説明

発電装置

【課題】パッケージを備えた構成を採用しながらも出力の低下を抑制することが可能な発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置1は、圧電型振動発電素子10と、蓄電部20と、圧電型振動発電素子10で発生する交流電圧を整流して蓄電部を充電する充電手段30と、圧電型振動発電素子10、蓄電部20および充電手段30を収納したボタン形のパッケージ40とを備える。圧電型振動発電素子10は、支持部11と、支持部11に揺動自在に支持されたカンチレバー部12と、カンチレバー部12における支持部11側とは反対の先端部に設けられた錘部13と、カンチレバー部12に設けられカンチレバー部12の振動に応じて交流電圧を発生する発電部14とを備える。パッケージ40は、蓄電部20から放電するための正極を兼ねる第1ケース41および負極を兼ねる第2ケース42と、パッケージ40の内外を連通させる連通部43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、振動エネルギを電気エネルギに変換する発電機構を備えた発電装置は、環境発電(エナジーハーベスティング)などの分野で注目され、各所で研究開発されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1には、静電誘導式または電磁誘導式の発電機構を備えるものであって、発電機構に電気的に接続された第一の整流手段と、この第一の整流手段に電気的に接続された蓄積手段と、この蓄積手段に電気的に接続された外部正極および外部負極を備え、電子機器に使用される電池と交換可能な外形を備えて形成された発電装置が記載されている。
【0004】
特許文献1には、いわゆるボタン電池やコイン電池などの外形に合わせて構成された発電装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、発電機構として圧電変換部を備えた発電デバイスが記載されている。
【0006】
特許文献2に開示された発電デバイスは、フレーム部およびフレーム部の内側に配置されフレーム部に揺動自在に支持されたカンチレバー部を有するカンチレバー形成基板と、カンチレバー形成基板の一表面側においてカンチレバー部に形成され当該カンチレバー部の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部とを備えている。また、カンチレバー形成基板におけるカンチレバー部の先端部には、カンチレバー部の変位量を大きくするための錘部が一体に設けられている。なお、この発電デバイスでは、フレーム部が支持部を構成し、圧電変換部が発電部を構成している。
【0007】
また、特許文献1には、発電デバイスは、カンチレバー形成基板の上記一表面側においてフレーム部に固着された第1のカバー基板と、カンチレバー形成基板の他表面側においてフレーム部に固着された第2のカバー基板とを設けるようにしてもよい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−151944号公報
【特許文献2】特開2011−91319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本願発明者らは、特許文献2に記載された発電デバイスのパッケージの薄型化を図るにあたって、パッケージの外形を特許文献1のように、いわゆるボタン電池やコイン電池などの外形に合わせて構成した発電装置を考えた。
【0010】
しかしながら、本願発明者らの試作した発電装置では、パッケージを設けていない場合に比べて錘部の振幅が大きく低下し、出力が大きく低下してしまった。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ボタン形のパッケージを備えた構成でパッケージの薄型化を図りながらも出力の低下を抑制することが可能な発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発電装置は、圧電型振動発電素子と、蓄電部と、前記圧電型振動発電素子で発生する交流電圧を整流して前記蓄電部を充電する充電手段と、前記圧電型振動発電素子、前記蓄電部および前記充電手段を収納したボタン形のパッケージとを備え、前記圧電型振動発電素子は、支持部と、前記支持部に揺動自在に支持されたカンチレバー部と、前記カンチレバー部における前記支持部側とは反対の先端部に設けられた錘部と、前記カンチレバー部に設けられ前記カンチレバー部の振動に応じて交流電圧を発生する発電部とを備え、前記パッケージは、前記蓄電部から放電するための正極を兼ねる第1ケースおよび負極を兼ねる第2ケースと、前記パッケージの内外を連通させる連通部とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発電装置において、前記パッケージは、前記カンチレバー部と前記錘部と前記発電部とからなる振動部の厚み方向に交差する第1ケースの第1壁部と前記第2ケースの第2壁部との少なくとも一方に、前記連通部を備えることが好ましい。
