説明

発電装置

【課題】本発明は電磁誘導により発電を行う発電装置に関し、効率の高い発電を行うことを課題とする。
【解決手段】発電時に操作される押しボタン4と、可動ヨーク13を往復移動させることにより発電を行う発電部10と、操作時における押しボタン4の移動を可動ヨーク13の往復移動に変換する変換機構6とを有する。変換機構6に、操作時における押しボタン4の変位を回転部材40の回転に変換する第1の変換機構部20と、回転部材40の回転を可動ヨーク13に接続された揺動アーム45の揺動に変換することにより可動ヨーク13を往復移動させる第2の変換機構部21とを設け、変換機構6が押しボタン4の1回の操作により可動ヨーク13が複数回往復移動するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置に係り、特に電磁誘導により発電を行う発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に広く開放されている2.4GHz帯の電波周波数帯を利用して、種々のワイヤレスの電子機器が提供されている。そのなかの一つとして、無線スイッチが知られている。この無線スイッチは、例えば壁等に配設され照明器具のON/OFFを行うのに使用される。
【0003】
このような無線スイッチでは、その電源として乾電池や屋内100V電源を用いることが考えられるが、乾電池を用いた場合にはその交換が面倒であり、また屋内電源を用いる場合には無線スイッチの配設位置が固定されてしまい移動させることがでず、何れの場合も使用性が悪い。このため、無線スイッチ内に発電装置を設け、無線スイッチの使用性を向上させることが提案されている。
【0004】
従来、このような小型電子機器に搭載される発電装置としては、特許文献1に示されるようなコイルの内部で円盤状の磁石を回転させることよりコイルを貫く磁束を変化させ、これにより発電を行う発電装置が知られている。また他の発電装置としては、特許文献2に示されるように、平面コイルに対して磁石が相対的に移動するよう構成し、磁石の移動により平面コイルを貫く磁束を変化させ、これにより発電を行う発電装置があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−102413号公報
【特許文献2】特開2004−159407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コイルの内部で環状の磁石を回転させる構造の発電装置は、円盤状の磁石の外部にコイルを配設する必要があるため、磁石が所定の回転速度となるまでは起電力が弱く、発電の立ち上がり時間が長くなるという問題点もあった。
【0007】
一方、平面コイルに対して磁石を移動させる構造の発電装置では、装置内に比較的形状が大きい磁石を移動させる必要があり、効率の良い発電を行うことができないという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、効率の高い発電を行いうる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、第1の観点からは、
発電時に操作される操作部(4)と、
可動部(13)を往復移動させることにより発電を行う発電部(10)と、
操作時における前記操作部(4)の移動を前記可動部(13)の往復移動に変換する変換機構(6)とを有し、
前記変換機構(6)は、前記操作部(4)の1回の操作により、前記可動部(13)を複数回往復移動させる構成としたことを特徴とする発電装置により解決することができる。
【0010】
尚、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、特許請求の範囲の記載が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
開示の発電装置は、1回の操作部の操作により発電部で可動部を複数回往復移動できるため複数回の発電を行えるため、1回の操作で1回の発電しかできない構成に比べて発電量を増加させることができる。
装置の薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である発電装置を適用した無線スイッチの平面図であり、揺動アームがB2方向に揺動した状態を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である発電装置を適用した無線スイッチの平面図であり、揺動アームがB1方向に揺動した状態を示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である発電装置を適用した無線スイッチの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態である発電装置の変換機構を平面視した斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態である発電装置の変換機構を背面視した斜視図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態である発電装置の動作を説明するための図(その1)であり、(A)は変換機構の平面図、(B)は変換機構の底面図、(C)は無線スイッチの回転部材及び揺動アームを取り外した状態を示す平面図である。
