説明

発電スケジュール演算装置および発電スケジュール演算方法

【課題】要求電力に精度よく一致する送電電力を送電網に送電する。
【解決手段】発電スケジュール演算装置10は、発電プラント40に対する要求電力量を入力する要求電力量入力部11と、前記要求電力量を満たす送電電力を算出する送電電力算出部12と、起動過程および停止過程における操作イベントで区分される時間帯別に、所内機器45で使用される所内電力を操作イベント別所内電力として取得する操作イベント別所内電力取得部18と、操作イベント別所内電力を所定の期間、収集して平均し、操作イベント別平均所内電力を算出する平均所内電力算出部19と、前記送電電力と操作イベント別平均所内電力とを加算して発電電力を算出する発電電力算出部13と、発電電力の時間推移データに沿った電力を発電するように発電プラント40の起動過程および停止過程における各操作イベントのスケジュールを計算する発電スケジュール計算部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPS(Power Producer & Supplier:特定規模電気事業者)対応の発電プラントの起動停止制御に好適な発電スケジュール演算装置および発電スケジュール演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力売買の自由化以後に起業したPPSに対応する発電プラントでは、送電網を有する電力会社(以下、単に、電力会社という)の発電プラントに比べ、その起動および停止を繰り返す頻度が際立って高い。PPSでは、発電プラントを1日に1回、起動と停止を繰り返すのは珍しいケースではなく、1日に複数回、起動と停止を行うケースもある。それだけに、発電プラントの運転員の作業負担が大きくなるが、この問題は、いわゆる自動プラント起動停止装置の導入によりほぼ解決されているといえる。すなわち、自動プラント起動停止装置の動作によって運転員の作業負担が大幅に軽減され、また、発電プラントの迅速な運転が実現されている。
【0003】
ちなみに、特許文献1には、運転員の作業負担を軽減するとともに、発電プラント停止中の所内電力消費をも考慮した発電プラントの起動停止スケジュールを生成する発電プラント起動停止演算装置の例が開示されている。また、特許文献2には、細分化された時間帯ごとに要求される電力量を、電力会社の送電網に供給することを可能にする送電端電力量制御装置の例が開示されている。これらの文献に開示された技術および概念の少なくとも一部は、自動プラント起動停止装置に取り入れられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−102132号公報
【特許文献2】特開2002−27669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PPS対応の発電プラントが電力会社の送電網に送電する送電電力は、特定顧客から要求される送電電力にできるだけ一致するものであり、過不足が生じないのが好ましい。その理由は、PPSの発電プラントが送電する送電電力に変動が生じると、その変動は、送電網において管理された電力に対する外乱となるからである。そこで、電力会社との間では、例えば、契約した売電電力(送電電力)に対し3%以上の過不足が生じた場合には、その売電価格が減額されることなどが取り決められている。
【0006】
そのため、PPS対応の発電プラントでは、特定顧客から要求される送電電力に、発電プラントの補機が消費する電力(以下、所内電力という)を加えた量の電力を発電する必要がある。そして、その所内電力は、一般に、発電プラントの起動過程、停止過程または通常運転中の状態によって変動し、とくに、運転停止後の状態、すなわち、運転停止中も復水器の真空を保つか、あるいは、その真空を破壊するかによって大きく変動する。さらに、所内電力は、所内で用いる補機などの経年劣化によっても変動する。
【0007】
従来、PPS対応の発電プラントの発電量を求める場合、特定顧客から要求される送電電力(要求電力)に所内電力を加算した量が用いられているが、所内電力の変動量や補機の経年劣化などについては、十分に考慮されていない。すなわち、従来は、所内電力やその変動量を精度よく見積もることがされていないために、発電プラントが発電すべき発電量を精度よく見積もることができず、その結果、発電プラントは、特定顧客からの要求電力に対し過不足のない電力を送電するための電力を発電できるとは限らなかった。
【0008】
そこで、本発明は、発電プラントにおける所内電力を精度よく見積り、特定顧客からの要求電力に精度よく一致する電力を送電網に送電することを可能にする発電スケジュール演算装置および発電スケジュール演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発電スケジュール演算装置は、起動、運転および停止を繰り返しながら発電し、発電した電力を外部の送電網に送電する発電プラントに対し、その起動過程および停止過程の操作イベントのスケジュールを演算する発電スケジュール演算装置であって、前記発電プラントに要求される電力量の時間推移データを要求電力量として入力する要求電力入力部と、前記入力した要求電力量を実現する送電電力の時間推移データを算出する送電電力算出部と、前記操作イベントで区分される時間帯別に、前記発電プラントの所内機器で使用される所内電力を操作イベント別所内電力として取得する操作イベント別所内電力取得部と、前記取得した過去の操作イベント別所内電力を平均し、操作イベント別平均所内電力を算出する平均所内電力算出部と、前記送電電力算出部で算出した送電電力の時間推移データに、前記平均所内電力算出部で算出した操作イベント別平均所内電力を加算して発電電力の時間推移データを算出する発電電力算出部と、前記算出した発電電力の時間推移データに沿った電力を発電するように前記発電プラントの起動過程および停止過程における各操作イベントのスケジュールを計算する発電スケジュール計算部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る発電スケジュール演算装置は、操作イベント別所内電力取得部および平均所内電力算出部を備えているので、過去に取得した操作イベント別平均所内電力を用いることにより、発電プラントの所内電力の時間推移を精度よく見積ることが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発電プラントにおいて、その所内電力を精度よく見積り、特定顧客からの要求電力に精度よく一致する電力を送電網に送電することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るPPS対応発電プラントシステムの構成の例を示した図。
【図2】発電プラントに対する要求電力量、送電電力および所内電力それぞれの時間推移データの例を示した図であり、(a)は、給電指令装置から入力される要求電力量の時間推移データの例、(b)は、発電プラントが送電網に送電する送電電力の時間推移データの例、(c)は、発電プラント内の所内機器で使用される所内電力の時間推移データの例。
【図3】図2に示した要求電力量、送電電力および所内電力それぞれの時間推移データを1つのグラフにまとめた図。
【図4】発電電力の算出において、所内電力の見積り量の重要性を説明する図であり、(a)は、所内電力が過小に見積られた場合の例、(b)は、所内電力が過大に見積られた場合の例。
【図5】発電プラント内における電力系統の構成の例を示した図。
【図6】PPS対応発電プラントシステム1において、所内電力が関係する制御のおおよその流れの例を示した図。
【図7】起動過程で用いられる起動操作ボタンの例を示した図。
【図8】通常運転中に用いられる停止操作ボタンの例を示した図。
【図9】停止過程で用いられる停止操作ボタンの例を示した図。
【図10】所内電力を収集する時間帯を区分する操作イベントの例を示した図。
【図11】起動過程における操作イベント別の所内電力収集開始・終了タイミングの論理構成の例を示した図。
【図12】停止過程における操作イベント別の所内電力収集開始・終了タイミングの論理構成の例を示した図。
【図13】発電スケジュール演算装置における操作イベント別所内電力取得部の詳細な構成の例を示した図。
【図14】発電スケジュール演算装置における平均所内電力算出部の詳細な構成の例を示した図。
【図15】経年劣化考慮平均・所内電力計算部の処理内容の例を模式的に示した図。
