発電装置、電子機器、移動手段及び発電装置の制御方法
【課題】圧電材料の圧電効果を利用して、大型化させることなく高い電圧を発生させることが可能な発電装置等を提供すること。
【解決手段】発電装置100は、変形方向を切り換えて変形する変形部材(梁104)と、変形部材(梁104)に備えられた第1の圧電素子108と、変形部材(梁104)に備えられた第2の圧電素子110と、第1の圧電素子108と電気的に接続されるインダクターLと、第1の圧電素子108とインダクターLとの間に設けられたスイッチSWと、第2の圧電素子110に生じた電圧を検出し、検出された電圧が所定以上の大きさのとき、スイッチSWを用いて第1の圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続する制御部130と、を備える。
【解決手段】発電装置100は、変形方向を切り換えて変形する変形部材(梁104)と、変形部材(梁104)に備えられた第1の圧電素子108と、変形部材(梁104)に備えられた第2の圧電素子110と、第1の圧電素子108と電気的に接続されるインダクターLと、第1の圧電素子108とインダクターLとの間に設けられたスイッチSWと、第2の圧電素子110に生じた電圧を検出し、検出された電圧が所定以上の大きさのとき、スイッチSWを用いて第1の圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続する制御部130と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置、電子機器、移動手段及び発電装置の制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電材料は、外力を受けて変形すると、材料内部に電気分極が誘起されて表面に正負の電荷が現れる。このような現象は、いわゆる圧電効果と呼ばれている。圧電材料が有するこのような性質を利用して、片持ち梁を振動させて圧電材料に繰り返し加重を作用させ、圧電材料の表面に生じた電荷を電気として取り出す発電方法が提案されている。
【0003】
例えば、先端に錘を設けると共に圧電材料の薄板を貼り付けた金属製の片持ち梁を振動させ、振動に伴って圧電材料に交互に生じる正負の電荷を取り出すことによって交流電流を発生させる。この交流電流を、ダイオードを用いて整流した後、コンデンサーに蓄えておき、電力として取り出す技術が提案されている(特許文献1)。圧電素子で正の電荷が発生している間だけ接点が閉じるようにすることで、ダイオードでの電圧損失を発生させずに直流電流が得られるようにした技術も提案されている(特許文献2)。これら技術を用いれば、発電装置を小型化することができるので、例えば小型の電子部品に電池の代わりに組み込むなどの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−107752号公報
【特許文献2】特開2005−312269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている従来の技術では、得られる電圧が、圧電材料の電気分極によって生じる電圧までに限られるという問題があった。このため、ほとんどの場合は、別に昇圧回路が必要となり、発電装置を十分に小型化することが難しいという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、圧電材料の圧電効果を利用した発電装置を大型化させることなく、高い電圧を発生させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例の発電装置は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、前記第2の圧電素子に生じる電流を検出し、検出された前記電流が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、を備える、発電装置である。
【0009】
本適用例によれば、第1の圧電素子及び第2の圧電素子が変形部材に備えられているの
で、変形部材が変形することによって、第1の圧電素子及び第2の圧電素子も変形する。その結果、これら圧電素子には、圧電効果によって正負の電荷が発生する。電荷の発生量は、圧電素子の変形量が大きくなるほど多くなる。第1の圧電素子はインダクターと共に共振回路を構成しており、その共振回路にはスイッチが設けられている。スイッチでの導通を切断した状態で変形部材の変形を開始して、変形量が極値となったとき(すなわち変形方向が切り換わるとき)に、スイッチを導通状態とする。第1の圧電素子は変形部材と共に変形し、変形量が大きくなるほど多くの電荷を発生させるから、第1の圧電素子で発生した電荷が最も多くなったときに、第1の圧電素子がインダクターに接続されて共振回路を形成する。すると、第1の圧電素子に発生していた電荷がインダクターに流れ込む。第1の圧電素子及びインダクターは共振回路を構成しているから、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、第1の圧電素子の反対側の端子に流れ込む。この期間(すなわち、第1の圧電素子の一方の端子から流れ出した電荷が、インダクターを介して反対側の端子から再び第1の圧電素子内に流れ込むまでの期間)は、第1の圧電素子及びインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。したがって、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成し、その後、共振周期の半分の時間が経過したときにスイッチを切断すれば、インダクターを接続する前に第1の圧電素子内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。その状態から、今度は逆方向に変形部材を変形させれば、第1の圧電素子が逆方向に変形するため、正負の電荷の配置が逆転した状態からさらに圧電効果によって発生した新たな電荷が積み増されるようにして第1の圧電素子内に電荷が蓄積される。第1の圧電素子内に電荷が蓄積されるにしたがって発生する電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、第1の圧電素子を構成する圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。さらに、こうして第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積するためには、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成することが重要となる。ここで、変形部材には第1の圧電素子及び第2の圧電素子が備えられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。第2の圧電素子の変形方向が切り換わるタイミングは、第2の圧電素子が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)と一致する。したがって、第2の圧電素子に生じる電流を検出することによって、変形部材の変形方向が切り換わるタイミングで容易にスイッチを導通状態にできる。制御部は、第1の圧電素子の変形方向の切り換わりから所定期間だけスイッチを導通状態とすることで、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。したがって、圧電効果を利用して、小型で効率的に高い電圧を発生させることが可能な発電装置を実現できる。
【0010】
[適用例2]
上述の適用例において、前記制御部は、前記変形部材の変形方向が切り換わるタイミングで前記スイッチを電気的に接続した後、所定期間が経過するタイミングで前記スイッチを電気的に切断することが好ましい。
【0011】
本適用例によれば、変形部材の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチを電気的に接続する(導通状態にする)ことで、変形部材の変形状態(振動状態)に同期した適切なタイミングで、圧電素子とインダクターとの接続・切断を周期的に繰り返すことができるので、圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。
【0012】
[適用例3]
上述の適用例において、前記制御部は、前記第2の圧電素子と並列に接続された蓄電素子と、前記蓄電素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、を含むことが好ましい。
【0013】
蓄電素子が第2の圧電素子と並列に接続されているので、第2の圧電素子に生じた電流
と同位相の電流が蓄電素子に流れる。したがって、蓄電素子に流れる電流を検出することによって、第2の圧電素子が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)を容易に検出できる。
【0014】
[適用例4]
上述の適用例において、前記変形部材は複数の面を有し、前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に設けられていることが好ましい。
【0015】
仮に、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を、変形部材の同じ面に設けたとすると、第2の圧電素子が存在する分だけ第1の圧電素子の設置面積が狭くなる。変形量が同じであれば、圧電素子の設置面積が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを、変形部材の異なる面に設けることとしておけば、第1の圧電素子の設置面積を大きくすることができるので、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0016】
[適用例5]
上述の適用例において、前記変形部材は複数の面を有し、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に設けられていることが好ましい。
【0017】
第1の圧電素子及び第2の圧電素子が、変形部材の同じ面に設けられていれば、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を一度に(同じ工程で)変形部材に設けることができる。このため、生産性良く発電装置を製造することが可能となる。
【0018】
[適用例6]
上述の適用例において、前記変形部材は、変形しない固定端を有し、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられていることが好ましい。
【0019】
固定端に近付くにしたがって変形部材の曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの変形部材の変形量も大きくなる。したがって、第2の圧電素子を固定端の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、第2の圧電素子の面積を狭くすることができる。加えて、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを同じ面に設ける場合には、第2の圧電素子の面積を狭くすることができる分だけ、発電用の第1の圧電素子の面積を広くすることができるので、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
【0020】
[適用例7]
本適用例の電子機器は、上述の発電装置を用いた、電子機器である。
【0021】
[適用例8]
本適用例の移動手段は、上述の発電装置を用いた、移動手段である。
【0022】
これらの適用例によれば、電池の代わりにリモコン等の電子機器に組み込むことが可能であるため、電子機器の移動によって発電できるほか、例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動によって発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0023】
[適用例9]
本適用例の発電装置の制御方法は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変
形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されたインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、を備える発電装置の制御方法であって、前記第2の圧電素子に生じる電流を検出することと、前記電流の検出結果に基づいて、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続することと、を含む、発電装置の制御方法である。
【0024】
本適用例によれば、変形部材には第1の圧電素子及び第2の圧電素子が備えられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。第2の圧電素子の変形方向が切り換わるタイミングは、第2の圧電素子が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)と一致する。したがって、第2の圧電素子に生じた電流を検出し、検出された電流に基づいてスイッチを所定期間導通状態とすることで、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。第1の圧電素子内に電荷を蓄積した分だけ、第1の圧電素子が生じさせる電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。
【0025】
[適用例10]
本適用例の発電装置は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられ、前記第1の圧電素子よりも生じる発電量が小さい第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、前記第2の圧電素子に生じた電圧を検出し、検出された前記電圧が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを用いて前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、を備える、発電装置である。
【0026】
本適用例によれば、発電装置では、第1の圧電素子及び第2の圧電素子が変形部材に備えられているので、変形部材が変形することにより、第1の圧電素子及び第2の圧電素子も変形する。その結果、これら圧電素子には、圧電効果によって正負の電荷が発生する。電荷の発生量は、圧電素子の変形量が大きくなるほど多くなる。第1の圧電素子はインダクターとともに共振回路を構成しており、その共振回路にはスイッチが設けられている。スイッチでの導通を切断した状態で変形部材の変形を開始して、変形量が極値となったとき(すなわち変形方向が切り換わるとき)に、スイッチを導通状態とする。第1の圧電素子(及び第2の圧電素子)は変形部材とともに変形し、変形量が大きくなるほど多くの電荷を発生させるから、第1の圧電素子(及び第2の圧電素子)で発生した電荷が最も多くなったときに、第1の圧電素子がインダクターに接続されて共振回路を形成する。すると、第1の圧電素子に発生していた電荷がインダクターに流れ込む。第1の圧電素子及びインダクターは共振回路を構成しているから、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、第1の圧電素子の反対側の端子に流れ込む。この期間(すなわち、第1の圧電素子の一方の端子から流れ出した電荷が、インダクターを介して反対側の端子から再び第1の圧電素子内に流れ込むまでの期間)は、第1の圧電素子及びインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。したがって、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成し、その後、共振周期の半分の時間が経過したときにスイッチを切断すれば、インダクターを接続する前に第1の圧電素子内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。その状態から、今度は逆方向に変形部材を変形させれば、第1の圧電素子が逆方向に変形するため、正負の電荷の配置が逆転した状態から更に圧電効果によって発生した新たな電荷が積み増されるようにして第1の圧電素子内に電荷が蓄積される。第1の圧電素子内に電荷が蓄積されるにしたがって発生する電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、第1の圧電素子を構成する圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができ
る。さらに、こうして第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積するためには、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成することが重要となる。ここで、変形部材には第1の圧電素子及び第2の圧電素子が設けられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。第2の圧電素子も変形量が大きくなるほど高い電圧を発生させるから、第2の圧電素子の変形方向が切り換わるところでは、第2の圧電素子の発生する電圧が極値である。このことから、第2の圧電素子に生じた電圧を検出して、その電圧が極値となった時点から所定期間だけスイッチを導通状態とすれば、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0027】
[適用例11]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも圧電定数が大きいことが好ましい。
【0028】
一般的には、圧電素子の圧電定数が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子を第2の圧電素子より圧電定数が大きいこととしておけば、外部へ電荷を供給することに用いる第1の圧電素子から第2の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0029】
[適用例12]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも発電可能な面積が大きいことが好ましい。
【0030】
同等の発電能力を有する圧電素子であれば、発電可能な面積が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子を第2の圧電素子より発電可能な面積が大きいこととしておけば、外部へ電荷を供給することに用いる第1の圧電素子から第2の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0031】
[適用例13]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子は、複数であることが好ましい。
【0032】
第1の圧電素子は複数で多いほど発電量は多くなる。したがって、第1の圧電素子を複数としておけば、外部へ電荷を供給することに用いる第1の圧電素子から第2の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0033】
[適用例14]
上述の適用例において、前記変形部材は複数の面を有し、前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に備えられていることが好ましい。
【0034】
仮に、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を、変形部材の同じ面に設けたとすると、第2の圧電素子が存在する分だけ第1の圧電素子の設置面積が狭くなる。変形量が同じであれば、圧電素子の設置面積が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを、変形部材の異なる面に設けることとしておけば、第1の圧電素子の設置面積を大きくすることができるので、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0035】
[適用例15]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材
の同じ面に備えられていることが好ましい。
【0036】
第1の圧電素子及び第2の圧電素子が、変形部材の同じ面に設けられていれば、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を一度に(同じ工程で)変形部材に設けることができる。このため、生産性良く発電装置を製造することが可能となる。
【0037】
[適用例16]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、長手方向の長さが同じであることが好ましい。
【0038】
第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、長手方向の長さが同じであれば、変形部材の長手方向への変形に第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とが同期して変形する。そのため、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、同期して第2の圧電素子の変形方向も切り換わるので、第1の圧電素子と前記第2の圧電素子との変形方向が切り換わるタイミングがほぼ同一になる。その結果、正確なスイッチの切替えが可能となり、上述したように発電効率が高い発電装置を提供することができる。
【0039】
[適用例17]
上述の適用例において、前記変形部材は、変形しない固定端を有し、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられていることが好ましい。
【0040】
変形しない固定端を含んで構成される梁は、先端(自由端)から固定端(支持端)に近付くにしたがって曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの梁の変形量も大きくなる。したがって、制御に用いる第2の圧電素子を固定端の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、制御に用いる第2の圧電素子の幅を狭くすることができる。その結果、発電に用いる第1の圧電素子の面積を広くすることができるので、発電に用いる第1の圧電素子と制御に用いる第2の圧電素子とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
【0041】
[適用例18]
本適用例の電子機器は、上述の発電装置を用いた、電子機器である。
【0042】
[適用例19]
本適用例の移動手段は、上述の発電装置を用いた、移動手段である。
【0043】
これらの発明によれば、電池の代わりにリモコンや携帯可能な電子機器に組み込むことが可能であるため、電子機器の移動により発電できるほか、例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率よく電力供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】第1実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図1B】第1実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図2】第1実施例の発電装置の動作を示した説明図である。
【図3】第1実施例の発電装置の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。
【図4】第1実施例の発電装置の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。
【図5A】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図5B】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図6】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図7A】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図7B】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図8】LC共振回路の共振周期の3/2倍の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図9】LC共振回路の共振周期の1/4倍の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図10】制御用の圧電素子に生じる電流を検出することによってスイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。
【図11】本実施例における発電装置の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャート。
【図12】電流検出回路の構成の一例を示すブロック図。
【図13A】制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置を示した説明図。
【図13B】制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置を示した説明図。
【図13C】制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置を示した説明図。
【図14】第3実施例の発電装置の電気的な構造を示す回路図。
【図15】制御用の圧電素子で発生する電圧を検出することによってスイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図。
【図16】本実施例における発電装置の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャート。
【図17】制御用の圧電素子を複数備えた第4実施例の発電装置の電気的な構造を示した回路図。
【図18A】発電用の圧電素子と2つの制御用の圧電素子とが設けられた第1変形例を示した説明図である。
【図18B】発電用の圧電素子と2つの制御用の圧電素子とが設けられた第1変形例を示した説明図である。
【図19】発電用の圧電素子および制御用の圧電素子が梁の同じ面に設けられた第2変形例を示した説明図である。
【図20】発電用の圧電素子および制御用の圧電素子が梁の同じ面に設けられた第2変形例の他の態様を示した説明図である。
【図21】発電用の圧電素子と同じ面に複数の制御用の圧電素子が設けられた第3変形例を示した説明図である。
【図22】発電用の圧電素子と同じ面に複数の制御用の圧電素子が設けられた第3変形例の他の態様を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好適な実施例について図面を用いて詳細に説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0046】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序にしたがって実施例を説明する。
【0047】
A.第1実施例:
A−1.発電装置の構造:
A−2.発電装置の動作:
