説明

発電装置付電子機器

【目的】 制御用若しくはデータ送信用の通信手段を備え、電池切れの恐れも電池交換の必要もなく、小型化可能で携帯性のよい電子機器を得る。
【構成】 自動発電機構の発電コイル1から得られる電力を大容量コンデンサ3で蓄電し、多段昇圧回路4で昇圧して制御電源用コンデンサ7及び送信電源用コンデンサ8を充電する。時計制御回路5に内蔵された送信制御回路部54は、送信データをデータ信号発生回路9に出力するとともに開閉器6を開成させ、データ信号発生回路9はデータ信号を送信波形成回路10に送る。送信波形成回路10は搬送波をデータ信号により変調して送信波を形成し、アンテナ11から送信する。送信終了後、送信制御回路部54は開閉器6を閉成して送信電源用コンデンサ8を再充電するとともに、開閉器12を開成して送信波形成回路10への電力供給を停止させ、さらに報知回路13を駆動して送信完了を知らせる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は発電装置付電子機器に係り、特に発電装置の発生電力に基づいて制御信号若しくはデータ信号を送信するように構成された電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、リモコンの制御信号やコード入力により家電製品や各種機器のスイッチ等をオンオフしたり、送信機によりデータ送信を行うようにする技術は、家庭内から各種事業所に至るまで広く使用されている。
【0003】これらの中で、電子錠をリモコン等の送信データや記録媒体の記録データ、テンキー等に入力される入力データを利用者のIDコードとして判別し、これにより解錠及び施錠するようにした技術は、建物の管理や自動車のドアロック等に使用されつつある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記リモコンによる制御信号やデータ信号の送信技術においては、内部に1次電池を内蔵したリモコン装置が多用されている。この場合、1次電池の電池切れのためにリモコン装置を使用できなくなる場合があり、しかも通信時の比較的大きな消費電力は、大容量の1次電池を要求してリモコンの小型化を妨げ、小さな1次電池を使用した場合には頻繁な電池交換をもたらすという問題点があった。したがって、特に電子錠に対するリモコン装置としては、小型化による携帯性の向上及び電池寿命の双方が不十分なものとなっていた。
【0005】また、従来の電子錠においては、IDカードやリモコン装置を携帯する必要があるため、利用者側から見ると通常の鍵を携帯する場合と何ら変わる所がなく、紛失や置き忘れ等の事故の発生する恐れがあるとともに、鍵の代わりにそれらの装置を携帯する煩わしさがある。一方、これらの機器の携帯を不要にしてテンキー等によりIDコードを入力するようにすると、入力操作の煩わしさと防犯上の問題の生ずる余地がある。
【0006】そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、1次電池を不要とした制御信号又はデータ信号の送信装置により、電池切れの心配がないと同時に小型化可能で、携帯性の良好な電子機器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の講じた手段は、小型発電装置と、少なくとも1の受信装置に対応する制御信号又はデータ信号を生成するための信号生成手段と、信号生成手段の出力する制御信号又はデータ信号を送信するための通信手段と、信号生成手段及び通信手段を制御する制御手段とを設け、小型発電装置の発生する電力により、制御手段の制御下で信号生成手段及び通信手段を駆動するものである。
【0008】この場合に、小型発電装置の発生電力を蓄積し、通信手段に電力を供給する通信電力供給系と、制御手段の制御信号に応じて、通信手段の稼働時に通信電力供給系と制御手段の電力供給系との間の電気的作用を低減若しくは遮断する作用低減手段とを設けることが望ましく、加えて、制御手段の制御信号に応じて、通信手段の非稼働時に通信電力供給系からの通信手段への給電を遮断する給電遮断手段を設けることが好ましい。
