説明

発電装置

【課題】本発明は、設置費用を低くすることができ、設置面積を狭くすることができる発電装置を提供する。
【解決手段】本発明の発電装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換層と、前記光電変換層の光起電力を出力するための第1および第2光電変換用電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた複数のセルとを備え、前記複数のセルは、それぞれ、第1セル電極と、第2セル電極と、第1セル電極と第2セル電極とに挟まれた固体高分子電解質膜と、第1流路と、第2流路とを有し、前記複数のセルは、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能であり、第1流路により第1セル電極に還元性物質を供給し第2流路により第2セル電極に酸化性物質を供給することにより前記セルを燃料電池として機能させ、第1流路により第1セル電極に電解液を又は第2流路により第2セル電極に電解液を供給することにより前記セルを水電解装置として機能させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。
【0004】
このようなエネルギー変動を補完するシステムとして、太陽電池と、水電解装置と、燃料電池とを組み合わせた発電システムが知られている(例えば、特許文献1)。
また、水電解装置と燃料電池を一体化させた可逆セルが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−171973号公報
【特許文献2】特開2010−153218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の発電システムでは、多くの装置を組み合わせたシステムであるため設置費用が高くなり、また、設置面積が広くなるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設置費用を低くすることができ、設置面積を狭くすることができる発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受光面およびその裏面を有する光電変換層と、前記光電変換層の光起電力を出力するための第1および第2光電変換用電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた複数のセルとを備え、前記複数のセルは、それぞれ、第1セル電極と、第2セル電極と、第1セル電極と第2セル電極とに挟まれた固体高分子電解質膜と、第1流路と、第2流路とを有し、前記複数のセルは、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能であり、第1流路により第1セル電極に還元性物質を供給し第2流路により第2セル電極に酸化性物質を供給することにより前記セルを燃料電池として機能させ、第1流路により第1セル電極に電解液を又は第2流路により第2セル電極に電解液を供給することにより前記セルを水電解装置として機能させることを特徴とする発電装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記複数のセルは、それぞれ、第1セル電極と、第2セル電極と、第1セル電極と第2セル電極とに挟まれた固体高分子電解質膜と、第1流路と、第2流路とを有し、第1流路により第1セル電極に還元性物質を供給し第2流路により第2セル電極に酸化性物質を供給することにより前記セルを燃料電池として機能させ、第1流路により第1セル電極に電解液を又は第2流路により第2セル電極に電解液を供給することにより前記セルを水電解装置として機能させるため、前記複数のセルは、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能に有する。
【0009】
本発明によれば、受光面およびその裏面を有する光電変換層と、前記光電変換層の光起電力を出力するための第1および第2光電変換用電極と複数のセルとを備え、前記複数のセルは、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能であるため、光電変換層による光電変換により発電することができ、セルを燃料電池として機能させることにより発電することができ、セルを水分解装置として機能させ水素ガスを発生させることにより電気エネルギーを水素ガスとして貯蔵することができる。また、この発生させた水素ガスは、燃料電池として機能させるセルの燃料として利用することができる。従って、本発明によれば、光電変換機能、燃料電池機能、水分解機能を状況に合わせて使いエネルギーを効率よく供給することができる。
【0010】
本発明によれば、燃料電池および水電解装置として機能を切り換え可能である複数のセルが光電変換層の裏面側に設けられるため、光電変換層と燃料電池と水電解装置とを同じスペースに設置することができ、設置面積を狭くすることができ、設置費用を低減することができる。また、光電変換層と燃料電池の電力供給のための部品を共通することができ、製造コストを低減することができる。さらに、光電変換層の光起電力を効率よく水電解装置として機能させる複数のセルに出力することができ、光電変換層の光起電力を効率よく水素ガスとして貯蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の発電装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】図1の点線A−Aにおける発電装置の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の発電装置の構成を示す概略平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の発電装置の概略配管図である。
【図5】本発明の一実施形態の発電装置の概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の発電装置の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の発電装置の概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の発電装置の概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の発電装置の概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の発電装置の概略回路図である。
【図11】本発明の一実施形態の発電装置に含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態の発電装置に含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態の発電装置に含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発電装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換層と、前記光電変換層の光起電力を出力するための第1および第2光電変換用電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた複数のセルとを備え、前記複数のセルは、それぞれ、第1セル電極と、第2セル電極と、第1セル電極と第2セル電極とに挟まれた固体高分子電解質膜と、第1流路と、第2流路とを有し、前記複数のセルは、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能であり、第1流路により第1セル電極に還元性物質を供給し第2流路により第2セル電極に酸化性物質を供給することにより前記セルを燃料電池として機能させ、第1流路により第1セル電極に電解液を又は第2流路により第2セル電極に電解液を供給することにより前記セルを水電解装置として機能させることを特徴とする。
なお、本発明において、電解液とは、第1および第2セル電極の間に印加された電圧により電気分解される水を含む液体であり、純水や水道水などの電解質を加えていない水であってもよい。
【0013】
本発明の発電装置において、前記還元性物質は、水素ガスであり、前記酸化性物質は、空気または酸素ガスであることが好ましい。
このような構成によれば、水素ガスを燃料として、燃料電池として機能させるセルにより発電することができる。
本発明の発電装置において、前記複数のセルは、前記複数のセルのうち一部のセルを燃料電池または水電解装置として機能させるとき、第1および第2流路に流通させるものを制御することにより、前記複数のセルのうち他のセルを燃料電池および水電解装置のいずれとしても機能させないことができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、複数のセルのうち一部のセルを燃料電池または水電解装置として機能させるとき、複数のセルのうち他のセルをスタンバイ状態にすることができる。このため、スタンバイ状態のセルは、すぐに燃料電池または水電解装置として機能させることができる。このため、複数のセルの燃料電池としての機能、水電解装置としての機能などの切り換えをスタンバイ状態のセルを利用して即座に行うことができる。
本発明の発電装置において、前記複数のセルに含まれる少なくとも2つのセルは、前記セルを燃料電池として機能させるとき、前記少なくとも2つのセルに含まれる1つのセルが有する第1セル電極と、前記少なくとも2つのセルに含まれる他の1つのセルが有する第2セル電極とが電気的に接続するように直列接続することが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池として機能させる複数のセルにより、十分に大きな電力を出力することができる。
本発明の発電装置において、前記複数のセルに含まれる少なくとも2つのセルは、並列に配置されたことが好ましい。
このような構成によれば、複数のセルが平たい形状を有することができ、受光面が広く受光量の多い光電変換層の裏面側に平たい複数のセルを配置することができる。このことにより、十分に大きな発電量を有する光電変換層と、燃料電池および水電解装置として機能を有する複数のセルを同じスペースに設置することができ、発電装置の設置面積を狭くすることができる。また、発電装置の厚さを薄くすることができ、例えば屋根の上などに設置することが可能となる。
本発明の発電装置において、前記光電変換層と前記複数のセルとの間に冷却水用流路をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、複数のセルを燃料電池として機能させるとき、冷却水用流路に冷却水を流すことにより、複数のセルを冷却し作動温度内で保持することができる。また、光電変換層に光が入射する場合、冷却水用流路に冷却水を流すことにより、光電変換層の温度上昇による光電変換効率の低下を抑制することができる。さらに、冷却水用流路に流す冷却水が回収した熱を温水として利用することもできる。
