説明

発電プラントシステムの作動方法および発電プラントシステム

【課題】発電プラントシステムのより効率的な作動方法およびこの作動方法を実施するための発電プラントシステムを提供する。
【解決手段】CO2回収プラントおよびCO2圧縮ユニットを有するCO2回収・圧縮システムからの熱を、少なくとも1つの付加的な熱交換器を用いて、外部熱サイクルシステムの流動媒体へと伝達させ、少なくとも1つの付加的な熱交換器からの復水を、二酸化炭素の回収および圧縮のために発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムへと供給する。少なくとも1つの付加的な熱交換器が、CO2回収・圧縮システムによって形成された少なくとも1つの熱流によって、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するよう構成および配置されており、少なくとも1つの付加的な熱交換器が復水を発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムへと供給するよう構成および配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を生成するための発電プラント、殊に、化石燃料を用いて動作する蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントと、外部熱サイクルシステムと、CO2回収プラントと、CO2圧縮ユニットとを含む発電プラントシステムの作動方法に関する。さらに本発明は、この作動方法を実施する発電プラントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化石燃料を燃焼させる発電プラントは、ガスタービンを使用する場合には、このガスタービンと組み合わされた、いわゆる複合サイクル発電プラントにおいて、発電のために蒸気サイクルを使用する。また蒸気サイクルは、石炭ガス化複合発電(IGCC;Integrated Gasification Combined Cycle)プラントまたは天然ガス複合発電(NGCC;Natural Gas Combined Cycle)プラントなどの最近の発電プラントにも使用されている。石炭燃焼蒸気発電プラントにおいては、化石燃料に含まれる熱エネルギの約40%が電気に変換される。これによって消費されるエネルギの大部分が冷却塔または他の冷却設備内に残ることになる。冷却設備は冷却水を気化することによって、低圧の排気中の全ての廃熱を周囲環境へと伝達させる。複合発電プラントは総合効率は幾らか高く、59%にまで上る。
【0003】
他方では、燃焼後の煙道ガスからのCO2の分離には(蒸気の形態の)大量の熱が必要とされる。例えば、現時点において最新のモノエタノールアミン(MEA)吸収処理は、回収されたCO2の1キロ毎に約4MJの総熱量を必要とする。
【0004】
したがってCO2分離処理は非常に多くのエネルギを必要とする。必要とされるエネルギは発電プラント内の蒸気によって提供される。蒸気タービンからの蒸気の抽出によって生成される電気(出力、総合効率)が低下する。同一の蒸気量であれば、抽出された蒸気の圧力(したがって温度)が高ければ高いほど、電気の損失は一層高くなる。最新のアミンベースの吸収処理は電気生産量を低下させる。
【0005】
このエネルギコスト、また関連する財務的なコストはCO2分離の採用を抑制する。従来のMEAベースの吸収処理では、燃焼後の煙道ガスからのCO2分離のコストは、著しく高い総CO2貯留コストを必要とする。分離コストの高さがCO2排出規制の遅れの主たる理由である。高いCO2分離コストは増進回収法(Enhanced Oil Recovery)技術を基礎としたCO2の回収も妨げている。
【0006】
複合サイクル発電プラントまたは蒸気発電プラントにおけるCO2回収・圧縮システムの実現はシステムの総合効率の低下をもたらす。CO2回収処理は加熱機能および冷却機能を必要とし、それらの機能はそれぞれ、蒸気抽出源および主冷却源または他の冷却源によって提供される。CO2圧縮器は、電気モータによって駆動される場合には電気を必要とし、補助的な蒸気タービンによって駆動される場合には蒸気を必要とする。さらにCO2圧縮器はCO2を冷却するための能力を必要とする。以下の刊行物に記載されているように、CO2の回収に関する分野において広範な研究が行われた:
US2007/0256559,US2007/0213415およびUS2006/0032377にはCO2回収処理が開示されている。殊に、US2007/0256559には、アミンリボイラからの復水が直接的に主復水配管に送り戻されることが開示されている。US2006/0032377においては、アミンリボイラから供給される復水を急速に気化させ、「セミリーン熱交換器」における蒸気相を使用することが提案されている。
【0007】
従来技術からは、CO2回収・圧縮システムから熱を排出するために、冷却塔または他の冷却源からの主冷却水を使用することが公知である。また空気も代替的な冷却媒体となりうる。この冷却コンセプトは、圧縮器への入口温度が低いことに基づき、CO2圧縮ユニットの効率を高める。発電プラント、CO2回収システムおよび地域熱供給システムを備えた発電プラントシステムについての公知のコンセプトは、図1に概略的に示されているように、発電プラント蒸気タービンまたはボイラから抽出された蒸気を利用する。
【0008】
図1は発電プラント6を備えた発電プラントシステムを示す。発電プラント6は蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントで良く、またCO2を含む排気ガスを配管27を介してCO2回収プラント5へと供給する。このCO2回収プラント5においてはアミン溶液が吸収液として循環している。第1のサイクルステージにおいては、この吸収液が排気ガスと接触し、CO2を吸収する。吸収液は続いてポンプ16を用いて配管26に供給され、さらにはアミンリボイラ4へと供給され、このアミンリボイラ4において加熱され、非常に濃縮された形態でCO2が解放される。濃縮されたCO2は続いて配管20を介して圧縮・冷却ユニット13へと供給される。圧縮されたCO2は最終的に貯留設備10に蓄えられる。この例においては、モータMによって駆動される連続的な圧縮器15を備えた連続的な圧縮システムが設けられている。この圧縮システムにおいて、中間冷却器7は圧縮器15の間に配置されており、また予冷却器12は第1の圧縮器の上流側に配置されている。中間冷却器7のための冷却媒体は冷却水配管8を介して冷却塔9へと供給されており、この冷却塔9において冷却媒体の熱が大気中に放散される。
【0009】
アミンリボイラ4における加熱は、発電プラント6の水蒸気サイクルにおいて生じる蒸気によって促進される。発電プラント6の水蒸気サイクルからの第1の蒸気抽出配管23は、CO2吸収液を加熱するために、熱交換器またはアミンリボイラ4へと案内されている。リボイラ4からの復水は配管25および24を介して発電プラント6へと供給される。復水配管は通常の場合、給水タンク、種々の予熱器およびポンプ16を有する。
【0010】