【0009】また、小型発電装置としては、偏芯した重心をもつ回転錘と、該回転錘の回転により電力を発生する電磁変換部とを有する発電機とする場合がある。
【0010】さらに、受信装置には、受信した前記制御信号又はデータ信号を自身のもつ保持データと照合して一致の有無を判定する信号判定部と、制御信号又はデータ信号が保持データと一致した場合に別個に設けられた操作入力手段を能動化する手段と、操作手段に対して所定の操作が行われた場合にのみ駆動部を動作させる手段とを設けることが望ましい。
【0011】そして、発電装置付電子機器を電子腕時計とし、受信装置を電子錠とする場合がある。
【0012】また、所定の送信装置からの送信信号を受信するための受信手段を設け、該受信手段により受信した信号の内容を表示若しくは記録する表示記録手段を設ける場合がある。
【0013】この場合には、送信装置からの送信信号を、本装置の送信した制御信号又はデータ信号を受信した受信装置の被制御情報若しくは受信情報を含む確認信号とすることが望ましい。
【0014】
【作用】かかる手段によれば、小型発電装置の発生電力を用いて信号生成手段及び通信手段を駆動することにより、電池切れの恐れがなく、電池交換の必要もない送信機器を得ることができる。
【0015】また、通信電力供給系により小型発電装置の発生電力が常時蓄積されるとともに、通信手段の稼働時には、作用低減手段により、通信手段の大電力消費に起因する電圧変動が制御手段に及ぼす影響を低減し又は遮断できるので、制御手段の誤動作を防止することができる。この場合、さらに給電遮断手段を設けて通信手段を間欠駆動させると、通信手段の電力消費量を低減することができる。
【0016】小型発電装置として回転錘の回転により電磁変換部が電力を発生する発電機を用いることにより、機器装着者の動作に基づいて常時発電できるとともに発電装置の小型化を図ることができる。
【0017】通信手段から送信される制御信号又はデータ信号を受けると操作手段を能動化させ、所定の操作が行われた場合にのみ動作部を動作させることにより、2重の動作システムとして、通信系、受信装置の受信部及び操作手段の誤動作等による事故や犯罪を防止することができる。
【0018】特に電子機器を電子腕時計として電子錠を動作させることにより、鍵を持ち歩く必要がなく、紛失等の危険性を回避できる。
【0019】本電子機器に受信手段及び表示記録手段を設けることにより、外部からの送信信号の受信器としても使用することができる。
【0020】この場合、本電子機器の送信先である受信装置の被制御情報や受信情報を受信して通信機能の確認を行うことにより、確実な操作が可能になり、誤操作や事故の発生を回避できる。
【0021】
【実施例】次に図面を参照して本発明に係る発電装置付電子機器の実施例を説明する。この実施例は電子腕時計を利用したものであり、その内部には、装着者の動きにより発電を行う自動発電機構(以下、AGS(Automatic generating system)という。)が内蔵されている。このAGSは、重心の偏芯した回転体、好ましくは回転モーメントを大きく採るために外形部を肉厚に、中心部を薄肉に形成した片重り形状の回転錘と、この回転錘の回転速度を増大させる増速輪列と、この増速輪列の回転伝達により高速回転する着磁されたAGロータと、このAGロータに対向するAGステータと、AGステータ若しくはこれに接続された鉄芯に巻回される発電コイルとから構成されている。
【0022】図1は本実施例の電子腕時計の内部回路を示すブロック図である。上記AGSの発電コイル1に対して、スイッチングトランジスタを備えたリミッタ回路2が並列に接続される。同様に、充電開閉器Sと抵抗Rからなる並列回路、大容量コンデンサ3及び整流ダイオードDが発電コイル1に対し並列に接続されている。多段昇圧回路4はコンデンサ切換によるチャージポンプ方式の昇圧回路であり、上記大容量コンデンサ3と集積化された時計制御回路5との間に接続される。
