説明

発電装置、発電装置の制御方法、電子機器、および移動手段

【課題】 小さな回路規模で高い電圧を発生させることが可能であり、微弱な振動でも発電する発電効率のよい発電装置等を提供する。
【解決手段】 変形部材104と、変形部材に設けられた第1の圧電素子(108、109a、109b)と、第1の圧電素子が発生する交流電流を整流する第1の整流回路120と、第1の圧電素子を含む共振回路を構成するインダクターLと、共振回路に設けられた第1スイッチSW1と、変形部材に設けられ、第1の圧電素子よりも出力電圧が高い第2の圧電素子(110、111a、111b)と、第2の圧電素子が発生する交流電流を整流する第2の整流回路121と、第1の整流回路、又は第2の整流回路からの出力信号に基づいて充電を行う蓄電素子C1と、第1スイッチの制御を行う制御手段112と、蓄電素子の電圧を検出する蓄電電圧検出回路125と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ素子などの圧電材料が外力によって変形したときに発生する電荷を電気エネルギーとして取り出す発電装置、その制御方法、この発電装置を含む電子機器、および移動手段等に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電材料は変形すると、材料内部に電気分極が誘起されて表面に正負の電荷が現れる。このような現象は、いわゆる圧電効果と呼ばれている。圧電材料が有するこのような性質を利用して、片持ち梁を振動させて圧電材料に繰り返し加重を作用させ、圧電材料の表面に生じた電荷を電気として取り出す発電方法が提案されている。
【0003】
例えば、先端に錘を設けると共に圧電材料の薄板を貼り付けた金属製の片持ち梁を振動させ、振動に伴って圧電材料に交互に生じる正負の電荷を取り出すことによって交流電流を発生させる。そして、この交流電流をダイオードによって整流した後、コンデンサーに蓄えておき、電力として取り出す技術が提案されている(特許文献1)。また、圧電素子で正の電荷が発生している間だけ接点が閉じるようにすることで、ダイオードでの電圧損失を発生させずに直流電流が得られるようにした技術も提案されている(特許文献2)。これら技術を用いれば、発電装置を小型化することができるので、例えば小型の電子部品に電池の代わりに組み込むなどの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−107752号公報
【特許文献2】特開2005−312269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている従来の技術では、得られる電圧が、圧電材料の電気分極によって生じる電圧までに限られるという問題があった。このため、ほとんどの場合は、別に昇圧回路が必要となり、発電装置を十分に小型化することが難しいという問題があった。
【0006】
また、発電装置で高い電圧を発生させる場合でも、一般に昇圧のための回路はスイッチによる制御を要する。しかし、スイッチをON又はOFF状態に切り換えるには、発電装置内に例えば蓄電素子等を用意し、ある程度の電荷を蓄えることが必要である。そのため、発電装置は、動作開始時等における放電状態の蓄電素子にも、スイッチをON又はOFFさせるための電荷を確実に蓄える機能を備えることが好ましい。さもないと、スイッチをON又はOFFさせるために補助電源(電池等)を要することとなり、装置全体のサイズが大きくなり、発電装置としての意義が損なわれるからである。
【0007】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、圧電材料の圧電効果を利用した発電装置であって、小さな回路規模で高い電圧を発生させることが可能であり、微弱な振動でも発電する発電効率のよい発電装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、発電装置であって、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子が発生する交流電流を整流する第1の整流回路と、前記第1の圧電素子を含む共振回路を構成するインダクターと、前記共振回路に設けられた第1スイッチと、前記変形部材に設けられ、前記第1の圧電素子よりも出力電圧が高い第2の圧電素子と、前記第2の圧電素子が発生する交流電流を整流する第2の整流回路と、前記第1の整流回路、又は前記第2の整流回路からの出力信号に基づいて充電を行う蓄電素子と、前記第1スイッチの制御を行う制御手段と、前記蓄電素子の電圧を検出する蓄電電圧検出回路と、を備える。
【0009】
(2)この発電装置において、前記蓄電電圧検出回路が検出した蓄電素子の電圧に基づき、前記第1スイッチを駆動できないと判断した場合に、前記蓄電素子に第2の圧電素子の出力電圧に基づいて充電を行わせてもよい。
【0010】
(3)この発電装置において、前記第2の圧電素子と前記第2の整流回路との間に設けられ、前記第2の圧電素子と前記第2の整流回路との接続状態を切り換える切換部を含み、前記制御手段は、前記蓄電電圧検出回路が検出した蓄電素子の電圧に基づき、前記切換部を非導通状態とし、前記第2の圧電素子の電圧を検出して、前記第1スイッチを所定期間導通状態としてもよい。
【0011】
これらの発明は、第1の圧電素子および第2の圧電素子が変形部材に設けられているので、変形部材が変形することにより、第1の圧電素子および第2の圧電素子も変形する。その結果、これら圧電素子には、圧電効果によって正負の電荷が発生する。また、電荷の発生量は、圧電素子の変形量が大きくなるほど多くなる。また、第1の圧電素子はインダクターと共に共振回路を構成しており、その共振回路にはスイッチ(第1スイッチ)が設けられている。そして、制御手段が第1スイッチを適切なタイミングで導通状態とすることで、第1の圧電素子内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができ、昇圧回路を別途用意する必要のない小さな回路規模で、高い電圧を得ることが可能になる。
【0012】
ここで、第1スイッチを導通状態とする適切なタイミングは、第2の圧電素子の電圧を検出することで得てもよい。このとき、効率的な発電が可能になる。まず、第1スイッチの導通を切断した状態で変形部材の変形を開始して、変形量が極値となったとき(すなわち変形方向が切り換わるとき)に、第1スイッチを導通状態とする。第1の圧電素子(および第2の圧電素子)は変形部材と共に変形し、変形量が大きくなるほど多くの電荷を発生させるから、第1の圧電素子(および第2の圧電素子)で発生した電荷が最も多くなった時に、第1の圧電素子がインダクターに接続されて共振回路を形成する。すると、第1の圧電素子に発生していた電荷がインダクターに流れ込む。そして、第1の圧電素子およびインダクターは共振回路を構成しているから、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、第1の圧電素子の反対側の端子に流れ込む。この期間(すなわち、第1の圧電素子の一方の端子から流れ出した電荷が、インダクターを介して反対側の端子から再び第1の圧電素子内に流れ込むまでの期間)は、第1の圧電素子およびインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。従って、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときに第1スイッチを接続して共振回路を形成し、その後、共振周期の半分の時間が経過したときに第1スイッチを切断すれば、インダクターを接続する前に第1の圧電素子内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。そして、その状態から、今度は逆方向に変形部材を変形させれば、第1の圧電素子が逆方向に変形するため、正負の電荷の配置が逆転した状態から更に圧電効果によって発生した新たな電荷が積み増されるようにして第1の圧電素子内に電荷が蓄積される。また、第1の圧電素子内に電荷が蓄積されるに従って発生する電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、第1の圧電素子を構成する圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。更に、こうして第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積するためには、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときに第1スイッチを接続して共振回路を形成することが重要となる。ここで、変形部材には第1の圧電素子および第2の圧電素子が設けられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。そして、第2の圧電素子も変形量が大きくなるほど高い電圧を発生させるから、第2の圧電素子の変形方向が切り換わるところでは、第2の圧電素子の発生する電圧が極値である。このことから、第2の圧電素子に生じた電圧を検出して、その電圧が極値となった時点から所定期間だけ第1スイッチを導通状態とすれば、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。
