説明

発電タイル及びタイルパネル

【課題】発電効率に優れ、且つ意匠性にも優れた発電タイルと、基板の前面にこの発電タイルが取り付けられてなるタイルパネルとを提供する。
【解決手段】発電タイル1は、タイル本体10の前面に太陽電池20を設けてなる。タイル本体10の前面は、その上下方向の途中部が、最も前方に張り出した最大張出部10aとなっており、該最大張出部10aよりも上端側は、上側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め上方を向く上斜面11となっており、該最大張出部10aよりも下端側は、下側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め下方を向く下斜面12となっている。タイル本体10の前面には施釉層13が形成されている。太陽電池20は、施釉層13を介して上斜面11に積層形成されている。下斜面12には、陶磁器質のタイル本体10が露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル本体の前面に太陽電池が設けられてなる発電タイルと、基板の前面にこの発電タイルが取り付けられてなるタイルパネルとに関する。なお、本発明において、発電タイルの前方及び後方とは、それぞれ、この発電タイルが取り付けられるタイルパネルの基板前面に対する離反及び接近方向をいい、水平方向及び上下方向とは、それぞれ、この発電タイルが取り付けられたタイルパネルが建物の壁面等に設置された状態における水平方向及び上下方向をいう。
【背景技術】
【0002】
タイル本体の前面に太陽電池を設けてなる発電タイルが特許文献1(特開昭62−185953)に記載されている。特許文献1では、タイル本体は施釉タイルであり、このタイル本体の施釉面に太陽電池層を設け、この太陽電池層を透明保護膜で覆っている。
【0003】
特許文献2(特許第2881496号)の第1(B)図には、太陽電池パネルを垂直な壁面に設置した構成が記載されている。特許文献2では、この太陽電池パネルの基板は、前面に斜め上向きの斜面が上下多段に形成された鋸歯形縦断面形状とされており、この基板前面の斜め上向きの斜面にそれぞれ太陽電池が設置されている。これにより、太陽電池に太陽光がより垂直に近い角度で入射するようになり、発電効率が向上する。
【0004】
特許文献2では、太陽電池パネルの基板は、金属製又は合成樹脂製の折り曲げ可能なシートを鋸歯形縦断面形状に折り曲げてなる(特許文献2の第7欄第28行〜第39行)。この基板のうち太陽電池が設置された斜面同士の間は、水平な下向き面となっている。特許文献2の第7図には、基板に太陽電池を設置した後、この基板の前面及び太陽電池を被覆するようにエポキシ樹脂を塗布した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−185953
【特許文献2】特許第2881496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の発電タイルにあっては、この発電タイルを建物の壁等の鉛直な取付面に取り付けた場合、太陽電池の前面も鉛直となる。そのため、太陽電池への太陽光の入射角が浅くなり、発電効率が低下する。また、この発電タイルが設置された壁面は、いずれの方向から見ても太陽電池が視認されるので、前面に太陽電池が取り付けられていないノーマルタイルに比べて意匠性に劣る。
【0007】
特許文献2では、前述の通り、太陽電池が基板に斜め上向きに設けられているので、発電効率が高い。この太陽電池パネルを下からある角度以上で見上げた場合には、太陽電池が斜面の陰に隠れて見えなくなる。しかしながら、この場合、基板の斜面同士の間の下向き面が視認される。この下向き面は、基板を構成する金属や合成樹脂が露出しているか、あるいは樹脂層により被覆されたものとなっており、ノーマルタイルに比べて意匠性に劣る。
【0008】
本発明は、発電効率に優れ、且つ意匠性にも優れた発電タイルと、基板の前面にこの発電タイルが取り付けられてなるタイルパネルとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発電タイルは、タイル本体と、該タイル本体の前面に設けられた太陽電池と
