説明

発電発光体及び発電発光装置

【課題】 自己発光的あるいは自己給電的な作用を行わせ得る発電発光システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る発電発光システム11は、平面状のELパネル3の発光面3a側に透過型太陽電池パネル5を設けてなる発電発光体1と、前記発電発光体1の透過型太陽電池パネル5からの電力を受電して充電するとともに、前記発電発光体1のELパネル3に発光用電力を供給することができるEL発光充電コントローラ13とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Electro-Luminescence(エレクトロ−ルミネセッス(以下、単に「EL」と称す))パネルに透過型太陽電池パネルを一体化してなる発電発光体と、その発電発光体を用いて自己発光的あるいは自己給電的な作用を行わせる発電発光システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置(太陽光発電パネル)は、太陽光から直接電力を取り出すことができるため、効率のよい発電手段として利用されてきている。この太陽光発電パネルを利用した電力システムの一つとして、例えば図5に示すものが提案されている。
【0003】
図5に示す電力システム101は、太陽光発電パネル103と、バッテリを含む充電器105と、無機EL発光装置(以下、「ELパネル」という)107と、ELコントローラ109とから構成されている。
【0004】
図5において、昼間期に太陽光Sが太陽光発電パネル103に照射されると、太陽光発電パネル103で発電されて、その発電された電力が充電器105に供給される。充電器105では、供給された電力をバッテリーに充電する。その結果、発電から充電という一連の動作となる。
【0005】
一方、充電器105からELコントローラ109に電力が供給(給電)されて、ELコントローラ109がELパネル107を点灯させて光Lを放射する。その結果、電力から発光に変換される一連の動作となる。
このような太陽光を利用する電力システムに似たシステムとしては、特許文献1に記載のものがある。
【0006】
また、夜間期等ソーラーパネル103から発電がなく、かつ、バッテリからの電力の供給が見込めなくなったときには、ELコントローラ109では、例えばAC100[V]等の商用電源より電力の供給を受けて、ELパネル107を点灯させて光Lを照射させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−050173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した太陽光を利用した従来の電力システムでは、次のような問題点があった。
(1)太陽光発電パネルとELパネルとを別々に設置しなければならず、大きな設置面積を必要とする。
(2)夜間期には太陽光発電パネルを有効に利用できない。
(3)夜間などでバッテリからの電力の供給が見込めないときには、商用電源の電力消費が大きくなる。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解消し、設置面積を少なくできる発電発光体と、自己発光的あるいは自己給電的な作用を行わせ得る発電発光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る発電発光体は、平面状のELパネルの発光面側に平面状の透過型太陽電池パネルを設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明では、請求項1において、前記透過型太陽電池パネルは透過率40%以上で色素増感型太陽電池パネルであり、前記ELパネルは無機ELシートであることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項4記載の発明に係る発電発光システムは、平面状のELパネルの発光面側に透過型太陽電池パネルを設けてなる発電発光体と、前記透過型太陽電池パネルからの電力を受電して充電するとともに、前記ELパネルに発光用電力を供給するEL発光充電コントローラとを備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明に係る発電発光体によれば、ELパネルと透過型太陽電池パネルとが一体化しているので、設置面積を少なくできるという効果がある。
請求項3記載の発明に係る発電発光システムによれば、次のような効果がある。
【0014】
(1)夜間でも、ELパネルを一番効率の良い状態で発光させ、発光エネギーの一部を透過型太陽電池パネルで発電させているので、ソーラーパネルを有効に利用できるほか、光エネルギーの一部を電力として回収できる。
(2)その結果、夜間期の商用電源の使用を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る発電発光体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る発電発光体における透過型太陽電池パネルの電圧−電流特性図であって、横軸に電圧[V]を、縦軸に電流密度を、それぞれとったものである。
【図3】本発明の実施形態に係る発電発光システムを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る発電発光システムの動作を説明するための図であり、(a)が昼間期の動作を、(b)が夜間期の動作を、それぞれ説明するための図である。
【図5】従来の太陽光発電パネルを利用した電力システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る発電発光体を示す断面図である。図1において、本発明の実施形態に係る発電発光体1は、平面状のELパネル3の発光面側3aに平面状のELパネル3の面積と同一面積を少なくとも有する透過型太陽電池パネル5を設けてなるものである。
【0017】
ここで、ELパネル3は、無機ELシートで構成されている。この無機ELシートのELパネル3は、片面をラミネート処理をした保護層と、この保護層の上に設けた導電(銀)インクと、この導電インクの上に設けたチタン酸バリウムからなる絶縁層と、この絶縁層の上に設けたEL用硫化亜鉛からなる発光層と、この発光層の上で発光層側に透明電極を配置したポリエチレンテフタレート(PET)フィルムとから構成されている。前記透明電極は、インジウムスズを、PETフィルムに蒸着(スパッタリング)している。この無機ELシートのELパネル3では、上記各素材にバインダー(接着剤)が混入されている。
【0018】