【0023】時計制御回路5には、定電圧回路部51に各々接続された、水晶振動子を備えた発振回路部52、リミッタ回路2と充電開閉器Sを制御する充電制御回路部53及び後述する送信制御回路部54を備えている。また、これらに対して並列にモータ駆動回路部55が接続され、このモータ駆動回路部55は、供給電圧の変動、温度変動、機械摩擦変動、外部磁界等に起因する負荷変動に対して、常時駆動パルス幅を変えて最適なパルス幅で時計指針用のモータコイル56を駆動するようになっている。
【0024】制御電源用コンデンサ7は、時計制御回路5の駆動電力を蓄積するものであり、送信電源用コンデンサ8は後述する通信回路系の駆動電力を蓄積するもので、双方とも大容量コンデンサ3よりも小さな容量を持つ。制御電源用コンデンサ7と送信電源用コンデンサ8との間には、スイッチングトランジスタを含む開閉器6が接続されている。データ信号発生回路9は、後述する送信信号の判別コード及びIDコードからなる送信データからデータ信号を発生させるものであり、送信波形成回路10は、このデータ信号を変調増幅して送信波を形成し、この送信波をアンテナ11に出力するものである。
【0025】ここで、送信波形成回路10に対して直列に接続されるか若しくは送信波形成回路10内に内蔵される開閉器12が設けられており、この開閉器12には、送信波形成回路10の非稼働時において、送信制御回路部54からの制御信号により送信波形成回路10への電力供給を遮断するようになっている。また、報知回路13は、送信制御回路部54からの制御信号により、後述する所定タイミングでチェックランプ又は電子ブザーを駆動する。
【0026】発電コイル1で発生する発電電力は、整流ダイオードDにより整流されて大容量コンデンサ3に蓄電され、この大容量コンデンサの電圧は、多段昇圧回路4により数段階に昇圧されて制御電源用コンデンサ7及び送信電源用コンデンサ8を充電する。この多段昇圧回路4は、大容量コンデンサ3の出力電圧に応じて充電制御回路部53から出力される昇圧制御信号に基づいて複数のコンデンサの接続態様のうち所要の昇圧度に対応した一対の接続態様を選択し、昇圧クロックに基づいてその一対の接続態様を交互に切り換えることにより、例えば1倍、1.5倍、2倍、3倍等の昇圧を行い、充電状態に起因して変化する大容量コンデンサ3の出力電圧に対して供給電圧の低下を防止し、制御系の動作範囲を拡大するようになっている。
【0027】リミッタ回路2は通常遮断されているが、大容量コンデンサの過充電を防止するために、大容量コンデンサの電圧が所定値以上になると充電制御回路部53から出力されるリミット信号に基づいて閉成し、発電コイル1の両端を短絡して発電電流をバイパスする。また、充電開閉器Sと抵抗Rからなる並列回路は即スタート回路を構成するもので、大容量コンデンサ3が放電状態にあるときには充電制御回路部53の制御電位に基づき充電開閉器Sは開成し、この状態で発電コイル1から発電電流が流れると抵抗Rの電圧降下により制御電源用コンデンサ7が急速に充電されるため、即座に時計制御回路5が動作可能となる。大容量コンデンサ3の出力電圧が多段昇圧回路4の昇圧開始電圧を越えると、昇圧動作が開始されるとともに充電開閉器Sは閉成して、通常の動作態様に復帰する。
【0028】図2は本実施例の使用態様を示したもので、電子腕時計Wは、通信用の操作ボタン21,22と、LEDからなる送信確認用のチェックランプ又は圧電体からなる電子ブザー23を備えている。このチェックランプ又は電子ブザー23は、上記報知回路13により駆動される。電子腕時計Wから出力される送信データを含む電波は、自動車に設置された受信機を介して、自動車のドアに形成されたドアロック機構30を駆動してロック及びアンロック動作を行わせるとともに、自動車の電源回路40を断続するようになっている。
【0029】ドアロック機構30は、ドアの施錠状態においては、電子腕時計Wからの送信波を受信部31で受けた後の所定時間内にドアノブ32が引き上げられると、これに連動するスイッチから信号を受けてドアロックを外すようになっており、ドアの解錠状態においては同電波の受信に基づいて施錠するようになっている。一方、電源回路40は、電子腕時計Wの送信波を受信部41で受けた後の所定時間内に補助入力部42の操作を行うことにより自動車の電装系に電力を供給することができる。