【0014】
本発明の発電装置において、流路切換部により切り換え可能な複数の流通経路を有する供給排出用流路をさらに備え、前記複数の流通経路は、第1流路に還元性物質を第2流路に酸化性物質を流通させる第1流通経路と、第1および第2流路のうち少なくとも一方に電解液を流通させる第2流通経路とを含み、前記供給排出用流路は、前記セルを燃料電池として機能させるとき第1流通経路に切り換わり、前記セルを水電解装置として機能させるとき第2流通経路に切り換わることが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2流路に流通させるものを切り換えることができ、セルが燃料電池と水電解装置の両方の機能を有することができる。
本発明の発電装置において、制御部をさらに備えることが好ましく、前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記供給排出用流路の流通経路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記流路切換部に出力する出力手段とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、このような構成によれば、制御部により第1および第2流路に流通させるものを制御することができ、セルの燃料電池機能と水電解装置機能の切り換えを制御することができる。
【0015】
本発明の発電装置において、前記セルは、前記光電変換層から供給される電力を利用して水を電気分解できるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換層の光起電力が電力需要を上回っている場合、光電変換層の光起電力を水素エネルギーに変換することができ、光エネルギーを水素として貯蔵することができる。
本発明の発電装置において、前記セルは、外部回路から供給される電力を利用して水を電気分解できるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、他の光電変換装置の光起電力や夜間電力などを利用して水素を製造することができる。
【0016】
本発明の発電装置において、回路切換部をさらに備えることが好ましく、前記回路切換部は、燃料電池として機能させる前記セルの発電電力を外部回路に供給するための回路と、前記光電変換層の光起電力を外部回路に供給するための回路と、前記光電変換層の光起電力を水電解装置として機能させる前記セルに供給するための回路と、外部回路からの電力を水電解装置として機能させる前記セルに供給するための回路とのうち少なくも2つの回路を切り換えることができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、回路切換部により、電力需要や光電変換層の発電量に応じて、光電変換層の光起電力の出力先、燃料電池として機能させるセルの発電電力の出力先、水電解装置として機能させるセルに供給される電力の供給源を切り換えることができる。また、回路切換部によりセルの燃料電池としての機能と水電解装置としての機能とを切り換えることができる。
本発明の発電装置において、制御部を備えることが好ましく、前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記回路切換部の切り換える回路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記回路切換部に出力する出力手段とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部により回路切換部の回路の切り換えを制御することができる。また、制御部によりセルの燃料電池としての機能と水電解装置としての機能との切り換えを制御することができる。
【0017】
本発明の発電装置において、日射量計または照度センサを含むセンサ部をさらに備え、前記入力手段は、前記センサ部からの情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、制御部はセンサ部からの入力に基づき、発電装置を制御することができる。
本発明の発電装置において、前記入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、制御部は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報に基づき、発電装置を制御することができる。
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0019】
発電装置の構成
図1は本発明の一実施形態の発電装置の構成を示し、複数のセルを燃料電池として機能させる場合の概略平面図であり、図2は、図1、3の点線A−Aにおける発電装置の概略断面図である。図3は、本発明の一実施形態の発電装置の構成を示し、複数のセルを水電解装置として機能させる場合の概略平面図である。また、図4は本発明の一実施形態の発電装置の概略配管図である。さらに、図5〜9は、本発明の一実施形態の発電装置の概略断面図であり、図1の点線A−Aの概略断面図に対応する。
【0020】
本実施形態の発電装置45は、受光面およびその裏面を有する光電変換層2と、光電変換層2の光起電力を出力するための第1および第2光電変換用電極4、5と、光電変換層2の裏面側に設けられた複数のセル7とを備え、複数のセル7は、それぞれ、第1セル電極9と、第2セル電極10と、第1セル電極9と第2セル電極10とに挟まれた固体高分子電解質膜8と、第1流路13と、第2流路14とを有し、複数のセル7は、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能であり、第1流路13により第1セル電極9に還元性物質を供給し第2流路14により第2セル電極10に酸化性物質を供給することによりセル7を燃料電池として機能させ、第1流路13により第1セル電極9に電解液を又は第2流路14により第2セル電極10に電解液を供給することによりセル7を水電解装置として機能させることを特徴とする。
また、本実施形態の発電装置45は、光電変換層2の受光面側に受光面基板1を備えてもよく、光電変換層2と複数のセル7との間に絶縁基板20を備えてもよく、絶縁基板20とともに複数のセル7を挟むように設けられた裏面基板21を備えてもよい。
さらに本実施形態の発電装置45は、第1流路13および第2流路14に流通させるものを供給・排出させる供給排出用流路37などを備えてもよく、回路切換部27、制御部32、センサ部33を備えてもよい。
以下、本実施形態の発電装置45について説明する。
【0021】
1.受光面基板
受光面基板1は、発電装置45が備えてもよい。また、光電変換層2は、受光面が受光面基板1側となるように受光面基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換層2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、受光面基板1は省略することが可能である。また、光電変換層2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、受光面基板1は省略することができる。
【0022】
また、光を光電変換層2の受光面で受光するため、受光面基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換層2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
受光面基板1の光電変換層2側の表面には、入射した光が光電変換層2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0023】
2.光電変換層、第1および第2光電変換用電極
光電変換層2は、光を受光することにより光起電力が生じる部分であり、受光面およびその裏面を有する。第1および第2光電変換用電極4、5は、光電変換層2の光起電力を出力するための電極である。
なお、以下に示す光電変換層2の例は、それぞれ、後で示す複数のセルの例と自由に組み合わせることができる。
光電変換層2は、例えば、図2、図6、図8、図9に示した発電装置45に含まれる光電変換層2のように光電変換層2の受光面と裏面との間に光起電力が生じるものであってもよく、図5、図7に示した発電装置45に含まれる光電変換層2のように光電変換層2の裏面の第1区域と第2区域との間に光起電力が生じるものであってもよい。また、発電装置45は、図6、図7、図9のように複数の光電変換層2を含んでもよく、この複数の光電変換層2は、並列に配置され、直列接続されてもよい。
まず、受光面と裏面との間に光起電力が生じるような光電変換層2などについて説明する。
【0024】
2−1.受光面と裏面との間に光起電力が生じるような光電変換層
2−1−1.第1光電変換用電極
第1光電変換用電極4は、受光面基板1の上に設けることができ、光電変換層2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1光電変換用電極4は透光性を有してもよい。また、第1光電変換用電極4は、受光面基板1を省略可能の場合、光電変換層2の受光面に直接設けられてもよい。
第1光電変換用電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
以下に第1光電変換用電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜としては、一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換層2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0025】
2−1−2.光電変換層
光電変換層2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換層2の裏面側に複数のセル7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換層2は、第1光電変換用電極4が設けられた受光面基板1の上に受光面を下にして設けることができる。
光電変換層2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換層2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換層、化合物半導体を用いた光電変換層、色素増感剤を利用した光電変換層、有機薄膜を用いた光電変換層などである。