透過型太陽電池パネル5は、可視光透過率40%以上の色素増感型太陽電池モジュールを用いている。可視光透過率とは、人間が見ることができる波長の光であって、ある物体を透過した光量を、その物体に入射した光量で割ったものである。色素増感型太陽電池モジュールは、例えば一方の透明電極と他方の透明電極との間に電解液を封入した構造を有している。一方の透明電極は、他方の電極に向き合う側に、多孔質酸化チタン膜に光増感色素を吸着させた電極を設けている。色素増感型太陽電池モジュールでは、光増感色素が励起されて酸化チタン膜に電子注入されると、表面のショットキー障壁によって電流となって一方の透明電極から外部に流れ出し、他方の透明電極に移った電流は電解液を還元するという原理で発電をしている。一般的に、色素増感型太陽電池モジュールでは、電圧は0.7 [V]から0.8[V]、電流は太陽光下(1kW/m2 )で16〜20[mA/m2 ]が得られることが知られている。また、色素増感型太陽電池モジュールは、11%台の効率があるとされている。
【0019】
本発明の実施形態に係る発電発光体1は、フィルム状に形成されているため、薄くフレキシブルな構造を有している。また、透過型太陽電池パネル5は太陽光Sを受光できるととともに、ELパネル3からの放射光Lを透過させることができる。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る発電発光体における透過型太陽電池パネルの電圧−電流特性図であって、横軸に電圧[V]を、縦軸に電流密度[mA/cm2 ]を、それぞれとったものである。
【0021】
この図2からもわかるように、電圧が0[V]〜0.6[V]まではほぼ平坦な電流密度[mA /cm2 ]であることがわかる。また、0.7 [V]から0.8[V]にかけて、急激に電流密度が落ちる状態にあることがわかる。
【0022】
本発明の実施形態に係る発電発光体1によれば、ELパネルと透過型太陽電池パネルとが一体化しているので、設置面積を少なくできるという効果がある。
図3は、本発明の実施形態に係る発電発光システムを示すブロック図である。
【0023】
図3において、本発明の実施形態に係る発電発光システム11は、平面状のELパネル3の発光面3a側に透過型太陽電池パネル5を設けてなる発電発光体1と、前記発電発光体1の透過型太陽電池パネル5からの電力を受電して充電するとともに、前記発電発光体1のELパネル3に発光用電力を供給するEL発光充電コントローラ13とを備えた装置である。
【0024】
EL発光充電コントローラ13は、図示しないが、所定の電気容量を有するバッテリと、透過型太陽電池パネル5からの電力を前記バッテリに充電する充電器と、バッテリからの電力を取り出しあるいは商用電源からの電力を受電してELパネル3を発光させる電力を供給できるELコントローラとから構成されている。EL発光充電コントローラ13のELコントローラは、ELパネル3を最高の効率点で発光させるように動作するものとする。最高の効率点とは、ELコントローラから供給された電力に対して最も効率よく電力が光に変換されることをいう。
【0025】
このような発電発光システム11の作用を図4を参照して説明する。
図4(a)は、本発明の実施形態に係る発電発光システムの昼間期の動作を説明するための図である。
図4(a)において、昼間期では、太陽光Sが発電発光体1の透過型太陽電池パネル5の表面に入射する。これにより、透過型太陽電池パネル5では、太陽光を電力に変換(発電)してEL発光充電コントローラ13に出力する(ステップ(STP)201)。EL発光充電コントローラ13の充電器では、受電した電力をバッテリに充電する(STP202)。昼間期では、上記動作を繰り返すことになる(STP201、202)。
【0026】
図4(b)は、本発明の実施形態に係る発電発光システムの夜間期等の動作を説明するための図である。
【0027】
夜間期等では、EL発光充電コントローラ13のELコントローラが動作して、ELコントローラから発電発光体1のELパネル3へ電力が供給される。すると、発電発光体1のELパネル3が発光する。この際に、EL発光充電コントローラ13のELコントローラは、ELパネル3が最高効率で発光できるように動作する。すると、発電発光体1のELパネル3の発光面側に設けられている発電発光体1の透過型太陽電池パネル5には、その裏面から光Lが供給されることになる。この際に、発電発光体1の透過型太陽電池パネル5は、所定の光エネルギーを電気エネルギーに変換(発電)し(STP301)、その電力をEL発光充電コントローラ13に供給する。EL発光充電コントローラ13の充電器では、受電した電力をバッテリに充電する(STP302)。なお、照明に必要な光量は、発電発光体1の透過型太陽電池パネル5を透過し、発電発光体1の透過型太陽電池パネル5の表面から放射される光によって得られることになる。
【0028】
このように本発明では、発電発光体1のELパネル3を最高効率で発光させることにより発光効率を高め発光電力の無駄をなくし、その際に照明に必要な光量以外の不要な光量を発電発光体1の透過型太陽電池パネル5でできるだけ電力に変換(発電)してバッテリを充電することにより、省エネルギー化を図り、自己発光的あるいは自己給電的な作用を行わせるようにしたものである。
【0029】
本発明の実施形態に係る発電発光システム11では、次のような効果を奏することができる。
(1)夜間でも、発電発光体1のELパネル3を一番効率の良い状態で発光させ、発光エネギーの一部を透過型太陽電池パネル5で発電させているので、ソーラーパネルを有効に利用でき、エネルギーの一部を回収することができる。
(2)その結果、夜間期の商用電源の使用量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 発電発光体
3 ELパネル
5 透過型太陽電池パネル
11 発電発光システム
13 EL発光充電コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状のELパネルの発光面側に透過型太陽電池パネルを設けてなることを特徴とする発電発光体。
【請求項2】
前記透過型太陽電池パネルは、透過率40%以上で色素増感型太陽電池モジュールであり、前記ELパネルは無機ELシートであることを特徴とする請求項1記載の発電発光体。
【請求項3】
平面状のELパネルの発光面側に透過型太陽電池パネルを設けてなる発電発光体と、前記透過型太陽電池パネルからの電力を受電して充電するとともに、前記ELパネルに発光用電力を供給するEL発光充電コントローラとを備えたことを特徴する発電発光システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−29048(P2011−29048A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174987(P2009−174987)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(507236960)ELストリーム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】