のように信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、調湿部10と制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。また、調湿部10は、制御部17からの信号により「加湿可能な状態となる」ことができる。
【0122】
7.水素貯蔵部
水素貯蔵部12は、水電解部21により発生させた水素ガスを貯蔵することができるように設けられ、また、貯蔵した水素ガスを燃料電池部22に供給できるように設けられる。また、水素貯蔵部12は水素流路を介して水電解部21または燃料電池部22と導通することができる。
水素貯蔵部12は、例えば、圧縮水素タンク、水素吸蔵合金である。また、水素貯蔵部12が圧縮水素タンクの場合、水素貯蔵部12は、水電解部21により発生させた水素ガスを圧縮させるための圧縮機を備えてもよい。なお、除湿部49が圧縮方式である場合、除湿部49で圧縮した水素ガスを圧縮水素タンクに貯蔵することができ、水素貯蔵部12が圧縮機を備えなくてもよい。
【0123】
8.水素流路、空気(酸素ガス)流路
水素流路は、水電解部21により発生させた水素ガスが除湿部49を流れ、水素貯蔵部12に貯蔵される経路と、燃料電池部22の燃料となる水素ガスが加湿部48を流れ燃料電池部22の燃料極51に供給される経路とを有してもよい。また、水素流路は、水素ガスが流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有してもよい。このことにより水電解部21の稼働状況および燃料電池部22の稼働状況に合わせて水素流路を変更することができる。なお、これらのバルブは信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、これらのバルブと制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。また、バルブは、水素流路または空気流路を流れる気体の流量を調節できるように設けられてもよい。また、水素流路または空気流路は、流量調節弁を備えてもよく、流量計を備えてもよい。
【0124】
また、水素流路は、燃料電池部22に含まれる燃料流路60を流通した水素ガスが再び燃料電池部22に供給されるような経路を有してもよく、水素ボンベの水素ガスが燃料電池部22に供給されるような経路を有してもよい。これらの経路もバルブにより変更することができ、制御部17により制御されてもよい。なお、燃料流路60を流通した水素ガスは、凝縮器45により水素ガスに含まれる水が除去されてもよい。
水素流路は、例えば、図2のように設けることができる。
【0125】
空気流路は、水電解部21により発生させた酸素ガスが除湿部49を流れ、空気圧縮機44に貯蔵される経路と、空気圧縮機44の空気または酸素ガスが加湿部48を流れ燃料電池部22の空気極52に供給される経路とを有してもよい。また、空気流路は、空気(酸素ガス)が流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有してもよい。このことにより水電解部21の稼働状況および燃料電池部22の稼働状況に合わせて空気流路を変更することができる。なお、これらのバルブは信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、これらのバルブと制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。また、空気流路は、燃料電池部22に含まれる空気流路61を流れた空気(酸素ガス)が外部へ排出されるように設けられてもよい。また、空気(酸素ガス)を排出する前に凝縮器45により空気(酸素ガス)に含まれる水を除去してもよい。
空気流路は、例えば、図2のように設けることができる。
【0126】
9.水流路
水流路は、調湿部10(加湿部48、除湿部49)、水電解部21および凝縮器45と水タンク46とを導通させるように設けることができる。水流路は、水を流通させるためにポンプまたはバルブを有することができる。
水流路は、例えば図2のように設けることができる。図2を用いて説明すると、水タンク46に溜めた水をポンプ1(P1)により水電解部21に供給することにより水電解部21中の電解液の減少を防止することができる。また、凝縮器45により分離した水をバルブ9、10(V9、V10)を開くことにより水タンク46に回収することができる。また、除湿部49により発生した水は加湿部48で利用することができ、また、P2、P3で加湿部48に水タンク46の水を供給することができる。
なお、これらのバルブ、ポンプは信号線により制御部17と接続してもよく、制御部17の信号により制御されてもよい。また、これらのバルブ、ポンプと制御部17は、無線により信号の送受信ができるように設けられてもよい。
【0127】
10.センサ部
センサ部41は、日射量計または照度センサを含むことができる。このことにより、光電変換部2に入射する光量に関する情報を得ることができる。また、センサ部41に含まれる日射量計または照度センサの出力は、「光電変換部2の光起電力に関する情報」となってもよい。
また、センサ部41は、燃料電池部22に供給する水素ガスまたは空気(酸素ガス)の湿度を検知する湿度センサを含むことができる。
センサ部41は制御部17に検知信号を出力することができる。このことにより、センサ部41の検知信号に基づき制御部17により本実施形態の発電システムを制御することができる。
【0128】
11.制御部
制御部17は、光電変換部2の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて発電システムを制御する機能を備える。また、制御部17は、切換部29、燃料電池部22、調湿部10、センサ部41、バルブおよびポンプと信号線または無線により接続することができる。また、制御部17は、外部の情報通信網と接続することができる。このことにより、制御部17により本実施形態の発電システムを制御することができる。
【0129】
制御部17は、入力手段、設定手段、出力手段を有することができる。また、制御部17は、入力手段による入力をするため、または出力手段により出力をするために、有線または無線の信号線によりセンサ部14、外部情報網、サーバー、調湿部10、燃料電池部22、切換部29、バルブ、ポンプ、光電変換部2などと接続することができる。
【0130】
入力手段は、例えば、センサ部41からの信号または光電変換部2の光起電力の測定値の信号を入力することができる。このことにより、制御部17は、「光電変換部2の光起電力に関する情報」を入力することができる。
また、入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することができる。このことにより、制御部17は、「需要電力に関する情報」を入力することができる。
設定手段は、入力手段に入力された情報に基づき、切換部29に含まれるスイッチのオン・オフ、燃料電池部22の起動・停止・出力の調整、調湿部10の起動・停止、バルブの開閉、ポンプの起動・停止などを設定することができる。
出力手段は、設定手段で設定した情報を調湿部10、燃料電池部22、切換部29、バルブ、ポンプなどに出力することができる。調湿部10、燃料電池部22、切換部29、バルブ、ポンプなどはこの出力手段から出力された情報により制御されることができる。
これらの手段により本実施形態の発電システムを制御することができる。
【0131】
図19は、制御部により発電システムを制御するフローチャートである。このフローチャートのように制御することにより、発電システムを燃料電池発電モード、水素生成モード、太陽電池+燃料電池発電モード、太陽電池発電モード、太陽電池発電+水素生成モードを切り換えることができる。
ここでは、図1〜4、図19により発電システムの各モードについて説明する。なお、ここでは、上述の水素製造装置23と燃料電池部22を備えた発電システムについて説明する。また、水素製造装置23の他に太陽電池パネルを備えた発電システムについても説明する。この場合、光電変換部2は、水素製造装置23に含まれるものと、太陽電池パネルに含まれるものとになり、複数となる。
【0132】
まず、制御部17は、入力手段により光電変換部2の光起電力(光電変換部2の光起電力に関する情報)および需要電力(需要電力に関する情報)を入力することができる。光電変換部2の光起電力は、光電変換部2の配線や切換部29の配線から測定した光電変換部2の光起電力であってもよく、センサ部41に含まれる日射計や照度計などから予測される光電変換部2の光起電力であってもよい。後者の場合、入力部に入力されるのは、日射量や照度となり、制御部17により光起電力を計算することもできる。
需要電力は、入力手段が外部情報網、サーバーより入力することができる。消費される電力を供給するために必要な電力であり、サーバーなどにより予測された電力量を入力することができる。
【0133】
次に、制御部17は、光電変換部2の光起電力および需要電力のうちどちらか一方が所定値を上回っているか否かを判断する。ここで所定値とは、光電変換部2の光起電力の場合、光起電力を外部回路に出力、または水電解部21に出力するのに十分な所定の電力量である。また、需要電力の所定値とは、光電変換部2または燃料電池部22からの電力の供給を必要としない所定の需要電力量である。例えば、電力系統からの電力のみで満たすことができる需要電力量である。
制御部17が光電変換部2の光起電力および需要電力の両方が所定値を下回っていると判断する場合には、制御部17は、出力手段から、発電システムを待機モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、夜間であり、発電システムが電力を供給する施設の電力需要がほとんどない場合などである。
このような場合、例えば、制御部17は、切換部29に対して、すべてのスイッチをOFFとする信号を出力することができ、バルブに対しては閉じる信号、ポンプ、燃料電池部22、調湿部10に対してはOFFとする信号を出力することができる。このことにより発電システムを待機モードとすることができる。
【0134】
制御部17が光電変換部2の光起電力および需要電力のうちどちらか一方が所定値を上回っていると判断する場合、制御部17は、光電変換部2の光起電力が所定値を上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が所定値を下回り、需要電力が所定値を上回ると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを燃料電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、夜間であり、発電システムにより電力を供給する必要がある場合である。
このような場合、例えば、制御部17は、燃料電池部22が起動する信号を燃料電池部22に対して出力し、加湿部48に対してONとする信号を出力し、V1(バルブ1)またはV2、V3、V4、V5、V6を開ける信号を各バルブに出力する。また、制御部17は、切換部29に対して、SW7(スイッチ7)およびSW8をONとする信号を出力する。このことにより、第1外部回路に燃料電池部22が発電した電力を供給することができ、燃料電池発電モードにすることができる。
この後、制御部17は、燃料電池発電制御信号を燃料電池部22などに出力することができる。具体的には、制御部17は、入力手段により需要電力を入力し、この入力した需要電力に基づいて燃料電池部22の発電電力を変動させ、電力負荷追従運転をするような信号を燃料電池部22、調湿部10、バルブなどに出力することができる。
【0135】
制御部17が、光電変換部2に光起電力が所定値を上回っていると判断する場合、制御部17は、需要電力が所定値を上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が所定値を上回り、需要電力が所定値を下回ると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを水素生成モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、発電システムが電力を供給する施設の電力需要がほとんどない場合などである。
このような場合、制御部17は、切換部29に対しSW1、SW2をOFFとし、SW3、SW4をONとする信号を出力する。このことにより、光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力することができ、水電解部21により水素ガスを製造することができる。また、発電システムが太陽電池パネルを備える場合、具体的には、発電システムが図4のような電気回路図を有する場合、制御部17は、切換部29に対しSW1、SW2、SW11、SW12をOFFとし、SW3、SW4、SW9、SW10をONとする信号を出力する。このことにより、水素製造装置23に含まれる光電変換部2の光起電力と、太陽電池パネルの光起電力との両方を利用して水電解部21により水素ガスを製造することができる。
また、制御部17は、除湿部49、空気圧縮機44、水素貯蔵部12に対してONとする信号を出力し、V2(バルブ2)、V3、V7、V8に対してバルブを開く信号を出力することができる。このことにより、水電解部21で発生させた水素ガスおよび酸素ガスを除湿部49で除湿した後、それぞれ水素貯蔵部12および空気圧縮機44に貯蔵することができる。この貯蔵した水素ガスおよび酸素ガスは、燃料電池部22を稼動させたときに燃料電池部22に供給することができる。
【0136】
制御部17が、光電変換部2の光起電力および需要電力の両方が所定値を上回っていると判断する場合、制御部17は、光電変換部2の光起電力が需要電力を上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を下回っていると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池+燃料電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、発電システムが電力を供給する施設の電力需要が多い場合などである。
このような場合、制御部17は、例えば、燃料電池部22が起動する信号を燃料電池部22に対して出力し、加湿部48に対してONとする信号を出力し、V1(バルブ1)またはV2、V3、V4、V5、V6を開ける信号を各バルブに出力する。また、制御部17は、切換部29に対して、SW1、SW2、SW7およびSW8をONとし、SW3、SW4をOFFとする信号を出力する。このことにより、燃料電池部22が発電した電力と、光電変換部2の光起電力との両方を第1外部回路に供給することができ、太陽電池+燃料電池発電モードにすることができる。
この後、制御部17は、燃料電池発電制御信号を燃料電池部22などに出力することができる。具体的には、制御部17は、入力手段により需要電力および光電変換部2の光起電力を入力し、この入力した需要電力および光起電力に基づいて燃料電池部22の発電電力を変動させ、電力負荷追従運転をするような信号を燃料電池部22、調湿部10、バルブなどに出力することができる。
【0137】
制御部17が、光電変換部2の光起電力が需要電力を上回っていると判断する場合、制御部17は、光電変換部2の光起電力が需要電力を大きく上回っているか否かを判断する。
制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を大きく上回っていないと判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、需要電力を光電変換部2の光起電力で満たすことができ、余剰電力があまりない場合などである。
このような場合、制御部17は、例えば、切換部29に対して、SW1、SW2をONとし、SW3、SW4、SW7およびSW8をOFFとする信号を出力する。このことにより、光電変換部2の光起電力を第1外部回路に供給することができ、太陽電池発電モードにすることができる。
【0138】
制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を大きく上回っていると判断する場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池発電+水素生成モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、日中であり、需要電力を光電変換部2の光起電力で満たすことができ、余剰電力がある場合などである。
例えば、図4のように発電システムが複数の光電変換部2を有する場合、一部の光電変換部2の光起電力を水電解部21に出力し、他の光電変換部2の光起電力を第1外部回路に出力することができる。切換部29が図4のような電気回路を有する場合、制御部17は、切換部29に対してSW3、SW4、SW11、SW12をONとし、SW1、SW2、SW9、SW10をOFFとする信号を出力することができる。このことにより光電変換部2の光起電力を水電解部21と第1外部回路の両方に出力することができ、太陽電池発電+水素生成モードとすることができる。
【0139】
図19のようなフローチャートにより、発電システムを各モードに切り換えることができるが、例えば、太陽電池発電モードから太陽電池+燃料電池発電モードに切り換える場合、燃料電池部22が起動し一定の電力を供給するために一定の時間を要するために一時的に電力不足が生じるおそれがある。この電力不足が生じるのを抑制するために、需要電力をある程度大きくすることが考えられるが、この場合、燃料電池部22の起動が早くなりエネルギー損失が生じるおそれがある。
このような電力不足が生じるのを抑制することができ、エネルギー損失をできるだけ少なくする方法として、燃料電池部22による発電を開始する前に燃料電池部22、調湿部10を燃料電池発電準備モードとすることが考えられる。
【0140】
図20は、制御部17により発電システムを太陽電池発電モードから太陽電池+燃料電池発電モードに切り換える場合のフローチャートである。図20を用いて燃料電池発電準備モードについて説明する。なお、ここでは太陽電池発電モードから太陽電池+燃料電池発電モードへの切り換えについて説明するが、他の場合で燃料電池部22を起動させるときにも光電変換部2の光起電力または需要電力に基づいて燃料電池部22および調湿部10を燃料電池発電準備モードとすることもできる。
光電変換部2の光起電力が需要電力を上回り、余剰電力があまりないとき、発電システムは、太陽電池発電モード制御される。この場合、光電変換部2に入射する光量の減少による光起電力の減少や、需要電力の増加が生じると、発電システムを太陽電池+燃料電池発電モードに切り換える必要が生じる。
この切り換えのため、まず、制御部17は、入力手段により光電変換部2の光起電力および需要電力を入力することができる。次に、制御部17は、光起電力から需要電力を引いた差が所定値を下回っているか否かを判断する。この所定値は、電力不足が生じないための値に設定することができる。
【0141】
制御部17が光起電力から需要電力を引いた差が所定値を下回っていると判断した場合、制御部17は、出力手段から、燃料電池部22および調湿部10を燃料電池発電準備モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、制御部17は、燃料電池部22に対し、作動温度以下の所定温度まで昇温する信号を出力し、水素流路内および空気流路内の加湿部48をONとする信号を出力することができる。このことにより、燃料電池部22をすぐに作動温度とすることができ、燃料電池部22にすぐに加湿された水素ガスと加湿された空気とを供給できる状態である燃料電池発電準備モードとすることができる。
この後、制御部17は、光電変換部2の光起電力が需要電力を下回っているか否かを判断する。制御部17が光電変換部2の光起電力が需要電力を下回っていると判断した場合、制御部17は、出力手段から、発電システムを太陽電池+燃料電池発電モードとする信号を各構成要素に出力する。
このとき、燃料電池部22および調湿部10をあらかじめ燃料電池発電準備モードとしているため、燃料電池部22は、早く発電電力を第1外部回路に出力することができ、電力不足が生じるのを抑制することができる。また、燃料電池部22をあらかじめ燃料電池発電準備モードとすることにより、燃料電池部22を早めに起動する必要がなくなり、エネルギー損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0142】
1:透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:調湿部 11:絶縁部 12:水素貯蔵部 13:隔壁 14:第2基板 15:電解液室 16:シール材 17:制御部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:水電解部 22:燃料電池部 23:水素製造装置 24:第2導電部 25:第3導電部 28:光電変換層 29:切換部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第4導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 41:センサ部 42:水素ボンベ 44:空気圧縮機 45:凝縮器 46:水タンク 48:加湿部 49:除湿部 50:配線 51:燃料極 52:空気極 53:電解質膜 55:集電板 57:セパレータ 58:接続板 60:燃料流路 61:空気流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記調湿部が加湿可能な状態となるように前記調湿部を制御する機能を備える請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記燃料電池部が作動温度以下の所定の温度に昇温するように前記燃料電池部を制御する機能をさらに備える請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記調湿部は、前記水素貯蔵部に貯蔵する水素ガスの湿度を調節する請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項5】
前記調湿部は、加湿部および除湿部を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項6】
水素流路をさらに備え、
前記水素流路は、前記水電解部により発生させた水素ガスが前記除湿部を流れ、前記水素貯蔵部に貯蔵される経路と、前記燃料電池部の燃料となる水素ガスが前記加湿部を流れ前記燃料電池部に供給される経路とを有する請求項5に記載の発電システム。
【請求項7】
前記水素流路は、水素ガスが流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有する請求項6に記載の発電システム。
【請求項8】
前記光電変換部の光起電力を前記水電解部に出力する回路と、前記光電変換部の光起電力を外部出力する回路とを切り換える切換部をさらに備える請求項1〜7のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項9】
前記切換部は、前記光電変換部の光起電力および前記燃料電池部の発電電力のうちどちらか一方または両方を回路を切り換えて外部出力できるように設けられた請求項8に記載の発電システム。
【請求項10】
前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記発電システムの制御モードを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記発電システムの構成要素に出力する出力手段とを備える請求項1〜9のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項11】
日射量計または照度センサを含むセンサ部をさらに備え、
前記入力手段は、前記センサ部からの情報を入力する請求項10に記載の発電システム。
【請求項12】
前記入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力する請求項10または11に記載の発電システム。
【請求項13】
前記光電変換部は、受光面とその裏面を有し、
前記水電解部は、前記光電変換部の裏面側に設けられ、
前記光電変換部および前記水電解部は、水素製造装置を構成する請求項1〜12のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項14】
前記水素製造装置は、前記光電変換部の裏面上にそれぞれ設けられた第1電解用電極および第2電解用電極を有し、
前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、
第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、
第1気体および第2気体のうち、一方は水素ガスであり他方は酸素ガスである請求項13に記載の発電システム。
【請求項15】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられた請求項14に記載の発電システム。
【請求項16】
前記水素製造装置は、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備える請求項15に記載の発電システム。
【請求項17】
前記水素製造装置は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項16に記載の発電システム。
【請求項18】
前記水素製造装置は、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備える請求項17に記載の発電システム。
【請求項19】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項18に記載の発電システム。
【請求項20】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項18に記載の発電システム。
【請求項21】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項17に記載の発電システム。
【請求項22】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項15〜21のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項23】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項14に記載の発電システム。
【請求項24】
前記水素製造装置は、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備える請求項23に記載の発電システム。
【請求項25】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項23または24に記載の発電システム。
【請求項26】
前記水素製造装置は、透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項14〜25のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項27】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項14〜26のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項28】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項14〜27のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項28に記載の発電システム。
【請求項30】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項28または29に記載の発電システム。
【請求項31】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項28〜30のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項32】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項28〜31のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項33】
前記水素製造装置は、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とをさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられた請求項14〜32のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項34】
前記水素製造装置は、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項33に記載の発電システム。
【請求項35】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項34に記載の発電システム。
【請求項1】
水を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解部と、太陽光を受光することにより生じる光起電力を外部出力または前記水電解部に出力する光電変換部と、需要電力または前記光電変換部の光起電力に応じて、水素ガスを燃料として発電し起電力を外部出力する燃料電池部と、前記水電解部により発生させた水素ガスを貯蔵し、貯蔵した水素ガスを前記燃料電池部に供給する水素貯蔵部と、前記燃料電池部に供給する水素ガスまたは空気の湿度を調節する調湿部と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報または需要電力に関する情報に基づいて、前記調湿部を制御する機能を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記調湿部が加湿可能な状態となるように前記調湿部を制御する機能を備える請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記光電変換部の光起電力に関する情報および需要電力に関する情報に基づいて、前記燃料電池部へ水素ガスまたは空気の供給を始める前に前記燃料電池部が作動温度以下の所定の温度に昇温するように前記燃料電池部を制御する機能をさらに備える請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記調湿部は、前記水素貯蔵部に貯蔵する水素ガスの湿度を調節する請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項5】
前記調湿部は、加湿部および除湿部を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項6】
水素流路をさらに備え、
前記水素流路は、前記水電解部により発生させた水素ガスが前記除湿部を流れ、前記水素貯蔵部に貯蔵される経路と、前記燃料電池部の燃料となる水素ガスが前記加湿部を流れ前記燃料電池部に供給される経路とを有する請求項5に記載の発電システム。
【請求項7】
前記水素流路は、水素ガスが流れる経路を変更できるように設けられた複数のバルブを有する請求項6に記載の発電システム。
【請求項8】
前記光電変換部の光起電力を前記水電解部に出力する回路と、前記光電変換部の光起電力を外部出力する回路とを切り換える切換部をさらに備える請求項1〜7のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項9】
前記切換部は、前記光電変換部の光起電力および前記燃料電池部の発電電力のうちどちらか一方または両方を回路を切り換えて外部出力できるように設けられた請求項8に記載の発電システム。
【請求項10】
前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記発電システムの制御モードを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記発電システムの構成要素に出力する出力手段とを備える請求項1〜9のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項11】
日射量計または照度センサを含むセンサ部をさらに備え、
前記入力手段は、前記センサ部からの情報を入力する請求項10に記載の発電システム。
【請求項12】
前記入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力する請求項10または11に記載の発電システム。
【請求項13】
前記光電変換部は、受光面とその裏面を有し、
前記水電解部は、前記光電変換部の裏面側に設けられ、
前記光電変換部および前記水電解部は、水素製造装置を構成する請求項1〜12のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項14】
前記水素製造装置は、前記光電変換部の裏面上にそれぞれ設けられた第1電解用電極および第2電解用電極を有し、
前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、
第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、
第1気体および第2気体のうち、一方は水素ガスであり他方は酸素ガスである請求項13に記載の発電システム。
【請求項15】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられた請求項14に記載の発電システム。
【請求項16】
前記水素製造装置は、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備える請求項15に記載の発電システム。
【請求項17】
前記水素製造装置は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項16に記載の発電システム。
【請求項18】
前記水素製造装置は、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備える請求項17に記載の発電システム。
【請求項19】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項18に記載の発電システム。
【請求項20】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項18に記載の発電システム。
【請求項21】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項17に記載の発電システム。
【請求項22】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項15〜21のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項23】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項14に記載の発電システム。
【請求項24】
前記水素製造装置は、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備える請求項23に記載の発電システム。
【請求項25】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項23または24に記載の発電システム。
【請求項26】
前記水素製造装置は、透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項14〜25のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項27】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項14〜26のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項28】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項14〜27のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項28に記載の発電システム。
【請求項30】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項28または29に記載の発電システム。
【請求項31】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項28〜30のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項32】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項28〜31のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項33】
前記水素製造装置は、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とをさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられた請求項14〜32のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項34】
前記水素製造装置は、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項33に記載の発電システム。
【請求項35】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項34に記載の発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−44032(P2013−44032A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183739(P2011−183739)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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