【0026】
光電変換層2の起電力を水電解装置として機能させる複数のセル7に出力し、水素ガスおよび酸素ガスを発生させる場合、光電変換層2は、光を受光することにより、複数のセル7において水素ガスと酸素ガスが発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。複数のセル7において水素ガスおよび酸素ガスを発生させるには、複数のセルに出力する電圧を、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換層2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換層2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。また、図6、図9のように複数の光電変換層2を直列接続して複数のセルに出力する電圧を高くしてもよい。
【0027】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換層2で生じる起電力をより大きくすることができる。
【0028】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換層2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換層の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換層2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換層2は、これらを組み合わせたものでもよい。
【0029】
2−1−3.シリコン系半導体を用いた光電変換層
シリコン系半導体を用いた光電変換層2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換層2は、受光面基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0030】
シリコン系半導体を用いた光電変換層2の形成例を以下に示す。
受光面基板1上に積層した第1光電変換用電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0031】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0032】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0033】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0034】
2−1−4.化合物半導体を用いた光電変換層
化合物半導体を用いた光電変換層は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0035】
化合物半導体を用いた光電変換層の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素ガスをキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si26)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換層を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0036】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0037】
2−1−5.色素増感剤を利用した光電変換層
色素増感剤を利用した光電変換層は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0038】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0039】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0040】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0041】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0042】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0043】
2−1−6.有機薄膜を用いた光電変換層
有機薄膜を用いた光電変換層2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0044】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0045】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0046】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0047】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0048】
2−1−7.第2光電変換用電極
第2光電変換用電極5は、光電変換層2の裏面上に設けることができる。
第2光電変換用電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0049】
2−2.裏面の第1区域と第2区域との間に光起電力が生じるような光電変換層
光電変換層2は、受光面基板1上に受光面を下にして設けることができ、光電変換層2の裏面の第1区域と第2区域との間に光起電力が生じるように設けることができる。例えば、半導体基板にp型半導体部51およびn型半導体部52を設けることにより、光電変換層2を製造することができる。なお、この場合、第1区域および第2区域のうち一方をp型半導体部51に面した裏面とすることができ、他方をn型半導体部52に面した裏面とすることができる。
また、この場合、第1区域および第2区域のうち一方の上に第1光電変換用電極4を設けることができ、他方の上に第2光電変換用電極5を設けることができる。
【0050】
ここでは、シリコン基板を用いた光電変換層2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部52を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部51を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換層2を形成することができる。
【0051】
n型半導体部52およびp型半導体部51は、図5、7のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体部52およびp型半導体部51のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図7のようにn型半導体部52およびp型半導体部51を形成したシリコン基板を並べて設置し、導電部55により直列接続することにより光電変換層2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部52およびp型半導体部51を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0052】
3.絶縁基板、冷却水用流路
絶縁基板20は、光電変換層2、第1光電変換用電極4または第2光電変換用電極5と、複数のセル7との間にリーク電流が流れることを防止するために設けることができる。また、光電変換層2と複数のセル7を別々に製造し組み合わせる場合、複数のセル7は、絶縁基板20の上に製造することもできる。
【0053】
また、絶縁基板20の代わりに光電変換層2、第1光電変換用電極4または第2光電変換用電極5と、複数のセル7との間に冷却水用流路47を設けてもよい。冷却水用流路47は、例えば、図5のように流路部材48に冷却水用流路47を形成したものであってもよい。流路部材48は、管状であってもよく、板状であってもよい。流路部材48が導電性を有する場合、その表面を絶縁層でコートしてもよく、絶縁基板20で挟んでもよい。
複数のセルを燃料電池として機能させる場合、このような冷却水用流路47に冷却水を流通させることにより、複数のセル7の発熱を冷却水で吸熱することができ、複数のセル7を燃料電池の作動温度に保持することができる。また、複数のセル7の発熱を吸収した冷却水は、温水として利用することができる。このことにより、燃料電池のエネルギー利用効率を向上させることができる。
【0054】
また、複数のセルを水電解装置として機能させる場合または複数のセルを作動させていない場合であって、光電変換層2が受光し、光起電力が生じている場合、冷却水用流路47に冷却水を流通させることにより、光電変換層2が受光することによる発熱を冷却水が吸熱することができる。このことにより、光電変換層2の温度上昇を抑制することができ、光電変換層2の光電変換効率が低下するのを抑制することができる。また、光電変換層2の熱を吸収した冷却水は、温水として利用することができる。このことにより、光のエネルギー利用効率を向上させることができる。
なお、冷却水用流路47は、制御部32により冷却水の流通が制御されるように設けられてもよい。また、センサ部33は、冷却水用流路47を流通する冷却水の温度を測定する温度センサを備えてもよい。
また冷却水用流路47は、セパレータ25に形成された冷却水を流すための流路と繋がっていてもしていてもよい。
【0055】
4.セル
セル7は、第1セル電極9と、第2セル電極10と、第1セル電極9と第2セル電極10とに挟まれた固体高分子電解質膜8と、第1流路13と、第2流路14とを有する。また、複数のセル7は、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能に有する。
第1流路13は、固体高分子電解質膜8と共に第1セル電極9を挟むように設けられもよく、第2流路14は、固体高分子電解質膜8と共に第2セル電極10を挟むように設けられてもよい。
また、セル7は、集電体24を有することもできる。
発電装置45は、セル7を複数有することができる。複数のセル7は、直列に接続されてもよい。
さらにセル7は、図2、6〜9に示した発電装置45に含まれるセル7のように形成されてもよい。また、このようなセル7は、それぞれ図2、5〜7に示した発電装置45に含まれる光電変換層2と組み合わせることができる。
なお、図2、5、7、8、9に示した発電装置45は、5つのセル7を含み、図6に示した発電装置45は、6つのセル7を含むが、発電装置45が含むセルの数は特に限定されず、例えば、2つ以上100以下であり、また、5以上50以下である。このセルの数は、セル7を燃料電池として機能させるときに求められる発電量に応じて決めることができる。