【図7】図7は本発明の一実施形態である発電装置の動作を説明するための図(その2)であり、(A)は変換機構の平面図、(B)は変換機構の底面図、(C)は無線スイッチの回転部材及び揺動アームを取り外した状態を示す平面図である。
【図8】図8は本発明の一実施形態である発電装置の動作を説明するための図(その3)であり、(A)は変換機構の平面図、(B)は変換機構の底面図、(C)は無線スイッチの回転部材及び揺動アームを取り外した状態を示す平面図である。
【図9】図9は本発明の一実施形態である発電装置の動作を説明するための図(その4)であり、(A)は変換機構の平面図、(B)は変換機構の底面図、(C)は無線スイッチの回転部材及び揺動アームを取り外した状態を示す平面図である。
【図10】図10は本発明の一実施形態である発電装置の動作を説明するための図(その5)であり、(A)は変換機構の平面図、(B)は変換機構の底面図、(C)は無線スイッチの回転部材及び揺動アームを取り外した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0014】
図1乃至図5は本発明の一実施形態である発電装置を適用した無線スイッチ1を示している。図1及び図2は無線スイッチ1のカバーを取り除いた状態の平面図であり、図3は無線スイッチ1のカバーを取り除いた状態の斜視図であり、図4はケース2を取り除いた状態を平面視した斜視図であり、図5はケース2を取り除いた状態を底面視した斜視図である。
【0015】
無線スイッチ1は、内部に発電装置及び高周波通信装置(図示せず)を設けている。発電装置は押しボタン4が操作されることにより発電を行い、高周波通信装置はこの発電された電力により駆動する。この高周波通信装置は、駆動することにより無線スイッチ1により操作される電気機器(例えば、照明機器等)に向け2.4GHz帯の電波を送信し、これにより当該電気機器はON/OFF処理が行われる。
【0016】
無線スイッチ1に設けられる発電装置は、大略すると押しボタン4、変換機構6、及び発電部10等を有している。押しボタン4は発電時に操作さる操作部となるものであり、ケース2に図中矢印A1,A2方向(図3参照)に移動可能な構成とされている。
【0017】
発電部10は、コイル11A,11B、ヨーク、及び永久磁石14等を有している。コイル11A,11Bは、樹脂製のボビン15に巻回されている。このコイル11A,11Bは直列に接続されており、その両端部は端子16に接続されている。よって、後述するようにコイル11A,11Bで発生した誘導起電力は、端子16から取り出される。
【0018】
ヨークは、軟磁性体(例えば、鉄)により形成されている。本実施形態では、ヨークを固定ヨーク12と可動ヨーク13に分離した構成としている。よって、可動ヨーク13は固定ヨーク12に対して図3の矢印X1,X2方向に移動可能な構成となっている。即ち、可動ヨーク13は、固定ヨーク12に対して一軸方向にのみ往復移動する構成となっている。
【0019】
また、固定ヨーク12のボビン15から露出した部分には、界磁用の永久磁石14が設けられている。この永久磁石14は、単極着磁されたものが用いられる。この永久磁石14は、固定ヨーク12と磁気的に接続している。
【0020】
上記構成において、可動ヨーク13が矢印X1方向に移動すると、固定ヨーク12と可動ヨーク13との間には空気層(エア・ギャップ)が形成される。よって、各ヨーク12,13は、磁気的に分離された状態となる(以下、この状態を分離状態という)。
【0021】
これに対し、可動ヨーク13が矢印X2方向に移動すると、可動ヨーク13は固定ヨーク12に当接し、各ヨーク12,13は磁気的に接続される。この際、可動ヨーク13は固定ヨーク12に設けられた永久磁石14の磁力により吸着された状態となる(以下、この状態を吸着状態という)。この吸着状態では、固定ヨーク12と可動ヨーク13は磁気的に接続された状態となり、永久磁石14からの磁束は可動ヨーク13にも流れる構成となる。
【0022】
ここで、発電部10の発電原理について説明する。
【0023】
