説明

発電システム

【課題】
電力負荷7として接続している機器8が故障した場合であっても、タービン4、4a及び発電機6の破損等を防止し、且つ故障を免れた他の機器8への電力供給を継続できる発電システム1を提供する。
【解決手段】
内燃機関2の排気ガスGにより回転するタービン4、4aと、タービン4、4aの回転力により発電して且つ発電した電力を電力負荷7に供給する発電機6を有する発電システム1において、発電システム1が、発電機6と電力負荷7の間、又はタービン4、4aと発電機6の間に設置した緩衝装置10、10aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスにより回転するタービンと、タービンの回転力により発電して且つ発電した電力を電力負荷に供給する発電機を有する発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、省エネ技術として、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関の排気ガスから、エネルギを取り出す技術が盛んに研究されている。具体的には、内燃機関に設置した過給器の回転軸に発電機を連結する過給器一体型の発電システム(例えば特許文献1参照)や、過給器から独立したタービンに発電機を連結した発電システムなどが、開示されている。
【0003】
図3に、従来の発電システムの概略を示す。発電システム1Xは、船舶や自動車等に搭載した内燃機関2と、過給器(ターボチャージャー)3と、過給器3のタービン4に回転軸20を介して連結した減速機5と、減速機5に連結され且つ電力負荷7に電力を供給する発電機6を有している。発電機6は、電力負荷7を構成する各機器8に電線21で接続されている。ここで、電力負荷7とは、船舶であれば船内の居住区に設置された機器や主機を制御するシステム等であり、自動車であれば表示灯やエアコン等の電力を消費する機器8の総称である。なお、過給器3から内燃機関2に向かって示された矢印は、新鮮な空気Aの流れを示しており、内燃機関2から過給器3のタービン4に向かって示された矢印は、排気ガスGの流れを示している。
【0004】
次に、発電システム1Xの動作について説明する。まず、過給器3のタービン4が、内燃機関2から排出された排気ガスGにより回転する。このタービン4は、回転力を回転軸20及び減速機5を介して、発電機6に伝達する。発電機6は、回転力により発電を行い、発電した電気を電力負荷7(各機器8)に供給する。ここで、排気ガスGからタービン4の回転力として取り出したエネルギは、約80〜90%を空気Aの圧縮に利用し、残りの約10〜20%を発電機6による発電に利用する。
【0005】
発電システム1Xは、上記の構成により、従来は余剰であったタービン4の回転エネルギを電気に変換して利用するため、内燃機関2のエネルギ効率を向上することができる。
【0006】
しかしながら、上記の発電システム1Xはいくつかの問題点を有している。第1に、電力負荷として接続している機器が故障し、消費電力量が急激に低下した場合、タービン及び発電機に破損等が発生する可能性があるという問題を有している。これは、消費電力の低下に伴い、発電機の負荷が急激に小さくなり、タービン及び発電機が過回転となってしまうためである。なお、特許文献1に開示されている発電機と電力負荷の接続を遮断する構成では、タービン及び発電機の破損等を防止することはできない。
【0007】
第2に、特許文献1に開示された発電機と電力負荷の接続を遮断する構成では、電力負荷として接続している機器の全てに電力が供給できないという問題を有している。そのため、上記のような場合、内燃機関を搭載した自動車や船舶は、その運転を継続することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−303417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気ガスにより回転するタービンと、タービンの回転力により発電して且つ発電した電力を電力負荷に供給する発電機を有する発電システムにおいて、電力負荷として接続している機器が故障した場合であっても、タービン及び発電機の破損等を防止し、且つ故障を免れた他の機器への電力供給を継続できる発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る発電システムは、内燃機関の排気ガスにより回転するタービンと、タービンの回転力により発電して且つ発電した電力を電力負荷に供給する発電機を有する発電システムにおいて、前記発電システムが、前記発電機と前記電力負荷の間、又は前記タービンと前記発電機の間に設置した緩衝装置を有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、発電システムは、電力負荷として接続している機器に故障等が発生した場合であっても、タービン及び発電機の破損等を防止することができる。これは、緩衝装置が、発電機の負荷変動を抑制又は吸収し、タービン及び発電機の回転数を予め定めた範囲内で制御できるためである。