【0056】
発電装置45に含まれる各セルは、それぞれ細長い形状を有してもよく、並列に配置されてもよい。例えば、図2、6〜9に示した断面を有するセル7が図1に示した受光面基板1の裏面側において受光面基板の端から端まで延びる様な形状を有することができる。また、このようなセル7が並列に配置されることにより、複数のセルを平たい形状とすることができる。このことにより、光電変換層2と複数のセル7を同一のスペースに設置することが可能となり、設置範囲を狭くすることができ、また、部品を共通化させることが可能となる。
また、発電装置45は、複数のセル7が積層された積層体(セル積層体)が、並列に配置され、積層体が電気的に直列接続された構造を有してもよい。このことにより、発電装置45に含まれ、燃料電池として機能させる複数のセル7の出力を大きくすることができる。例えば、図6に示した発電装置45では、2つのセル7を積層しセル積層体を形成し、このセル積層体を3つ並列に配置し、セル積層体を直列接続している。このセル積層体が有するセル7の数は、特に限定されず、例えば、2〜20とすることができる。また、このセル積層体ごとに燃料電池としての機能と後述するスタンバイ状態とに制御してもよく、セル積層体ごとに水電解装置としての機能と後述するスタンバイ状態とに制御してもよい。
並列に配置されたセル7またはセル積層体を電気的に直列接続する方法は、特に限定されないが、例えば1つのセル7またはセル積層体の受光面側の接続板と、他のセル7またはセル積層体の裏面側の接続板とを金属製の接続具により電気的に接続させる方法が挙げられる。
また、発電装置45は、複数のセル7を燃料電池として機能させるために、複数のセル7を作動温度に昇温させるためのヒーター、複数のセル7の発熱を吸熱するための冷却水を流通させる流路を備えてもよい。
【0057】
4−1.固体高分子電解質膜、第1セル電極、第2セル電極、集電体(拡散層)
固体高分子電解質膜8は、湿潤した状態でイオン導電性を示す。また、固体高分子電解質膜8は、主なイオン導電種をH+とするものもよく、主なイオン導電種をOH-とするものであってもよい。固体高分子電解質膜8は、主なイオン導電種をH+とするものであることが好ましい。このことにより、発電装置45を水電解装置として機能させるときに、第1セル電極9と第2セル電極10との間にH+を伝導させることができるからである。
固体高分子電解質膜8は、第1セル電極9および第2セル電極10とともに、膜電極接合体(MEA)を構成することができる。また、MEAは固体高分子電解質膜8、第1セル電極9、第2セル電極10の両側に集電体24を有することができる。例えば、図2、5、6、8に示した発電装置45に含まれる固体高分子電解質膜8、第1セル電極9、第2セル電極10および集電体24のようにMEAを形成することができる。
また、固体高分子電解質膜8は、例えば、図7のように管状の第1セル電極9の外側に設けられ、この固体高分子電解質膜8を覆うように第2セル電極10が設けられた構造を有してもよい。また、固体高分子電解質膜8は、例えば、図9のようにL字形の第1セル電極9と第2セル電極10とに挟まれた構造であってもよい。
【0058】
固体高分子電解質膜8は、第1セル電極9に還元性物質が供給され第2セル電極10に酸化性物質が供給されイオン導電種が固体高分子電解質膜8を伝導するとき、光電変換層2の受光面に対し実質的に垂直な方向にイオン導電種が固体高分子電解質膜8を伝導するように設けることができる。また、複数のセル7に含まれる固体高分子電解質膜8と光電変換層2とを実質的に平行となるように設けることができる。このことにより、第1セル電極9と第2セル電極10との間のイオン伝導パスを増やすことができる。さらに、このことにより、燃料電池として機能させる複数のセル7により、高効率発電をすることが可能になる。
【0059】
固体高分子電解質膜8としては、例えば、パーフルオロスルホン酸基ポリマーを含む電解質膜とすることができる。固体高分子電解質膜8は、イオン交換基を表面に有する多孔質膜からなってもよい。固体高分子電解質膜8の好ましい例は、たとえば、パーフルオロスルホン酸系、パーフルオロカルボン酸系、スチレンビニルベンゼン系、第4級アンモニウム系(アニオン交換膜)が挙げられる。
【0060】
第1セル電極9および第2セル電極10は、それぞれ導電性担体と、導電性担体の表面に担持された電極触媒およびイオン交換樹脂とを有することができる。このことにより、電極触媒表面において燃料電池または水電解の電極反応を進行させることができる。電極触媒としては、たとえば、白金、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銀、ルテニウム、イリジウム、モリブデン、マンガン、これらの金属化合物、およびこれらの金属の2種以上を含む合金からなる微粒子が挙げられる。この合金は、白金、鉄、コバルト、ニッケルのうち少なくとも2種以上を含有する合金が好ましく、たとえば、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、鉄−コバルト合金、コバルト−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金等、鉄−コバルト−ニッケル合金が挙げられる。
導電性担体としては、たとえば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、活性炭等の導電性カーボン粒子が挙げられる。また、気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー等の炭素繊維を用いることもできる。
【0061】
集電体24は、例えば、導電性を有する多孔質層とすることができ、具体的には、たとえば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン粒子を含有するエポキシ樹脂膜または多孔質金属などとすることができる。また、この多孔質金属は、金属または合金の発泡体・焼結体または繊維不織布とすることができる。また、集電体24には、水電解用触媒が担持されていてもよい。また、発電装置45が図7、9のような構造を有する場合、第1セル電極9、第2セル電極10のうち、固体高分子電解質膜8に近接する部分以外の部分は、集電体24であってもよい。
【0062】
セル7を燃料電池として機能させるとき、第1セル電極9は燃料極となり、第2セル電極10は空気極となる。セル7を燃料電池の作動温度に昇温し、第1セル電極9に還元性物質を供給し、第2セル電極10に酸化性物質を供給することにより、第1セル電極9と第2セル電極10との間に起電力を発生させることができる。還元性物質は、例えば、水素ガス、気化メタノールなどであり、酸化性物質は、例えば、空気、酸素ガスなどである。なお、複数のセル7のうち一部のセル7を燃料電池として機能させることもできる。
セル7を水電解装置として機能させるとき、第1セル電極9および第2セル電極10は、それぞれ水電解用電極となる。第1セル電極9および第2セル電極10に電解液が供給され、第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧が印加されたとき、第1セル電極9および第2セル電極10のうち一方で水を電解し水素ガスを発生させることができ、他方で水を電解し酸素ガスを発生させることができる。このとき、第1セル電極9の近傍の電解液と第2セル電極10の近傍の電解液との間でプロトン濃度の不均衡が生じるが、プロトンが固体高分子電解質膜8を伝導することにより、プロトン濃度の不均衡を解消することができる。なお、複数のセル7のうち一部のセル7を水電解装置として機能させることもできる。
【0063】
複数のセル7のうち一部のセルを燃料電池または水電解装置として機能させるとき、複数のセル7のうち他のセル7を燃料電池および水電解装置のいずれとしても機能させない状態(スタンバイ状態)とすることができる。このようなスタンバイ状態のセルは、すぐに燃料電池または水電解装置として機能させることができる。このため、複数のセルの燃料電池としての機能、水電解装置としての機能などの切り換えをスタンバイ状態のセルを利用して即座に行うことができる。
また、このスタンバイ状態のセル7の基本的な状態としては、第1流路13および第2流路14になにも流通していない状態で、電解液なども排出された状態である。
ただし、スタンバイ状態のセル7は、水電解装置として機能させる可能性が高いとき、あらかじめ、第1流路13および第2流路14に電解液を流通させてもよい。このことにより、セル7を即座にスタンバイ状態から水電解装置として機能する状態に切り換えることができる。
また、スタンバイ状態のセル7は、燃料電池として機能させる可能性が高いとき、あらかじめ、作動温度以下の所定の温度に昇温させてもよい。このことにより、セルを即座に燃料電池の作動温度に昇温することができ、セルをスタンバイ状態から燃料電池として機能する状態に切り換えることができる。
【0064】
4−2.第1および第2流路、セパレータ、接続板
第1流路13は、固体高分子電解質膜8とともに第1セル電極9を挟むように設けることができ、第2流路14は、固体高分子電解質膜8とともに第2セル電極10を挟むように設けることができる。
第1流路13、第2流路14は、例えば、図2または図5に示した発電装置45のように、MEAを挟む2つの接続板26に溝を設けることにより、形成されてもよい。
また、第1流路13、第2流路14は、例えば、図6、8に示した発電装置45のように、隣接する2つのセル7にそれぞれ含まれるMEAの間に第1流路13および第2流路14である溝が形成されたセパレータ25および流路が形成された接続板26を設けることにより、形成してもよい。
これらの場合、セパレータ25が導電性を有することにより、隣接する2つのセルのうち、一方に含まれる第1セル電極9と他方に含まれる第2セル電極10を電気的に接続することができる。また、接続板26は導電性を有し、並列に配置された2つのセルまたは、並列に配置された2つのセル積層体のうち一方のセルまたはセル積層体の受光面側の接続板26と、他方のセルまたはセル積層体の裏面側の接続板26とを導電部55により電気的に接続させることができる。このことにより、発電装置45に含まれる複数のセル7を直列接続することができる。
【0065】
さらに、例えば、図7のように第1セル電極9を管状とし、第1セル電極の内側を第1流路13とし、管状の第1セル電極9の外側に設けられた第2セル電極10の外側を第2流路14とすることができる。また、隣接する2つのセル7の第2流路14は、セパレータ25により分離することができる。このような場合、第1セル電極9と隣接するセル7に含まれる第2セル電極10とを導電部55により電気的に接続することにより、発電装置45に含まれる複数のセル7を直列接続することができる。