【0030】これらのドアノブ32に連動するスイッチ及び補助入力部42は請求項に記載された操作手段を構成し、2重のロックにより受信機の誤動作に伴う事故や不正使用による盗難を防止するものである。補助入力部42の構成は、通常単なる操作ボタンでもよく、この操作ボタンはスタータスイッチを兼ねていても良い。
【0031】送信制御回路部54は、図3(a)に示すように、制御対象である駆動部分を判別するための例えば3ビットの判別コード61と、送信者を識別するためのnビットのIDコード62とからなる送信データ60を内蔵メモリ内に保持しており、図2にも示す電子腕時計Wの操作ボタン21又は22が押圧されると、判別コード61及びIDコード62をデータ信号発生回路9に送出する。データ信号発生回路9は、図3(b)に示すように、発振回路部9aから出力される例えば1kHz程度のクロック信号に基づいて、送信制御回路部54から送られる制御コードにより判別コード61及びIDコード62を反映したシリアル電送のためのデータ信号の波形をデータ形成回路部9bにおいて生成し、送信波形成回路10に送出する。
【0032】送信波形成回路10は、高周波発生回路部10aで形成された例えば60MHz程度の搬送波を、変調回路部10bにおいて上記送信データ60に応じて変調し、増幅回路部10cで増幅してアンテナ11に送出する。アンテナ11は、図2に示す電子腕時計Wのバンド部内に延長形成されている。
【0033】図1に示す送信波形成回路10及び報知回路13の稼働時の電力消費量は時計制御回路5に比して格段に大きいので、小容量の制御電源用コンデンサ7の電圧が信号送信時に急降下し、時計制御回路5に誤動作を生じさせる可能性がある。そこで、開閉器6及び12は、送信制御回路部54からの制御信号により、通信回路系9,10,13の電力供給ラインを断続するようにしている。すなわち、上記のように通信回路系の稼働時には開閉器6は開成し、開閉器12は閉成するようになっており、また、通信回路系の非稼働時には、開閉器6は閉成し、開閉器12は開成するようになっている。したがって、開閉器6は、特に送信波形成回路10の稼働時の大きな消費電力に起因する制御電源用コンデンサ7の急激な電圧降下を阻止するとともに、送信が行われない期間は閉成されて、送信電源用コンデンサ8を充電させる。また、開閉器12は、送信波形成回路10の非稼働時には開成されて不要な電力消費を防止し、一方、送信制御回路部54がデータ信号発生回路9にコードを出力すると同時に閉成されて、送信波形成回路10に電力を供給する。
【0034】ここで、上記開閉器6の代わりに、所定の抵抗値をもつ抵抗体を接続してもよい。この抵抗体は送信波形成回路10の電力消費に伴う制御電源用コンデンサ7の電圧降下速度及び電圧降下量を低減させる。この抵抗体の抵抗値は、制御電源用コンデンサ7及び送信電源用コンデンサ8の容量値を勘案して設定される。通常、通信回路系の所要電力から送信電源用コンデンサ8の所要最低容量値が求められ、この容量値と抵抗体の抵抗値から定まる時定数により送信電源用コンデンサ8の充電時間が決まり、また、抵抗体の抵抗値と制御電源用コンデンサ7の容量値から定まる時定数により制御電源用コンデンサ7の電圧変動速度及び電圧変動量が決まる。したがって、データ送信時間、使用頻度に対応した送信間隔、及び時計制御回路5の動作安定性を考慮した上で、抵抗体の抵抗値を最適化する必要がある。
【0035】報知回路13は、送信制御回路部54の制御信号によりチェックランプ又は電子ブザー23を駆動するようになっているが、その動作タイミングは、送信波形成回路10の稼働期間外になるように設定されている。すなわち、操作ボタンの操作により1回のみデータ送信が行われる場合には、送信を完了して送信波形成回路10の消費電力が低下した時点若しくは開閉器6が閉成した時点又はこれらの時点から所定時間(例えば1秒)が経過した時点で、報知回路13に送信制御回路部54から制御信号が送られる。また、操作ボタン21,22が押圧されている期間中にデータ送信を繰り返し行うように設定する場合には、データ送信の期間と報知回路13の稼働期間とを交互に設け、送信中に断続的に点灯又は発音するようにしてもよい。
