説明

発電装置、永久磁石発電機

【課題】永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じた場合に、その相間短絡に起因した永久磁石発電機の焼損等が生ずる虞が少ない発電装置を低コストで実現する。
【解決手段】発電装置100は、三相交流発電機10と、三相交流発電機10の相巻線と中立点との接続を切断可能に設けられ、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する双方向サイリスタTR1〜TR3と、三相交流発電機10の相巻線に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミングを含む期間、及び負から正に切り替わるタイミングを含む期間、当該相巻線に対応する双方向サイリスタのゲート信号が出力される自励ゲート信号生成回路30と、三相交流発電機10を起動するときにゲート信号を出力する制御装置70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界磁に永久磁石を用いた永久磁石発電機、該永久磁石発電機を備える発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
界磁に永久磁石を用いた永久磁石発電機の一例としては、例えば三相交流発電機が公知である。永久磁石を用いた三相交流発電機は、例えば三相巻線からなる固定子の中で永久磁石からなる回転子を回転させることによって、電磁誘導の法則により、三相交流電力を発電することができる。界磁に電磁石を用いた電磁石発電機と比較した場合、永久磁石発電機は、界磁励磁のための電源回路が不要であり、また外部の電源回路から回転界磁に電流を導くためのスリップリングやブラシなどの電気的接点がないため、構造が簡単で保守が容易である等の利点がある。
【0003】
他方、従来の永久磁石発電機は、発電装置に何らかの不具合や故障等が生じたときに、回転子を回転させ続ける限り発電を止めることができない。この場合、例えば永久磁石発電機の出力と負荷との間に遮断器を設けておけば、発電装置に何らかの不具合や故障等が生じたときに、永久磁石発電機から負荷への電力供給を遮断することができる。また永久磁石発電機から負荷への電力供給を遮断又は抑制可能な従来技術としては、例えば回転子への回転駆動力の伝達を遮断可能なクラッチ機構を設けた永久磁石発電機が公知である(例えば特許文献1を参照)。また永久磁石に加えて界磁巻線を設けた回転子を備え、界磁巻線に流れる界磁電流を制御することによって出力電流の出力を禁止可能な回転電機が公知である(例えば特許文献2を参照)。また負荷状態に応じて出力電圧を制御可能なレギュレータ(電圧調整装置)を備えた永久磁石発電機が公知である(例えば特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−261008号公報
【特許文献2】特開2005−204482号公報
【特許文献3】特開2003−189697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の特許文献1に開示されている従来技術は、クラッチ機構を設けることによって発電装置が複雑化及び大型化してしまうため、コストが大幅に上昇してしまう虞が生ずる。また上記の特許文献2、3に開示されている従来技術においては、例えば永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じた場合に、その短絡電流を止めることができないため、その相間短絡に起因した永久磁石発電機の焼損等を防止することができない。このことは例えば永久磁石発電機の出力を遮断する遮断器を設けた場合も同様である。さらに上記の特許文献1〜3に開示されている従来技術は、外部からの監視条件に基づいて永久磁石発電機の出力電圧を遮断又は抑制するため、永久磁石発電機に何らかの異常や故障等が発生してから出力電圧の遮断又は抑制が行われるまでに、ある程度の時間差が生じてしまうという課題がある。
【0006】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じた場合に、その相間短絡に起因した永久磁石発電機の焼損等が生ずる虞が少ない発電装置を低コストで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、一端側が出力端子となり他端側が中立点に接続される相巻線を三つ以上含む永久磁石発電機と、前記永久磁石発電機の相巻線と中立点との接続を切断可能に各相巻線と中立点との間に各々設けられ、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する双方向半導体スイッチング回路と、前記永久磁石発電機の相巻線に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミングを含む期間、及び負から正に切り替わるタイミングを含む期間、当該相巻線に対応する前記双方向半導体スイッチング回路のゲート信号が出力されるように、当該相巻線以外の相巻線に励起される交流電圧から前記双方向半導体スイッチング回路のゲート信号を各々生成する自励ゲート信号生成回路と、前記永久磁石発電機を起動するときに全ての前記双方向半導体スイッチング回路のゲート信号を出力する起動ゲート信号出力回路と、を備える発電装置である。
【0008】
各相巻線と中立点との間には、永久磁石発電機の相巻線と中立点との接続を切断可能に双方向半導体スイッチング回路が各々設けられている。この双方向半導体スイッチング回路は、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する。そして自励ゲート信号生成回路が出力するゲート信号は、永久磁石発電機の相巻線に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミングを含む期間、及び負から正に切り替わるタイミングを含む期間、出力される。したがって永久磁石発電機の各相巻線に交流電圧が正常に励起される状態においては、上記の期間、自励ゲート信号生成回路からゲート信号が出力され、それによって双方向半導体スイッチング回路の導通状態が維持される。つまり永久磁石発電機が正常に発電している状態においては、各相巻線が中立点に接続された状態が維持されるので、その永久磁石発電機が正常に発電している状態が維持される。
【0009】
また自励ゲート信号生成回路は、一の相巻線に対応する双方向半導体スイッチング回路のゲート信号を当該相巻線以外の相巻線に励起される交流電圧から各々生成する。そして相間短絡が生じた場合には、その相間短絡に関与する相巻線の電圧が低下する。したがって永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じて、いずれかの相巻線の電圧が低下したときには、その相巻線の電圧から生成されているゲート信号が出力されなくなり、そのゲート信号で点弧していた双方向半導体スイッチング回路が自己消弧して非導通状態となる。そしてその自己消弧した双方向半導体スイッチング回路に対応する相巻線が中立点から切断され、それによってその相巻線の電圧から生成されているゲート信号が出力されなくなり、そのゲート信号で点弧していた双方向半導体スイッチング回路が自己消弧して非導通状態となる。したがって永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じていずれかの相巻線の電圧が低下したときには、全ての双方向半導体スイッチング回路が連鎖的に自己消弧して非導通状態となり、それによって全ての相巻線が中立点から切断されることになる。つまり永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じたときには、全ての相巻線に電流が流れなくなるので、回転子が回転している状態であっても、相間短絡による短絡電流を迅速に止めることができる。
【0010】
また本発明に係る発電装置においては、上記のように、永久磁石発電機の回転子が回転している状態であっても、相間短絡による短絡電流を迅速に止めることができるので、従来のように回転子への回転駆動力の伝達を切断するクラッチ機構を設ける必要がない。したがって発電装置が複雑化及び大型化してしまう虞が生じない。
【0011】