なお、図7のような構造において、第1セル電極9と第2セル電極10は逆であってもよく、この場合、第1流路13と第2流路14も逆となる。
また、例えば、図9のように第1セル電極9および第2セル電極10をL字形とし、隣接する2つのセル7の間にセパレータ25を設けることにより形成してもよい。このような場合、セパレータ25を導電性とすることにより、隣接する2つのセルのうち、一方に含まれる第1セル電極9と他方に含まれる第2セル電極10を電気的に接続することができる。このことにより、発電装置45に含まれる複数のセル7を直列接続することができる。
【0066】
セル7を燃料電池として機能させる場合、第1流路13は燃料流路16となり第1セル電極9に還元性物質を供給し、第2流路14は空気流路17となり第2セル電極10に酸化性物質を供給する。
セル7を水電解装置として機能させる場合、第1流路13および第2流路14のうち少なくとも一方は、電解液流路34となり、第1セル電極9または第2セル電極10に電解液を供給する。
第1流路13および第2流路14のうち一方のみが電解液流路となる場合、例えば、第1流路13が電解液流路となり固体高分子電解質膜の主なイオン導電種がH+である場合、第1セル電極9で酸素ガスが発生し、第2セル電極10で水素ガスが発生するように第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧が印加される。このような場合、第1流路13から電解液が供給された第1セル電極9では、水が電気分解され酸素ガスが発生する。このことにより発生したH+は、固体高分子電解質膜8を伝導し、第2セル電極10で水素ガスとなる。
第1流路13が電解液流路となり固体高分子電解質膜の主なイオン導電種がOH-である場合、第1セル電極9で水素ガスが発生し、第2セル電極10で酸素ガスが発生するように第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧が印加される。このような場合、第1流路13から電解液が供給された第1セル電極9では、水が電気分解され水素ガスが発生する。このことにより発生したOH-は、固体高分子電解質膜8を伝導し、第2セル電極10で酸素ガスとなる。
また、セル7が燃料電池としても、水電解装置としても機能していない場合(セル7がスタンバイ状態の場合)であって、光電変換層2に光が入射し光起電力が生じている場合、第1流路および第2流路は冷却水が流れる流路となってもよい。このことにより、光電変換層2が受光することによる発熱を第1および第2流路13、14を流れる冷却水が吸熱することができ、光電変換層2の光電変換効率の低下を抑制することができる。また、この冷却水は温水として利用することもできる。このことにより、光電変換層2に入射する光のエネルギーの利用効率を高めることができる。
【0067】
5.供給排出用流路
供給排出用流路37は、流路切換部43により切り換え可能な複数の流通経路を有する。この複数の流通経路は、セル7に含まれる第1流路13に還元性物質を流通させセル7に含まれる第2流路に酸化性物質を流通させる第1流通経路と、セル7に含まれる第1流路13および第2流路14のうち少なくとも一方に電解液を流通させる第2流通経路とを有する。供給排出用流路37は、セル7を燃料電池として機能させるとき第1流通経路に切り換わり、セル7を水電解装置として機能させるとき第2流通経路に切り換わることができる。
【0068】
供給排出用流路37を第1流通経路としセル7を燃料電池として機能させる場合、供給排出用流路37は、発電装置45が有する複数のセル7のすべてのセル7について、第1流路13に還元性物質を流通させ第2流路14に酸化性物質を流通させて、すべてのセル7を燃料電池として機能させてもよい。また、供給排出用流路37は、発電装置45が有する複数のセル7のうち一部のセル7について、第1流路13に還元性物質を流通させ第2流路14に酸化性物質を流通させて、一部のセルを燃料電池として機能させてもよい。この場合、還元性物質などを流通させないセル7は、スタンバイ状態のセル7とすることができる。
【0069】
供給排出用流路37を第2流通経路としセル7を水電解装置として機能させる場合、供給排出用流路37は、発電装置45が有する複数のセル7のすべてのセル7について、第1流路13および第2流路14のうちいずれか一方に電解液を流通させて、すべてのセル7を水電解装置として機能させてもよい。また、供給排出用流路37は、発電装置45が有する複数のセル7のうち一部のセル7について、第1流路13および第2流路14のうちいずれか一方に電解液を流通させて、一部のセルを水電解装置として機能させてもよい。この場合、電解液などを流通させないセル7は、スタンバイ状態のセル7とすることができる。
【0070】
流路切換部43は、例えば、供給排出用流路37中に設けられたバルブなどである。例えば、図4に示した発電装置45に含まれるバルブ1〜12(V1〜12)、バルブ21〜32(V21〜32)、バルブ41〜48(V41〜V48)である。
発電装置45に含まれるすべてのセル7を燃料電池として機能させるとき、供給排出用流路37は、例えば、図1に示した発電装置45に含まれる供給排出用流路37のような流通経路を有することできる。
ここでは図1に示したような供給排出用流路37で、還元性物質が水素ガスであり、酸化性物質が酸素ガスである場合について説明する。
水素ガスは、燃料供給部31から供給され、空気が空気圧縮機30から供給される。なお、燃料供給部31は、水素ボンベ、セル7により製造した水素を貯蔵した水素貯蔵器39、またはメタノールやガソリンや都市ガスを改質し水素ガスを発生させる部分であってもよい。また、空気圧縮機30の代わりに、セル7により製造した酸素を貯蔵した酸素貯蔵器40を設けてもよい。
【0071】
燃料供給部31から供給された水素ガスは、燃料流路16(供給排出量流路37)を流れ、混合器29において第1流路13を流れた水素ガスと混合される。この混合ガスは加湿器28で加湿された後、各第1流路13を流れ、第1流路13において第1セル電極9に供給され燃料電池の燃料として利用される。第1流路13において利用されなかった水素ガスは、第1流路13から排出された後、燃料流路16(供給排出量流路37)を流れ、混合器29において燃料供給部31から供給される水素ガスと混合される。
空気圧縮機30から供給された空気は、空気流路17(供給排出量流路37)と流れ、加湿器28で加湿された後、第2流路14を流れる。空気は第2流路14により第2セル電極10に供給され燃料電池の酸化剤ガスとして利用される。第2流路14を流れた空気は、排気される。
このことにより、第1セル電極9と第2セル電極10との間に起電力が生じ、この電力が外部出力される。
【0072】
発電装置45に含まれるすべてのセル7を水電解装置として機能させるとき、供給排出用流路37は、例えば、図3に示した発電装置45に含まれる供給排出用流路37のような流通経路を有することできる。
ここでは図3に示したような供給排出用流路37で、第1流路13および第2流路14の両方に電解液が供給される場合について説明する。
電解液は、ポンプ42により電解液槽41に溜められた電解液が電解液流路34(供給排出量流路37)を流れ、電解液が第1流路13、第2流路14を流通する。また、第1セル電極9と第2セル電極10との間に各セル7が並列となるように電圧を印加する。電解液は、第1セル電極9および第2セル電極10に供給され、水の電気分解反応が生じ水素ガスおよび酸素ガスが発生する。発生した水素ガスは、電解液とともに水素回収用流路35(供給排出量流路37)を流れ、気泡分離装置38において水素ガスと電解液とが分離され水素ガスは水素貯蔵器39に貯蔵され、電解液は電解液槽41に溜められる。発生した酸素ガスは、電解液とともに酸素回収用流路36(供給排出量流路37)を流れ、気泡分離装置38において酸素ガスと電解液とが分離され酸素ガスは酸素貯蔵器40に貯蔵され、電解液は電解液槽41に溜められる。
なお、ここでは、各セル7が並列となるように第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧を印加しているが、各セル7が直列となるように第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧を印加してもよい。各セル7が直列となるように電圧を印加した場合、水素ガスを各セル7の第1流路13から回収し、酸素ガスを各セルの第2流路14から回収することが可能となる。このことにより、第1流路13が、セル7を水電解装置として機能させた場合水素ガスを回収する流路となり、セル7を燃料電池として機能させた場合水素ガスを流通させる流路となり、また、第2流路14が、セル7を水電解装置として機能させた場合酸素ガスを回収する流路となり、セル7を燃料電池として機能させた場合空気を流通させる流路とすることができるため、供給排出用流路37を簡素化することができる。
【0073】
供給排出用流路37の流通経路は、例えば供給排出用流路37がバルブを備えることにより切り換えることができる。図4は、バルブにより流通経路を切り換えることができる供給排出用流路37を備えた発電装置45の概略配管図である。
例えば、図4に示した発電装置45に含まれる5個のセル7のうちすべてのセル7を燃料電池として機能させるとき、V1(バルブ1)〜V12、V41〜48を開け、V21〜V32を閉めることにより、供給排出用流路37を第1流通経路とすることができ、すべてのセル7を燃料電池として機能させることができる(燃料電池発電モード、太陽電池+燃料電池発電モード)。
また、例えば、図4に示した発電装置45に含まれる5個のセル7のうち3個のセル7を燃料電池として機能させるとき、V3〜5、V8〜12、V45〜48を開け、V1、V2、V6、V7、V21〜32、V41〜V44を閉めることにより、供給排出用流路37を第1流通経路とすることができ、3個のセル7を燃料電池として機能させることができる(燃料電池発電モード、太陽電池+燃料電池発電モード)。このとき、図4に示した発電装置45に含まれる5個のセル7のうち2個のセル7はスタンバイ状態とすることができる。また、図4に示したバルブの開閉を制御することにより、5個のセル7のうち、4個、2個または1個のセル7を燃料電池として機能させることができる。
このようにして、発電装置45に含まれる複数のセル7のうち一部のセル7を燃料電池として機能させるとき、複数のセル7のうち他のセルを燃料電池および水電解装置の何れとしても機能させないスタンバイ状態とすることができる。
なお、ここでは、説明のためにセル7の1個ずつについて5個のセル7の間で燃料電池として機能させることと、スタンバイ状態のセルにすることの切り換えについて説明したが、複数のセルを一組として複数組の間で切り換えてもよい。例えば、2〜50個のセル7を一組として、または5〜30個のセル7を一組として3〜10組の間で切り換えてもよい。
【0074】
例えば、図4に示した発電装置45に含まれる複数のセル7に含まれるすべてのセル7を水電解装置として機能させるとき、V1〜V12を閉め、V21〜V32、V41〜V48を開けることにより、供給排出用流路37を第2流通経路とすることができ、すべてのセル7を水電解装置として機能させることができる(水素生成モード、太陽電池発電+水素生成モード)。
また、例えば、図4に示した発電装置45に含まれる5個のセル7のうち3個のセル7を水電解装置として機能させるとき、V1〜V12、V24、V25、V29、V30、V45〜48を閉め、V21〜23、V26〜28、V31、V32、V41〜V44を開けることにより、供給排出用流路37を第2流通経路とすることができ、3個のセル7を水電解装置として機能させることができる(水素生成モード、太陽電池発電+水素生成モード)。このとき、図4に示した発電装置45に含まれる5個のセル7のうち2個のセル7はスタンバイ状態とすることができる。また、図4に示したバルブの開閉を制御することにより、5個のセル7のうち、4個、2個または1個のセル7を水電解装置として機能させることができる。
このようにして、発電装置45に含まれる複数のセル7のうち一部のセル7を水電解装置として機能させるとき、複数のセル7のうち他のセルを燃料電池および水電解装置の何れとしても機能させないスタンバイ状態とすることができる。
なお、ここでは、説明のためにセル7の1個ずつについて5個のセル7の間で水電解装置として機能させることと、スタンバイ状態のセルにすることの切り換えについて説明したが、複数のセルを一組として複数組の間で切り換えてもよい。例えば、2〜50個のセル7を一組として、または5〜30個のセル7を一組として3〜10組の間で切り換えてもよい。
【0075】
V1〜12、V21〜V32、V41〜V48の開閉は、制御部32により制御することができる。また、燃料供給部31、空気圧縮機30、加湿器28、ポンプ42、気泡分離装置38、水素貯蔵器39または酸素貯蔵器40も制御部32により制御することもできる。また、制御部32により、セル7を燃料電池として機能させるとき、上記のように第1流通流路に水素ガスおよび空気が流れるように上記の各構成要素を制御することができ、また、セル7を水電解装置として機能させるとき、上記のように第2流通経路に電解液が流れ、水素ガスおよび酸素ガスを製造できるように上記各構成要素を制御することができる。
また、上記の各モードは制御部32により切り換えることができる。また、燃料電池または水電解装置として機能させるセルの個数と、スタンバイ状態とするセルの個数も制御部32により切り換えることができる。
【0076】
6.回路切換部
回路切換部27は、光電変換層2の光起電力、および燃料電池として機能させるセル7の発電電力のうちどちらか一方または両方を回路を切り換えて外部出力できるように設けられてもよい。さらに、回路切換部27は、光電変換層2の光起電力を外部回路に供給するための回路と、光電変換層2の光起電力を水電解装置として機能させるセル7に供給するための回路と、外部回路からの電力を水電解装置として機能させるセル7に供給するための回路とを切り換えることができるように設けられてもよい。
回路切換部27は複数のスイッチを有することにより、電気回路を切り換えることができる。また、回路切換部27に含まれるスイッチのON・OFFは制御部32により制御することができる。
図10は、本実施形態の発電装置45の概略回路図である。回路切換部27は、例えば図10に示したようなスイッチを有する電気回路を有することができる。なお、図10では、説明のために、1つの光電変換層2と、5個のセル7とを有する発電装置45の回路図を示しているが、光電変換層2の個数やセル7の個数は、特に限定されない。
【0077】
ここでは、図10のような電気回路を有する回路切換部27について説明する。
発電装置45が光電変換層2の光起電力を外部出力する場合、SW1(スイッチ1)、SW2、SW9、SW10をONとし、他のスイッチをOFFとすることにより、光電変換層2の光起電力を第1外部回路へ出力することができる(太陽電池発電モード)。
すべてのセル7を燃料電池として機能させ発電装置45が燃料電池の起電力を外部出力する場合、SW3、SW8、SW9、SW10をONとし、他のスイッチをOFFとすることにより、燃料電池の起電力を第1外部回路へ出力することができる(燃料電池発電モード)。また、SW1、SW2、SW3、SW8、SW9、SW10をONとし、他のスイッチをOFFとすることにより、光電変換層2の光起電力と燃料電池として機能するすべてのセル7の起電力の両方を第1外部回路へ出力することができる(太陽電池+燃料電池発電モード)。
【0078】
また、例えば、図10に示した5個のセル7のうち3個のセル7を燃料電池として機能させて2個のセル7についてスタンバイ状態とする場合、SW3、SW6、SW9、SW10をONとし、SW4、SW5、SW7、SW8、SW11、SW12をOFFとすることにより、燃料電池として機能する3個のセル7の発電電力を第1外部回路へ出力することができる(燃料電池発電モード、太陽電池+燃料電池発電モード)。また、図10に示した回路切換部27のスイッチ(SW)を制御することにより、燃料電池として機能させるセルの個数とスタンバイ状態にするセルの個数を制御することができる。
このようにして、発電装置45に含まれる複数のセル7のうち一部のセル7を燃料電池として機能させるとき、複数のセル7のうち他のセルを燃料電池および水電解装置の何れとしても機能させないスタンバイ状態とすることができる。
なお、ここでは、説明のためにセル7の1個ずつについて5個のセル7の間で燃料電池として機能させることと、スタンバイ状態のセルにすることの切り換えについて説明したが、複数のセルを一組として複数組の間で切り換えてもよい。例えば、2〜50個のセル7を一組として、または5〜30個のセル7を一組として3〜10組の間で切り換えてもよい。このような場合それぞれの組に含まれるセル7は直列接続され、それぞれの組は並列接続されてもよい。
【0079】
すべてのセル7を水電解装置として機能させ、光電変換層2の光起電力をセル7に出力する場合、SW1〜SW8をONとし、他のスイッチをOFFとすることにより、光電変換層2の光起電力をセル7に出力し、水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる(水素生成モード)。
なお、ここでは、光電変換層2の光起電力が、各セル7が並列となるように第1セル電極9と第2セル電極10との間に印加される。このことにより、光電変換層2の光起電力の電圧が水分解のための理論電圧(1.23V)以上であれば、各セル7で水を電気分解することができる。
また、各セル7が直列となるように第1セル電極9と第2セル電極10との間に印加されてもよいが、各セル7で水を電気分解するために必要な光起電力の電圧は、より大きくなる。しかし、この場合、供給排出用流路37を簡素化することができるというメリットがある。なお、ここでは、光電変換層2の光起電力について記載しているが、外部電力を用いる場合でも同様である。
また、複数のセル7を直列に接続したものを複数形成し、これらを並列に接続してもよい。このことにより、水を電気分解するために必要な電圧を小さくし、かつ、供給排出用流路37を簡素化することができる。
すべてのセル7を水電解装置として機能させ、外部回路の電力をセル7に出力する場合、SW3〜SW8、SW11、SW12をONとし、他のスイッチをOFFとすることにより、第2外部回路の電力をセル7に出力し、水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる(外部電力水素生成モード)。第2外部回路の電力とは、例えば、発電装置45と並べて設けられた太陽電池の光起電力や、電力系統における余剰電力などである。
すべてのセル7を水電解装置として機能させ、光電変換層2の光起電力をセル7および外部回路に出力する場合、SW1〜SW10をONとし、他のスイッチをOFFとすることにより、光電変換層2の光起電力をセル7に出力し、水素ガスおよび酸素ガスを製造することができ、光電変換層2の光起電力を第1外部回路へ出力することができる(太陽電池発電+水素生成モード)。
【0080】
また、例えば、図10に示した5個のセル7のうち3個のセル7を水電解装置として機能させて2個のセル7についてスタンバイ状態とする場合、SW5〜SW8をONとし、SW1、2およびSW11、12のうちどちらか一方をONとし、SW3、4をOFFとすることにより、水電解装置として機能する3個のセル7に光電変換層2の光起電力または第2外部回路の電力を出力することができる(水素生成モード、外部電力水素生成モード、太陽電池発電+水素生成モード)。また、図10に示した回路切換部27のスイッチ(SW)を制御することにより、水電解装置として機能させるセルの個数とスタンバイ状態にするセルの個数を制御することができる。
このようにして、発電装置45に含まれる複数のセル7のうち一部のセル7を水電解装置として機能させるとき、複数のセル7のうち他のセルを燃料電池および水電解装置の何れとしても機能させないスタンバイ状態とすることができる。
なお、ここでは、説明のためにセル7の1個ずつについて5個のセル7の間で水電解装置として機能させることと、スタンバイ状態のセルにすることの切り換えについて説明したが、複数のセルを一組として複数組の間で切り換えてもよい。例えば、2〜50個のセル7を一組として、または5〜30個のセル7を一組として3〜10組の間で切り換えてもよい。
なお、上記の各モードは、制御部32により切り換えることができる。また、燃料電池または水電解装置として機能させるセルの個数と、スタンバイ状態とするセルの個数も制御部32により切り換えることができる。
【0081】
7.センサ部
センサ部33は、日射量計、照度センサ、温度センサなどを含むことができる。このことにより、光電変換層2に入射する光量に関する情報などを得ることができる。また、センサ部33に含まれる日射量計または照度センサの出力は、「光電変換層2の光起電力に関する情報」となってもよい。
センサ部33は制御部32に検知信号を出力することができる。このことにより、センサ部33の検知信号に基づき制御部32により本実施形態の発電装置45を制御することができる。
【0082】
8.制御部
制御部32は、本実施形態の発電装置45を制御することができる。
制御部32は、情報を入力する入力手段と、入力手段から入力された情報に基づき設定する設定手段と、設定手段により情報を出力する出力手段とを備えることができる。入力手段、設定手段および出力手段は、プログラムであってもよく、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0083】