【0036】図4は本実施例の受信側の構成を示すものである。電子腕時計Wの送信信号は自動車の車体内に施設されたアンテナ71により受信されるが、これとは別に信号の伝播距離を短くするために図2に示す受信部31,41が設けられている。送信信号はバンドパスフィルタ72、高周波増幅回路73、復調回路74を経て送信データ60を示すデータ信号に復調され、ローパスフィルタ及びコンパレータ等からなる波形整形回路75により整形される。このデータ信号が示す判別コード及びIDコードからなる送信データ60は、CPU等からなる照合回路76においてメモリ77に保持された判別コード及びIDコードの値と比較照合される。
【0037】ここで、判別コードは駆動ユニット若しくは被制御部等の駆動部を判別するためのコードであり、本実施例ではドアロック機構30と電源回路40を3ビットの異なるコードで指定する。操作ボタン21を押圧すると判別コード61はドアロック機構に対応した内容となり、操作ボタン22を押圧すると判別コード61は電源回路40に対応した内容となる。同様に、トランクやボンネットの開閉機構等を制御する3以上の受信部を判別することも可能である。照合回路76では送信された判別コード61と記憶保持された判別コードとを比較し、ドアロック機構30と電源回路40のいずれが指定されているか否かを判断する。
【0038】一方、IDコードは送信者が適格者か否かを識別するためのコードであり、各自動車又は所有者に固有のコードが付与されている。照合回路76では、送信されたIDコード62が記憶保持されている1又は複数のコードに一致するか否かを判断し、一致した場合には、上記判別コードに対応する上記ドアノブ32又は補助入力部42からの操作信号が入来するか否かを見るために所定時間待機する。ドアノブ32又は補助入力部42の操作信号を所定時間内に受けると、照合回路76は上記判別コードに対応するドアロック機構30又は電源回路40のいずれかに対し制御信号を送出し、ドアロックアクチュエータ30a又は電源スイッチ40aを動作させる。
【0039】以上のように、本実施例では、AGSを内蔵した電子腕時計に通信回路系を設け、自動車の電子錠及び電源回路を制御するようにしたので、電池切れや電池交換の必要なく確実に動作させることができると同時に小型化された携帯性のよい制御装置とすることができる。また、わざわざ所持しなくてもよい上に通常の鍵やリモコン等のように置き忘れ等による紛失のおそれがないため、きわめて実用的な装置である。
【0040】また、発電装置の発生電力が小さくても、開閉器12により通信回路系の電力供給を間欠的に行っているので消費電力を低減できるとともに、開閉器6により通信回路系の電力消費に伴う影響を遮断しているので、制御部の誤動作を防止できる。
【0041】次に、上記実施例に対する幾つかの変形例について説明する。
【0042】図5及び図6は、自動車のダッシュボード上に上記電子腕時計Wの送信信号の受信部41を設けるとともに、送信信号を受け取った後に、所定の操作を行うことにより初めて自動車のメインスイッチ及び/又はスタータスイッチが閉成するように2重ロックを施した例を示すものである。
【0043】図5(a)には、0〜9までの各数字を各々表示し、暗証番号を入力させるテンキー43aと、コード入力を実行させたり、上記補助入力部42の操作ボタンと同様の機能を有するコード入力キー43bとを備えた補助入力部43を示す。ここで、図5(b)に示すように、補助入力部44に液晶表示部44aとコード入力キー44bとを設け、液晶表示部44aに表示された数字等が所定のコード表示桁と一致した際にコード入力キー44bを押圧することにより、コード入力を行うようにしてもよい。さらに、図6(a)に示すように、電子腕時計Wのバンド部に取付けたバーコード48を読み取るためのバーコードリーダ又は磁気カード等のための挿入スロット45を設けて、バーコードの読み取り又はカードの挿入により動作するようにしてもよい。或いは、図6(b)に示すように、電子腕時計Wの信号を受信した際に、ダッシュボードに取付けられた格納ボックス46が開くようにし、格納ボックス46から自動車のキー47を取り出して通常操作を行うようにしてもよい。