別の蒸気抽出配管17は発電プラント6の水蒸気サイクルから慣例の熱交換器CHEXへと案内されている。この熱交換器CHEXにおいては、蒸気抽出に由来する熱が地域熱供給システムのような外部熱サイクルシステムまたはクライアントネットワークの循環配管28内の加熱媒体へと伝達される。システムはユニット11からの流入およびユニット19への流出も含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2007/0256559
【特許文献2】US2007/0213415
【特許文献3】US2006/0032377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、発電プラントシステムの改善された作動方法、殊により効率的な作動方法、またこの作動方法を実施するための発電プラントシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
作動方法に関する課題は、CO2回収プラントおよびCO2圧縮ユニットを有するCO2回収・圧縮システムからの熱を、少なくとも1つの付加的な熱交換器を用いて、外部熱サイクルシステムの流動媒体へと伝達させ、少なくとも1つの付加的な熱交換器からの復水を、二酸化炭素の回収および圧縮のために発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムへと供給することによって解決される。
【0014】
発電プラントシステムに関する課題は、少なくとも1つの付加的な熱交換器が、CO2回収・圧縮システムによって形成された少なくとも1つの熱流によって、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するよう構成および配置されており、少なくとも1つの付加的な熱交換器が復水を発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムへと供給するよう構成および配置されていることによって解決される。
【0015】
より詳細には、本発明は、電気を生成するための発電プラント、殊に、化石燃料を用いて動作する蒸気発電プラント、またはガスタービンおよび蒸気タービンを備えた複合サイクル発電プラントの作動方法に関する。発電プラントシステムには外部熱サイクルシステムが統合されている。発電プラントシステムはさらに、CO2回収プラントおよびCO2圧縮ユニットを備えたシステムを含む。
【0016】
CO2回収システムはCO2回収プラントを有し、このCO2回収プラントにおいては、CO2が発電プラントの排気ガスから吸収液を用いて吸収され、また吸収液をリボイラに供給し吸収液の温度を高めることによって吸収液からCO2が解放される。CO2回収・圧縮システムを有する発電プラントシステムの運転には、慣例の主熱交換器を用いた発電プラントの蒸気流から、外部熱サイクルシステム、例えば地域熱供給システムまたは熱流を必要とする公益システムまたは工業システムの流動媒体への熱の伝達が含まれる。外部熱サイクルシステムは、発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムの一部ではないシステムと解される。これに関して、発電プラントの蒸気タービンから抽出された蒸気の質量流量は主熱交換を介して案内され、この主熱交換器において蒸気の質量流量の熱が外部熱サイクルシステムの流動媒体へと伝達される。主熱交換器からの戻り流または復水は、発電プラントの水蒸気サイクルへと再び供給される。
【0017】
本発明によれば、CO2回収・圧縮システムからの熱は、少なくとも1つの付加的な熱交換器によって外部熱サイクルシステムの流動媒体へと伝達され、またこの少なくとも1つの付加的な熱交換器からの戻り流は発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムへと供給される。
【0018】
CO2回収・圧縮システムに由来し、熱および外部熱サイクルシステムへと伝達される熱は余剰的な熱であり、この余剰的な熱は外部熱サイクルシステムに伝達されなければ、例えば冷却塔のような冷却設備を用いて発電プラントシステム外の周囲へと放熱される熱である。
【0019】
本発明による発電プラントシステムの作動方法によって、蒸気タービンから抽出される蒸気の質量流量が低減され、その結果、発電プラントの効率が高まる。一般的に、本発明における主熱交換器のような熱交換器は、外部熱サイクルシステムの加熱媒体に所定の温度および熱負荷を供給することができるように制御されなければならない。CO2回収・圧縮システムから伝達された熱は、主熱交換器によって提供された熱に加えて、外部熱サイクルシステムの加熱媒体へと熱を提供する。したがって、主熱交換器において交換される熱を低減することができ、必要とされる蒸気抽出も同様に低減することができる。
【0020】
本発明による第1の実施形態においては、CO2吸収液のためのリボイラからの復水は、外部熱サイクルシステムの流動媒体との熱交換のために第1の熱交換器へと供給される。リボイラは、HRSG(ガスタービン用排熱回収ボイラ)または発電プラントの水蒸気サイクルのボイラから抽出された蒸気と、CO2回収プラントのCO2吸収液との間で熱を交換する熱交換器である。第1の熱交換器から戻される流体は、復水として発電プラントの水蒸気サイクルへと供給される。
【0021】
この動作によって、発電プラントの水蒸気サイクルへと戻される第1の熱交換器からの復水は、HRSGまたはボイラにおいて利用可能な熱が最も効果的に使用される温度に、発電プラントの給水タンクへの給水温度を維持することを促進する。より詳細には、CO2回収プラントおよび第1の熱交換器が運転していない場合に給水タンク内の給水が有する温度に給水温度を維持することができる。したがって、本発明による発電プラントの作動方法によって、CO2回収プラントからの熱の効率的な利用も、HRSGまたは発電プラントのボイラの最適で効率的な運転も達成される。
【0022】
本発明の第2の実施形態によれば、CO2圧縮ユニットにおいてCO2を冷却するために1つまたは複数の熱交換器が運転され、この1つまたは複数の熱交換器からの復水が第2の熱交換器へと供給され、この第2の熱交換器は外部熱サイクルシステムの流動媒体に熱を伝達するよう動作する。第2の熱交換器からの復水は、CO2回収システムのCO2圧縮ユニットに機能的に接続されている冷却サイクルへと供給される。
【0023】
この動作によって、本発明の第1の実施形態の場合と同様に、発電プラントの総合効率が高まる。CO2圧縮ユニットの(1つまたは複数の)熱交換器または(1つまたは複数の)冷却器からの復水から取り出される熱は余剰的な熱であり、この余剰的な熱は復水から取り出されなければ周囲環境に放熱される熱である。本発明による方法によって、放熱される代わりに、この熱は外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために使用される。主熱交換器による加熱の他に、流動質量媒体の加熱によって、この外部加熱システムのための主熱交換器を比較的低い負荷で運転させることができ、したがって発電プラントの水蒸気サイクルからの抽出された蒸気の質量流量を低減することができる。これによって発電プラントにおいて、より多くの蒸気の質量流量をタービンの駆動に使用することができ、したがって発電プラントの効率が高まる。
【0024】