【0013】
ここで、これらの発明に係る発電装置は蓄電素子を備えている。そのため、蓄電素子が充電された後には蓄電素子を電源として第1スイッチを駆動することが可能になる。しかし、例えば発電装置の起動時において蓄電素子が放電している状態では、第1スイッチを駆動することはできない。さらに、外部から与えられる振動が微弱であって第1の圧電素子の変形量が大きくない場合には、第1の圧電素子の出力電圧が蓄電素子に充電するのに必要な閾値電圧に達しない可能性がある。このような場合、補助電源等がなければ、第1スイッチを切り換えて行う効率的な発電を開始できない。しかし、補助電源を発電装置に含めると装置全体のサイズが大きくなるという問題が生じ、発電装置としての意義も損なわれることになる。
【0014】
これらの発明に係る発電装置は、動作開始時等においても確実に蓄電素子に充電するために、第2の圧電素子の出力電圧を第1の圧電素子の出力電圧よりも高くしている。このとき、第2の圧電素子と第2の整流回路との接続状態を切り換える切換部を備えていてもよい。切換部は、起動時に第2の圧電素子と第2の整流回路とが接続されているようにノーマリーオンであるスイッチを含むことが好ましい。蓄電素子によって第1スイッチを駆動できない場合には、出力電圧の高い第2の圧電素子によって蓄電素子が充電される。このとき、第2の圧電素子は発電用圧電素子として使用されることになる。これらの発明に係る発電装置は、第1の圧電素子の出力電圧が蓄電素子に充電するのに必要な閾値電圧に達しない場合であっても、第2の圧電素子によって確実に蓄電素子に充電することができる。そして、充電が進み、蓄電素子によって第1スイッチを駆動できるようになれば、第2の圧電素子に生じた電圧を検出して、その電圧が極値となった時点から所定期間だけ第1スイッチを導通状態とし、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積する。この通常動作時においては、切換部は非導通状態(第2の圧電素子と第2の整流回路とが接続されていない状態)であり、第2の圧電素子は第1スイッチの導通タイミングを与える制御用圧電素子として使用される。このように、これらの発明に係る発電装置は、微弱な振動であっても確実に効率的な発電を行わせることができる。
【0015】
(4)この発電装置において、前記第2の圧電素子の静電容量は、前記第1の圧電素子の静電容量よりも小さくてもよい。
【0016】
(5)この発電装置において、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の異なる面に設けられていてもよい。
【0017】
(6)この発電装置において、第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に設けられていてもよい。
【0018】
(7)この発電装置において、前記変形部材は、変形しない固定端を含んで構成され、前記第2の圧電素子は、前記第1の圧電素子より前記固定端に近い箇所に設けられていてもよい。
【0019】
これらの発明によれば、第2の圧電素子の静電容量は、第1の圧電素子の静電容量よりも小さいため、第2の圧電素子の出力電圧を第1の圧電素子の出力電圧よりも高くすることができる。静電容量を調整するのに、第2の圧電素子の電極の面積を、前記第1の圧電素子の電極の面積よりも小さくしてもよい。面積が減ることで圧電素子の容量成分が減るため、第2の圧電素子の出力電圧を高くすることができる。
【0020】
また、第2の圧電素子の1対の電極に挟まれた圧電部材の厚さを第1の圧電素子の1対の電極に挟まれた圧電部材よりも厚くしてもよい。電極の間隔が広がることで圧電素子の容量成分が減るため、第2の圧電素子の出力電圧を高くすることができる。
【0021】
このとき、第1の圧電素子および第2の圧電素子を、変形部材の同じ面に設けたとすると、第2の圧電素子が存在する分だけ第1の圧電素子の設置面積が狭くなる。従って、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを、変形部材の異なる面に設けることとしておけば、第1の圧電素子の設置面積を大きくすることができるので、通常動作時において高い発電能力を確保することができる。
【0022】
一方、第1の圧電素子および第2の圧電素子が、変形部材の同じ面に設けられていれば、第1の圧電素子および第2の圧電素子を一度に(同じ工程で)変形部材に設けることができる。このため、生産性良く発電装置を製造することが可能となる。
【0023】
第2の圧電素子が、変形部材の同じ面に設けられている場合、第2の圧電素子は、第1の圧電素子よりも変形部材の固定端に近い箇所に設けられていてもよい。変形部材の固定端に近い部分に設置された場合、圧電素子の変形が大きいため、出力電圧を高くすることができる。
【0024】
(8)本発明は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子が発生する交流電流を整流する第1の整流回路と、前記第1の圧電素子を含む共振回路を構成するインダクターと、前記共振回路に設けられた第1スイッチと、前記変形部材に設けられ、前記第1の圧電素子よりも出力電圧が高い第2の圧電素子と、前記第2の圧電素子が発生する交流電流を整流する第2の整流回路と、前記第1の整流回路、又は前記第2の整流回路からの出力信号に基づいて充電を行う蓄電素子と、前記蓄電素子の電圧を検出する蓄電電圧検出回路と、を備える発電装置の制御方法であって、前記蓄電電圧検出回路からの出力信号に基づいて前記蓄電素子の電圧を所定の閾値と比較するステップと、前記蓄電素子によって前記第1スイッチを駆動できないと判断した場合に、前記蓄電素子に第2の圧電素子の出力電圧に基づいて充電を行わせるステップと、を含む。
【0025】
本発明によれば、蓄電素子によって前記第1スイッチを駆動できないと判断した場合に、出力電圧がより高い第2の圧電素子によって蓄電素子を充電させる。なお、発電装置において、第2の圧電素子と蓄電素子との間に、ノーマリーオンであるスイッチを含む切換部が含まれていてもよい。
【0026】
このため、第1の圧電素子の出力電圧が低い場合でも、確実に蓄電素子を充電させることができる。つまり、小さな回路規模で高い電圧を発生させることができる圧電効果を利用した発電装置において、上記の制御を行うことで、補助電源等は不要であり、微弱な振動であっても確実に効率的な発電を行わせることができる。
【0027】
(9)本発明は、前記のいずれかに記載の発電装置を含む電子機器である。
【0028】
(10)本発明は、前記のいずれかに記載の発電装置を含む移動手段である。
【0029】
これらの発明は、前記の発電装置を電池の代わりに組み込んだ例えばリモコン等の小型電子機器、又は前記の発電装置を搭載した例えば車両や電車等の移動手段である。この電子機器は、例えば持ち運ばれるとき、又は使用されるときに、振動が伴うことで発電が可能である。この電子機器では、電池交換といった作業も不要である。また、この移動手段(例えば車両や電車等)は、その移動に伴う振動により発電し、例えば移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図2】本実施例の発電装置の動作を示した説明図である。
【図3】本実施例の発電装置の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。
【図4】本実施例の発電装置の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。
