説明

発電装置

【課題】構成が複雑化することを回避しつつ、作動媒体を循環させるポンプでのキャビテーションの発生を抑制し得る発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置100は、循環流路6における蒸気発生手段5と膨張機1との間に設けた第1の開閉弁11と、蒸気発生手段5及び第1の開閉弁11の間と膨張機1及び凝縮手段3の間とを接続するバイパス流路10と、バイパス流路10に設けた第2の開閉弁12と、循環流路6におけるポンプ4と蒸気発生手段5との間に設けた第3の開閉弁13と、ポンプ4の起動及び停止、並びに各開閉弁の開閉の制御を行う制御手段20とを有する。制御手段20は、ポンプ4を停止する際には、ポンプ4を停止する制御信号と第1の開閉弁11を閉じる制御信号と第2の開閉弁12を開ける制御信号と第3の開閉弁13を閉じる制御信号とを出力しその後、所定の条件が満たされた場合に第2の開閉弁12を閉じる制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から、工場等の各種の設備からのいわゆる「排熱」を回収し、その回収された「排熱」のエネルギーを利用して発電を行なう発電装置へのニーズが高まっている。
【0003】
そのような発電装置として、例えば特許文献1に開示されているような排熱発電装置が知られている。この特許文献1に開示された排熱発電装置は、作動流体の蒸発器と、作動流体蒸気に膨張仕事をさせるためのタービンと、作動流体蒸気を凝縮させるための凝縮器と、作動流体を循環させるための循環ポンプとが直列に接続された閉ループ状の循環流路を備えている。この循環流路では、作動流体が循環するときに熱サイクルが行われる一方、上記タービンで発電機を駆動する。なお、特にその排熱発電装置のなかでも、低沸点の作動媒体によってタービンや膨張機(エキスパンダ)を駆動するランキンサイクルを利用したバイナリー発電システムが知られている。
【0004】
特許文献1に開示された排熱発電装置は、排熱を回収して作動媒体の高圧作動媒体蒸気を生成する蒸気発生器と、該高圧作動媒体蒸気を膨張させるタービンと、該タービンからの低圧蒸気を凝縮させる凝縮器と、作動媒体を循環させる作動媒体循環ポンプとを備えている。これら機器は作動媒体循環路によって接続されており、蒸気発生器とタービンとの間には気液分離器が配置されている。この気液分離器において作動媒体液から分離された作動媒体蒸気がタービンに導入される。
【0005】
なお、上述した排熱発電装置においては、作動媒体を循環流路内で循環させるべく循環ポンプを配設することが必要であり、この循環ポンプには、当該循環ポンプよりも上流側に位置する凝縮器によって凝縮されて液化した作動媒体が吸入される。循環ポンプは液化された作動媒体を下流に位置する蒸気発生器に送出する役割を担う。
【0006】
循環ポンプには、キャビテーションの発生を未然に防止するための方策が必要となる。キャビテーションは、流体機械において、その流体機械の内部を流れる媒体(液)の圧力が局部的に飽和蒸気圧に達することで、媒体が沸騰して小さな気泡が発生する現象である。この気泡が潰れる際には、その衝撃圧により流体機械の構成品に、いわゆるエロージョン(壊食)が発生する。例えば流体機械がターボ型流体機械であれば、その主要部品であるインペラ(羽根車)に損傷が生じる。循環ポンプにキャビテーションが生じた場合には、循環ポンプのメンテナンスのために、発電装置のシステム全体の運転を停止することが余儀なくされる。従って、循環ポンプでのキャビテーションの発生を未然に防止するための方策が重要となる。
【0007】
特許文献1に開示された排熱発電装置には、上述した構成に加え、凝縮器から蒸気発生器に作動媒体を循環させる循環量を制御する循環量制御手段と、気液分離器内の分離液面を検出する液面検出器とが設けられている。気液分離器で分離された分離液(作動媒体)は流量制御手段を介して凝縮器に導かれ、また液面検出器によって検出される気液分離器内の分離液面が所定のレベルとなるように、循環量制御手段が作動媒体の循環量を制御している。
【0008】