発電部10は、電磁誘導を用いて発電を行う構成とされている。いま、誘導起電圧[V]をe(t)、コイル巻回数[turns]をN、磁束[Wb]をφ(t)、可動ヨーク13の移動量[m]をx(t)とすると、e(t)=−N(dφ/dt)=−N×(dφ/dx(t))×(dx(t)/dt)となる。よってこの式より、可動ヨーク13の位置による磁束数の変化と、可動ヨーク13の移動速度に比例して誘導起電圧e(t)が発生することがわかる。
【0024】
吸着状態では、可動ヨーク13は固定ヨーク12に吸着されているため、永久磁石14の磁束は各ヨーク12,13内で閉磁路を形成する。このため、コイル11A,11Bを貫く磁束(以下、錯交磁束という)の数は多くなる。
【0025】
これに対し、可動ヨーク13をX1方向に移動させて分離状態にすると、固定ヨーク12から可動ヨーク13に磁束が進入しなくなり、よって永久磁石14の近傍位置に磁束のループが形成される。よって、分離状態においては、コイル11A,11Bに対する錯交磁束数は急激に減少する。
【0026】
このように、吸着状態と分離状態でコイル11A,11Bを貫く錯交磁界が短時間に急激に変化するため、コイル11A,11Bに電磁誘導による誘導起電力を発生させることができる。上記の原理に基づき、発電部10は発電を行う。
【0027】
尚、固定ヨーク12のボビン15から露出した部分にはケース2と固定するための固定用孔12aが形成されると共に、可動ヨーク13のボビン15から露出した部分には後述する揺動アーム45と連結するための連結用孔13a(図5参照)が形成されている。
【0028】
次に、変換機構6について説明する。変換機構6は、操作時における押しボタン4の移動を発電部10を構成する可動ヨーク13の往復移動に変換する機能を奏するものである。この変換機構6は、大略すると第1の変換機構部20と第2の変換機構部21とにより構成されている。
【0029】
この変換機構6の基本動作としては、操作時における押しボタン4のA1方向の変位を第1の変換機構部20により回転部材40の回転(矢印E1,E2方向の回転)に変換すると共に、回転部材40の回転を第2の変換機構部21により揺動アーム45の揺動(矢印B1,B2方向の揺動)に変換する。揺動アーム45には、発電部10の可動ヨーク13が連結されており、揺動アーム45がB1,B2方向に揺動することにより可動ヨーク13は矢印X1,X2方向に往復移動し、これにより発電部10において発電が行われる。
【0030】
以下、第1及び第2の変換機構部20,21の構成について説明する。
【0031】
第1の変換機構部20は、第1のラックアーム22、連結アーム25、第2のラックアーム30、及び半円ギア34等を有している(図5参照)。第1のラックアーム22は、ケース2の略中央位置において、矢印X1,X2方向に延在している。この第1のラックアーム22のX2方向端部は、押しボタン4と係合するボタン係合部23が形成されている(図4参照)。よって、押しボタン4を矢印A1方向に操作することにより、第1のラックアーム22は矢印X1方向に移動する。
【0032】
また、第1のラックアーム22のX1方向端部と、ケース2の内壁との間にはコイルスプリング29が設けられている。このコイルスプリング29は、第1のラックアーム22を矢印X2方向に弾性付勢している。更に第1のラックアーム22のボタン係合部23に近い位置には、ラック部24が形成されている。
【0033】
連結アーム25は、支軸27を中心して図中矢印C1,C2方向に回転可能な構成とされている。この連結アーム25の第1のラックアーム22に近接する一端部には、ピニオン部26が形成されている。このピニオン部26は、第1のラックアーム22に設けられたラック部24と噛合している。
【0034】
また、連結アーム25の他端部は、係合ピン28を介して第2のラックアーム30と連結されている。よって、連結アーム25がC1方向に回転すると第2のラックアーム30はX2方向に移動し、連結アーム25がC2方向に回転すると第2のラックアーム30はX1方向に移動する。この第2のラックアーム30は、ラック部31が形成されている。このラック部31は、半円ギア34に設けられたギア部35と係合している(図6(C)参照)。
【0035】
半円ギア34は、支軸38を中心に図中矢印D1,D2方向に回転可能な構成とされている。よって、第2のラックアーム30がX1方向に移動すると半円ギア34は矢印D2方向に回転し、第2のラックアーム30がX2方向に移動すると半円ギア34は矢印D1方向に回転する。また、半円ギア34は、半円部分にU字溝37A,37Bが形成されている。この側壁部36とU字溝37Aとの離間距離は例えば約55°〜60°とされており、またU字溝37A,37B間の離間距離も例えば約55°°〜60°とされている(これらの離間曲は、半円ギア34の大きさ等により異なる)。