を備えた発電タイルであって、該タイル本体は、全体として陶磁器質のものであり、該タイル本体の前面のうち少なくとも該太陽電池が配置される部分に施釉層が形成されており、該施釉層を介して該タイル本体の前面に該太陽電池が設けられている発電タイルにおいて、該タイル本体の前面に、前方へ張り出す凸部が形成されており、該凸部の外面のうち最も前方に張り出した最大張出部よりも上側の部分に、該太陽電池が前方斜め上方を向くように設けられており、該最大張出部よりも下側の凸部外面には、該タイル本体が露出していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発電タイルは、請求項1において、前記凸部の外面は、その上下方向の途中部が前記最大張出部となっており、該最大張出部よりも上端側は、上側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め上方を向く上斜面となっており、該最大張出部よりも下端側は、下側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め下方を向く下斜面となっており、前記太陽電池は、該上斜面に沿って設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発電タイルは、請求項1又は2において、前記タイル本体の前面の上部側に前記凸部が設けられており、該タイル本体の該凸部よりも下部側は、前面が該凸部の前記最大張出部よりも後退した平坦部となっており、前記太陽電池は、第1の太陽電池と第2の太陽電池とからなり、該凸部の外面のうち該最大張出部よりも上側の部分に、該第1の太陽電池が前方斜め上方を向くように設けられており、該平坦部の前面に沿って該第2の太陽電池が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発電タイルは、請求項3において、前記第2の太陽電池は、アモルファスセル型太陽電池であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のタイルパネルは、基板と、該基板の前面に上下多段に取り付けられた複数個の発電タイルとを備えたタイルパネルにおいて、該発電タイルは、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発電タイルであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のタイルパネルは、請求項5において、前記発電タイルは、請求項1又は2に記載の発電タイルであり、該発電タイルは、上下に間隔をあけて配置されており、該発電タイル同士の間に、前面に太陽電池が設けられた平板状の平発電タイルが配設されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7のタイルパネルは、請求項6において、前記平発電タイルの太陽電池は、アモルファスセル型太陽電池であることを特徴とするものである。
ものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発電タイル及びこの発電タイルを備えた本発明のタイルパネルにあっては、該発電タイルの前面に凸部が形成されており、この凸部の外面のうち最大張出部よりも上側の部分に、太陽電池が前方斜め上方を向くように設置されている。これにより、太陽電池が前面を鉛直にして配置される前述の特許文献1の発電タイルに比べて、太陽電池に太陽光がより垂直に近い角度で入射するようになるため、発電効率が高いものとなる。
【0017】
本発明の発電タイルにあっては、この凸部の外面のうち最大張出部よりも下側の部分には、陶磁器質のタイル本体が露出している。そのため、この発電タイルを見る人の位置が低くなるほど、太陽電池が視認される面積が小さくなり、陶磁器質な面が視認される面積が大きくなるので、意匠性が高い。また、このように、発電タイルを下から見上げたときに陶磁器質の面が視認されるので、特許文献2のように金属や樹脂層が視認されるのに比べて、見栄えがよい。
【0018】
