説明

発電機

【課題】小型化および部品点数の削減による低コスト化を図ることができる、発電機を提供する。
【解決手段】ステータヨーク11に沿って互いに離れた2つの位置に、それぞれ相数に応じた複数のステータ磁極12からなるステータ磁極群15,16が設けられている。また、第1界磁コイル18および第2界磁コイル20が設けられている。第1界磁コイル18および第2界磁コイル20に界磁電流が流れると、ステータ磁極群15,16がそれぞれ
N極およびS極に着磁される。ロータ磁極6がN極に着磁されたステータ磁極12と対向し、別のロータ磁極6がS極に着磁されたステータ磁極12と対向すると、それらのステータ磁極12の間を磁束がロータ3/ステータヨーク11を経由して通る。その結果、それらのステータ磁極12に集中巻されたステータコイル10に誘導電流が流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に関し、とくに車両に搭載される交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、エンジンの出力軸の動力を電力に変換するオルタネータが備えられている。オルタネータは、交流発電機および交流発電機から出力される交流電力を直流電力に変換するレクチファイア(整流器)を含む。オルタネータで発生する直流電力は、ヘッドライトなどの電気負荷で消費され、また、バッテリに蓄えられる。
【0003】
交流発電機には、ロータと、ロータの周囲を取り囲む円環状のステータとが備えられている。
【0004】
図3は、従来の交流発電機に備えられているロータの模式的な側面図である。
【0005】
ロータ81は、シャフト82に固定されて、シャフト82と一体的に回転可能に設けられている。ロータ81は、シャフト82の周囲に巻回されたロータコイル83と、ロータコイル83を回転軸線方向(シャフト82の軸線方向)の両側から挟み込むように設けられた1対のポールコア84,85とを備えている。
【0006】
ポールコア84,85は、それぞれ鉄を用いて一体に形成されている。ポールコア84,85には、それぞれ互いに対向する方向に突出する複数の爪状磁極86,87が形成されている。爪状磁極86,87は、互いに噛み合って、周方向に交互に並んでいる。
【0007】
シャフト82の一端部には、2個のスリップリング88,89が固定されている。また、2個のブラシ91,92がそれぞれスリップリング88,89と摺擦可能に設けられている。ブラシ91,92は、発電電圧を制御するためのレギュレータを介して、バッテリと電気的に接続されている。バッテリからブラシ91,92およびスリップリング88,89を通してロータコイル83に界磁電流が供給されると、一方のポールコア84の爪状電極86がN極に着磁され、他方のポールコア85の爪状電極87がS極に着磁される。
【0008】
そして、エンジンの出力軸の回転がシャフト82に伝達されて、シャフト82とともにロータ81が回転すると、ステータに備えられているステータコイルに電磁誘導による電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−154262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図3に示される構成のロータ81(いわゆるくし型ロータ)では、交流発電機の出力を増大させるためには、ロータ81を回転径方向および回転軸線方向に大型化しなければならず、その設計に自由度がない。たとえば、オルタネータが配置されるエンジンルーム内のスペースの関係から、交流発電機のサイズを回転径方向に縮小したい場合に、交流発電機の回転径方向のサイズを縮小する一方で、回転軸線方向のサイズを増大させることにより、従来と同出力を得るといったことは容易ではない。なぜなら、ポールコア84,85を回転軸線方向につなぐ磁路は、その磁気抵抗の増大を防ぐために、軸長が長くなる分、太くしなければならないからである。
【0011】
また、ロータ81を有する交流発電機では、ロータコイル83への給電のためのスリップリング88,89およびブラシ91,92が設けられているので、回転軸線方向のサイズが大きく、また、部品点数が多いという問題もある。
【0012】