【0044】図7(a)には、図5(a)に示すテンキーの表示数値の配列をランダムに変更し、特定のキーが汚れたり磨耗することを防止した場合の回路ブロック図を示す。電子腕時計Wの送信信号は、上述と同様に波形整形回路75から照合回路76に入力され、ここでメモリ77内の保持データと照合される。送信信号の判別コード及びIDコードが保持データと一致すると、照合回路76からキー配列変更回路82に制御信号が送出される。キー配列変更回路82は、制御信号を受けるとキー配列表示回路(LCD駆動回路)83への電力供給を開始するとともに、前回表示時のキー配列とは異なるキー配列となるように、テンキー43aの各キーに対応するキー表示LCD85に0〜9までの数字を表示させる。キー配列変更回路82は、図7(b)に示すように、照合回路76からの制御信号を受ける毎に、ランダムに表示を切り換え、操作時毎にキー表示LCD85の数字の配列が変わるようにする。
【0045】この配列の変更は、キー配列変更回路82内で乱数を発生させ、この乱数に応じてキー配列を決定する。しかし、キー表示LCD85の行及び/又は列の一部若しくは全部の表示数を、順次行及び/又は列方向にシフトさせる方法(ローティトシフト)でもよい。この場合には、キー配列において行及び列方向の数字の組合せが常に一定になるため、操作者に大きな違和感を与えないという利点がある。なお、表示手段としては、上記のような液晶表示に限らず、帯状に巻かれ複数の配列で数値等を印刷したシートを透明なテンキー部分の背後にわたし、操作時にはシートを駆動モータでずらして異なるキー配列を表示するようにしてもよい。
【0046】このようにして所定のキー配列で表示されたテンキー43aに対して所定の操作コードを入力すると、キー表示LCD85に重ねて配置されたキーマトリクス84を介してマトリクス制御入力回路81に上記操作コードに対応するキー入力コードが入力され、さらに、コード入力キー43bが押圧されると入力されたキー入力コードが確定する。確定されたキー入力コードは、同期判定回路86において、キー配列変更回路82から送出されているキー配列信号と比較され、操作者が実際に押圧した操作コードに変換され、照合回路76に入力される。照合回路76では、同期判定回路86から入力された操作コードがメモリ77内に保持されたデータと一致するか否かを判定し、一致した場合には、自動車のメインスイッチ又はスタータスイッチを閉成する。
【0047】以上のように操作手段である補助入力部を送信信号の受信により起動し、補助入力部に所定の操作が行われた場合にのみ受信部の駆動ユニット又はスイッチ等を起動させることにより、送信側及び/又は受信側の誤動作並びに補助入力部の誤動作による事故や犯罪を防止することができる。
【0048】本実施例では、電子腕時計Wのバンド内に、例えば図8に示す11Aの如くアンテナを配設している。しかし、例えば図8に示す11Bのように、時計ケースの周囲部分にコイル状に巻回させたアンテナを設け、アンテナ収容容積の低減と電波発生効率の向上を図ってもよい。さらに、これらのアンテナの代わりに、図3R>3に示す増幅回路部10cの出力を直列コンデンサを介して図1に示す発電コイル1又はモータコイル56に接続することにより、これらのいずれかのコイルをアンテナとして使用することもできる。この場合、発電コイル1又はモータコイル56のインダクタンスとのマッチングをとる必要があるため、送信波形成回路10で使用される搬送波の周波数は、電磁効率の観点から数kHz〜数十kHzの低周波数帯を使用することが望ましい。この場合、時計制御回路5の発振回路部52の出力(周波数は通常約31kHzである。)自体又はその出力を逓倍回路等に通して得られる波形を搬送波として用いることができる。この場合には、時計回路部と送信部との兼用により回路構成の簡略化と小型化を図ることができる。