請求項2の態様においては、凸部の外面は、その上下方向の途中部が最大張出部となっており、該最大張出部よりも上端側は、上側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め上方を向く上斜面となっており、該最大張出部よりも下端側は、下側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め下方を向く下斜面となっている。この上斜面に沿って太陽電池を設けることにより、太陽電池を前方斜め上方に向けてしっかりと支持することができる。また、この発電タイルが設置される地域における太陽の南中高度を考慮して凸部の下斜面の水平方向に対する傾斜角を十分に大きくすることにより、発電タイルに太陽光が当たったときに、凸部の最大張出部よりも下側に影が生じにくくなり、一層、見栄えが良いものとなる。
【0019】
発電タイルを上下多段に配置してタイルパネルを構成した場合、上段側の発電タイルの凸部の影が下段側の発電タイルの太陽電池にかかりにくくするために、上段側の発電タイルの凸部と下段側の発電タイルの太陽電池との間に十分に距離が空くように発電タイルを配置してもよい。
【0020】
この場合、請求項3の発電タイルが有用である。即ち、請求項3の発電タイルにおいては、タイル本体は、凸部の下側に、前面が該凸部の最大張出部よりも後退した平坦部を有しており、凸部の上側部分に第1の太陽電池が設けられ、平坦部の前面に第2の太陽電池が設けられている。この請求項3の発電タイルを用いてタイルパネルを構成した場合、上段側の発電タイルの凸部と下段側の発電タイルの第1の太陽電池との間に十分に距離が空くように発電タイルを配置しても、これらの間には第2の太陽電池が存在する。そのため、各発電タイルの凸部の下側に影が生じていないときには、上段側の発電タイルの凸部と下段側の発電タイルの第1の太陽電池との間で、この第2の太陽電池により発電することができる。これにより、タイルパネルの略全体で発電することができる。
【0021】
この場合、請求項4の通り、第2の太陽電池をアモルファスセル型太陽電池とすることが好ましい。結晶質シリコン太陽電池は、変換効率は高いけれども、影により変換効率が低下しやすいが、このアモルファスセル型の太陽電池は、その前面に影がかかっても、発電量が大きく低下しないという特徴を有する。従って、第2の太陽電池をアモルファスセル型太陽電池とすることにより、第2の太陽電池の上側の凸部の影が該第2の太陽電池にかかったとしても、該第2の太陽電池の発電量が大きく低下することがないので、太陽の南中高度が高い時期や時間帯などに、凸部の下側に影が生じた場合であっても、タイルパネルの全体で十分に発電することができる。
【0022】
請求項6の通り、請求項3の発電タイルを用いる代わりに、上下の発電タイル同士の間に、前面に太陽電池が設けられた平板状の平発電タイルを配設するようにしてもよい。この場合にも、請求項3の発電タイルを用いた場合と同様の作用効果が奏される。
【0023】
また、この場合、平発電タイルの太陽電池をアモルファスセル型太陽電池とすることにより、請求項4の態様と同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係る発電タイルの構成図である。
【図2】図1の発電タイルを備えたタイルパネルの縦断面図である。
【図3】図2のタイルパネルを図2の矢印III方向から見た図である。
【図4】図2のタイルパネルを図2の矢印IV方向から見た図である。
【図5】図2のタイルパネルを図2の矢印V方向から見た図である。
【図6】図1の発電タイルを備えた別のタイルパネルの斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】実施の形態に係る発電タイルの構成図である。
【図9】図8の発電タイルを備えたタイルパネルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
以下、第1〜5図を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0026】
第1図(a)は実施の形態に係る発電タイルの斜視図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図である。第2図は、この発電タイルを備えたタイルパネルの縦断面図であり、第3図、第4図及び第5図は、それぞれ、第2図の矢印III方向、IV方向及びV方向からこのタイルパネルを見た図である。