これにより本発明の第1の態様によれば、永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じた場合に、その相間短絡に起因した永久磁石発電機の焼損等が生ずる虞が少ない発電装置を低コストで実現することができるという作用効果が得られる。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記自励ゲート信号生成回路が出力するゲート信号を遮断可能なゲート信号遮断回路をさらに備える、ことを特徴とした発電装置である。
このような特徴によれば、例えば永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じていない状態において、それ以外の何らかの異常が永久磁石発電機に生じた場合に、永久磁石発電機の回転子が回転している状態であっても、永久磁石発電機における発電を迅速に停止させることができる。
【0013】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記永久磁石発電機の出力を遮断可能な出力遮断回路をさらに備える、ことを特徴とした発電装置である。
このような特徴によれば、例えば発電装置から電力を供給される負荷装置側において短絡や地絡等の異常が生じたときには、出力遮断回路で永久磁石発電機の出力を遮断することによって、負荷装置側での短絡電流や地絡電流を迅速に止めることができる。
【0014】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第1〜第3の態様のいずれかにおいて、前記双方向半導体スイッチング回路は双方向サイリスタである、ことを特徴とした発電装置である。
このような特徴によれば、少ない部品点数で双方向半導体スイッチング回路を実現することができるので、本発明に係る発電装置をより低コストで実現することができる。
【0015】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記永久磁石発電機は、相巻線が集中巻きで巻かれている、ことを特徴とした発電装置である。
このような特徴によれば、所謂集中巻きは、同一のスロットに一つの相の巻線のみを巻くので、同一のスロットに異なる相の巻線を隣接させて巻く所謂分布巻きと比較して、相間短絡が生じる虞をより低減させることができる。
【0016】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、前述した本発明の第1〜第5の態様のいずれかにおいて、前記永久磁石発電機は、相巻線の巻き始めと巻き終わりとが相反する方向へ引き出されている、ことを特徴とした発電装置である。
このような特徴によれば、永久磁石発電機から引き出された相巻線の巻き始め部分と巻き終わり部分とが接触して短絡する虞を低減させることができる。
【0017】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、一端側が出力端子となり他端側が中立点に接続される三つ以上の相巻線と、相巻線と中立点との接続を切断可能に各相巻線と中立点との間に各々設けられ、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する双方向半導体スイッチング回路と、を備える永久磁石発電機である。
【0018】
各相巻線と中立点との間には、各相巻線と中立点との接続を切断可能に双方向半導体スイッチング回路が各々設けられている。この双方向半導体スイッチング回路は、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する。したがって相巻線に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミングを含む期間、及び負から正に切り替わるタイミングを含む期間、双方向半導体スイッチング回路の各々にゲート信号を入力することによって、双方向半導体スイッチング回路の導通状態が維持される。それによって永久磁石発電機が正常に発電している状態において、各相巻線が中立点に接続された状態が維持することができるので、その永久磁石発電機が正常に発電している状態を維持することができる。
【0019】
他方、双方向半導体スイッチング回路へのゲート信号を全て遮断すれば、全ての双方向半導体スイッチング回路が自己消弧して非導通状態となるので、全ての相巻線が中立点から切断され、各相巻線に電流が流れない状態となる。したがって例えば永久磁石発電機に何らかの異常が生じた場合、特に相間短絡が生じた場合に、双方向半導体スイッチング回路へのゲート信号を全て遮断することによって、回転子が回転している状態であっても、永久磁石発電機における発電を迅速に停止させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、永久磁石発電機の内部で相間短絡が生じた場合に、その相間短絡に起因した永久磁石発電機の焼損等が生ずる虞が少ない発電装置を低コストで実現することができるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施例の発電装置の全体構成図。
【図2】第1実施例の発電装置の起動時及び正常動作時のタイミングチャート。
【図3】第1実施例の発電装置の停止時のタイミングチャート。
【図4】第1実施例の発電装置において相間短絡が生じたときのタイミングチャート。
【図5】「双方向半導体スイッチング回路」の変形例を図示した回路図。
【図6】第1遮断回路の変形例を図示した回路図。
【図7】第2実施例の発電装置の全体構成図。
【図8】第3実施例の発電装置の全体構成図。
【図9】第3実施例の発電装置の起動時及び正常動作時のタイミングチャート。
【図10】第3実施例の発電装置において相間短絡が生じたときのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
<第1実施例>
本発明に係る発電装置の第1実施例について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0024】
まず第1実施例の発電装置100の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、第1実施例の発電装置100の全体構成図である。
第1実施例の発電装置100は、三相交流発電機10で発電した交流電力をコンバータ回路60及び平滑コンデンサC1により直流電力に変換し、その直流電力を負荷Z1へ供給する。このような構成の発電装置100は、さらに第1遮断回路20、自励ゲート信号生成回路30、ゲート信号遮断回路40、第2遮断回路50及び制御装置70を備えている。
【0025】
三相交流発電機10は、界磁に永久磁石を用いた「永久磁石発電機」であり、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3からなる固定子と、その固定子の中で回転する永久磁石で構成された回転子(図示せず)とを含む。第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3は、回転子の回転方向へ120度ずつ位相をずらして配置され、一端側が出力端子となり他端側が中立点Nに接続される。三相交流発電機10は、エンジン等の駆動力源の回転駆動力が伝達されて回転子が回転することによって、三相交流電力を発電する。
【0026】
第1遮断回路20は、第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3を含む。第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3は、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する公知の「双方向半導体スイッチング回路」である。第1双方向サイリスタTR1は、三相交流発電機10の第1相巻線L1と中立点Nとの接続を切断可能に第1相巻線L1と中立点Nとの間に設けられている。第2双方向サイリスタTR2は、三相交流発電機10の第2相巻線L2と中立点Nとの接続を切断可能に第2相巻線L2と中立点Nとの間に設けられている。第3双方向サイリスタTR3は、三相交流発電機10の第3相巻線L3と中立点Nとの接続を切断可能に第3相巻線L3と中立点Nとの間に設けられている。第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3の各ゲート端子には、自励ゲート信号生成回路30又は制御装置70からゲート信号が入力される。