【図5】制御用の圧電素子の電圧を検出することによってスイッチを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。
【図6】第2の圧電素子による蓄電素子の充電の様子を示す図である。
【図7】スイッチのON/OFFを切り換える制御処理を示したフローチャートである。
【図8】第1スイッチのON/OFFを切り換える第1スイッチ制御処理を示したフローチャートである。
【図9】第1、第2の圧電素子が梁の別の面に設けられる場合の設置例を示した説明図である。
【図10】第1、第2の圧電素子が梁の同じ面に設けられる場合の設置例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.発電装置の構造:
B.発電装置の動作(通常動作モード):
C.発電装置の動作原理(通常動作モード):
D.スイッチの切換タイミング:
D−1.第1スイッチSW1(通常動作モード):
D−2.動作モードの切換(準備動作モードから通常動作モードへ):
E.圧電素子の設置例:
F.その他:
【0032】
A.発電装置の構造 :
図1は、本実施例の発電装置100の構造を示した説明図である。図1(a)には、発電装置100の機械的な構造が示されており、図1(b)には電気的な構造が示されている。本実施例の発電装置100の機械的な構造は、先端に錘106が設けられた梁104が、基端側で支持端102に固定された片持ち梁構造となっており、支持端102は発電装置100内に固定されるのが望ましい。また、梁104の表面には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料によって形成された圧電部材108および圧電部材110が取り付けられており、圧電部材108の表面には、表側と裏側とに、金属薄膜によって形成された第1電極109a、第2電極109bがそれぞれ設けられている。圧電部材108、第1電極109a、および第2電極109bで圧電素子(以下、第1の圧電素子)を構成している。また、圧電部材110についても同様に、金属薄膜によって形成された第1電極111a、第2電極111bが設けられている。圧電部材110、第1電極111a、および第2電極111bで圧電素子(以下、第2の圧電素子)を構成している。
【0033】
図1(a)に示す例では、圧電部材110の長さ(梁104の長手方向)は、圧電部材108に比べて短い。長さの調整により、第2の圧電素子の容量成分を第1の圧電素子よりも減らして、第2の圧電素子の出力電圧の振幅が第1の圧電素子よりも大きくなるようにしている。なお、後述するように長さの調整以外の手法でも、第2の圧電素子の出力電圧の振幅を大きくすることが可能である。なお、図1(a)に示した例では、梁104の上面側に圧電部材108が設けられ、下面側に圧電部材110が設けられているが、これらの圧電部材を設ける面が互いに逆であってもよい。また、圧電部材108および圧電部材110は梁104の変形によって変形するから、梁104が本発明の「変形部材」に相当する。
【0034】
梁104は、基端側が支持端102に固定されており、先端側には錘106が設けられているので、振動などが加わると、図中に白抜きの矢印で示したように、梁104の先端が大きく振動する。その結果、梁104の表面に取り付けられた圧電部材108および圧電部材110には、圧縮力および引張力が交互に作用する。圧電部材108、圧電部材110のそれぞれは圧電効果によって正負の電荷を発生し、圧電部材108の電荷は第1電極109aおよび第2電極109bに、圧電部材110の電荷は第1電極111aおよび第2電極111bに現れる。また、錘106は必須ではないが、梁104の先端側と基端側とで重量のバランスが非均衡であることが望ましい。なぜなら、重量のバランスが非均衡であることで、たとえば、1つの振動により梁104の変位が反復しやすくなるためである。
【0035】
図1(b)には、本実施例の発電装置100の回路図が例示されている。圧電部材108は、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサーCgとして表すことができる。同様に圧電部材110も、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサーCsとして表すことができる。このうち圧電部材108に対しては、並列にインダクターLが接続されて、圧電部材108の容量成分(コンデンサーCg)と共に電気的な共振回路を形成している。そして、この共振回路をON/OFFするための第1スイッチSW1が、共振回路内に(インダクターLに対して直列に)設けられている。第1スイッチSW1のON/OFFは、制御回路112(制御手段に相当)によって制御されている。ここで、本実施例の制御回路112は電圧検出回路124、スイッチ制御回路126で構成される。そして、スイッチ制御回路126が第1スイッチSW1のON/OFFを制御する。それぞれの回路の詳細については後述する。
【0036】
圧電部材108に設けられた第1電極109aおよび第2電極109bは、4つのダイオードD1〜D4から構成される第1の全波整流回路120(第1の整流回路に対応)に接続されている。更に、第1の全波整流回路120には、電気負荷を駆動するために、整流後の電流を蓄えておくコンデンサー(蓄電素子C1)が接続されている。
【0037】
また、圧電部材110に設けられた第1電極111aおよび第2電極111bは、それぞれ第2スイッチSW2、第3スイッチSW3を経由して、4つのダイオードD5〜D8から構成される第2の全波整流回路121(第2の整流回路に対応)に接続されている。第2の全波整流回路121は、第1の全波整流回路120と並列して、蓄電素子C1と接続されている。第2スイッチSW2、および第3スイッチSW3は、第2の圧電素子と第2の全波整流回路121との接続を制御する切換部113を構成する。
【0038】
ここで、蓄電電圧検出回路125は、蓄電素子C1の電圧を検出する。そして、蓄電素子C1の電圧が所定の閾値Vth以上であれば、蓄電素子C1を電源として第1スイッチSW1を駆動できる状態(以下、通常動作モード)であると判断する。蓄電電圧検出回路125は、蓄電素子C1の電圧が閾値Vth未満であれば、蓄電素子C1を電源として第1スイッチSW1を駆動できない状態(以下、準備動作モード)であると判断する。そして、通常動作モード又は準備動作モードに応じた信号をスイッチ制御回路126に出力する。なお、蓄電電圧検出回路125は、閾値Vthとの比較器(コンパレーター)によって通常動作モード又は準備動作モードに応じた信号(ハイレベル又はローレベル)を出力してもよい。
【0039】
スイッチ制御回路126は、蓄電電圧検出回路125からの動作モードを表す信号に応じて、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3のON/OFFを制御する。準備動作モードの場合には、第1スイッチSW1のON/OFFはできない。ここで、本実施例では、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3はノーマリーオンであるとする。このとき、第2の圧電素子は発電用の圧電素子として機能し、第2の圧電素子の出力電圧に基づいて蓄電素子C1の充電が行われる。一方、通常動作モードの場合、スイッチ制御回路126は第1スイッチSW1を所定期間導通状態(ON)にする制御を行う。このとき、スイッチ制御回路126は、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3を非導通状態(OFF)にする。
【0040】
通常動作モードにおいて、第2の圧電素子は、第1スイッチSW1を導通状態にするタイミングを与える制御用の圧電素子として機能する。電圧検出回路124は、第2の圧電素子の出力電圧のピーク(極値)を求めて、そのタイミングでスイッチ制御回路126への出力信号を変化させる。
【0041】
以上のように、通常動作モードでは第1の圧電素子を「発電用の圧電素子」、第2の圧電素子を「制御用の圧電素子」として機能させ、準備動作モードでは、第2の圧電素子を「発電用の圧電素子」として機能させる。また、第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3も動作モードに応じてON/OFFを適切に切り換える。これらの制御により、本実施例の発電装置は、小さな回路規模で高い電圧を発生させる(通常動作モード)ことが可能で、かつ、補助電源等も不要になる(準備動作モード)。
