説明

発電プラント及びその発電出力増加方法

【課題】発電出力の急速増加の要求に対し、タービンの強度を上げずに、現状の高効率タービンによって、短時間で発電機出力を増加可能とする発電プラントを提供する。
【解決手段】蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、復水ポンプで昇圧された復水を加熱する複数のヒータと、ヒータで加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、脱気器の復水系統の上流側に設けられ脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、タービンの各段から蒸気を抽気して、複数のヒータと脱気器へ抽気蒸気を供給する複数のタービン抽気弁とを備えた発電プラントにおいて、発電機出力の急速増加要求指令に対し、複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と脱気器水位調節弁とを一定の速度で一定開度まで閉動作させる復水絞り制御を行う制御装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電プラント及びその発電出力増加方法に係り、更に詳しくは、発電出力の急速増加要求に対応し得る発電プラント及びその発電出力増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統における周波数の整定状態は、ある数の発電プラントにより発電された電気供給量と配電網中のある数の需要家による電気消費量との間の調和を前提としている。電気供給量に比べて電気消費量が多かったり、或いは少なかったりした場合には、供給と需要の偏差により周波数変動が生じる。
【0003】
この周波数変動の発生は、その程度によって、例えばタービン翼の共振や発電機のねじれ等を惹き起す虞がある。このため、例えば、ヨーロッパ諸国においては、電力系統の周波数低下の際に、短時間で発電出力を増加可能な発電プラントが要求されている。
【0004】
このような急速負荷変化の要求に対して、ボイラ側の応答が困難であることから、タービン側で復水絞り運用と呼ばれる運転を実施し、定格出力に対し2%から5%の出力増加を復水絞り運転開始から30秒以内に実現させる発電プラントがある。
【0005】
例えば、ボイラで発生した高圧蒸気で回転する高圧タービンと、高圧タービンからの蒸気を再熱した高温再熱蒸気で回転する中圧タービンと低圧タービンとからなる蒸気タービンにおいて、低圧タービンから排出された蒸気は、復水器にて復水に変換される。この復水器から排出される復水は、復水ポンプにより圧送され、低圧ヒータにおいて、低圧タービンからの抽気蒸気により昇温され、脱気器まで送水される。脱気器において中圧タービンからの抽気蒸気により加熱、脱気された復水は、給水ポンプにより圧送され、高圧ヒータにおいて高圧タービンや中圧タービンからの抽気蒸気により昇温され、再びボイラに送水される。
【0006】
このような蒸気タービンにおいて、複数ある抽気調節弁のうち、隣り合う3つの中低圧タービン抽気調節弁と脱気器水位調節弁とを絞ることで強制的に抽気流量と復水流量を減少させ、抽気が絞られた抽気点よりも下流のタービン後続段のタービン通過蒸気量を増加させることにより、発電機出力を短時間で上昇させる復水絞り運転が知られている(例えば、下記非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Experimental Investigations on the Activation of the Unit Output by the Disconnectible LP Feed-heater Train、 “VGB Kraftwerkstechnik”、 Vol 68、1988年2月、第129〜132頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術においては、隣り合う3つの抽気調節弁と脱気器水位調節弁とを絞り制御するので、抽気流量と復水流量が減少し、抽気流量が減少した分でタービン内部の後続段流量が増加し、発電機出力を短時間で上昇させることができる。
【0009】
しかし、この従来技術におけるタービンは、タービン内部の後続段の蒸気流量が増加するので、復水絞り運転を考慮しない一般的なタービンに比べてタービン強度を上げる必要が生じる。このため、一般的なタービンに比べて通常運転時のタービン効率が、悪化するという憾みがあった。
【0010】
本発明は上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、電力系統周波数の変動対応による発電出力の急速増加の要求に対し、タービンの強度を上げずに、現状の高効率タービンによって、短時間で発電機出力を増加可能とする発電プラント及びその発電出力増加方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、蒸気を発生する蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、前記タービンに連結されて発電する発電機と、前記タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、前記復水器からの復水を昇圧する復水ポンプと、前記復水ポンプで昇圧された復水を加熱する複数のヒータと、前記ヒータで加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、前記脱気器からの復水を昇圧して前記蒸気発生装置へ供給する給水ポンプと、前記脱気器の復水系統の上流側に設けられ前記脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、前記タービンの各段から蒸気を抽気して、前記複数のヒータと脱気器へ抽気蒸気を供給する複数のタービン抽気弁とを備えた発電プラントにおいて、発電機出力の急速増加要求指令に対し、前記複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と前記脱気器水位調節弁とを一定の速度で一定開度まで閉動作させる復水絞り制御を行う制御装置を備えるものとする。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御装置は、前記復水絞り制御の際に、前記複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と前記脱気器水位調節弁とによって絞られる抽気流量と復水流量の絞り速度を同程度とする開度制御をおこなうことを特徴とする。
【0013】
更に、第3の発明は、第1の発明において、前記タービンは、少なくとも低圧タービンを備え、前記ヒータは、複数の低圧ヒータを備え、前記タービン抽気弁は、複数の低圧タービン抽気弁を備え、前記制御装置は、前記復水絞り制御の際に、前記複数の低圧タービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁、と前記脱気器水位調節弁とによって絞られる抽気流量と復水流量の絞り速度を同程度とする開度制御をおこなうことを特徴とする。
【0014】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記タービンは、少なくとも中圧タービンと低圧タービンとを備え、前記タービン抽気弁は、前記低圧タービンに接続する複数の低圧タービン抽気弁と、前記中圧タービンに接続する複数の中圧タービン抽気弁とを備え、前記制御装置は、前記復水絞り制御の際に、前記複数の中低圧タービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁、と前記脱気器水位調節弁とによって絞られる抽気流量と復水流量の絞り速度を同程度とする開度制御をおこなうことを特徴とする。
【0015】
更に、第5の発明は、蒸気を発生する蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、前記タービンに連結されて発電する発電機と、前記タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、前記復水器からの復水を昇圧する復水ポンプと、前記復水ポンプで昇圧された復水を加熱する複数のヒータと、前記ヒータで加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、前記脱気器からの復水を昇圧して前記蒸気発生装置へ供給する給水ポンプと、前記脱気器の復水系統の上流側に設けられ前記脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、前記タービンの各段から蒸気を抽気して、前記複数のヒータと脱気器へ抽気蒸気を供給する複数のタービン抽気弁とを備えた発電プラントの出力増加方法において、発電機出力の急速増加要求指令に対し、前記複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と前記脱気器水位調節弁とを一定の速度で一定開度まで閉動作制御させて、前記タービンの後続段の蒸気流量増加を低減させるものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力系統周波数の変動対応による発電出力の急速増加の要求に対し、タービンの強度を上げずに現状の高効率タービンによって、短時間で発電機出力を増加することができる。この結果、タービンの強度変更を行うことなく、電力系統周波数の変動に対応することができ、発電プラントとしての汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態を示すシステム系統図である。
【図2】本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態における復水絞り運転のフローチャート図である。
【図3】本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態を構成する制御装置の制御ブロック図である。
【図4】本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態における抽気流量比と出力比を解析した特性図である。
【図5】本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の他の実施の形態における抽気流量比と出力比を解析した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態を示すシステム系統図である。
【0019】
図1において、発電プラントは、蒸気発生源であるボイラ1と、ボイラ1からの蒸気で駆動する蒸気タービン2と、蒸気タービン2と同軸の回転軸で連結された発電機3と、これらを制御する制御装置4とを備えている。蒸気タービン2は、高圧タービン2A、中圧タービン2B、及び低圧タービン2Cで構成されている。
ボイラ1によって発生した高圧蒸気は、主蒸気配管1aを介して高圧タービン2Aに供給され、高圧タービン2Aを回転させる。高圧タービン2Aで膨張した蒸気は、蒸気配管を通って再びボイラ1に導入され再熱された後、高温再熱蒸気配管1bを通って中圧タービン2Bに供給され、中圧タービン2Bを回転させる。中圧タービン2Bで膨張した蒸気は、蒸気配管1cを通って低圧タービン2Cに供給され、低圧タービン2Cを回転させる。このことにより、蒸気タービン2に連結される発電機3にて電力が発生する。主蒸気配管1aには、主蒸気流量を検知する流量センサ5が設けられている。流量センサ5が検知した主蒸気流量信号は制御装置4に入力されている。
【0020】
低圧タービン2Cで膨張した蒸気は復水器6へ導入され、復水器6で凝縮されて復水になる。この復水は、復水ポンプ7によって、復水器6から導出され昇圧されて脱気器水位調節弁8を介して第1低圧ヒータ9Aへ送水される。第1低圧ヒータ9Aは、低圧タービン2Cから第1低圧タービン抽気弁10Aを介して供給される抽気蒸気によって供給された復水を加熱昇温する。加熱昇温された復水は、第2低圧ヒータ9B,第3低圧ヒータ9C,第4低圧ヒータ9D、脱気器11に順に送水される。第2乃至第4低圧ヒータ9B〜9Dでは、低圧タービン2Cから第2乃至第4低圧タービン抽気弁10B〜10Dを介して供給される各抽気蒸気によって送水された各復水を加熱昇温する。脱気器11は、中圧タービン2Bから第5中圧タービン抽気弁12を介して供給される抽気蒸気によって、送水され貯水槽に貯水された復水を加熱・脱気する。
【0021】
脱気器11において加熱、脱気された復水は、給水ポンプ13により圧送され、第1乃至第3高圧ヒータ14A〜14Cにおいて高圧タービン2Aや中圧タービン2Bからの図示しない各抽気弁を介して供給される抽気蒸気により昇温され、再びボイラ1に送水される。発電プラントはこのような一連の循環サイクルで運転されている。なお、これらの総合的な制御は、制御装置4の上位コントローラである主制御装置200にて実行されている。
【0022】
図1に示す発電プラントにおいて、脱気器水位調節弁8と第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12については、制御装置4から開閉指令信号が出力され、後述する復水絞り制御が実行される。
【0023】
このような発電プラントにおける周波数変動対応による復水絞り運転の概要について、図2を用いて説明する。図2は本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態における復水絞り運転のフローチャート図である。
図2において、ステップ(S1)は、電力系統における系統周波数低下の発生を示す。次に、ステップ(S2)では、この電力系統の周波数を監視している、例えば中央給電所100などから3%出力上昇指令が発電プラントに出力されることを示している。
【0024】
この電力系統の周波数低下を補うための発電出力の急速上昇要求に対して、発電プラント側の処理フローとして復水絞り制御のステップ(S3)とボイラー・ユニット制御のステップ(S4)とが実行される。これらは、コントローラ等の制御装置4からの指令信号によって、各制御弁等の開度が制御されることで実行される。発電出力の急速上昇要求に対して、ボイラ側の制御回路における応答には時間遅れがあることから、時間遅れが少ない復水絞り運転を同時に開始することで、急速出力上昇を実現させている。
【0025】
ステップ(S31)の復水絞り運転開始と同時に、ステップ(S41)のボイラ燃料投入により、燃料を増加させて、発生蒸気量を増加させる。
ステップ(S31)では、例えば、第1〜第5中低圧タービン抽気弁10A〜10D,12の隣り合わない2つのタービン抽気弁と脱気器水位調節弁8を一定の比率で一定開度まで絞り込む。本実施の形態においては、第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12とを一定の変化率で閉制御する。
【0026】
この結果、抽気流量と復水流量が減少し、抽気流量が減少した分で蒸気タービン2内部の後続段流量が増加するので、発電機出力の3%上昇を達成できる。一方、ステップ(S41)で発生蒸気量を増加させようとしているため、ボイラ1への給水流量には増加指令が出力される。図1に示すように、脱気器水位調節弁8が絞られることにより、脱気器11に入る復水流量は減少するが、給水流量増加指令により、脱気器11から給水ポンプ13によりボイラ1へ圧送される給水流量は増加することになる。この結果、脱気器11から出る給水量(増加)と脱気器11に入る復水量(減少)にアンバランスが生じ、脱気器11の水位が低下する。このようにしてステップ(S32)が実行される。
【0027】
ボイラー・ユニット制御のステップ(S42)において、3%出力増加が可能となるボイラ発生蒸気量に到達すると、ボイラー・ユニット制御からその信号が復水絞り制御に送信され、復水絞り運転を終了させるステップ(S33)が実行される。具体的には、ステップ(S31)で絞り込んだタービン抽気弁10C,12及び脱気器水位調節弁8を通常の開度まで戻す。
【0028】
この結果、脱気器水位制御が復帰するので、脱気器水位調節弁8が全開またはほぼ全開し、やがて脱気器11の水位レベルが回復する。このようにしてステップ(S34)が実行される。
【0029】
このようにボイラ負荷が立ち上がるまで復水絞り運転で発電出力の急速上昇要求に対処して、3%出力上昇運転終了のステップ(S5)が実行される。
【0030】
本実施の形態においては、複数ある抽気弁のうち、中低圧タービン抽気で隣り合わない2つの抽気弁10C,12、と脱気器水位調節弁8を絞るので、タービン内部の後続段流量増加分の一部が、隣り合わない抽気弁の間の抽気弁にも流れる。この結果、後続段流量増によるタービン強度への影響を軽減できるため、タービン強度を上げる必要が避けられるという効果がある。
【0031】
次に、発電プラントの復水絞り制御を行う制御装置4の概要について図3を用いて説明する。図3は本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態を構成する制御装置の制御ブロック図である。図3において、図1及び図2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
図3に示す制御装置4は、復水絞り制御を実行するコントローラ部を示していて、入力信号からトリガ信号を生成するトリガ信号演算部4Aと、第3低圧タービン抽気弁指令演算部4Bと、第5中圧タービン抽気弁指令演算部4Cと、脱気器水位調節弁指令切換部4Dと、予め設定値を記憶する図示しない記憶部とを備えている。
【0033】
制御装置4には、図3に示すように、例えば中央給電所100などからの出力上昇指令が入力されている。また、流量センサ5からの主蒸気流量信号が入力されている。これらの信号はトリガ信号演算部4Aにおいて、出力上昇指令はディジタル入力信号100Diに、主蒸気流量信号はアナログ入力信号5Aiにそれぞれ変換される。また、脱気器水位調節弁指令切換部4Dには、上位の制御装置である主制御装置200からの脱気器水位調節弁指令が入力されている。
【0034】
制御装置4からは、演算された各指令信号が出力されている。第3低圧タービン抽気弁指令演算部4Bからは、第3低圧タービン抽気弁10Cの駆動部へ、#5中圧タービン抽気弁指令演算部4Cからは第5中圧タービン抽気弁12の駆動部へ、脱気器水位調節弁指令切換部4Dからは、脱気器水位調節弁8の駆動部へ、開閉指令信号がそれぞれ出力されている。
【0035】
トリガ信号演算部4Aは、信号発生器20と比較演算器21と論理積演算器22とを備えている。
信号発生器20は、発電プラントの定格主蒸気流量の103%相当の信号が設定されている。比較演算器21は、流量センサ5からの主蒸気流量信号5Aiを第1入力、信号発生器20の出力信号を第2入力として入力し、第1入力<第2入力のときにディジタル出力信号21Doとして1を出力する。
【0036】
論理積演算器22は、中央給電所100などからの出力上昇指令信号100Diを第1入力、比較演算器21の出力信号21Doを第2入力として入力し、入力信号がいずれも1であるときに、ディジタル出力信号22Doを1として出力する。
【0037】
第3低圧タービン抽気弁指令演算部4Bは、関数発生器24Aと信号発生器25Aとアナログスイッチ26Aと変化率制限器27Aとを備えている。
関数発生器24Aは、流量センサ5からの主蒸気流量信号5Aiを入力し、この入力に対する第3低圧タービン抽気弁10Cの設定開度を出力特性として設定している。関数発生器24Aの出力信号は、アナログスイッチ26Aの第1入力に入力されている。
【0038】
信号発生器25Aは、第3低圧タービン抽気弁10Cの復水絞り運用時の開度が設定されていて、本実施の形態においては40%開度指令が設定されていて、アナログスイッチ26Aの第2入力に出力されている。
【0039】
アナログスイッチ26Aは、関数発生器24Aの出力信号を第1入力、信号発生器25Aの出力信号を第2入力として入力し、切換信号として論理積演算器22からのディジタル出力信号22Doを入力している。アナログスイッチ26Aは、切換信号であるディジタル出力信号22Doが1のときには、出力信号260Aoとして第2入力である信号発生器25Aの出力値を出力する。また、入力している切換信号の22Doが0のときには、出力信号260Aoとして第1入力である関数発生器24Aの出力値を出力する。アナログスイッチ26Aの出力260Aoは、変化率制限器27Aに入力されている。
【0040】
変化率制限器27Aは、第3低圧タービン抽気弁10Cの開度が急激に変動しないように変化率に制限を与えている。本実施の形態においては、20%/秒に設定されている。変化率制限器27Aの出力信号270Aoは、例えば電流信号に変換されて第3低圧タービン抽気弁10Cの操作端部へ開度指令として出力されている。
【0041】
第5中圧タービン抽気弁指令演算部4Cは、関数発生器24Bと信号発生器25Bとアナログスイッチ26Bと変化率制限器27Bとを備えている。
関数発生器24Bは、流量センサ5からの主蒸気流量信号5Aiを入力し、この入力に対する第5中圧タービン抽気弁12の設定開度を出力特性として設定している。関数発生器24Bの出力信号は、アナログスイッチ26Bの第1入力に入力されている。
【0042】
信号発生器25Bは、第5中圧タービン抽気弁12の復水絞り運用時の開度が設定されていて、本実施の形態においては40%開度指令が設定されていて、アナログスイッチ26Bの第2入力に出力されている。
【0043】
アナログスイッチ26Bは、関数発生器24Bの出力信号を第1入力、信号発生器25Bの出力信号を第2入力として入力し、切換信号として論理積演算器22からのディジタル出力信号22Doを入力している。アナログスイッチ26Bは、切換信号であるディジタル出力信号22Doが1のときには、出力信号260Boとして第2入力である信号発生器25Bの出力値を出力する。また、入力している切換信号の22Doが0のときには、出力信号260Boとして第1入力である関数発生器24Bの出力値を出力する。アナログスイッチ26Bの出力260Boは、変化率制限器27Bに入力されている。
【0044】
変化率制限器27Bは、第5中圧タービン抽気弁12の開度が急激に変動しないように変化率に制限を与えている。本実施の形態においては、20%/秒に設定されている。変化率制限器27Bの出力信号270Boは、例えば電流信号に変換されて第5中圧タービン抽気弁12の操作端部へ開度指令として出力されている。
【0045】
脱気器水位調節弁指令切換部4Dは、信号発生器25Cとアナログスイッチ26Cと変化率制限器27Cとを備えている。
脱気器水位調節弁指令切換部4Dには、上位の制御装置である主制御装置200からの脱気器水位調節弁指令が入力され、アナログ入力信号200Aiに変換される。このアナログ信号200Aiは、アナログスイッチ26Cの第1入力に入力されている。
【0046】
信号発生器25Cは、脱気器水位調節弁8の復水絞り運用時の開度が設定されていて、本実施の形態においては40%開度指令が設定されていて、アナログスイッチ26Cの第2入力に出力されている。
【0047】
アナログスイッチ26Cは、アナログ入力信号200Aiを第1入力、信号発生器25Cの出力信号を第2入力として入力し、切換信号として論理積演算器22からのディジタル出力信号22Doを入力している。アナログスイッチ26Cは、切換信号であるディジタル出力信号22Doが1のときには、出力信号260Coとして第2入力である信号発生器25Cの出力値を出力する。また、入力している切換信号の22Doが0のときには、出力信号260Coとして第1入力であるアナログ入力信号200Aiを出力する。アナログスイッチ26Cの出力260Coは、変化率制限器27Cに入力されている。
【0048】
変化率制限器27Cは、脱気器水位調節弁8の開度が急激に変動しないように変化率に制限を与えている。本実施の形態においては、10%/秒に設定されている。変化率制限器27Cの出力信号270Coは、例えば電流信号に変換されて脱気器水位調節弁8の操作端部へ開度指令として出力されている。
【0049】
次に、上記構成による本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態における発電出力増加の動作について説明する。
まず、通常の運転状態(定格負荷運転)の場合について説明する。
【0050】
図3のトリガ信号演算部4Aにおいて、比較演算器21の第1入力の信号5Aiは定格主蒸気流量相当であり、第2入力の信号発生器20の出力である定格主蒸気流量の103%相当信号より小さい。したがって、比較演算器21のディジタル出力信号21Doは1を出力する。しかし、中央給電所100などからの出力上昇指令信号100Diが0であることから、論理積演算器22のディジタル出力信号22Doは0を出力する。
【0051】
この結果、第3低圧タービン抽気弁指令演算部4B、第5中圧タービン抽気弁指令演算部4C、及び脱気器水位調節弁指令切換部4Dのアナログスイッチ26A,26B,26Cは各第1入力を出力する。このことにより、第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12には、主蒸気流量信号5Aiに応じて設定された各抽気弁10C,12の開度指令(例えば100%開度)が出力されて通常の運用が実行されている。脱気器水位調節弁には、上位の制御装置である主制御装置200からの脱気器水位調節弁指令(例えば100%開度)が出力されている。
【0052】
次に、電力系統における系統周波数低下により、中央給電所100などから3%の発電出力上昇指令が指令された場合について説明する。
図3のトリガ信号演算部4Aにおいて、出力上昇指令信号100Diが1となることから、論理積演算器22の第1及び第2入力が1となる。このことにより、論理積演算器22のディジタル出力信号22Doが1を出力し、復水絞り運転が開始される。
【0053】
この結果、第3低圧タービン抽気弁指令演算部4B、第5中圧タービン抽気弁指令演算部4C、及び脱気器水位調節弁指令切換部4Dのアナログスイッチ26A,26B,26Cは各第2入力である復水絞り運用時の開度(40%)を出力する。これらの出力信号260Ao,260Bo,260Coは、それぞれ変化率制限器27A,27B,27Cに入力され所定の変化率に制限されて、第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12と脱気器水位調節弁に開度指令として出力される。第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12とには、20%/秒の制限がかかるため、100%開度から40%開度まで3秒で絞りこむ指令が出力されることになる。
【0054】
一方、脱気器水位調節弁8には、10%/秒の制限がかかるため、100%開度から40%開度まで6秒で絞りこむ指令が出力される。この結果、抽気流量と復水流量が減少し、抽気流量が減少した分で蒸気タービン2内部の後続段流量が増加するので発電機出力の3%上昇を達成できる。
【0055】
このようにして、復水絞り運転が実行されると共に、上述したように、主制御装置200は、ボイラ燃料を増加させて、発生蒸気量を増加させている。主蒸気流量が定格主蒸気流量の103%相当に至った場合について説明する。
【0056】
図3のトリガ信号演算部4Aにおいて、比較演算器21の第1入力の信号5Aiが定格主蒸気流量の103%相当となると、第2入力の信号発生器20の出力である定格主蒸気流量の103%相当信号と等しくなる。この結果、比較演算器21のディジタル出力信号21Doは0を出力する。このため、中央給電所100などからの発電出力上昇指令信号100Diが1であっても、論理積演算器22のディジタル出力信号22Doは0を出力することになる。
【0057】
この結果、第3低圧タービン抽気弁指令演算部4B、第5中圧タービン抽気弁指令演算部4C、及び脱気器水位調節弁指令切換部4Dのアナログスイッチ26A,26B,26Cは各第1入力を出力する。出力信号260Ao,260Boは、主蒸気流量信号5Aiに応じて設定された各抽気弁10C,12の開度指令(例えば100%開度)が出力される。出力信号260Coは、上位の制御装置である主制御装置200からの脱気器水位調節弁指令(例えば100%開度)が出力される。これらの出力信号260Ao,260Bo,260Coは、それぞれ変化率制限器27A,27B,27Cに入力され所定の変化率に制限されて、第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12と脱気器水位調節弁に開度指令として出力される。
【0058】
第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12とには、20%/秒の制限がかかるため、40%開度から100%開度まで3秒で開動作する指令が出力されることになる。一方、脱気器水位調節弁8には、10%/秒の制限がかかるため、40%開度から100%開度まで6秒で開動作する指令が出力される。この結果、復水絞り運転が終了する。
【0059】
次に、本実施の形態における抽気流量比と出力比の挙動の解析結果について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態における抽気流量比と出力比を解析した特性図である。
【0060】
図4において、第3低圧タービン抽気弁10Cとそれに隣り合わない第5中圧タービン抽気弁12とを3秒で60%開度絞り、脱気器水位調節弁8を6秒で60%開度絞った場合の各抽気流量、復水流量及び出力の挙動を示している。横軸は、復水絞り開始からの経過時間を、左側縦軸は定格運転時の抽気流量に対する復水絞り時(60%絞り)の抽気流量の比率を、右縦軸は定格運転時の発電出力に対する復水絞り時(60%絞り)の発電出力の比率を、それぞれ示している。特性線aは第1低圧タービン抽気流量比を、特性線bは第2低圧タービン抽気流量比を、特性線cは第3低圧タービン抽気流量比を、特性線dは第4低圧タービン抽気流量比を、特性線eは第5中圧タービン抽気流量比を、特性線fは復水流量比を、特性線gは発電出力比をそれぞれ示している。出力増加指令は3%/30秒が指令された場合であって、例えば定格出力1000MWであれば、30秒以内で30MWの発電出力増加が要求された場合である。
【0061】
復水絞り運転開始約3秒後までは、定格運転に比べ、抽気弁10C,12で絞られた抽気の流量が減少し、その分絞られていない抽気弁10A,10B,10Dの抽気の流量が急に増加している。第4低圧タービン抽気弁10Dによる抽気流量比が最大値を示し、3秒後には、約123%である。
【0062】
このように、脱気器水位調節弁8の絞り速度が抽気弁10C,12の絞り速度より遅い場合、脱気器水位調節弁8の絞りによる復水流量減少が遅くなり、その結果、絞られた抽気点の下流のタービン内部では、後続段流量が増加している。
【0063】
上述した本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の一実施の形態によれば、電力系統周波数の変動対応による発電出力の急速増加の要求に対し、タービンの強度を上げずに現状の高効率タービンによって、短時間で発電機出力を増加することができる。この結果、タービンの強度変更を行うことなく、電力系統周波数の変動に対応することができ、発電プラントとしての汎用性を高めることができる。
【0064】
次に、本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の他の実施の形態を図面を用いて説明する。図5は本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の他の実施の形態における抽気流量比と出力比を解析した特性図である。図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、脱気器水位調節弁指令切換部4Dの変化率制限器27Cの設定値を20%/秒に設定した点が、上述した一実施の形態と異なる。つまり、第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12と脱気器水位調節弁8の復水絞り動作時の絞り速度を同一にしている。
【0065】
これは、2つの抽気弁10C,12と脱気器水位調節弁12の絞り速度を同程度に合わせることで、絞り操作されない抽気弁10A,10B,10Dの抽気流量を減少させる。このことにより、復水絞り動作における絞られていない抽気弁の抽気流量の増加量を緩和することができる。
【0066】
図5において、第3低圧タービン抽気弁10Cとそれに隣り合わない第5中圧タービン抽気弁12とを3秒で60%開度絞り、脱気器水位調節弁8を3秒で60%開度絞った場合の各抽気流量、復水流量及び出力の挙動を示している。横軸は、復水絞り開始からの経過時間を、左側縦軸は定格運転時の抽気流量に対する復水絞り時(60%絞り)の抽気流量の比率を、右縦軸は定格運転時の発電出力に対する復水絞り時(60%絞り)の発電出力の比率を、それぞれ示している。特性線aは第1低圧タービン抽気流量比を、特性線bは第2低圧タービン抽気流量比を、特性線cは第3低圧タービン抽気流量比を、特性線dは第4低圧タービン抽気流量比を、特性線eは第5中圧タービン抽気流量比を、特性線fは復水流量比を、特性線gは発電出力比をそれぞれ示している。出力増加指令は3%/30秒が指令されて場合であって、例えば定格出力1000MWであれば、30秒以内で30MWの発電出力増加が要求された場合である。
【0067】
復水絞り運転開始約3秒後の第4低圧タービン抽気弁10Dによる抽気流量比は、約114%であり、抽気弁で絞られていない抽気の急な流量増加を図4の挙動にくらべて、約9%緩和することができる。
【0068】
この結果、タービン強度を上げる必要が避けられる、またはその程度を緩和することができる。
【0069】
上述した本発明の発電プラント及びその発電出力増加方法の他の実施の形態によれば、上述した一実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、隣り合わない2つの抽気弁として、第3低圧タービン抽気弁10Cと第5中圧タービン抽気弁12とを制御する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、第1低圧タービン抽気弁10Aと第3低圧タービン抽気弁10C、第2低圧タービン抽気弁10Bと第5中圧タービン抽気弁12でもよい。隣り合わない2つの抽気弁であれば、いずれでもよい。
【0071】
更に、本実施の形態においては、蒸気タービン2を高圧タービン2A、中圧タービン2B、及び低圧タービン2Cから構成した例で説明したが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 ボイラ
2 タービン
2A 高圧タービン
2B 中圧タービン
2C 低圧タービン
3 発電機