【0027】
自励ゲート信号生成回路30は、ダイオードD1〜D6及び抵抗器R1〜R6を含む。ダイオードD1及びダイオードD2のアノード端子は、三相交流発電機10の第3相巻線L3の出力端側に接続されている。ダイオードD3及びダイオードD4のアノード端子は、三相交流発電機10の第2相巻線L2の出力端側に接続されている。ダイオードD5及びダイオードD6のアノード端子は、三相交流発電機10の第1相巻線L1の出力端側に接続されている。抵抗器R1、R3、R5は、同じ抵抗値の抵抗器である。抵抗器R2、R4、R6は、同じ抵抗値の抵抗器である。
【0028】
ダイオードD1及びダイオードD3のカソード端子は、抵抗器R1の一端側に接続されている。抵抗器R1の他端側には抵抗器R2の一端側が接続されており、抵抗器R2の他端側は三相交流発電機10の中立点Nに接続されている。抵抗器R1と抵抗器R2との接続点は、ゲート信号遮断回路40を介して第1双方向サイリスタTR1のゲート端子に接続されている。つまり第2相巻線L2の相電圧と第3相巻線L3の相電圧の論理和を抵抗器R1と抵抗器R2との抵抗比で分圧した電圧が、第1双方向サイリスタTR1のゲート信号となる。
【0029】
ダイオードD2及びダイオードD5のカソード端子は、抵抗器R3の一端側に接続されている。抵抗器R3の他端側には抵抗器R4の一端側が接続されており、抵抗器R4の他端側は三相交流発電機10の中立点Nに接続されている。抵抗器R3と抵抗器R4との接続点は、ゲート信号遮断回路40を介して第2双方向サイリスタTR2のゲート端子に接続されている。つまり第1相巻線L1の相電圧と第3相巻線L3の相電圧の論理和を抵抗器R3と抵抗器R4との抵抗比で分圧した電圧が、第2双方向サイリスタTR2のゲート信号となる。
【0030】
ダイオードD4及びダイオードD6のカソード端子は、抵抗器R5の一端側に接続されている。抵抗器R5の他端側には抵抗器R6の一端側が接続されており、抵抗器R6の他端側は三相交流発電機10の中立点Nに接続されている。抵抗器R5と抵抗器R6との接続点は、ゲート信号遮断回路40を介して第3双方向サイリスタTR3のゲート端子に接続されている。つまり第1相巻線L1の相電圧と第2相巻線L2の相電圧の論理和を抵抗器R5と抵抗器R6との抵抗比で分圧した電圧が、第3双方向サイリスタTR3のゲート信号となる。
【0031】
ゲート信号遮断回路40は、自励ゲート信号生成回路30が出力するゲート信号を遮断可能に設けられた三つのスイッチS1〜S3を含む。スイッチS1は、抵抗器R1と抵抗器R2との接続点から第1双方向サイリスタTR1のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。スイッチS2は、抵抗器R3と抵抗器R4との接続点から第2双方向サイリスタTR2のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。スイッチS3は、抵抗器R5と抵抗器R6との接続点から第3双方向サイリスタTR3のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。このスイッチS1〜S3は、例えば機械式スイッチや接点、電磁リレーやソリッドステートリレー、トランジスタやFET等の半導体スイッチ等を用いることができる。
【0032】
「出力遮断回路」としての第2遮断回路50は、三相交流発電機10からコンバータ回路60への交流電力出力を遮断可能に設けられた三つの遮断器S4〜S6を含む。遮断器S4は、第1相巻線L1からコンバータ回路60への出力を遮断可能に設けられている。遮断器S5は、第2相巻線L2からコンバータ回路60への出力を遮断可能に設けられている。遮断器S6は、第3相巻線L3からコンバータ回路60への出力を遮断可能に設けられている。この遮断器S4〜S6は、例えば機械式スイッチや接点、電磁リレーやソリッドステートリレー等を用いることができる。
【0033】
「起動ゲート信号出力回路」としての制御装置70は、公知のマイコン制御回路を含み、ダイオードD7〜D9を介して、第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3のゲート端子の各々に接続されている。制御装置70は、三相交流発電機10を起動するときに、第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3のゲート信号を出力する。また制御装置70は、ゲート信号遮断回路40に接続されており、スイッチS1〜S3を制御する。さらに制御装置70は、第2遮断回路50に接続されており、遮断器S4〜S6を制御する。さらに制御装置70は、コンバータ回路60に接続されており、コンバータ回路60から出力される直流電力の電圧を制御する。
【0034】
つづいて第1実施例の発電装置100の動作について、図2〜図4のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0035】
図2は、第1実施例の発電装置100の起動時及び正常動作時のタイミングチャートである。図2(a)は、制御装置70が出力する起動ゲート信号を図示したものであり、図2(b)は、自励ゲート信号生成回路30が出力する自励ゲート信号を図示したものであり、図2(c)は、三相交流発電機10の出力電圧を図示したものである。
【0036】
起動前の三相交流発電機10は、第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3がいずれも消弧しているため、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3は、いずれも中立点Nから切断された状態となっている。したがって起動前の三相交流発電機10は、回転駆動力が伝達されて回転子が回転しても、そのままでは、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3に電流は流れず、よって発電しない。
【0037】
起動時には、三相交流発電機10の回転子が一定以上の回転速度で回転している状態で、第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3の各ゲート端子へ制御装置70から起動ゲート信号が出力される(図2(a):タイミングT1)。すると第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3が一斉に点弧する。つまり第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3は、全て中立点Nに接続されて電流が流れる状態になる。それによって三相交流発電機10は、回転子の回転によって発電する状態となり、出力端子から三相交流電力が出力される(図2(c))。
尚、図2(c)において、第1相波形P1は第1相巻線L1に励起される交流電圧波形、第2相波形P2は第2相巻線L2に励起される交流電圧波形、第3相波形P3は第3相巻線L3に励起される交流電圧波形である。
【0038】
三相交流発電機10の出力端子から三相交流電力が出力されるようになると、それによって自励ゲート信号生成回路30から自励ゲート信号が出力されるようになる(図2(b))。より具体的には、第1相巻線L1に励起される負電圧によって、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第1ゲート信号GS1」という。)。第2相巻線L2に励起される負電圧によって、第1双方向サイリスタTR1及び第3双方向サイリスタTR3のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第2ゲート信号GS2」という。)。第3相巻線L3に励起される負電圧によって、第1双方向サイリスタTR1及び第2双方向サイリスタTR2のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第3ゲート信号GS3」という。)。第1ゲート信号GS1、第2ゲート信号GS2及び第3ゲート信号GS3の電圧は、抵抗器R1、R3、R5と抵抗器R2、R4、R6とによる分圧比を調整することによって調整することができる。また第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3は、トリガ電圧V1以上の負電圧のゲート信号がゲート端子に入力されることによって点弧する。つまりトリガ電圧V1以上の負電圧が有効なゲート信号となる。このトリガ電圧V1は、双方向サイリスタの特性に応じて決定される。