【0036】
ここで、回転部材40について説明する。回転部材40は、支軸41を中心として矢印E1,E2方向に回転自在な構成とされている。しかしながら、回転部材40にはトーションバネ52が接続されており、このトーションバネ52は回転部材40を常に矢印E1方向に回転付勢している。
【0037】
この回転部材40の表面側には、支軸41から外側に向け放射状に延出した6本の係合アーム部42A〜42Fが突出するよう形成されている(図3参照)。この6本の係合アーム部42A〜42Fは、等間隔に形成されている。即ち、各係合アーム部42A〜42Fの隣接するアーム部間の間隔は60°とされている。
【0038】
また、回転部材40の裏面側には、6本の係合突起43A〜43Fが設けられている(図5参照)。この係合突起43A〜43Fはピン状に突出形成されたものであり、等間隔に形成されている。即ち、各係合突起43A〜43Fの隣接する係合突起間の間隔は60°とされている。
【0039】
この係合突起43A〜43Fは、前記した半円ギア34に形成された側壁部36及びU字溝37A,37Bと係合するよう構成されている。よって、半円ギア34の回転は回転部材40に伝達され、これにより回転部材40は回転する(回転部材40の具体的な動作については後に詳述する)。
【0040】
次に、第2の変換機構部21の構成について説明する。
【0041】
第2の変換機構部21は、回転部材40の表面側に形成された係合アーム部42A〜42Fと、揺動アーム45に形成された係合壁48及びアーム挿入溝49等により構成されている。
【0042】
揺動アーム45は、支軸46を中心に図中矢印B1,B2方向に揺動可能な構成とされている。揺動アーム45の支軸46の近傍位置には係合ピン47が設けられており、この係合ピン47は前記した発電部10の可動ヨーク13に形成された連結用孔13aと連結されている。よって、前記のように揺動アーム45がB1,B2方向に揺動することにより可動ヨーク13は矢印X1,X2方向に往復移動し、これにより発電部10において発電が行われる。
【0043】
係合壁48は、揺動アーム45の上端部(支軸46から離間した端部)に形成されている。この係合壁48は、回転部材40の回転に伴い、回転部材40の表面側に形成された係合アーム部42A〜42Fと係合するよう構成されている。よって、回転部材40が矢印E1方向に回転すると、係合アーム部42A〜42Fの何れか(ここでは、係合アーム部42Aとする)が係合壁48に当接する。図1は、係合アーム部42Aが係合壁48に当接した状態を示している。
【0044】
その後、更に回転部材40が矢印E1方向に回転すると、係合アーム部42Aの先端部は係合壁48を押圧しつつこの係合壁48に沿って図1に矢印Gで示す方向に摺動する。この押圧力により、揺動アーム45は矢印B1方向に回転する。図2は、係合アーム部42Aが係合壁48の矢印G方向端部まで摺動した状態を示している。
【0045】
アーム挿入溝49は揺動アーム45の裏面側に形成されており、係合壁48の矢印G方向端部から形成されている。図8(A)に破線で示すのは、このアーム挿入溝49の形成領域である。同図に示すように、アーム挿入溝49内には6個の係合アーム部42A〜42Fの内、少なくとも2個を収納できる広さを有している。
【0046】
よって、図2に示す状態から更に回転部材40がE1方向に回転すると、係合アーム部42Aは係合壁48から離脱し、図8(A)に示すようにアーム挿入溝49内に侵入する。また、揺動アーム45には戻りバネ50が接続されており、揺動アーム45はこの戻りバネ50により常に矢印B2方向に弾性付勢されている。
【0047】
よって、係合アーム部42Aにより矢印B1方向に移動されていた揺動アーム45は、矢印B2方向に移動し再び図1に示すのと同じ位置に戻る。この動作を各係合アーム部42A〜42Fに対して行うことにより揺動アーム45は揺動を行うこととなり、これに伴い可動ヨーク13はX1,X2方向に往復移動を行う。
【0048】
次に、図6乃至図10を用いて、上記構成とされた無線スイッチ1における発電動作について説明する。
【0049】
図6は、押しボタン4が操作されていない状態(操作前状態という)を示している。この操作前状態では、押しボタン4はA2方向に移動した位置にあり、第1のラックアーム22はコイルスプリング29の弾性付勢力により矢印X2方向に移動している。
【0050】
よって、連結アーム25はC2方向に回転しており、第2のラックアーム30は矢印X1方向に移動している。また、第2のラックアーム30が矢印X1方向に移動していることにより、半円ギア34はD2方向に回転した状態となっている。更に、揺動アーム45はB2方向に移動しており、よって発電部10の可動ヨーク13は固定ヨーク12に吸着した状態となっている。