【0014】
この発電装置において、前記パッケージは、前記連通部が、密集して設けられた複数の貫通孔からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発電装置においては、ボタン形のパッケージを備えた構成でパッケージの薄型化を図りながらも出力の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の発電装置の概略断面図である。
【図2】実施形態の発電装置の概略平面図である。
【図3】実施形態の発電装置における圧電型振動発電素子の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図4】参考形態の発電装置の概略構成図である。
【図5】参考形態の発電装置のパッケージ用基板の一例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図、(c)は概略側面図である。
【図6】参考形態の発電装置のパッケージ用基板の他例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図、(c)は概略側面図である。
【図7】参考形態の発電装置の特性説明図である。
【図8】比較例の発電装置の概略断面図である。
【図9】実施形態の発電装置におけるパッケージの他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図10】実施形態の発電装置におけるパッケージの更に他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図11】実施形態の発電装置におけるパッケージの別の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本実施形態の発電装置について図1〜図3に基づいて説明する。
【0018】
発電装置1は、圧電型振動発電素子10と、蓄電部20と、圧電型振動発電素子10で発生する交流電圧を整流して蓄電部を充電する充電手段30と、圧電型振動発電素子10、蓄電部20および充電手段30を収納したボタン形のパッケージ40とを備えている。
【0019】
圧電型振動発電素子10は、支持部11と、この支持部11に揺動自在に支持されたカンチレバー部12と、このカンチレバー部12における支持部11側とは反対の先端部に設けられた錘部13とを備えている。また、圧電型振動発電素子10は、カンチレバー部12に設けられカンチレバー部12の振動に応じて交流電圧を発生する発電部14を備えている。
【0020】
パッケージ40は、蓄電部20から放電するための正極を兼ねる第1ケース41および負極を兼ねる第2ケース42と、パッケージ40の内外を連通させる連通部43とを備えている。
【0021】
次に、発電装置1の各構成要素について詳細に説明する。
【0022】
圧電型振動発電素子10は、支持部11とカンチレバー部12と錘部13とを、基板10aから形成することができる。この基板10aとしては、例えば、単結晶のシリコン基板、多結晶のシリコン基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、酸化マグネシウム(MgO)基板、金属基板、ガラス基板、ポリマー基板などを用いることができる。
【0023】
圧電型振動発電素子10は、図3に示すように、支持部11を、枠状(ここでは、矩形枠状)の形状として、カンチレバー部12および錘部13が、支持部11の内側に配置されるようにしてもよい。ここにおいて、基板10aは、カンチレバー部12と錘部13とで構成される可動部を囲む平面視U字状のスリット10dが設けられることによって、カンチレバー部12における支持部11との連結部位以外の部分が、支持部11と空間的に分離されている。なお、支持部11は、カンチレバー部12を揺動自在に支持できる形状であればよく、必ずしも枠状である必要はない。図1および図2における支持部11は、枠状とはなっていない。
【0024】