【0039】
第1ゲート信号GS1は、第2相巻線L2に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT7)を含む期間、及び第3相巻線L3に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT6)を含む期間、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3のゲート端子にトリガ電圧V1以上の負電圧として出力される。
【0040】
第2ゲート信号GS2は、第1相巻線L1に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT2)を含む期間、及び第3相巻線L3に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT3)を含む期間、第1双方向サイリスタTR1及び第3双方向サイリスタTR3のゲート端子にトリガ電圧V1以上の負電圧として出力される。
【0041】
第3ゲート信号GS3は、第1相巻線L1に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT5)を含む期間、及び第2相巻線L2に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT4)を含む期間、第1双方向サイリスタTR1及び第2双方向サイリスタTR2のゲート端子にトリガ電圧V1以上の負電圧として出力される。
【0042】
したがって第1相巻線L1に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT2)では、第2ゲート信号GS2によって、第1双方向サイリスタTR1が点弧される。第3相巻線L3に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT3)では、第2ゲート信号GS2によって、第3双方向サイリスタTR3が点弧される。第2相巻線L2に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT4)では、第3ゲート信号GS3によって、第2双方向サイリスタTR2が点弧される。第1相巻線L1に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT5)では、第3ゲート信号GS3によって、第1双方向サイリスタTR1が点弧される。第3相巻線L3に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT6)では、第1ゲート信号GS1によって、第3双方向サイリスタTR3が点弧される。第2相巻線L2に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT7)では、第1ゲート信号GS1によって、第2双方向サイリスタTR2が点弧される。
【0043】
つまり自励ゲート信号生成回路30から自励ゲート信号が出力されるようになると、その自励ゲート信号によって、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3が全て中立点Nに接続された状態が維持されるので、三相交流発電機10が正常に発電している状態が維持される。
【0044】
図3は、第1実施例の発電装置100の停止時のタイミングチャートである。図3(a)は、自励ゲート信号生成回路30が出力する自励ゲート信号を図示したものであり、図3(b)は、三相交流発電機10の出力電圧を図示したものである。
【0045】
三相交流発電機10の発電を停止させるときには、ゲート信号遮断回路40のスイッチS1〜S3のOFF制御を制御装置70が実行する。スイッチS1〜S3がOFF状態になると、自励ゲート信号生成回路30から出力される自励ゲート信号が全て遮断される(図3(a):タイミングT8)。それによって第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3が全て自己消弧するので、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3が全て中立点Nから切断された状態となる。したがって三相交流発電機10は、回転子が回転している状態であっても、その発電が停止することになる(図3(b))。
【0046】
図4は、第1実施例の発電装置100において相間短絡が生じたときのタイミングチャートである。図4(a)は、自励ゲート信号生成回路30が出力する自励ゲート信号を図示したものであり、図4(b)は、三相交流発電機10の出力電圧を図示したものである。
以下、相間短絡が生じて第1相巻線L1の相電圧が低下したときを例に説明する。
【0047】
相間短絡が生じて第1相巻線L1の相電圧が大きく低下すると(タイミングT9)、第1相巻線L1に励起される負電圧によって生成される第1ゲート信号GS1の電圧がトリガ電圧V1未満に低下する(図4(a))。それによって第3相巻線L3の電圧が0となるタイミングで、第3双方向サイリスタTR3が自己消弧し(タイミングT10)、つづいて第2相巻線L2の電圧が0となるタイミングで、第2双方向サイリスタTR2が自己消弧する(タイミングT11)。そして第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3が自己消弧することによって、第2相巻線L2及び第3相巻線L3が中立点Nから切断される。それによって第2ゲート信号GS2及び第3ゲート信号GS3が出力されなくなるため、第1相巻線L1の相電圧が0となるタイミングで第1双方向サイリスタTR1が自己消弧し、第1相巻線L1が中立点Nから切断される(タイミングT12)。この時点で、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3が全て中立点Nから切断されている状態となる。またそれによって、第1ゲート信号GS1、第2ゲート信号GS2及び第3ゲート信号GS3は全て出力されなくなる。
【0048】
つまり三相交流発電機10の内部で相間短絡が生じて、第1相巻線L1の相電圧が低下したときには、第1双方向サイリスタTR1、第2双方向サイリスタTR2及び第3双方向サイリスタTR3が連鎖的に自己消弧して非導通状態となり、それによって第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3が全て中立点Nから切断されることになる。つまり三相交流発電機10の内部で相間短絡が生じたときには、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3に電流が流れなくなるので、回転子が回転している状態であっても、相間短絡による短絡電流を迅速に止めることができる。また三相交流発電機10の回転子が回転している状態であっても、相間短絡による短絡電流を迅速に止めることができるので、従来のように回転子への回転駆動力の伝達を切断するクラッチ機構を設ける必要がない。したがって発電装置100が複雑化及び大型化してしまう虞が生じない。
【0049】
以上説明したように本発明によれば、三相交流発電機10の内部で相間短絡が生じた場合に、その相間短絡に起因した三相交流発電機10の焼損等が生ずる虞が少ない発電装置100を低コストで実現することができる。
【0050】
さらに本発明においては、当該実施例のように、自励ゲート信号生成回路30が出力するゲート信号を遮断可能なゲート信号遮断回路40を設けるのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような回路を設けることによって、例えば三相交流発電機10の内部で相間短絡以外の何らかの異常が三相交流発電機10に生じた場合に、回転子が回転している状態であっても、三相交流発電機10における発電を迅速に停止させることができる。
【0051】
さらに本発明においては、当該実施例のように、三相交流発電機10からコンバータ回路60への交流電力出力を遮断可能な第2遮断回路50を設けるのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような回路を設けることによって、第1相巻線L1、第2相巻線L2及び第3相巻線L3の両端を切断することが可能になるので、相間短絡による短絡電流に起因した三相交流発電機10の焼損等が生ずる虞をさらに低減させることができる。また例えば発電装置100から電力を供給される負荷Z1において短絡や地絡等の異常が生じたときには、第2遮断回路50により三相交流発電機10の出力を遮断することによって、負荷Z1での短絡電流や地絡電流を迅速に止めることができる。
