説明

発電装置付電子時計

【目的】 エネルギー効率の良い発電装置付電子時計を提供する。
【構成】 回転錘からのエネルギーを機械エネルギー蓄積装置と発電機に分配して、機械エネルギー蓄積手段からのエネルギーにより指示系を駆動し、発電機により変換された電気エネルギーを蓄積した電源からのエネルギーにより回路系を駆動させる。
【効果】 電気エネルギーを蓄積した電源のみにより駆動される場合に比べ電源が同じならば、消費エネルギーが減るため長時間駆動させることができる。時計が止まってもすぐに駆動することができる。機械エネルギー蓄積装置による発電のように常に高速で回転する必要がないため耐久性に優れている。全てゼンマイの機械エネルギー蓄積装置に比べ、蓄積エネルギーが極めて小さいため時計の小型化ができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発電装置付電子時計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の発電装置付電子時計は特公平3−37152のように回転錘を用いたエネルギー補給装置により機械エネルギー蓄積をおこない、蓄積されたゼンマイのエネルギーにより発電をおこない水晶発振器を駆動し、標準信号により時計源振系を制御するものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の従来技術では、機械エネルギー蓄積装置にエネルギーが蓄積されるまで駆動できないため、駆動までの時間がかかるといった問題や全てゼンマイの機械エネルギー蓄積装置により発電を行う構成のため大きなゼンマイが必要であった。常に高速で回転するため耐久性に問題があった。
【0004】そこで本発明はこのような問題を解決するもので、その目的とするところはエネルギー効率の良い発電装置付電子時計を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の発電装置付電子時計は、回転錘、前記回転錘により発生する機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機、前記電気エネルギーを蓄える電源、前記回転錘からの機械エネルギーを蓄積する機械エネルギー蓄積装置、前記機械エネルギー蓄積装置からのエネルギーを伝達するとともに指針を有する機械エネルギー伝達系、前記機械エネルギー伝達系に連結する調速機構、前記調速機構の周期を調整する制御機構、水晶回路を含む電子回路を有し、前記制御機構及び前記電子回路は前記電源から給電を受け、前記指針は前記機械エネルギー蓄積装置からの機械エネルギーにより駆動する。
【0006】
【作用】回転錘からのエネルギーを機械エネルギー蓄積装置と発電機に分配して、機械エネルギー蓄積装置からのエネルギーにより指示系を駆動し、発電機により変換された電気エネルギーを蓄積した電源からのエネルギーにより回路系を駆動させる。
【0007】
【実施例】以下、図面によりこの発明の実施例について説明する。
【0008】図1は本発明の時計の平面レイアウト図を示す。
【0009】1は時計ムーブメントであり、回転錘2が取り付かれている。3はその回転中心であり、回転錘2の重心と回転中心3の位置は大きくずれた形状をしている。したがって、時計体が動くと回転錘2は重力の作用で回転する。この回転を回転錘に取り付けられた歯車4と増速中間車5によって増速して、永久磁石で作られたロータ6に伝えられる。ロータ6の回りには、高透磁率材のステータ7が配置され中央部にコイル8が巻回されている。
【0010】回転錘2が回転するとこの回転がロータ6に伝えられロータ6が回転するとステータ7にロータ6の回転に応じて変化する磁束が誘導される。
【0011】この磁束の変化によりコイル8には電圧が誘起され回転錘2の機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0012】コイル8の誘起電圧はダイオードによる整流回路及び過充電防止回路を経て二次電源9に充電される。
【0013】10は9からの電力により駆動する電子回路で水晶発振器、論理回路を有する回路である。
【0014】11は電磁作用等を応用した調速機構である。調速機構は電気エネルギーの機械力変換装置であり、電磁変換、圧電変換、静電変換等である。
【0015】12は電子回路10の出力により調速機構11の電流を制御する制御機構である。
【0016】13は弾性材料を有する機械エネルギー蓄積装置である。機械時計用語ではゼンマイを有する「香箱」と呼ぶ。
【0017】14は伝達輪列であり、通常時、分、秒、カレンダーを表示する指針15を有する歯車を持つ。16は回転錘2からの回転を機械エネルギー蓄積装置に伝える減速中間車である。
【0018】図2は本発明のブロック図である。
【0019】21は図1のロータ6、ステータ7、コイル8からなる発電機である。
【0020】22は発電機21、二次電源9、電子回路10、制御機構12から構成される回路系である。
【0021】23は機械エネルギー蓄積装置13、伝達輪列14、調速機構11、指針15から構成される指示系である。
【0022】本発明の構成は回転錘2の回転エネルギーを回路系22と指示系23に分配して、その各々のエネルギーにより時計の回路系、指示系をそれぞれ駆動させるものである。
【0023】図3は回路系、指示系へのエネルギー伝達を示す図である。
【0024】32は二番車、33は三番車、34は4番車、35は5番車である。
【0025】指示系及び回路系へのエネルギー分配比を1時間駆動させるために必要な回転錘のエネルギーを算出することにより回転錘からのエネルギー分配比について説明する。
【0026】指示系を駆動させるエネルギーは、2番車での出力トルクT=3gcm輪列伝達効率 ηは90%×3段とすると、指針を1時間駆動させるために必要な回転錘からのエネルギーは、
【0027】
【数1】