発電部14は、カンチレバー部12の厚み方向の一面側(基板10aの一表面側)に形成されている。発電部14は、カンチレバー部12側から順に、第1電極(下部電極)14a、圧電体14bおよび第2電極(上部電極)14cを有している。
【0025】
したがって、圧電型振動発電素子10は、カンチレバー部12の振動によって発電部14の圧電体14bが応力を受け第2電極14cと第1電極14aとに電荷の偏りが発生し、発電部14において交流電圧が発生する。要するに、圧電型振動発電素子10は、発電部14が圧電材料の圧電効果を利用して発電する振動式の発電機構である。
【0026】
圧電型振動発電素子10の開放電圧は、環境振動に起因した圧電体14bの振動に応じた正弦波状の交流電圧となる。ここで、圧電型振動発電素子10は、この圧電型振動発電素子10の共振周波数と一致する環境振動(外部振動)を利用して発電することを想定している。環境振動としては、例えば、稼動中のFA機器で発生する振動、車両の走行によって発生する振動、人の歩行によって発生する振動など、種々の環境振動がある。圧電型振動発電素子10で発生する交流電圧の周波数は、環境振動の周波数が圧電型振動発電素子10の共振周波数と一致する場合、圧電型振動発電素子10の共振周波数と同じになる。
【0027】
圧電型振動発電素子10は、支持部11に、第1電極14aに第1配線部17aを介して電気的に接続された第1パッド16aと、第2電極14cに第2配線部17cを介して電気的に接続された第2パッド16cとが設けられている。第1配線部17a、第2配線部17c、第1パッド16aおよび第2パッド16cの材料としては、Auを採用しているが、これに限らず、例えば、Mo、Al、Pt、Irなどでもよい。また、第1配線部17a、第2配線部17c、第1パッド16aおよび第2パッド16cの材料は、同じ材料に限らず、別々の材料を採用してもよい。また、第1配線部17a、第2配線部17c、第1パッド16aおよび第2パッド16cは、単層構造に限らず、2層以上の多層構造でもよい。なお、圧電型振動発電素子10は、第1パッド16a、第2パッド16cが、第1出力端子、第2出力端子をそれぞれ構成している。
【0028】
また、圧電型振動発電素子10は、第2配線部17cと第1電極14aとの短絡を防止する絶縁層(図示せず)を設けてある。この絶縁層は、シリコン酸化膜により構成してあるが、シリコン酸化膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。また、圧電型振動発電素子10は、基板10aの材料に応じて、適宜の絶縁膜を設けてもよい。
【0029】
圧電体14bの圧電材料としては、PZTを採用しているが、これに限らず、例えば、PZT−PMN(Pb(Mn,Nb)O3)やその他の不純物を添加したPZTでもよい。また、圧電材料は、AlN、ZnO、KNN(K0.5Na0.5NbO3)や、KN(KNbO3)、NN(NaNbO3)、KNNに不純物(例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなど)を添加したものなどでもよい。
【0030】
第1電極14aの材料としては、Ptを採用しているが、これに限らず、例えば、Au、Al、Irなどでもよい。また、第2電極14cの材料としては、Auを採用しているが、これに限らず、例えば、Mo、Al、Pt、Irなどでもよい。
【0031】
圧電型振動発電素子10は、基板10aと第1電極14aとの間に緩衝層を設けた構造でもよい。緩衝層の材料は、圧電体14bの圧電材料に応じて適宜選択すればよく、圧電体14bの圧電材料がPZTの場合には、例えば、SrRuO3、(Pb,La)TiO3、PbTiO3、MgO、LaNiO3などを採用することが好ましい。また、緩衝層は、例えば、Pt膜とSrRuO3膜との積層膜により構成してもよい。なお、緩衝層を設けることにより、圧電体14bの結晶性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、圧電型振動発電素子10の構成は、上述の例に限らず、例えば、発電部14におけるカンチレバー部12の幅方向(図3(a)の上下方向)に沿った方向の幅寸法を小さくして、1つのカンチレバー部12の上記一面側において複数の発電部14を上記幅方向に並設し、これら複数の発電部14の直列回路の一端、他端を第1パッド16a、第2パッド16cそれぞれに電気的に接続するように構成してもよい。
【0033】
蓄電部20は、例えば、コンデンサや蓄電池などにより構成することができる。また、蓄電部20は、例えば、複数個(例えば、2個)のコンデンサを直列接続した構成とすることもできる。
【0034】