【0027】
この発電タイル1は、タイル本体10の前面に太陽電池20が設けられたものである。タイル本体10は、全体として陶磁器質のものである。第1図(a),(b)の通り、この実施の形態では、タイル本体10の前面は、その上下方向の途中部が、最も前方に張り出した最大張出部10aとなっている。このタイル本体10の前面のうち該最大張出部10aよりも上端側は、上側ほど後方となるように傾斜した上斜面11となっており、該最大張出部10aよりも下端側は、下側ほど後方となるように傾斜した下斜面12となっている。この上斜面11は前方斜め上方を向き、下斜面12は前方斜め下方を向いている。
【0028】
この実施の形態では、上斜面11は、該最大張出部10aからタイル本体10の上端まで略一定の傾斜角にて連続して形成されており、下斜面12は、該最大張出部10aからタイル本体10の下端まで略一定の傾斜角にて連続して形成されている。即ち、この実施の形態では、タイル本体10の前面が、全体として、前方へ張り出す凸部を形成している。なお、タイル本体10の前面の形状はこれに限定されない。例えば、タイル本体10の前面は、一部が前方に張り出した凸部となっており、それ以外の部分は、該凸部よりも後退した鉛直面となっていてもよい。
【0029】
上斜面11の水平方向に対する傾斜角θは、理論上は、この発電タイル1が用いられる地点の緯度と同程度(例えば日本では35度程度)であることが好ましい。しかしながら、意匠性や製造上の問題を考慮すると、現実的には、45〜80°特に60〜70°が好ましい。下斜面12の水平方向に対する傾斜角θは、θ=90°−θとすることが好ましく、具体的には、10〜45°特に30〜40°が好ましい。この発電タイル1が設置される地域における太陽の南中高度を考慮して下斜面12の水平方向に対する傾斜角θを十分に大きくすることにより、発電タイル1に太陽光が当たったときに、最大張出部10aよりも下側に影が生じにくくなる。タイル本体10の最大厚さ(タイル本体10の後面から前面の最大張出部10aまでの距離。以下、同様。)は、30〜200mm特に50〜100mmであることが好ましい。
【0030】
タイル本体10の前面には、釉薬が施されることにより、施釉層(釉薬ガラス層)13が形成されている。この実施の形態では、施釉層13は、上斜面11の略全体及び下斜面12の略全体にわたって形成され、且つ該上斜面11から下斜面12にかけて連続して形成されている。即ち、この実施の形態では、タイル本体10の前面の略全体が施釉層13により覆われている。この上斜面11の施釉層13の上に(即ち施釉層13を基材として)太陽電池20が積層形成されている。なお、施釉層13は、タイル本体10のうち、少なくとも太陽電池20が配置される領域(この実施の形態では上斜面11)にのみ形成されていればよく、太陽電池20が配置されない領域には、施釉層13が形成されていなくてもよい。
【0031】
この実施の形態では、タイル本体10は、後面に、前面と略相似形状に凹陥した窪み10bを有する中空状タイルとなっているが、このような窪み10bを有しない中実状タイルであってもよい。また、タイル本体10は、上斜面11から下斜面12まで初めから一連一体の「く」字形断面形状のタイルとして成形されたものであってもよく、2枚の平板状のタイル同士を「く」字形に結着してなるものであってもよい。この実施の形態では、タイル本体10の後面の上端及び下端から後方へ足部10cが張り出している。上斜面11の上端縁及び下斜面12の下端縁から各足部10cの後端面までの距離は、この発電タイル1を用いてタイルパネル30を構築したときの発電タイル1,1同士の間の目地の深さよりも大きなものとなっており、具体的には、5mm以上であることが好ましい。
【0032】
この実施の形態では、太陽電池20は、タイル本体10の上斜面11と略相似形状で且つ該上斜面11の略全体を覆う大きさとなっている。なお、太陽電池20の形状及び大きさはこれに限定されない。この太陽電池11は黒色の外観を有している。この上斜面11を覆う太陽電池20の厚さは2〜10mm特に3〜5mmであることが好ましい。
【0033】
この上斜面11に配置される太陽電池20としては、発電効率に優れた結晶質シリコンセル型太陽電池が好適であるが、これ以外のタイプの太陽電池であってもよい。