【0042】
以下に、通常動作モードにおける動作を説明し、その後に準備動作モードおよび動作モードの切換のタイミングについて説明する。
【0043】
B.発電装置の動作(通常動作モード) :
図2は、本実施例の発電装置100の通常動作モードにおける動作を示した説明図である。図2(a)には、梁104の振動に伴って、梁104の先端の変位が変化する様子が示されている。なお、プラスの変位(u)は、梁104が上向きに反った状態(梁104の上面側が凹となった状態)を表しており、マイナスの変位(−u)は、梁104が下向きに反った状態(梁104の下面側が凹となった状態)を表している。また、図2(b)には、梁104の変形に伴って、圧電部材108が発生する電流の様子と、その結果として圧電部材108の内部に生じる起電力とが示されている。なお、図2(b)では、圧電部材108に電荷が発生する様子は、単位時間あたりに発生する電荷量(すなわち、電流Ipzt )として表され、圧電部材108に生じる起電力は、第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電位差Vpzt として表されている。
【0044】
なお、図1を用いて前述したように、梁104には圧電部材110も設けられており、梁104が変形すると、圧電部材110も圧電部材108と同様に変形する。従って、圧電部材110の内部にも、圧電部材108と全く同様に、図2(b)に示す電流Ipzt および電位差Vpzt が発生する。
【0045】
図2(a)および図2(b)に示されるように、梁104の変位が増加している間は、圧電部材108は正方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipzt がプラス値)、これに伴って第1電極109aおよび第2電極109bの電位差Vpzt は正方向へ増加する。正方向の電位差Vpzt が、蓄電素子C1の端子間電圧VC1と第1の全波整流回路120を構成しているダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍との和、すなわち、VC1+2Vfよりも大きくなれば、それ以降に発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。また、梁104の変位が減少している間は、圧電部材108は負方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipzt がマイナス値)、これに伴って第1電極109aおよび第2電極109bの電位差Vpzt は負方向へ増加する。負方向の電位差Vpzt が、VC1と第1の全波整流回路120の2Vfの和よりも大きくなれば、発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。すなわち、図1の第1スイッチSW1をOFFにしたままでも、図2(b)中に斜線を付して示した部分については、蓄電素子C1に電荷を蓄えることができる。
【0046】
本実施例の発電装置100では、図2(c)に示すタイミングで、第1スイッチSW1をONにする。すると、図2(d)に示すように、圧電部材108を含む圧電素子の端子間(以下、単に圧電部材108の端子間と表す)の電圧波形が、第1スイッチSW1をONにしたときにシフトしたかのような現象が発生する。例えば、図2(d)中に「B」と表示した期間Bでは、圧電部材108の起電力に対応する細い破線で示した電圧波形Vpzt がマイナス方向にシフトしたような、太い破線で示した電圧波形が圧電部材108の端子間に現れる。このような現象が発生する理由については後述する。また、図2(d)中に「C」と表示した期間Cでは、圧電部材108の起電力に対応する電圧波形Vpzt がプラス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。以降の期間D、期間E、期間Fなどについても同様に、圧電部材108の起電力に対応する電圧波形Vpzt がプラス方向あるいはマイナス方向にシフトし、太い破線の電圧波形が現れる。そして、シフトした電圧波形が、VC1と2Vfとの和を超えた部分(図2(d)中に斜線を付して示した部分)では、圧電部材108で発生した電荷を蓄電素子C1に蓄えておくことができる。なお、圧電部材108から蓄電素子C1に電荷が流れる結果、圧電部材108の端子間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。言い換えると、圧電部材108の端子間の電圧が、VC1と2Vfとの和の電圧に保持される。その結果、第1電極109aおよび第2電極109bの間の電圧波形は、図2(d)に太い実線で示した波形となる。
【0047】
図2(b)に示した第1スイッチSW1をOFFにしたままの場合と、図2(d)に示したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングで第1スイッチSW1をONにした場合とを比較すれば明らかなように、本実施例の発電装置100では、適切なタイミングで第1スイッチSW1をONにすることで、効率よく、蓄電素子C1に電荷を蓄えることが可能となる。そこで、本実施例の発電装置100は、第1スイッチSW1を適切なタイミングでONにするために、制御用の圧電部材110を設けておき、圧電部材110の電圧を検出して第1スイッチSW1を制御している。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0048】
また、蓄電素子C1に電荷が蓄えられて、蓄電素子C1の端子間電圧が増加すると、それに従って電圧波形のシフト量も大きくなる。例えば、図2(d)中の期間B(蓄電素子C1に電荷が蓄えられていない状態)と、図2(d)中の期間H(蓄電素子C1に少し電荷が蓄えられた状態)とを比較すると、期間Hの方が電圧波形のシフト量が大きくなっている。同様に、図2(d)中の期間Cと期間Iとを比較すると、蓄電素子C1に蓄えられた電荷が増えている期間Iの方が、電圧波形のシフト量が大きくなっている。このような現象が発生する理由については後述するが、この結果、本実施例の発電装置100では、圧電部材108を変形させたことによって、第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電圧Vpzt 以上の電圧を、蓄電素子C1に蓄えることも可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0049】
C.発電装置の動作原理(通常動作モード) :
図3は、本実施例の発電装置100の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。また、図4は、本実施例の発電装置100の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。図3および図4では、圧電部材108の変形に合わせて第1スイッチSW1をONにしたときのCg(圧電部材108のコンデンサー)内での電荷の動きが、概念的に示されている。図3(a)は、圧電部材108(正確には梁104)が上向きに(上面側が凹となるように)変形した状態を表している。圧電部材108が上向きに変形すると、電流源からは正方向の電流が流れ、Cg(圧電部材108のコンデンサー)に電荷が蓄積され、Vgen は正方向の電圧が発生する。電圧値は、圧電部材108の変形量が大きくなるほど増加する。そして、圧電部材108の変形量が極値となったタイミング(電荷量が極値となったタイミング(図3(b)参照))で、第1スイッチSW1をONにする。
【0050】
図3(c)には、第1スイッチSW1をONにした直後の状態が示されている。Cg(圧電部材108のコンデンサー)には電荷が蓄えられているから、この電荷がインダクターLに流れようとする。インダクターLに電流が流れると磁束が生じる(磁束が増加する)が、インダクターLには、自らを貫く磁束の変化を妨げる方向に逆起電力が生じる性質(自己誘導作用)がある。第1スイッチSW1をONにしたときは、電荷が流れることによって磁束が増加しようとするから、この磁束の増加を妨げる方向(換言すれば、電荷の流れを妨げる方向)に逆起電力が発生する。また、逆起電力の大きさは、磁束の変化速度(単位時間あたりの変化量)に比例する。図3(c)には、このようにしてインダクターLに生じる逆起電力が、斜線を付した矢印によって表されている。このような逆起電力が発生するため、第1スイッチSW1をONにしても、圧電部材108の電荷は少しずつしか流れ出さない。すなわち、インダクターLを流れる電流は少しずつしか増加しない。
