説明

発電機

【課題】発電機の入力回転トルクを発電機自身の電機子コイルの誘導起電力出力を利用して、外部入力された回転トルクをアシストする電力出力方法を取り入れようとすることである。
【解決手段】ブーメラン型の空芯コイルとその中に設けた円形空芯コイルとマグネットローター形状の組み合わせと回転で生じる磁気パターンを利用し、運動起電力の逆トルクを軽減させる回転トルクをアシストする発電出力を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機の電機子コイルとマグネットローターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発電機技術では、その永久磁石あるいは電機子によるローターのタイプは、フラットローター、インナーローター、アウターローターの三種が考案されており、それぞれ動力を電力に変換する電磁コイルが永久磁石との相対的回転面に対向する位置に複数円形配置して設けてある。
この円形配置に設けられたコイルは、永久磁石の磁界と導体コイルとの相対的回転運動により、電磁誘導を行う発電技術として知られた技術で、これら発電機のコイルは、強磁性体の芯にコイルを巻き回したものと、強磁性体のコアをもたない空芯コイルによるものがある。
強磁性体をコアに持つコイルでの発電機は、鉄芯などの強磁性体の突起にコイルが巻き回されており、永久磁石との間で働く強い引き合いのため、突起で生じるコギングトルクによる回転損失や強い引き合いによる負荷の増大を入力回転力に与えている。
発電機は機械的回転力を電力に変換するものなので、これらの鉄芯と磁石の引き合いによる回転負荷の増大は望ましいものではない。
そのため、鉄芯などの強磁性体をコアに持たない空芯コイルによる発電機として特開示2002−27781が技術開示されている。
空芯コイルによる発電機の特徴は、回転入力に対する発電機ローターの鉄芯と永久磁石との引き合い力やコギングトルクを全く生じないことにある。
そのため僅かな力でも軽く発電機のローターを回すことができることが特徴であり、風力発電機などの微風時の発電などに期待を寄せられている。
回転抵抗が少なく僅かな力でも発電機ローターを回転させることができることは空芯コイルで構成された発電機の最大の利点ではあるが、ところが電力を出力させるという誘導電力の技術的観点から観た場合、この誘導起電力の出力は、誘導電流によるローター回転方向に対する逆向きの負の回転トルクが出力電力と等しい力で加わるということでもある。
その結果、一定の力で発電機を回した場合、この負のトルクにより発電機の回転速度は著しく減少する。
発電機の誘導起電力の大きさは回転速度に正比例するので、回転速度の減少は、発電機の性能に大きく影響する。
そのため、一定の電力を出力させるには、発電機の回転速度を維持しなければならず、そのためには入力トルクをより大きなものとしなければならない。
風力発電機などの回転数にかなり変動があるものは、回転入力の前段階でギア比により回転速度を調整して発電機を回す場合が多いが、その場合、低速でも大きな電力を出力させるために、空芯コイルによる発電機の場合も永久磁石の磁極数を増やし、僅かな回転角でも磁束変化の周波数を増やすという方法が取られている。
この方法により低速回転でも周波数を確保でき、発電機出力を大きなものにすることができるが、その分、逆トルクも増加しているということである。
従って、従来の技術では入力回転トルクを増やして出力電力を増やす結果となり、発電機そのものの原理に関係する回転トルク比での効率の高効率化までには至っていないものであった。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開示2002−27781
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、発電機の入力回転トルクを発電機自身の電機子コイルの誘導起電力出力を利用して、外部入力された回転トルクをアシストする電力出力方法を取り入れようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による課題を解決するための手段は、