また、この排熱発電装置には、熱回収器が設けられている。熱回収器は、気液分離器から凝縮器に分離液を導く経路に設けられており、分離液と凝縮器から蒸気発生器に送られた作動媒体とで熱交換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4557793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された排熱発電装置においては、循環ポンプにおけるキャビテーションの発生を未然に防止するための方策が取られていないため、循環ポンプにおいてキャビテーションが発生する虞がある。
【0011】
なお、キャビテーションの発生の防止するためには、循環ポンプの上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされていること、さらに望ましくは、上流側の流路に満たされている液の状態の作動媒体の量が所望される所定量以上であることが必要となる。しかしながら、特許文献1には、この排熱発電装置の停止方法、あるいは逆の起動方法について、格別の言及がない。したがって、排熱発電装置の停止方法、起動方法によっては、起動時に循環ポンプの上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされていない状況、あるいは上流側の流路に満たされている液の状態の作動媒体の量が所望される所定量に比して少ない状況が生じる。そうすると、循環ポンプにキャビテーションが発生する虞は更に高まってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造が複雑化することを回避しつつ、作動媒体を循環させるポンプでのキャビテーションの発生を抑制し得る発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明は、液体の作動媒体を熱媒体により加熱して蒸発させる蒸気発生手段と、気体の作動媒体を膨張させる膨張機と、前記気体の作動媒体を冷却媒体により冷却して凝縮させる凝縮手段と、作動媒体を循環させるポンプとが直列に接続された閉ループ状の循環流路と、前記膨張機と接続された発電機とを備え、前記膨張機で発生する動力が伝達されて前記発電機が駆動される発電装置であって、前記循環流路における前記蒸気発生手段と前記膨張機との間に設けられた第1の開閉弁と、前記循環流路における前記蒸気発生手段及び前記第1の開閉弁の間と、前記膨張機及び前記凝縮手段の間とを接続するバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられた第2の開閉弁と、前記循環流路における前記ポンプと前記蒸気発生手段との間に設けられた第3の開閉弁と、前記ポンプの起動及び停止、並びに各開閉弁の開閉の制御を行う制御手段とを有し、前記制御手段は、前記ポンプを停止する際には、前記ポンプを停止する制御信号と前記第1の開閉弁を閉じる制御信号と前記第2の開閉弁を開ける制御信号と前記第3の開閉弁を閉じる制御信号とを出力し、その後、所定の条件が満たされた場合に前記第2の開閉弁を閉じる制御信号を出力することを特徴とする発電装置を提供する。
【0014】
本発明では、ポンプを停止する際に第2の開閉弁を開けた後、蒸気発生手段で熱媒体により加熱されてガス化した作動媒体は、バイパス流路を通って凝縮手段へと流れ、凝縮手段で冷却媒体により冷却されて液化されるので、この液状の作動媒体が所定量貯留されるまでの間第2の開閉弁を開けておくことにより、ポンプを起動する際において、ポンプの上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされている状況を確保でき、キャビテーションが発生する虞を低下させることができる。また、開閉弁を有したバイパス流路を循環流路に接続するだけであり、構造の複雑化を回避することができる。
【0015】
また、本発明において、前記所定の条件が、前記第2の開閉弁を開けてから、前記循環流路における前記ポンプの上流側の流路に液体の作動媒体が所定量貯留されるまでの時間として、前記制御手段で予め設定された時間の経過であることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、発電機の駆動の際には、ポンプの上流側の流路に液体の作動媒体が満たされている状況を確保でき、キャビテーションが発生する虞を低下させることができる。
【0017】
また、本発明において、前記凝縮器に設けられた液面計をさらに有し、この液面計は前記凝縮器の内部の液面の高さを検知可能であり、前記所定の条件が、前記液面計の値の所定値への到達であることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、液面計(レベルゲージ)の検出値により、客観的に、ポンプの上流側の流路に液体の作動媒体が満たされているかどうかを判断できるため、ポンプの上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされている状況の確保が容易となり、ポンプでのキャビテーションの発生の虞を更に低下させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記循環流路における前記凝縮機と前記ポンプとの間に設けられた液タンクと、この液タンクに設けられた液面計とをさらに有し、この液面計は前記液タンクの内部の液面の高さを検知可能であり、前記所定の条件が、前記液面計の値の所定値への到達であることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、液面計(レベルゲージ)の検出値により、客観的に、ポンプの上流側の流路に液体の作動媒体が満たされているかどうかを判断できるため、ポンプの上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされている状況の確保が容易となり、ポンプでのキャビテーションの発生の虞を更に低下させることができ、加えて、液タンクを有しているため、多量の液体の作動媒体をポンプの上流側の流路に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、構造が複雑化することを回避しつつ、作動媒体を循環させるポンプでのキャビテーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】前記発電装置における起動時の動作を説明するためのフロー図である。
【図3】前記発電装置における停止時の動作を説明するためのフロー図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
【図5】前記発電装置における停止時の動作を説明するためのフロー図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る発電装置100の構成を示している。
【0025】
この発電装置100は、膨張機1と、油分離器2と、凝縮器(凝縮手段)3と、作動媒体ポンプ4と、蒸発器(蒸気発生器、蒸気発生手段)5とが設けられた閉ループ状の循環流路6を備えている。この循環流路6には、作動媒体としてフロン系の媒体(例えばR245fa)が封入されている。作動媒体として水よりも沸点の低い媒体が使用されており、本実施形態に係る発電装置100は、バイナリー発電装置として構成されている。
【0026】
膨張機1は、循環流路6における蒸発器5の下流側に配置されており、蒸発器5で蒸発した作動媒体(蒸気)を膨張させることによって作動媒体から運動エネルギーを取り出す。膨張機1は、例えばスクリュ膨張機によって構成されている。このスクリュ膨張機は、膨張機ケーシング内に形成されたロータ室(図示せず)に雌雄一対のスクリュロータ(図示せず)が収容されており、循環流路6を通じて吸気口1sから供給される作動媒体の膨張力によってスクリュロータを回転させるものである。そして、ロータ室内で膨張して圧力が低下した作動媒体は、吐出口1dから循環流路6へ排気される。
【0027】
循環流路6における膨張機1と凝縮器3との間には、油分離器2が設けられており、油分離器2と膨張機1との間には、油ポンプ17を有する油流路18が設けられている。油分離器2は、膨張機1から作動媒体とともに排出された油を分離し、この分離した油を内部に貯蓄するものである。油分離器2内に貯蓄された油は、油流路18を通して膨張機1の内部に供給される。膨張機1の内部に供給された油は、スクリュロータ間、及びスクリュロータとロータ室との間のシール材として機能し、作動媒体の膨張の効率を低下させないよう作用する。
【0028】
膨張機1には発電機9が接続されており、膨張機1で発生する動力が発電機9に伝達されてこの発電機9が駆動される。発電機9は、発電機ケーシングの内部空間(図示せず)に固定子(図示せず)及び回転子(図示せず)が収容された構成となっている。回転子は、膨張機1のスクリュロータの軸と一体の軸を有しており、スクリュロータの回転に伴って回転することで、固定子の巻線に電力を発生させる。この膨張機1と発電機9とによって発電手段が構成されている。
【0029】
凝縮器3は、循環流路6における膨張機1の下流側、より具体的には油分離器2の下流側に配置されており、膨張機1の吐出口1dから循環流路6に排出されて油が分離されたガス状の作動媒体が導入される。この凝縮器3では、作動媒体は、循環流路6とは別系統の冷却媒体流路8を流れる冷却媒体(例えば冷却水)との熱交換によって凝縮して液体状の作動媒体となる。すなわち、凝縮器3は、作動媒体が流れる流路と冷却媒体が流れる流路とを有しており、気体の作動媒体を冷却媒体との間で熱交換させることで、この作動媒体を凝縮させるものである。
【0030】
液体となった作動媒体は、ポンプ4によって所定の圧力まで加圧され、蒸発器5に送出される。この蒸発器5では、作動媒体は、循環流路6とは別系統の熱媒体流路7を流れる熱媒体(例えば低圧蒸気)との熱交換によって加熱されて飽和蒸気(あるいは過熱蒸気)となる。すなわち、蒸発器5は、作動媒体が流れる流路と外部の熱源から供給される熱媒体が流れる流路とを有しており、液体状の作動媒体を熱媒体との間で熱交換させることで、この作動媒体を気化させて飽和蒸気(あるいは過熱蒸気)とするものである。そして、蒸発器5において飽和蒸気(あるいは過熱蒸気)となった作動媒体は、膨張機1に再供給される。
【0031】
熱媒体流路7を介して蒸発器5に供給される熱媒体(加熱媒体)には、坑井(蒸気井)から採取された蒸気、工場等から排出された余剰の蒸気のほか、太陽熱を熱源とする集光器、バイオマスや化石燃料を熱源とするボイラー、その他の設備などから生成された蒸気などが想定される。一方、冷却媒体流路8を介して凝縮器3に供給される冷却媒体には、クーリングタワーで製造される冷却水などが想定される。
【0032】
ポンプ4は、循環流路6内で作動媒体を循環させるために設けられるものであり、循環流路6における凝縮器3の下流側に配置されている。すなわち、ポンプ4は、循環流路6のうち凝縮器3と蒸発器5とを接続する流路に設けられていて、凝縮器3側の作動媒体(液)を吸入して蒸発器5側に吐出する。ポンプ4としては、インペラをロータとして備える遠心ポンプ、ロータが一対のギアからなるギアポンプ等が好ましく用いられる。
【0033】
循環流路6における蒸発器5と膨張機1との間には、第1の開閉弁11(V1)が設けられている。そして、循環流路6には、蒸発器5の下流側と凝縮器3の上流側とを接続、より詳細には、蒸発器5及び第1の開閉弁11の間と、膨張機1及び凝縮器3の間とを接続するバイパス流路10が設けられている。このバイパス流路10には第2の開閉弁12(V2)が設けられている。また、ポンプ4と蒸発器5との間の循環流路6には第3の開閉弁13(V3)が設けられている。
【0034】
循環流路6における凝縮器3の上流側であって、循環流路6とバイパス流路10との接続する部位より更に上流側には、油分離器2から凝縮器3へ向かう流れのみを許容する逆止弁14が設けられている。また、バイパス流路10における第2の開閉弁12よりも下流側には、蒸発器5の下流側から凝縮器3の上流側へ向かう流れのみを許容する逆止弁15が設けられている。
【0035】
発電装置100は、制御装置(制御手段)20を有している。この制御装置20はタッチパネル等の入力・表示手段(図示せず)を備えている。また、制御装置20は、ROM、RAM、CPU等を備えていて、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより所定の機能を発揮する。すなわち、制御装置20には、その機能として設定手段21、起動制御手段22、停止制御手段23、及び判断部24が含まれる。
【0036】
設定手段21は、後述するタイマーの所定値を、入力・表示手段を通して入力された値に設定するように、RAMに対して設定信号を出力するものである。そして、RAMは、設定手段から送信される設定信号を受信して所定値を記憶する。起動制御手段22は、入力・表示手段に操作がなされて起動指令が生成された際に、第1の開閉弁11及び第3の開閉弁13を開く制御信号と、油ポンプ17及びポンプ4を起動する制御信号とを出力するものである。停止制御手段23は、入力・表示手段に操作がなされて停止指令が生成された際に、第1の開閉弁11を閉じる制御信号、油ポンプ17及びポンプ4を停止する制御信号、第3の開閉弁13を閉じる制御信号に加え、第2の開閉弁12を開く制御信号を出力するものである。判断部24は、起動指令が生成されてからの時間をカウントするタイマーを含み、このタイマーの値が予め設定手段21で設定された所定の条件を満たすかどうか、すなわち、RAMに記憶された所定値に達したかどうかを判断するものである。