【0034】
太陽電池20には1対の負極端子線及び正極端子線(いずれも図示略)が連なっている。これらの端子線は、タイル本体10の側面又は上端面、あるいは該タイル本体10に設けられた挿通孔を通ってタイル本体10の後方に引き回されている。発電タイル1の表面は、この太陽電池20及び各端子線を保護する透明保護膜(図示略)により被覆されている。
【0035】
この発電タイル1にあっては、下斜面12にはタイル本体10が露出している。
【0036】
次に、この発電タイル1を用いたタイルパネル30について説明する。
【0037】
第2図の通り、タイルパネル30は、平板状の基板31の前面に、複数個の発電タイル1を上下多段に取り付けてなる。基板31は、最裏側の母板(図示略)と、該母板の前面側に設けられた配線基板(図示略)とからなり、この配線基板に接着剤(図示略)等により発電タイル1が結着されている。この配線基板には、所定のパターンにて負極パターン及び正極パターン(いずれも図示略)が設けられており、各発電タイル1の太陽電池20に連なる負極端子線及び正極端子線がそれぞれこの負極パターン及び正極パターンにハンダ付け等により接続される。上下の発電タイル1,1同士の間には、所定の目地間隔が空いており、この目地間隔を埋めるように目地材(図示略)が設けられる。
【0038】
なお、第3〜5図では、基板31の前面に発電タイル1が1列だけ上下多段に配列されているように図示されているが、上下多段に且つ左右方向に多列に配列されてもよい。
【0039】
このタイルパネル30は、第2図の通り各発電タイル1の太陽電池20が前方斜め上方に向くように、建物の壁面等の南向きの鉛直な取付面に取り付けられる。その際、タイルパネル30は、この取付面の下端から2m以上特に5m以上の高さ(一般的な人の身長よりも高い高さ)に配置されることが好ましい。例えば、この取付面が2階建て以上の建物の壁面であれば、タイルパネル30は、2階以上の階の壁面、特に最上階の壁面に取り付けられることが好ましい。このタイルパネル30よりも低い位置には、前面に太陽電池が取り付けられていない、タイル本体10と同色のノーマルタイル、又は、このノーマルタイルにより構成されたタイルパネルが取り付けられることが好ましい。
【0040】
このように構成された発電タイル1及びこの発電タイル1を備えたタイルパネル30にあっては、各発電タイル1の前面は、前方へ張り出す凸形状となっており、そのうち前方斜め上方を向いた上斜面11に太陽電池20が設けられている。これにより、太陽電池が前面を鉛直にして配置される前述の特許文献1の発電タイルに比べて、太陽電池20に太陽光がより垂直に近い角度で入射するようになるため、発電効率が高いものとなる。
【0041】
この発電タイル1の前面のうち、前方斜め下方を向いた下斜面12には、陶磁器質のタイル本体10が露出している。そのため、第3図の通り、この発電タイル1を前記傾斜角θ以上の俯角にて見下ろした場合には、太陽電池20のみが視認され、第4図の通り、この発電タイル1を正面から(前記傾斜角θよりも小さい俯角又は前記傾斜角θよりも小さい仰角にて)見た場合には、太陽電池20とタイル本体10の陶磁器質な面との双方が視認され、この発電タイル1を前記傾斜角θ以上の仰角にて見上げた場合には、タイル本体10の陶磁器質な面のみが視認されるようになる。このように、本発明の発電タイル1にあっては、この発電タイル1を見る人の位置が低くなるほど、太陽電池20が視認される面積が小さくなり、陶磁器質な面が視認される面積が大きくなるので、意匠性が高い。また、このように、発電タイル1を下から見上げたときに陶磁器質の面が視認されるので、特許文献2のように金属や樹脂層が視認されるのに比べて、見栄えがよい。なお、下斜面12の表面をスクラッチ、石割り、レリーフ、象嵌などの意匠面とすることも可能である。
【0042】
[第1の実施の形態の変形例]