【0052】
図5は、「双方向半導体スイッチング回路」の変形例を図示した回路図である。
本発明の「双方向半導体スイッチング回路」は、当該実施例の双方向サイリスタに特に限定されない。例えば二つのサイリスタTh1、Th2を組み合わせて構成することもできる(図5(a))。例えば二つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)Tr1、Tr2を組み合わせて構成することもできる(図5(b))。
【0053】
図6は、第1遮断回路20の変形例を図示した回路図である。
第1遮断回路20の変形例は、サイリスタTh1〜Th6及び抵抗器R1a〜R1cを含む。サイリスタTh1とサイリスタTh2とは逆並列に接続されている。サイリスタTh3とサイリスタTh4とは逆並列に接続されている。サイリスタTh5とサイリスタTh6とは逆並列に接続されている。サイリスタTh1、サイリスタTh3、サイリスタTh5のカソード端子、及びサイリスタTh2、サイリスタTh4、サイリスタTh6アノード端子は、中立点Nに接続されている。またサイリスタTh1のアノード端子(サイリスタTh2のカソード端子)は、第1相巻線L1の他端側に接続されるとともに、抵抗器R1aの一端側が接続されている。サイリスタTh3のアノード端子(サイリスタTh4のカソード端子)は、第2相巻線L2の他端側に接続されるとともに、抵抗器R1bの一端側が接続されている。サイリスタTh5のアノード端子(サイリスタTh6のカソード端子)は、第3相巻線L3の他端側に接続されるとともに、抵抗器R1cの一端側が接続されている。
【0054】
抵抗器R1a、抵抗器R1b及び抵抗器R1cは、サイリスタTh1、サイリスタTh3、サイリスタTh5のアノード側(サイリスタTh2、サイリスタTh4、サイリスタTh6のカソード側)の電位を確定させるために設けられている(電圧確定用の回路)。この抵抗器R1a、抵抗器R1b及び抵抗器R1cで構成される回路は、図5に図示したサイリスタTh1、Th2を用いた回路(図5(a))、あるいは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)Tr1、Tr2を用いた回路(図5(b)を「双方向半導体スイッチング回路」として用いる場合に必要となる。「双方向半導体スイッチング回路」として双方向サイリスタ(図1の第1〜第3双方向サイリスタTR1〜TR3)を用いる場合には必要ない。
【0055】
<第2実施例>
本発明に係る発電装置の第2実施例について、図7を参照しながら説明する。
図7は、第2実施例の発電装置100の全体構成図である。
第2実施例の発電装置100は、自励ゲート信号生成回路30の構成が異なる以外は、第1実施例の発電装置100と同じ構成である。以下、第2実施例の自励ゲート信号生成回路30の構成について説明し、第1実施例と共通する部分については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。また自励ゲート信号生成回路30の動作も第1実施例と略同じであるため、タイミングチャートの図示及びその説明を省略する。
【0056】
第2実施例の自励ゲート信号生成回路30は、ダイオードD1〜D6、抵抗器R7〜R9及びトリガダイオードTD1〜TD3を含む。ダイオードD1及びダイオードD2のアノード端子は、三相交流発電機10の第3相巻線L3の出力端側に接続されている。ダイオードD3及びダイオードD4のアノード端子は、三相交流発電機10の第2相巻線L2の出力端側に接続されている。ダイオードD5及びダイオードD6のアノード端子は、三相交流発電機10の第1相巻線L1の出力端側に接続されている。抵抗器R7〜R9は、同じ抵抗値の抵抗器であり、トリガダイオードTD1〜TD3に流れる電流を定格電流以下に制限する。
【0057】
ダイオードD1及びダイオードD3のカソード端子は、抵抗器R7の一端側に接続されている。抵抗器R7の他端側にはトリガダイオードTD1の一端側が接続されており、トリガダイオードTD1の他端側は、ゲート信号遮断回路40を介して第1双方向サイリスタTR1のゲート端子に接続されている。つまり第2相巻線L2の相電圧と第3相巻線L3の相電圧の論理和でトリガダイオードTD1からトリガ信号が出力され、そのトリガ信号が第1双方向サイリスタTR1のゲート信号となる。
【0058】
ダイオードD2及びダイオードD5のカソード端子は、抵抗器R8の一端側に接続されている。抵抗器R8の他端側にはトリガダイオードTD2の一端側が接続されており、トリガダイオードTD2の他端側は、ゲート信号遮断回路40を介して第2双方向サイリスタTR2のゲート端子に接続されている。つまり第1相巻線L1の相電圧と第3相巻線L3の相電圧の論理和でトリガダイオードTD2からトリガ信号が出力され、そのトリガ信号が第2双方向サイリスタTR2のゲート信号となる。
【0059】
ダイオードD4及びダイオードD6のカソード端子は、抵抗器R9の一端側に接続されている。抵抗器R9の他端側にはトリガダイオードTD3の一端側が接続されており、トリガダイオードTD3の他端側は、ゲート信号遮断回路40を介して第3双方向サイリスタTR3のゲート端子に接続されている。つまり第1相巻線L1の相電圧と第2相巻線L2の相電圧の論理和でトリガダイオードTD3からトリガ信号が出力され、そのトリガ信号が第3双方向サイリスタTR3のゲート信号となる。
【0060】
このような構成の自励ゲート信号生成回路30でも本発明は実施可能であり、本発明による作用効果を得ることが出来る。
【0061】
<第3実施例>
本発明に係る発電装置の第3実施例について、図8〜図10を参照しながら説明する。
【0062】
まず第3実施例の発電装置100の構成について、図8を参照しながら説明する。
図8は、第3実施例の発電装置100の全体構成図である。
第3実施例の発電装置100は、五相交流発電機11で発電した交流電力をコンバータ回路61及び平滑コンデンサC1により直流電力に変換し、その直流電力を負荷Z1へ供給する。このような構成の発電装置100は、さらに第1遮断回路21、自励ゲート信号生成回路31、ゲート信号遮断回路41、第2遮断回路51及び制御装置70を備えている。
【0063】
五相交流発電機11は、界磁に永久磁石を用いた「永久磁石発電機」であり、第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15からなる固定子と、その固定子の中で回転する永久磁石で構成された回転子(図示せず)とを含む。第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15は、回転子の回転方向へ72度ずつ位相をずらして配置され、一端側が出力端子となり他端側が中立点Nに接続される。五相交流発電機11は、エンジン等の駆動力源の回転駆動力が伝達されて回転子が回転することによって、五相交流電力を発電する。
【0064】
第1遮断回路21は、第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15を含む。第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15は、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する公知の「双方向半導体スイッチング回路」である。第1双方向サイリスタTR11は、五相交流発電機11の第1相巻線L11と中立点Nとの接続を切断可能に第1相巻線L11と中立点Nとの間に設けられている。第2双方向サイリスタTR12は、五相交流発電機11の第2相巻線L12と中立点Nとの接続を切断可能に第2相巻線L12と中立点Nとの間に設けられている。第3双方向サイリスタTR13は、五相交流発電機11の第3相巻線L13と中立点Nとの接続を切断可能に第3相巻線L13と中立点Nとの間に設けられている。第4双方向サイリスタTR14は、五相交流発電機11の第4相巻線L14と中立点Nとの接続を切断可能に第4相巻線L14と中立点Nとの間に設けられている。第5双方向サイリスタTR15は、五相交流発電機11の第5相巻線L15と中立点Nとの接続を切断可能に第5相巻線L15と中立点Nとの間に設けられている。第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15の各ゲート端子には、自励ゲート信号生成回路31又は制御装置70からゲート信号が入力される。