【0051】
ここで以下の説明においては、操作前状態において回転部材40の係合アーム部42Aが揺動アーム45の係合壁48と対向し、回転部材40の係合突起43Aが半円ギア34の側壁部36と対向した状態であったものとして説明することとする。
【0052】
押しボタン4がA1方向に操作されると、前記の第1の変換機構部20は起動する。第1の変換機構部20を構成する第1のラックアーム22は、押しボタン4がA1方向に操作されることによりX1方向に移動する。これにより、連結アーム25はC1方向に回転し、第2のラックアーム30はX2方向に移動し、よって半円ギア34はD1方向に回転する。図7は、半円ギア34が回動し、側壁部36が係合突起43Aに当接する位置まで移動した状態(初期状態という)を示している。
【0053】
この初期状態では、揺動アーム45は移動しておらず、よって図中矢印B2方向に移動した状態となっている。このため、揺動アーム45に係合ピン47を介して接続された可動ヨーク13も矢印X2方向に移動した状態であり、よって固定ヨーク12と吸着した状態となっている。可動ヨーク13が固定ヨーク12に吸着することにより、永久磁石14の磁束は各ヨーク12,13を通るループを形成し、よってこの磁束はコイル11A,11Bを貫く磁束(以下、錯交磁束いう)となる。
【0054】
この初期状態から更に押しボタン4がA1方向に操作すると、半円ギア34は更にD1方向に回転する。この回転により、半円ギア34の側壁部36は、係合突起43Aを図7(B)における下方向に押圧する。これにより、回転部材40は、矢印E1方向に回転を行う。
【0055】
この回転部材40の回転に伴い、回転部材40の表面側に形成されていた係合アーム部42Aは揺動アーム45の係合壁48を押圧し、これにより揺動アーム45は支軸46を中心に矢印B1方向に回転する。よって、発電部10の可動ヨーク13は揺動アーム45の回転により矢印X1方向に付勢され固定ヨーク12から離間した状態となる。
【0056】
可動ヨーク13が固定ヨーク12から離間することにより、永久磁石14の磁束は固定ヨーク12内で狭いループを形成することになり、コイル11A,11Bの錯交磁束は急激に低下する。この磁束変化により、コイル11A,11Bには誘導起電力が発生する。
【0057】
更に押しボタン4がA1方向に操作されると、第1の変換機構部20により回転部材40は更にE1方向に回転し、係合アーム部42Aの先端部は係合壁48上をG方向に摺動していく。そして、半円ギア34が操作前状態より60°回転した際、即ち回転部材40が60°回転した際、係合アーム部42Aはアーム挿入溝49の形成位置に至る。
【0058】
前記のように、揺動アーム45は戻りバネ50により矢印B2方向に弾性付勢されている。よって、係合アーム部42Aと係合壁48の係合が解除され、係合アーム部42Aがアーム挿入溝49内に挿入されると、揺動アーム45は戻りバネ50の弾性付勢力により急激にB2方向に回転し、係合アーム部42Aはアーム挿入溝49内に挿入された状態となる。図8は、係合アーム部42Aがアーム挿入溝49内に挿入した状態(1回目揺動終了状態という)を示している。
【0059】
また、揺動アーム45がB2方向に回転することにより、揺動アーム45と連結された可動ヨーク13はX2方向に移動し、可動ヨーク13は再び固定ヨーク12に吸着された状態となる。よって永久磁石14の磁束は、再び各ヨーク12,13を通るループを形成し、この磁束変化によりコイル11A,11Bは誘導起電力を発生する。
【0060】
このように押しボタン4が操作され、第1の変換機構部20により回転部材40が60°回転する間に、揺動アーム45はB1,B2方向に対する揺動を1回行う。そして、この1回の揺動アーム45の揺動の間に、可動ヨーク13はX1,X2方向に1往復し、これにより発電部10は2回の誘導起電力を発生させる。
【0061】
上記の1回目揺動終了状態となった後、更に押しボタン4をA1方向に操作すると、半円ギア34は1回目揺動終了状態(図8に示す状態)より更にD1方向に回転する。これにより、側壁部36は係合突起43Aから離脱し、その代わりに半円ギア34に形成されているU字溝37Aが、新たに係合突起43Bと係合する。よって、側壁部36は係合突起43Aから離脱した後も、回転部材40は半円ギア34によりE1方向への回転を継続する。
【0062】
このように回転部材40の回転が継続されると、係合アーム部42Aに代わって係合アーム部42Bが揺動アーム45の係合壁48と係合しこれを押圧する。これにより、揺動アーム45は再び支軸46を中心に矢印B1方向に回転する。よって、発電部10の可動ヨーク13は揺動アーム45の回転により矢印X1方向に付勢され固定ヨーク12から離間した状態となる。これにより、前記と同様にコイル11A,11Bの錯交磁束は急激に低下し、この磁束変化によりコイル11A,11Bには誘導起電力が発生する。