絶縁被覆した電導材により、複数のブーメラン型に巻き回した空芯コイルが交互に巻き方向を逆転させ直列または並列に結線されて円盤状に隙間なく並び、ブーメラン型の空芯コイルの中に絶縁被覆した電導材による円形に巻き回した同数の空芯コイルが、ブーメラン型の空芯コイルの巻き線抵抗より低い抵抗で巻き回されて、ブーメラン型の空芯コイルの内側で交互に巻き方向を逆転させて直列または並列に結線されていて、ブーメラン型の空芯コイルのその内側で逆巻き方向であり、ブーメラン型の空芯コイルを外径側と内径側二つに分割するように設けられて、ブーメラン型の空芯コイルとその中の逆巻きになった円形空芯コイルとが直列に結線されて、一組となった空芯コイルを円盤状に配置した空芯コイルで構成されるその電機子コイルに、ブーメラン型の空芯コイルと同数の逆向きに折れ曲がったブーメラン型の永久磁石の交互に磁極を反転させた界磁で、円盤状のマグネットローターを空芯コイルと対向する位置に僅かな空隙をもたせ自由に回転できるように設け、マグネットローターの回転運動により空芯コイルに運動起電力を誘導生じさせ出力させる発電機である。
また、上記の電機子コイルの、ブーメラン型の空芯コイルと同じ巻き方向で、ブーメラン型の空芯コイルの中で、円形の空芯コイルによって分断された中心方向の巻き線空間の巻き線量を増やし巻き線密度を上げた発電機である。
【発明の効果】
【0006】
次に、本発明の基本的な技術の着眼点から説明する。
コイルの回りにコイルを巻いた二つの空芯コイルによるコイル同士の相互誘導を利した磁場を形成する。
コイルの形や大きさには関係なく電磁誘導は起こる。
2つのコイルの起電力はコイル同士の相互誘導による起電力と永久磁石磁界の運によって生じた逆起電力との和である。
本発明は、前記1から3で説明した二つのコイルの形状と永久磁石の形状と配置により次のような効果をもたらす。
以上が着眼点であるが、図1に示した空芯コイルはブーメラン型をしており、ブーメラン型の空芯コイルは複数円周に隙間なく配置並べることができる。
図2に示したブーメラン型の空芯コイルは、ブーメラン型先端を回転中心に向け、もう一方の先端を右に折れ曲げて右隣のブーメラン型の空芯コイル中央の真上にその先端があり、隙間なく合理的に12個配置されているが、12個と限るものではない。
この図2のブーメラン型空芯コイルは、前記着眼点で述べた二つのコイルの一方に相当するもので、材料は一般の絶縁コーテイングされた銅線が相応しいが、コイル断面形状はどのようなものでもかまわないし、また線材も他の伝導体でもよい。
この図2のブーメラン型空芯コイルは順次逆巻きとなって直列または並列に結線してある。
その表または裏から、あるいは表裏から挟み込むように、ブーメラン型の空芯コイルと図3の同数のマグネットローターの磁極面をブーメラン型空芯コイルに対向して回転させると、順次N極、S極と放射状に並んだ磁界が、ブーメラン型の空芯コイルに起電力を生じさせる。
表裏からマグネットローターを対向させた場合は、異極の磁極面が対向するようにマグネットローターを二枚設ける。この表裏から挟み込まれたブーメラン型の空芯コイルによる発電が最も相応しいが、表裏のどちらか一方からの磁界の回転でも良い。
このときに生じる運動起電力は、フレミングの法則どおり、e=Blv sinθである。
ここでlは導体の長さ、vは導体の動く早さ、θはvとB(磁束密度)との間の角度である。
また、このときに生じる正弦波の最大起電力時、図3の磁石の位置は図4に示すとおりブーメラン型の空芯コイルの隣同士が並んで突き当たっている巻き線の真上の位置にあり、隣同士のブーメラン型の空芯コイルに、それぞれ逆巻きにコイル電流が流れ、隣り合ったブーメラン型の空芯コイル内の磁極はN極とS極が交互に生じている。
このコイル電流はマグネットローターの回転運動によって生じた運動起電力で、直列または並列につながったコイル両端の端子に負荷を繋いだ閉回路にして生じさせるコイル電流、つまり発電機の出力電力である。
このコイル電流によって生じたコイル内の磁極は、マグネットローターの磁極に対して回転方向に位置するブーメラン型の空芯コイル内の磁極は同極となっており回転を止めようとする反発力を生じており、回転方向の反対方向に位置するブーメラン型の空芯コイル内の磁極は異極となって、吸引力により回転を止めようとする力を生じている。
本発明は、この逆向きのトルクを減少させるための構造を次のように作っている。
その逆トルクを減少させる第一の構造は、図4に示したマグネットローターに円盤状に配置した最大起電力時のマグネットローターに設けられたブーメラン型に永久磁石の外径方向の先端を、ブーメラン型の空芯コイルの曲げ方向と逆向きに曲げ、起電力を生じさせているブーメラン型の空芯コイルを跨いだ隣のブーメラン型の空芯コイル先端の真上に磁極が位置するようにしたことである。