A−3.発電装置の動作原理:
A−4.スイッチの切換タイミング:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例:
E−1.第1変形例:
E−2.第2変形例:
E−3.第3変形例:
【0048】
A.第1実施例:
A−1.発電装置の構造:
図1は、本実施例の発電装置100の構造を示した説明図である。図1Aには、発電装置100の機械的な構造が示されており、図1Bには電気的な構造が示されている。本実施例の発電装置100の機械的な構造は、先端に錘106が設けられた梁104が、基端側で支持端102に固定された片持ち梁構造となっており、変形方向を切り換えて変形することができる。支持端102は発電装置100内に固定されるのが望ましい。梁104の表面には、圧電素子108及び圧電素子110が備えられている。圧電素子108は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料で形成された圧電部材108cと、圧電部材108cの表面に金属薄膜で形成された第1電極(上部電極)108a及び第2電極(下部電極)108bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)108a及び第2電極(下部電極)108bは、圧電部材108cを挟んで対向配置されている。圧電素子110は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料で形成された圧電部材110cと、圧電部材110cの表面に金属薄膜で形成された第1電極(上部電極)110a及び第2電極(下部電極)110bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)110a及び第2電極(下部電極)110bは、圧電部材110cを挟んで対向配置されている。図1Aに示す例では、圧電素子108と圧電素子110とは同じ形状を有しているが、必ずしも同じ形状でなくてもよい。例えば、圧電素子108が梁104に対して設置可能な最大の長さと幅であれば、圧電素子108の発電量は大きくなる。一方、圧電素子110が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、圧電素子110による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率が良くなる。圧電素子108及び圧電素子110は梁104の変形によって変形するから、梁104が本発明の「変形部材」に相当する。
【0049】
梁104は、基端側が支持端102に固定されており、先端側には錘106が設けられているので、振動などが加わると、図中に白抜きの矢印で示したように、梁104の先端が大きく振動する。その結果、梁104の表面に設けられた圧電素子108及び圧電素子110には、圧縮力及び引張力が交互に作用する。すると、圧電素子108の圧電部材108cは圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極108a及び第2電極108bに現れる。同様に、圧電素子110の圧電部材110cは圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極110a及び第2電極110bに現れる。錘106は必須ではないが、梁104の先端側と基端側とで重量のバランスが非均衡であることが望ましい。なぜなら、重量のバランスが非均衡であることで、例えば、1つの振動によって梁104の変位が反復しやすくなるためである。
【0050】
図1Bには、本実施例の発電装置100の回路図が例示されている。圧電素子108の圧電部材108cは、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)C
gとして表すことができる。圧電素子110の圧電部材110cは、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Csとして表すことができる。インダクターLは、圧電部材108cに対して並列に接続されて、圧電素子108を含む共振回路を構成している。すなわち、インダクターLは圧電素子108と電気的に接続され、圧電部材108cの容量成分Cgと共に電気的な共振回路を形成している。この共振回路には、共振回路をON/OFFするためのスイッチSWが、インダクターLに対して直列に接続されて設けられている。
【0051】
制御部130は、スイッチSWのON/OFFを制御する。具体的には、制御部130は、圧電素子110に生じる電流を検出し、検出された電流が所定以上の大きさのとき、スイッチSWを導通状態として、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続する。本実施例においては、制御部130は、圧電素子110と並列に接続された蓄電素子132と、蓄電素子132に流れる電流を検出する電流検出回路134と、電流検出回路134で検出された電流に基づいてスイッチSWを制御する制御回路136と、を含んで構成されている。制御回路136は、CPU(Central Processing Unit)で構成されていてもよい。制御部130の動作の詳細については後述される。
【0052】
圧電素子108の圧電部材108cに設けられた第1電極108a及び第2電極108bは、圧電素子108が発生させる電流を整流する整流回路120に接続されている。本実施例においては、整流回路120は、4つのダイオードD1〜D4から構成される全波整流回路である。整流回路120を全波整流回路で構成することによって、圧電素子108から発生した電荷を効率よく引き出して、効率よく発電することができる。さらに、整流回路120には、電気負荷を駆動するために、整流後の電流を蓄えておく蓄電素子(出力用コンデンサー)C1が接続されている。すなわち、蓄電素子C1は、整流回路120を介して圧電素子108と並列に接続されている。蓄電素子C1は必須の構成ではなく、必要に応じて設ければよい。
【0053】
一方、圧電素子110はスイッチSWを制御するために設けられており、圧電素子110に設けられた第1電極110a及び第2電極110bは、制御部130に接続されている。したがって、以下では、圧電素子108を「発電用の圧電素子」と称し、圧電素子110を「制御用の圧電素子」と称することがあるものとする。圧電素子108が本発明の「第1の圧電素子」に対応し、圧電素子110が本発明の「第2の圧電素子」に対応する。
【0054】
A−2.発電装置の動作:
図2は、本実施例の発電装置100の動作を示した説明図である。図2(a)には、梁104の振動に伴って、梁104の先端の変位uが変化する様子が示されている。プラスの変位uは、梁104が上向きに反った状態(梁104の上面側が凹となった状態)を表しており、マイナスの変位(−u)は、梁104が下向きに反った状態(梁104の下面側が凹となった状態)を表している。図2(b)には、梁104の変形に伴って、圧電部材108cが発生する電流の様子と、その結果として圧電部材108cの内部に生じる起電力とが示されている。図2(b)では、圧電部材108cに電荷が発生する様子は、単位時間あたりに発生する電荷量(すなわち、電流Ipzt)として表され、圧電部材108cに生じる起電力は、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vpztとして表されている。
【0055】
図1を用いて前述したように、梁104には圧電素子110も設けられており、梁104が変形すると、圧電部材110cも圧電部材108cと同様に変形する。したがって、圧電部材110cの内部にも、圧電部材108cと全く同様に、図2(b)に示す電流Ipztと同様の電流Ipzt2、及び、図2(b)に示す電圧Vpztと同様の電圧Vp
zt2が発生する。
【0056】
図2(a)及び図2(b)に示されるように、梁104の変位が増加している間は、圧電部材108cは正方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがプラス値)、これに伴って第1電極108a及び第2電極108bの電圧Vpztは正方向へ増加する。正方向の電圧Vpztが、蓄電素子C1の電圧VC1と整流回路120を構成しているダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍との和、すなわち、VC1+2Vfよりも大きくなれば、それ以降に発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。梁104の変位が減少している間は、圧電部材108cは負方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがマイナス値)、これに伴って第1電極108a及び第2電極108bの電圧Vpztは負方向へ増加する。負方向の電圧Vpztが、VC1と整流回路120の2Vfの和よりも大きくなれば、発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。すなわち、図1のスイッチSWをOFFにしたままでも、図2(b)中に斜線を付して示した部分については、蓄電素子C1に電荷を蓄えることができる。
【0057】
一定時間に圧電部材108cから取り出せる電荷量(発電効率)はスイッチSWがONするタイミングによって異なり、図2(c)に示すように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWがONする場合に発電効率が最大となる。以下では、まず発電効率が最大となる場合の動作について説明する。
【0058】
制御部130が、図2(c)に示すタイミングでSWをONにしたとする。すると、図2(d)に示すように、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧波形が、スイッチSWをONにしたときにシフトしたかのような現象が発生する。すなわち、例えば、図2(d)中に「B」と表示した期間Bでは、圧電部材108cの起電力に対応する細い破線で示した電圧Vpztの波形がマイナス方向にシフトしたような、太い破線で示した電圧波形が第1電極108aと第2電極108bとの間に現れる。このような現象が発生する理由については後述する。図2(d)中に「C」と表示した期間Cでは、圧電部材108cの起電力に対応する電圧Vpztの波形がプラス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。以降の期間D、期間E、期間Fなどについても同様に、圧電部材108cの起電力に対応する電圧Vpztの波形がプラス方向あるいはマイナス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。シフトした電圧波形が、VC1と2Vfとの和を超えた部分(図2(d)中に斜線を付して示した部分)では、圧電部材108cで発生した電荷を蓄電素子C1に蓄えておくことができる。圧電部材108cから蓄電素子C1に電荷が流れる結果、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧Vgenは、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その結果、第1電極108a及び第2電極108bの間の電圧波形は、図2(d)に太い実線で示した波形となる。
【0059】
図2(b)に示したスイッチSWをOFFにしたままの場合と、図2(d)に示したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにした場合とを比較すれば明らかなように、本実施例の発電装置100では、適切なタイミングでスイッチSWをONにすることで、効率よく、蓄電素子C1に電荷を蓄えることが可能となる。そこで、第1実施例の発電装置100は、スイッチSWを適切なタイミングでONにするために、制御用の圧電素子110を設けておき、圧電素子110に生じた電流を検出してスイッチSWを制御している。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0060】
蓄電素子C1に電荷が蓄えられて、蓄電素子C1の端子間電圧が増加すると、それにしたがって電圧波形のシフト量も大きくなる。例えば、図2(d)中の期間B(蓄電素子C1に電荷が蓄えられていない状態)と、図2(d)中の期間H(蓄電素子C1に少し電荷が蓄えられた状態)とを比較すると、期間Hの方が電圧波形のシフト量が大きくなってい
る。同様に、図2(d)中の期間Cと期間Iとを比較すると、蓄電素子C1に蓄えられた電荷が増えている期間Iの方が、電圧波形のシフト量が大きくなっている。このような現象が発生する理由については後述するが、この結果、本実施例の発電装置100では、圧電部材108cを変形させたことによって、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vpzt以上の電圧を、蓄電素子C1に蓄えることも可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0061】
A−3.発電装置の動作原理:
図3は、本実施例の発電装置100の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。図4は、本実施例の発電装置100の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。図3では、圧電部材108cの変形に合わせてスイッチSWをONにしたときのCgの電荷の動きが、概念的に示されている。図3(a)は、圧電部材108c(正確には梁104)が上向きに(上面側が凹となるように)変形した状態を表している。圧電部材108cが上向きに変形すると、電流源からは正方向の電流が流れ、Cgに電荷が蓄積され、圧電部材108cの端子間には正方向の電圧が発生する。電圧値は、圧電部材108cの変形が大きくなるほど増加する。圧電部材108cの変形がピークとなったタイミング(電荷量がピークになったタイミング。図3(b)参照)で、スイッチSWをONにする。
【0062】
図3(c)には、スイッチSWをONにした直後の状態が示されている。Cgには電荷が蓄えられているから、この電荷がインダクターLに流れようとする。インダクターLに電流が流れると磁束が生じる(磁束が増加する)が、インダクターLには、自らを貫く磁束の変化を妨げる方向に逆起電力が生じる性質(自己誘導作用)がある。スイッチSWをONにしたときには、電荷が流れることによって磁束が増加しようとするから、この磁束の増加を妨げる方向(換言すれば、電荷の流れを妨げる方向)に逆起電力が発生する。逆起電力の大きさは、磁束の変化速度(単位時間あたりの変化量)に比例する。図3(c)には、このようにしてインダクターLに生じる逆起電力が、斜線を付した矢印によって表されている。このような逆起電力が発生するため、スイッチSWをONにしても、圧電部材108cの電荷は少しずつしか流れ出さない。すなわち、インダクターLを流れる電流は少しずつしか増加しない。
【0063】
その後、インダクターLを流れる電流がピークになると、磁束の変化速度が「0」となるので、図3(d)に示したように逆起電力が「0」となる。今度は電流が減少し始める。すると、インダクターLを貫く磁束が減少するので、インダクターLには、この磁束の減少を妨げる方向(電流を流そうとする方向)の起電力が発生する(図3(e)参照)。その結果、この起電力によってCgから電荷を引き抜きながら、インダクターLを電流が流れ続ける。電荷の移動の途中で損失が発生しなければ、圧電部材108cの変形によって生じた全ての電荷が移動して、ちょうど正負の電荷が置き換わったような状態(すなわち、圧電部材108cの下面側に正電荷が分布し、上面側に負電荷が分布した状態)となる。図3(f)には、圧電部材108cの変形によって生じた正負の電荷が全て移動した状態が表されている。
【0064】
仮に、このままスイッチSWをONにしておくと、今度は上述した内容と逆の現象が生じる。すなわち、圧電部材108cの下面側の正電荷がインダクターLに流れようとして、このときインダクターLには、電荷の流れを妨げる方向の逆起電力が発生する。その後、インダクターLを流れる電流がピークに達した後、減少に転じると、今度は電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)の起電力がインダクターLに発生する。その結果、圧電部材108cの下面側にあった全ての正電荷が上面側に移動した状態(図3(b)に示した状態)となる。こうして圧電部材108cの上面側に戻った正電荷は、
再び、図3(b)〜図3(f)を用いて前述したようにして、下面側に移動する。
【0065】
このように、Cgに電荷が蓄えられた状態でスイッチSWをONにした後、その状態を保っておくと、圧電部材108cとインダクターLとの間で電流の向きが交互に反転する一種の共振現象が発生する。この共振現象の周期は、いわゆるLC共振回路の共振周期Tとなるから、圧電部材108cに含まれる容量成分Cgの大きさ(キャパシタンス)をC、インダクターLの誘導成分の大きさ(インダクタンス)をLとすると、T=2π(LC)0.5によって与えられる。したがって、スイッチSWをONにした直後(図3(c)に示した状態)から、図3(f)に示した状態となるまでの時間は、T/2となる。
【0066】
そこで、スイッチSWをONにしてからT/2が経過した時点で、図4(a)に示すようにスイッチSWをOFFにする。そしてこの状態から、圧電部材108c(正確には梁104)を今度は下向きに(下面側が凹となるように)変形させる。前述した図3(a)では、圧電部材108cを上向きに変形させたが、図4(a)では下向きに変形させているので、電流源から負方向の電流が流れ、圧電部材108cの端子間の電圧が負方向へ大きくなるようにCgに電荷が蓄積する。図3(a)〜図3(f)を用いて前述したように、圧電部材108c(正確には梁104)を下向きに変形させる前の段階で、圧電部材108cの下面側には正電荷が分布し、上面側には負電荷が分布しているから、これらの電荷に加えて、下面側には新たな正電荷が蓄積され、上面側には新たな負電荷が蓄積されることになる。図4(b)には、スイッチSWをOFFにした状態で圧電部材108c(正確には梁104)を変形させることによって、圧電部材108cに新たな電荷が蓄積された状態が示されている。
【0067】
この状態からスイッチSWをONにすると、圧電部材108cの下面側に蓄積された正電荷がインダクターLに流れようとする。このときインダクターLには逆起電力が発生するので(図4(c)参照)、電流は少しずつ流れ始めるが、やがてピークに達して、その後は減少に転じる。すると、インダクターLには、電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)に起電力が発生し(図4(e)参照)、この起電力によって電流が流れ続けて、最終的には、圧電部材108cの下面側に分布していた全ての正電荷が上面側に移動し、上面側に分布していた全ての負電荷が下面側に移動した状態となる(図4(f)参照)。下面側の全ての正電荷が上面側に移動し、上面側の全ての負電荷が下面側に移動する時間は、LC共振回路の共振周期Tの半分に相当する時間T/2となる。そこで、スイッチSWをONにした後、時間T/2が経過したらスイッチSWをOFFにして、今度は圧電部材108c(正確には梁104)を上向きに(上面側が凹となるように)変形させれば、圧電部材108c内にさらに正負の電荷を蓄積することができる。
【0068】
以上に説明したように本実施例の発電装置100では、圧電部材108cを変形させて電荷を発生させた後、圧電部材108cをインダクターLに接続して、共振周期Tの半分の時間だけ共振回路を形成することで、圧電部材108c内での正負の電荷の分布を反転させる。その後、圧電部材108cを今度は逆方向に変形させて新たな電荷を発生させる。圧電部材108c内での正負の電荷の分布は反転されているから、新たに発生させた電荷は圧電部材108cに蓄積されることになる。その後、再び、共振周期Tの半分の周期だけ圧電部材108cをインダクターLに接続して、圧電部材108c内での正負の電荷の分布を反転させた後、圧電部材108cを逆方向に変形させる。このような動作を繰り返すことで、圧電部材108cを繰り返し変形させる度に、圧電部材108cに蓄積された電荷を増加させることができる。
【0069】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、スイッチSWをONにする度に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧波形がシフトする特異な現象が生じるが、この現象は、以下のようなメカニズムによって発生する。すなわち、例
えば図2(d)中に示した期間Aでは、圧電部材108c(正確には梁104)の変形にしたがって、第1電極108a及び第2電極108bの間に電圧が発生するが、第1電極108a及び第2電極108bは整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は、整流回路120に接続された蓄電素子C1に流れ込む。その結果、梁104の変形がピークになった時点でスイッチSWをONにすると、そのときに圧電部材108c内に残っていた正負の電荷がインダクターLを介して移動して、圧電部材108c内での正負の電荷の配置が入れ代わる。
【0070】
正負の電荷の配置が入れ代わった状態から梁104を逆方向に変形させると、圧電部材108cの第1電極108a及び第2電極108bの間には、圧電効果による電圧波形が現れる。すなわち、圧電部材108cの第1電極108a及び第2電極108bの極性が入れ代わった状態から、圧電部材108cに変形による電圧変化が発生することになる。その結果、図2(d)中に示した期間Bでは、梁104の変形によって圧電部材108cに生じる電圧波形をシフトさせたような、電圧波形が現れることになる。もっとも、前述したように、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は蓄電素子C1に流れ込むので、圧電部材108cの第1電極108a及び第2電極108bの間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その後、共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすると、圧電部材108cに残っていた正負の電荷の配置が入れ代わる。その状態から梁104が変形することによって、圧電部材108cには圧電効果による電圧波形が現れる。このため、図2(d)中に示した期間Cにおいても、梁104の変形による電圧波形をシフトさせたような電圧波形が現れることになる。
【0071】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、梁104が変形を繰り返しているうちに、電圧波形のシフト量が次第に大きくなるという現象も発生する。このため、圧電部材108cの圧電効果によって第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電位差よりも高い電圧を、蓄電素子C1に蓄えることができるという大きな効果を得ることができる。このような現象は、次のようなメカニズムによって生じる。
【0072】
先ず、図2(d)中の期間Aあるいは期間Bに示したように、C1が充電されていない場合は、圧電部材108cの端子間で発生する電圧が、整流回路120の2Vfを超えると、圧電部材108cから蓄電素子C1に電荷が流れ込むので、第1電極108aと第2電極108bとの間に現れる電圧は、2Vfでクリップされている。しかし、こうして蓄電素子C1に電荷を蓄えるにしたがって蓄電素子C1の端子間の電圧が増加していく。すると、それ以降は、蓄電素子C1の端子間電圧がVC1と2Vfとの和よりも高い電圧になって始めて、圧電部材108cから電荷が流れ込むようになる。このため、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧がクリップされる値が、蓄電素子C1に電荷が蓄えられるにしたがって次第に上昇していく。
【0073】
加えて、図3及び図4を用いて前述したように、圧電部材108cから電荷を流出させない限り、圧電部材108c(正確には梁104)を変形させる度に、圧電部材108c内の電荷は増えて行き、それに伴って、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧は大きくなる。このため、電荷がインダクターLやスイッチSWを流れる際の損失などを考えなければ、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧を大きくすることができる。このため、本実施例の発電装置100によれば、特別な昇圧回路を設けなくても、電気負荷の駆動に必要な電圧まで自然に昇圧させた状態で、発電することが可能となる。
【0074】
A−4.スイッチの切換タイミング:
以上に説明したように、本実施例の発電装置100では、圧電部材108c(正確には梁104)に繰り返し変形を加えて、変形方向が切り換わるタイミングで、共振周期Tの
半分の時間だけ圧電部材108cをインダクターLに接続することで、蓄電素子C1に効率良く電荷を蓄えることができ、加えて昇圧回路が不要なために容易に小型化することができるという優れた特徴を得ることができる。もっとも、制御部130やスイッチSWの動作速度などの事情から、制御部130がスイッチSWをONするタイミングは、梁104の変形方向が切り換わるタイミングと完全に一致するとは限らない。しかし、スイッチSWがONするタイミングが梁104の変形方向が切り換わるタイミングと完全に一致しなくても、梁104の固有振動周期と一致する周期で、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenを昇圧させることが可能である。以下、この理由について説明する。
【0075】
図5Aは、仮に、梁104の変形方向が切り替わる時刻t1でスイッチSWをONした後OFFしない場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図5Bは、図5Aの時刻t1以降を拡大したものである。図5の例では、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0076】
時刻t1において、Vgenはピークになっており、スイッチSWがONすることによって、LC共振回路の共振周期Tの1/2の周期(時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,・・・)で正負のピーク値Vp1,Vp2,Vp3,Vp4,Vp5,Vp6,・・・が交互に現れながら減衰していく。もし、時刻t1からT/2だけ経過後の時刻t2にスイッチSWをOFFにすると、前述したVgenのシフト量はVp1の絶対値とVp2の絶対値の和(|Vp1|+|Vp2|)となる。図3及び図4を用いて説明したように、Vp2は、LC共振回路の共振によって、容量成分Cgの正負の電荷が入れ替わったときの電圧値であるから、Vp1の絶対値が大きいほどVp2の絶対値も大きくなる。したがって、Vp1の絶対値が大きいほどVgenのシフト量も大きくなる。
【0077】