本発明の目的は、小型化および部品点数の削減による低コスト化を図ることができる、発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明に係る発電機は、回転軸と、前記回転軸と一体的に回転可能に設けられるロータと、前記ロータの周囲に設けられるステータとを備えている。前記ロータには、前記回転軸が中心部に相対回転不能に挿通されるロータヨークおよび前記ロータヨークから回転径方向に突出する複数のロータ磁極が形成されている。前記ステータは、前記ロータを回転周方向に取り囲む環状のステータヨークおよび前記ステータヨークの内側に突出する複数のステータ磁極が形成されたステータコアと、各ステータ磁極に集中巻されたステータコイルとを有している。前記複数のステータ磁極は、複数のステータ磁極群を互いに離れた位置で構成している。各ステータ磁極群は、相数に応じた数の前記ステータ磁極からなる。そして、前記発電機は、前記ステータ磁極群をN極に着磁させるための第1界磁コイルと、N極に着磁される前記ステータ磁極群とは別の前記ステータ磁極群をS極に着磁させるための第2界磁コイルとを含む。
【0014】
第1界磁コイルおよび第2界磁コイルに界磁電流が流れると、ステータ磁極群がN極に着磁され、それとは別のステータ磁極群がS極に着磁される。そして、ロータの回転に伴って、ロータ磁極がN極に着磁されたステータ磁極と対向し、別のロータ磁極がS極に着磁されたステータ磁極と対向すると、磁束がN極に着磁されたステータ磁極とS極に着磁されたステータ磁極との間をロータ/ステータヨークを経由して通る。その結果、それらのステータ磁極に集中巻されたステータコイルに誘導電流が流れる。
【0015】
複数のステータ磁極群が互いに離れているので、各ステータ磁極群間において、ステータヨークを直線状に形成することができる。たとえば、ステータ磁極群が2つである場合、その2つのステータ磁極群間でステータヨークを直線状に形成することができる。よって、ステータヨークが円環状に形成されたステータと比較して、ステータの回転径方向のサイズを縮小することができる。
【0016】
そして、ロータは、いわゆるくし型ロータではないので、回転径方向のサイズを縮小する一方で、回転軸線方向のサイズを増大させることができる。よって、ロータおよびステータの回転径方向のサイズを縮小し、それらの回転軸線方向のサイズを増大させることにより、従来の発電機と同出力を確保することができる。
【0017】
また、ロータに界磁コイルが設けられた構成とは異なり、スリップリングおよびブラシが不要である。そのため、ロータの回転軸線方向のサイズを増大させても、そのサイズの増大をスリップリングの配置に必要なスペースの省略で相殺することができ、発電機全体として回転軸線方向のサイズが増大することを防止できる。
【0018】
よって、発電機が自動車に搭載されるオルタネータに用いられる場合に、オルタネータが配置されるエンジンルーム内のスペースの関係から発電機のサイズを回転径方向に縮小しながら、発電機の出力を確保したいという要望に応えることができる。
【0019】
さらに、スリップリングおよびブラシが不要であるので、部品点数を削減することができる。その結果、部品点数の削減によるコストの低減を図ることができる。
【0020】
また、N極に着磁されたステータ磁極群とS極に着磁されたステータ磁極群との間でステータヨークを通る磁束は、ステータヨークの一方側部分と他方側部分とに分散される。そのため、ステータヨークの厚さを小さくすることができる。その結果、ステータの重量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ステータの小型化および軽量化により、発電機の小型化および軽量化を図ることができる。また、部品点数の削減により、発電機の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る発電機を回転軸線に直交する断面で切断したときの断面図である。
【図2】図2は、発電機を回転軸線に沿う断面で切断したときの断面図である。
【図3】図3は、従来の交流発電機に備えられているロータの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る発電機を回転軸線に直交する断面で切断したときの断面図である。図2は、発電機を回転軸線に沿う断面で切断したときの断面図である。なお、図1,2では、図面が煩雑になることを回避するため、一部に対するハッチングの付与が省略されている。
【0025】
発電機1は、3相交流発電機である。発電機1は、回転軸2、ロータ3およびステータ4を備えている。
【0026】
ロータ3は、積層鋼板からなり、回転軸2と一体的に回転可能に設けられている。ロータ3は、円柱状のロータヨーク5と、ロータヨーク5の周面から回転径方向に突出する8個のロータ磁極6とを有している。
【0027】