【0049】なお、発電装置付電子機器としては、上記AGS等の小型発電装置と、少なくとも1の送信装置に対応する制御信号又はデータ信号を受信するための受信手段と、受信手段を制御する制御手段とを備え、小型発電装置の発生する電力により受信手段及び制御手段を駆動する場合がある。ここで、受信手段により受信された信号を表示又は記録するための信号処理部を設けることが望ましい。また、これらに加えて上述のような送信手段を併設することが好ましく、特に上記実施例と同様の送信回路系を備えた電子腕時計としては、以下のように構成することができる。
【0050】この電子腕時計には、上記実施例と同様の構成に加えて、図4に示すアンテナ71、バンドパスフィルタ72、高周波増幅回路73及び復調回路74と同等の受信回路系を設け、外部からの電波を受信可能にしている。上述のように電子腕時計Wからの信号を受信して自動車側がドアロックアクチュエータ30a又は電源スイッチ40aを駆動させた後、自動車側に設けられた送信機能により、自動的に上記判別コード61と、ドアロックアクチュエータ30a又は電源スイッチ40aの開閉状態を示す状態コードとを送り返すようにすることができる。この判別コード及び状態コードは上記受信回路系(71,72,73,74)で受信され、送信制御回路部54に送出される。送信制御回路部54は、先に送信した判別コードと送り返された判別コードとが一致しているか否か、及び先に送信した相手先の駆動部が送信により正規に駆動されているか否かを受信した判別コード及び状態コードにより確認し、これらが確認された場合のみ上述の報知回路13を駆動させることができる。この場合、電子腕時計Wに液晶パネルを設け、この液晶パネルに確認情報を表示させるようにしてもよい。またこれらの確認情報を送信制御回路部54等の内部に形成されたメモリに記憶させ、例えば自動車から離れた後にも装着者の操作により表示できるようにして、ドアの施錠や電源スイッチの開成状態を確認できるようにすることが望ましい。
【0051】本実施例では電子腕時計を利用したが、腕時計に限らずバンドや面ファスナー等の取付手段を備えたベルト、帽子、ヘアバンド、サポーター等の装身機器であれば、実施例と同様の効果を奏する。また、装身機器でなくても、携帯性の高いポケットベル、電子手帳、バッグ等の各種携帯品にも適用できる。
【0052】本実施例では小型発電装置としてAGSを用いたが、太陽電池等を用いた光発電、熱電素子等を用いた熱発電若しくは温度差発電、燃料電池等を用いた化学的な発電方式等を用いてもよい。また、本実施例では電波による通信方式を用いたが、赤外線等の光による通信によっても同様に本発明を実施できる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、小型発電装置の発生電力を用いて信号生成手段及び通信手段を駆動することにより、電池切れの恐れがなく、電池交換の必要もない送信機器を得ることができる。
【0054】また、作用低減手段により、通信手段の大電力消費に起因する電圧変動が制御手段に及ぼす影響を低減し又は遮断するので、制御手段の誤動作を防止することができる。さらに、給電遮断手段により、通信手段の間欠駆動により電力消費量を低減することができる。
【0055】小型発電装置として回転錘の回転により電磁変換部が電力を発生する発電機を用いることにより、機器装着者の動作に基づいて常時発電できるとともに発電装置の小型化を図ることができる。
【0056】通信手段から送信される制御信号又はデータ信号を受けると操作手段を能動化させ、所定の操作が行われた場合にのみ動作部を動作させることにより、2重の動作システムとして、通信系、受信装置の受信部及び操作手段の誤動作等による事故や犯罪を防止することができる。
【0057】特に電子機器を電子腕時計として電子錠を動作させることにより、鍵を持ち歩く必要がなく、紛失等の危険性を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発電装置付電子機器の実施例であるAGSを内蔵した電子腕時計の回路構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施例における電子腕時計の外観及び制御対象である自動車のドアロック及び電源回路を示す説明図である。
【図3】同実施例における電子腕時計の送信データを示す説明図(a)、及び通信回路系の詳細を示す回路ブロック図(b)である。