【0065】
自励ゲート信号生成回路31は、ダイオードD11〜D20及び抵抗器R11〜R20を含む。ダイオードD11及びダイオードD12のアノード端子は、五相交流発電機11の第5相巻線L15の出力端側に接続されている。ダイオードD13及びダイオードD14のアノード端子は、五相交流発電機11の第4相巻線L14の出力端側に接続されている。ダイオードD15及びダイオードD16のアノード端子は、五相交流発電機11の第3相巻線L13の出力端側に接続されている。ダイオードD17及びダイオードD18のアノード端子は、五相交流発電機11の第2相巻線L12の出力端側に接続されている。ダイオードD19及びダイオードD20のアノード端子は、五相交流発電機11の第1相巻線L11の出力端側に接続されている。抵抗器R11、R13、R15、R17、R19は、同じ抵抗値の抵抗器である。抵抗器R12、R14、R16、R18、R20は、同じ抵抗値の抵抗器である。
【0066】
ダイオードD11及びダイオードD17のカソード端子は、抵抗器R11の一端側に接続されている。抵抗器R11の他端側には抵抗器R12の一端側が接続されており、抵抗器R12の他端側は五相交流発電機11の中立点Nに接続されている。抵抗器R11と抵抗器R12との接続点は、ゲート信号遮断回路41を介して第1双方向サイリスタTR11のゲート端子に接続されている。つまり第2相巻線L12の相電圧と第5相巻線L15の相電圧の論理和を抵抗器R11と抵抗器R12との抵抗比で分圧した電圧が、第1双方向サイリスタTR11のゲート信号となる。
【0067】
ダイオードD13及びダイオードD18のカソード端子は、抵抗器R13の一端側に接続されている。抵抗器R13の他端側には抵抗器R14の一端側が接続されており、抵抗器R14の他端側は五相交流発電機11の中立点Nに接続されている。抵抗器R13と抵抗器R14との接続点は、ゲート信号遮断回路41を介して第3双方向サイリスタTR13のゲート端子に接続されている。つまり第2相巻線L12の相電圧と第4相巻線L14の相電圧の論理和を抵抗器R13と抵抗器R14との抵抗比で分圧した電圧が、第3双方向サイリスタTR13のゲート信号となる。
【0068】
ダイオードD12及びダイオードD15のカソード端子は、抵抗器R15の一端側に接続されている。抵抗器R15の他端側には抵抗器R16の一端側が接続されており、抵抗器R16の他端側は五相交流発電機11の中立点Nに接続されている。抵抗器R15と抵抗器R16との接続点は、ゲート信号遮断回路41を介して第4双方向サイリスタTR14のゲート端子に接続されている。つまり第3相巻線L13の相電圧と第5相巻線L15の相電圧の論理和を抵抗器R15と抵抗器R16との抵抗比で分圧した電圧が、第4双方向サイリスタTR14のゲート信号となる。
【0069】
ダイオードD14及びダイオードD19のカソード端子は、抵抗器R17の一端側に接続されている。抵抗器R17の他端側には抵抗器R18の一端側が接続されており、抵抗器R18の他端側は五相交流発電機11の中立点Nに接続されている。抵抗器R17と抵抗器R18との接続点は、ゲート信号遮断回路41を介して第5双方向サイリスタTR15のゲート端子に接続されている。つまり第1相巻線L11の相電圧と第4相巻線L14の相電圧の論理和を抵抗器R17と抵抗器R18との抵抗比で分圧した電圧が、第5双方向サイリスタTR15のゲート信号となる。
【0070】
ダイオードD16及びダイオードD20のカソード端子は、抵抗器R19の一端側に接続されている。抵抗器R19の他端側には抵抗器R20の一端側が接続されており、抵抗器R20の他端側は五相交流発電機11の中立点Nに接続されている。抵抗器R19と抵抗器R20との接続点は、ゲート信号遮断回路41を介して第2双方向サイリスタTR12のゲート端子に接続されている。つまり第1相巻線L11の相電圧と第3相巻線L13の相電圧の論理和を抵抗器R19と抵抗器R20との抵抗比で分圧した電圧が、第2双方向サイリスタTR12のゲート信号となる。
【0071】
ゲート信号遮断回路41は、自励ゲート信号生成回路31が出力するゲート信号を遮断可能に設けられた五つのスイッチS11〜S15を含む。スイッチS11は、抵抗器R11と抵抗器R12との接続点から第1双方向サイリスタTR11のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。スイッチS12は、抵抗器R13と抵抗器R14との接続点から第2双方向サイリスタTR12のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。スイッチS13は、抵抗器R15と抵抗器R16との接続点から第3双方向サイリスタTR13のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。スイッチS14は、抵抗器R17と抵抗器R18との接続点から第4双方向サイリスタTR14のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。スイッチS15は、抵抗器R19と抵抗器R20との接続点から第5双方向サイリスタTR15のゲート端子へ出力されるゲート信号をON/OFF可能に設けられている。
【0072】
「出力遮断回路」としての第2遮断回路51は、五相交流発電機11からコンバータ回路61への交流電力出力を遮断可能に設けられた五つの遮断器S16〜S20を含む。遮断器S16は、第1相巻線L11からコンバータ回路61への出力を遮断可能に設けられている。遮断器S17は、第2相巻線L12からコンバータ回路61への出力を遮断可能に設けられている。遮断器S18は、第3相巻線L13からコンバータ回路61への出力を遮断可能に設けられている。遮断器S19は、第4相巻線L14からコンバータ回路61への出力を遮断可能に設けられている。遮断器S20は、第5相巻線L15からコンバータ回路61への出力を遮断可能に設けられている。
【0073】
第1実施例と同じ構成の制御装置70は、公知のマイコン制御回路を含み、ダイオードD21〜D25を介して、第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR4及び第5双方向サイリスタTR5のゲート端子の各々に接続されている。制御装置70は、五相交流発電機11を起動するときに、第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR4及び第5双方向サイリスタTR5のゲート信号を出力する。また制御装置70は、ゲート信号遮断回路41に接続されており、スイッチS11〜S15を制御する。さらに制御装置70は、第2遮断回路51に接続されており、遮断器S16〜S20を制御する。さらに制御装置70は、コンバータ回路61に接続されており、コンバータ回路61から出力される直流電力の電圧を制御する。
【0074】
つづいて第3実施例の発電装置100の動作について、図9及び図10のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0075】
図9は、第3実施例の発電装置100の起動時及び正常動作時のタイミングチャートである。図9(a)は、制御装置70が出力する起動ゲート信号を図示したものであり、図9(b)は、自励ゲート信号生成回路31が出力する自励ゲート信号を図示したものであり、図9(c)は、五相交流発電機11の出力電圧を図示したものである。
【0076】
起動前の五相交流発電機11は、第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15がいずれも消弧しているため、第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15は、いずれも中立点Nから切断された状態となっている。したがって起動前の五相交流発電機11は、回転駆動力が伝達されて回転子が回転しても、そのままでは、第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15に電流は流れず、よって発電しない。
【0077】