【0063】
更に押しボタン4がA1方向に操作されると、第1の変換機構部20により回転部材40は更にE1方向に回転し、係合アーム部42Bの先端部は係合壁48上をG方向に摺動していく。そして、半円ギア34及び回転部材40が1回目揺動終了状態から60°回転した際(操作前状態より120°回転した際)、係合アーム部42Bはアーム挿入溝49の形成位置に至る。
【0064】
そして、係合アーム部42Bと係合壁48の係合が解除され、係合アーム部42Bがアーム挿入溝49内に挿入され、揺動アーム45は戻りバネ50の弾性付勢力により急激にB2方向に回転する。これにより、係合アーム部42Bはアーム挿入溝49内に挿入された状態となる。図9は、係合アーム部42Bがアーム挿入溝49内に挿入した状態(2回目揺動終了状態という)を示している。
【0065】
また、揺動アーム45がB2方向に回転することにより、可動ヨーク13はX2方向に移動し、可動ヨーク13は再び固定ヨーク12に吸着された状態となる。よって永久磁石14の磁束は、再び各ヨーク12,13を通るループを形成し、この磁束変化によりコイル11A,11Bは誘導起電力を発生する。
【0066】
上記の2回目揺動終了状態となった後、更に押しボタン4をA1方向に操作すると、半円ギア34は2回目揺動終了状態(図9に示す状態)より更にD1方向に回転する。これにより、U字溝37Aは係合突起43Bから離脱し、その代わりに半円ギア34のU字溝37Bが新たに係合突起43Cと係合し、よって回転部材40のE1方向への回転は継続される。
【0067】
このように回転部材40の回転が継続されると、係合アーム部42Bに代わって係合アーム部42Cが揺動アーム45の係合壁48と係合しこれを押圧する。これにより、揺動アーム45は再び支軸46を中心に矢印B1方向に回転し、よって発電部10の可動ヨーク13は矢印X1方向に付勢され固定ヨーク12から離間した状態となる。これにより、前記と同様にコイル11A,11Bの錯交磁束は急激に低下し、この磁束変化によりコイル11A,11Bには誘導起電力が発生する。
【0068】
更に押しボタン4がA1方向に操作されると、第1の変換機構部20により回転部材40は更にE1方向に回転し、係合アーム部42Cの先端部は係合壁48上をG方向に摺動していく。そして、半円ギア34及び回転部材40が2回目揺動終了状態から60°回転した際(操作前状態より180°回転した際)、係合アーム部42Cはアーム挿入溝49の形成位置に至る。
【0069】
そして、係合アーム部42Cと係合壁48の係合が解除され、係合アーム部42Cがアーム挿入溝49内に挿入され、揺動アーム45は戻りバネ50の弾性付勢力により急激にB2方向に回転する。これにより、係合アーム部42Cはアーム挿入溝49内に挿入された状態となる。図10は、係合アーム部42Cがアーム挿入溝49内に挿入した状態(3回目揺動終了状態という)を示している。
【0070】
また、揺動アーム45がB2方向に回転することにより、可動ヨーク13はX2方向に移動し、可動ヨーク13は再び固定ヨーク12に吸着された状態となる。よって永久磁石14の磁束は、再び各ヨーク12,13を通るループを形成し、この磁束変化によりコイル11A,11Bは誘導起電力を発生する。
【0071】
本実施形態に係る無線スイッチ1は、1回の押しボタン4のA1方向への操作により、回転部材40が第1の変換機構部20により180°回転するよう構成されている。また、回転部材40が180°の回転する間に、回転部材40の表面側に形成された6個の係合突起43A〜43Fの内、3個の係合突起43A〜43Cが揺動アーム45と係合して押圧及び押圧解除することにより、揺動アーム45が3回揺動するよう構成されている。
【0072】
前記のように、揺動アーム45の1回の揺動により、可動ヨーク13もX1,X2方向に1往復し、これにより発電部10は1回の誘導起電力を発生させる。従って、本実施形態に係る無線スイッチ1では、押しボタン4の1回の操作により発電部10は3回の誘導起電力を発生させることになり、押しボタン4の1回の操作で高電力の発電を行うことができる。
【0073】
次に、押しボタン4のA1方向への押圧操作が終了した後、押しボタン4を元の位置に戻す変換機構6の動作(復帰動作)について説明する。
【0074】
前記したように、第1のラックアーム22にはコイルスプリング29が取り付けられており、このコイルスプリング29は第1のラックアーム22を常に矢印X2方向に弾性付勢している。よって、押しボタン4の操作を解除すると、コイルスプリング29により第1のラックアーム22はX2方向へ移動する。
【0075】