【0028】一方、回路系を駆動させるエネルギーは、ICの消費電力P11 =1.5V×0.2μA=0.3μW調速機構を制御するエネルギーP22 =1.5V×0.1μA=0.15μW発電機のエネルギー交換効率 k=30%輪列伝達効率 ηは90%×2段とすると、回路系を1時間駆動させるために必要な回転錘からのエネルギーは、
【0029】
【数2】


【0030】したがって、時計を1時間駆動させるのに必要な回転錘のエネルギーは、U=U1 +U2U=2.53+6.67=9.2(mJ)となる。
【0031】これを比率に直すと、指示系へのエネルギーは、27.5%回路系へのエネルギーは、72.5%上記の様に回転錘からのエネルギー分配比は、指示系を駆動させる機械エネルギー蓄積装置への分配量より、回路系を駆動させる発電機への分配量を多くすれば良いことになる。
【0032】図4で本発明の調速機構について説明する。
【0033】本発明の調速機構はステップモータを応用したものである。
【0034】ロータ41には常に機械エネルギー蓄積装置からの回転トルクが加わっている。ステータ42にはロータ41の引きトルクを発生させる内ノッチが設けられている。
【0035】ロータ41の引きトルクは機械エネルギー蓄積装置からの回転トルクより大きく設定されており、通常ロータは引きトルクと回転トルクのつり合った位置で保持されている。ロータ41は電子回路10からの信号により1秒毎に回転する。
【0036】この時、ロータ41には機械エネルギー蓄積装置13からの回転エネルギーが加わっているため少量のエネルギーでロータ41は回転することができる。
【0037】ロータ41の極数は2極以上の多極の方が回転エネルギーが少量ですむため多極のロータをもちいることが望ましい。
【0038】又、圧電素子で雁木車を制御する調速機構を用いてもよい。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば回転錘からのエネルギーを機械エネルギー蓄積装置と発電機に分配して、機械エネルギー蓄積装置からのエネルギーにより指示系を駆動させ、発電機により変換された電気エネルギーを蓄積した電源からのエネルギーにより回路系を駆動させることにより以下の様な効果を有する。
【0040】1.電気エネルギーを蓄積した電源のみにより駆動される場合に比べ電源の容量が同じならば、消費エネルギーが減るため長時間駆動させることができる。
【0041】2.時計が止まってもすぐに駆動することができる。
【0042】3.機械エネルギー蓄積装置による発電のように常に高速で回転する必要がないため耐久性に優れている。
【0043】4.全てゼンマイの機械エネルギー蓄積装置に比べ、蓄積エネルギーが極めて小さいため時計体の小型化ができる。
【0044】5.機械式時計に比べ時間精度が良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の時計の平面レイアウト図。
【図2】 本発明のブロック図。
【図3】 回路系、指示系へのエネルギー伝達を示す図。
【図4】 調速機構の図
【符号の説明】
1時計ムーブメント
2回転錘
3回転中心
4歯車
5増速中間車
6ロータ
7ステータ
8コイル
9二次電源
10電子回路
11調速機構
12制御機構
13機械エネルギー蓄積装置
14伝達輪列
15指針
16減速中間車
21発電機
32二番車
33三番車
34四番車
35五番車
41ロータ
42ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転錘、前記回転錘により発生する機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機、前記電気エネルギーを蓄える電源、前記回転錘からの機械エネルギーを蓄積する機械エネルギー蓄積装置、前記機械エネルギー蓄積装置からのエネルギーを伝達するとともに指針を有する機械エネルギー伝達系、前記機械エネルギー伝達系に連結する調速機構、前記調速機構の周期を調整する制御回路、水晶回路を含む電子回路を有し、前記制御回路及び前記電子回路は前記電源から給電を受け、前記指針は前記機械エネルギー蓄積装置からの機械エネルギーにより駆動することを特徴とする発電装置付電子時計。
【請求項2】 前記回転錘からのエネルギー分配量を前記機械エネルギー蓄積装置側より前記発電機側に多く分配することを特徴とする請求項1記載の発電装置付電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−94850
【公開日】平成6年(1994)4月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−242226
【出願日】平成4年(1992)9月10日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)