起動時には、五相交流発電機11の回転子が一定以上の回転速度で回転している状態で、第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15の各ゲート端子へ制御装置70から起動ゲート信号が出力される(図9(a):タイミングT21)。すると第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15が一斉に点弧する。つまり第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15は、全て中立点Nに接続されて電流が流れる状態になる。それによって五相交流発電機11は、回転子の回転によって発電する状態となり、出力端子から五相交流電力が出力される(図9(c))。
尚、図9(c)において、第1相波形P1は第1相巻線L11に励起される交流電圧波形、第2相波形P2は第2相巻線L12に励起される交流電圧波形、第3相波形P3は第3相巻線L13に励起される交流電圧波形、第4相波形P4は第4相巻線L14に励起される交流電圧波形、第5相波形P5は第5相巻線L15に励起される交流電圧波形である。
【0078】
五相交流発電機11の出力端子から五相交流電力が出力されるようになると、それによって自励ゲート信号生成回路31から自励ゲート信号が出力されるようになる(図9(b))。より具体的には、第1相巻線L11に励起される負電圧によって、第2双方向サイリスタTR12及び第5双方向サイリスタTR15のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第1ゲート信号GS1」という。)。第2相巻線L12に励起される負電圧によって、第1双方向サイリスタTR11及び第3双方向サイリスタTR13のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第2ゲート信号GS2」という。)。第3相巻線L13に励起される負電圧によって、第2双方向サイリスタTR12及び第4双方向サイリスタTR14のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第3ゲート信号GS3」という。)。第4相巻線L14に励起される負電圧によって、第3双方向サイリスタTR13及び第5双方向サイリスタTR15のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第4ゲート信号GS4」という。)。第5相巻線L15に励起される負電圧によって、第1双方向サイリスタTR11及び第4双方向サイリスタTR14のゲート端子にゲート信号が出力される(以下、「第5ゲート信号GS5」という。)。また第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15は、トリガ電圧V2以上の負電圧のゲート信号がゲート端子に入力されることによって点弧する。つまりトリガ電圧V2以上の負電圧が有効なゲート信号となる。このトリガ電圧V2は、双方向サイリスタの特性に応じて決定される。
【0079】
第1ゲート信号GS1は、第2相巻線L12に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT24)を含む期間、及び第5相巻線L15に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT25)を含む期間、第2双方向サイリスタTR12及び第5双方向サイリスタTR15のゲート端子にトリガ電圧V2以上の負電圧として出力される。
【0080】
第2ゲート信号GS2は、第1相巻線L11に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT27)を含む期間、及び第3相巻線L13に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT26)を含む期間、第1双方向サイリスタTR11及び第3双方向サイリスタTR13のゲート端子にトリガ電圧V2以上の負電圧として出力される。
【0081】
第3ゲート信号GS3は、第2相巻線L12に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT29)を含む期間、及び第4相巻線L14に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT28)を含む期間、第2双方向サイリスタTR12及び第4双方向サイリスタTR14のゲート端子にトリガ電圧V2以上の負電圧として出力される。
【0082】
第4ゲート信号GS4は、第3相巻線L13に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT31)を含む期間、及び第5相巻線L15に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT30)を含む期間、第3双方向サイリスタTR13及び第5双方向サイリスタTR15のゲート端子にトリガ電圧V2以上の負電圧として出力される。
【0083】
第5ゲート信号GS5は、第1相巻線L11に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT22)を含む期間、及び第4相巻線L14に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT23)を含む期間、第1双方向サイリスタTR11及び第4双方向サイリスタTR14のゲート端子にトリガ電圧V2以上の負電圧として出力される。
【0084】
したがって第1相巻線L11に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT22)では、第5ゲート信号GS5によって、第1双方向サイリスタTR11が点弧される。第4相巻線L14に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT23)では、第5ゲート信号GS5によって、第4双方向サイリスタTR14が点弧される。第2相巻線L12に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT24)では、第1ゲート信号GS1によって、第2双方向サイリスタTR12が点弧される。第5相巻線L15に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT25)では、第1ゲート信号GS1によって、第5双方向サイリスタTR15が点弧される。第3相巻線L13に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT26)では、第2ゲート信号GS2によって、第3双方向サイリスタTR13が点弧される。第1相巻線L11に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT27)では、第2ゲート信号GS2によって、第1双方向サイリスタTR11が点弧される。第4相巻線L14に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT28)では、第3ゲート信号GS3によって、第4双方向サイリスタTR14が点弧される。第2相巻線L12に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT29)では、第3ゲート信号GS3によって、第2双方向サイリスタTR12が点弧される。第5相巻線L15に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミング(タイミングT30)では、第4ゲート信号GS4によって、第5双方向サイリスタTR15が点弧される。第3相巻線L13に励起される交流電圧が負から正に切り替わるタイミング(タイミングT31)では、第4ゲート信号GS4によって、第3双方向サイリスタTR13が点弧される。
【0085】
つまり自励ゲート信号生成回路31からゲート信号が出力されるようになると、そのゲート信号によって、第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15が全て中立点Nに接続された状態が維持されるので、五相交流発電機11が正常に発電している状態が維持される。
【0086】
図10は、第3実施例の発電装置100において相間短絡が生じたときのタイミングチャートである。図10(a)は、自励ゲート信号生成回路31が出力する自励ゲート信号を図示したものであり、図10(b)は、五相交流発電機11の出力電圧を図示したものである。
以下、相間短絡が生じて第1相巻線L11の相電圧が低下したときを例に説明する。
【0087】
相間短絡が生じて第1相巻線L11の相電圧が大きく低下すると(タイミングT32)、第1相巻線L11に励起される負電圧によって生成される第1ゲート信号GS1の電圧がトリガ電圧V2未満に低下する(図10(a))。それによって第2相巻線L12の電圧が0となるタイミングで、第2双方向サイリスタTR12が自己消弧し(タイミングT33)、つづいて第5相巻線L15の電圧が0となるタイミングで、第5双方向サイリスタTR15が自己消弧する(タイミングT34)。そして第2双方向サイリスタTR12及び第5双方向サイリスタTR15が自己消弧することによって、第2相巻線L12及び第5相巻線L15が中立点Nから切断される。
【0088】
また第2相巻線L12が中立点Nから切断されることによって、第2ゲート信号GS2が出力されなくなるため、第3相巻線L13の相電圧が0となるタイミングで第3双方向サイリスタTR13が自己消弧し、第3相巻線L13が中立点Nから切断される(タイミングT35)。つづいて第1相巻線L11の相電圧が0となるタイミングで第1双方向サイリスタTR11が自己消弧し、第1相巻線L11が中立点Nから切断される(タイミングT36)。そして第3相巻線L13が中立点Nから切断されることによって、第3ゲート信号GS3が出力されなくなるため、第4相巻線L14の相電圧が0となるタイミングで第4双方向サイリスタTR14が自己消弧し、第4相巻線L14が中立点Nから切断される(タイミングT37)。この時点で、第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15が全て中立点Nから切断されている状態となる。またそれによって、第1ゲート信号GS1、第2ゲート信号GS2、第3ゲート信号GS3、第4ゲート信号GS4及び第5ゲート信号GS5は全て出力されなくなる。
【0089】
つまり五相交流発電機11の内部で相間短絡が生じて、第1相巻線L11の相電圧が低下したときには、第1双方向サイリスタTR11、第2双方向サイリスタTR12、第3双方向サイリスタTR13、第4双方向サイリスタTR14及び第5双方向サイリスタTR15が連鎖的に自己消弧して非導通状態となり、それによって第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15が全て中立点Nから切断されることになる。それによって五相交流発電機11の内部で相間短絡が生じたときには、第1相巻線L11、第2相巻線L12、第3相巻線L13、第4相巻線L14及び第5相巻線L15に電流が流れなくなるので、回転子が回転している状態であっても、相間短絡による短絡電流を迅速に止めることができる。また五相交流発電機11の回転子が回転している状態であっても、相間短絡による短絡電流を迅速に止めることができるので、従来のように回転子への回転駆動力の伝達を切断するクラッチ機構を設ける必要がない。したがって発電装置100が複雑化及び大型化してしまう虞が生じない。
【0090】
以上説明したように本発明によれば、五相交流発電機11の内部で相間短絡が生じた場合に、その相間短絡に起因した五相交流発電機11の焼損等が生ずる虞が少ない発電装置100を低コストで実現することができる。
【0091】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であること言うまでもない。
【0092】
例えば上記実施例の三相交流発電機10及び五相交流発電機11は、各相巻線が集中巻きで巻かれているのが好ましい。所謂集中巻きは、同一のスロットに一つの相の巻線のみを巻くので、同一のスロットに異なる相の巻線を隣接させて巻く所謂分布巻きと比較して、相間短絡が生じる虞をより低減させることができる。
【0093】
例えば上記実施例の三相交流発電機10及び五相交流発電機11は、相巻線の巻き始めと巻き終わりとが相反する方向へ引き出されているのが好ましい。それによって三相交流発電機10及び五相交流発電機11から引き出された相巻線の巻き始め部分と巻き終わり部分とが接触して短絡する虞を低減させることができる。
【0094】
例えば上記実施例の三相交流発電機10は、第1遮断回路20を内蔵させた構成としてもよいし、上記実施例の五相交流発電機11は、第1遮断回路21を内蔵させた構成としてもよい。このような構成の三相交流発電機10及び五相交流発電機11も本発明の対象となり得る。
【符号の説明】
【0095】
10 三相交流発電機
11 五相交流発電機
20、21 第1遮断回路
30、31 自励ゲート信号生成回路
40、41 ゲート信号遮断回路
50、51 第2遮断回路
60、61 コンバータ回路
70 制御装置
100 発電装置
L1、L11 第1相巻線
L2、L12 第2相巻線
L3、L13 第3相巻線
L4、L14 第4相巻線
L5、L15 第5相巻線
S1〜S3、S11〜S15 スイッチ
S4〜S6、S16〜S20 遮断器
TD1〜TD3 トリガダイオード
TR1、TR11 第1双方向サイリスタ
TR2、TR12 第2双方向サイリスタ
TR3、TR13 第3双方向サイリスタ
TR4、TR14 第4双方向サイリスタ
TR5、TR15 第5双方向サイリスタ
Th1〜Th6 サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が出力端子となり他端側が中立点に接続される相巻線を三つ以上含む永久磁石発電機と、
前記永久磁石発電機の相巻線と中立点との接続を切断可能に各相巻線と中立点との間に各々設けられ、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する双方向半導体スイッチング回路と、
前記永久磁石発電機の相巻線に励起される交流電圧が正から負に切り替わるタイミングを含む期間、及び負から正に切り替わるタイミングを含む期間、当該相巻線に対応する前記双方向半導体スイッチング回路のゲート信号が出力されるように、当該相巻線以外の相巻線に励起される交流電圧から前記双方向半導体スイッチング回路のゲート信号を各々生成する自励ゲート信号生成回路と、
前記永久磁石発電機を起動するときに全ての前記双方向半導体スイッチング回路のゲート信号を出力する起動ゲート信号出力回路と、を備える発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電装置において、前記自励ゲート信号生成回路が出力するゲート信号を遮断可能なゲート信号遮断回路をさらに備える、ことを特徴とした発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電装置において、前記永久磁石発電機の出力を遮断可能な出力遮断回路をさらに備える、ことを特徴とした発電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発電装置において、前記双方向半導体スイッチング回路は双方向サイリスタである、ことを特徴とした発電装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の発電装置において、前記永久磁石発電機は、相巻線が集中巻きで巻かれている、ことを特徴とした発電装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の発電装置において、前記永久磁石発電機は、相巻線の巻き始めと巻き終わりとが相反する方向へ引き出されている、ことを特徴とした発電装置。
【請求項7】
一端側が出力端子となり他端側が中立点に接続される三つ以上の相巻線と、
相巻線と中立点との接続を切断可能に各相巻線と中立点との間に各々設けられ、導通状態では双方向に電流が流れ、ゲート信号が入力された後は電流が流れない状態になるまで導通状態を自己保持する双方向半導体スイッチング回路と、を備える永久磁石発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−253934(P2012−253934A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125377(P2011−125377)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】