ロータヨーク5には、その中心軸線上に、断面円形状の軸挿通孔7が貫通して形成されている。軸挿通孔7には、回転軸2が相対回転不能に挿通されている。また、ロータヨーク5には、軸挿通孔7の周囲に、8個の断面略扇形状の空洞8が回転軸2の中心軸線(回転軸線)方向に貫通して形成されている。これにより、ロータヨーク5の軽量化が図られている。
【0028】
8個のロータ磁極6は、回転軸線を中心に等角度間隔、つまり45°間隔で設けられている。各ロータ磁極6は、回転軸線方向に延びる略直方体形状に形成されている。
【0029】
ステータ4は、ステータコア9およびステータコイル10を備えている。
【0030】
ステータコア9は、積層鋼板からなる。ステータコア9は、ロータ3を回転周方向に取り囲む略四角筒状のステータヨーク11と、ステータヨーク11の内側に突出する6個のステータ磁極(ティース)12とを有している。
【0031】
ステータヨーク11は、回転軸線を中心に180°回転対称な形状をなしている。
【0032】
具体的には、ステータヨーク11は、回転軸線を中心に180°離れた2つの位置に形成された1対の磁極形成部13と、1対の磁極形成部13の回転軸線と直交する方向の両端部を連結する1対の連結部14とを一体的に有している。磁極形成部13は、回転軸線と直交する平面で切断したときの断面形状が回転径方向に膨出する円弧状に形成されている。連結部14は、回転軸線と直交する平面で切断したときの断面形状が略コ字状に形成されている。
【0033】
6個のステータ磁極12は、3個ずつに分けられて、2つのステータ磁極群15,16を構成している。一方のステータ磁極群15は、一方の磁極形成部13と一体的に形成されている。ステータ磁極群15を構成する3個のステータ磁極12は、回転軸線を中心とする30°間隔で設けられている。他方のステータ磁極群16は、他方の磁極形成部13と一体的に形成されている。ステータ磁極群16を構成する3個のステータ磁極12は、回転軸線を中心とする30°間隔で設けられている。そして、各ステータ磁極12は、磁極形成部13の内面から回転軸線に向かって突出し、回転軸線方向に延びる略直方体形状に形成されている。
【0034】
ステータコイル10は、各ステータ磁極12に集中巻されている。
【0035】
ステータ磁極群15の両端のステータ磁極12と各連結部14との間には、空間17が形成されている。この空間17を利用して、ステータ磁極群15をN極に着磁させるための第1界磁コイル18が配置されている。第1界磁コイル18は、一方の空間17を通されて、連結部14よりも回転軸線方向の外側まで延び、回転軸2側と反対側に屈曲し、1対の連結部14の対向方向に屈曲して延び、回転軸2側に屈曲して他方の空間17に向けて延び、回転軸線方向に屈曲して、他方の空間17を通されて、連結部14よりも回転軸線方向の外側まで延び、回転軸2側と反対側に屈曲し、1対の連結部14の対向方向に屈曲して延び、回転軸2側に屈曲して一方の空間17に向けて延び、回転軸線方向に屈曲して、一方の空間17を通されるというようにして巻回されている。これにより、第1界磁コイル18の一部をステータ磁極群15のステータ磁極12に集中巻されたステータコイル10と回転軸線方向に対向する位置から逃がすことができる。
【0036】
ステータ磁極群16の両端のステータ磁極12と各連結部14との間には、空間17が形成されている。この空間19を利用して、ステータ磁極群15をS極に着磁させるための第2界磁コイル20が配置されている。第2界磁コイル20は、一方の空間19を通されて、連結部14よりも回転軸線方向の外側まで延び、回転軸2側と反対側に屈曲し、1対の連結部14の対向方向に屈曲して延び、回転軸2側に屈曲して他方の空間19に向けて延び、回転軸線方向に屈曲して、他方の空間19を通されて、連結部14よりも回転軸線方向の外側まで延び、回転軸2側と反対側に屈曲し、1対の連結部14の対向方向に屈曲して延び、回転軸2側に屈曲して一方の空間19に向けて延び、回転軸線方向に屈曲して、一方の空間19を通されるというようにして巻回されている。これにより、第2界磁コイル20の一部をステータ磁極群16のステータ磁極12に集中巻されたステータコイル10と回転軸線方向に対向する位置から逃がすことができる。
【0037】
第1界磁コイル18および第2界磁コイル20に界磁電流が流れると、ステータ磁極群15がN極に着磁され、ステータ磁極群16がS極に着磁される。そして、ロータ3の回転に伴って、ロータ磁極6がN極に着磁されたステータ磁極12と対向し、別のロータ磁極6がS極に着磁されたステータ磁極12と対向すると、磁束がN極に着磁されたステータ磁極12とS極に着磁されたステータ磁極12との間をロータ3/ステータヨーク11を経由して通る。その結果、それらのステータ磁極12に集中巻されたステータコイル10に誘導電流が流れる。