【図4】同実施例の送信波を受信する受信側の構成を示す回路ブロック図である。
【図5】自動車のダッシュボードに設置した補助入力部を備えた受信部を示す説明図(a),(b)である。
【図6】自動車のダッシュボードに設置した補助入力部を備えた受信部を示す説明図(a)及びキーを収容した格納ボックスを備えた受信部を示す説明図(b)である。
【図7】テンキーを備えた補助入力部の制御系を示す回路ブロック図(a)、及びテンキーのキー配列を変更する態様を示す説明図(b)である。
【図8】上記実施例の電子腕時計内に配設したアンテナの例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 発電コイル
3 大容量コンデンサ
5 時計制御回路
54 送信制御回路部
6,12 開閉器
7 制御電源用コンデンサ
8 送信電源用コンデンサ
9 データ信号発生回路
10 送信波形成回路
11 アンテナ
13 報知回路
30 ドアロック機構
40 電源回路
42,43,44 補助入力部
60 送信データ
76 照合回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 小型発電装置と、少なくとも1の受信装置に対応する制御信号又はデータ信号を生成するための信号生成手段と、該信号生成手段の出力する制御信号又はデータ信号を送信するための通信手段と、該信号生成手段及び該通信手段を制御する制御手段とを備え、前記小型発電装置の発生する電力により、前記制御手段の制御下で前記信号生成手段及び前記通信手段を駆動するようにしたことを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項2】 請求項1において、前記小型発電装置の発生電力を蓄積し、前記通信手段に電力を供給する通信電力供給系と、前記制御手段の制御信号に応じて、前記通信手段の稼働時に前記通信電力供給系と前記制御手段の電力供給系との間の電気的作用を低減若しくは遮断する作用低減手段とを設けたことを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項3】 請求項2において、前記制御手段の制御信号に応じて、前記通信手段の非稼働時に前記通信電力供給系からの前記通信手段への給電を遮断する給電遮断手段を備えたことを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項4】 請求項1において、前記小型発電装置は、偏芯した重心をもつ回転錘と、該回転錘の回転により電力を発生する電磁変換部とを有する発電機であることを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項5】 請求項1において、前記受信装置は、受信した前記制御信号又はデータ信号を自身のもつ保持データと照合して一致の有無を判定する信号判定部と、前記制御信号又はデータ信号が保持データと一致した場合に別個に設けられた操作手段を能動化する手段と、操作手段に対して所定の操作が行われた場合にのみ動作部を動作させる手段とを備えていることを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項6】 請求項5又は請求項6において、前記発電装置付電子機器は電子腕時計であり、前記受信装置は電子錠であることを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項7】 請求項1において、所定の送信装置からの送信信号を受信するための受信手段を設け、該受信手段により受信した信号の内容を表示若しくは記録する表示記録手段を有することを特徴とする発電装置付電子機器。
【請求項8】 請求項7において、前記送信装置からの送信信号は、前記制御信号又はデータ信号を受信した前記受信装置の被制御情報若しくは受信情報を含む確認信号であることを特徴とする発電装置付電子機器。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate