説明

発電プラントの廃熱回収設備

【課題】
蒸気タービンからの排気廃熱を、ヒートポンプを用いて蒸気発生装置の給水の加熱に利用して回収できる発電プラントの廃熱回収設備を提供する。
【解決手段】
発電プラントの廃熱回収設備が蒸気発生装置から蒸気を動力に変換する蒸気タービン1に供給し、この排気側に空冷式復水器3を備えると共に、前記蒸気発生装置への給水をヒートポンプで加熱する際に、蒸気タービン1の排気側に、排気蒸気の熱を熱媒体に回収させる熱交換器9を設け、この熱交換器9とヒートポンプ12との間に熱媒体が循環する循環配管11を介在させて、循環させた熱媒体をヒートポンプ12の熱源水として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発電プラントの廃熱回収設備に係り、特に蒸気から熱回収して蒸気発生装置への給水を加熱するヒートポンプを備えた発電プラントの廃熱回収設備に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントを設置する際、海水及び冷却塔による冷却水等を多量に得られない地域では、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させる手段として空冷式復水器を採用する場合が多くなる。この空冷式復水器を採用している発電プラントにおいては、空冷式復水器からの大気へ放熱が全体に占める割合は60%程度と非常に大きく、この放熱熱損失を回収することができれば、発電プラント効率を向上することが可能になる。
【0003】
しかしながら、空冷式復水器の冷却後の空気温度は、一般には50〜60℃程度であり、また空気の比熱も小さいため、熱交換器で回収するには使用する熱交換器の伝熱面積を非常に大きくする必要がある。このことから、従来では蒸気タービンの排気熱は、有効に利用されずにそのまま大気へ放熱されている。
【0004】
蒸気タービンの排気熱を発電プラント内で有効に回収する一例として、特許文献1に記載の発電設備では、蒸気タービン排気蒸気を直接吸収式ヒートポンプの蒸発器に導入することで、蒸気の潜熱を熱源として有効に利用しており、凝縮後のドレンは吸収式ヒートポンプの吸収器や凝縮器で昇温され、再び蒸気発生器の給水として利用することが提案している。
【0005】
【特許文献1】特開平5−263610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、蒸気タービン排気管の口径は、排気管の圧力損失、振動発生限界等を考慮して、経験的に排気管内の蒸気流速が60〜70m/sとなるように計画されている。また、蒸気タービン排気圧力が低いほど蒸気タービンの性能は良くなるので、蒸気タービンの排気圧力は、殆んど真空で計画されているため、蒸気タービンの排気管の口径はかなり大きなものとなる。
【0007】
このため、蒸気タービンの排気蒸気を、吸収式ヒートポンプの蒸発器に直接導入している上記の特許文献1に記載の例では、この接続配管の口径はかなり大きくなるから、接続配管の引き回しを考慮せねばならない等の配置上の問題が生ずる。また、吸収式ヒートポンプの蒸発器の伝熱面積も大きくする必要があるため、配置上の問題が生ずるし、更には特殊仕様となって設備投資が増加する恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、接続配管での引き回し等の配置上の問題や、ヒートポンプが特殊仕様とせねばならないため設備投資が増加させることなく、蒸気タービンからの排気廃熱を、蒸気発生装置の給水の加熱に利用して回収できる発電プラントの廃熱回収設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、蒸気発生装置から蒸気を動力に変換する蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンの排気側に空冷式復水器を備えると共に、前記蒸気発生装置への給水を加熱するヒートポンプを備えて発電プラントの廃熱回収設備を構成する際に、蒸気タービンの排気側には、排気蒸気の熱を熱媒体に回収させる熱交換器を設け、また熱交換器とヒートポンプとの間に熱媒体が循環する循環配管を介在させ、この循環させた熱媒体を前記ヒートポンプの熱源水としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のように発電プラントの廃熱回収設備を構成すれば、空冷式復水器を用いた場合でも接続配管引き回し等の配置上の問題や、ヒートポンプを特殊仕様とすることによる設備投資の増加もなく、蒸気タービンからの排気廃熱を蒸気発生装置の給水の加熱に活用でき、廃熱を効果的に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における発電プラントの廃熱回収設備の実施例について、以下に図に示す各実施例を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の第1の実施例である図1の発電プラントでは、蒸気タービン1からの排気蒸気を凝縮するため、排気側の排気管2に空冷式復水器3と排気復水タンク4を設け、また湿り蒸気中の水分は、凝縮水となって排気管2中に設けるドレンポッド5からドレンタンク6に至るようにし、ドレンポンプ7によって排気復水タンク4に排水するようにしている。
【0013】
したがって、蒸気発生器(図示ぜず)から発生した蒸気は、蒸気タービン1にて仕事をしてから、排気管2を介して空冷式復水器3に流入し、この空冷式復水器3に流入した蒸気は、空気で冷却されて凝縮水となって、排気復水タンク4に排出される。排気復水タンク4に貯水された凝縮水は、排気復水ポンプ8によって蒸気発生装置に給水される。この 蒸気タービン1からの排気蒸気の持つ熱量を有効に活用するため、蒸気の排気側の排気管2中に熱交換器9を設置している。そして、この熱交換器9で、排気蒸気との熱交換により昇温した熱媒体の熱量を、利用するためにヒートポンプ12を設けており、熱交換で昇温した熱媒体は、循環配管11の循環ポンプ10でヒートポンプ蒸発器13に供給している。これによって、排気蒸気の熱を熱交換器9で回収し、ヒートポンプ12の活用で蒸気発生装置に戻る給水を加熱するようにしている。
【0014】
ヒートポンプ12では、熱媒体から吸熱し、その吸熱分を蒸気発生装置の給水を加熱するため、ヒートポンプ蒸発器13出口の熱媒体の熱量は低下し、この出口の熱媒体を再度熱交換器9へ循環して加熱を繰返すものである。また、熱交換器9で熱回収された排気蒸気の一部は、凝縮してドレンとなってドレンタンク6を経由し、排気復水タンク4へ排出される。
【0015】
本発明のように構成する場合、熱交換器9から循環配管11でヒートポンプ12に循環する熱媒体は、熱交換器9から受熱する熱量とヒートポンプ蒸発器13で吸熱される熱量を、バランスさせる必要があるため、例えばヒートポンプ蒸発器13の入口に温度計を設置しておき、この温度が一定となるように循環ポンプ10の回転数制御による循環量の制御、流量調節弁による循環量の制御、バッファタンクの設置による温度の制御等を実施する。また、熱媒体の循環量は固定しておき、例えば調節弁等で蒸気発生装置の給水加熱量を調節することでも同様の効果が期待できる。
【0016】
本発明の発電プラントでは、熱交換器9に組合せるヒートポンプ12は、吸収式ヒートポンプや圧縮式ヒートポンプを適用でき、このような第1種ヒートポンプ12のいずれを用いても同様な効果を達成することができる。
【0017】
本発明は、新規建設の発電プラントのみならず、既に建設済みの発電プラントに容易に適用でき、しかも設備投資を抑制して実施できるため、極めて大きな効果を奏するものである。
【実施例2】
【0018】
本発明の他の実施例を示す図2の例では、蒸気タービン1の排気管2に分岐配管15、16を追加し、この分岐配管15、16部分に熱交換器9を設置したもので、他の部分は図1と同様に構成しており、この例においても図1の例と同様な効果を達成できる。しかも、このように構成すると、図1の例のように排気管2に設置する熱交換器9の伝熱面積が大きい場合には圧力損失が大きくなることから、蒸気タービン1の排気圧力が高くなって、蒸気タービン1の性能が悪化するのに対して、これを避けることができる。
【実施例3】
【0019】
本発明の別の実施例を示す図3では、蒸気タービン1に蒸気を供給する主蒸気管17に、バイパス弁18を介在させるバイパス管19を設けて排気管2に至るようにし、このバイパス管19に熱交換器9を設けたもので、他の部分は図1と同様に構成しており、これによっても図1の例と同様な効果を達成できる。また、この実施例では、図2の例と異なり熱交換器9をタービンバイパス管19に設置することで、蒸気タービン1の排気圧力が高くなることを防止でき、更に通常運転中は蒸気タービン1の排気管2から熱交換器9に蒸気が流れるため、通常運転中におけるバイパス管19のウォーミングを兼ねることができる。
【実施例4】
【0020】
本発明の更に別の実施例を示す図4では、図1から3の実施例が第1種ヒートポンプを用いて排気蒸気の廃熱を回収しているのに対して、廃熱の回収に第2種ヒートポンプを用いたものである。排気蒸気のもつ熱量を第2種ヒートポンプの駆動熱源として利用するため、蒸気の例と同様に排気管2に熱交換器9を設置し、蒸気タービン排気蒸気との熱交換により昇温した熱媒体を、循環ポンプ10でヒートポンプ蒸発器20とヒートポンプ発生器22に供給し、ヒートポンプ凝縮器23には冷却水を循環させたもので、このような構成であっても、図1の例と同様な効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例である発電プラントの廃熱回収設備を示す構成図である。
【図2】本発明の他の実施例である発電プラントの廃熱回収設備を示す構成図である。
【図3】本発明の別実施例である発電プラントの廃熱回収設備を示す構成図である。
【図4】本発明の更に別実施例である発電プラントの廃熱回収設備を示す構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1…蒸気タービン、2…排気管、3…空冷式復水器、4…排気復水タンク、5…ドレンポッド、6…ドレンタンク、7…ドレンポンプ、8…排気復水ポンプ、9…熱交換器、10…循環ポンプ、11…循環配管、12…ヒートポンプ、13、20…ヒートポンプ蒸発器、14…ポンプ、15…分岐配管、16…ドレン配管、17…主蒸気管、18…バイパス弁、19…バイパス管、21…ヒートポンプ吸収器、22…ヒートポンプ発生器、23…ヒートポンプ凝縮器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置から蒸気を動力に変換する蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンの排気側に空冷式復水器を備えると共に、前記蒸気発生装置への給水を加熱するヒートポンプを備えた発電プラントの廃熱回収設備において、前記蒸気タービンの排気側には、排気蒸気の熱を熱媒体に回収させる熱交換器を設け、前記熱交換器とヒートポンプとの間に熱媒体が循環する循環配管を介在させ、前記循環させた熱媒体を前記ヒートポンプの熱源水として構成したことを特徴とする発電プラントの廃熱回収設備。
【請求項2】
請求項1において、前記熱交換器は、蒸気タービンの排気側から分岐して排気復水タンクに至る分岐配管を設けて構成したことを特徴とする発電プラントの廃熱回収設備。
【請求項3】
請求項1において、前記熱交換器は、蒸気発生装置からの蒸気を蒸気タービンの排気側の排気管に接続する分岐配管に設けて構成したことを特徴とする発電プラントの廃熱回収設備。
【請求項4】
請求項1において、前記熱交換器から循環させた熱媒体を第2種ヒートポンプの熱源水として構成したことを特徴とする発電プラントの廃熱回収設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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