【0037】
ここで、起動時の発電装置100の制御動作を、図2を参照しつつ説明する。
【0038】
制御装置20の入力・表示手段に操作がなされ起動指令が生成されると、制御装置20の起動制御手段22は、第1の開閉弁11及び第3の開閉弁13を開くとともに(ステップST1及びステップST2)、油ポンプ17及びポンプ4を起動する(ステップST3及びステップST4)。なお、これらステップST1からステップST4は、いずれの順で行われてもよく、全部が同時に行われてもよい。
【0039】
これにより、ポンプ4から送出された液状の作動媒体は、蒸発器5において蒸発して飽和蒸気(あるいは過熱蒸気)となって膨張機1へ供給され、膨張機1で膨張する。その際、膨張機1から動力を得た発電機9が駆動される。そして、膨張機1から排出された作動媒体は凝縮器3で凝縮して液状となり、ポンプ4に吸入される。このようにして、循環流路6で作動媒体の循環が行われる。このとき、第2の開閉弁12はノーマルクローズ形の開閉弁であり、起動時には閉じた状態となっているため、起動時にはバイパス流路10に作動媒体は流通しない。
【0040】
続いて、停止時の発電装置100の制御動作を、図3を参照しつつ説明する。
【0041】
制御装置20の入力・表示手段に操作がなされ停止指令が生成されると、制御装置20の停止制御手段23は、第1の開閉弁11を閉じ、ポンプ4及び油ポンプ17を停止するとともに(ステップST10)、第2の開閉弁12を開き第3の開閉弁13を閉じる(ステップST11)。そして、制御装置20の判断部24のタイマーを起動する(ステップST12)。なお、これらステップST10からステップST12は、いずれの順で行われてもよく、全部が同時に行われてもよい。
【0042】
その後、制御装置20は、判断部24において、そのタイマーの値が予め設定手段21で設定した所定値に達したかどうか(ポンプ4を停止し、第2の開閉弁12を開くとともに第3の開閉弁13を閉じてから、所定時間が経過したかどうか)を判断する(ステップST13)。
【0043】
そして、タイマーの値が所定値に達するまではステップST13を繰り返し、タイマーの値が所定値に達したと判断されると、ステップST13の判断がYESとなるので、ステップST14に移行する。そして、制御装置20からの制御信号に基づき、第2の開閉弁12が閉じられ(ステップST14)、停止の処理が終了する。
【0044】
以上のポンプ4の停止時における作動媒体の挙動を以下に説明する。第1の開閉弁11及び第3の開閉弁13が閉じられるとともにポンプ4が停止されると(ステップST10、ステップST11)、循環流路6において凝縮器3の出口から蒸発器5の入り口に至る区間での作動媒体の流動が停止される。これにより、蒸発器5及び凝縮器3にはともに、ガス状の作動媒体及び液状の作動媒体が貯留された状態となる。このとき、熱媒体流路7には熱媒体が流れ続け、冷却媒体流路8には冷却媒体が流れ続ける。そのため、蒸発器5では、作動媒体が熱媒体によって加熱され続けることにより、蒸発器5内の液状の作動媒体が蒸発し続ける。その結果、蒸発器5内の圧力は飽和蒸気圧となり、例えば、蒸発器5内の作動媒体の温度が80℃で、その圧力P1は0.789MPaとなる。一方、凝縮器3では、作動媒体が冷却媒体によって冷却され続けるため、凝縮器3内のガス状の作動媒体は凝縮し続ける。そして、例えば、凝縮器3内の作動媒体の温度が20℃で、その圧力P2は0.124MPaとなる。このとき、第2の開閉弁12が開けられているので(ステップST11)、蒸発器5内の圧力と凝縮器3内の圧力との差圧により、蒸発器5内の主にガス状の作動媒体は、バイパス流路10を通って凝縮器3へと流れ、凝縮器3内で凝縮する。また、第2の開閉弁12は、予め設定された所定時間だけ開放されるため、この所定時間内に凝縮器3側には所定量の液体状の作動媒体が貯留されることになる。なお、この所定時間は、蒸発器5の大きさや、循環流路6におけるポンプ4から蒸発器5までの配管の径・体積などに依存して変化する。そして、この所定時間は、実験、解析等により求められた時間であって、種々の条件下で凝縮器3側に所定量の作動媒体が貯留されるまでの時間として、制御装置20の設定手段21において予め設定された時間である。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、ポンプ4を停止する際に第2の開閉弁12を開けた後、蒸発器5で熱媒体により加熱されてガス化した作動媒体は、バイパス流路10を通って凝縮器3へと流れ、凝縮器3で冷却媒体により冷却されて液化されるので、この液状の作動媒体が所定量貯留されるまでの所定時間だけ第2の開閉弁12を開けておくことにより、ポンプ4を起動する際には、ポンプ4に吸入される作動媒体にキャビテーションが発生する虞を低下することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る発電装置100の構成を示している。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構成、作用及び効果については説明を省略する。
【0047】
この第2実施形態に係る発電装置100は、第1実施形態に係る発電装置100の構成に加え、凝縮器3に、その内部の液面の高さを検知可能な液面計(レベルゲージ)16が設けられている。また、制御装置20における設定手段21は、液面計(レベルゲージ)16の所定値を、入力・表示手段を通して入力された値に設定するように、RAMに対して設定信号を出力する。そして、制御装置の判断部24は、液面計(レベルゲージ)16の検出値が予め設定手段21で設定された所定の条件を満たすかどうか、すなわち、RAMに記憶された所定値に達したかどうかの判断を行う。
【0048】
続いて、本実施形態の制御動作について説明する。ここでは、第1実施形態とは異なる停止時の制御動作について、図5を参照しつつ説明する。
【0049】
本実施形態の発電装置100では、ポンプ4の停止時において、図3に示した発電装置100の停止時の制御動作でのタイマーを利用したステップST12、ステップST13を実行するのではなく、「レベルゲージの検出値はHth以上かどうか(液面が、所定の液面高さに達したかどうか)」を判断するステップST15を実行する。ここで、Hthは、実験、解析等により求められた値であって、制御装置20の設定手段21において予め設定された値である。
【0050】
すなわち、第2実施形態に係る発電装置100では、制御装置20の入力・表示手段に操作がなされ停止指令が生成されると、制御手段20の停止制御手段23は、第1の開閉弁11を閉じ、ポンプ4及び油ポンプ17を停止するとともに(ステップST10)、第2の開閉弁12を開き第3の開閉弁13を閉じる(ステップST11)。なお、これらステップST10及びステップST11は、いずれの順で行われてもよく、全部が同時に行われてもよい。
【0051】
その後、制御装置20は、判断部24において、液面計(レベルゲージ)16の値が予め設定手段21で設定した所定値Hthに達したかどうかを判断する(ステップST15)。
【0052】
そして、液面計(レベルゲージ)の値が所定値Hthに達するまではステップST15を繰り返し、液面計(レベルゲージ)の値が所定値Hthに達したと判断されると、ステップST15の判断がYESとなるので、ステップST14に移行する。そして、制御装置20からの制御信号に基づき、第2の開閉弁12が閉じられ(ステップST14)、停止の処理が終了する。
【0053】
本実施形態においても、以上のポンプ4の停止時における作動媒体の挙動は第1実施形態と同じであるが、本実施形態では、液面計(レベルゲージ)16の検出値に基づき、客観的に、ポンプ4の上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされているかどうかを判断している。このため、第1実施形態よりも確実に、ポンプ4の上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされている状況を確保でき、ポンプの起動時に、キャビテーションが発生する虞を更に低下させることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る発電装置100の構成を示している。なお、第3実施形態では、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成、作用及び効果については説明を省略する。
【0055】
この第3実施形態に係る発電装置100は、第2実施形態に係る発電装置100の構成に加え、循環流路6における凝縮器3とポンプ4との間に液タンク16aを有し、また、液面計(レベルゲージ)16は、凝縮器3ではなく液タンク16aに設けられている。
【0056】
また、本実施形態に係る発電装置100のポンプ4の起動時及び停止時の制御動作は、第2の実施形態と同じである。
【0057】
したがって、本実施形態においても、第1の実施形態よりも確実に、ポンプ4の上流側の流路に液の状態の作動媒体が満たされている状況を確保でき、ポンプの起動時に、キャビテーションが発生する虞を更に低下させることができる。さらに、本実施形態では液タンク16aを有しているため、第2の実施形態よりも多量の液体の作動媒体をポンプ4の上流側の流路に確保することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
例えば、前記第1実施形態ないし第3実施形態において、熱媒体流路7及び冷却媒体流路8にそれぞれ開閉弁を設け、第2の開閉弁12を開くとともにこれら流路7及び8の開閉弁を閉じるようにしてもよい。あるいは、ポンプ4の停止とともに、熱媒体流路7及び冷却媒体流路8の開閉弁を閉じるようにしてもよい。
【0060】
また、膨張機1の種類によっては、油分離器2を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 膨張機
1d 吐出口
1s 吸気口
3 凝縮器(凝縮手段)
4 ポンプ
5 蒸発器(蒸気発生手段)
6 循環流路
7 熱媒体流路
8 冷却媒体流路
9 発電機
10 バイパス流路
11 第1の開閉弁
12 第2の開閉弁
13 第3の開閉弁
16 液面計
16a 液タンク
20 制御装置(制御手段)
21 設定手段
22 起動制御手段
23 停止制御手段
24 判断部
100 発電装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の作動媒体を熱媒体により加熱して蒸発させる蒸気発生手段と、気体の作動媒体を膨張させる膨張機と、前記気体の作動媒体を冷却媒体により冷却して凝縮させる凝縮手段と、作動媒体を循環させるポンプとが直列に接続された閉ループ状の循環流路と、前記膨張機と接続された発電機とを備え、前記膨張機で発生する動力が伝達されて前記発電機が駆動される発電装置であって、
前記循環流路における前記蒸気発生手段と前記膨張機との間に設けられた第1の開閉弁と、
前記循環流路における前記蒸気発生手段及び前記第1の開閉弁の間と、前記膨張機及び前記凝縮手段の間とを接続するバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられた第2の開閉弁と、
前記循環流路における前記ポンプと前記蒸気発生手段との間に設けられた第3の開閉弁と、
前記ポンプの起動及び停止、並びに各開閉弁の開閉の制御を行う制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ポンプを停止する際には、前記ポンプを停止する制御信号と前記第1の開閉弁を閉じる制御信号と前記第2の開閉弁を開ける制御信号と前記第3の開閉弁を閉じる制御信号とを出力し、その後、所定の条件が満たされた場合に前記第2の開閉弁を閉じる制御信号を出力することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記所定の条件が、前記第2の開閉弁を開けてから、前記循環流路における前記ポンプの上流側の流路に液体の作動媒体が所定量貯留されるまでの時間として、前記制御手段で予め設定された時間の経過であることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記凝縮手段に設けられた液面計をさらに有し、この液面計は前記凝縮手段の内部の液面の高さを検知可能であり、
前記所定の条件が、前記液面計の値の所定値への到達であることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
前記循環流路における前記凝縮手段と前記ポンプとの間に設けられた液タンクと、この液タンクに設けられた液面計とをさらに有し、この液面計は前記液タンクの内部の液面の高さを検知可能であり、
前記所定の条件が、前記液面計の値の所定値への到達であることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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