上記の実施の形態のタイルパネル30においては、上下の発電タイル1,1同士を近接させて配置しているが、上下の発電タイル1,1同士を離隔させて配置してもよい。この場合、例えば、太陽光の水平面に対する入射角が前記傾斜角θより大きい場合、この光がタイルパネル30に当たると、各発電タイル1の下側に影が生じるが、このとき、上段側の発電タイル1の影が下段側の発電タイル1の太陽電池20にかからない程度に上下の発電タイル1,1同士を離隔させて配置してもよい。この上下の発電タイル1,1同士の間隔は、例えば、タイルパネル30が設置される地域において夏至の日に太陽が南中に達したときに各発電タイル1の下側に生じる影の長さと同程度としてもよい。上下の発電タイル1,1同士を離隔させて配置する場合、上下の発電タイル1,1同士の間に、発電タイル1以外の平板状のタイル(図示略)を配置してもよい。
【0043】
[第2の実施の形態]
第6図はタイルパネルの別の構成例を示す斜視図であり、第7図は第6図のVII−VII線に沿う断面図である。
【0044】
第2の実施の形態に係るタイルパネル30Aにおいては、第6,7図の通り、上記の第1の実施の形態の変形例と同様に、上下の発電タイル1,1同士が離隔して配置されると共に、これらの間にそれぞれ平板状の平発電タイル40が配設されている。即ち、このタイルパネル30Aにおいては、基板31の前面に発電タイル1と平発電タイル40とが交互に上下多段に配設されている。
【0045】
この平発電タイル40は、平板状のタイル本体41と、該タイル本体41の前面に設けられた太陽電池42とを備えている。
【0046】
この実施の形態では、平発電タイル40のタイル本体41は、横長の長方形板状となっている。この実施の形態では、太陽電池42は、タイル本体41の前面と相似形で且つ該タイル本体41の前面の略全体を覆う大きさとなっている。なお、タイル本体41及び太陽電池42の形状はこれに限定されない。
【0047】
平発電タイル40のタイル本体41の厚さは、5〜10mmであることが好ましい。このタイル本体41の前面を覆う太陽電池42の厚さは2〜10mm特に3〜5mmであることが好ましい。タイル本体41の上下方向の幅は、前述の第1の実施の形態の変形例のように、太陽光の水平面に対する入射角が前記傾斜角θより大きい場合に各発電タイル1の下側に生じる影Sの長さを考慮して決定されることが好ましい。
【0048】
この平発電タイル40の太陽電池42としては、アモルファスセル型のものであることが好ましい。このアモルファスセル型の太陽電池は、その前面に影Sがかかっても、発電量が大きく低下しないという特徴を有する。
【0049】
平発電タイル40においても、太陽電池42には1対の負極端子線及び正極端子線(いずれも図示略)が連なっており、これらはタイル本体41の側面又は上端面、あるいは該タイル本体41に設けられた挿通孔を通ってタイル本体41の後方に引き回されている。また、平発電タイル40の表面は、この太陽電池42及び各端子線を保護する透明保護膜(図示略)により被覆されている。平発電タイル40の基板31への取付方法は、発電タイル1と同様である。
【0050】
第7図の通り、発電タイル1及び平発電タイル40が基板31の前面に取り付けられた状態において、該平発電タイル40の前面(太陽電池42の前面)は、発電タイル1の前面の最大張出部10aよりも後退した鉛直面となっている。
【0051】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1の実施の形態と同様であり、第6,7図において第1〜5図と同一符号は同一部分を示している。
【0052】
このタイルパネル30Aにあっても、発電タイル1を用いているので、前述の第1の実施の形態におけるタイルパネル30と同様の作用効果が奏される。
【0053】
このタイルパネル30Aにあっては、第7図の通り、上下の発電タイル1,1同士が離隔して配置されているので、太陽光の水平面に対する入射角が前記傾斜角θより大きい場合でも、上段側の発電タイル1の影Sが下段側の発電タイル1にかかって各発電タイル1における発電量が低下することが防止ないし抑制される。また、このタイルパネル30Aにあっては、上下の発電タイル1,1同士の間には、それぞれ平発電タイル40が配設されているので、発電タイル1,1同士を上下に離隔させて配置しても、この発電タイル1,1同士の間で、平発電タイル40の太陽電池42により発電することができる。これにより、タイルパネル30Aの略全体で発電することができる。
【0054】