【0038】
2つのステータ磁極群15,16が互いに離れているので、各ステータ磁極群15,16間において、図1に示されるように、ステータヨーク11を直線状に形成することができる。よって、ステータヨーク11が円環状に形成されたステータ4と比較して、ステータ4の回転径方向のサイズを縮小することができる。
【0039】
そして、ロータ3は、いわゆるくし型ロータ3ではないので、回転径方向のサイズを縮小する一方で、回転軸線方向のサイズを増大させることができる。よって、ロータ3およびステータ4の回転径方向のサイズを縮小し、それらの回転軸線方向のサイズを増大させることにより、従来の発電機と同出力を確保することができる。
【0040】
また、ロータ3に界磁コイルが設けられた構成とは異なり、スリップリングおよびブラシが不要である。そのため、ロータ3の回転軸線方向のサイズを増大させても、そのサイズの増大をスリップリングの配置に必要なスペースの省略で相殺することができ、発電機1の全体として回転軸線方向のサイズが増大することを防止できる。
【0041】
よって、発電機1が自動車に搭載されるオルタネータに用いられる場合に、オルタネータが配置されるエンジンルーム内のスペースの関係から発電機のサイズを回転径方向に縮小しながら、発電機1の出力を確保したいという要望に応えることができる。
【0042】
さらに、スリップリングおよびブラシが不要であるので、部品点数を削減することができる。その結果、部品点数の削減による発電機1のコストの低減を図ることができる。
【0043】
また、N極に着磁されたステータ磁極群15とS極に着磁されたステータ磁極群16との間を磁束が通るときに、ステータヨーク11を通る磁束は、ステータヨーク11の一方の連結部14と他方の連結部14とに分散される。そのため、ステータヨーク11の厚さを小さくすることができる。その結果、ステータ4の重量を小さくすることができる。
【0044】
さらにまた、ロータ3が積層鋼板からなるので、ロータ3の表面での渦電流の発生を抑制することができる。その結果、発電効率を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0046】
たとえば、3個のステータ磁極12によって各ステータ磁極群15,16が構成される場合を例にとったが、各ステータ磁極群15,16を構成するステータ磁極12の数は、相数に応じて変更されるとよい。たとえば、発電機1が2相交流発電機である場合には、各ステータ磁極群15,16が2個のステータ磁極12によって構成されるとよい。
【0047】
また、2つのステータ磁極群15,16が設けられた構成を取り上げたが、3つ以上のステータ磁極群が設けられてもよい。
【0048】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 発電機
2 回転軸
3 ロータ
4 ステータ
5 ロータヨーク
6 ロータ磁極
9 ステータコア
10 ステータコイル
11 ステータヨーク
15 ステータ磁極群
16 ステータ磁極群
18 第1界磁コイル
20 第2界磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸と一体的に回転可能に設けられるロータと、前記ロータの周囲に設けられるステータとを備える発電機であって、
前記ロータには、前記回転軸が中心部に相対回転不能に挿通されるロータヨークおよび前記ロータヨークから回転径方向に突出する複数のロータ磁極が形成され、
前記ステータは、前記ロータを回転周方向に取り囲む環状のステータヨークおよび前記ステータヨークの内側に突出する複数のステータ磁極が形成されたステータコアと、各ステータ磁極に集中巻されたステータコイルとを有し、
前記複数のステータ磁極は、複数のステータ磁極群を互いに離れた位置で構成し、
各ステータ磁極群は、相数に応じた数の前記ステータ磁極からなり、
前記ステータ磁極群をN極に着磁させるための第1界磁コイルと、
N極に着磁される前記ステータ磁極群とは別の前記ステータ磁極群をS極に着磁させるための第2界磁コイルとを含む、発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−116012(P2013−116012A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262789(P2011−262789)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】