4 制御装置
6 復水器
7 復水ポンプ
8 脱気器水位調節弁
9A 第1低圧ヒータ
9C 第3低圧ヒータ
10A 第1低圧抽気弁
10C 第3低圧抽気弁
11 脱気器
12 第5中圧抽気弁
13 給水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を発生する蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、前記タービンに連結されて発電する発電機と、前記タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、前記復水器からの復水を昇圧する復水ポンプと、前記復水ポンプで昇圧された復水を加熱する複数のヒータと、前記ヒータで加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、前記脱気器からの復水を昇圧して前記蒸気発生装置へ供給する給水ポンプと、前記脱気器の復水系統の上流側に設けられ前記脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、前記タービンの各段から蒸気を抽気して、前記複数のヒータと脱気器へ抽気蒸気を供給する複数のタービン抽気弁とを備えた発電プラントにおいて、
発電機出力の急速増加要求指令に対し、前記複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と前記脱気器水位調節弁とを一定の速度で一定開度まで閉動作させる復水絞り制御を行う制御装置を備える
ことを特徴とする発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の発電プラントにおいて、
前記制御装置は、前記復水絞り制御の際に、前記複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と前記脱気器水位調節弁とによって絞られる抽気流量と復水流量の絞り速度を同程度とする開度制御をおこなう
ことを特徴とする発電プラント。
【請求項3】
請求項1に記載の発電プラントにおいて、
前記タービンは、少なくとも低圧タービンを備え、
前記ヒータは、複数の低圧ヒータを備え、
前記タービン抽気弁は、複数の低圧タービン抽気弁を備え、
前記制御装置は、前記復水絞り制御の際に、前記複数の低圧タービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁、と前記脱気器水位調節弁とによって絞られる抽気流量と復水流量の絞り速度を同程度とする開度制御をおこなう
ことを特徴とする発電プラント。
【請求項4】
請求項1に記載の発電プラントにおいて、
前記タービンは、少なくとも中圧タービンと低圧タービンとを備え、
前記タービン抽気弁は、前記低圧タービンに接続する複数の低圧タービン抽気弁と、前記中圧タービンに接続する複数の中圧タービン抽気弁とを備え、
前記制御装置は、前記復水絞り制御の際に、前記複数の中低圧タービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁、と前記脱気器水位調節弁とによって絞られる抽気流量と復水流量の絞り速度を同程度とする開度制御をおこなう
ことを特徴とする発電プラント。
【請求項5】
蒸気を発生する蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、前記タービンに連結されて発電する発電機と、前記タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、前記復水器からの復水を昇圧する復水ポンプと、前記復水ポンプで昇圧された復水を加熱する複数のヒータと、前記ヒータで加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、前記脱気器からの復水を昇圧して前記蒸気発生装置へ供給する給水ポンプと、前記脱気器の復水系統の上流側に設けられ前記脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、前記タービンの各段から蒸気を抽気して、前記複数のヒータと脱気器へ抽気蒸気を供給する複数のタービン抽気弁とを備えた発電プラントの出力増加方法において、
発電機出力の急速増加要求指令に対し、前記複数のタービン抽気弁のうち隣り合わない2つの抽気弁と前記脱気器水位調節弁とを一定の速度で一定開度まで閉動作制御させて、前記タービンの後続段の蒸気流量増加を低減させる
ことを特徴とする発電プラントの出力増加方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53531(P2013−53531A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190671(P2011−190671)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】