本発明の第3の実施形態においては、CO2回収・圧縮システムからの熱は、第3の熱交換器を用いて、CO2回収プラントによって形成されたCO2流を第3の熱交換器へと供給することによって、外部熱サイクルシステムの流動媒体に伝達される。第3の熱交換器はCO2流からの熱を外部熱サイクルシステムの流動媒体へと伝達するよう動作する。第3の熱交換器から戻されるCO2流はCO2圧縮ユニットへと供給される。
【0025】
この動作によって、外部熱サイクルシステムの加熱媒体は、CO2回収プラントによって形成されたCO2流によって提供される余剰的な熱を用いて加熱される。ここでもまた、外部熱サイクルシステムのための主熱交換器を比較的低い負荷で運転させることができるので、発電プラントの水蒸気サイクルから抽出される蒸気を低減することができ、したがって発電プラントの効率は高まる。第1、第2および/または第3の熱交換器が主熱交換器と直列に配置されている場合には、それらの熱交換器は有利には(外部熱サイクルシステムにおける流れ方向に関して)主熱交換器の上流側に配置される。そのような配置構成により、主熱交換器は(固定された温度での)純粋な圧縮処理を基礎として機能し、他方では第1、第2および第3の熱交換器は(温度を低下させる)サブ冷却処理を基礎として運転されるので、主熱交換器におけるエクセルギー損失の低減が促進される。
【0026】
本発明の別の実施形態は、CO2回収・圧縮システムからの余剰的な熱である熱を外部熱サイクルシステムの加熱媒体へと伝達するための上記の構成のうちの2つまたはそれ以上を組み合わせることによる発電プラントの作動方法に関する。上記の構成のうちの2つまたはそれ以上を用いることによる外部熱サイクルシステムの流動媒体への熱の伝達を、第1の熱交換器と第2の熱交換器、または、第1の熱交換器と第3の熱交換器、または、第2の熱交換器と第3の熱交換器、または、第1の熱交換器と第2の熱交換器と第3の熱交換器の運転によって実施することができる。熱交換器を、外部熱サイクルシステムの流れに関して直列的な配置構成で運転させることができ、この場合には種々の熱交換器を特定の順序で配置することができる。この順序を、例えば熱伝達媒体の温度および個々の熱交換器の運転負荷、または空間およびコストを含めた、プラントの運転および設計の種々のパラメータに基づき決定することができる。2つまたはそれ以上の熱交換器を並列的に配置して運転させることができるか、並列的な配置構成と直列的な配置構成を組み合わせて運転させることができる。
【0027】
それらの実施例を図面と関連させて説明する。
【0028】
第1、第2および第3の熱交換器の組み合わせによって、発電プラント、CO2回収プラントおよび外部熱サイクルシステムのそれぞれの運転方式が異なる場合には、発電プラントと、CO2回収・圧縮システムと、外部熱サイクルシステムとの間での殊に多様的な熱交換が実現される。
【0029】
本発明による作動方法の別の実施例には、第1、第2および/または第3の熱交換のそれぞれの位置における種々の熱交換器の運転が含まれる。種々の熱交換器を並列的な配置構成および/または直列的な配置構成で運転させることができる。そのような作動方法によって、プラントの各運転方式に関して、統合された発電プラントの最適化された運転を実現することができる。
【0030】
本発明の実施例によれば、発電プラントシステムの作動方法は、第3の熱交換器を使用する実施形態の他に、抽出されたCO2流からの熱をCO2の圧縮の前にCO2冷却媒体へと伝達するバックアップ熱交換器または冷却器を用いた熱の伝達を含む。これによって、外部熱サイクルシステムが運転していない場合、または第3の熱交換器におけるCO2流を用いた加熱が要求されない場合であっても、CO2流の冷却が保証される。
【0031】
上述のように、一般的に吸収液はアミン溶液であり、有利にはモノエタノールアミン処理において使用されるようなアミン溶液である。
【0032】
さらに本発明は、上記の方法を使用し、実現するための発電プラントシステムに関する。殊に本発明は、電気を生成するための発電プラント、殊に、化石燃料を用いて動作する蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントを含む発電プラントシステムに関する。システムはさらにCO2回収・圧縮システムを有する。CO2回収・圧縮システムは、発電プラントの排気ガスからのCO2を吸収するための吸収液の循環を用いるCO2回収プラントと、吸収されたCO2を解放するための吸収液の温度を高めるためのリボイラとを有する。CO2回収・圧縮システムはさらに、吸収液から解放されたCO2を圧縮および冷却するためのCO2圧縮ユニットを有する。発電プラントシステムはさらに、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するための主熱交換器を有する。主熱交換器は、発電プラントの水蒸気サイクルから抽出された蒸気を用いて、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために構成および配置されている。
【0033】
外部熱サイクルシステムは地域熱供給システムまたは、熱を必要とする何らかの公益システムまたは工業システムでよい。
【0034】
殊に、本発明により提案される発電プラントは以下の特徴を有する。すなわち、少なくとも1つの熱交換器がCO2回収・圧縮システムによって形成された少なくとも1つの熱流を用いて外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために構成および配置されており、またさらには少なくとも1つの熱交換器が発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムに復水を供給するために構成および配置されている。このために、熱のための適切な1つまたは複数の配管がCO2回収・圧縮システムから少なくとも1つの熱交換器へと案内されており、また別の配管が少なくとも1つの熱交換器から発電プラントまたはCO2回収・圧縮システムへと案内されている。
【0035】
第1の実施形態においては、第1の熱交換器は、リボイラの復水を用いる外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために構成および配置されている。このために、CO2吸収液のためのリボイラからの復水を供給するための複数の配管はリボイラから第1の熱交換器へと案内されている。さらには、第1の熱交換器の復水を戻すための配管が第1の熱交換器から発電プラントの水蒸気サイクルへと案内されている。
【0036】
本発明による発電プラントシステムの第2の実施形態は、CO2圧縮ユニットからの熱を用いることにより、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために構成および配置されている。このために、CO2を圧縮および冷却するユニットの冷却媒体を供給するための配管が第2の熱交換器へと案内されている。第2の熱交換器の復水のための配管は、第2の熱交換器から、CO2圧縮ユニットに機能的に接続されている冷却サイクルへと案内されている。
【0037】
本発明による発電プラントシステムの第3の実施形態は、CO2回収プラントによって生成されたCO2流を用いることにより、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために構成および配置されている第3の熱交換器を有する。このために第3の熱交換器は、CO2回収プラントによって煙道ガスから抽出されたCO2を第3の熱交換器へと供給するための配管と、第3の熱交換器から戻されるCO2流をCO2圧縮ユニットへと供給するための別の配管とを有する。
【0038】
本発明による第1、第2および第3の熱交換器のうちの2つまたは3つの熱交換器を直列または並列に配置することができる。もしくは、それらの熱交換器を、外部熱サイクルシステムの流動媒体を加熱するために直列的な配置構成と並列的な配置構成とを組み合わせて配置することができる。
【0039】
有利には、3つの熱交換器のうちの1つまたは複数の熱交換器は、主熱交換器の上流側において外部熱サイクルシステムの流れ内に配置されている。
【0040】
さらには、CO2回収・圧縮システムおよび冷却ユニットからの利用可能な熱の最適化された使用の観点において、第1の熱交換器は有利には、第2の熱交換器および第3の熱交換器の下流側において、外部熱サイクルシステムの流動媒体の流れ内に配置されており、また第3の熱交換器は第2の熱交換器の下流側に配置されている。択一的に、第1の熱交換器は、第3の熱交換器および第2の熱交換器の上流側において、外部熱サイクルシステムの流動媒体の流れ内に配置されており、また第3の熱交換器は第2の熱交換器の上流側に配置されている。
【0041】
外部熱サイクルシステムは一般的に上述したような局所的な加熱システムでよい。有利には、外部熱サイクルシステムまたはクライアントネットワークとして、発電プラントおよび/またはCO2回収・圧縮システムとは独立した、液体または流体の加熱媒体の閉じられた、または開かれた循環系を備えた、地域熱供給システム、温室暖房システム、または、工業的な用途のための加熱システムが考えられる。
【0042】
さらに本発明は、外部熱サイクルシステム、有利には局所的な加熱システム、有利には地域熱供給システム、温室暖房システムまたは工業的な用途のためのCO2回収プラントからの余剰的な熱の使用に関する。
【0043】
本発明のさらなる実施形態は従属請求項に記載されている。
【0044】
以下では、本発明の有利な実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。図面には本発明の実施例が示されているが、それらの実施例は本願の権利範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラント、CO2回収・圧縮プラントおよび外部熱サイクルシステムを含む、従来技術による発電プラントシステムを示す。
【図2】第1の熱交換器によって外部熱サイクルシステムが熱的に統合されている、CO2回収・圧縮システムを備えた、蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントを含む、本発明の第1の実施形態による発電プラントシステムを示す。
【図3】第2の熱交換器によって外部熱サイクルシステムが熱的に統合されている、CO2回収・圧縮システムを備えた、蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントを含む、本発明の第2の実施形態による発電プラントシステムを示す。
【図4】第3の熱交換器によって外部熱サイクルシステムが熱的に統合されている、CO2回収・圧縮システムを備えた、蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントを含む、本発明の第3の実施形態による発電プラントシステムを示す。
【図5】複数の熱交換器の組み合わせによって外部熱サイクルシステムが熱的に統合されている、CO2回収・圧縮システムを備えた、蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントを含む、本発明の別の実施形態による発電プラントシステムを示す。
【図6】複数の熱交換器の別の組み合わせによって外部熱サイクルシステムが熱的に統合されている、CO2回収・圧縮システムを備えた、蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントを含む、本発明の別の実施形態による発電プラントシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面において同一の参照番号を付した構成要素は同一の構成要素を表し、別の記載が無い限り同一の機能を実行するものである。
【0047】
図2は、CO2回収プラント5を備えた発電プラント6を示す。CO2回収プラント5は、発電プラント6からCO2回収プラント5へと煙道ガスを案内するための配管27と、CO2回収プラント5によって除去され抽出されたCO2を案内する配管20と、CO2を含まない煙道ガスを解放するための配管29とを有する。吸収液循環部は、CO2回収プラント5から吸収液のためのリボイラ4へと吸収液を案内するための配管26を有する。蒸気抽出配管23は、発電プラント6の水蒸気循環部、例えば排熱回収ボイラに由来する、リボイラ4の運転用の蒸気を供給し、また配管25はリボイラ4からの復水を案内する。抽出されたCO2を案内するための配管20はCO2回収プラント5から、CO2圧縮ユニット13の上流側に配置されている予冷却器12へと延びている。本発明によれば、図2に示した発電プラントシステムでは、発電プラントと、CO2回収・圧縮システムと、外部熱サイクルシステムを備えた冷却システムとが統合されている。外部熱サイクルシステムは、加熱されるべき媒体、例えば水のための循環用配管28と、ソースユニット11と、ユーザ19とを含み、ユーザ19には循環配管28の加熱された流出媒体が供給される。図2による実施形態は、復水をアミンリボイラ4から第1の熱交換器1へと供給する配管25’を有する。第1の熱交換器1は外部熱サイクルシステムの配管28内の流動媒体を加熱するために構成および配置されている。熱交換器1において、復水に含まれる熱を配管28内の流動媒体に伝達することができる。熱交換器1の復水は配管25’’を介して配管24へと供給され、この配管24は発電プラント6へと水を再び供給する。
【0048】
アミンリボイラ4から得られる復水の一般的な温度範囲として160℃〜100℃の温度範囲が考えられる。
【0049】
本発明の実施形態による構成は、発電プラントの総合効率に多岐にわたり寄与する。図1に示した発電プラントシステムの構成に比べて、水蒸気サイクルに戻される復水の温度レベルは低減されている。その結果、HRSGまたはボイラにおいて得られる熱をより効率的に利用することができ、また発電プラントおよび外部熱サイクルシステムの熱的な総合効率を高めることができる。熱交換器1によってCO2回収プラント5と外部熱サイクルシステムとが統合されているので、リボイラ4からの廃熱は外部熱サイクルシステムに寄与する熱として使用される。外部熱サイクルシステムのユーザ19への流出部における配管28内の流体の温度は一般的に所望の温度レベルに設定される。ユーザ19への配管28における所望の温度レベルを達成するために、図2における主熱交換器CHEXは、図1に示した構成の熱交換器CHEXほどに寄与する必要はない。これによって、主熱交換器CHEXのための蒸気抽出配管17の質量流量を低減することができる。したがって、発電プラント6のエネルギ損失は低減され、発電プラント6はより高い効率で作動することができる。
【0050】
図3は、CO2回収・圧縮システムを有し、また外部熱サイクルシステムが統合されている、別の発電プラントシステムを示す。外部熱サイクルシステムの流動媒体は熱交換器CHEXによって加熱され、熱交換のための蒸気は発電プラント6の水蒸気サイクルの蒸気抽出配管17によって提供される。さらに、流動媒体は、主熱交換器の上流側における熱サイクル内に配置されている熱交換器2によって加熱される。熱交換器2にはCO2回収システム5によって抽出されたCO2を冷却するための流体からの熱が供給される。予冷却器12のための冷却媒体の復水、また種々のCO2圧縮器15の間に配置されている種々の中間冷却器7からの復水は配管8を介して熱交換器2へと供給される。配管8内の流体の温度は約100℃にもなる可能性がある。したがってCO2圧縮ユニット13の冷却サイクルはクライアントネットワーク11への熱伝達のために能動的に使用される。このことは、図3に示されているように、冷却塔9の直近の上流側における冷却水配管8を使用することによって最も効率的に行われる。つまり、その位置においてサイクル8内の冷却媒体は、熱交換器2におけるクライアントネットワークの配管28への水との熱交換に関して最も高い温度を有する。熱交換器2はサイクル8における冷却媒体の流れを考慮して、有利には、従来の熱交換器CHEXの上流側に配置されている。
【0051】
この熱交換器2からの復水は続いて冷却設備9へと供給される。CO2の冷却により生じた熱は熱サイクルシステムにおいて使用される。熱交換器2は熱をサイクルシステムへと伝達し、主熱交換器CHEXを支援する。ユーザ19のための配管28内の流動媒体の所望の温度を達成するためには、図3における主熱交換器CHEXは、図1に示した発電プラントシステムにおける主熱交換器よりも少ない熱しか必要としない。この熱交換器2の配置構成によって、蒸気抽出配管17内の質量流量を低減することができ、また発電プラントの効率を高めることができる。
【0052】
図4は本発明による発電プラントシステムの別の実施形態を示す。この実施形態では、熱交換器3が主熱交換器CHEXの上流側において外部熱サイクルシステム内に配置されている。CO2回収プラント5によって抽出されたCO2流からの熱は外部熱サイクルシステムにおける加熱のために使用される。このために、CO2回収プラント5とCO2圧縮ユニット13との間にはCO2を案内する配管20が設けられている。この配管20は、予冷却器12およびCO2圧縮ユニット13にCO2を供給する前に、熱交換器3に高温でCO2を供給する。熱交換器3においては、CO2流からの熱がクライアントネットワークの配管28への流体に伝達される。熱交換器3の下流側には、種々の運転仕様を実現するために、CO2圧縮器15の最初のステージへの配管22の手前側において、配管21が予冷却器12に接続されている。予冷却器12はCO2のバックアップ冷却器として使用される。バックアップ冷却器12における熱交換は、CO2圧縮ユニット13の冷却循環路8を接続することによって行われる。
【0053】
したがって、図4に示されている実施形態による着想はここでもまた、発電プラントの総合効率を高めるためにCO2回収・圧縮システム(CCS)からの熱を使用することが要となる。発電プラントとCCSの熱的な統合は、CO2回収プラント5(より正確には再生塔の下流側)とCO2圧縮ユニット13(第1の圧縮ステージの手前)との間に設けられている熱交換器3またはCO2圧縮器を用いて熱を要求するクライアントネットワーク11へのCCSからの熱を直接的または間接的に集めて伝達することを含む。クライアントネットワーク11は熱を必要とする発電プラントの外部コンシューマであり、例えば、地域熱供給システム、温室暖房、バイオマスまたは他の工業的な用途である。熱交換器CHEXはCO2圧縮器または熱交換器3の下流側において必要とされる。熱交換器CHEXには基本的に、一般的な熱輸送に関して、主蒸気タービンから抽出された配管17内の蒸気が供給される。連続する種々の熱交換器によって要求される種々の圧力レベルで蒸気を抽出することができる。この熱交換器CHEXは、CO2圧縮器3による熱結合がクライアントネットワーク11の(温度および/または熱負荷に関する)要求を満たすには十分でない場合、またはCO2回収・圧縮ユニットが全く運転していない場合には加熱器として使用される。熱交換器CHEXは、統合されたCO2圧縮器3が運転しないときにクライアントネットワーク11の要求を満たすよう設計されるべきである。クライアントネットワークによって要求される熱負荷およびクライアントネットワークに供給される水の温度は、低圧蒸気タービン、中間圧力と低圧力が重畳するパイプ、または廃熱回収ボイラの低圧蒸気からの蒸気抽出によって制御される。この蒸気は1bar〜5barの圧力レベルを有することが考えられる。
【0054】
熱交換器CHEXは1つの蒸気供給圧力レベルを有する1つの熱交換器であるか、2つの異なる蒸気供給圧力レベルを有する、連続する2つの熱交換器である。後者の場合には、2つの加熱器の負荷分配を、クライアントネットワークによって要求される熱、また、例えば部分負荷動作中のプラント運転に応じて制御することができる。
【0055】
主冷却水循環系8を備えた別のバックアップ冷却器12を熱交換器3とCO2圧縮器13との間に配置することができる。この付加的な冷却器12は、クライアントネットワークが運転していない場合、または、CO2圧縮ユニット13の温度要求を満たすにはCO2が少ないことを保証するにはその最低水温が高すぎる場合には、CO2の冷却を保証する。
【0056】
CO2圧縮器3を含めたCCSの上流側におけるCO2の典型的な温度範囲は80℃〜150℃になる。CO2圧縮器3の下流側における外部熱サイクルシステムまたはクライアントネットワークの典型的な温度範囲は70℃〜140℃になる。
【0057】
CO2圧縮器3の熱負荷は冷却水8の温度、発電プラント6の負荷およびCO2回収プラント5の負荷に依存する。負荷は一般的に、複合サイクル発電プラントに関しては約5MWth〜80MWthであり、蒸気発電プラントに関しては5MWth〜350MWthである。
【0058】
熱交換器3と主熱交換器CHEXと熱交換器12の組み合わせにより、CO2回収プラントを有する発電プラントの運転における広範な多様性が実現される。すなわち、発電プラント6、CO2回収プラント5およびクライアントネットワーク11それぞれの種々の負荷条件下での動作の種々のモードに関して、広範な多様性が実現される。
【0059】
CO2圧縮器3を含むCCSおよび(1つまたは複数の)主熱交換器CHEXに関する下記の運転コンセプトは、図4による構成によって、また非常に一般的には、熱交換器3、主熱交換器CHEXおよび熱交換器または予冷却器12の使用のコンテクストにおいて促進される。
【0060】
a)全負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転、全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