図6は、梁104の変形方向が切り替わるタイミング毎にスイッチSWがT/2だけONする場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図6の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。圧電部材108cが発生させる起電力による電圧Vpztの振幅が一定とすると、図6に示すように、最初にVgenが正のピーク値となる電圧値V1となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすると、VgenはV1+Vaだけマイナス方向にシフトする。すると、2回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V2=−(Va+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVb+Va+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、3回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V3=Vb+2V1であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVc+Vb+2V1だけマイナス方向にシフトする。同様に、4回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V4=−(Vc+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVd+Vc+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、5回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V5=Vd+2V1である。ここで、V2=−(Va+2V1)であるから、明らかに|V2|>|V1|である。V1,V2は図5BのVp1に対応する電圧値、Va,Vbは図5BのVp2に相当する電圧値であり、|V2|>|V1|であるから必ずVb>Vaとなる。すると、V2=−(Va+2V1),V3=Vb+2V1であり、Vb>Vaであるから|V3|>|V2|である。同様に、|V3|>|V2|であるから必ずVc>Vbとなり、V3=Vb+2V1,V4=−(Vc+2V1)であり、Vc>Vbであるから|V4|>|V3|である。同様に、|V4|>|V3|であるから必ずVd>Vcとなり、V4=−(Vc+2V1),V5=Vd+2V1であり、Vd>Vcであるから|V5|>|V4|である。要するに、梁104の変形方向が切り替わるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすることによって、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの絶対値は|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V
5|<・・・と昇圧していく。
【0078】
梁104の変形方向が切り替わるタイミングとスイッチSWがONするタイミングがずれた場合も同様に考えることができる。図7Aは、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの後ろでスイッチSWがT/2だけONする場合に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示し、図7Bは、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの前でスイッチSWがT/2だけONする場合に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図7A、図7Bの例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0079】
図7A及び図7Bの例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONするときの電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONするときの電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONするときの電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONするときの電圧値V5=Vd+2V1、・・・となる。ここで、V2,V3,V4,V5,・・・は、それぞれ図6の場合のV2,V3,V4,V5,・・・と同じ式で表されるので、やはりV2>V1、V3>V2、V4>V3、V5>V4、・・・となる。したがって、梁104の変形方向が切り替わるタイミングから前後にずれたタイミングでスイッチSWをT/2だけONしても、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図7A及び図7Bの例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0080】
梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONする場合(図7A及び図7BでV1=0の場合)は、LC共振回路の共振が起こらずVgenは昇圧しない。
【0081】
以上に説明したように、スイッチSWがONするタイミングが任意のタイミング(ただし、梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングを除く)であっても、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧を昇圧させることができる。
【0082】
発電効率を高めるために、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすることが望ましいが、所定期間だけスイッチSWをONにしても第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenを昇圧させることは可能である。例えば、図8は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/2倍の時間だけスイッチSWをONにした場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの一例を示している。要するに、図5Bに示した時刻t1でスイッチSWをONにして時刻t3でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。図8の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0083】
図8の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONするときの電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONするときの電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONするときの電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONするときの電圧値V5=Vd+2V1、・・・となり、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図8の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0084】
一方、図9は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの1/4倍の時間だけスイッチSWをONにした場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。要するに、図5Bに示した時刻t1でスイッチSWをONにして時刻(t1+t2)/2でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。図9の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0085】
図9の例では、Vgenは、最初にスイッチSWがONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONするときの電圧値V2=−2V1、3回目にスイッチSWがONするときの電圧値V3=2V1、4回目にスイッチSWがONするときの電圧値V4=−2V1、5回目にスイッチSWがONするときの電圧値V5=2V1、・・・となる。すなわち、Vgenは2V1までは昇圧できるが、2V1を超えての昇圧はされない。
【0086】
同様に、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/4倍、5/4倍、7/4倍、9/4倍、・・・のいずれかの時間だけスイッチSWをONにした場合もV2=−2V1、V3=2V1、V4=−2V1、V5=2V1、・・・となり、Vgenは2V1までは昇圧できるが、2V1を超えての昇圧はされない。
【0087】
以上より、LC共振回路の共振によって、少なくとも、VgenがスイッチSWをONにするときの極性と反対の極性となったときにスイッチSWをOFFすれば、Vgenが昇圧していく。要するに、LC共振回路の共振周期Tに対して、スイッチSWをONする所定期間を、少なくとも、(n+1/4)Tより長く(n+3/4)Tよりも短い時間(nは0以上の任意の整数)に設定すれば、Vgenを効率よく昇圧させることができる。
【0088】
前述したように、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間だけスイッチSWをONするのが、スイッチSWの切り換えときのシフト量が最も大きくなるので、発電効率が最も高い。そこで、本実施例の発電装置100では、制御部130は、梁104の固有振動周期と一致する周期でスイッチSWをONにし、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間が経過するとスイッチSWをOFFにする。
【0089】
もっとも、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにすることは、それほど容易なことではない。例えば、梁104の変形方向が切り換わるタイミングは、梁104の変位の大きさが最大と考えれば、機械的な接点を用いて、梁104が最大変位となったタイミングでスイッチSWがONとなるように構成することも可能である。しかし、接点の調整がずれると効率が大きく低下することになる。そこで、本実施例の発電装置100では、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、スイッチSWをONにする。圧電素子110の変形方向が切り換わるタイミングは、圧電素子110が発生させる電荷による電流Ipzt2の向きが切り換わるタイミング(電流値が0となるタイミング)と一致する。したがって、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、梁104(変形部材)の変形方向が切り換わるタイミングで容易にスイッチSWをON(導通状態)にできる。
【0090】
図10は、制御用の圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、スイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図10(a)には、梁104の変位が示されている。図10(b)には、梁104の振動に伴って、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が変化する様子が示されている。図10(c)には、スイッチSWのON/OFF状態が示されている。
【0091】
図3〜図9を用いて前述したように、梁104の変位uが極値に達したタイミングでスイッチSWをONにした場合に、最も効率よく発電することができる。図10(a)と図10(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位uが極値となるのは、圧電素
子110に生じる電流Ipzt2が0となるタイミングと一致する。その理由は、圧電素子110は、インダクターLや蓄電素子C1と接続していないため、電荷の増減が圧電素子110に生じる電流Ipzt2の変化に直接反映されるからである。
【0092】
そこで、図10(b)に白抜き矢印で示したように、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が0となるタイミングを検出して、そのタイミングから、所定期間(例えば、前述したLC共振回路の共振周期Tの半分の時間(T/2))だけスイッチSWをONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
【0093】
図11は、本実施例における発電装置100の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャートである。本実施例における発電装置100の制御方法は、圧電素子110に生じる電流を検出することと、電流の検出結果に基づいて、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続することと、を含む。
【0094】
図11に示すスイッチ制御処理において、まず、制御部130は、圧電素子110に生じる電流を検出する(ステップS100)。本実施例においては、制御部130の電流検出回路134が、蓄電素子132に流れる電流を検出することによって、圧電素子110に生じる電流を検出する。図1Bに示すように、蓄電素子132は圧電素子110と並列に接続されているので、圧電素子110に生じた電流と同位相の電流が蓄電素子132に流れる。したがって、蓄電素子132に流れる電流を検出することによって、圧電素子110が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)を容易に検出できる。
【0095】
図12は、電流検出回路134の構成の一例を示すブロック図である。
【0096】
電流検出器1341は一般的に知られている、例えばホール素子型電流センサーやシャント抵抗などを用いることができる。
【0097】
増幅回路1342は、電流検出器1341の出力信号(Id)を所定のゲインで増幅する。絶対値回路1343は、増幅回路1342の出力信号(Idamp)の絶対値信号を出力する。増幅回路1342及び絶対値回路1343は必須の回路ではなく、比較器1344による電流有無の検出が容易に行えるように入れてある。
【0098】
比較器1344は、絶対値回路1343の出力信号(Iabs)を2値化(パルス化)して出力する。この比較器1344の出力信号(Ipls)の立ち下がりエッジのタイミングで、蓄電素子132に流れる電流が0になる。電流が0ではなく、少し流れている状態で検出するようにしてもよい。これは無電流時にノイズ等で比較器1344が誤動作を起こすことを防止するためである。ここでの余裕を多くとると検出タイミングがずれることによって発電効率が悪化するので、できるだけノイズを低減し、電流が0に近いタイミングで検出することが望ましい。
【0099】
図11に示すスイッチ制御処理において、ステップS100の後に、ステップS100で検出された電流値が0クロスしたか否かを判定する(ステップS102)。本実施例においては、制御部130の電流検出回路134の出力信号(Ipls)に基づいて、制御回路136がステップS102の判定を行う。電流値が0クロスしていない場合(ステップS102でNOの場合)には、ステップS100とステップS102とを繰り返す。
【0100】
電流値が0クロスした場合(ステップS102でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSWをON状態に切り換える(ステップS104)。本実施例においては、制御部130の制御回路136がスイッチSWに対して制御信号を出力することによってス
イッチSWをON状態に切り換える。
【0101】
ステップS104の後に、制御部130は、計時タイマーをスタートする(ステップS106)。本実施例においては、制御部130の制御回路136が計時タイマーを有していてもよい。
【0102】
ステップS106の後に、制御部130は、圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期Tの1/2の時間(T/2)が経過したか否かを判定する(ステップS108)。本実施例においては、制御部130の制御回路136がステップS108の判定を行う。制御回路136が、T/2の時間が経過していないものと判定した場合(ステップS108でNOの場合)には、ステップS108を繰り返す。
【0103】
制御回路136が、T/2の時間が経過したものと判定した場合(ステップS108でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSWをOFF状態に切り換える(ステップS110)。本実施例においては、制御部130の制御回路136がスイッチSWに対して制御信号を出力することによってスイッチSWをOFF状態に切り換える。ステップS110の後に、制御部130はステップS100からステップS110を繰り返す。
【0104】
以上のようにしてスイッチSWのON/OFF状態を切り換えることによって、梁104の動きに合わせて適切なタイミングでスイッチSWのON/OFF状態を切り換えられるので、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
【0105】
圧電素子110に生じる電流に基づいてスイッチSWのON/OFF状態を切り換えるので、電流値の極値に達したか否かではなく、電流値が基準値を横切ったか否かでタイミングを判定することができる。したがって、スイッチSWを切り換えるタイミングを精度よく判定することができる。これによって、発電効率を高めることができる。
【0106】
B.第2実施例:
以上に説明した第1実施例の発電装置100では、制御用の圧電素子110が1つだけ設けられているものとして説明した。しかし、制御用の圧電素子110は必ずしも1つだけである必要はなく、複数の制御用の圧電素子を設けてもよい。以下では、このような第2実施例について説明する。第1実施例と同様な構成については、第2実施例においても同じ番号を符番するものとして、詳細な説明は省略する。
【0107】
図13は、制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置100を示した説明図である。図13Aは、梁104の一方の面から見た平面図である。図13Bは、梁104の他方の面から見た平面図である。図13Aには、梁104の一方の面に設けられた発電用の圧電素子108が示されており、図13Bには、梁104の他方の面に設けられた2つの制御用の圧電素子(圧電素子110及び圧電素子114)が示されている。図13Aと図13Bとを比較すれば明らかなように、制御用の圧電素子110及び114は、圧電素子の長さ(梁104の長手方向への長さ)は発電用の圧電素子108と同じであるが、圧電素子の幅(梁104の短手方向への長さ)は、発電用の圧電素子108の半分よりもさらに狭くなっている。2つの制御用の圧電素子110及び114は、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられている。圧電素子114は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料で形成された圧電部材114cと、圧電部材114cの表面に金属薄膜で形成された第1電極(上部電極)114a及び第2電極(下部電極)114bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)114a及び第2電極(下部電極)114bは、圧電部材114cを挟んで対向配置されている。
【0108】
発電用の圧電素子108が梁104に対して、設置可能な最大の長さと幅であれば、発電用の圧電素子108の発電量は大きくなり、制御用の圧電素子110及び114が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、制御用の圧電素子110及び114による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率がよい。
【0109】
2つの制御用の圧電素子110及び114を、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられていることによって、梁104が上下左右で異なる変位を生じるときでも、制御用の圧電素子110及び114は適切なタイミングでスイッチSWをON/OFFすることができるので、発電装置100を様々なところで使用することができる。
【0110】
図13Cには、2つの制御用の圧電素子110及び114を備える第2実施例の発電装置100の回路図が示されている。1つめの制御用の圧電素子110は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cs1とを組み合わせたものして表され、2つめの制御用の圧電素子114は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cs2とを組み合わせたものとして表されている。1つめの制御用の圧電素子110の第1電極110a及び第2電極110bは、制御部130に接続されており、2つめの制御用の圧電素子114の第1電極114a及び第2電極114bも、制御部130に接続されている。
【0111】
図13Cに示す例では、制御部130は、圧電素子110と並列に接続された蓄電素子132と、蓄電素子132に流れる電流を検出する電流検出回路134と、圧電素子114と並列に接続された蓄電素子133と、蓄電素子133に流れる電流を検出する電流検出回路135と、電流検出回路134及び電流検出回路135の少なくとも一方で検出された電流に基づいてスイッチSWを制御する制御回路136を含んで構成されている。電流検出回路135は、電流検出回路134と同様に構成することができる。
【0112】
制御部130は、第1電極110a及び第2電極110bの組、あるいは第1電極114a及び第2電極114bの組のいずれか一方を選択して、選択した方の圧電素子110あるいは圧電素子114に生じる電流を検出することによって、スイッチSWを所定期間導通状態とする。例えば、発電装置100の設置時に、圧電素子110に生じる電流を検出して発電した場合と、圧電素子114に生じる電流を検出して発電した場合とで発電量を計測しておく。制御部130に設けたスイッチ(不図示)などを用いて、発電量の多い方を選択しておく。こうして圧電素子110又は圧電素子114の一方を予め選択しておけば、図11を用いて前述したスイッチ制御処理を行うことによって、スイッチSWのON/OFFを制御することができる。
【0113】
2つの圧電素子110及び圧電素子114は、大まかには同じような電流波形を発生させるが、梁104の構造や、製造ばらつきなどの要因で、電流波形や、電流振幅の大きさに若干の違いが生じ得る。そして電流波形に違いが生じれば、発電量に違いが生じる可能性があり、電流振幅の大きさに違いが生じれば、大きな電流振幅が得られる方(センサーとしての感度の高い方)を用いた方が、より適切なタイミングでスイッチSWを制御できる可能性がある。そこで、圧電素子110に生じる電流を検出して発電した場合と、圧電素子114に生じる電流を検出して発電した場合とで発電量を予め計測しておき、発電量の多い方を選択することで、より効率よく発電することが可能となる。
【0114】
C.第3実施例:
図14は、第3実施例の発電装置100の電気的な構造を示す回路図である。第3実施例の発電装置100の機械的な構造は、図1Aに示される構造と同一である。第1実施例と同様な構成については、第3実施例においても同じ番号を符番するものとして、詳細な説明は省略する。
【0115】
第3実施例の発電装置100では、発電用の圧電素子108だけでなく、制御用の圧電素子110も設けておき、圧電素子110で発生する電圧を検出することで、スイッチSWを制御している。
【0116】
第3実施例の発電装置100は、制御部130aを含む。制御部130aは、スイッチSWのON/OFFを制御する。具体的には、制御部130aは、圧電素子110に生じる電圧を検出し、検出された電圧が所定以上の大きさのとき、スイッチSWを導通状態として、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続する。本実施例においては、制御部130aは、圧電素子110に生じる電圧を検出する電圧検出回路138と、電圧検出回路138で検出された電圧に基づいてスイッチSWを制御する制御回路136aと、を含んで構成されている。制御回路136aは、CPU(Central Processing Unit)で構成されていてもよい。制御部130aの動作の詳細については後述される。
【0117】
図15は、制御用の圧電素子110で発生する電圧を検出することによって、スイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図15(a)には、梁104の変位が示されている。図15(b)には、梁104の振動に伴って、圧電素子110に生じる起電力Vpzt2が変化する様子が示されている。図15(c)には、スイッチSWのON/OFF状態が示されている。
【0118】
図3及び図4を用いて前述したように、梁104の変位uが極値に達したタイミングでスイッチSWをONにした場合に、最も効率よく発電することができる。図15(a)と図15(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位uが極値となるのは、圧電素子110の起電力Vpzt2が極値となるタイミングと一致する。これは、次のような理由による。先ず、圧電素子108は変形によって電荷が発生しても、その電荷がインダクターLによって引き抜かれたり、出力用コンデンサーC1に電荷が流れたりする影響で、圧電素子108の起電力Vpztは梁104の変位と完全には同じにならない。これに対して、圧電素子110は、インダクターLや出力用コンデンサーC1と接続していないため、電荷の増減が圧電素子110の起電力Vpzt2の変化に直接反映される。このため、圧電素子110の起電力Vpzt2が極値となるタイミングは、梁104の変位uが極値となるタイミングと一致するのである。
【0119】
そこで、図15(b)に矢印で示したように、圧電素子110の起電力Vpzt2が極値となるタイミングを検出して、そのタイミングから、前述した共振周期の半分の時間(T/2)だけスイッチSWをONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
【0120】
図16は、本実施例における発電装置100の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャートである。本実施例における発電装置100の制御方法は、圧電素子110に生じる電圧を検出することと、電圧の検出結果に基づいて、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続することと、を含む。
【0121】
スイッチ制御処理を開始すると、まず、電圧検出回路138が圧電素子110に生じる電圧Vpzt2を検出する(ステップS200)。次に、制御回路136aは、電圧検出回路138で検出された電圧値がピークに達したか否か(すなわち、電圧値が極値に達したか否か)を判断する(ステップS202)。電圧値がピークに達したか否かは、例えば、電圧波形の微分を行って微分値の符号が変わったら、電圧値がピークに達したと判断することができる。
【0122】
あるいは、梁104の変位の振幅はほぼ一定と考えられるから、制御用の圧電素子110で発生する電圧もほぼ等しいと考えられる。したがって、最大電圧値Vmax及び最小
電圧値Vminを記憶しておき、圧電素子110で発生する電圧を、最大電圧値Vmax及び最小電圧値Vminと比較する。圧電素子110の発生電圧が最大電圧値Vmaxを超えた場合、あるいは最小電圧値Vminを下回った場合に、電圧値がピークに達したものと判断してもよい。梁104も完全に同じ振幅で変形するとは限らないから、圧電素子110で発生する電圧の振幅も、完全に同じになるとは限らない。しかしこのような場合でも、最大電圧値Vmaxを少しだけ低めの値に設定し、Vminを少しだけ高めの値に設定しておけば、梁104の振幅に僅かなばらつきが存在していても、電圧値がピークに達したことを十分な精度で検出することが可能となる。
【0123】
制御用の圧電素子110で発生した電圧値のピークを検出しなかった場合(ステップS202でNOの場合)には、制御用の圧電素子110で発生した電圧値のピークを検出するまでステップS200からステップS202までを繰り返す。制御用の圧電素子110で発生した電圧値のピークを検出した場合(ステップS202でYESの場合)には、制御部130aは、共振回路(圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路)のスイッチSWをONにする(ステップS204)。本実施例においては、制御部130aの制御回路136aがスイッチSWに対して制御信号を出力することによってスイッチSWをONにする。
【0124】
ステップS204の後に、制御部130aは、制御回路136aに内蔵された図示しない計時タイマーをスタートする(ステップS206)。ステップS206の後に、制御部130aは、圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期Tの1/2の時間が、経過したか否かを判断する(ステップS208)。本実施例においては、制御部130aの制御回路136aがステップS208の判定を行う。制御回路136aが共振周期Tの1/2の時間が経過していないものと判定した場合(ステップS208でNOの場合)には、ステップS208を繰り返す。
【0125】
制御回路136aが共振周期Tの1/2の時間が経過したものと判定した場合(ステップS208でYESの場合)には、制御部130aは、共振回路のスイッチSWをOFFにする(ステップS210)。本実施例においては、制御部130aの制御回路136aがスイッチSWに対して制御信号を出力することによってスイッチSWをOFFにする。
【0126】
ステップS210の後、制御部130aは、ステップS200からステップS210を繰り返す。
【0127】
以上のようにして共振回路のスイッチSWのON/OFFを行えば、梁104の動きに合わせて適切なタイミングでスイッチSWをON/OFFすることができるので、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
【0128】
発電用の圧電素子108の発電量が制御用の圧電素子110の発電量よりも大きいことが好ましい。制御用の圧電素子110は、制御に必要な発電量だけ確保すればよく、発電用の圧電素子108の発電量が大きいことで発電装置100の効率的に発電できる。さらに、制御用の圧電素子110の発電量を制御に必要な最小限の発電量とすれば、制御用の圧電素子110による梁104の変位抵抗が低減し、発電効率がよくなる。
【0129】
D.第4実施例:
以上に説明した第3実施例の発電装置100では、制御用の圧電素子110が1つだけ設けられているものとして説明した。しかし、制御用の圧電素子110は必ずしも1つだけである必要はなく、複数の制御用の圧電素子を設けてもよい。以下では、このような第4実施例について説明する。第2実施例及び第3実施例と同様な構成については、第4実施例においても同じ番号を符番するものとして、詳細な説明は省略する。
【0130】
図17は、制御用の圧電素子を複数備えた第4実施例の発電装置100の電気的な構造を示した回路図である。第4実施例の発電装置100の機械的な構造は、図13A及び図13Bに示される構造と同一である。第4実施例の発電装置100は、2つの制御用の圧電素子110及び114を備えている。
【0131】
第2実施例と同様に、第4実施例の発電装置100において、発電用の圧電素子108が梁104に対して、設置可能な最大の長さと幅であれば、発電用の圧電素子108の発電量は大きくなり、制御用の圧電素子110,114が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、制御用の圧電素子110,114による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率がよい。
【0132】
第4実施例の発電装置100において、2つの制御用の圧電素子110及び114を、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられていることにより、梁104が上下左右で異なる変位を生じるときでも、制御用の圧電素子110,114は適切なタイミングでスイッチSWをON/OFFすることができるので、発電装置100を様々なところで使用することができる。
【0133】
1つめの制御用の圧電素子110は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサーCs1とを組み合わせたものして表され、2つめの制御用の圧電素子114は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサーCs2とを組み合わせたものとして表されている。1つめの制御用の圧電素子110の第1電極110a及び第2電極110bは、制御部130aに接続されており、2つめの制御用の圧電素子114の第1電極114a及び第2電極114bも、制御部130aに接続されている。
【0134】
制御部130aでは、第1電極110a及び第2電極110bの組、あるいは第1電極114a及び第2電極114bの組のいずれか一方を選択して、選択した方の圧電素子110あるいは圧電素子114の電圧値を検出してスイッチSWを制御する。例えば、発電装置100の設置時に、圧電素子110の電圧値を検出して発電した場合と、圧電素子114の電圧値を検出して発電した場合とで発電量を計測しておく。制御回路136aに設けたスイッチなどを用いて、発電量の多い方を選択しておく。こうして圧電素子110又は圧電素子114の一方を予め選択しておけば、図16を用いて前述したスイッチ制御処理を行うことによって、スイッチSWのON/OFFを制御することができる。
【0135】
2つの圧電素子110及び圧電素子114は、大まかには同じような電圧波形を発生させるが、梁104の構造や、製造ばらつきなどの要因で、電圧波形や、電圧振幅の大きさに若干の違いが生じ得る。そして電圧波形に違いが生じれば、発電量に違いが生じる可能性があり、電圧振幅の大きさに違いが生じれば、大きな電圧振幅が得られる方(センサーとしての感度の高い方)を用いた方が、より適切なタイミングでスイッチSWを制御できる可能性がある。そこで、圧電素子110の電圧値を検出して発電した場合と、圧電素子114の電圧値を検出して発電した場合とで発電量を予め計測しておき、発電量の多い方を選択することで、より効率よく発電することが可能となる。
【0136】
以上の説明では、圧電素子110側の端子の組(第1電極110a及び第2電極110b)、あるいは圧電素子114側の端子の組(第1電極114a及び第2電極114b)のいずれか一方を選択して、スイッチSWの制御に使用するものとして説明した。しかし、第1電極110aと第1電極114aとを接続し、第2電極110bと第2電極114bとを接続して、第1電極側と第2電極側との電位差(電圧値)を検出して、スイッチSWを制御するようにしてもよい。スイッチSWの制御にあたっては、図16を用いて前述したスイッチ制御処理を適用することができる。
【0137】
梁104の構造や、発電装置100が設置される環境などの影響で、梁104を捻るような変形が発生することが起こり得る。梁104に捻りが発生すると、圧電素子110や圧電素子114が発生する電圧波形の位相がシフトすることが起こり得る。しかし、図13Bに示したように、圧電素子110及び圧電素子114を、梁104の両幅に寄せて設けておけば、梁104の撓みに対する捻りの影響が逆になる。したがって、第1電極110aと第1電極114aとを接続し、第2電極110bと第2電極114bとを接続すれば、梁104の捻りが圧電素子110及び圧電素子114に与える影響を打ち消すことができる。その結果、たとえ梁104に捻りが生じた場合でも、捻りの影響を受けることなく適切なタイミングでスイッチSWを制御することができるので、効率よく発電することが可能となる。
【0138】
E.変形例:
上述した第1実施例、第2実施例、第3実施例及び第4実施例には種々の変形例が存在している。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。
【0139】
E−1.第1変形例:
上述した第2実施例及び第4実施例では、2つの制御用の圧電素子110及び114が、発電用の圧電素子108と同じ長さを有しており、それら制御用の圧電素子110及び114が、梁104の幅の両端に寄せた位置に設けられているものとして説明した。しかし、発電用の圧電素子108の長さの半分よりも短い2つの圧電素子110及び114を、梁104の中央の位置に、長手方向に向けて一列に並べて設けるようにしてもよい。
【0140】
図18は、第1変形例の発電装置100の梁104に、発電用の圧電素子108と、2つの制御用の圧電素子110及び114とが設けられている様子を示した説明図である。図18Aは、梁104の一方の面から見た平面図である。図18Bは、梁104の他方の面から見た平面図である。図18Aには、発電用の圧電素子108が設けられている様子が示されており、図18Bには、2つの制御用の圧電素子110及び114が設けられている様子が示されている。
【0141】
梁104の構造や、発電装置100が設置される環境によっては、梁104が波打つように変形する場合が起こり得る。すると、梁104が撓んだ場合の変形が大きくなる箇所と、小さくなる箇所とが、梁104の長手方向に沿って発生する。したがって、図18Bに示すように、短い2つの圧電素子110及び114を、梁104の中央に長手方向に沿って一列に設けておき、十分な振幅の電流波形又は電圧波形を発生する圧電素子を選択すれば、たとえ梁104が波打つような変形が発生した場合でも、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。
【0142】
図18には、制御用の圧電素子としては、圧電素子110及び圧電素子114の2つの圧電素子が設けられているものとして説明したが、3つ以上の圧電素子を設けるようにしてもよい。
【0143】
E−2.第2変形例:
上述した各種の実施例、あるいは第1変形例では、制御用の圧電素子110(及び圧電素子114)が、発電用の圧電素子108とは異なる面に設けられているものとして説明した。しかし、制御用の圧電素子110を、発電用の圧電素子108と同じ面に設けるようにしてもよい。
【0144】
図19は、第2変形例の発電装置100の梁104の同じ面に、発電用の圧電素子108及び制御用の圧電素子110が設けられている様子を示した説明図である。図19に示
した例では、発電用の圧電素子108と、制御用の圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられている。制御用の圧電素子110は、圧電素子108と同じ長さを有するが幅は狭くなっている。このように、発電用の圧電素子108に対して、ほぼ同じ長さを有する制御用の圧電素子110を、圧電素子108と平行に設けておけば、圧電素子108と圧電素子110とはほぼ同じ変形をする。したがって、圧電素子108の変形方向が切り換わるタイミングを精度良く検出して、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。
【0145】
もちろん、発電用の圧電素子108と、制御用の圧電素子110とを梁104の同じ面に設けた場合、制御用の圧電素子110の分だけ、発電用の圧電素子108の大きさ(面積)が小さくなる。その結果、前述した各種の実施例あるいは第1変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを異なる面に設けた場合に比べて、発電能力が低下する。しかし図19に示したように、制御用の圧電素子110は幅が狭いので、発電用の圧電素子108の面積の減少を比較的小さな値に抑制することができ、発電能力の低下も比較的小さくすることができる。
【0146】
その一方で、図19に示した第2変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを同じ面に設けておけば、圧電素子108及び圧電素子110を同じ工程で設けることができる。これに対して、前述した各種実施例や第1変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを異なる面に設けた場合には、圧電素子108を設ける工程と、圧電素子110を設ける工程とを別の工程にしなければならない。したがって、第2変形例のように発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを同じ面に設けることで、発電装置100の製造工程を単純化することが可能となる。逆に言えば、前述した各種の実施例や第1変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを別の面に設けた場合、発電装置100の製造工程は複雑となるが、発電用の圧電素子108の面積を大きくすることができるので、発電能力を高くすることが可能となる。
【0147】
以上では、制御用の圧電素子110が、発電用の圧電素子108とほぼ同じ長さを有するが、幅は圧電素子108よりも狭いものとして説明した。しかし、発電用の圧電素子108と幅がほぼ同じで、長さが短い制御用の圧電素子110を使用し、それら圧電素子108及び圧電素子110を梁104の同じ面に設けることとしてもよい。
【0148】
図20は、発電用の圧電素子108及び制御用の圧電素子110が、梁104の同じ面に設けられた第2変形例の他の態様を示した説明図である。図20に示す例は、変形部材(梁104)は、変形しない固定端(支持端102との接続部分)を含んで構成され、圧電素子110は、圧電素子108より固定端に近い箇所に設けられている例である。梁104のような、いわゆる片持ち梁では、先端から支持端102に近付くにしたがって曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの梁104の変形量も大きくなる。したがって、制御用の圧電素子110を支持端102の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、制御用の圧電素子110の幅を狭くすることができる。その結果、発電用の圧電素子108の面積を広くすることができるので、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
【0149】
E−3.第3変形例:
上述した第2変形例では、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられており、制御用の圧電素子110は、1つしか設けられていないものとして説明した。しかし、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられている場合でも、複数の制御用の圧電素子を設けるように
してもよい。
【0150】
図21は、発電用の圧電素子108と同じ面に複数の制御用の圧電素子110及び114が設けられた第3変形例を示した説明図である。図示した例では、発電用の圧電素子108よりも幅が狭く、長さについても発電用の圧電素子108の半分以下の短い制御用の圧電素子110及び114が一列に並べて、圧電素子108に対して平行に設けられている。
【0151】
前述したように、梁104の構造や発電装置100が設置される環境によっては、梁104が波打つように変形する場合が起こり得る。すると、梁104が撓んだ場合の変形が大きくなる箇所と、小さくなる箇所とが、梁104の長手方向に沿って発生する。したがって、制御用の圧電素子110及び114が設けられた位置によっては、十分な感度(検出する電流値)が得られない場合が起こり得る。そこで、図21に示すように、短い2つの圧電素子110及び114を、梁104の長手方向に沿って一列に設けておき、十分な感度が得られる圧電素子を選択すれば、たとえ梁104が波打つような変形が発生した場合でも、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。もちろん、制御用の圧電素子としては、圧電素子110及び圧電素子114の2つに限らず、3つ以上の圧電素子を設けるようにしても構わない。
【0152】
図21に示した第3変形例では、2つの短い制御用の圧電素子110及び114が、梁104の長手方向に一列に並んで設けられているものとして説明した。したがって、2つの短い制御用の圧電素子110及び114は、発電用の圧電素子108に対しては一方の側に設けられていることになる。これに対して、発電用の圧電素子108の両側に、発電用の圧電素子108とほぼ同じ長さで、幅の狭い制御用の圧電素子110及び114を設けることとしてもよい。
【0153】
図22は、発電用の圧電素子108と同じ面に複数の制御用の圧電素子110及び114が設けられた第3変形例の他の態様を示した説明図である。前述したように、梁104の構造や発電装置100が設置される環境などの影響で、梁104を捻るような変形が発生することが起こり得る。梁104に捻りが発生すると、圧電素子110や圧電素子114が発生する電流波形の位相がシフトして、適切なタイミングでスイッチSWを切り換えることができなくなることが起こり得る。しかし、図22に示したように、発電用の圧電素子108の両側に、幅の狭い圧電素子110及び圧電素子114を設けておき、それぞれの圧電素子110及び114の電流値を用いてスイッチSWを制御したときの発電量を計測して、発電量が多い方の圧電素子110又は114を選択しておく。こうすれば、たとえ梁104に捻りが生ずるような場合でも、発電能力の低下を少なくすることができる。
【0154】
以上、本実施例あるいは変形例について説明したが、本発明はこれら本実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0155】
例えば、上述した実施例及び変形例では、圧電素子108及び110が片持ち梁構造の梁104に取り付けられているものとして説明した。しかし、圧電素子108及び110が取り付けられる部材は、振動などによって容易に繰り返し変形する部材であれば、どのような部材であっても構わない。例えば、薄膜の表面に圧電素子108及び110を取り付けてもよいし、弦巻バネの側面に圧電素子108及び110を取り付けても構わない。
【0156】
上述した実施例及び変形例では、発電用の圧電素子108の圧電定数が制御用の圧電素子110及び114の圧電定数よりも大きくてもよい。制御用の圧電素子110及び11
4は、制御に必要な発電量だけ確保すればよく、発電用の圧電素子108の圧電定数が大きいことで圧電素子108の発電量を多くできる。その結果、発電用の圧電素子108の面積を小さくすることも可能となるため、梁104の小型化が図られる。
【0157】
上述した実施例及び変形例において、発電用の圧電素子108の発電量が制御用の圧電素子110及び114の発電量よりも大きくなっているが、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110及び114とを比較して、圧電定数や発電可能な総面積や厚さなどにより、発電量が異なっていてもよい。梁104の変位特性に応じて変位する頻度や変位量が大きい梁104の箇所に設置することで発電量を異ならせて、発電用の圧電素子108の発電量が制御用の圧電素子110及び114の発電量よりも大きくしてもよい。
上述した実施例及び変形例において、発電用の圧電素子は、複数であってもよい。発電用の圧電素子は複数で多いほど発電量は多くなる。したがって、発電用の圧電素子を複数としておけば、外部へ電荷を供給することに用いる発電用の圧電素子から制御用の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0158】
本発明の発電装置は振動や移動に応じて発電するため、例えば、橋梁や建築物あるいは地すべり想定箇所などに発電装置を設置すれば地震などの災害時に発電し、電子機器などのネットワーク手段に必要時(災害時)だけ電源供給することもできる。
【0159】
電子機器に限らず、本発明の発電装置は小型化が可能であるため、あらゆる機器に設置することもできる。例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動によって発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0160】
このとき、あらゆる振動に対応するために、梁104の長さや錘106の重さが異なる複数の発電装置100を移動手段に組み込んでもよい。例えば、複数の発電装置100が共通の支持端102に固定されている発電ユニットとして構成されていてもよい。
【0161】
本発明の発電装置を電池の代わりにリモコン等の電子機器に組み込むこともできる。
【0162】
さらに、特定の機器等に設置されるのではなく、本発明の発電装置が例えばボタン電池、乾電池と同じ形状であって、電子機器一般で使用されてもよい。このとき、振動によって蓄電素子への充電が可能であるため、電力が喪失した災害時でも電池として使用可能である。一次電池より寿命が長いため、ライフサイクルの観点で環境負荷低減を図ることができる。
【0163】
本発明は、実施例で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。本発明は、実施例で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。本発明は、実施例で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。本発明は、実施例で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0164】
100…発電装置、102…支持端、104…梁、106…錘、108…圧電素子、108a…第1電極、108b…第2電極、108c…圧電部材、110…圧電素子、110a…第1電極、110b…第2電極、110c…圧電部材、114…圧電素子、114a…第1電極、114b…第2電極、114c…圧電部材、120…整流回路、130,130a…制御部、132,133…蓄電素子、134,135…電流検出回路、136,136a…制御回路、138…電圧検出回路、1341…電流検出器、1342…増幅回路、1343…絶対値回路、1344…比較器、L…インダクター、C1…蓄電素子、D
1〜D4…ダイオード、SW…スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置、電子機器、移動手段及び発電装置の制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電材料は、外力を受けて変形すると、材料内部に電気分極が誘起されて表面に正負の電荷が現れる。このような現象は、いわゆる圧電効果と呼ばれている。圧電材料が有するこのような性質を利用して、片持ち梁を振動させて圧電材料に繰り返し加重を作用させ、圧電材料の表面に生じた電荷を電気として取り出す発電方法が提案されている。
【0003】
例えば、先端に錘を設けると共に圧電材料の薄板を貼り付けた金属製の片持ち梁を振動させ、振動に伴って圧電材料に交互に生じる正負の電荷を取り出すことによって交流電流を発生させる。この交流電流を、ダイオードを用いて整流した後、コンデンサーに蓄えておき、電力として取り出す技術が提案されている(特許文献1)。圧電素子で正の電荷が発生している間だけ接点が閉じるようにすることで、ダイオードでの電圧損失を発生させずに直流電流が得られるようにした技術も提案されている(特許文献2)。これら技術を用いれば、発電装置を小型化することができるので、例えば小型の電子部品に電池の代わりに組み込むなどの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−107752号公報
【特許文献2】特開2005−312269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている従来の技術では、得られる電圧が、圧電材料の電気分極によって生じる電圧までに限られるという問題があった。このため、ほとんどの場合は、別に昇圧回路が必要となり、発電装置を十分に小型化することが難しいという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、圧電材料の圧電効果を利用した発電装置を大型化させることなく、高い電圧を発生させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例の発電装置は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、前記第2の圧電素子に生じる電流を検出し、検出された前記電流が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、を備える、発電装置である。
【0009】
本適用例によれば、第1の圧電素子及び第2の圧電素子が変形部材に備えられているの
で、変形部材が変形することによって、第1の圧電素子及び第2の圧電素子も変形する。その結果、これら圧電素子には、圧電効果によって正負の電荷が発生する。電荷の発生量は、圧電素子の変形量が大きくなるほど多くなる。第1の圧電素子はインダクターと共に共振回路を構成しており、その共振回路にはスイッチが設けられている。スイッチでの導通を切断した状態で変形部材の変形を開始して、変形量が極値となったとき(すなわち変形方向が切り換わるとき)に、スイッチを導通状態とする。第1の圧電素子は変形部材と共に変形し、変形量が大きくなるほど多くの電荷を発生させるから、第1の圧電素子で発生した電荷が最も多くなったときに、第1の圧電素子がインダクターに接続されて共振回路を形成する。すると、第1の圧電素子に発生していた電荷がインダクターに流れ込む。第1の圧電素子及びインダクターは共振回路を構成しているから、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、第1の圧電素子の反対側の端子に流れ込む。この期間(すなわち、第1の圧電素子の一方の端子から流れ出した電荷が、インダクターを介して反対側の端子から再び第1の圧電素子内に流れ込むまでの期間)は、第1の圧電素子及びインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。したがって、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成し、その後、共振周期の半分の時間が経過したときにスイッチを切断すれば、インダクターを接続する前に第1の圧電素子内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。その状態から、今度は逆方向に変形部材を変形させれば、第1の圧電素子が逆方向に変形するため、正負の電荷の配置が逆転した状態からさらに圧電効果によって発生した新たな電荷が積み増されるようにして第1の圧電素子内に電荷が蓄積される。第1の圧電素子内に電荷が蓄積されるにしたがって発生する電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、第1の圧電素子を構成する圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。さらに、こうして第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積するためには、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成することが重要となる。ここで、変形部材には第1の圧電素子及び第2の圧電素子が備えられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。第2の圧電素子の変形方向が切り換わるタイミングは、第2の圧電素子が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)と一致する。したがって、第2の圧電素子に生じる電流を検出することによって、変形部材の変形方向が切り換わるタイミングで容易にスイッチを導通状態にできる。制御部は、第1の圧電素子の変形方向の切り換わりから所定期間だけスイッチを導通状態とすることで、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。したがって、圧電効果を利用して、小型で効率的に高い電圧を発生させることが可能な発電装置を実現できる。
【0010】
[適用例2]
上述の適用例において、前記制御部は、前記変形部材の変形方向が切り換わるタイミングで前記スイッチを電気的に接続した後、所定期間が経過するタイミングで前記スイッチを電気的に切断することが好ましい。
【0011】
本適用例によれば、変形部材の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチを電気的に接続する(導通状態にする)ことで、変形部材の変形状態(振動状態)に同期した適切なタイミングで、圧電素子とインダクターとの接続・切断を周期的に繰り返すことができるので、圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。
【0012】
[適用例3]
上述の適用例において、前記制御部は、前記第2の圧電素子と並列に接続された蓄電素子と、前記蓄電素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、を含むことが好ましい。
【0013】
蓄電素子が第2の圧電素子と並列に接続されているので、第2の圧電素子に生じた電流
と同位相の電流が蓄電素子に流れる。したがって、蓄電素子に流れる電流を検出することによって、第2の圧電素子が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)を容易に検出できる。
【0014】
[適用例4]
上述の適用例において、前記変形部材は複数の面を有し、前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に設けられていることが好ましい。
【0015】
仮に、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を、変形部材の同じ面に設けたとすると、第2の圧電素子が存在する分だけ第1の圧電素子の設置面積が狭くなる。変形量が同じであれば、圧電素子の設置面積が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを、変形部材の異なる面に設けることとしておけば、第1の圧電素子の設置面積を大きくすることができるので、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0016】
[適用例5]
上述の適用例において、前記変形部材は複数の面を有し、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に設けられていることが好ましい。
【0017】
第1の圧電素子及び第2の圧電素子が、変形部材の同じ面に設けられていれば、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を一度に(同じ工程で)変形部材に設けることができる。このため、生産性良く発電装置を製造することが可能となる。
【0018】
[適用例6]
上述の適用例において、前記変形部材は、変形しない固定端を有し、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられていることが好ましい。
【0019】
固定端に近付くにしたがって変形部材の曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの変形部材の変形量も大きくなる。したがって、第2の圧電素子を固定端の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、第2の圧電素子の面積を狭くすることができる。加えて、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを同じ面に設ける場合には、第2の圧電素子の面積を狭くすることができる分だけ、発電用の第1の圧電素子の面積を広くすることができるので、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
【0020】
[適用例7]
本適用例の電子機器は、上述の発電装置を用いた、電子機器である。
【0021】
[適用例8]
本適用例の移動手段は、上述の発電装置を用いた、移動手段である。
【0022】
これらの適用例によれば、電池の代わりにリモコン等の電子機器に組み込むことが可能であるため、電子機器の移動によって発電できるほか、例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動によって発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0023】
[適用例9]
本適用例の発電装置の制御方法は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変
形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されたインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、を備える発電装置の制御方法であって、前記第2の圧電素子に生じる電流を検出することと、前記電流の検出結果に基づいて、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続することと、を含む、発電装置の制御方法である。
【0024】
本適用例によれば、変形部材には第1の圧電素子及び第2の圧電素子が備えられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。第2の圧電素子の変形方向が切り換わるタイミングは、第2の圧電素子が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)と一致する。したがって、第2の圧電素子に生じた電流を検出し、検出された電流に基づいてスイッチを所定期間導通状態とすることで、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。第1の圧電素子内に電荷を蓄積した分だけ、第1の圧電素子が生じさせる電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。
【0025】
[適用例10]
本適用例の発電装置は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられ、前記第1の圧電素子よりも生じる発電量が小さい第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、前記第2の圧電素子に生じた電圧を検出し、検出された前記電圧が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを用いて前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、を備える、発電装置である。
【0026】
本適用例によれば、発電装置では、第1の圧電素子及び第2の圧電素子が変形部材に備えられているので、変形部材が変形することにより、第1の圧電素子及び第2の圧電素子も変形する。その結果、これら圧電素子には、圧電効果によって正負の電荷が発生する。電荷の発生量は、圧電素子の変形量が大きくなるほど多くなる。第1の圧電素子はインダクターとともに共振回路を構成しており、その共振回路にはスイッチが設けられている。スイッチでの導通を切断した状態で変形部材の変形を開始して、変形量が極値となったとき(すなわち変形方向が切り換わるとき)に、スイッチを導通状態とする。第1の圧電素子(及び第2の圧電素子)は変形部材とともに変形し、変形量が大きくなるほど多くの電荷を発生させるから、第1の圧電素子(及び第2の圧電素子)で発生した電荷が最も多くなったときに、第1の圧電素子がインダクターに接続されて共振回路を形成する。すると、第1の圧電素子に発生していた電荷がインダクターに流れ込む。第1の圧電素子及びインダクターは共振回路を構成しているから、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、第1の圧電素子の反対側の端子に流れ込む。この期間(すなわち、第1の圧電素子の一方の端子から流れ出した電荷が、インダクターを介して反対側の端子から再び第1の圧電素子内に流れ込むまでの期間)は、第1の圧電素子及びインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。したがって、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成し、その後、共振周期の半分の時間が経過したときにスイッチを切断すれば、インダクターを接続する前に第1の圧電素子内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。その状態から、今度は逆方向に変形部材を変形させれば、第1の圧電素子が逆方向に変形するため、正負の電荷の配置が逆転した状態から更に圧電効果によって発生した新たな電荷が積み増されるようにして第1の圧電素子内に電荷が蓄積される。第1の圧電素子内に電荷が蓄積されるにしたがって発生する電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、第1の圧電素子を構成する圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができ
る。さらに、こうして第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積するためには、第1の圧電素子の変形方向が切り換わったときにスイッチを接続して共振回路を形成することが重要となる。ここで、変形部材には第1の圧電素子及び第2の圧電素子が設けられているので、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、第2の圧電素子の変形方向も切り換わる。第2の圧電素子も変形量が大きくなるほど高い電圧を発生させるから、第2の圧電素子の変形方向が切り換わるところでは、第2の圧電素子の発生する電圧が極値である。このことから、第2の圧電素子に生じた電圧を検出して、その電圧が極値となった時点から所定期間だけスイッチを導通状態とすれば、第1の圧電素子内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0027】
[適用例11]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも圧電定数が大きいことが好ましい。
【0028】
一般的には、圧電素子の圧電定数が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子を第2の圧電素子より圧電定数が大きいこととしておけば、外部へ電荷を供給することに用いる第1の圧電素子から第2の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0029】
[適用例12]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも発電可能な面積が大きいことが好ましい。
【0030】
同等の発電能力を有する圧電素子であれば、発電可能な面積が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子を第2の圧電素子より発電可能な面積が大きいこととしておけば、外部へ電荷を供給することに用いる第1の圧電素子から第2の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0031】
[適用例13]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子は、複数であることが好ましい。
【0032】
第1の圧電素子は複数で多いほど発電量は多くなる。したがって、第1の圧電素子を複数としておけば、外部へ電荷を供給することに用いる第1の圧電素子から第2の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0033】
[適用例14]
上述の適用例において、前記変形部材は複数の面を有し、前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に備えられていることが好ましい。
【0034】
仮に、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を、変形部材の同じ面に設けたとすると、第2の圧電素子が存在する分だけ第1の圧電素子の設置面積が狭くなる。変形量が同じであれば、圧電素子の設置面積が大きくなるほど発電能力は高くなる。したがって、第1の圧電素子と第2の圧電素子とを、変形部材の異なる面に設けることとしておけば、第1の圧電素子の設置面積を大きくすることができるので、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0035】
[適用例15]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材
の同じ面に備えられていることが好ましい。
【0036】
第1の圧電素子及び第2の圧電素子が、変形部材の同じ面に設けられていれば、第1の圧電素子及び第2の圧電素子を一度に(同じ工程で)変形部材に設けることができる。このため、生産性良く発電装置を製造することが可能となる。
【0037】
[適用例16]
上述の適用例において、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、長手方向の長さが同じであることが好ましい。
【0038】
第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、長手方向の長さが同じであれば、変形部材の長手方向への変形に第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とが同期して変形する。そのため、第1の圧電素子の変形方向が切り換わるときには、同期して第2の圧電素子の変形方向も切り換わるので、第1の圧電素子と前記第2の圧電素子との変形方向が切り換わるタイミングがほぼ同一になる。その結果、正確なスイッチの切替えが可能となり、上述したように発電効率が高い発電装置を提供することができる。
【0039】
[適用例17]
上述の適用例において、前記変形部材は、変形しない固定端を有し、前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられていることが好ましい。
【0040】
変形しない固定端を含んで構成される梁は、先端(自由端)から固定端(支持端)に近付くにしたがって曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの梁の変形量も大きくなる。したがって、制御に用いる第2の圧電素子を固定端の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、制御に用いる第2の圧電素子の幅を狭くすることができる。その結果、発電に用いる第1の圧電素子の面積を広くすることができるので、発電に用いる第1の圧電素子と制御に用いる第2の圧電素子とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
【0041】
[適用例18]
本適用例の電子機器は、上述の発電装置を用いた、電子機器である。
【0042】
[適用例19]
本適用例の移動手段は、上述の発電装置を用いた、移動手段である。
【0043】
これらの発明によれば、電池の代わりにリモコンや携帯可能な電子機器に組み込むことが可能であるため、電子機器の移動により発電できるほか、例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率よく電力供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】第1実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図1B】第1実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図2】第1実施例の発電装置の動作を示した説明図である。
【図3】第1実施例の発電装置の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。
【図4】第1実施例の発電装置の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。
【図5A】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図5B】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図6】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図7A】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図7B】スイッチがONするタイミングが任意のタイミングであっても、圧電部材の端子間の電圧を昇圧させることが可能な理由を示す説明図である。
【図8】LC共振回路の共振周期の3/2倍の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図9】LC共振回路の共振周期の1/4倍の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図10】制御用の圧電素子に生じる電流を検出することによってスイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。
【図11】本実施例における発電装置の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャート。
【図12】電流検出回路の構成の一例を示すブロック図。
【図13A】制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置を示した説明図。
【図13B】制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置を示した説明図。
【図13C】制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置を示した説明図。
【図14】第3実施例の発電装置の電気的な構造を示す回路図。
【図15】制御用の圧電素子で発生する電圧を検出することによってスイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図。
【図16】本実施例における発電装置の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャート。
【図17】制御用の圧電素子を複数備えた第4実施例の発電装置の電気的な構造を示した回路図。
【図18A】発電用の圧電素子と2つの制御用の圧電素子とが設けられた第1変形例を示した説明図である。
【図18B】発電用の圧電素子と2つの制御用の圧電素子とが設けられた第1変形例を示した説明図である。
【図19】発電用の圧電素子および制御用の圧電素子が梁の同じ面に設けられた第2変形例を示した説明図である。
【図20】発電用の圧電素子および制御用の圧電素子が梁の同じ面に設けられた第2変形例の他の態様を示した説明図である。
【図21】発電用の圧電素子と同じ面に複数の制御用の圧電素子が設けられた第3変形例を示した説明図である。
【図22】発電用の圧電素子と同じ面に複数の制御用の圧電素子が設けられた第3変形例の他の態様を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好適な実施例について図面を用いて詳細に説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0046】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序にしたがって実施例を説明する。
【0047】
A.第1実施例:
A−1.発電装置の構造:
A−2.発電装置の動作:
A−3.発電装置の動作原理:
A−4.スイッチの切換タイミング:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例:
E−1.第1変形例:
E−2.第2変形例:
E−3.第3変形例:
【0048】
A.第1実施例:
A−1.発電装置の構造:
図1は、本実施例の発電装置100の構造を示した説明図である。図1Aには、発電装置100の機械的な構造が示されており、図1Bには電気的な構造が示されている。本実施例の発電装置100の機械的な構造は、先端に錘106が設けられた梁104が、基端側で支持端102に固定された片持ち梁構造となっており、変形方向を切り換えて変形することができる。支持端102は発電装置100内に固定されるのが望ましい。梁104の表面には、圧電素子108及び圧電素子110が備えられている。圧電素子108は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料で形成された圧電部材108cと、圧電部材108cの表面に金属薄膜で形成された第1電極(上部電極)108a及び第2電極(下部電極)108bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)108a及び第2電極(下部電極)108bは、圧電部材108cを挟んで対向配置されている。圧電素子110は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料で形成された圧電部材110cと、圧電部材110cの表面に金属薄膜で形成された第1電極(上部電極)110a及び第2電極(下部電極)110bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)110a及び第2電極(下部電極)110bは、圧電部材110cを挟んで対向配置されている。図1Aに示す例では、圧電素子108と圧電素子110とは同じ形状を有しているが、必ずしも同じ形状でなくてもよい。例えば、圧電素子108が梁104に対して設置可能な最大の長さと幅であれば、圧電素子108の発電量は大きくなる。一方、圧電素子110が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、圧電素子110による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率が良くなる。圧電素子108及び圧電素子110は梁104の変形によって変形するから、梁104が本発明の「変形部材」に相当する。
【0049】
梁104は、基端側が支持端102に固定されており、先端側には錘106が設けられているので、振動などが加わると、図中に白抜きの矢印で示したように、梁104の先端が大きく振動する。その結果、梁104の表面に設けられた圧電素子108及び圧電素子110には、圧縮力及び引張力が交互に作用する。すると、圧電素子108の圧電部材108cは圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極108a及び第2電極108bに現れる。同様に、圧電素子110の圧電部材110cは圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極110a及び第2電極110bに現れる。錘106は必須ではないが、梁104の先端側と基端側とで重量のバランスが非均衡であることが望ましい。なぜなら、重量のバランスが非均衡であることで、例えば、1つの振動によって梁104の変位が反復しやすくなるためである。
【0050】
図1Bには、本実施例の発電装置100の回路図が例示されている。圧電素子108の圧電部材108cは、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)C
gとして表すことができる。圧電素子110の圧電部材110cは、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Csとして表すことができる。インダクターLは、圧電部材108cに対して並列に接続されて、圧電素子108を含む共振回路を構成している。すなわち、インダクターLは圧電素子108と電気的に接続され、圧電部材108cの容量成分Cgと共に電気的な共振回路を形成している。この共振回路には、共振回路をON/OFFするためのスイッチSWが、インダクターLに対して直列に接続されて設けられている。
【0051】
制御部130は、スイッチSWのON/OFFを制御する。具体的には、制御部130は、圧電素子110に生じる電流を検出し、検出された電流が所定以上の大きさのとき、スイッチSWを導通状態として、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続する。本実施例においては、制御部130は、圧電素子110と並列に接続された蓄電素子132と、蓄電素子132に流れる電流を検出する電流検出回路134と、電流検出回路134で検出された電流に基づいてスイッチSWを制御する制御回路136と、を含んで構成されている。制御回路136は、CPU(Central Processing Unit)で構成されていてもよい。制御部130の動作の詳細については後述される。
【0052】
圧電素子108の圧電部材108cに設けられた第1電極108a及び第2電極108bは、圧電素子108が発生させる電流を整流する整流回路120に接続されている。本実施例においては、整流回路120は、4つのダイオードD1〜D4から構成される全波整流回路である。整流回路120を全波整流回路で構成することによって、圧電素子108から発生した電荷を効率よく引き出して、効率よく発電することができる。さらに、整流回路120には、電気負荷を駆動するために、整流後の電流を蓄えておく蓄電素子(出力用コンデンサー)C1が接続されている。すなわち、蓄電素子C1は、整流回路120を介して圧電素子108と並列に接続されている。蓄電素子C1は必須の構成ではなく、必要に応じて設ければよい。
【0053】
一方、圧電素子110はスイッチSWを制御するために設けられており、圧電素子110に設けられた第1電極110a及び第2電極110bは、制御部130に接続されている。したがって、以下では、圧電素子108を「発電用の圧電素子」と称し、圧電素子110を「制御用の圧電素子」と称することがあるものとする。圧電素子108が本発明の「第1の圧電素子」に対応し、圧電素子110が本発明の「第2の圧電素子」に対応する。
【0054】
A−2.発電装置の動作:
図2は、本実施例の発電装置100の動作を示した説明図である。図2(a)には、梁104の振動に伴って、梁104の先端の変位uが変化する様子が示されている。プラスの変位uは、梁104が上向きに反った状態(梁104の上面側が凹となった状態)を表しており、マイナスの変位(−u)は、梁104が下向きに反った状態(梁104の下面側が凹となった状態)を表している。図2(b)には、梁104の変形に伴って、圧電部材108cが発生する電流の様子と、その結果として圧電部材108cの内部に生じる起電力とが示されている。図2(b)では、圧電部材108cに電荷が発生する様子は、単位時間あたりに発生する電荷量(すなわち、電流Ipzt)として表され、圧電部材108cに生じる起電力は、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vpztとして表されている。
【0055】
図1を用いて前述したように、梁104には圧電素子110も設けられており、梁104が変形すると、圧電部材110cも圧電部材108cと同様に変形する。したがって、圧電部材110cの内部にも、圧電部材108cと全く同様に、図2(b)に示す電流Ipztと同様の電流Ipzt2、及び、図2(b)に示す電圧Vpztと同様の電圧Vp
zt2が発生する。
【0056】
図2(a)及び図2(b)に示されるように、梁104の変位が増加している間は、圧電部材108cは正方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがプラス値)、これに伴って第1電極108a及び第2電極108bの電圧Vpztは正方向へ増加する。正方向の電圧Vpztが、蓄電素子C1の電圧VC1と整流回路120を構成しているダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍との和、すなわち、VC1+2Vfよりも大きくなれば、それ以降に発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。梁104の変位が減少している間は、圧電部材108cは負方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがマイナス値)、これに伴って第1電極108a及び第2電極108bの電圧Vpztは負方向へ増加する。負方向の電圧Vpztが、VC1と整流回路120の2Vfの和よりも大きくなれば、発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。すなわち、図1のスイッチSWをOFFにしたままでも、図2(b)中に斜線を付して示した部分については、蓄電素子C1に電荷を蓄えることができる。
【0057】
一定時間に圧電部材108cから取り出せる電荷量(発電効率)はスイッチSWがONするタイミングによって異なり、図2(c)に示すように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWがONする場合に発電効率が最大となる。以下では、まず発電効率が最大となる場合の動作について説明する。
【0058】
制御部130が、図2(c)に示すタイミングでSWをONにしたとする。すると、図2(d)に示すように、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧波形が、スイッチSWをONにしたときにシフトしたかのような現象が発生する。すなわち、例えば、図2(d)中に「B」と表示した期間Bでは、圧電部材108cの起電力に対応する細い破線で示した電圧Vpztの波形がマイナス方向にシフトしたような、太い破線で示した電圧波形が第1電極108aと第2電極108bとの間に現れる。このような現象が発生する理由については後述する。図2(d)中に「C」と表示した期間Cでは、圧電部材108cの起電力に対応する電圧Vpztの波形がプラス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。以降の期間D、期間E、期間Fなどについても同様に、圧電部材108cの起電力に対応する電圧Vpztの波形がプラス方向あるいはマイナス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。シフトした電圧波形が、VC1と2Vfとの和を超えた部分(図2(d)中に斜線を付して示した部分)では、圧電部材108cで発生した電荷を蓄電素子C1に蓄えておくことができる。圧電部材108cから蓄電素子C1に電荷が流れる結果、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧Vgenは、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その結果、第1電極108a及び第2電極108bの間の電圧波形は、図2(d)に太い実線で示した波形となる。
【0059】
図2(b)に示したスイッチSWをOFFにしたままの場合と、図2(d)に示したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにした場合とを比較すれば明らかなように、本実施例の発電装置100では、適切なタイミングでスイッチSWをONにすることで、効率よく、蓄電素子C1に電荷を蓄えることが可能となる。そこで、第1実施例の発電装置100は、スイッチSWを適切なタイミングでONにするために、制御用の圧電素子110を設けておき、圧電素子110に生じた電流を検出してスイッチSWを制御している。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0060】
蓄電素子C1に電荷が蓄えられて、蓄電素子C1の端子間電圧が増加すると、それにしたがって電圧波形のシフト量も大きくなる。例えば、図2(d)中の期間B(蓄電素子C1に電荷が蓄えられていない状態)と、図2(d)中の期間H(蓄電素子C1に少し電荷が蓄えられた状態)とを比較すると、期間Hの方が電圧波形のシフト量が大きくなってい
る。同様に、図2(d)中の期間Cと期間Iとを比較すると、蓄電素子C1に蓄えられた電荷が増えている期間Iの方が、電圧波形のシフト量が大きくなっている。このような現象が発生する理由については後述するが、この結果、本実施例の発電装置100では、圧電部材108cを変形させたことによって、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vpzt以上の電圧を、蓄電素子C1に蓄えることも可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0061】
A−3.発電装置の動作原理:
図3は、本実施例の発電装置100の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。図4は、本実施例の発電装置100の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。図3では、圧電部材108cの変形に合わせてスイッチSWをONにしたときのCgの電荷の動きが、概念的に示されている。図3(a)は、圧電部材108c(正確には梁104)が上向きに(上面側が凹となるように)変形した状態を表している。圧電部材108cが上向きに変形すると、電流源からは正方向の電流が流れ、Cgに電荷が蓄積され、圧電部材108cの端子間には正方向の電圧が発生する。電圧値は、圧電部材108cの変形が大きくなるほど増加する。圧電部材108cの変形がピークとなったタイミング(電荷量がピークになったタイミング。図3(b)参照)で、スイッチSWをONにする。
【0062】
図3(c)には、スイッチSWをONにした直後の状態が示されている。Cgには電荷が蓄えられているから、この電荷がインダクターLに流れようとする。インダクターLに電流が流れると磁束が生じる(磁束が増加する)が、インダクターLには、自らを貫く磁束の変化を妨げる方向に逆起電力が生じる性質(自己誘導作用)がある。スイッチSWをONにしたときには、電荷が流れることによって磁束が増加しようとするから、この磁束の増加を妨げる方向(換言すれば、電荷の流れを妨げる方向)に逆起電力が発生する。逆起電力の大きさは、磁束の変化速度(単位時間あたりの変化量)に比例する。図3(c)には、このようにしてインダクターLに生じる逆起電力が、斜線を付した矢印によって表されている。このような逆起電力が発生するため、スイッチSWをONにしても、圧電部材108cの電荷は少しずつしか流れ出さない。すなわち、インダクターLを流れる電流は少しずつしか増加しない。
【0063】
その後、インダクターLを流れる電流がピークになると、磁束の変化速度が「0」となるので、図3(d)に示したように逆起電力が「0」となる。今度は電流が減少し始める。すると、インダクターLを貫く磁束が減少するので、インダクターLには、この磁束の減少を妨げる方向(電流を流そうとする方向)の起電力が発生する(図3(e)参照)。その結果、この起電力によってCgから電荷を引き抜きながら、インダクターLを電流が流れ続ける。電荷の移動の途中で損失が発生しなければ、圧電部材108cの変形によって生じた全ての電荷が移動して、ちょうど正負の電荷が置き換わったような状態(すなわち、圧電部材108cの下面側に正電荷が分布し、上面側に負電荷が分布した状態)となる。図3(f)には、圧電部材108cの変形によって生じた正負の電荷が全て移動した状態が表されている。
【0064】
仮に、このままスイッチSWをONにしておくと、今度は上述した内容と逆の現象が生じる。すなわち、圧電部材108cの下面側の正電荷がインダクターLに流れようとして、このときインダクターLには、電荷の流れを妨げる方向の逆起電力が発生する。その後、インダクターLを流れる電流がピークに達した後、減少に転じると、今度は電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)の起電力がインダクターLに発生する。その結果、圧電部材108cの下面側にあった全ての正電荷が上面側に移動した状態(図3(b)に示した状態)となる。こうして圧電部材108cの上面側に戻った正電荷は、
再び、図3(b)〜図3(f)を用いて前述したようにして、下面側に移動する。
【0065】
このように、Cgに電荷が蓄えられた状態でスイッチSWをONにした後、その状態を保っておくと、圧電部材108cとインダクターLとの間で電流の向きが交互に反転する一種の共振現象が発生する。この共振現象の周期は、いわゆるLC共振回路の共振周期Tとなるから、圧電部材108cに含まれる容量成分Cgの大きさ(キャパシタンス)をC、インダクターLの誘導成分の大きさ(インダクタンス)をLとすると、T=2π(LC)0.5によって与えられる。したがって、スイッチSWをONにした直後(図3(c)に示した状態)から、図3(f)に示した状態となるまでの時間は、T/2となる。
【0066】
そこで、スイッチSWをONにしてからT/2が経過した時点で、図4(a)に示すようにスイッチSWをOFFにする。そしてこの状態から、圧電部材108c(正確には梁104)を今度は下向きに(下面側が凹となるように)変形させる。前述した図3(a)では、圧電部材108cを上向きに変形させたが、図4(a)では下向きに変形させているので、電流源から負方向の電流が流れ、圧電部材108cの端子間の電圧が負方向へ大きくなるようにCgに電荷が蓄積する。図3(a)〜図3(f)を用いて前述したように、圧電部材108c(正確には梁104)を下向きに変形させる前の段階で、圧電部材108cの下面側には正電荷が分布し、上面側には負電荷が分布しているから、これらの電荷に加えて、下面側には新たな正電荷が蓄積され、上面側には新たな負電荷が蓄積されることになる。図4(b)には、スイッチSWをOFFにした状態で圧電部材108c(正確には梁104)を変形させることによって、圧電部材108cに新たな電荷が蓄積された状態が示されている。
【0067】
この状態からスイッチSWをONにすると、圧電部材108cの下面側に蓄積された正電荷がインダクターLに流れようとする。このときインダクターLには逆起電力が発生するので(図4(c)参照)、電流は少しずつ流れ始めるが、やがてピークに達して、その後は減少に転じる。すると、インダクターLには、電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)に起電力が発生し(図4(e)参照)、この起電力によって電流が流れ続けて、最終的には、圧電部材108cの下面側に分布していた全ての正電荷が上面側に移動し、上面側に分布していた全ての負電荷が下面側に移動した状態となる(図4(f)参照)。下面側の全ての正電荷が上面側に移動し、上面側の全ての負電荷が下面側に移動する時間は、LC共振回路の共振周期Tの半分に相当する時間T/2となる。そこで、スイッチSWをONにした後、時間T/2が経過したらスイッチSWをOFFにして、今度は圧電部材108c(正確には梁104)を上向きに(上面側が凹となるように)変形させれば、圧電部材108c内にさらに正負の電荷を蓄積することができる。
【0068】
以上に説明したように本実施例の発電装置100では、圧電部材108cを変形させて電荷を発生させた後、圧電部材108cをインダクターLに接続して、共振周期Tの半分の時間だけ共振回路を形成することで、圧電部材108c内での正負の電荷の分布を反転させる。その後、圧電部材108cを今度は逆方向に変形させて新たな電荷を発生させる。圧電部材108c内での正負の電荷の分布は反転されているから、新たに発生させた電荷は圧電部材108cに蓄積されることになる。その後、再び、共振周期Tの半分の周期だけ圧電部材108cをインダクターLに接続して、圧電部材108c内での正負の電荷の分布を反転させた後、圧電部材108cを逆方向に変形させる。このような動作を繰り返すことで、圧電部材108cを繰り返し変形させる度に、圧電部材108cに蓄積された電荷を増加させることができる。
【0069】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、スイッチSWをONにする度に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧波形がシフトする特異な現象が生じるが、この現象は、以下のようなメカニズムによって発生する。すなわち、例
えば図2(d)中に示した期間Aでは、圧電部材108c(正確には梁104)の変形にしたがって、第1電極108a及び第2電極108bの間に電圧が発生するが、第1電極108a及び第2電極108bは整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は、整流回路120に接続された蓄電素子C1に流れ込む。その結果、梁104の変形がピークになった時点でスイッチSWをONにすると、そのときに圧電部材108c内に残っていた正負の電荷がインダクターLを介して移動して、圧電部材108c内での正負の電荷の配置が入れ代わる。
【0070】
正負の電荷の配置が入れ代わった状態から梁104を逆方向に変形させると、圧電部材108cの第1電極108a及び第2電極108bの間には、圧電効果による電圧波形が現れる。すなわち、圧電部材108cの第1電極108a及び第2電極108bの極性が入れ代わった状態から、圧電部材108cに変形による電圧変化が発生することになる。その結果、図2(d)中に示した期間Bでは、梁104の変形によって圧電部材108cに生じる電圧波形をシフトさせたような、電圧波形が現れることになる。もっとも、前述したように、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は蓄電素子C1に流れ込むので、圧電部材108cの第1電極108a及び第2電極108bの間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その後、共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすると、圧電部材108cに残っていた正負の電荷の配置が入れ代わる。その状態から梁104が変形することによって、圧電部材108cには圧電効果による電圧波形が現れる。このため、図2(d)中に示した期間Cにおいても、梁104の変形による電圧波形をシフトさせたような電圧波形が現れることになる。
【0071】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、梁104が変形を繰り返しているうちに、電圧波形のシフト量が次第に大きくなるという現象も発生する。このため、圧電部材108cの圧電効果によって第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電位差よりも高い電圧を、蓄電素子C1に蓄えることができるという大きな効果を得ることができる。このような現象は、次のようなメカニズムによって生じる。
【0072】
先ず、図2(d)中の期間Aあるいは期間Bに示したように、C1が充電されていない場合は、圧電部材108cの端子間で発生する電圧が、整流回路120の2Vfを超えると、圧電部材108cから蓄電素子C1に電荷が流れ込むので、第1電極108aと第2電極108bとの間に現れる電圧は、2Vfでクリップされている。しかし、こうして蓄電素子C1に電荷を蓄えるにしたがって蓄電素子C1の端子間の電圧が増加していく。すると、それ以降は、蓄電素子C1の端子間電圧がVC1と2Vfとの和よりも高い電圧になって始めて、圧電部材108cから電荷が流れ込むようになる。このため、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧がクリップされる値が、蓄電素子C1に電荷が蓄えられるにしたがって次第に上昇していく。
【0073】
加えて、図3及び図4を用いて前述したように、圧電部材108cから電荷を流出させない限り、圧電部材108c(正確には梁104)を変形させる度に、圧電部材108c内の電荷は増えて行き、それに伴って、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧は大きくなる。このため、電荷がインダクターLやスイッチSWを流れる際の損失などを考えなければ、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧を大きくすることができる。このため、本実施例の発電装置100によれば、特別な昇圧回路を設けなくても、電気負荷の駆動に必要な電圧まで自然に昇圧させた状態で、発電することが可能となる。
【0074】
A−4.スイッチの切換タイミング:
以上に説明したように、本実施例の発電装置100では、圧電部材108c(正確には梁104)に繰り返し変形を加えて、変形方向が切り換わるタイミングで、共振周期Tの
半分の時間だけ圧電部材108cをインダクターLに接続することで、蓄電素子C1に効率良く電荷を蓄えることができ、加えて昇圧回路が不要なために容易に小型化することができるという優れた特徴を得ることができる。もっとも、制御部130やスイッチSWの動作速度などの事情から、制御部130がスイッチSWをONするタイミングは、梁104の変形方向が切り換わるタイミングと完全に一致するとは限らない。しかし、スイッチSWがONするタイミングが梁104の変形方向が切り換わるタイミングと完全に一致しなくても、梁104の固有振動周期と一致する周期で、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenを昇圧させることが可能である。以下、この理由について説明する。
【0075】
図5Aは、仮に、梁104の変形方向が切り替わる時刻t1でスイッチSWをONした後OFFしない場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図5Bは、図5Aの時刻t1以降を拡大したものである。図5の例では、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0076】
時刻t1において、Vgenはピークになっており、スイッチSWがONすることによって、LC共振回路の共振周期Tの1/2の周期(時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,・・・)で正負のピーク値Vp1,Vp2,Vp3,Vp4,Vp5,Vp6,・・・が交互に現れながら減衰していく。もし、時刻t1からT/2だけ経過後の時刻t2にスイッチSWをOFFにすると、前述したVgenのシフト量はVp1の絶対値とVp2の絶対値の和(|Vp1|+|Vp2|)となる。図3及び図4を用いて説明したように、Vp2は、LC共振回路の共振によって、容量成分Cgの正負の電荷が入れ替わったときの電圧値であるから、Vp1の絶対値が大きいほどVp2の絶対値も大きくなる。したがって、Vp1の絶対値が大きいほどVgenのシフト量も大きくなる。
【0077】
図6は、梁104の変形方向が切り替わるタイミング毎にスイッチSWがT/2だけONする場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図6の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。圧電部材108cが発生させる起電力による電圧Vpztの振幅が一定とすると、図6に示すように、最初にVgenが正のピーク値となる電圧値V1となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすると、VgenはV1+Vaだけマイナス方向にシフトする。すると、2回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V2=−(Va+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVb+Va+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、3回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V3=Vb+2V1であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVc+Vb+2V1だけマイナス方向にシフトする。同様に、4回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V4=−(Vc+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVd+Vc+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、5回目にスイッチSWがONするときのVgenの電圧値V5=Vd+2V1である。ここで、V2=−(Va+2V1)であるから、明らかに|V2|>|V1|である。V1,V2は図5BのVp1に対応する電圧値、Va,Vbは図5BのVp2に相当する電圧値であり、|V2|>|V1|であるから必ずVb>Vaとなる。すると、V2=−(Va+2V1),V3=Vb+2V1であり、Vb>Vaであるから|V3|>|V2|である。同様に、|V3|>|V2|であるから必ずVc>Vbとなり、V3=Vb+2V1,V4=−(Vc+2V1)であり、Vc>Vbであるから|V4|>|V3|である。同様に、|V4|>|V3|であるから必ずVd>Vcとなり、V4=−(Vc+2V1),V5=Vd+2V1であり、Vd>Vcであるから|V5|>|V4|である。要するに、梁104の変形方向が切り替わるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすることによって、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの絶対値は|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V
5|<・・・と昇圧していく。
【0078】
梁104の変形方向が切り替わるタイミングとスイッチSWがONするタイミングがずれた場合も同様に考えることができる。図7Aは、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの後ろでスイッチSWがT/2だけONする場合に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示し、図7Bは、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの前でスイッチSWがT/2だけONする場合に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図7A、図7Bの例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0079】
図7A及び図7Bの例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONするときの電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONするときの電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONするときの電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONするときの電圧値V5=Vd+2V1、・・・となる。ここで、V2,V3,V4,V5,・・・は、それぞれ図6の場合のV2,V3,V4,V5,・・・と同じ式で表されるので、やはりV2>V1、V3>V2、V4>V3、V5>V4、・・・となる。したがって、梁104の変形方向が切り替わるタイミングから前後にずれたタイミングでスイッチSWをT/2だけONしても、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図7A及び図7Bの例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0080】
梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONする場合(図7A及び図7BでV1=0の場合)は、LC共振回路の共振が起こらずVgenは昇圧しない。
【0081】
以上に説明したように、スイッチSWがONするタイミングが任意のタイミング(ただし、梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングを除く)であっても、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧を昇圧させることができる。
【0082】
発電効率を高めるために、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSWをONにすることが望ましいが、所定期間だけスイッチSWをONにしても第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenを昇圧させることは可能である。例えば、図8は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/2倍の時間だけスイッチSWをONにした場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの一例を示している。要するに、図5Bに示した時刻t1でスイッチSWをONにして時刻t3でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。図8の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0083】
図8の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONするときの電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONするときの電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONするときの電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONするときの電圧値V5=Vd+2V1、・・・となり、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図8の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0084】
一方、図9は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの1/4倍の時間だけスイッチSWをONにした場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。要するに、図5Bに示した時刻t1でスイッチSWをONにして時刻(t1+t2)/2でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。図9の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0085】
図9の例では、Vgenは、最初にスイッチSWがONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONするときの電圧値V2=−2V1、3回目にスイッチSWがONするときの電圧値V3=2V1、4回目にスイッチSWがONするときの電圧値V4=−2V1、5回目にスイッチSWがONするときの電圧値V5=2V1、・・・となる。すなわち、Vgenは2V1までは昇圧できるが、2V1を超えての昇圧はされない。
【0086】
同様に、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/4倍、5/4倍、7/4倍、9/4倍、・・・のいずれかの時間だけスイッチSWをONにした場合もV2=−2V1、V3=2V1、V4=−2V1、V5=2V1、・・・となり、Vgenは2V1までは昇圧できるが、2V1を超えての昇圧はされない。
【0087】
以上より、LC共振回路の共振によって、少なくとも、VgenがスイッチSWをONにするときの極性と反対の極性となったときにスイッチSWをOFFすれば、Vgenが昇圧していく。要するに、LC共振回路の共振周期Tに対して、スイッチSWをONする所定期間を、少なくとも、(n+1/4)Tより長く(n+3/4)Tよりも短い時間(nは0以上の任意の整数)に設定すれば、Vgenを効率よく昇圧させることができる。
【0088】
前述したように、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間だけスイッチSWをONするのが、スイッチSWの切り換えときのシフト量が最も大きくなるので、発電効率が最も高い。そこで、本実施例の発電装置100では、制御部130は、梁104の固有振動周期と一致する周期でスイッチSWをONにし、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間が経過するとスイッチSWをOFFにする。
【0089】
もっとも、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにすることは、それほど容易なことではない。例えば、梁104の変形方向が切り換わるタイミングは、梁104の変位の大きさが最大と考えれば、機械的な接点を用いて、梁104が最大変位となったタイミングでスイッチSWがONとなるように構成することも可能である。しかし、接点の調整がずれると効率が大きく低下することになる。そこで、本実施例の発電装置100では、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、スイッチSWをONにする。圧電素子110の変形方向が切り換わるタイミングは、圧電素子110が発生させる電荷による電流Ipzt2の向きが切り換わるタイミング(電流値が0となるタイミング)と一致する。したがって、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、梁104(変形部材)の変形方向が切り換わるタイミングで容易にスイッチSWをON(導通状態)にできる。
【0090】
図10は、制御用の圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、スイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図10(a)には、梁104の変位が示されている。図10(b)には、梁104の振動に伴って、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が変化する様子が示されている。図10(c)には、スイッチSWのON/OFF状態が示されている。
【0091】
図3〜図9を用いて前述したように、梁104の変位uが極値に達したタイミングでスイッチSWをONにした場合に、最も効率よく発電することができる。図10(a)と図10(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位uが極値となるのは、圧電素
子110に生じる電流Ipzt2が0となるタイミングと一致する。その理由は、圧電素子110は、インダクターLや蓄電素子C1と接続していないため、電荷の増減が圧電素子110に生じる電流Ipzt2の変化に直接反映されるからである。
【0092】
そこで、図10(b)に白抜き矢印で示したように、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が0となるタイミングを検出して、そのタイミングから、所定期間(例えば、前述したLC共振回路の共振周期Tの半分の時間(T/2))だけスイッチSWをONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
【0093】
図11は、本実施例における発電装置100の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャートである。本実施例における発電装置100の制御方法は、圧電素子110に生じる電流を検出することと、電流の検出結果に基づいて、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続することと、を含む。
【0094】
図11に示すスイッチ制御処理において、まず、制御部130は、圧電素子110に生じる電流を検出する(ステップS100)。本実施例においては、制御部130の電流検出回路134が、蓄電素子132に流れる電流を検出することによって、圧電素子110に生じる電流を検出する。図1Bに示すように、蓄電素子132は圧電素子110と並列に接続されているので、圧電素子110に生じた電流と同位相の電流が蓄電素子132に流れる。したがって、蓄電素子132に流れる電流を検出することによって、圧電素子110が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)を容易に検出できる。
【0095】
図12は、電流検出回路134の構成の一例を示すブロック図である。
【0096】
電流検出器1341は一般的に知られている、例えばホール素子型電流センサーやシャント抵抗などを用いることができる。
【0097】
増幅回路1342は、電流検出器1341の出力信号(Id)を所定のゲインで増幅する。絶対値回路1343は、増幅回路1342の出力信号(Idamp)の絶対値信号を出力する。増幅回路1342及び絶対値回路1343は必須の回路ではなく、比較器1344による電流有無の検出が容易に行えるように入れてある。
【0098】
比較器1344は、絶対値回路1343の出力信号(Iabs)を2値化(パルス化)して出力する。この比較器1344の出力信号(Ipls)の立ち下がりエッジのタイミングで、蓄電素子132に流れる電流が0になる。電流が0ではなく、少し流れている状態で検出するようにしてもよい。これは無電流時にノイズ等で比較器1344が誤動作を起こすことを防止するためである。ここでの余裕を多くとると検出タイミングがずれることによって発電効率が悪化するので、できるだけノイズを低減し、電流が0に近いタイミングで検出することが望ましい。
【0099】
図11に示すスイッチ制御処理において、ステップS100の後に、ステップS100で検出された電流値が0クロスしたか否かを判定する(ステップS102)。本実施例においては、制御部130の電流検出回路134の出力信号(Ipls)に基づいて、制御回路136がステップS102の判定を行う。電流値が0クロスしていない場合(ステップS102でNOの場合)には、ステップS100とステップS102とを繰り返す。
【0100】
電流値が0クロスした場合(ステップS102でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSWをON状態に切り換える(ステップS104)。本実施例においては、制御部130の制御回路136がスイッチSWに対して制御信号を出力することによってス
イッチSWをON状態に切り換える。
【0101】
ステップS104の後に、制御部130は、計時タイマーをスタートする(ステップS106)。本実施例においては、制御部130の制御回路136が計時タイマーを有していてもよい。
【0102】
ステップS106の後に、制御部130は、圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期Tの1/2の時間(T/2)が経過したか否かを判定する(ステップS108)。本実施例においては、制御部130の制御回路136がステップS108の判定を行う。制御回路136が、T/2の時間が経過していないものと判定した場合(ステップS108でNOの場合)には、ステップS108を繰り返す。
【0103】
制御回路136が、T/2の時間が経過したものと判定した場合(ステップS108でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSWをOFF状態に切り換える(ステップS110)。本実施例においては、制御部130の制御回路136がスイッチSWに対して制御信号を出力することによってスイッチSWをOFF状態に切り換える。ステップS110の後に、制御部130はステップS100からステップS110を繰り返す。
【0104】
以上のようにしてスイッチSWのON/OFF状態を切り換えることによって、梁104の動きに合わせて適切なタイミングでスイッチSWのON/OFF状態を切り換えられるので、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
【0105】
圧電素子110に生じる電流に基づいてスイッチSWのON/OFF状態を切り換えるので、電流値の極値に達したか否かではなく、電流値が基準値を横切ったか否かでタイミングを判定することができる。したがって、スイッチSWを切り換えるタイミングを精度よく判定することができる。これによって、発電効率を高めることができる。
【0106】
B.第2実施例:
以上に説明した第1実施例の発電装置100では、制御用の圧電素子110が1つだけ設けられているものとして説明した。しかし、制御用の圧電素子110は必ずしも1つだけである必要はなく、複数の制御用の圧電素子を設けてもよい。以下では、このような第2実施例について説明する。第1実施例と同様な構成については、第2実施例においても同じ番号を符番するものとして、詳細な説明は省略する。
【0107】
図13は、制御用の圧電素子を複数備えた第2実施例の発電装置100を示した説明図である。図13Aは、梁104の一方の面から見た平面図である。図13Bは、梁104の他方の面から見た平面図である。図13Aには、梁104の一方の面に設けられた発電用の圧電素子108が示されており、図13Bには、梁104の他方の面に設けられた2つの制御用の圧電素子(圧電素子110及び圧電素子114)が示されている。図13Aと図13Bとを比較すれば明らかなように、制御用の圧電素子110及び114は、圧電素子の長さ(梁104の長手方向への長さ)は発電用の圧電素子108と同じであるが、圧電素子の幅(梁104の短手方向への長さ)は、発電用の圧電素子108の半分よりもさらに狭くなっている。2つの制御用の圧電素子110及び114は、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられている。圧電素子114は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料で形成された圧電部材114cと、圧電部材114cの表面に金属薄膜で形成された第1電極(上部電極)114a及び第2電極(下部電極)114bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)114a及び第2電極(下部電極)114bは、圧電部材114cを挟んで対向配置されている。
【0108】
発電用の圧電素子108が梁104に対して、設置可能な最大の長さと幅であれば、発電用の圧電素子108の発電量は大きくなり、制御用の圧電素子110及び114が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、制御用の圧電素子110及び114による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率がよい。
【0109】
2つの制御用の圧電素子110及び114を、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられていることによって、梁104が上下左右で異なる変位を生じるときでも、制御用の圧電素子110及び114は適切なタイミングでスイッチSWをON/OFFすることができるので、発電装置100を様々なところで使用することができる。
【0110】
図13Cには、2つの制御用の圧電素子110及び114を備える第2実施例の発電装置100の回路図が示されている。1つめの制御用の圧電素子110は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cs1とを組み合わせたものして表され、2つめの制御用の圧電素子114は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cs2とを組み合わせたものとして表されている。1つめの制御用の圧電素子110の第1電極110a及び第2電極110bは、制御部130に接続されており、2つめの制御用の圧電素子114の第1電極114a及び第2電極114bも、制御部130に接続されている。
【0111】
図13Cに示す例では、制御部130は、圧電素子110と並列に接続された蓄電素子132と、蓄電素子132に流れる電流を検出する電流検出回路134と、圧電素子114と並列に接続された蓄電素子133と、蓄電素子133に流れる電流を検出する電流検出回路135と、電流検出回路134及び電流検出回路135の少なくとも一方で検出された電流に基づいてスイッチSWを制御する制御回路136を含んで構成されている。電流検出回路135は、電流検出回路134と同様に構成することができる。
【0112】
制御部130は、第1電極110a及び第2電極110bの組、あるいは第1電極114a及び第2電極114bの組のいずれか一方を選択して、選択した方の圧電素子110あるいは圧電素子114に生じる電流を検出することによって、スイッチSWを所定期間導通状態とする。例えば、発電装置100の設置時に、圧電素子110に生じる電流を検出して発電した場合と、圧電素子114に生じる電流を検出して発電した場合とで発電量を計測しておく。制御部130に設けたスイッチ(不図示)などを用いて、発電量の多い方を選択しておく。こうして圧電素子110又は圧電素子114の一方を予め選択しておけば、図11を用いて前述したスイッチ制御処理を行うことによって、スイッチSWのON/OFFを制御することができる。
【0113】
2つの圧電素子110及び圧電素子114は、大まかには同じような電流波形を発生させるが、梁104の構造や、製造ばらつきなどの要因で、電流波形や、電流振幅の大きさに若干の違いが生じ得る。そして電流波形に違いが生じれば、発電量に違いが生じる可能性があり、電流振幅の大きさに違いが生じれば、大きな電流振幅が得られる方(センサーとしての感度の高い方)を用いた方が、より適切なタイミングでスイッチSWを制御できる可能性がある。そこで、圧電素子110に生じる電流を検出して発電した場合と、圧電素子114に生じる電流を検出して発電した場合とで発電量を予め計測しておき、発電量の多い方を選択することで、より効率よく発電することが可能となる。
【0114】
C.第3実施例:
図14は、第3実施例の発電装置100の電気的な構造を示す回路図である。第3実施例の発電装置100の機械的な構造は、図1Aに示される構造と同一である。第1実施例と同様な構成については、第3実施例においても同じ番号を符番するものとして、詳細な説明は省略する。
【0115】
第3実施例の発電装置100では、発電用の圧電素子108だけでなく、制御用の圧電素子110も設けておき、圧電素子110で発生する電圧を検出することで、スイッチSWを制御している。
【0116】
第3実施例の発電装置100は、制御部130aを含む。制御部130aは、スイッチSWのON/OFFを制御する。具体的には、制御部130aは、圧電素子110に生じる電圧を検出し、検出された電圧が所定以上の大きさのとき、スイッチSWを導通状態として、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続する。本実施例においては、制御部130aは、圧電素子110に生じる電圧を検出する電圧検出回路138と、電圧検出回路138で検出された電圧に基づいてスイッチSWを制御する制御回路136aと、を含んで構成されている。制御回路136aは、CPU(Central Processing Unit)で構成されていてもよい。制御部130aの動作の詳細については後述される。
【0117】
図15は、制御用の圧電素子110で発生する電圧を検出することによって、スイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図15(a)には、梁104の変位が示されている。図15(b)には、梁104の振動に伴って、圧電素子110に生じる起電力Vpzt2が変化する様子が示されている。図15(c)には、スイッチSWのON/OFF状態が示されている。
【0118】
図3及び図4を用いて前述したように、梁104の変位uが極値に達したタイミングでスイッチSWをONにした場合に、最も効率よく発電することができる。図15(a)と図15(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位uが極値となるのは、圧電素子110の起電力Vpzt2が極値となるタイミングと一致する。これは、次のような理由による。先ず、圧電素子108は変形によって電荷が発生しても、その電荷がインダクターLによって引き抜かれたり、出力用コンデンサーC1に電荷が流れたりする影響で、圧電素子108の起電力Vpztは梁104の変位と完全には同じにならない。これに対して、圧電素子110は、インダクターLや出力用コンデンサーC1と接続していないため、電荷の増減が圧電素子110の起電力Vpzt2の変化に直接反映される。このため、圧電素子110の起電力Vpzt2が極値となるタイミングは、梁104の変位uが極値となるタイミングと一致するのである。
【0119】
そこで、図15(b)に矢印で示したように、圧電素子110の起電力Vpzt2が極値となるタイミングを検出して、そのタイミングから、前述した共振周期の半分の時間(T/2)だけスイッチSWをONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
【0120】
図16は、本実施例における発電装置100の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャートである。本実施例における発電装置100の制御方法は、圧電素子110に生じる電圧を検出することと、電圧の検出結果に基づいて、スイッチSWを介して圧電素子108とインダクターLとを電気的に接続することと、を含む。
【0121】
スイッチ制御処理を開始すると、まず、電圧検出回路138が圧電素子110に生じる電圧Vpzt2を検出する(ステップS200)。次に、制御回路136aは、電圧検出回路138で検出された電圧値がピークに達したか否か(すなわち、電圧値が極値に達したか否か)を判断する(ステップS202)。電圧値がピークに達したか否かは、例えば、電圧波形の微分を行って微分値の符号が変わったら、電圧値がピークに達したと判断することができる。
【0122】
あるいは、梁104の変位の振幅はほぼ一定と考えられるから、制御用の圧電素子110で発生する電圧もほぼ等しいと考えられる。したがって、最大電圧値Vmax及び最小
電圧値Vminを記憶しておき、圧電素子110で発生する電圧を、最大電圧値Vmax及び最小電圧値Vminと比較する。圧電素子110の発生電圧が最大電圧値Vmaxを超えた場合、あるいは最小電圧値Vminを下回った場合に、電圧値がピークに達したものと判断してもよい。梁104も完全に同じ振幅で変形するとは限らないから、圧電素子110で発生する電圧の振幅も、完全に同じになるとは限らない。しかしこのような場合でも、最大電圧値Vmaxを少しだけ低めの値に設定し、Vminを少しだけ高めの値に設定しておけば、梁104の振幅に僅かなばらつきが存在していても、電圧値がピークに達したことを十分な精度で検出することが可能となる。
【0123】
制御用の圧電素子110で発生した電圧値のピークを検出しなかった場合(ステップS202でNOの場合)には、制御用の圧電素子110で発生した電圧値のピークを検出するまでステップS200からステップS202までを繰り返す。制御用の圧電素子110で発生した電圧値のピークを検出した場合(ステップS202でYESの場合)には、制御部130aは、共振回路(圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路)のスイッチSWをONにする(ステップS204)。本実施例においては、制御部130aの制御回路136aがスイッチSWに対して制御信号を出力することによってスイッチSWをONにする。
【0124】
ステップS204の後に、制御部130aは、制御回路136aに内蔵された図示しない計時タイマーをスタートする(ステップS206)。ステップS206の後に、制御部130aは、圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期Tの1/2の時間が、経過したか否かを判断する(ステップS208)。本実施例においては、制御部130aの制御回路136aがステップS208の判定を行う。制御回路136aが共振周期Tの1/2の時間が経過していないものと判定した場合(ステップS208でNOの場合)には、ステップS208を繰り返す。
【0125】
制御回路136aが共振周期Tの1/2の時間が経過したものと判定した場合(ステップS208でYESの場合)には、制御部130aは、共振回路のスイッチSWをOFFにする(ステップS210)。本実施例においては、制御部130aの制御回路136aがスイッチSWに対して制御信号を出力することによってスイッチSWをOFFにする。
【0126】
ステップS210の後、制御部130aは、ステップS200からステップS210を繰り返す。
【0127】
以上のようにして共振回路のスイッチSWのON/OFFを行えば、梁104の動きに合わせて適切なタイミングでスイッチSWをON/OFFすることができるので、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
【0128】
発電用の圧電素子108の発電量が制御用の圧電素子110の発電量よりも大きいことが好ましい。制御用の圧電素子110は、制御に必要な発電量だけ確保すればよく、発電用の圧電素子108の発電量が大きいことで発電装置100の効率的に発電できる。さらに、制御用の圧電素子110の発電量を制御に必要な最小限の発電量とすれば、制御用の圧電素子110による梁104の変位抵抗が低減し、発電効率がよくなる。
【0129】
D.第4実施例:
以上に説明した第3実施例の発電装置100では、制御用の圧電素子110が1つだけ設けられているものとして説明した。しかし、制御用の圧電素子110は必ずしも1つだけである必要はなく、複数の制御用の圧電素子を設けてもよい。以下では、このような第4実施例について説明する。第2実施例及び第3実施例と同様な構成については、第4実施例においても同じ番号を符番するものとして、詳細な説明は省略する。
【0130】
図17は、制御用の圧電素子を複数備えた第4実施例の発電装置100の電気的な構造を示した回路図である。第4実施例の発電装置100の機械的な構造は、図13A及び図13Bに示される構造と同一である。第4実施例の発電装置100は、2つの制御用の圧電素子110及び114を備えている。
【0131】
第2実施例と同様に、第4実施例の発電装置100において、発電用の圧電素子108が梁104に対して、設置可能な最大の長さと幅であれば、発電用の圧電素子108の発電量は大きくなり、制御用の圧電素子110,114が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、制御用の圧電素子110,114による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率がよい。
【0132】
第4実施例の発電装置100において、2つの制御用の圧電素子110及び114を、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられていることにより、梁104が上下左右で異なる変位を生じるときでも、制御用の圧電素子110,114は適切なタイミングでスイッチSWをON/OFFすることができるので、発電装置100を様々なところで使用することができる。
【0133】
1つめの制御用の圧電素子110は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサーCs1とを組み合わせたものして表され、2つめの制御用の圧電素子114は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサーCs2とを組み合わせたものとして表されている。1つめの制御用の圧電素子110の第1電極110a及び第2電極110bは、制御部130aに接続されており、2つめの制御用の圧電素子114の第1電極114a及び第2電極114bも、制御部130aに接続されている。
【0134】
制御部130aでは、第1電極110a及び第2電極110bの組、あるいは第1電極114a及び第2電極114bの組のいずれか一方を選択して、選択した方の圧電素子110あるいは圧電素子114の電圧値を検出してスイッチSWを制御する。例えば、発電装置100の設置時に、圧電素子110の電圧値を検出して発電した場合と、圧電素子114の電圧値を検出して発電した場合とで発電量を計測しておく。制御回路136aに設けたスイッチなどを用いて、発電量の多い方を選択しておく。こうして圧電素子110又は圧電素子114の一方を予め選択しておけば、図16を用いて前述したスイッチ制御処理を行うことによって、スイッチSWのON/OFFを制御することができる。
【0135】
2つの圧電素子110及び圧電素子114は、大まかには同じような電圧波形を発生させるが、梁104の構造や、製造ばらつきなどの要因で、電圧波形や、電圧振幅の大きさに若干の違いが生じ得る。そして電圧波形に違いが生じれば、発電量に違いが生じる可能性があり、電圧振幅の大きさに違いが生じれば、大きな電圧振幅が得られる方(センサーとしての感度の高い方)を用いた方が、より適切なタイミングでスイッチSWを制御できる可能性がある。そこで、圧電素子110の電圧値を検出して発電した場合と、圧電素子114の電圧値を検出して発電した場合とで発電量を予め計測しておき、発電量の多い方を選択することで、より効率よく発電することが可能となる。
【0136】
以上の説明では、圧電素子110側の端子の組(第1電極110a及び第2電極110b)、あるいは圧電素子114側の端子の組(第1電極114a及び第2電極114b)のいずれか一方を選択して、スイッチSWの制御に使用するものとして説明した。しかし、第1電極110aと第1電極114aとを接続し、第2電極110bと第2電極114bとを接続して、第1電極側と第2電極側との電位差(電圧値)を検出して、スイッチSWを制御するようにしてもよい。スイッチSWの制御にあたっては、図16を用いて前述したスイッチ制御処理を適用することができる。
【0137】
梁104の構造や、発電装置100が設置される環境などの影響で、梁104を捻るような変形が発生することが起こり得る。梁104に捻りが発生すると、圧電素子110や圧電素子114が発生する電圧波形の位相がシフトすることが起こり得る。しかし、図13Bに示したように、圧電素子110及び圧電素子114を、梁104の両幅に寄せて設けておけば、梁104の撓みに対する捻りの影響が逆になる。したがって、第1電極110aと第1電極114aとを接続し、第2電極110bと第2電極114bとを接続すれば、梁104の捻りが圧電素子110及び圧電素子114に与える影響を打ち消すことができる。その結果、たとえ梁104に捻りが生じた場合でも、捻りの影響を受けることなく適切なタイミングでスイッチSWを制御することができるので、効率よく発電することが可能となる。
【0138】
E.変形例:
上述した第1実施例、第2実施例、第3実施例及び第4実施例には種々の変形例が存在している。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。
【0139】
E−1.第1変形例:
上述した第2実施例及び第4実施例では、2つの制御用の圧電素子110及び114が、発電用の圧電素子108と同じ長さを有しており、それら制御用の圧電素子110及び114が、梁104の幅の両端に寄せた位置に設けられているものとして説明した。しかし、発電用の圧電素子108の長さの半分よりも短い2つの圧電素子110及び114を、梁104の中央の位置に、長手方向に向けて一列に並べて設けるようにしてもよい。
【0140】
図18は、第1変形例の発電装置100の梁104に、発電用の圧電素子108と、2つの制御用の圧電素子110及び114とが設けられている様子を示した説明図である。図18Aは、梁104の一方の面から見た平面図である。図18Bは、梁104の他方の面から見た平面図である。図18Aには、発電用の圧電素子108が設けられている様子が示されており、図18Bには、2つの制御用の圧電素子110及び114が設けられている様子が示されている。
【0141】
梁104の構造や、発電装置100が設置される環境によっては、梁104が波打つように変形する場合が起こり得る。すると、梁104が撓んだ場合の変形が大きくなる箇所と、小さくなる箇所とが、梁104の長手方向に沿って発生する。したがって、図18Bに示すように、短い2つの圧電素子110及び114を、梁104の中央に長手方向に沿って一列に設けておき、十分な振幅の電流波形又は電圧波形を発生する圧電素子を選択すれば、たとえ梁104が波打つような変形が発生した場合でも、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。
【0142】
図18には、制御用の圧電素子としては、圧電素子110及び圧電素子114の2つの圧電素子が設けられているものとして説明したが、3つ以上の圧電素子を設けるようにしてもよい。
【0143】
E−2.第2変形例:
上述した各種の実施例、あるいは第1変形例では、制御用の圧電素子110(及び圧電素子114)が、発電用の圧電素子108とは異なる面に設けられているものとして説明した。しかし、制御用の圧電素子110を、発電用の圧電素子108と同じ面に設けるようにしてもよい。
【0144】
図19は、第2変形例の発電装置100の梁104の同じ面に、発電用の圧電素子108及び制御用の圧電素子110が設けられている様子を示した説明図である。図19に示
した例では、発電用の圧電素子108と、制御用の圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられている。制御用の圧電素子110は、圧電素子108と同じ長さを有するが幅は狭くなっている。このように、発電用の圧電素子108に対して、ほぼ同じ長さを有する制御用の圧電素子110を、圧電素子108と平行に設けておけば、圧電素子108と圧電素子110とはほぼ同じ変形をする。したがって、圧電素子108の変形方向が切り換わるタイミングを精度良く検出して、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。
【0145】
もちろん、発電用の圧電素子108と、制御用の圧電素子110とを梁104の同じ面に設けた場合、制御用の圧電素子110の分だけ、発電用の圧電素子108の大きさ(面積)が小さくなる。その結果、前述した各種の実施例あるいは第1変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを異なる面に設けた場合に比べて、発電能力が低下する。しかし図19に示したように、制御用の圧電素子110は幅が狭いので、発電用の圧電素子108の面積の減少を比較的小さな値に抑制することができ、発電能力の低下も比較的小さくすることができる。
【0146】
その一方で、図19に示した第2変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを同じ面に設けておけば、圧電素子108及び圧電素子110を同じ工程で設けることができる。これに対して、前述した各種実施例や第1変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを異なる面に設けた場合には、圧電素子108を設ける工程と、圧電素子110を設ける工程とを別の工程にしなければならない。したがって、第2変形例のように発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを同じ面に設けることで、発電装置100の製造工程を単純化することが可能となる。逆に言えば、前述した各種の実施例や第1変形例のように、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを別の面に設けた場合、発電装置100の製造工程は複雑となるが、発電用の圧電素子108の面積を大きくすることができるので、発電能力を高くすることが可能となる。
【0147】
以上では、制御用の圧電素子110が、発電用の圧電素子108とほぼ同じ長さを有するが、幅は圧電素子108よりも狭いものとして説明した。しかし、発電用の圧電素子108と幅がほぼ同じで、長さが短い制御用の圧電素子110を使用し、それら圧電素子108及び圧電素子110を梁104の同じ面に設けることとしてもよい。
【0148】
図20は、発電用の圧電素子108及び制御用の圧電素子110が、梁104の同じ面に設けられた第2変形例の他の態様を示した説明図である。図20に示す例は、変形部材(梁104)は、変形しない固定端(支持端102との接続部分)を含んで構成され、圧電素子110は、圧電素子108より固定端に近い箇所に設けられている例である。梁104のような、いわゆる片持ち梁では、先端から支持端102に近付くにしたがって曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの梁104の変形量も大きくなる。したがって、制御用の圧電素子110を支持端102の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、制御用の圧電素子110の幅を狭くすることができる。その結果、発電用の圧電素子108の面積を広くすることができるので、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
【0149】
E−3.第3変形例:
上述した第2変形例では、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられており、制御用の圧電素子110は、1つしか設けられていないものとして説明した。しかし、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられている場合でも、複数の制御用の圧電素子を設けるように
してもよい。
【0150】
図21は、発電用の圧電素子108と同じ面に複数の制御用の圧電素子110及び114が設けられた第3変形例を示した説明図である。図示した例では、発電用の圧電素子108よりも幅が狭く、長さについても発電用の圧電素子108の半分以下の短い制御用の圧電素子110及び114が一列に並べて、圧電素子108に対して平行に設けられている。
【0151】
前述したように、梁104の構造や発電装置100が設置される環境によっては、梁104が波打つように変形する場合が起こり得る。すると、梁104が撓んだ場合の変形が大きくなる箇所と、小さくなる箇所とが、梁104の長手方向に沿って発生する。したがって、制御用の圧電素子110及び114が設けられた位置によっては、十分な感度(検出する電流値)が得られない場合が起こり得る。そこで、図21に示すように、短い2つの圧電素子110及び114を、梁104の長手方向に沿って一列に設けておき、十分な感度が得られる圧電素子を選択すれば、たとえ梁104が波打つような変形が発生した場合でも、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。もちろん、制御用の圧電素子としては、圧電素子110及び圧電素子114の2つに限らず、3つ以上の圧電素子を設けるようにしても構わない。
【0152】
図21に示した第3変形例では、2つの短い制御用の圧電素子110及び114が、梁104の長手方向に一列に並んで設けられているものとして説明した。したがって、2つの短い制御用の圧電素子110及び114は、発電用の圧電素子108に対しては一方の側に設けられていることになる。これに対して、発電用の圧電素子108の両側に、発電用の圧電素子108とほぼ同じ長さで、幅の狭い制御用の圧電素子110及び114を設けることとしてもよい。
【0153】
図22は、発電用の圧電素子108と同じ面に複数の制御用の圧電素子110及び114が設けられた第3変形例の他の態様を示した説明図である。前述したように、梁104の構造や発電装置100が設置される環境などの影響で、梁104を捻るような変形が発生することが起こり得る。梁104に捻りが発生すると、圧電素子110や圧電素子114が発生する電流波形の位相がシフトして、適切なタイミングでスイッチSWを切り換えることができなくなることが起こり得る。しかし、図22に示したように、発電用の圧電素子108の両側に、幅の狭い圧電素子110及び圧電素子114を設けておき、それぞれの圧電素子110及び114の電流値を用いてスイッチSWを制御したときの発電量を計測して、発電量が多い方の圧電素子110又は114を選択しておく。こうすれば、たとえ梁104に捻りが生ずるような場合でも、発電能力の低下を少なくすることができる。
【0154】
以上、本実施例あるいは変形例について説明したが、本発明はこれら本実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0155】
例えば、上述した実施例及び変形例では、圧電素子108及び110が片持ち梁構造の梁104に取り付けられているものとして説明した。しかし、圧電素子108及び110が取り付けられる部材は、振動などによって容易に繰り返し変形する部材であれば、どのような部材であっても構わない。例えば、薄膜の表面に圧電素子108及び110を取り付けてもよいし、弦巻バネの側面に圧電素子108及び110を取り付けても構わない。
【0156】
上述した実施例及び変形例では、発電用の圧電素子108の圧電定数が制御用の圧電素子110及び114の圧電定数よりも大きくてもよい。制御用の圧電素子110及び11
4は、制御に必要な発電量だけ確保すればよく、発電用の圧電素子108の圧電定数が大きいことで圧電素子108の発電量を多くできる。その結果、発電用の圧電素子108の面積を小さくすることも可能となるため、梁104の小型化が図られる。
【0157】
上述した実施例及び変形例において、発電用の圧電素子108の発電量が制御用の圧電素子110及び114の発電量よりも大きくなっているが、発電用の圧電素子108と制御用の圧電素子110及び114とを比較して、圧電定数や発電可能な総面積や厚さなどにより、発電量が異なっていてもよい。梁104の変位特性に応じて変位する頻度や変位量が大きい梁104の箇所に設置することで発電量を異ならせて、発電用の圧電素子108の発電量が制御用の圧電素子110及び114の発電量よりも大きくしてもよい。
上述した実施例及び変形例において、発電用の圧電素子は、複数であってもよい。発電用の圧電素子は複数で多いほど発電量は多くなる。したがって、発電用の圧電素子を複数としておけば、外部へ電荷を供給することに用いる発電用の圧電素子から制御用の圧電素子よりも高い電圧が発生し、発電装置の発電能力を高くすることができる。
【0158】
本発明の発電装置は振動や移動に応じて発電するため、例えば、橋梁や建築物あるいは地すべり想定箇所などに発電装置を設置すれば地震などの災害時に発電し、電子機器などのネットワーク手段に必要時(災害時)だけ電源供給することもできる。
【0159】
電子機器に限らず、本発明の発電装置は小型化が可能であるため、あらゆる機器に設置することもできる。例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動によって発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0160】
このとき、あらゆる振動に対応するために、梁104の長さや錘106の重さが異なる複数の発電装置100を移動手段に組み込んでもよい。例えば、複数の発電装置100が共通の支持端102に固定されている発電ユニットとして構成されていてもよい。
【0161】
本発明の発電装置を電池の代わりにリモコン等の電子機器に組み込むこともできる。
【0162】
さらに、特定の機器等に設置されるのではなく、本発明の発電装置が例えばボタン電池、乾電池と同じ形状であって、電子機器一般で使用されてもよい。このとき、振動によって蓄電素子への充電が可能であるため、電力が喪失した災害時でも電池として使用可能である。一次電池より寿命が長いため、ライフサイクルの観点で環境負荷低減を図ることができる。
【0163】
本発明は、実施例で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。本発明は、実施例で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。本発明は、実施例で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。本発明は、実施例で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0164】
100…発電装置、102…支持端、104…梁、106…錘、108…圧電素子、108a…第1電極、108b…第2電極、108c…圧電部材、110…圧電素子、110a…第1電極、110b…第2電極、110c…圧電部材、114…圧電素子、114a…第1電極、114b…第2電極、114c…圧電部材、120…整流回路、130,130a…制御部、132,133…蓄電素子、134,135…電流検出回路、136,136a…制御回路、138…電圧検出回路、1341…電流検出器、1342…増幅回路、1343…絶対値回路、1344…比較器、L…インダクター、C1…蓄電素子、D
1〜D4…ダイオード、SW…スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、
前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、
前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、
前記第2の圧電素子に生じる電流を検出し、検出された前記電流が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、
を備える、発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電装置において、
前記制御部は、
前記変形部材の変形方向が切り換わるタイミングで前記スイッチを電気的に接続した後、所定期間が経過するタイミングで前記スイッチを電気的に切断する、発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電装置において、
前記制御部は、
前記第2の圧電素子と並列に接続された蓄電素子と、
前記蓄電素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
を含む、発電装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は複数の面を有し、
前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に設けられている、発電装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は複数の面を有し、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に設けられている、発電装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は、変形しない固定端を有し、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられている、発電装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、電子機器。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、移動手段。
【請求項9】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されたインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、を備える発電装置の制御方法であって、
前記第2の圧電素子に生じる電流を検出することと、
前記電流の検出結果に基づいて、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続することと、
を含む、発電装置の制御方法。
【請求項10】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、
前記変形部材に備えられ、前記第1の圧電素子よりも生じる発電量が小さい第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、
前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、
前記第2の圧電素子に生じた電圧を検出し、検出された前記電圧が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを用いて前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、
を備える、発電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも圧電定数が大きい、発電装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも発電可能な面積が大きい、記載の発電装置。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子は、複数である、発電装置。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は複数の面を有し、
前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に備えられている、発電装置。
【請求項15】
請求項10ないし13のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に備えられている、発電装置。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、長手方向の長さが同じである、発電装置。
【請求項17】
請求項10ないし16のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は、変形しない固定端を有し、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられている、発電装置。
【請求項18】
請求項10ないし17のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、電子機器。
【請求項19】
請求項10ないし17のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、移動手段。
【請求項1】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、
前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、
前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、
前記第2の圧電素子に生じる電流を検出し、検出された前記電流が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、
を備える、発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電装置において、
前記制御部は、
前記変形部材の変形方向が切り換わるタイミングで前記スイッチを電気的に接続した後、所定期間が経過するタイミングで前記スイッチを電気的に切断する、発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電装置において、
前記制御部は、
前記第2の圧電素子と並列に接続された蓄電素子と、
前記蓄電素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
を含む、発電装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は複数の面を有し、
前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に設けられている、発電装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は複数の面を有し、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に設けられている、発電装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は、変形しない固定端を有し、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられている、発電装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、電子機器。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、移動手段。
【請求項9】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、前記変形部材に備えられた第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と電気的に接続されたインダクターと、前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、を備える発電装置の制御方法であって、
前記第2の圧電素子に生じる電流を検出することと、
前記電流の検出結果に基づいて、前記スイッチを介して前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続することと、
を含む、発電装置の制御方法。
【請求項10】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に備えられた第1の圧電素子と、
前記変形部材に備えられ、前記第1の圧電素子よりも生じる発電量が小さい第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と電気的に接続されるインダクターと、
前記第1の圧電素子と前記インダクターとの間に設けられたスイッチと、
前記第2の圧電素子に生じた電圧を検出し、検出された前記電圧が所定以上の大きさのとき、前記スイッチを用いて前記第1の圧電素子と前記インダクターとを電気的に接続する制御部と、
を備える、発電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも圧電定数が大きい、発電装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子は、前記第2の圧電素子よりも発電可能な面積が大きい、記載の発電装置。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子は、複数である、発電装置。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は複数の面を有し、
前記第1の圧電素子は前記変形部材の第1の面に備えられ、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の第1の面とは異なる第2の面に備えられている、発電装置。
【請求項15】
請求項10ないし13のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、前記変形部材の同じ面に備えられている、発電装置。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、長手方向の長さが同じである、発電装置。
【請求項17】
請求項10ないし16のいずれか1項に記載の発電装置において、
前記変形部材は、変形しない固定端を有し、
前記第2の圧電素子は、前記変形部材の前記第1の圧電素子が備えられている箇所より、前記変形部材の前記固定端に近い箇所に備えられている、発電装置。
【請求項18】
請求項10ないし17のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、電子機器。
【請求項19】
請求項10ないし17のいずれか1項に記載の発電装置を用いた、移動手段。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−94047(P2013−94047A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211298(P2012−211298)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
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