【0051】
その後、インダクターLを流れる電流がピークになると、磁束の変化速度が「0」となるので、図3(d)に示したように逆起電力が「0」となる。そして、今度は電流が減少し始める。すると、インダクターLを貫く磁束が減少するので、インダクターLには、この磁束の減少を妨げる方向(電流を流そうとする方向)の起電力が発生する(図3(e)参照)。その結果、この起電力によってCg(圧電部材108のコンデンサー)から電荷を引き抜きながら、インダクターLを電流が流れ続ける。そして、電荷の移動の途中で損失が発生しなければ、圧電部材108の変形によって生じた全ての電荷が移動して、ちょうど正負の電荷が置き換わったような状態(すなわち、圧電部材108の下面側に正電荷が分布し、上面側に負電荷が分布した状態)となる。図3(f)には、圧電部材108の変形によって生じた正負の電荷が全て移動した状態が表されている。
【0052】
仮に、このまま第1スイッチSW1をONにしておくと、今度は上述した内容と逆の現象が生じる。すなわち、圧電部材108の下面側の正電荷がインダクターLに流れようとして、このときインダクターLには、電荷の流れを妨げる方向の逆起電力が発生する。その後、インダクターLを流れる電流がピークに達した後、減少に転じると、今度は電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)の起電力がインダクターLに発生する。その結果、圧電部材108の下面側にあった全ての正電荷が上面側に移動した状態(図3(b)に示した状態)となる。こうして圧電部材108の上面側に戻った正電荷は、再び、図3(b)〜図3(f)を用いて前述したようにして、下面側に移動する。
【0053】
このように、Cg(圧電部材108のコンデンサー)に電荷が蓄えられた状態で第1スイッチSW1をONにした後、その状態を保っておくと、圧電部材108とインダクターLとの間で電流の向きが交互に反転する一種の共振現象が発生する。そして、この共振現象の周期は、いわゆるLC共振回路の共振周期Tとなるから、Cg(圧電部材108のコンデンサー)の大きさ(キャパシタンス)をC、インダクターLの誘導成分の大きさ(インダクタンス)をLとすると、T=2π(LC)0.5によって与えられる。従って、第1スイッチSW1をONにした直後(図3(c)に示した状態)から、図3(f)に示した状態となるまでの時間は、T/2となる。
【0054】
そこで、第1スイッチSW1をONにしてからT/2が経過した時点で、図4(a)に示すように第1スイッチSW1をOFFにする。そしてこの状態から、圧電部材108(正確には梁104)を今度は下向きに(下面側が凹となるように)変形させる。前述した図3(a)では、圧電部材108を上向きに変形させたが、図4(a)では下向きに変形させているので、電流源から負方向の電流が流れ、Vgen が負方向へ大きくなるようにCgに電荷が蓄積する。また、図3(a)〜図3(f)を用いて前述したように、圧電部材108(正確には梁104)を下向きに変形させる前の段階で、圧電部材108の下面側には正電荷が分布し、上面側には負電荷が分布しているから、これらの電荷に加えて、下面側には新たな正電荷が蓄積され、上面側には新たな負電荷が蓄積されることになる。図4(b)には、第1スイッチSW1をOFFにした状態で圧電部材108(正確には梁104)を変形させることによって、圧電部材108に新たな電荷が蓄積された状態が示されている。
【0055】
そして、圧電部材108の変形量が極値となったタイミング(電荷量が極値となったタイミング)で第1スイッチSW1をONにすると、圧電部材108の下面側に蓄積された正電荷がインダクターLに流れようとする。このときインダクターLには逆起電力が発生するので(図4(c)参照)、電流は少しずつ流れ始めるが、やがてピークに達して、その後は減少に転じる。すると、インダクターLには、電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)に起電力が発生し(図4(e)参照)、この起電力によって電流が流れ続けて、最終的には、圧電部材108の下面側に分布していた全ての正電荷が上面側に移動し、上面側に分布していた全ての負電荷が下面側に移動した状態となる(図4(f)参照)。また、下面側の全ての正電荷が上面側に移動し、上面側の全ての負電荷が下面側に移動する時間は、LC共振回路の半周期に相当する時間T/2となる。そこで、第1スイッチSW1をONにした後、時間T/2が経過したら第1スイッチSW1をOFFにして、今度は圧電部材108(正確には梁104)を上向きに(上面側が凹となるように)変形させれば、圧電部材108内に更に正負の電荷を蓄積することができる。
【0056】
以上に説明したように本実施例の発電装置100では、圧電部材108を変形させて電荷を発生させた後、圧電部材108をインダクターLに接続して、共振周期の半分の周期だけ共振回路を形成することで、圧電部材108内での正負の電荷の分布を反転させる。その後、圧電部材108を今度は逆方向に変形させて新たな電荷を発生させる。圧電部材108内での正負の電荷の分布は反転されているから、新たに発生させた電荷は圧電部材108に蓄積されることになる。その後、再び、共振周期の半分の周期だけ圧電部材108をインダクターLに接続して、圧電部材108内での正負の電荷の分布を反転させた後、圧電部材108を逆方向に変形させる。このような動作を繰り返すことで、圧電部材108を繰り返し変形させる度に、圧電部材108に蓄積された電荷を増加させることができる。
【0057】
なお、LC共振回路の共振により、少なくとも、VgenがスイッチSWをONにする時の極性と反対の極性となった時にスイッチSWをOFFすれば、Vgenが昇圧していく。前述の説明(および以下の説明)では便宜上“T/2(共振周期の半分)”としているが、これに限定されるものではなく、LC共振回路の共振周期Tに対して、スイッチSWをONする所定期間を、少なくとも、(n+1/4)Tより長く(n+3/4)Tよりも短い時間(nは0以上の任意の整数)に設定すれば、Vgenを効率よく昇圧させることができる。
【0058】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、第1スイッチSW1をONにする度に圧電部材108の端子間の電圧波形がシフトする現象が生じる。すなわち、例えば図2(d)中に示した期間Aでは、圧電部材108(正確には梁104)の変形に従って、第1電極109aおよび第2電極109bの間に電圧が発生するが、第1電極109aおよび第2電極109bは第1の全波整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は、第1の全波整流回路120に接続された蓄電素子C1に流れ込む。その結果、梁104の変形量が極値となった時点で第1スイッチSW1をONにすると、その時に圧電部材108内に残っていた正負の電荷がインダクターLを介して移動して、圧電部材108内での正負の電荷の配置が入れ代わる。なお、図3および図4を用いて前述したメカニズムから明らかなように、第1スイッチSW1をONにしておく期間は、圧電部材108のコンデンサーと、インダクターLとによって構成される共振回路の共振周期の半分の時間となる。
【0059】
そして、正負の電荷の配置が入れ代わった状態から梁104を逆方向に変形させると、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの間には、圧電効果による電圧波形が現れる。すなわち、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの極性が入れ代わった状態から、圧電部材108に変形による電圧変化が発生することになる。その結果、図2(d)中に示した期間Bでは、梁104の変形によって圧電部材108に生じる電圧波形をシフトさせたような、電圧波形が現れることになる。もっとも、前述したように、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は蓄電素子C1に流れ込むので、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その後、共振周期の半分の時間だけ第1スイッチSW1をONにすると、圧電部材108に残っていた正負の電荷の配置が入れ代わる。そして、その状態から梁104が変形することによって、圧電部材108には圧電効果による電圧波形が現れる。このため、図2(d)中に示した期間Cにおいても、梁104の変形による電圧波形をシフトさせたような電圧波形が現れることになる。