しかも、この平発電タイル40の太陽電池42としてアモルファスセル型のものを用いることにより、この平発電タイル40の上側の発電タイル1の影Sが該平発電タイル40の前面の太陽電池42にかかったとしても、該平発電タイル40の発電量が大きく低下することがないので、太陽の南中高度が高い時期や時間帯などに、発電タイル1の下側に影Sが生じた場合であっても、タイルパネル30Aの全体で十分に発電することができる。
【0055】
[第3の実施の形態]
第8図(a)は、別の実施の形態に係る発電タイルの斜視図、第8図(b)は第8図(a)のB−B線に沿う断面図、第9図はこの発電タイルを備えたタイルパネルの縦断面図である。
【0056】
第3の実施の形態に係る発電タイル1Aにおいては、タイル本体10Aは、その前面の上部側に、前方へ張り出す凸部14が設けられており、この凸部14よりも下部側は、該凸部14よりも後退した平坦部15となっている。
【0057】
凸部14の外面は、前述の第1の実施の形態におけるタイル本体10の前面と同様に、その上下方向の途中部が、最も前方に張り出した最大張出部14aとなっている。この凸部14の外面のうち該最大張出部14aよりも上端側は、上側ほど後方となるように傾斜した上斜面14bとなっており、該最大張出部14aよりも下端側は、下側ほど後方となるように傾斜した下斜面14cとなっている。なお、この実施の形態でも、凸部14の裏側に凹部や空洞を設けて該凸部14を中空状としてもよい。
【0058】
平坦部15の前面は鉛直面となっている。
【0059】
タイル本体10Aの前面には、施釉が施されることにより、施釉層16が形成されている。この実施の形態では、タイル本体10Aの前面の略全体にわたって施釉層16が形成されているが、少なくとも、太陽電池が設けられる凸部14の上斜面14b及び平坦部15の前面にのみ施釉層16が形成されてもよい。
【0060】
この凸部14の上斜面14bに、施釉層16を介して第1の太陽電池20Aが設けられると共に、平坦部15の前面に、施釉層16を介して第2の太陽電池42Aが設けられている。この第1の太陽電池20Aは、前述の第1及び第2の実施の形態における発電タイル1に設けられた太陽電池20と同様のものであり、第2の太陽電池42Aは、前述の第2の実施の形態における平発電タイル40に設けられた太陽電池42と同様のものである。
【0061】
即ち、この発電タイル1Aは、前述の第2の実施の形態における発電タイル1と、その下側に配置された平発電タイル40とを一体化した如き構成となっている。この発電タイル1Aの平坦部15が平発電タイル40に対応し、それよりも上側の凸部14を含む部分が、該平発電タイル40の上側の発電タイル1に対応する。
【0062】
上斜面14bの水平方向に対する傾斜角θ、下斜面14cの水平方向に対する傾斜角θ、タイル本体10Aの後面から凸部14の最大張出部14aまでの距離、平坦部15の厚さ、及び平坦部15の上下方向の幅等の好適範囲は、それぞれ、前述の各実施の形態において対応する部分と同様である。
【0063】
この発電タイル1Aにおいても、各太陽電池20A,42Aにはそれぞれ1対の負極端子線及び正極端子線(いずれも図示略)が連なっており、これらはタイル本体10Aの側面又は上端面、あるいは該タイル本体10Aに設けられた挿通孔を通ってタイル本体10Aの後方に引き回されている。また、発電タイル1Aの表面は、この太陽電池20A,42A及び各端子線を保護する透明保護膜(図示略)により被覆されている。
【0064】
第9図の通り、この発電タイル1Aを基板31の前面に上下多段に取り付けることにより、第2の実施の形態におけるタイルパネル30Aと実質的に同様のパターンにて太陽電池20A,42Aが配置されたタイルパネル30Bが構成される。
【0065】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第1及び第2の実施の形態と同様であり、第8,9図において第1〜7図と同一符号は同一部分を示している。
【0066】
このタイルパネル30Bにあっても、第2の実施の形態におけるタイルパネル30Aと同様の作用効果が奏される。
【0067】
このタイルパネル30Bにあっては、発電タイル1Aは、第2の実施の形態における発電タイル1と平発電タイル40とが一体化された如き構成となっているので、第2の実施の形態における発電タイル1と平発電タイル40とを別々に基板31に取り付ける手間を省くことができ、高発電効率・高意匠性のタイルパネル30Bを比較的容易に組み立てることができる。