制御部32は、入力手段により情報を入力をするため、または出力手段により情報を出力するために、有線または無線の信号線によりセンサ部33、外部情報網、サーバー、供給排出用流路37、回路切換部27、光電変換層2などと接続することができる。
【0084】
入力手段は、例えば、センサ部33からの信号または光電変換層2の光起電力の測定値の信号を入力することができる。このことにより、制御部32は、「光電変換層2の光起電力に関する情報」を入力することができる。
また、入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することができる。このことにより、制御部32は、「需要電力に関する情報」を入力することができる。
設定手段は、入力手段に入力された情報に基づき、回路切換部27に含まれるスイッチのON・OFF、供給排出用流路37のバルブの開閉による流通経路の選択、冷却水用流路47の冷却水の流量、燃料電池として機能させるセル7を昇温するためのヒーターへの出力などを設定することができる。
出力手段は、設定手段で設定した情報を回路切換部27、供給排出用流路37、冷却水用流路47などに出力することができる。これらの手段により本実施形態の発電装置45を制御することができる。
【0085】
図11は、制御部32により発電装置45のモードを制御するフローチャートである。このフローチャートのように制御することにより、発電装置を燃料電池発電モード、水素生成モード、太陽電池+燃料電池発電モード、太陽電池発電モード、太陽電池発電+水素生成モードを切り換えることができる。
【0086】
まず、制御部32は、入力手段により光電変換層2の光起電力(光電変換層2の光起電力に関する情報)および需要電力(需要電力に関する情報)を入力することができる。光電変換層2の光起電力は、光電変換層2の配線や回路切換部27の配線から測定した光電変換層2の光起電力であってもよく、センサ部33に含まれる日射量計や照度センサなどから予測される光電変換層2の光起電力であってもよい。後者の場合、入力手段に入力されるのは、日射量や照度となり、制御部32により光起電力を計算することもできる。
需要電力は、入力手段が外部情報網、サーバーより入力することができる。消費される電力を供給するために必要な電力であり、サーバーなどにより予測された電力量を入力することができる。
【0087】
次に、制御部32は、光電変換層2の光起電力および需要電力のうちどちらか一方が所定値を上回っているか否かを判断する。ここで所定値とは、光電変換層2の光起電力の場合、光起電力を外部回路に出力、または水電解装置として機能させる複数のセル7に出力するのに十分な所定の電力量である。また、需要電力の所定値とは、光電変換層2または燃料電池として機能する複数のセル7からの電力の供給を必要としない所定の需要電力量である。例えば、電力系統からの電力のみで満たすことができる需要電力量である。
制御部32が光電変換層2の光起電力および需要電力の両方が所定値を下回っていると判断する場合には、制御部32は、出力手段から、発電装置45を待機モードとする信号を各構成要素に出力する。例えば、夜間であり、発電装置45が電力を供給する施設の電力需要がほとんどない場合などである。
このような場合、例えば、制御部32は、回路切換部27に対して、すべてのスイッチをOFFとする信号を出力することができ、供給排出用流路37に何も流通させない信号を各構成要素に出力することができる。このことにより発電装置45を待機モードとすることができる。
【0088】
制御部32が光電変換層2の光起電力および需要電力のうちどちらか一方が所定値を上回っていると判断する場合、制御部32は、光電変換層2の光起電力が所定値を上回っているか否かを判断する。
制御部32が光電変換層2の光起電力が所定値を下回り、需要電力が所定値を上回ると判断する場合、制御部32は、出力手段から、発電装置45を燃料電池発電モードとする信号を供給排出用流路37、回路切換部27などの各構成要素に出力する。このことにより、第1外部回路に複数のセル7が発電した電力を供給することができ、燃料電池発電モードにすることができる。例えば、夜間であり、発電装置45により電力を供給する必要がある場合である。
この後、制御部32は、燃料電池発電制御信号を燃料電池として機能させる複数のセル7などに出力することができる。具体的には、制御部32は、入力手段により需要電力を入力し、この入力した需要電力に基づいて燃料電池として機能させる複数のセル7の発電電力を変動させ、電力負荷追従運転をするような信号を燃料電池として機能させる複数のセル7、供給排出用流路37、回路切換部27などに出力することができる。
【0089】
制御部32が、光電変換層2に光起電力が所定値を上回っていると判断する場合、制御部32は、需要電力が所定値を上回っているか否かを判断する。
制御部32が光電変換層2の光起電力が所定値を上回り、需要電力が所定値を下回ると判断する場合、制御部32は、出力手段から、発電装置45を水素生成モードとする信号を供給排出用流路37、回路切換部27などの各構成要素に出力する。このことにより、光電変換層2の光起電力を水電解装置として機能させる複数のセル7に出力することができ、セル7により水素ガスを製造することができる。例えば、日中であり、発電装置45が電力を供給する施設の電力需要がほとんどない場合などである。
【0090】
制御部32が、光電変換層2の光起電力および需要電力の両方が所定値を上回っていると判断する場合、制御部32は、光電変換層2の光起電力が需要電力を上回っているか否かを判断する。
制御部32が光電変換層2の光起電力が需要電力を下回っていると判断する場合、制御部32は、出力手段から、発電装置45を太陽電池+燃料電池発電モードとする信号を供給排出用流路37、回路切換部27などの各構成要素に出力する。このことにより、燃料電池として機能させる複数のセル7が発電した電力と、光電変換層2の光起電力との両方を第1外部回路に供給することができ、太陽電池+燃料電池発電モードにすることができる。例えば、日中であり、発電装置45が電力を供給する施設の電力需要が多い場合などである。
この後、制御部32は、燃料電池発電制御信号を燃料電池として機能させる複数のセル7などに出力することができる。具体的には、制御部32は、入力手段により需要電力および光電変換層2の光起電力を入力し、この入力した需要電力および光起電力に基づいて燃料電池として機能させる複数のセル7の発電電力を変動させ、電力負荷追従運転をするような信号を燃料電池として機能させる複数のセル7、供給排出用流路37、回路切換部27などに出力することができる。
【0091】
制御部32が、光電変換層2の光起電力が需要電力を上回っていると判断する場合、制御部32は、光電変換層2の光起電力が需要電力を大きく上回っているか否かを判断する。
制御部32が光電変換層2の光起電力が需要電力を大きく上回っていないと判断する場合、制御部32は、出力手段から、発電装置45を太陽電池発電モードとする信号を供給排出用流路37、回路切換部27などの各構成要素に出力する。このことにより、光電変換層2の光起電力を第1外部回路に供給することができ、太陽電池発電モードにすることができる。例えば、日中であり、需要電力を光電変換層2の光起電力で満たすことができ、余剰電力があまりない場合などである。
【0092】
制御部32が光電変換層2の光起電力が需要電力を大きく上回っていると判断する場合、制御部32は、出力手段から、発電装置45を太陽電池発電+水素生成モードとする信号を供給排出用流路37、回路切換部27などの各構成要素に出力する。このことにより光電変換層2の光起電力を水電解装置として機能させるセル7と第1外部回路の両方に出力することができ、太陽電池発電+水素生成モードとすることができる。例えば、日中であり、需要電力を光電変換層2の光起電力で満たすことができ、余剰電力がある場合などである。
【0093】
図12は、制御部32により発電装置45を水素生成モードとして制御するフローチャートである。このように制御することにより、水素生成モードの開始および終了、水電解装置として機能させるセル7の個数などを制御することができる。
まず、水素需要があるかどうかを判断する。水素需要とは、例えば、水素貯蔵器39の空き容量などである。水素貯蔵器39に空き容量がない場合、水素ガスを生成しても貯蔵できないため、水素生成モードは終了する。
水素需要がある場合、制御部32は、光電変換層2の光起電力(光電変換層2の光起電力に関する情報)および需要電力(需要電力に関する情報)を入力し、光起電力に余剰電力があるかどうか判断する。光起電力に余剰電力がある場合、この余剰電力と発電装置45に含まれる各セル7の水電解能とを比較し、水電解装置として機能させるセルの個数を設定する。
【0094】
次に、設定したセルの個数が1以上か否かを判断する。セルの個数が1未満の場合、つまり余剰電力が少ない場合、十分な量の水素を生成できないため、水素生成モードは終了する。
設定したセルの個数が1以上の場合、制御部32は、出力手段により流路切換部43、回路切換部27などに設定した個数のセル7を水電解装置として機能させる信号を出力する。このことにより、水電解装置として機能させるセル7の第1流路13および第2流路14に電解液が流れ、また、このセル7の第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧が印加される。このことにより、第1セル電極9および第2セル電極10において電解液を電気分解し水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる。発生させた水素ガスおよび酸素ガスは電解液とともに流路を流れ、気泡分離装置38で気液分離され、水素貯蔵器39または酸素貯蔵器40に貯蔵される。なお、水電解装置として機能させないセル7は、スタンバイ状態のセル7となる。
【0095】
一定の時間経過後、再び水素需要があるか否かを判断する。水素需要がなくなっている場合、水電解装置として機能させていたセル7をスタンバイ状態とする信号を流路切換部43、回路切換部27などに出力する。その後、水素生成モードを終了する。
水素需要がある場合、制御部32は、光電変換層2の光起電力および需要電力を入力し、光起電力に余剰電力があるかどうか判断する。光起電力に余剰電力がある場合、この余剰電力と発電装置45に含まれる各セル7の水電解能とを比較し、水電解装置として機能させるセルの個数を設定する。
次に、設定したセルの個数が1以上か否かを判断する。セルの個数が1未満の場合、つまり余剰電力が少ない場合、水電解装置として機能させていたセル7をスタンバイ状態とし、水素生成モードは終了する。
【0096】
設定したセルの個数が1以上の場合、設定したセルの個数が変化しているか否かを判断する。セルの個数が変化していない場合、状態を維持する。セルの個数が変化している場合、セルの個数が増加しているか否かを判断する。