【0060】
また、図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、梁104が変形を繰り返しているうちに、電圧波形のシフト量が次第に大きくなるという現象も発生する。このため、圧電部材108の圧電効果によって第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電位差よりも高い電圧を、蓄電素子C1に蓄えることができるという大きな効果を得ることができる。このような現象は、次のようなメカニズムによって生じる。
【0061】
先ず、図2(d)中の期間Aあるいは期間Bに示したように、蓄電素子C1が充電されていない場合は、圧電部材108の端子間で発生する電圧が、第1の全波整流回路120の2Vfを超えると、圧電部材108から蓄電素子C1に電荷が流れ込むので、圧電部材108の端子間に現れる電圧は、2Vfでクリップされている。しかし、こうして蓄電素子C1に電荷を蓄えるに従って蓄電素子C1の端子間の電圧が増加していく。すると、それ以降は、蓄電素子C1の端子間電圧がVC1と2Vfとの和よりも高い電圧になって始めて、圧電部材108から電荷が流れ込むようになる。このため、圧電部材108の端子間の電圧がクリップされる値が、蓄電素子C1に電荷が蓄えられるに従って次第に上昇していく。
【0062】
加えて、図3および図4を用いて前述したように、圧電部材108から電荷を流出させない限り、圧電部材108(正確には梁104)を変形させる度に、圧電部材108内の電荷は増加し、圧電部材108の端子間の電圧は大きくなる。このため、本実施例の発電装置100によれば、特別な昇圧回路を設けなくても、電気負荷の駆動に必要な電圧まで自然に昇圧させた状態で、発電することが可能となる。
【0063】
D.スイッチの切換タイミング :
D−1.第1スイッチSW1(通常動作モード) :
以上に説明したように、本実施例の発電装置100では、圧電部材108(正確には梁104)に繰り返し変形を加えて、変形方向が切り換わるときに、共振周期の半分の時間だけ圧電部材108をインダクターLに接続することで、効率が良く、加えて昇圧回路が不要なために容易に小型化することができるという優れた特徴を得ることができる。もっとも、梁104の変形方向が切り換わるときに第1スイッチSW1をONにすることは、それほど容易なことではない。例えば、梁104の変形方向が切り換わるときは、梁104の変位の大きさが最大と考えれば、機械的な接点を用いて、梁104が最大変位となったときにONとなるように構成することも可能である。しかし、接点の調整がずれると効率が大きく低下することになる。そこで、本実施例の発電装置100では、発電用の圧電部材108だけでなく、制御用の圧電部材110も設けておき、圧電部材110で発生する電圧を検出することで、第1スイッチSW1を制御している。
【0064】
図5は、制御用の圧電部材110で発生する電圧を検出することによって、第1スイッチSW1を適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図5(a)には、梁104の変位が示されている。また、図5(b)には、梁104の振動に伴って、圧電部材110に生じる起電力Vpzt が変化する様子が示されている。
【0065】
図3および図4を用いて前述したように、梁104の変位が極値に達したタイミングで第1スイッチSW1をONにした場合に、最も効率よく発電することができる。そして、図5(a)と図5(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位が極値となるのは、圧電部材110の起電力Vpzt が極値となるタイミングと一致する。これは、次のような理由による。先ず、圧電部材108は変形によって電荷が発生しても、その電荷がインダクターLによって引き抜かれたり、蓄電素子C1に電荷が流れたりする影響で、圧電部材108の起電力Vpzt は梁104の変位と完全には同じにならない。これに対して、圧電部材110は、インダクターLや蓄電素子C1と接続していないため(通常動作モード時において第2スイッチSW2および第3スイッチSW3は非導通状態)、電荷の増減が圧電部材110の起電力Vpzt の変化に直接反映される。このため、圧電部材110の起電力Vpzt が極値となるタイミングは、梁104の変位が極値となるタイミングと一致するのである。
【0066】
そこで、図5(b)に矢印で示したように、圧電部材110の起電力Vpzt が極値となるタイミングを検出して、そのタイミングから、前述した共振周期の半分の時間(T/2)だけ第1スイッチSW1をONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
【0067】
D−2.動作モードの切換(準備動作モードから通常動作モードへ) :
図6は、準備動作モードから通常動作モードへの移行を示しており、特に第2の圧電素子による蓄電素子の充電の様子を示す図である。ここで、図6の時刻T1より前は準備動作モードであり、時刻T1以降は通常動作モードであるとする。例えば放電等の理由により、時刻T1より前は蓄電素子C1を電源として第1スイッチSW1を駆動できない状態であるとする。時刻T1より前は、例えば発電装置の起動時の状態に対応する。このとき、前記のように第1スイッチSW1を所定のタイミングでON/OFFすることができず、第1の圧電素子による効率的な発電はできない。
【0068】
図6(a)は、第1の圧電素子の出力電圧Vgen(図1(b)参照)を表す。第1の圧電素子は第1の全波整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷だけが蓄電素子C1に流れ込む。しかし、図6(a)の例では、外力による振動が弱く、時刻T1より前に第1の圧電素子の出力電圧Vg enによって蓄電素子C1が充電されることはないことを表している。
【0069】
図6(b)は、第2の圧電素子の出力電圧Vsen(図1(b)参照)を表す。第1の圧電素子と第2の圧電素子とは同じ変形部材に設けられているので、2つの圧電素子は同じように変形する。しかし、同じように変形した場合、第2の圧電素子は第1の圧電素子よりも高い電圧を出力する。そのため、図6(b)のように、時刻T1より前においてVC1と2Vfとの和の電圧を超える部分(斜線)が生じる。よって、時刻T1より前の準備動作モードにおいて、第2の圧電素子を発電用圧電素子として用いて、蓄電素子C1を充電することができる。
【0070】
本実施例では、第2の圧電素子は、それぞれ第2スイッチSW2、第3スイッチSW3を経由して、4つのダイオードD5〜D8から構成される第2の全波整流回路121に接続されている(図1(b)参照)。ここで、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3はノーマリーオンである。また、第2の全波整流回路121は前記の第1の全波整流回路120と同じ構成であって、ダイオードD5〜D8はそれぞれダイオードD1〜D4と対応するものとする。
【0071】
すると、準備動作モード(時刻T1より前)において第2の圧電素子は第2の全波整流回路121と接続されており、出力電圧VsenがVC1と2Vfとの和の電圧を超える部分(斜線)について、発生した電荷は直流電流として取り出されて、蓄電素子C1に蓄えられる。
【0072】
図6(c)のVC1は蓄電素子C1の端子間電圧である。準備動作モードにおいて、VC1は図6(b)の斜線部の分だけ大きくなっていることが分かる。そして、VC1が閾値Vthに到達すれば、蓄電素子C1を電源として第1スイッチSW1を駆動できるので、通常動作モードに切り換えて、第1の圧電素子による効率的な発電が可能になる(時刻T1以降)。
【0073】
このとき、VC1と閾値Vthとの比較は蓄電電圧検出回路125(図1(b)参照)で行われ、スイッチ制御回路126に比較結果が伝えられる。図6(d)〜図6(e)のように、スイッチ制御回路126は準備動作モード(時刻T1より前)において、ノーマリーオンである第2スイッチSW2、第3スイッチSW3の導通状態を維持する。そして、通常動作モードに切り換わった場合に、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3を非導通状態とするとともに、第1スイッチSW1のON/OFFを制御する。なお、通常動作モードにおける動作については、既に図2を用いて詳細に説明しており、重複説明防止のためにここでは省略する。
【0074】
図7は、準備動作モードおよび通常動作モードへの移行時における制御処理を表すフローチャートである。この処理は、スイッチの初期化を除けば、制御回路112(電圧検出回路124、スイッチ制御回路126)が行う。なお、制御回路112はCPUであってもよい。
【0075】
発電装置が起動すると、まずスイッチの状態の初期化が行われる。具体的には、第1スイッチSW1がOFFになり、第2スイッチSW2および第3スイッチSW3をONになる(ステップS2)。なお、グローバルリセット信号などをトリガーとして、スイッチの状態の初期化が行われてもよい。
【0076】
そして、制御回路112は、蓄電電圧検出回路125からの信号に基づいて、蓄電素子C1の端子間電圧VC1が閾値Vth以上であるか否かを判断する(ステップS4)。閾値Vth以上であれば(ステップS4:yes)、第2スイッチSW2および第3スイッチSW3をOFFにして(ステップS6)、通常動作モードの処理である“第1スイッチ制御処理(ステップS10)”を行う。なお、閾値Vth未満であれば(ステップS4:no)、準備動作モードのまま第2の圧電素子を発電用圧電素子として使用し、閾値Vth以上になるまで待つ。
【0077】
図8は、通常動作モードの第1スイッチ制御処理(ステップS10)の詳細を表すフローチャートである。第1スイッチ制御処理では、制御用の圧電部材110の起電力を検出して第1スイッチSW1のON/OFFを切り換える。
【0078】
第1スイッチ制御処理を開始すると、制御回路112は、第2の圧電素子の出力電圧を検出する電圧検出回路124からの信号に基づいて、電圧値がピークに達したか否か(すなわち、電圧値が極値に達したか否か)を判断する(ステップS100)。電圧検出回路124は、例えば電圧波形の微分を行って、微分値の符号の変化から、電圧値がピークに達したか否かを判断してもよい。
【0079】
第2の圧電素子の出力電圧のピークを検出したら(ステップS100:yes)、共振回路(圧電部材108のコンデンサーCgとインダクターLとによって構成される共振回路)の第1スイッチSW1をONにした後(ステップS102)、制御回路112に内蔵された図示しない計時タイマーをスタートする(ステップS104)。そして、圧電部材108のコンデンサーCgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期の1/2の時間が、経過したか否かを判断する(ステップS106)。なお、第2の圧電素子の出力電圧のピークを検出しなかった場合は(ステップS100:no)検出するまで待機する。
【0080】
その結果、共振周期の1/2の時間が経過していないと判断した場合は(ステップS106:no)、そのまま同様な判断を繰り返すことによって、共振周期の1/2の時間が経過するまで待機状態となる。そして、共振周期の1/2の時間が経過したと判断したら(ステップS106:yes)、共振回路の第1スイッチSW1をOFFにする(ステップS108)。その後、第1スイッチ制御処理の先頭に戻って、上述した一連の処理を繰り返す。
【0081】
以上のようにして共振回路の第1スイッチSW1のON/OFFを行えば、梁104の動きに合わせて容易に適切なタイミングで第1スイッチSW1をON/OFFすることができるので、通常動作モードにおいては、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
【0082】
E.圧電素子の設置例 :
以上に説明した本実施例の発電装置100は、第1の圧電素子と第2の圧電素子とが同じ変形部材に設置されている。そして、第1スイッチSW1が非導通状態の場合、変形部材に振動が生じると、第2の圧電素子の方が第1の圧電素子よりも高い電圧を出力する。ここで、高い電圧とは出力電圧の振幅が大きいことを意味する(図6(a)、図6(b)参照)。
【0083】
出力電圧に差をもたせるために、第1の圧電素子と第2の圧電素子で圧電材料を変えてもよい。しかし、製造時の工数やコストを考慮すると、同一の圧電材料を用いて設置上の工夫で出力電圧の高さに差をもたせることが好ましい。そこで、以下に同一の圧電材料を用いても第2の圧電素子の出力電圧が、第1の圧電素子よりも高くなるような設置例を図9、図10を用いて説明する。
【0084】
図9は、第1の圧電素子と第2の圧電素子とが梁104の別の面に設けられる場合の設置例を示した説明図である。図9(a)は、梁104の一方の面から見た平面図である。図9(b)は、梁104の他方の面から見た平面図である。図9(a)には、梁104の一方の面に設けられた圧電部材108と第1電極109aが示されている。圧電部材108と第1電極109aは第1の圧電素子の構成要素である。また、図9(b)には、梁104の他方の面に設けられた圧電部材110と第2電極111bが示されている。圧電部材110と第2電極111bは第2の圧電素子の構成要素である。
【0085】
このとき、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを別の面に設けているので、製造工程は多少複雑になるが、通常動作モードにおいて発電用圧電素子として使用される第1の圧電素子の面積を大きくすることができる。そのため、発電能力を高くすることが可能となる。図9(a)および図9(b)で示した圧電素子の設置例では、第2の圧電素子が梁104(変形部材に相当)と接する面の面積(図9(b)の“l2*w2”)は、第1の圧電素子が梁104と接する面の面積(図9(a)の“l1*w1”)よりも小さい。このとき、梁104には第1の圧電素子の第2電極109b、第2の圧電素子の第1電極111aが接しているので、上記の面積はそれぞれの圧電素子の電極の面積に対応する。
【0086】
前記のように、圧電素子の圧電部材は、電流源と電荷を蓄えるコンデンサーとして表すことができる。コンデンサーの容量をcとすると、充電により電荷Qが蓄えられた場合、電圧V(第1、第2の圧電素子の出力電圧に相当)との関係で、V=Q/cが成り立つ。そのため、コンデンサーの容量cを小さくすることで、電圧Vを大きくすることができる。ここで、コンデンサーの容量cは誘電率ε、電極間の距離d、電極の面積Sを用いてc=εS/dと表される。よって、V=Qd/(εS)が成り立つ。よって、第2の圧電素子の電極の面積“l2*w2”を第1の圧電素子の電極の面積“l1*w1”よりも小さくすることで電圧Vを高めることができる。
【0087】
ここで、電極の面積Sの調整(図9(a)および図9(b))に加えて、又は代えて、電極間の距離dを調整することで電圧Vを高めることができる。図9(c)は、発電装置100の構造が示されている。ここで、第1の圧電素子の電極間の距離は圧電部材108の厚さh1であり、第2の圧電素子の電極間の距離は圧電部材110の厚さh2である。このとき、h1<h2の関係がある。すると、前記の式(V=Qd/(εS))から、第2の圧電素子では電極間の距離dをより大きくしているので、電圧Vを高めることができる。
【0088】
このような圧電素子の設置の工夫により、第1の圧電素子の面積をできるだけ大きくして通常動作モードにおける発電能力を高めながら、準備動作モードにおいて蓄電素子に充電できるように、第2の圧電素子の出力電圧を高めることができる。
【0089】
なお、第2の圧電素子はできるだけ支持端102に近い位置に設置されることが好ましい。梁104のような、いわゆる片持ち梁では、支持端102に近付くに従って曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの梁104の変形量も大きくなる。従って、支持端102に近い位置に設置された第2の圧電素子は大きく変形し、十分な電荷を発生させることができる。このとき、前記の式(V=Qd/(εS))で電荷Qが小さくならずにすむので、電圧Vを効果的に高めることができる。
【0090】
図10は、第1の圧電素子と第2の圧電素子とが梁104の同じ面に設けられる場合の設置例を示した説明図である。第1の圧電素子および第2の圧電素子を、変形部材の同じ面に設けたとすると、第2の圧電素子が存在する分だけ第1の圧電素子の設置面積が狭くなり、通常動作モードにおける発電能力の面で不利である。しかし、第1の圧電素子および第2の圧電素子を一度に同じ工程で変形部材に設けることができる。このため、生産性良く発電装置を製造することが可能となるという利点がある。
【0091】
図10(a)は、第1の圧電素子と第2の圧電素子とが梁104の同じ面に設けられる場合の1つの設置例であり、梁104の一方の面から見た平面図である。図10(a)では、第2の圧電素子の圧電部材110の幅(支持端102の長手方向)、および長さ(梁104の長手方向)を第1の圧電素子の圧電部材108よりも短くしている。そのため、第2の圧電素子の電極の面積Sを小さくして電圧Vを高めることができる(V=Qd/(εS))。なお、圧電部材110が支持端102に近い位置に設置されている理由は十分な電荷Qを発生させるためであり、詳細は前記の通りである。
【0092】
図10(b)は、第1の圧電素子と第2の圧電素子とが梁104の同じ面に設けられる場合の別の設置例であり、梁104の一方の面から見た平面図である。第2の圧電素子の圧電部材110は、第1の圧電素子の圧電部材108と同じ幅であるが、長さを第1の圧電素子の圧電部材108よりも短くしている。そして、圧電部材110を支持端102に近い位置に設置して十分な電荷Qを発生させつつ、面積Sを第1の圧電素子よりも小さくして電圧Vを高める(V=Qd/(εS))。
【0093】
このような圧電素子の設置の工夫により、2つの圧電素子を梁104の同じ面に設けて生産性良く発電装置を製造できるようにしながら、準備動作モードにおいて蓄電素子に充電できるように、第2の圧電素子の出力電圧を高めることができる。
【0094】
F.その他 :
以上、各種の実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0095】
例えば、上述した実施例では、圧電部材108が片持ち梁構造の梁104に取り付けられているものとして説明した。しかし、圧電部材108や圧電部材110などが取り付けられる部材は、振動などによって容易に繰り返し変形する部材であれば、どのような部材であっても構わない。例えば、薄膜の表面に圧電部材108や圧電部材110などを取り付けても良い。
【0096】
また、本実施例では、通常動作モードにおいて第1スイッチSW1を導通させるタイミングは、電圧検出回路124が検出した第2の圧電素子の出力電圧のピーク(極値)に基づいて決定された。しかし、例えば電流検出回路を用いて第2の圧電素子の電流が流れなくなるときを検出して、第1スイッチSW1を導通させるタイミングを決めてもよい(図2(b)のIpzt参照)。また、例えば直接に変形部材の変位を測定する変位センサーを用いて、変位がピークとなったときを検出して、第1スイッチSW1を導通させるタイミングを決めてもよい(図2(a)参照)。変位センサーは、例えば非接触型の渦電流式のセンサーや光学式のセンサーであってもよい。
【0097】
本発明の発電装置は振動や移動に応じて発電するため、例えば、橋梁や建築物あるいは地すべり想定箇所などに発電装置を設置すれば地震などの災害時に発電し、電子機器などのネットワーク手段に必要時(災害時)だけ電源供給することもできる。
【0098】
なお、本発明の発電装置は小型化が可能であるが、設置する対象は電子機器に限らない。例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0099】
さらに、特定の機器等に設置されるのではなく、本発明の発電装置が例えばボタン電池、乾電池と同じ形状であって、電子機器一般で使用されてもよい。このとき、振動によって蓄電素子への充電が可能であるため、電力が喪失した災害時でも電池として使用可能である。このとき、一次電池より寿命が長いため、ライフサイクルの観点で環境負荷低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0100】
100…発電装置、102…支持端、104…梁、106…錘、108,110…圧電部材、109a,111a…第1電極、109b,111b…第2電極、112…制御回路、120…第1の全波整流回路,121…第2の全波整流回路、124…電圧検出回路、125…蓄電電圧検出回路、126…スイッチ制御回路、L…インダクター、C1…蓄電素子、D1〜D8…ダイオード、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、SW3…第3スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に設けられた第1の圧電素子と、
前記第1の圧電素子が発生する交流電流を整流する第1の整流回路と、
前記第1の圧電素子を含む共振回路を構成するインダクターと、
前記共振回路に設けられた第1スイッチと、
前記変形部材に設けられ、前記第1の圧電素子よりも出力電圧が高い第2の圧電素子と、
前記第2の圧電素子が発生する交流電流を整流する第2の整流回路と、
前記第1の整流回路、又は前記第2の整流回路からの出力信号に基づいて充電を行う蓄電素子と、
前記第1スイッチの制御を行う制御手段と、
前記蓄電素子の電圧を検出する蓄電電圧検出回路と、を備える発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電装置において、
前記蓄電電圧検出回路が検出した蓄電素子の電圧に基づき、前記第1スイッチを駆動できないと判断した場合に、前記蓄電素子に第2の圧電素子の出力電圧に基づいて充電を行わせる発電装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発電装置において、
前記第2の圧電素子と前記第2の整流回路との間に設けられ、前記第2の圧電素子と前記第2の整流回路との接続状態を切り換える切換部を含み、
前記制御手段は、
前記蓄電電圧検出回路が検出した蓄電素子の電圧に基づき、前記切換部を非導通状態とし、前記第2の圧電素子の電圧を検出して、前記第1スイッチを所定期間導通状態とする発電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の発電装置において、
前記第2の圧電素子の静電容量は、前記第1の圧電素子の静電容量よりも小さい発電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の異なる面に設けられている発電装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に設けられている発電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発電装置において、
前記変形部材は、
変形しない固定端を含んで構成され、
前記第2の圧電素子は、前記第1の圧電素子より前記固定端に近い箇所に設けられている発電装置。
【請求項8】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子が発生する交流電流を整流する第1の整流回路と、前記第1の圧電素子を含む共振回路を構成するインダクターと、前記共振回路に設けられた第1スイッチと、前記変形部材に設けられ、前記第1の圧電素子よりも出力電圧が高い第2の圧電素子と、前記第2の圧電素子が発生する交流電流を整流する第2の整流回路と、前記第1の整流回路、又は前記第2の整流回路からの出力信号に基づいて充電を行う蓄電素子と、前記蓄電素子の電圧を検出する蓄電電圧検出回路と、を備える発電装置の制御方法であって、
前記蓄電電圧検出回路からの出力信号に基づいて前記蓄電素子の電圧を所定の閾値と比較するステップと、
前記蓄電素子によって前記第1スイッチを駆動できないと判断した場合に、前記蓄電素子に第2の圧電素子の出力電圧に基づいて充電を行わせるステップと、を含む発電装置の制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の発電装置を含む電子機器。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の発電装置を含む移動手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−81274(P2013−81274A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218922(P2011−218922)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】