よって、第1の変換機構部20では連結アーム25がC2方向に回転し、これに伴い第2のラックアーム30がX1方向に移動する。前記のように第2のラックアーム30のラック部31は半円ギア34のギア部35と噛合しているため、第2のラックアーム30がX1方向に移動することにより、半円ギア34は矢印D2方向に回転する。
【0076】
ここで、回転部材40はケース2に設けられたトーションバネ52に接続されており、このトーションバネ52の弾性力により常に矢印E1方向に弾性付勢されている。従って、図10に示す3回目揺動終了状態から半円ギア34がD2方向に回転しても、U字溝37Bに係合突起43Cは一瞬係合しても係合突起43Cから直ぐに離脱してしまい、係合突起43Cは移動することはない。
【0077】
更に第1のラックアーム22がX2方向に移動し、係合突起43CとU字溝37Aが対向する位置まで半円ギア34が回転しても、上記と同様にU字溝37Aに係合突起43Cは一瞬係合しても直ぐに係合突起43Cから離脱してしまい、係合突起43Cは移動することはない。即ち、本実施形態に係る変換機構6は、第1の変換機構部20が3回目揺動終了状態から操作前状態に戻る際、第1の変換機構部20を構成する第1のラックアーム22,連結アーム25,第2のラックアーム30,及び半円ギア34は操作前状態に向け移動するが、回転部材40は回転することなく3回目揺動終了状態を維持する。
【0078】
よって、次に押しボタン4が押圧操作された場合、半円ギア34の側壁部36は係合突起43Dと係合することにより回転部材40を回転させる。また、揺動アーム45の揺動に際しては、係合アーム部42Dが最初に揺動アーム45の係合壁48と係合し、これを押圧することとなる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0080】
例えば、上記した実施形態では発電装置を無線スイッチに適用した例を示したが、本発明に係る発電装置の適用はこれに限定されるものではなく、いわゆるバッテリーレス化を行いたい各種電気機器及び電子機器に適用が可能なものである。
【0081】
また、上記した実施形態では、押しボタンの1回の操作で揺動アームが3回揺動する構成としたが、回転部材に形成する係合突起の間隔を適宜設定することにより、押しボタンの1回の操作による揺動回数は適宜設定が可能なものである。
【符号の説明】
【0082】
1 無線スイッチ
2 ケース
4 押しボタン
6 変換機構
10 発電部
11A,11B コイル
12 固定ヨーク
13 可動ヨーク
14 永久磁石
20 第1の変換機構部
21 第2の変換機構部
22 第1のラックアーム
24 ラック部
25 連結アーム
26 ピニオン部
30 第2のラックアーム
31 ラック部
34 半円ギア
35 ギア部
36 側壁部
37A,37B U字溝
40 回転部材
42A〜42F 係合アーム部
43A〜43F 係合突起
45 揺動アーム
46 支軸
47 係合ピン
48 係合壁
49 アーム挿入溝
50 戻りバネ
52 トーションバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電時に操作される操作部と、
可動部を往復移動させることにより発電を行う発電部と、
操作時における前記操作部の移動を前記可動部の往復移動に変換する変換機構とを有し、
前記変換機構は、前記操作部の1回の操作により、前記可動部を複数回往復移動させる構成としたことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記変換機構は、
操作時における前記操作部の変位を回転部材の回転に変換する第1の変換機構部と、
前記可動部に接続された揺動アームを有し、前記回転部材の回転を前記揺動アームの揺動に変換することにより、前記可動部を往復移動させる第2の変換機構とを有することを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記回転部材の前記操作部の1回に操作による回転範囲内に、前記揺動アームと係合する複数の係合部を設け、
該係合部が前記揺動アームと係合することにより前記揺動アームを揺動付勢する構成とした請求項2記載の発電装置。
【請求項4】
前記変換機構は、
前記操作時に変位した前記操作部を操作前の位置に戻す戻し機構を有する請求項1乃至3記載の発電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−283970(P2010−283970A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134504(P2009−134504)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】