図4のマグネットローターを右回転させた場合のブーメラン型の空芯コイルに生じている磁極とマグネットローターのブーメラン型の永久磁石の磁極を記入したものが図5である。
右方向に回転させたマグネットローターのブーメラン型の永久磁石先端は図5の通り、S極のマグネット先端がブーメラン型の空芯コイル電流で生じた磁極S極とN極の間に位置していることにより右方向の回転モーメントの力をマグネットローター外周で生じさせている。
左方向に回転させたときは、ブーメラン型の空芯コイルの中に生じる磁極も逆転するので、左方向に引き込まれる回転モーメントの力をマグネットローター外周で生じさせている。
つまり、この外周で生じた正トルクにより、マグネットローターに生じる逆向きのトルクを減少させる効果がある。
逆向きのトルクを減少させる第二の構造は、図6に示すようにブーメラン型の空芯コイルの内側にもう一つの逆巻きとなった円形空芯コイルを設けたことである。
円形空芯コイルは隣り合うコイルが逆巻きとなるよう直列または並列に結線されていて、巻き回数に限らず、ブーメラン型の空芯コイルの合成抵抗値より低い合成抵抗値にしたものである。
図6の円形空芯コイルは、円形に巻き回されて、ブーメラン型の空芯コイルの中心に位置しているが、その形状は円形に限るものではない。
この円形空芯コイルは、その巻き方向が逆巻きとなるようにブーメラン型の空芯コイルの一端に直列結線されていて、円形空芯コイルとブーメラン型の空芯コイルは巻き方向が逆転して一体となった二つの空芯コイルである。
この一体となった二つの空芯コイルの両端子に抵抗を負荷して閉回路にした場合、マグネットローターを回転させると、二つの空芯コイルに同時に起電力を生じさせるが、巻き方向が逆であるため、その起電力による電流は抵抗の低い円形空芯コイルの起電力に対して電流を逆流させながら発電機として電力を出力する。
その時の二つの空芯コイルに生じる磁極は図7に示すようになっているが、マグネットローターの永久磁石の磁極に対して逆向きトルクとなっていたブーメラン型の空芯コイルの界磁面が、円形空芯コイルに生じた異極の磁極によって分断され、ブーメラン型の空芯コイルの界磁面を内径側と外径側に分離させている。
また、この二つの空芯コイルは互いに逆向きの交流電流を流し相互誘導するコイルの関係でもあるので、その相互誘導は互いの電力が等しくなるように誘導しており、トランスの原理と同じく互いにその誘導電流を流しやすくする効果がある。
この円形空芯コイルの電流によって生じた磁極性は、マグネットローターの永久磁石極性に対して正回転方向の磁極になるよう発生するので、円形空芯コイルに流した電流により生じた磁気力により、ブーメラン型の空芯コイル電流によって生じた逆トルクを減少させる効果がある。
逆向きのトルクを減少させる効果は、テコの原理と同じく、ローター外径に正のトルクが生じている場合にその効果が著しい。
つまり発電機の回転軸方向の逆トルクを、その発電機の外周で正のトルクを加え軽減している、これはまた発電機の中心方向の起電力を誘導させる巻き線密度を上げることにより、よりその効果を著しいものとすることができる。
図8はその中心方向の巻き線密度を上げる為に空芯コイルKをブーメラン型の空芯コイルの中に同じ巻き方向となるように設けた図である。
空芯コイルKをブーメラン型の空芯コイルに直列または並列に結線し、導体長を長くし巻き線量を増やすことにより誘導起電力の増加を行うという効果がある。
以上が本発明による発電機の逆向きトルクを減少させ発電機の入力回転トルクを発電機自身の電機子コイルの誘導起電力出力を利用して、外部入力された回転トルクをアシストする電力出力方法を取り入れた本発明の効果である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】はブーメラン型の空芯コイルの形状平面図である。
【図2】はブーメラン型の空芯コイルの配置平面図である。
【図3】はマグネットローターの平面図である。
【図4】は最大起電力時の磁石の位置を示した図である。
【図5】は右回転させたときの磁極パターン図である。
【図6】は円形空芯コイルの配置平面図である。
【図7】は磁極パターン図である。
【図8】は巻き線密度を上げた電機子コイルの平面図である
【図9】は実施形態の組図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図9に示す形態は本発明の一例であり、それは以下のように実施する。
図1に示したブーメラン型の空芯コイルをエナメル銅線を用いて、例えば200ターン扁平巻きにしたものを、図2のように図9に示す樹脂等による非磁性材の中央に穴をあけた電機子保持円盤Cに接着等の方法を用いて12個隙間なく放射状に並べ設ける。