【0068】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の構成とされてもよい。
【0069】
例えば、第1及び第2の実施の形態におけるタイル本体10の前面、及び、第3の実施の形態におけるタイル本体10Aの凸部14の外面は、それぞれ、略「く」字形(前方に向かって尖った三角形状)の断面形状となっているが、タイル本体の前面に設けられる凸部の断面形状はこれに限定されない。例えば、凸部の断面形状は、台形や五角形など、最大張出部よりも上側に、前方斜め上方に向く斜面を形成可能な種々の多角形状とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A 発電タイル
10,10A タイル本体
10a 最大張出部
11 上斜面
12 下斜面
13 施釉層
14 凸部
14a 最大張出部
14b 上斜面
14c 下斜面
15 平坦部
16 施釉層
20,20A,42,42A 太陽電池
30,30A,30B タイルパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイル本体と、
該タイル本体の前面に設けられた太陽電池と
を備えた発電タイルであって、
該タイル本体は、全体として陶磁器質のものであり、該タイル本体の前面のうち少なくとも該太陽電池が配置される部分に施釉層が形成されており、
該施釉層を介して該タイル本体の前面に該太陽電池が設けられている発電タイルにおいて、
該タイル本体の前面に、前方へ張り出す凸部が形成されており、
該凸部の外面のうち最も前方に張り出した最大張出部よりも上側の部分に、該太陽電池が前方斜め上方を向くように設けられており、
該最大張出部よりも下側の凸部外面には、該タイル本体が露出していることを特徴とする発電タイル。
【請求項2】
請求項1において、前記凸部の外面は、その上下方向の途中部が前記最大張出部となっており、該最大張出部よりも上端側は、上側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め上方を向く上斜面となっており、該最大張出部よりも下端側は、下側ほど後方となるように傾斜した、前方斜め下方を向く下斜面となっており、
前記太陽電池は、該上斜面に沿って設けられていることを特徴とする発電タイル。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記タイル本体の前面の上部側に前記凸部が設けられており、該タイル本体の該凸部よりも下部側は、前面が該凸部の前記最大張出部よりも後退した平坦部となっており、
前記太陽電池は、第1の太陽電池と第2の太陽電池とからなり、
該凸部の外面のうち該最大張出部よりも上側の部分に、該第1の太陽電池が前方斜め上方を向くように設けられており、
該平坦部の前面に沿って該第2の太陽電池が設けられていることを特徴とする発電タイル。
【請求項4】
請求項3において、前記第2の太陽電池は、アモルファスセル型太陽電池であることを特徴とする発電タイル。
【請求項5】
基板と、
該基板の前面に上下多段に取り付けられた複数個の発電タイルと
を備えたタイルパネルにおいて、
該発電タイルは、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発電タイルであることを特徴とするタイルパネル。
【請求項6】
請求項5において、前記発電タイルは、請求項1又は2に記載の発電タイルであり、
該発電タイルは、上下に間隔をあけて配置されており、
該発電タイル同士の間に、前面に太陽電池が設けられた平板状の平発電タイルが配設されていることを特徴とするタイルパネル。
【請求項7】
請求項6において、前記平発電タイルの太陽電池は、アモルファスセル型太陽電池であることを特徴とするタイルパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207402(P2012−207402A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72345(P2011−72345)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】