クライアントネットワーク11の加熱負荷要求に依存して、全負荷または部分負荷(例えば抽出された蒸気の質量流量を低下させる)の状態で、クライアントネットワークの熱交換器に関する全負荷で運転されるCO2圧縮器または熱交換器3が機能し、CO2圧縮器3を含むCCSの下流側においてバックアップ圧縮器12を用いて回収されたCO2流がさらに冷却され、また蒸気が供給される加熱器CHEXが機能する。
【0061】
b)部分負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転、および全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
外部熱サイクルシステム11の加熱負荷要求に依存して、全負荷または部分負荷(例えば抽出された蒸気の質量流量を低下させる)の状態で、全負荷で運転されるCO2圧縮器または熱交換器が機能し、バックアップ熱交換器として機能する熱交換器または予冷却器12を用いて回収された熱交換器3の下流側におけるCO2流がさらに冷却され、また蒸気が供給される熱交換器CHEXが機能する。
【0062】
C)CO2回収プラント5を停止した状態での全負荷または部分負荷での発電プラント6の運転、および全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
外部熱サイクルシステムの負荷は熱交換器CHEXによって満たされる。熱交換器CHEXが2つの異なる蒸気圧力レベルを有する2段階の熱交換器システムである場合には、2つの加熱器間の熱負荷の分配は、発電プラント6の負荷および外部熱サイクルシステム11の熱負荷、また発電プラントからの蒸気抽出に起因する最小化されたエクセルギー損失に依存する。
【0063】
d)クライアントネットワーク11を停止した状態での全負荷または部分負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転:
CO2圧縮器または熱交換器3は迂回され、バックアップ圧縮器または予冷却器12は、ユニット13における圧縮に先行してCO2の完全な予冷却を提供するために全負荷で運転される。
【0064】
外部熱サイクルシステムを有する、CO2回収プラントと発電プラントとの熱的な統合の別の例が図5に示されている。この別の実施例は、発電プラントからの蒸気抽出部を用いて運転される従来の熱交換器CHEXと予冷却器12と共に、第1の熱交換器1と第3の熱交換器またはCO2圧縮器3との組み合わせを含む。
【0065】
4つの熱交換器1,3,12およびCHEXのこの特定の組み合わせは、発電プラントからの熱およびCO2回収・圧縮処理によって生じた熱のクライアントネットワーク11へのより効果的でより多様的な伝達を提供する。外部熱サイクルシステムの配管28内の流体を加熱するために必要とされる熱は、アミンリボイラ4から生じる復水からの熱を伝達する熱交換器1およびCO2圧縮器3によって提供される。これにより温度に関する要求、また慣例の熱交換器CHEXのための発電プラントから抽出された蒸気の圧力に関する要求はさらに低くなる。アミンリボイラ4において形成される復水はサブ冷却熱交換器2へと供給される。熱交換器2からの復水は、慣例の熱交換器CHEXからの復水と共に、HRSGまたは発電プラントのボイラへと戻る配管18を介して供給される場合には、さらに低い温度レベルを有することになる。これにより、HRSGにおいて利用可能な熱は、配管18の流体の再加熱により効果的に再利用される。
【0066】
熱交換器CHEX、1および3を連続的に直列に配置することができ、この場合には、図5に示されているように、熱交換1および3が熱交換器CHEXの上流側に配置される。これらの熱交換器を並列に配置することもできる。また直列的な配置と並列的な配置を組み合わせることもできる。
【0067】
例えば図5による発電プラントシステムのように配置されているか、またはその他の考えられるいずれかの配置構成で配置されている、CO2圧縮器3、熱交換器1および慣例の熱交換器CHEXの種々の運転コンセプトが考えられる。
【0068】
a)全負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転、全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
CO2圧縮器または熱交換器3は全負荷で運転され、CO2圧縮器3の下流側において回収されたCO2流のさらなる冷却がバックアップ熱交換器または予冷却器12によって提供される。クライアントネットワーク11の熱負荷が低下すると、先ず、慣例の熱交換器CHEXの熱負荷は熱交換機CHEXが停止するまで低減される;クライアントネットワーク11の熱負荷がさらに低下すると、熱交換1からの熱負荷が低減される。
【0069】
b)部分負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転、全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
熱交換器3はクライアントネットワーク11のために全負荷で運転される。CO2回収プラント5からのCO2流はバックアップ圧縮器または予冷却器12によってさらに冷却される。クライアントネットワーク11の熱負荷が低下すると、先ず、慣例の熱交換器CHEXの熱負荷は熱交換器CHEXが停止するまで低減される;クライアントネットワーク11の熱負荷がさらに低下すると、熱交換1からの熱負荷が低減される。
【0070】
C)CO2回収プラント5を停止した状態での全負荷または部分負荷での発電プラント6の運転、全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
クライアントネットワークの熱負荷は慣例の(1つまたは複数の)加熱器CHEXによって提供される。熱交換器CHEXが2つの異なる蒸気圧力を有する2段階の熱交換器として設計されている場合には、熱負荷は、発電プラント6の負荷、クライアントネットワーク11の熱負荷、また発電プラントからの蒸気抽出に起因する最小化されたエクセルギー損失に依存して、CHEXの2つの加熱器間で分配される。
【0071】
d)クライアントネットワーク11を停止した状態での全負荷または部分負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転:
熱交換器3および熱交換器1は迂回され、CO2は100%バックアップ熱交換器または予冷却器12によって冷却される。アミンリボイラ4からの復水は発電プラント6へと直接的に戻される。
【0072】
CO2回収プラント5と発電プラント6および外部熱サイクルシステムとの統合の別の実施形態が図6に概略的に示されている。この発電プラントシステムは、慣例の熱交換器CHEXの他に第1の熱交換器1、第2の熱交換器2および第3の熱交換器3の全ての熱交換器を有し、これらの熱交換器は外部熱サイクルシステムの流体を加熱するために配置されており、したがって、CO2回収・圧縮システムおよび外部熱サイクルシステムにおける冷却システムから得られる熱を集めるためのあらゆる可能性を使用することができる。したがって、図2、図3および図4に示した配置構成が1つの発電プラントシステムに統合されている。この統合によって、アミンリボイラ4の復水からの熱はCO2圧縮器3からの熱およびCO2予冷却器12ならびにCO2中間冷却器7の冷却媒体配管8からの熱と共に、熱サイクルシステム11の流動媒体を加熱するために全て使用される。したがって、配管17内の抽出された蒸気の質量流量を低減することによる利点はさらに高まり、またHRSGの運転はより効率的になる。
【0073】
個々の熱交換器間での最も効率的な熱伝達を実現するために、クライアントネットワークの配管28の流動媒体の特定の相対温度レベルに依存して、図2から図6に示したような熱交換器をクライアントネットワークの配管28内に配置することができる。図2から図6においては、熱交換器を種々の直列的な配置構成においても、種々の並列的な配置構成においても配置することができる。また熱交換器CHEX,1,2,3も、並列または直列に配置された種々の個々の熱交換装置によって実現することができる。
【0074】
熱交換器3のみの統合の代わりに、熱交換器2および冷却水の中間冷却水循環系8を用いることによって、CO2インタークーラーおよびアフタークーラー7も直接的または間接的にクライアントネットワーク11に統合させることができる。中間冷却水循環系8は、CO2インタークーラーまたはアフタークーラーにおけるCO2漏れからの主復水の保護を保証するために必要とされる。クライアントネットワーク11からの入口温度が過度に高い場合、または地域熱供給システムが運転していない場合には、冷却を終了させるために、冷却塔9(または他の冷却装置)も必要とされる。これによって、CO2圧縮ユニット13の高い効率が保証されることになる。熱交換器2および3を直列または並列に配置することができる。CO2インタークーラーおよびアフタークーラー7の上流側におけるCO2の典型的な温度範囲は、入口温度および冷却器の配置構成に依存して、100℃〜230℃の範囲にある。
【0075】
図3による構成における熱交換器2に関して以下の運転コンセプトが考えられる:
a)全負荷または部分負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転、全負荷または部分負荷でのクライアントネットワーク11の運転:
効率のある程度の割合は熱交換器2によって集められ、残りの効率はバックアップ冷却装置9によって集められる。
b)全負荷または部分負荷での発電プラント6およびCO2回収プラント5の運転、クライアントネットワーク11は停止:
熱交換器2は迂回され、効率は100%バックアップ冷却装置9に拠る。
【0076】
図6に示したような構成に関するCO2圧縮器3および(1つまたは複数の)加熱器CHEXの運転コンセプトもその他の図面に関連させて説明した運転コンセプトに類似する。
【符号の説明】
【0077】
CHEX 外部熱サイクルシステムのための蒸気発電プラントから抽出された蒸気を使用する慣例の熱交換器、 1 CO2回収プラントのアミンリボイラからの熱を使用する第1の熱交換器、 2 CO2圧縮および冷却ユニットからの熱を使用する第2の熱交換器、 3 CO2回収プラントからの熱を使用する第3の熱交換器、 4 アミンリボイラ、 5 CO2回収プラント、 6 発電プラント、 7 CO2圧縮ユニットにおけるインタークーラー、 8 CO2圧縮および冷却ユニットのための冷却水配管、 9 冷却塔、 10 CO2貯留設備、 11 クライアントネットワーク、 12 バックアップ冷却器、 13 CO2圧縮および冷却ユニット、 15 圧縮器、 16 ポンプ、 17 発電プラントの蒸気タービンからの蒸気抽出部、 18 再循環用の配管、復水、 19 ユーザ、コンシューマ、 20 CO2回収プラントからCO2圧縮ユニットへのCO2流のための配管、 21 CO2予冷却器へのCO2流のための配管、 22 CO2予冷却器からCO2圧縮器へのCO2流のための配管、 23 アミンリボイラへの蒸気抽出配管、 24,25 アミンリボイラからの復水のための配管、 25’ 第1の熱交換器への復水のための配管、 25’’ 第1の熱交換器から給水ポンプへの配管、 26 アミン溶液のための配管、 27 煙道ガスのための配管、 28 外部熱サイクルシステムへの配管、 29 CO2を含まない煙道ガス、 M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を生成するための発電プラント(6)、殊に、化石燃料を用いて動作する蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントと、外部熱サイクルシステム(11,19,28)と、CO2回収プラント(5)と、CO2圧縮ユニット(13)とを含む発電プラントシステムの作動方法であって、
前記CO2回収プラント(5)を運転させ、吸収液を用いて前記発電プラント(6)の排気ガス(27)から二酸化炭素を吸収し、リボイラ(4)に前記吸収液を供給し、吸収した二酸化炭素を前記吸収液から解放するステップと、
前記CO2圧縮ユニット(13)を運転させ、前記二酸化炭素を圧縮および冷却するステップと、
主熱交換器(CHEX)を運転させ、前記発電プラント(6)から抽出された蒸気流からの熱を、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)へと伝達させ、前記主熱交換器(CHEX)からの復水を前記発電プラント(6)の水蒸気サイクルへと供給するステップとを有する、発電プラントシステムの作動方法において、
前記CO2回収プラント(5)および前記CO2圧縮ユニット(13)を有するCO2回収・圧縮システム(5,13)からの熱を、少なくとも1つの付加的な熱交換器(1,2,3)を用いて、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体へと伝達させ、前記少なくとも1つの付加的な熱交換器(1,2,3)からの復水を、二酸化炭素の回収および圧縮のために前記発電プラント(6)または前記CO2回収・圧縮システム(5,13)へと供給することを特徴とする、発電プラントシステムの作動方法。
【請求項2】
前記リボイラ(4)から戻される復水を、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体との熱交換のために第1の熱交換器(1)に供給し、該熱交換器(1)からの復水を凝縮液として前記発電プラント(6)の前記水蒸気サイクルへと供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の熱交換器(7)を運転させ、前記CO2圧縮ユニット(13)において二酸化炭素を冷却し、前記1つまたは複数の熱交換器(7)からの復水を、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体に熱を伝達する第2の熱交換器(2)に供給し、該第2の熱交換器(2)からの復水を前記CO2圧縮ユニット(13)に機能的に接続されている冷却循環部に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記CO2回収プラント(5)によって形成された二酸化炭素流(20)を、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体に前記二酸化炭素流(20)からの熱を伝達する第3の熱交換器(3)に供給し、該第3の熱交換器(3)から戻された二酸化炭素流(21)を前記CO2圧縮ユニット(13)に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第1の熱交換器(1)を前記主熱交換器(CHEX)と直列的に運転させるか、または、前記第2の熱交換器(2)を前記主熱交換器(CHEX)と直列的に運転させるか、または、前記第3の熱交換器(3)を前記主熱交換器(CHEX)と直列的に運転させる、ただし、前記主熱交換器(CHEX)は前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)流動媒体の流れ方向において、前記第1の熱交換器(1)または前記第2の熱交換器(2)または前記第3の熱交換器(3)の下流側において運転させる、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1の熱交換器(1)および前記第2の熱交換器(2)を直列的に運転される、請求項2および3記載の方法。
【請求項7】
前記第1の熱交換器(1)および前記第3の熱交換器(3)を直列的に運転される、請求項2および4記載の方法。
【請求項8】
前記第2の熱交換器(2)および前記第3の熱交換器(3)を直列的に運転される、請求項3および4記載の方法。
【請求項9】
前記第1の熱交換器(1)および前記第2の熱交換器(2)および前記第3の熱交換器(3)を直列的に運転される、請求項2から4記載の方法。
【請求項10】
アミン溶液、有利にはモノエタノールアミンアミン処理において使用されるアミン溶液を二酸化炭素吸収溶液として使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施する発電プラントシステムであって、
前記発電プラントシステムは、電気を生成するための発電プラント(6)、殊に、化石燃料を用いて動作する蒸気発電プラントまたは複合サイクル発電プラントと、CO2回収・圧縮システム(5,13)とを含み、
前記CO2回収・圧縮システム(5,13)は、前記発電プラント(6)の排気ガス(27)からの二酸化炭素を吸収するための吸収液(26)の循環部を備えたCO2回収プラント(5)と、吸収液を加熱し、吸収された二酸化炭素を解放するリボイラ(4)とを有し、
前記発電プラント(6)は、該発電プラント(6)から抽出された蒸気(17)を用いる外部熱サイクルシステム(11,19,28)および該外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体を加熱する主熱交換器(CHEX)と機能的に接続されている、発電プラントシステムにおいて、
少なくとも1つの付加的な熱交換器(1,2,3)は、前記CO2回収・圧縮システム(5,13)によって形成された少なくとも1つの熱流によって、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体を加熱するよう構成および配置されており、
前記少なくとも1つの付加的な熱交換器(1,2,3)は復水を前記発電プラント(6)または前記CO2回収・圧縮システム(5,13)へと供給するよう構成および配置されていることを特徴とする、発電プラントシステム。
【請求項12】
前記リボイラ(4)から戻される復水のための配管(25’)が、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体を加熱するよう配置されている第1の熱交換器(1)に案内されており、
前記第1の熱交換器(1)からの復水のための配管(25’’)が、前記第1の熱交換器(1)から前記発電プラント(6)の水蒸気サイクルへと案内されている、請求項11記載の発電プラントシステム。
【請求項13】
前記発電プラントシステムは、
前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体を加熱するよう構成および配置されている第2の熱交換器(2)を有し、
CO2圧縮および冷却ユニット(13)の冷却媒体を供給する配管(8)を有し、該配管(8)はCO2冷却ユニット(7)から二酸化炭素を前記第2の熱交換器(2)へと案内されており、
前記第2の熱交換器(2)からの復水のための配管は、前記第2の熱交換器(2)から前記CO2圧縮ユニット(13)と機能的に接続されている冷却循環部へと案内されている、請求項11記載の発電プラントシステム。
【請求項14】
第3の熱交換器(3)が、CO2回収プラント(5)によって形成された二酸化炭素流を用いて前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体を加熱するよう構成および配置されており、
前記CO2回収プラント(5)から前記第3の熱交換器(3)へと案内されている配管(20)および前記第3の熱交換器(3)から前記CO2圧縮ユニット(13)へと案内されている別の配管(21)が設けられている、請求項11記載の発電プラントシステム。
【請求項15】
前記第1の熱交換器(1)は前記主熱交換器(CHEX)に直列に配置されているか、または、前記第2の熱交換器(2)は前記主熱交換器(CHEX)に直列に配置されているか、または、前記第3の熱交換器(3)は前記主熱交換器(CHEX)に直列に配置されており、ただし、前記主熱交換器(CHEX)は前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)流動媒体の流れ方向において、前記第1の熱交換器(1)または前記第2の熱交換器(2)または前記第3の熱交換器(3)の下流側に配置されている、請求項11から13までのいずれか1項記載の発電プラントシステム。
【請求項16】
前記第1の熱交換器(1)および前記第2の熱交換器(2)は、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体に関して直列に配置されている、請求項12および13記載の発電プラントシステム。
【請求項17】
前記第1の熱交換器(1)および前記第3の熱交換器(3)は、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体に関して直列に配置されている、請求項12および14記載の発電プラントシステム。
【請求項18】
前記第2の熱交換器(2)および前記第3の熱交換器(3)は、前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体に関して直列に配置されている、請求項13および14記載の発電プラントシステム。
【請求項19】
前記外部熱サイクルシステム(11,19,28)は、地域熱供給システムであるか、温室暖房システムであるか、工業的な用途のための加熱システムである、請求項11から18までのいずれか1項記載の発電プラントシステム。
【請求項20】
熱交換器(1,2,3)を用いて外部熱サイクルシステム(11,19,28)の流動媒体を加熱するためのCO2回収プラント(5)からの熱の使用および熱交換器(1,2,3)から発電プラント(6)またはCO2回収・圧縮システム(5,13)へと戻される熱流における熱の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−231765(P2011−231765A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99541(P2011−99541)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】