セルの個数が減少している場合、水電解装置として機能させている複数のセル7のうち、一部のセル7をスタンバイ状態とする信号を流路切換部43、回路切換部27に出力する。このことにより、スタンバイ状態とするセル7の第1流路13、第2流路14中の電解液が排出され、第1セル電極9と第2セル電極10との間に電圧が印加されなくなる。このことにより、水電解装置として機能するセルの個数を減少させることができる。その後、設定された個数のセル7により水電解を続ける。
【0097】
セルの個数が増加している場合、スタンバイ状態のセル7があるか否かを判断する。スタンバイ状態のセル7がない場合、状態を維持する。スタンバイ状態のセル7がある場合、出力手段によりスタンバイ状態のセル7を水電解装置として機能させる信号を流路切換部43、回路切換部27などに出力する。このことにより、スタンバイ状態のセル7を水電解装置として機能させるセル7とすることができ、水電解装置として機能するセルの個数を増加させることができる。その後、設定された個数のセル7により水電解を続ける。
【0098】
図13は、制御部32により発電装置45を燃料電池発電モードとして制御するフローチャートである。このように制御することにより、燃料電池発電モードの開始および終了、燃料電池として機能させるセル7の個数などを制御することができる。
まず、制御部32は、需要電力(需要電力に関する情報)を入力し、燃料電池として需要電力を満たす発電電力を供給することができるセル7の個数を設定する。
【0099】
次に、設定したセルの個数が1以上か否かを判断する。セルの個数が1未満の場合、つまり需要電力が少ない場合、燃料電池発電モードは終了する。
設定したセルの個数が1以上の場合、制御部32は、出力手段により流路切換部43、回路切換部27などに設定した個数のセル7を燃料電池として機能させる信号を出力する。このことにより、燃料電池として機能させるセル7の第1流路13に水素ガスが流れ、第2流路14に空気が流れ、セル7は燃料電池の作動温度に昇温・維持され、発電電力が外部出力可能な状態にされる。このことによりセル7が燃料電池として機能し、発電電力が外部出力される。なお、燃料電池として機能させないセル7は、スタンバイ状態のセル7となる。
【0100】
一定の時間経過後、制御部32は、再び需要電力を入力し、燃料電池として需要電力を満たす発電電力を供給することができるセル7の個数を設定する。
次に、設定したセルの個数が1以上か否かを判断する。セルの個数が1未満の場合、つまり需要電力が少ない場合、燃料電池発電モードは終了する。
設定したセルの個数が1以上の場合、設定したセルの個数が変化しているか否かを判断する。セルの個数が変化していない場合、状態を維持する。セルの個数が変化している場合、セルの個数が増加しているか否かを判断する。
セルの個数が減少している場合、燃料電池として機能させている複数のセル7のうち、一部のセル7をスタンバイ状態とする信号を流路切換部43、回路切換部27に出力する。このことにより、スタンバイ状態とするセル7の第1流路13に水素ガスが供給されなくなり、第2流路14に空気が供給されなくなる。また、電力供給回路が切り換わる。このことにより、燃料電池として機能するセルの個数を減少させることができる。その後、設定された個数のセル7により燃料電池発電を続ける。
【0101】
セルの個数が増加している場合、スタンバイ状態のセル7があるか否かを判断する。スタンバイ状態のセル7がない場合、状態を維持する。スタンバイ状態のセル7がある場合、出力手段によりスタンバイ状態のセル7を燃料電池として機能させる信号を流路切換部43、回路切換部27などに出力する。このことにより、スタンバイ状態のセル7を燃料電池として機能させるセル7とすることができ、燃料電池として機能するセルの個数を増加させることができる。その後、設定された個数のセル7により燃料電池を続ける。
【0102】
なお、水素生成モードと燃料電池発電モードの場合の制御部32による発電装置45の制御方法について説明したが、太陽電池+燃料電池発電モード、太陽電池発電モード、太陽電池発電+水素生成モードについても制御部32により発電装置45を制御することができる。
【符号の説明】
【0103】
1: 受光面基板 2:光電変換層 4:第1光電変換用電極 5:第2光電変換用電極 7:セル 8:固体高分子電解質膜 9:第1セル電極 10:第2セル電極 13:第1流路 14:第2流路 16:燃料流路 17:空気流路 20:絶縁基板 21:裏面基板 24:集電体 25:セパレータ 26:接続板 27:回路切換部 28:加湿器 29:混合器 30:空気圧縮機 31:燃料供給部 32:制御部 33:センサ部 34:電解液流路 35:水素回収用流路 36:酸素回収用流路 37:供給排出用流路 38:気泡分離装置 39:水素貯蔵器 40:酸素貯蔵器 41:電解液槽 42:ポンプ 43:流路切換部 45:発電装置 47:冷却水用流路 48:流路部材 50:半導体部 51:p型半導体部 52:n型半導体部 54:絶縁部 55:導電部 56:アイソレーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面およびその裏面を有する光電変換層と、前記光電変換層の光起電力を出力するための第1および第2光電変換用電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた複数のセルとを備え、
前記複数のセルは、それぞれ、第1セル電極と、第2セル電極と、第1セル電極と第2セル電極とに挟まれた固体高分子電解質膜と、第1流路と、第2流路とを有し、
前記複数のセルは、それぞれ燃料電池としての機能および水電解装置としての機能を切り換え可能であり、
第1流路により第1セル電極に還元性物質を供給し第2流路により第2セル電極に酸化性物質を供給することにより前記セルを燃料電池として機能させ、第1流路により第1セル電極に電解液を又は第2流路により第2セル電極に電解液を供給することにより前記セルを水電解装置として機能させることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記還元性物質は、水素ガスであり、
前記酸化性物質は、空気または酸素ガスである請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記複数のセルは、前記複数のセルのうち一部のセルを燃料電池または水電解装置として機能させるとき、第1および第2流路に流通させるものを制御することにより、前記複数のセルのうち他のセルを燃料電池および水電解装置のいずれとしても機能させないことができるように設けられた請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記複数のセルに含まれる少なくとも2つのセルは、前記セルを燃料電池として機能させるとき、前記少なくとも2つのセルに含まれる1つのセルが有する第1セル電極と、前記少なくとも2つのセルに含まれる他の1つのセルが有する第2セル電極とが電気的に接続するように直列接続する請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項5】
前記複数のセルに含まれる少なくとも2つのセルは、並列に配置された請求項1〜4のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項6】
前記光電変換層と前記複数のセルとの間に冷却水用流路をさらに備える請求項1〜5のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項7】
流路切換部により切り換え可能な複数の流通経路を有する供給排出用流路をさらに備え、
前記複数の流通経路は、第1流路に還元性物質を第2流路に酸化性物質を流通させる第1流通経路と、第1および第2流路のうち少なくとも一方に電解液を流通させる第2流通経路とを含み、
前記供給排出用流路は、前記セルを燃料電池として機能させるとき第1流通経路に切り換わり、前記セルを水電解装置として機能させるとき第2流通経路に切り換わる請求項1〜6のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項8】
制御部をさらに備え、
前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記供給排出用流路の流通経路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記流路切換部に出力する出力手段とを備える請求項7に記載の発電装置。
【請求項9】
前記セルは、前記光電変換層から供給される電力を利用して水を電気分解できるように設けられた請求項1〜8のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項10】
前記セルは、外部回路から供給される電力を利用して水を電気分解できるように設けられた請求項1〜9のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項11】
回路切換部をさらに備え、
前記回路切換部は、燃料電池として機能させる前記セルの発電電力を外部回路に供給するための回路と、前記光電変換層の光起電力を外部回路に供給するための回路と、前記光電変換層の光起電力を水電解装置として機能させる前記セルに供給するための回路と、外部回路からの電力を水電解装置として機能させる前記セルに供給するための回路とのうち少なくも2つの回路を切り換えることができるように設けられた請求項1〜10のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項12】
制御部を備え、
前記制御部は、情報を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記回路切換部の切り換える回路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記回路切換部に出力する出力手段とを備える請求項11に記載の発電装置。
【請求項13】
日射量計または照度センサを含むセンサ部をさらに備え、
前記入力手段は、前記センサ部からの情報を入力する請求項8または12に記載の発電装置。
【請求項14】
前記入力手段は、電力会社からの情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力する請求項8、12および13のいずれか1つに記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−105632(P2013−105632A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248787(P2011−248787)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】