【図16】平均所内電力算出部で用いられる平均所内電力管理テーブルの構成の例を示した図。
【図17】コンバインドサイクル形の発電プラントの機器構成の例を示した図。
【図18】発電プラントを一旦停止させ、再度起動するときの操作イベントと主要な所内機器の運転スケジュールの関係の例を示した図であり、(a)は、操作イベントに伴う発電電力の推移の例、(b)は、操作イベントに対する主要な所内機器の運転スケジュールの例。
【図19】停止スケジュール計算用入力設定部に設けられた操作ボタンの例を示した図。
【図20】発電スケジュール計算部における停止過程から運転停止中を経て起動過程に至る発電スケジュール計算の処理フローの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るPPS対応発電プラントシステムの構成の例を示した図である。図1に示すように、PPS対応発電プラントシステム1は、発電スケジュール演算装置10と、給電指令装置20と、自動プラント起動停止装置30と、発電プラント40と、プラントデータ処理装置50と、を含んで構成される。
【0015】
ここで、発電プラント40は、ガスタービン(GT)と蒸気タービン(ST)とを組み合せて発電するGT・ST発電機41(いわゆる、コンバインドサイクル形発電機)と、そのGT・ST発電機41を制御するGT・ST制御装置42と、GT・ST発電機41を稼働させるに必要な真空ポンプなど各種の補機(以下、所内機器45と総称する)と、その所内機器45が使用する電力および電力量を計測する所内個別機器電力計測部43と、を含んで構成される。
【0016】
ここで、給電指令装置20は、例えば、図示しない通信ネットワークなどを介して、送電網を有する電力会社に接続されおり、その電力会社から要求される電力の負荷パターン、すなわち、発電プラント40が送電網に送電すべき、例えば、30分ごとの1日の送電電力量の指令値(要求電力量の時間推移データ)を受け取るとともに、その指令値を発電スケジュール演算装置10へ入力する。
【0017】
発電スケジュール演算装置10は、給電指令装置20を介して入力され、電力会社から要求される送電電力の負荷パターンを実現するために、発電プラント40を起動するときおよび停止するときの各種操作のスケジュールを計算する。
【0018】
自動プラント起動停止装置30は、発電スケジュール演算装置10によって計算されたスケジュール(操作内容、操作時刻など)、および、プラントデータ処理装置50から供給されるプラントデータに基づき、発電プラント40に対し、それぞれの操作に対応する制御信号を送信し、発電プラント40の起動過程および停止過程における各操作を制御する。
【0019】
プラントデータ処理装置50は、発電プラント40から取得される様々なデータ、例えば、GT・ST制御装置42の制御状態を表すデータや所内個別機器電力計測部43で計測される所内電力などのデータを処理し、プラントデータとして発電スケジュール演算装置10または自動プラント起動停止装置30へ供給する。
【0020】
さらに、図1に示しているように、発電スケジュール演算装置10は、要求電力量入力部11、送電電力算出部12、発電電力算出部13、起動スケジュール計算用入力設定部14、停止スケジュール計算用入力設定部15、真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部16、発電スケジュール計算部17、操作イベント別所内電力取得部18、平均所内電力算出部19などの機能ブロックを含んで構成される。この発電スケジュール演算装置10に含まれる各機能ブロックの詳細な構成および機能については、以下、順次、詳しく説明していく。
【0021】
まず、図1に加え、図2および図3を参照して、要求電力量入力部11、送電電力算出部12および発電電力算出部13の機能について説明する。ここで、図2は、発電プラント40に対する要求電力量、送電電力および所内電力それぞれの時間推移データの例を示した図であり、(a)は、給電指令装置20から入力される要求電力量の時間推移データの例、(b)は、発電プラント40が送電網に送電する送電電力の時間推移データの例、(c)は、発電プラント40内の所内機器45で使用される所内電力の時間推移データの例を示した図である。また、図3は、図2に示した要求電力量、送電電力および所内電力それぞれの時間推移データを1つのグラフにまとめた図である。
【0022】
図1において、要求電力量入力部11は、給電指令装置20を介して、図2(a)に示される要求電力量の時間推移データを取得する。ここで、要求電力量は、当該発電プラント40が、例えば、30分単位の時間帯ごとに送電網へ送電すべき送電電力量を指令した指令値であり、図2(a)の例では、2:30から22:00までの間、発電した電力を送電網へ送電することが求められている。なお、図2(a)のグラフにおいて、その縦軸は、要求電力で表されているが、電力会社から指令されるのは、30分単位の時間帯での要求電力量であり、その要求電力量は、図2(a)のグラフでは、斜線部の面積で表される。
【0023】
送電電力算出部12は、要求電力量入力部11によって入力された要求電力量の時間推移データ(図2(a)参照:階段状のグラフ)に基づき、その要求電力量の時間推移データ実現するための送電電力の時間推移データ(図2(b)参照:連続した折れ線や曲線で表されるグラフ)を算出する。このとき、送電電力の時間推移データは、図2(a)および(b)の各グラフにおいて、それぞれ対応する30分単位の時間帯ごとの斜線部の面積(電力量)が同じになるように計算される。
【0024】
発電電力算出部13は、送電電力算出部12で算出された送電電力(図2(b)参照)に、平均所内電力算出部19で算出された所内電力(図2(c)参照)を加算して、発電電力を算出する。すなわち、図3に示すように、発電電力Pgは、送電電力Psと所内電力Pcとを合計した量として求められる。
【0025】
なお、本実施形態では、図3に示すように、ユニット起動開始から発電量の目標負荷に到達するユニット起動完了までを「起動過程」といい、ユニット起動完了からユニット停止開始までを「通常運転中」といい、ユニット停止開始からユニット停止完了までを「停止過程」という。ここで、ユニットとは、一単位(一式)のGT・ST発電機41を備えた発電プラント40を意味するものとする。
【0026】
また、本実施形態では、発電が開始される前の起動過程、および、発電が停止された後の停止過程で発生する所内電力Pcは、他社から買電するものとする。そして、発電が開始され、停止されるまでの間は、発電した電力の一部を所内電力Pcとして使用するものとする。
【0027】
再度、図1を参照した説明に戻る。図1において、起動スケジュール計算用入力設定部14は、運転員が発電プラント40を起動する際にキーボードなどを介して設定する併入開始時刻、目標負荷到達時刻、目標負荷などのデータを入力する。また、停止スケジュール計算用入力設定部15は、運転員がGT・ST発電機41を停止する際にキーボードなどを介して設定する停止開始時刻、解列時刻、解列開始負荷などのデータを入力する。さらに、停止スケジュール計算用入力設定部15は、次に説明する真空保持停止モードまたは真空破壊停止モードを選択するためのボタンを備えている。
【0028】
真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部16は、発電プラント40を停止させてから次に起動させるまでの発電プラント40の運転停止中の間、発電プラント40に含まれる復水器を真空保持したままにする(真空保持停止モード)か、または、真空を破壊する(真空破壊停止モード)か、を選択する。なお、真空保持停止モードおよび真空破壊停止モードの詳細については、別途、図面を参照して説明する。
【0029】
操作イベント別所内電力取得部18は、プラントデータ処理装置50を介して入力される所内電力に基づき、操作イベントで区分される時間帯ごとの操作イベント別所内電力を取得する。なお、操作イベントの例については、後記にて詳しく説明するが、操作イベントで区分される時間帯ごとに所内電力を取得するのは、それぞれの操作イベントにより動作する所内機器45が変わるので、その動作する所内機器45に応じて、それぞれの時間帯での使用電力を精度よく求めることを意図したものである。
【0030】
平均所内電力算出部19は、操作イベント別所内電力取得部18で取得された過去最新のN回分(例えば、N=5)の操作イベント別所内電力の平均(以下、N回平均所内電力という)を算出するとともに、さらに、操作イベント別の過去最新の3ヵ月分のN回平均所内電力を平均して、操作イベント別の経年劣化考慮平均所内電力を算出する。なお、経年劣化考慮平均所内電力を算出する意図は、所内機器45が長期使用されると経年劣化により、その使用電力が増加するので、その経年劣化に応じて求められる過去最新の期間の操作イベント別所内電力の平均を用いることにより、発電電力算出部13で算出される発電電力の精度を向上させることにある。
【0031】
発電スケジュール計算部17は、発電電力算出部13で算出された発電電力の時間推移データと、真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部16で選択された真空保持停止モードまたは真空破壊停止モードに基づいて、起動スケジュール計算用入力設定部14および停止スケジュール計算用入力設定部15でそれぞれ設定された目標負荷到達時刻、併入開始時刻、目標負荷、停止開始時刻、解列開始負荷、解列開始時刻などを満たすように、発電プラント40を操作する操作項目および時刻を決定し、その決定した操作項目および時刻を自動プラント起動停止装置30へ送信する。
【0032】
図4は、発電電力の算出において、所内電力の見積り量の重要性を説明する図であり、(a)は、所内電力が過小に見積られた場合の例、(b)は、所内電力が過大に見積られた場合の例である。前記したように、発電電力算出部13は、送電電力算出部12で算出した送電電力に、平均所内電力算出部19で算出した平均所内電力を加算した電力を、発電電力として求める。
【0033】
ここで、平均所内電力は、過去に取得された所内電力の平均に基づく見積り値である。一方、送電電力は、送電電力算出部12で給電指令装置から入力された要求電力量に基づき算出された確定値である。従って、要求電力量が同じでも所内電力の見積り値が過小であるか、または、過大であるかによって発電電力が変わることになる。
【0034】
例えば、図4(a)に示すように、ある30分の時間帯について、ある要求電力量Pdにより送電電力P1が定められ、そのときの所内電力の実績値がP2であったとすると、必要とされる発電電力P3は、P3=P1+P2で与えられる。また、このとき、平均所内電力算出部19で算出される所内電力の見積り値がP4であった場合には、発電電力算出部13で計算される発電電力P5は、P5=P1+P4となる。そして、実際には、発電プラント40では、発電電力P5の電力が発電される。
【0035】
ここで、平均所内電力算出部19によって算出される所内電力の見積り値P4が過小、つまり、所内電力の実績値P2より小さかった場合には(P4<P2)、実際に発電される発電電力P5は、必要な発電電力P3よりも小さくなる(P5<P3)。このとき、所内電力の実績値はP2であるから、発電プラント40から送電網へ実際に送電される送電電力P6は、P6=P5−P2で与えられる。
【0036】
さらに、所内電力の見積り値P4は、所内電力の実績値P2より小さいので、実際に送電される送電電力P6は、要求電力量Pdにより定められる送電電力P1より小さいことになる。すなわち、この場合、要求電力量Pdに対して電力量が不足することになる。
【0037】
また、同様に、図4(b)に示すように、平均所内電力算出部19によって算出される所内電力の見積り値P7が過大、つまり、所内電力の実績値P2より大きかった場合には(P7>P2)、実際に発電される発電電力P8は、必要な発電電力P3よりも大きくなる(P8>P3)。このとき、所内電力の実績値はP2であるから、発電プラント40から送電網へ実際に送電される送電電力P9は、P9=P8−P2で与えられる。
【0038】
以上のように、所内電力の見積り値が過小または過大に見積もられた場合には、送電電力が不足したり、過剰になったりする。このような場合には、あらかじめ契約した売電電力(送電電力)に対し、例えば、3%以上の過不足を生じることが多くなり、その場合には、売電価格が減額されるなどのペナルティが課せられる。従って、このような事態になるのを避けるには、所内電力を精度よく見積ることが重要であることがわかる。
【0039】
図5は、発電プラント40内における電力系統の構成の例を示した図である。図5に示すように、GT・ST発電機41で発電した電力は、発電機遮断器48、主変圧器47、主遮断器46を経由して、発電所母線から外の送電網へと送られる。また、所内機器45が使用する電力は、送電網へ送電される電力の一部が分岐され、所内変圧器49を経由して所内機器45へ送られる。
【0040】
このとき、GT・ST発電機41による発電電力および発電電力量は、それぞれ、電力計432および電力量計433で計測され、所内機器45が使用する所内電力および所内電力量は、それぞれ、電力計434および電力量計435で計測される。また、送電線へ送られる電力量は、電力量計431で計測される。そして、このようにして計測された電力量および電力は、それぞれ、発電電力、発電電力量、所内電力、所内電力量、および、送電電力量として、プラントデータ処理装置50へと送信される。なお、電力計432,434および電力量計431,433,435は、所内個別機器電力計測部43(図1参照)の一部を構成する。
【0041】
図6は、PPS対応発電プラントシステム1において、所内電力が関係する制御のおおよその流れの例を示した図である。図6に示すように、所内個別機器電力計測部43は、GT・ST制御装置42および所内機器45について、それぞれが使用する電力および電力量を計測し、計測した電力および電力量をプラントデータ処理装置50へ送信する。なお、所内機器45の具体的な例としては、真空ポンプ451、循環水ポンプ452、補助ボイラ453などがある。
【0042】
プラントデータ処理装置50は、受信した所内個別機器の電力および電力量を、所内電力および所内電力量として統合するなどの処理をし、さらに、プラントデータの一部に含める形で発電スケジュール演算装置10へ送信する。
【0043】
発電スケジュール演算装置10は、プラントデータ処理装置50から受信した所内電力および所内電力量について、その平均を算出し(平均所内電力算出部19:図1参照)、その算出した平均を所内電力の見積り値として、発電スケジュール計算に使用し、起動時および停止時の発電プラント40の操作スケジュールを求める(発電スケジュール計算部17:図1参照)。さらに、発電スケジュール演算装置10は、求めた操作スケジュールに従って、発電プラント40を操作、制御するための制御情報を自動プラント起動停止装置30へ送信する。
【0044】
自動プラント起動停止装置30は、受信した制御情報に対応する制御信号を生成し、生成した制御信号を発電プラント40へ送信する。その結果、以上の通り、本実施形態に係るPPS対応発電プラントシステム1では、発電プラント40の所内電力について、クローズした制御系が構成されていることになる。
【0045】
続いて、図7〜図9を参照して、自動プラント起動停止装置30に設けられた起動操作ボタンおよび停止操作ボタンについて説明する。ここで、図7は、起動過程で用いられる起動操作ボタンの例を示した図、図8は、通常運転中に用いられる停止操作ボタンの例を示した図、図9は、停止過程で用いられる停止操作ボタンの例を示した図である。
【0046】
図7に示すように、自動プラント起動停止装置30には、起動過程で運転員が操作する起動操作ボタンとして、例えば、「補助ボイラ起動」ボタン301、「循環水起動」ボタン302、「真空上昇」ボタン303、「HRSG(Heat Recovery Steam Generator:排熱回収ボイラ)起動」ボタン304、「GT起動」ボタン305、「併入」ボタン306、「出力上昇」ボタン307、「ユニット起動完了」ボタン308などのプッシュボタンが設けられている。
【0047】
また、図9に示すように、自動プラント起動停止装置30には、停止過程で運転員が操作する停止操作ボタンとして、例えば、「補助ボイラ起動」ボタン311、「出力降下開始」ボタン312、「解列」ボタン313、「GT停止」ボタン314、「HRSG停止」ボタン315、「真空破壊」ボタン316、「循環水停止」ボタン317、「ユニット停止完了」ボタン318などのプッシュボタンが設けられている。
【0048】
これらの起動操作および停止操作のためのプッシュボタンには、ランプが併設されており、自動プラント起動停止装置30は、発電プラント40の各種の状態情報を取得し、その状態情報に応じて、適宜、そのランプをフリッカ(点滅)させ、運転員にフリッカしているプッシュボタンのプッシュ(以下、ON操作という)を促す。運転員がそのフリッカしているボタンをON操作すると、そのランプはフリッカ状態から点灯状態に移行し、発電プラント40では、そのプッシュボタンに定義されている動作が開始される。
【0049】
例えば、図7に示すように、発電プラント40の起動過程で補助ボイラ起動開始条件が整った場合には、「補助ボイラ起動」ボタン301のランプがフリッカする。そこで、運転員が「補助ボイラ起動」ボタン301をON操作すると、自動プラント起動停止装置30は、補助ボイラ453(図6参照)の起動を指示する制御信号を発電プラント40へ送信し、発電プラント40では、補助ボイラ453が動作開始する。なお、図7において、四角形の論理演算素子は、AND(論理積)素子を表す。
【0050】
同様に、発電プラント40において、前操作の補助ボイラ起動の完了条件が整い、さらに、循環水起動開始条件が整った場合には、「循環水起動」ボタン302のランプがフリッカする。そこで、運転員が「循環水起動」ボタン302をON操作すると、自動プラント起動停止装置30は、循環水の循環開始を指示する制御信号を発電プラント40へ送信し、発電プラント40では、循環水の循環を開始させる。
【0051】
以下、「真空上昇」ボタン303などについても、その役割や動作は同様であるので、説明を省略する。
【0052】
そして、起動過程の最後に、発電プラント40において、前操作である出力上昇の完了条件が整い、さらに、ユニット起動完了条件が整った場合には、「ユニット起動完了」ボタン308がフリッカする。そこで、運転員が「ユニット起動完了」ボタン308をON操作することにより、発電プラント40は、通常運転中の状態になる。
【0053】
なお、「ユニット起動完了」ボタン308がフリッカしたとき、実質的には、発電プラント40は通常運転中の状態になっているので、運転員はが「ユニット起動完了」ボタン308をON操作する必然性はない。つまり、「ユニット起動完了」ボタン308は、発電プラント40が通常運転中になったことを、運転員が単に確認するボタンともいえる。従って、「ユニット起動完了」ボタン308については、ボタン機能のない単なる表示ランプだけであってもよい。
【0054】
また、図8に示すように、通常運転中には、発電プラント40の通常運転中の状態を解除することを除き、とくに操作ボタンは用意されておらず、しかも、その解除には、停止操作用の「補助ボイラ起動」ボタン311が用いられる。すなわち、発電プラント40の通常運転中の状態は、ユニット起動完了条件が整い、「補助ボイラ起動」ボタン311がON操作されていない状態で継続され、補助ボイラ起動開始条件が整い、「補助ボイラ起動」ボタン311がON操作されたとき解除される。なお、図8において、四角形の中に×印が付された論理演算素子は、NOT(論理反転)素子を表す。
【0055】
こうして「補助ボイラ起動」ボタン311がON操作されると、発電プラント40では停止過程の動作が開始される。そして、図9に示すように、補助ボイラ起動完了条件が整い、さらに、出力降下開始条件が整うと、自動プラント起動停止装置30は、「出力降下開始」ボタン312のランプをフリッカさせる。そこで、運転員が「出力降下開始」ボタン312をON操作すると、自動プラント起動停止装置30は、発電プラント40に対し、電力の出力降下を開始させる。
【0056】
以下、「解列」ボタン313などについても、その役割や動作は同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
そして、停止過程の最後に、発電プラント40において、前操作の循環水停止の完了条件が整い、さらに、ユニット停止完了条件が整った場合には、「ユニット停止完了」ボタン318のランプがフリッカする。そこで、運転員が「ユニット停止完了」ボタン318をON操作することにより、発電プラント40におけるユニット停止が完了する。なお、「ユニット停止完了」ボタン318のランプがフリッカするときは、発電プラント40は、実質的には、ユニット停止が完了した状態になっているので、「ユニット停止完了」ボタン318は、単なる表示ボタンであってもよい。
【0058】
図10は、所内電力を収集する時間帯を区分する操作イベントの例を示した図である。図10に示すように、操作イベントA〜Pは、おおむね、図7および図9に示した起動操作ボタンおよび停止操作ボタンがON操作される操作に対応している。
【0059】
すなわち、起動過程の所内電力#1は、補助ボイラ起動開始Aから循環水起動開始Bまでの所内電力を計測したものであり、・・・(途中説明省略)・・・、起動過程の所内電力#7は、出力上昇開始Gからユニット起動完了Hまでの所内電力を計測したものである。また、通常運転中所内電力は、ユニット起動完了Hから停止過程の補助ボイラ起動開始Iまでの所内電力を計測したものである。また、停止過程の所内電力#1は、補助ボイラ起動開始Iから出力降下開始Jまでの所内電力を計測したものであり、・・・(途中説明省略)・・・、停止過程の所内電力#7は、循環水停止開始Oからユニット停止完了Pまでの所内電力を計測したものである。
【0060】
一般に、これらの起動操作ボタンや停止操作ボタンが操作されると、発電プラント40における所内機器45の動作が変化するため、所内電力も変化する。また、発電開始および停止時刻や発電電力の大きさやなどによっては、操作イベントA〜Pで区分された各時間帯の時間幅は変化する。そこで、所内電力を操作イベントA〜Pで区分される時間帯ごとに区別して計測しておけば、操作イベントA〜Pで区分された新たな時間帯の時間幅を有する起動および停止スケジュールが与えられた場合には、そのときの所内電力を、過去に計測したそれぞれの時間帯ごとの所内電力を用いて、精度よく見積もる(予測する)ことが可能になる。
【0061】
図11は、起動過程における操作イベント別の所内電力収集開始・終了タイミングの論理構成の例を示した図、図12は、停止過程における操作イベント別の所内電力収集開始・終了タイミングの論理構成の例を示した図である。なお、これらの操作イベント別の所内電力収集開始・終了タイミングは、前記したように、起動操作ボタンおよび停止操作ボタン(図7、図9参照)がON操作されるタイミングにおおむね対応したものであるが、図11および図12は、それを詳しく説明したものとなっている。
【0062】
なお、図11および図12において、四角形の論理演算素子はAND(論理積)素子を、円形の論理演算素子はOR(論理和)素子を、四角形の中に×印が付された論理演算素子はNOT(論理反転)素子を表す。また、「○○条件」とは、「○○条件」の成立を意味し、「△△ボタン」ONとは、「△△ボタン」がON操作されたことを意味する。
【0063】
ちなみに、図11に示すように、起動過程所内電力#1の収集は、起動過程の補助ボイラ起動開始条件が成立し、「補助ボイラ起動」ボタン301(図7参照)がON操作され、かつ、後続する循環水起動完了条件〜ユニット起動完了条件の全てが成立していない、という条件が成立したとき開始される。そして、起動過程所内電力#1の収集は、循環水起動開始条件が成立し、起動過程の「循環水起動」ボタン302がON操作され、かつ、後続する真空上昇完了条件〜ユニット起動完了条件の全てが成立していない、という条件が成立したとき終了する。
【0064】
なお、起動過程所内電力#1の収集終了タイミングは、同時に、起動過程所内電力#2の収集開始タイミングとなる。また、起動過程所内電力#2〜#6の収集開始および収集終了タイミングも、以上と同様にして定められる。
【0065】
起動過程の最後となる起動過程所内電力#7の収集は、起動過程の出力上昇開始条件が成立し、「出力上昇」ボタン307がON操作され、かつ、後続するユニット起動完了条件が成立していない、という条件が成立したとき開始される。そして、起動過程所内電力#7の収集は、ユニット起動完了条件が成立したとき終了する。
【0066】
さらに、図12に示すように、停止過程所内電力#1の収集は、停止過程の補助ボイラ起動開始条件が成立し、「補助ボイラ起動」ボタン311(図9参照)がON操作され、かつ、後続する出力降下完了条件〜ユニット停止完了条件の全てが成立していない、という条件が成立したとき開始される。そして、停止過程所内電力#1の収集は、出力降下開始条件が成立し、「出力降下」ボタン312がON操作され、かつ、後続する解列完了条件〜ユニット停止完了条件の全てが成立していない、という条件が成立したとき終了する。
【0067】
なお、停止過程所内電力#1の収集終了のタイミングは、また、停止過程所内電力#2の収集開始のタイミングとなる。また、停止過程所内電力#2〜#6の収集開始および収集終了のタイミングも同様に定められる。
【0068】
停止過程の最後となる停止過程所内電力#7の収集は、停止過程の循環水停止開始条件が成立し、「循環水停止」ボタン317がON操作され、かつ、後続するユニット停止完了条件が成立していない、という条件が成立したとき開始される。そして、停止過程所内電力#7の収集は、ユニット停止完了条件が成立したとき終了する。
【0069】
なお、通常運転中所内電力の収集開始タイミングは、開始過程最後の開始過程所内電力#7の収集終了タイミングと同じであり、通常運転中所内電力の収集終了タイミングは、停止過程最初の停止過程所内電力#1の収集開始タイミングと同じである。
【0070】
図13は、発電スケジュール演算装置10における操作イベント別所内電力取得部18の詳細な構成の例を示した図である。図13に示すように、操作イベント別所内電力取得部18は、所内電力収集タイミング管理部181と、起動過程所内電力収集部182と、通常運転中所内電力収集部183と、停止過程所内電力収集部184と、を含んで構成される。
【0071】
所内電力収集タイミング管理部181は、プラントデータ処理装置50を介して自動プラント起動停止装置30から通知される起動過程所内電力#1〜#7、通常運転中、停止過程所内電力#1〜#7についての収集開始タイミングおよび収集終了タイミングを受信するとともに、そのタイミングに基づいて、起動過程所内電力収集部182、通常運転中所内電力収集部183および停止過程所内電力収集部184による所内電力収集動作を管理する。
【0072】
すなわち、所内電力収集タイミング管理部181は、起動過程所内電力#1〜#7の収集開始タイミングの通知を受けた場合には、起動過程所内電力収集部182に対して、起動過程所内電力#1〜#7の収集開始を指令する。また、起動過程所内電力#1〜#7の収集終了タイミングの通知を受けた場合には、起動過程所内電力収集部182に対して、起動過程所内電力#1〜#7の収集終了を指令する。
【0073】
起動過程所内電力収集部182は、起動過程所内電力#1〜#7の収集開始の指令を受けてから、収集停止の指令を受けるまでの間、プラントデータ処理装置50を介して、発電プラント40において計測された所内電力および所内電力量を収集し、起動過程所内電力#1〜#7として記憶装置に格納する。
【0074】
また、通常運転中所内電力収集部183および停止過程所内電力収集部184も、所内電力収集タイミング管理部181から、同様の指令を受け、同様に動作する。
【0075】
図14は、発電スケジュール演算装置10における平均所内電力算出部19の詳細な構成の例を示した図である。図14に示すように、平均所内電力算出部19は、所内電力記憶管理部191と、N回平均・所内電力計算部192と、経年劣化考慮平均・所内電力計算部193と、を含んで構成される。
【0076】
以下、所内電力記憶管理部191、N回平均・所内電力計算部192および経年劣化考慮平均・所内電力計算部193の処理内容についての説明は、その処理対象が起動過程所内電力#1である場合を例にして行うが、その処理内容は、処理対象が起動過程所内電力#2〜7、通常運転中所内電力および停止過程所内電力#1〜7である場合についても同じである。
【0077】
所内電力記憶管理部191は、操作イベント別所内電力取得部18で取得された起動過程所内電力#1を過去N回分(例えば、N=5)にわたって記憶する所内電力記憶部1911を備え、操作イベント別所内電力取得部18から新たな起動過程所内電力#1を受け取るたびに、その受け取った起動過程所内電力#1を所内電力記憶部1911に格納するとともに、最も古い起動過程所内電力#1を廃棄する。
【0078】
なお、図14において、起動過程所内電力#1(T)は、操作イベント別所内電力取得部18から受け取った最新の起動過程所内電力#1を表す。また、起動過程所内電力#1(T―k)は、k回前に受け取った起動過程所内電力#1を表す。ここで、1日1回、発電プラント40の起動と停止を繰り返す場合には、1回前とは、1日前を意味する。
【0079】
そこで、所内電力記憶管理部191は、操作イベント別所内電力取得部18から新たな起動過程所内電力#1を受け取ったとき、所内電力記憶部1911の(T−k+1)のエリアに記憶されていたデータを(T−k)のエリアに移動させ(ただし、k=N−1,・・・,1)、さらに、その新たな起動過程所内電力#1を、所内電力記憶部1911の(T)のエリアに格納する。この処理により、最も古い起動過程所内電力#1は、廃棄される。
【0080】
N回平均・所内電力計算部192は、所内電力記憶部1911に格納されているN個の起動過程所内電力#1(起動過程所内電力#1(T)〜(T−N+1))の平均を算出し、その値をN回平均・起動過程所内電力#1とする。
【0081】
図15は、経年劣化考慮平均・起動過程所内電力計算部193の処理内容の例を模式的に示した図である。図15に示すように、経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1は、前月以前3か月間に得られた起動過程所内電力#1を平均したものである。
【0082】
ちなみに、図15において、4月における経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1は、1〜3月の3ヵ月間分の起動過程所内電力#1を平均したものである。同様に、5月における経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1は、2〜4月の3ヵ月間分の起動過程所内電力#1を平均したものである。このとき、4月の経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1の計算で用いられた1月分の起動過程所内電力#1は、廃棄されるが、2月〜3月分の起動過程所内電力#1は、5月の経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1の計算でも繰り越して用いられる。
【0083】
なお、以上の説明では、経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1の計算には、起動過程所内電力#1を用いるものとしているが、起動過程所内電力#1に代えて、N回平均・起動過程所内電力#1を用いるものとしてもよい。
【0084】
また、例えば、N=90とした場合には(ただし、ほぼ1日1回、発電プラント40の起動、停止が行われるとする)、N回平均・起動過程所内電力#1は、経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1とほぼ同じになるので、経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1は、3ヶ月間の起動過程所内電力#1の平均とせずとも、N回平均・起動過程所内電力#1そのものとしてもよい。
【0085】
図16は、平均所内電力算出部19で用いられる平均所内電力管理テーブルの構成の例を示した図である。図16に示すように、平均所内電力管理テーブルの各行は、「最新」、「1回前」、・・・、「N−1回前」、「N回平均」、「3ヵ月平均」、「前年同月平均」の各欄により構成される。このとき、各行は、図10に示した操作イベントで区分された各時間帯で収集される所内電力であることを表す。
【0086】
例えば、図16の平均所内電力管理テーブルの1行目の「SU11」は、過去最新の起動過程で得られた起動過程所内電力#1、「SU12」は、その1回前の起動過程で得られた起動過程所内電力#1、「SU1n」は、N−1回前の起動過程で得られた起動過程所内電力#1であることを表している。また、同じ1行目の「SU1a」は、N回平均・起動過程所内電力#1であることを表し、「SU1b」は、経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1であることを表している。
なお、この平均所内電力管理テーブルにおける各行の「最新」、「1回前」、・・・、「N−1回前」の欄は、図14の所内電力記憶管理部191における所内電力記憶部1911に相当している。
【0087】
以上のようにして求めた経年劣化考慮平均・起動過程所内電力#1〜#7、経年劣化考慮平均・通常運転中所内電力、経年劣化考慮平均・停止過程所内電力#1〜#7は、近い過去に発電プラント40から収集された所内電力を平均したものであるから、その値は、所内機器45の経年劣化などによる使用電力増加などが反映されたものとなっている。
【0088】
次に、図17〜図20を参照して、発電プラント40の停止時に復水器を真空保持するか、または、真空破壊するかによって生じる発電スケジュールの相違について説明する。ここで、図17は、コンバインドサイクル形の発電プラント40の機器構成の例を示した図である。
【0089】
図17に示すように、コンバインドサイクル形の発電プラント40は、圧縮機401、ガスタービン402、高圧蒸気タービン403、中圧蒸気タービン404、低圧蒸気タービン405、発電機406、HRSG(排熱回収ボイラ:図示省略)、補助ボイラ453、復水器407、真空ポンプ451a,451b、循環水ポンプ452a,452bなどを含んで構成される。このようなコンバインドサイクル形の発電プラント40では、ガスタービン402によって発電機406の回転軸(発電軸)を回転させるとともに、ガスタービン402の燃焼器(図示省略)の排熱を利用してHRSGで蒸気を発生させ、その蒸気で高圧蒸気タービン403、中圧蒸気タービン404および低圧蒸気タービン405を駆動し、発電軸を回転させ、発電機406によって発電する。
【0090】
ここで、低圧蒸気タービン405で使用された蒸気は、復水器407内に設けられた冷却パイプ408で冷却されて水に戻される。このとき、冷却パイプ408には、循環水ポンプ452a,452bによって取水路411から冷却水が導水され、その冷却水は、復水器407で温められ、放水路412へ放流される。また、復水器407の内部は、真空ポンプ451a,451bによって真空引きされる。
【0091】
補助ボイラ453は、ガスタービン402による排熱で蒸気が発生される前の段階で、低圧蒸気タービン405などに蒸気を供給する。また、復水器407を真空保持するとき、低圧蒸気タービン405などの回転軸から外部の空気が吸い込まれないようにシールするために、補助ボイラ453の蒸気が使用される。そのため、発電プラント40が停止したとき、復水器407が真空保持される場合には、補助ボイラ453は、作動しておく必要がある。
【0092】
図18は、発電プラント40を一旦停止させ、再度起動するときの操作イベントと主要な所内機器の運転スケジュールの関係の例を示した図で、(a)は、操作イベントに伴う発電電力の推移の例、(b)は、操作イベントに対する主要な所内機器の運転スケジュールの例である。
【0093】
発電プラント40は、起動過程を経て通常運転中となった後、図18(a)に示すように、停止過程(補助ボイラ起動開始I〜ユニット停止完了P)を経て、運転停止中となり、その後、再度、起動過程(補助ボイラ起動開始A〜ユニット起動完了P)を経て通常運転中となる。発電プラント40が起動と停止を繰り返す場合には、これらの操作イベントも繰り返し行われる。
【0094】
この運転停止中に復水器407を真空保持するか(以下、真空保持停止モードという)、または、運転停止中に復水器407を真空破壊するか(以下、真空破壊停止モードという)によって、図18(b)に示すように、所内機器45の運転パターンに相違が出てくる。従って、そのときに使用される所内電力にも相違が現れる。
【0095】
例えば、真空保持停止モードの場合、復水器407を真空保持しておくために、真空ポンプ451a,451bのうち、常に1台を運転させておくことが必要である。
【0096】
また、GT停止開始L〜GT起動開始Eまでの間は、ガスタービン402が停止となることにより、HRSGで蒸気が発生されなくなるので、復水器407へはHRSGからの蒸気が復水器407へ入らなくなる。従って、この間は冷却水が少なくて済むので、循環水ポンプ452a,452bは、2台運転から1台運転に切り換えられる。なお、この間も、真空保持のための冷却能力を確保するために、循環水ポンプ452a,452bのうち1台は、運転する必要がある。
【0097】
また、ガスタービン402を停止させると、HRSGからの蒸気がなくなるので、事前に補助ボイラ453を起動させて(補助ボイラ起動開始I)、蒸気を発生させ、この蒸気を使用することにより真空保持停止中の低圧蒸気タービン405の回転軸をシールする。そして、ガスタービン402が起動され、HRSGから蒸気が十分に供給されるようになると(出力上昇開始G)、補助ボイラ453を停止させる。
【0098】
これに対し、真空破壊停止モードの場合には、運転停止中、真空を保持する必要がないので、真空ポンプ451a,451bは、1台運転から全台停止となる。ただし、起動過程の真空上昇を行うタイミング(真空上昇開始C〜HRSG起動開始D)では、起動過程の時間を短縮するために、真空ポンプ451a,451bの2台運転を行う。そして、真空上昇の完了(HRSG起動開始D)の後は2台運転から1台運転に切り換える。
【0099】
また、停止過程でガスタービン402が停止され、HRSGから復水器407へ蒸気が供給されなくなると(HRSG停止開始M)、循環水ポンプ452a,452bは、2台運転から1台運転に切り換えられる。さらに、運転停止中は、真空を保持する必要がないので、ユニット停止完了Pから循環水起動開始Bまでの間は、冷却も不要となるため、全台停止となる。さらに、起動過程の循環水起動開始Bのタイミングで循環水ポンプ452a,452bのうち1台を運転し、HRSGからの蒸気が復水器407へ流入を開始するGT起動開始Eのタイミングで2台運転とし、冷却能力の増強を図る。
【0100】
また、運転停止中、復水器407の真空が破壊されるので、低圧蒸気タービン405の回転軸のシールは必要がない。従って、停止過程では、補助ボイラ453を運転する必要はない。一方、起動過程では真空上昇時に真空のシールに使用する蒸気を確保しておくことが必要となることから、事前に早めに補助ボイラ453を起動させる(補助ボイラ起動開始A)。そして、その後、ガスタービン402の運転が開始されると、HRSGから蒸気が発生するので補助ボイラ453を停止させる。
【0101】
以上のように、真空保持停止モードと真空破壊停止モードとでは、所内機器45の運転パターンが相違するので、その使用電力も相違することになる。
そこで、真空ポンプ451a,451bの1台の使用電力をPvと表し、循環水ポンプ452a,452bの1台の使用電力をPwと表し、補助ボイラ453の使用電力をPbと表せば、それら所内機器45の停止過程、運転停止中および起動過程を通しての合計の使用電力量は、真空保持停止モードおよび真空破壊停止モードそれぞれの場合について、次の式(1)および式(2)によって計算することができる。
【0102】
真空保持停止モードでの使用電力量=
(停止時補助ボイラ起動開始I〜ユニット起動完了Hまでの時間)×Pv
+(停止時補助ボイラ起動開始I〜HRSG停止開始Mまでの時間)×Pw×2
+(HRSG停止開始M〜GT起動開始Eまでの時間)×Pw
+(GT起動開始M〜ユニット起動完了Hまでの時間)×Pw×2
+(停止時補助ボイラ起動開始I〜出力上昇開始Gまでの時間)×Pb
・・・・・ 式(1)
【0103】
真空破壊停止モードでの使用電力量=
(停止時補助ボイラ起動開始I〜循環水停止Oまでの時間)×Pv
+(真空上昇開始C〜HRSG起動開始Dまでの時間)×Pv×2
+(HRSG起動開始D〜ユニット起動完了Hまでの時間)×Pv
+(停止時補助ボイラ起動開始I〜HRSG停止開始Mまでの時間)×Pw×2
+(HRSG停止開始M〜ユニット停止完了Pまでの時間)×Pw
+(循環水起動開始B〜GT起動開始Eまでの時間)×Pw
+(GT起動開始E〜ユニット起動完了Hまでの時間)×Pw×2
+(起動時補助ボイラ起動開始A〜出力上昇開始Gまでの時間)×Pb
・・・・・ 式(2)
【0104】
一般的にいえば、真空破壊停止モードのほうが使用電力量は少なくて済むが、運転停止中の時間が短い場合には、真空保持停止モードのほうが、使用電力量が少なくなることもあり得る。従って、発電プラント40を経済的に運用しようとする場合には、使用電力量が少ないほうを選択する必要がある。しかしながら、運転員は、運転停止中の時間が与えられただけでは、どちらの停止モードのほうが使用電力量が少なくて済むかを、容易に判断することはできない。そこで、本実施形態では、停止スケジュールを計算するとき、次回の起動スケジュールをも併せて計算するようにしている。その結果、次回の起動を迅速に行うことが可能になるとともに、使用電力量が少なくて済む経済的な運転が可能になる。
【0105】
図19は、停止スケジュール計算用入力設定部15に設けられた操作ボタンの例を示した図である。図19に示すように、停止スケジュール計算用入力設定部15には、真空停止モードを選択する操作ボタンとして、「所内電力節電優先」ボタン151、「起動時刻優先」ボタン152、「真空破壊」ボタン153および「真空保持」ボタン154が設けられ、スケジュール計算を実行するためのボタンとして、「停止スケジュール計算開始」ボタン155、「停止スケジュール計算再開」ボタン156および「停止スケジュール計算確定」ボタン157が設けられている。
【0106】
真空停止モード選択ボタンでは、運転停止時に真空保持停止モードおよび真空破壊停止モードのうち、いずれを選択するかを決定する方法を指定する。すなわち、「所内電力節電優先」ボタン151がON操作された場合には、発電スケジュール計算部17は、停止過程から運転停止中を経て次の起動過程に至る使用電力量を、前記式(1)および式(2)に従って計算する。そして、その結果、式(2)で計算した真空破壊停止モード電力量が、式(1)で計算した真空保持停止モード電力量より小さい場合には、真空破壊停止モードを選択して停止および起動スケジュールを計算し、逆の場合には、真空保持停止モードを選択して停止および起動スケジュールを計算する。
【0107】
一方、「起動時刻優先」ボタン152がON操作された場合には、発電スケジュール計算部17は、ユニット起動完了時刻を厳守することを優先し、真空保持停止モードを選択して停止および起動スケジュールを計算する。
【0108】
なお、本実施形態では、真空破壊停止モード電力量および真空保持停止モード電力量が計算されたときには、それぞれの電力量の表示欄158,159に表示するとともに、選択された真空破壊停止モードまたは真空保持停止モードに対応して、「真空破壊」ボタン153または「真空保持」ボタン154に内蔵されたランプがフリッカする。
【0109】
このとき、運転員は、ランプがフリッカしている「真空破壊」ボタン153または「真空保持」ボタン154をON操作すると、その後、選択された真空停止モードに従って、停止および起動スケジュールが計算される。ただし、このとき運転員は、諸事情を考慮し、あえてフリッカしていない「真空破壊」ボタン153または「真空保持」ボタン154をON操作することもできる。その場合には、運転員がON操作した「真空破壊」ボタン153または「真空保持」ボタン154で指定される真空停止モードに従って、その後の停止および起動スケジュールが計算される。すなわち、運転員の選択が優先される。
【0110】
また、「停止スケジュール計算開始」ボタン155は、発電スケジュール計算部17に停止スケジュール計算を開始させるためのボタンであり、「停止スケジュール計算再開」ボタン156は、真空破壊停止モードまたは真空保持停止モードの選択がされた後、停止および起動スケジュール計算を再開させるためのボタンであり、「停止スケジュール計算確定」ボタン157は、計算された停止および起動スケジュールの結果を確定させるためのボタンである。
【0111】
図20は、発電スケジュール計算部17における停止過程から運転停止中を経て起動過程に至る発電スケジュール計算の処理フローの例を示した図である。図20に示すように、発電スケジュール計算部17は、まず、停止スケジュール計算用入力設定部15および起動スケジュール計算用入力設定部14で設定された解列開始時刻、併入開始時刻、ユニット起動完了時刻などを取得する(ステップS11)。
【0112】
次に、発電スケジュール計算部17は、「停止スケジュール計算開始」ボタン155がONされると(ステップS12)、発電スケジュール計算部17は、前記の式(1)および式(2)に従って、真空保持停止モードでの使用電力量および真空破壊停止モードでの使用電力量を計算する(ステップS13)。そして、「所内電力節電優先」ボタン151がONされていた場合には(ステップS14でYes)、真空破壊停止モードでの電力量と真空保持停止モードでの電力量を比較する(ステップS15)。
【0113】
その比較の結果、真空破壊停止モードでの電力量が真空保持停止モードでの電力量より小さい場合には(ステップS15でYes)、発電スケジュール計算部17は、「真空破壊」ボタン153をフリッカさせ(ステップS16)、その「真空破壊」ボタン153がONされると(ステップS17)、さらに、「停止スケジュール計算再開」ボタン156をフリッカさせる(ステップS18)。その後、その「停止スケジュール計算再開」ボタン156がONされると(ステップS19)、発電スケジュール計算部17は、真空破壊停止モードで停止および起動スケジュールを計算する(ステップS20)。
【0114】
一方、ステップS14の判定で「所内電力節電優先」ボタン151がONされず、「起動時刻優先」ボタン152がONされた場合(ステップS14でNo)、または、ステップS15の比較で、真空破壊停止モードでの電力量が真空保持停止モードでの電力量より小さくない場合には(ステップS15でNo)、発電スケジュール計算部17は、「真空保持」ボタン154をフリッカさせ(ステップS21)、その「真空保持」ボタン154がONされると(ステップS22)、さらに、「停止スケジュール計算再開」ボタン156をフリッカさせる(ステップS23)。その後、その「停止スケジュール計算再開」ボタン156がONされると(ステップS24)、発電スケジュール計算部17は、真空保持停止モードで停止および起動スケジュールを計算する(ステップS25)。
【0115】
ステップS20またはステップS25における停止および起動スケジュールの計算を終えると、発電スケジュール計算部17は、「停止スケジュール計算確定」ボタン157をフリッカさせ(ステップS26)、その「停止スケジュール計算確定」ボタン157がONされると(ステップS27)、停止および起動スケジュール計算を確定させる(ステップS28)。
【0116】
なお、図20の説明において、『「○○」ボタンがONされる』とは、発電スケジュール計算部17が、運転員によって「○○」ボタンがON操作されるのを待って、その「○○」ボタンのON操作を検知することを意味する。また、『「○○」ボタンがフリッカする』とは、「○○」ボタンに内蔵されているランプをフリッカさせることを意味する。
【0117】
以上に説明した実施形態では、発電スケジュール演算装置10は、発電プラント40の起動過程および停止過程における操作イベントで区分された時間帯ごとにその所内電力を操作イベント別所内電力として取得し、その取得した操作イベント別所内電力のうち、過去最新のN回分または3か月分のデータを平均することによって、発電電力を算出するときに用いる所内電力を見積もっている。従って、その所内電力の見積り値は、その時点の所内機器45の稼動状態や経年劣化を考慮した性能がよく反映されたものとなっている。すなわち、本実施形態では、所内電力が現実に合わせて精度よく見積もられているため、発電プラント40は、特定顧客から求められる要求電力量に精度よく一致するような送電電力を、電力会社の送電網に送電することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 PPS対応発電プラントシステム
10 発電スケジュール演算装置
11 要求電力量入力部
12 送電電力算出部
13 発電電力算出部
14 起動スケジュール計算用入力設定部
15 停止スケジュール計算用入力設定部
16 真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部
17 発電スケジュール計算部
18 操作イベント別所内電力取得部
19 平均所内電力算出部
20 給電指令装置
30 自動プラント起動停止装置
40 発電プラント
41 GT・ST発電機
42 GT・ST制御装置
43 所内個別機器電力計測部
45 所内機器
46 主遮断器
47 主変圧器
48 発電機遮断器
49 所内変圧器
50 プラントデータ処理装置
181 所内電力収集タイミング管理部
182 起動過程所内電力収集部
183 通常運転中所内電力収集部
184 停止過程所内電力収集部
191 所内電力記憶管理部
192 N回平均・所内電力計算部
193 経年劣化考慮平均・所内電力計算部
401 圧縮機
402 ガスタービン
403 高圧蒸気タービン
404 中圧蒸気タービン
405 低圧蒸気タービン
406 発電機
407 復水器
408 冷却パイプ
411 取水路
412 放水路
431,433,435 電力量計
432,434 電力計
451,451a,451b 真空ポンプ
452,452a,452b 循環水ポンプ
453 補助ボイラ
1911 所内電力記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動、運転および停止を繰り返しながら発電し、発電した電力を外部の送電網に送電する発電プラントに対し、その起動過程および停止過程の操作イベントのスケジュールを演算する発電スケジュール演算装置であって、
前記発電プラントに要求される電力量の時間推移データを要求電力量として入力する要求電力量入力部と、
前記入力した要求電力量を実現する送電電力の時間推移データを算出する送電電力算出部と、
前記操作イベントで区分される時間帯別に、前記発電プラントの所内機器で使用される所内電力を操作イベント別所内電力として取得する操作イベント別所内電力取得部と、
前記取得した過去の操作イベント別所内電力を平均し、操作イベント別平均所内電力を算出する平均所内電力算出部と、
前記送電電力算出部で算出した送電電力の時間推移データに、前記平均所内電力算出部で算出した操作イベント別平均所内電力を加算して発電電力の時間推移データを算出する発電電力算出部と、
前記算出した発電電力の時間推移データに沿った電力を発電するように前記発電プラントの起動過程および停止過程における各操作イベントのスケジュールを計算する発電スケジュール計算部と、
を備えたこと
を特徴とする発電スケジュール演算装置。
【請求項2】
前記発電プラントは、蒸気タービンと、真空ポンプによって真空引きされる復水器と、を有するものであって、
前記発電スケジュール演算装置は、さらに、
前記発電プラントの運転停止中の前記復水器の状態として、前記復水器の真空保持を指定する真空保持停止モード、および、前記復水器の真空破壊を指定する真空破壊停止モードのうち一方を選択する真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部を備え、
前記発電スケジュール計算部は、
前記真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部で選択された真空保持停止モードまたは真空破壊停止モードに従って、前記停止過程の操作イベントのスケジュールを計算するとともに、次回の起動過程の操作イベントのスケジュールを併せて計算すること
を特徴とする請求項1に記載の発電スケジュール演算装置。
【請求項3】
前記真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部は、
前記発電プラントの停止過程から運転停止中を経て次の起動過程における前記所内機器の使用電力を、前記真空保持停止モードおよび前記真空破壊停止モードのそれぞれについて計算し、その使用電力が小さいほうの前記真空保持停止モードまたは前記真空破壊停止モードを選択すること
を特徴とする請求項2に記載の発電スケジュール演算装置。
【請求項4】
前記真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択部は、
運転員のボタン操作により設定された前記真空保持停止モードまたは前記真空破壊停止モードを選択すること
を特徴とする請求項2に記載の発電スケジュール演算装置。
【請求項5】
前記平均所内電力算出部が平均の対象とする操作イベント別所内電力は、過去最新のあらかじめ定められた回数分の起動過程、通常運転中および停止過程における操作イベント別所内電力であること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発電スケジュール演算装置。
【請求項6】
前記平均所内電力算出部が平均の対象とする操作イベント別所内電力は、過去最新のあらかじめ定められた月数間に取得された起動過程、通常運転中および停止過程における操作イベント別所内電力であること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発電スケジュール演算装置。
【請求項7】
起動、運転および停止を繰り返しながら発電し、発電した電力を外部の送電網に送電する発電プラントに対し、その起動過程および停止過程の操作イベントのスケジュールを演算する発電スケジュール演算装置における発電スケジュール演算方法であって、
前記発電スケジュール演算装置は、
前記発電プラントに要求される電力量の時間推移データを要求電力量として入力する処理と、
前記入力した要求電力量を実現する送電電力の時間推移データを算出する処理と、
前記操作イベントで区分される時間帯別に、前記発電プラントの所内機器で使用される所内電力を操作イベント別所内電力として取得する処理と、
前記取得した過去の操作イベント別所内電力を平均し、操作イベント別平均所内電力を算出する平均所内電力算出処理と、
前記送電電力算出部で算出した送電電力の時間推移データに、前記平均所内電力算出部で算出した操作イベント別平均所内電力を加算して発電電力の時間推移データを算出する発電電力算出処理と、
前記算出した発電電力の時間推移データに沿った電力を発電するように前記発電プラントの起動過程および停止過程における各操作イベントのスケジュールを計算する発電スケジュール計算処理と、
を実行すること
を特徴とする発電スケジュール演算方法。
【請求項8】
前記発電プラントは、蒸気タービンと、真空ポンプによって真空引きされる復水器と、を有するものであって、
前記発電スケジュール演算装置は、さらに、
前記発電プラントの運転停止中の前記復水器の状態として、前記復水器の真空保持を指定する真空保持停止モード、および、前記復水器の真空破壊を指定する真空破壊停止モードのうち一方を選択する真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択処理を実行し、
前記発電スケジュール計算処理では、
前記真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択処理で選択された真空保持停止モードまたは真空破壊停止モードに従って、前記停止過程の操作イベントのスケジュールを計算するとともに、次回の起動過程の操作イベントのスケジュールを併せて計算すること
を特徴とする請求項7に記載の発電スケジュール演算方法。
【請求項9】
前記発電スケジュール演算装置は、
前記真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択処理では、
前記発電プラントの停止過程から運転停止中を経て次の起動過程における前記所内機器の使用電力を、前記真空保持停止モードおよび前記真空破壊停止モードのそれぞれについて計算し、その使用電力が小さいほうの前記真空保持停止モードまたは前記真空破壊停止モードを選択すること
を特徴とする請求項8に記載の発電スケジュール演算方法。
【請求項10】
前記発電スケジュール演算装置は、
前記真空保持停止モード/真空破壊停止モード選択処理では、
運転員のボタン操作により設定された前記真空保持停止モードまたは前記真空破壊停止モードを選択すること
を特徴とする請求項8に記載の発電スケジュール演算方法。
【請求項11】
前記平均所内電力算出処理において平均の対象とされる操作イベント別所内電力は、過去最新のあらかじめ定められた回数分の起動過程、通常運転中および停止過程における操作イベント別所内電力であること
を特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の発電スケジュール演算方法。
【請求項12】
前記平均所内電力算出処理において平均の対象とされる操作イベント別所内電力は、過去最新のあらかじめ定められた月数間に取得された起動過程、通常運転中および停止過程における操作イベント別所内電力であること
を特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の発電スケジュール演算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−90448(P2013−90448A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228889(P2011−228889)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】