【0012】
上記の発電システムにおいて、前記緩衝装置が、前記発電機と前記電力負荷の間に設置した二次電池を有することを特徴とする。
【0013】
この構成により、発電システムは、発電機の負荷変動を抑制することができる。これは、発電機の負荷の変動が二次電池の充電に起因するものとなり、電力負荷として接続している機器の影響を受けないためである。特に、船舶の主機に設置した発電システムである場合は、主機から間断なく排出される排気ガスのエネルギを、電力負荷に故障等が発生した場合であっても、効率よく回収することができる。
【0014】
前述の発電システムにおいて、前記緩衝装置が、前記タービンと前記発電機を連結する軸上に設置したフライホイールを有することを特徴とする。この構成により、タービン及び発電機の過回転を抑制し、タービン及び発電機の破損等を防止することができる。
【0015】
前述の二次電池を有する発電装置において、前記緩衝装置が、前記発電機と前記二次電池の間に設置したAC/DCコンバータと、前記二次電池と前記電力負荷の間に設置したDC/ACコンバータを有する構成としてもよい。また、上記のコンバータの代わりにチョッパー等、他の電気機器を利用する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明による発電システムによれば、内燃機関の排気ガスにより回転するタービンと、タービンの回転力により発電して且つ発電した電力を電力負荷に供給する発電機を有する発電システムにおいて、電力負荷として接続している機器が故障した場合であっても、タービン及び発電機の破損等を防止し、且つ故障を免れた他の機器への電力供給を継続できる発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態の発電システムの概略を示した図である。
【図2】本発明に係る異なる実施の形態の発電システムの概略を示した図である。
【図3】従来の発電システムの概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態の発電システムについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の発電システム1の概略を示す。発電システム1は、内燃機関2の過給器3を構成し排気ガスGにより回転するタービン4と、タービン4から回転軸20及び減速機5を介して回転力を伝達される発電機6と、発電機6で発電した電気を送る緩衝装置10を有している。また、緩衝装置10は、電線21を介して電力負荷7(複数の機器8)に接続している。
【0019】
この緩衝装置10は、発電機6に接続したAC/DCコンバータ12と、AC/DCコンバータ12に接続した二次電池11と、二次電池11に接続したDC/ACコンバータ13を有している。またDC/ACコンバータ13は、電線21を介して電力負荷7に接続している。なお、緩衝装置10は、二次電池11の代わりにキャパシタを有するように構成してもよい。また、コンバータ12、13の代わりにチョッパー等を有するように構成してもよい。
【0020】
次に、発電システム1の動作について説明する。まず、内燃機関2の排気ガスGにより、過給器3のタービン4が回転する。例えば、この内燃機関2が船舶の主機を構成する大型低速ディーゼルエンジンである場合、タービン4の回転数は15000rpm〜50000rpm程度となる。このタービンの回転力の一部は、吸気側における空気Aの圧縮に消費され、残りは回転軸20及び減速機5を介して、発電機6に伝達される。
【0021】
この発電機6により発電した電気は、AC/DCコンバータ12を介して二次電池11に蓄電される。また、電力負荷7(複数の機器8)は、必要に応じて二次電池11からDC/ACコンバータ13を介して電力の供給を受ける。
【0022】
ここで、電力負荷7として接続している機器8に故障が発生し、消費電力量が急激に低下した場合であっても、タービン4の回転力は電力に変換され、二次電池11に蓄電される。そのため、発電機6の負荷変動は抑制され、タービン4の回転数変動も抑制される。
【0023】
上記の構成により、本発明の発電システム1は、以下の作用効果を得ることができる。第1に、電力負荷7として接続している機器8に故障等が発生した場合であっても、タービン4や発電機6の破損等を防止し、且つ故障を免れた機器8への電力供給を継続することができる。これは、発電機6の負荷が二次電池11の充電状態に影響を受けるものであり、電力負荷7として接続している機器8の影響を受けないためである。
【0024】
第2に、電力負荷7として接続している機器8に故障等が発生した場合であっても、内燃機関2を搭載した船舶や自動車等は運転を継続することができる。これは、電力負荷7に故障等が発生した場合であっても、発電機6による発電が継続され、且つ二次電池11と電力負荷7の接続が維持されるためである。
【0025】
第3に、発電システム1の発電効率を向上することができる。これは、電力負荷7に故障等が発生した場合であっても、内燃機関2から排出される排気ガスGのエネルギを効率よく回収することができるためである。特に、内燃機関2が船舶の主機を構成する大型低速ディーゼルエンジンである場合、エンジンから間断なく排出される排気ガスGからエネルギを回収することができる。ここで、船舶の主機に設置した発電システム1で回収できるエネルギは、エンジン出力の約4%程度となる。
【0026】
図2に、本発明に係る異なる実施の形態の発電システム1aの概略を示す。発電システム1aは、内燃機関2の過給器3から独立して設置したパワータービン4aと、パワータ
ービン4aから回転軸20及び減速機5を介して回転力を伝達される緩衝装置10aと、緩衝装置10aから回転力を伝達される発電機6を有している。また発電機6は、電線21を介して電力負荷7(複数の機器8)に接続している。
【0027】
この緩衝装置10aは、減速機5と発電機6の間に設置したフライホイール15を有している。また、パワータービン4aは、内燃機関2から排出される排気ガスGを、過給器3と並列となるように分岐させて供給されている。このパワータービン4aの下流側は、過給器3の排気側下流に合流するように構成している。
【0028】
次に、発電システム1aの動作について説明する。まず、内燃機関2の排気ガスGの一部が過給器3のタービンに送られ、残りがパワータービン4aに送られる。この排気ガスGにより回転したパワータービン4aの回転力は、減速機5を介してフライホイール15に伝達され、蓄積される。このフライホイール15に蓄積した回転力は、必要に応じて発電機6に伝達される。この発電機6により発電した電気は、電線21を介して電力負荷7(複数の機器8)に送られる。
【0029】
ここで、電力負荷7として接続している機器8に故障が発生し、消費電力量が急激に低下した場合、発電機6の負荷が急激に低下する。このとき、フライホイール15は慣性力により回転数変動が抑制される。そのため、パワータービン4aの回転数変動、及び発電機6の回転数変動が抑制される。
【0030】
上記の構成により、本発明の発電システム1aは、前述の図1に記載の発電システム1と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
以上より、本発明の発電システム1、1aは、電力負荷7として接続している機器8が故障した場合であっても、タービン4、4a及び発電機6の破損等を防止し、且つ故障を免れた他の機器8への電力供給を継続できる。なお、二次電池11等を有する緩衝装置10を採用した場合は、フライホイール15を有する緩衝装置10aを採用した場合に比べ、省スペース化、及び低コスト化を実現することができる。具体的には、緩衝装置10は、フライホイール15を有するものと比べて、重量が約70%程度となり、製造コストが約80%程度となる。
【0032】
また、発電機6及び電力負荷7に対する二次電池11の接続が電気的であるため、設置場所の自由度を向上することができる。更に、例えば二次電池11を複数に分割して、異なる場所に配置することも可能となる。
【0033】
他方で、フライホイール15を有する緩衝装置10aを採用した場合は、二次電池11等を有する緩衝装置10を採用した場合と比べると、緩衝装置10aの構造が単純となる。そのため、メンテナンスや修理等を容易に行える。ただし、フライホイール15は、減速機5及び発電機6との連結を機械的に行わなくてはならないため、設置場所が限定されてしまう。また、発電システム1aを船舶に適用した場合は、フライホイール15が大型且つ重量の重いものとなる。
【符号の説明】
【0034】
1、1a 発電システム
2 内燃機関
3 過給器
4 タービン
4a パワータービン
5 減速機
7 電力負荷
10、10a 緩衝装置
11 二次電池
15 フライホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスにより回転するタービンと、タービンの回転力により発電して且つ発電した電力を電力負荷に供給する発電機を有する発電システムにおいて、
前記発電システムが、前記発電機と前記電力負荷の間、又は前記タービンと前記発電機の間に設置した緩衝装置を有することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記緩衝装置が、前記発電機と前記電力負荷の間に設置した二次電池を有することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記緩衝装置が、前記タービンと前記発電機を連結する軸上に設置したフライホイールを有することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−99041(P2013−99041A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237876(P2011−237876)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】