そのとき、ブーメラン型の空芯コイルAの曲がった先端が、となりのブーメラン型の空芯コイルBに外周側で15度覆いかぶさるように設ける。
それぞれのブーメラン型の空芯コイルの巻き始めと巻き終わりの巻き線両端を、となりのフーメラン型の空芯コイルと逆巻きとなるように順次結線して行き、結線1番目のブーメラン型の空芯コイルAの巻き始めと12番目のブーメラン型の空芯コイルBの結線により出来た巻き終わりの巻き線からリード線を二本引き出して電気出力端子D1、D2とする。
次に円形空芯コイルをブーメラン型の空芯コイルの中に納まる大きさで、同じ巻き線材料で例えば100ターン巻き回したものを図6で示すようにブーメラン型の空芯コイルの中に接着等の方法により設け、円形空芯コイルの巻き始めと巻き終わりの巻き線両端を、となりの円形空芯コイルと逆巻きとなるように順次結線して行き、結線1番目の円形空芯コイルC1の巻き始めと12番目の円形空芯コイルC2の結線により出来た巻き終わりの巻き線からリード線を二本引き出してブーメラン型の空芯コイルの電気出力端子のD1と円形空芯コイルがブーメラン型の空芯コイルの中で逆巻きとなるリード線E1に結線し、残ったリード線を電気出力端子E2とする。
シャフトFを電機子コイルHの中央穴に通し、シャフトFに図10に示したマグネットローターG1を固定して設け、電機子コイルHに図4に示すブーメラン型の永久磁石界磁面がブーメラン型の空芯コイルのブーメラン型と反対向きになるよう対向させ僅かな空隙を作るように設け、電機子コイルHを挟んでもう一つのマグネットローターG2を対向する永久磁石の界磁が異極となるように同じように設ける。
ベアリングホルダーJ1とJ2のベアリングにシャフトFを通し、電機子コイルFを挟み込んでマグネットローターG1、G2が回転できるようにして発電機筐体IにベアリングホルダーJ1、J2で上下よりマグネットローターG1、G2を保持して、発電機筐体Iの側面で電機子コイルHを固定子として固定保持する。
以上のように装置した発電機の出力端子D2とE2に負荷を繋ぎ、外部よりシャフトFに回転トルクを加え、マグネットローター一回転で12サイクルの交流電力を出力させる。
【符号の説明】
【0009】
A・・・巻き始めブーメラン型のコイル
B・・・巻き終わりブーメラン型のコイル
C・・・電機子保持円盤
C1・・巻き始め円形空芯コイル
C2・・巻き終わり円形空芯コイル
D1・・電気出力端子
D2・・電気出力端子
E1・・リード線
E2・・電気出力端子
F・・・シャフト
G1・・マグネットローター
G2・・マグネットローター
H・・・電機子コイル
I・・・発電機筐体
J1・・ベアリングホルダー
J2・・ベアリングホルダー
K・・・空芯コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆した電導材により、複数のブーメラン型に巻き回した空芯コイルが交互に巻き方向を逆転させ直列または並列に結線されて円盤状に隙間なく並び、ブーメラン型の空芯コイルの中に絶縁被覆した電導材による円形に巻き回した同数の空芯コイルが、ブーメラン型の空芯コイルの巻き線抵抗より低い抵抗で巻き回されて、ブーメラン型の空芯コイルの内側で交互に巻き方向を逆転させて直列または並列に結線されていて、ブーメラン型の空芯コイルのその内側で逆巻き方向であり、ブーメラン型の空芯コイルを外径側と内径側二つに分割するように設けられ、ブーメラン型の空芯コイルとその中の逆巻きになった円形空芯コイルとが直列に結線されて、一組となった空芯コイルを円盤状に配置した空芯コイルで構成されるその電機子コイルに、ブーメラン型の空芯コイルと同数の逆向きに折れ曲がったブーメラン型の永久磁石の交互に磁極を反転させた界磁で、円盤状のマグネットローターを空芯コイルと対向する位置に僅かな空隙をもたせ自由に回転できるように設け、マグネットローターの回転運動により空芯コイルに運動起電力を誘導生じさせ出力させる発電機。
【請求項2】
請求項1に記載の電機子コイルの、ブーメラン型の空芯コイルと同じ巻き方向で、ブーメラン型の空芯コイルの中で、円形の空芯コイルによって分断された中心方向の巻き線空間の巻き線量を増やし巻き線密度を上げた請求項1に記載の発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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