蓄電部20は、この蓄電部20の正極端子と、正極を兼ねる第1ケース41とが、第1電気接続部(図示せず)を介して電気的に接続されている。また、蓄電部20は、この蓄電部20の負極端子と、負極を兼ねる第2ケース42とが、第2電気接続部(図示せず)を介して電気的に接続されている。第1電気接続部および第2電気接続部の各々は、例えば、リード線や導電性ペースト(例えば、銀ペースト、金ペーストなど)や半田などを採用することができる。
【0035】
充電手段30は、全波整流回路であって、プリント基板からなる回路基板31に回路部品を実装して構成してある。全波整流回路は、例えば、回路部品である4個のダイオードがブリッジ接続されたダイオードブリッジにより構成することができる。充電手段30を構成する全波整流回路は、ダイオードブリッジに限らず、例えば、両波倍電圧整流回路により構成してもよい。両波倍電圧整流回路は、2個のダイオードの直列回路と2個のコンデンサの直列回路とが並列接続された回路であり、回路基板31に回路部品(2個のダイオードおよび2個のコンデンサ)を実装して構成することができる。要するに、両波倍電圧整流回路は、2個ダイオードと2個のコンデンサとがブリッジ接続されている。そして、両波倍電圧整流回路は、圧電型振動発電素子10の第1のパッド16aを、2個のダイオードの直列回路における両ダイオードの接続点に接続し、また、圧電型振動発電素子10の第2のパッド16cを、2個のコンデンサの直列回路における両コンデンサの接続点に接続すればよい。また、2個のコンデンサの直列回路は、上述の蓄電部20により構成すればよい。
【0036】
充電手段30の回路部品としては、表面実装型の電子部品(ダイオードや、コンデンサ)を用いることが好ましい。これにより、発電装置1は、充電手段30の回路部品として、回路基板31のスルーホールへリードを挿入して実装するリード付きのものを用いる場合に比べて、薄型化を図ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、圧電型振動発電素子10および蓄電部20も回路基板31に実装してある。これにより、発電装置1は、圧電型振動発電素子10および蓄電部20を、回路基板31とは別のプリント配線板に実装して用いる場合に比べて、部品点数の削減を図れる。
【0038】
回路基板31は、平面形状をC字状としてある。これにより、発電装置1は、圧電型振動発電素子10を、支持部11が回路基板31の厚み方向において回路基板31に重なり且つ振動部15が回路基板31の厚み方向において回路基板31に重ならないように配置することによって、圧電型振動発電素子10の振動部15が第2ケース42側へ変位する空間を確保することができる。
【0039】
回路基板31は、外形を円形状として、圧電型振動発電素子10における振動部15の変位する空間を確保するための開口部が、厚み方向に貫設されたものを用いることもできる。また、回路基板31の外形は、円形状に限らず、例えば、正六角形状、正八角形状などの正多角形状の形状とすることもできる。
【0040】
ボタン形のパッケージ40は、JIS C 8500やIEC 60086で規格化されているボタン型電池の形状および寸法(直径、長さ(厚み))に合わせることが好ましい。ここで、ボタン形のパッケージ40は、例えば、外形寸法の規格である、R41、R43、R44、R48、R54、R55、R70などの固有記号に従って、寸法を設定することが好ましい。また、ボタン形のパッケージ40は、固有記号が定められていなくても、既存のボタン型電池の寸法として存在するR1632、R2450、R1025、R1216、R1220、R1225、R1616、R2012、R2016、R2025、R2032、R2325、R2330、R2354、R2477、R3032(数字の上2桁が直径、下2桁が厚みを表し、例えば2032は直径が20mm、厚みが3.2mmであることを示している)などに従って、寸法を設定することが好ましい。
【0041】
発電装置1は、パッケージ40の形状および寸法を上述のように設定することにより、既存のボタン型電池の代替として使用することが可能となる。よって、電子機器に内蔵されたボタン形電池と交換して使用することが可能となる。なお、電子機器としては、例えば、時計、補聴器、携帯電話機、パーソナルコンピュータなどが挙げられるが、これらに限定するものではなく、例えば、車両などに搭載されるセンサ装置、表示装置などでよい。
【0042】
第1ケース41は、浅い有底円筒状の形状に形成されている。ここにおいて、第1ケース41は、金属により形成されている。
【0043】
第2ケース42は、第1ケース41よりも浅く且つ第1ケース41の内径よりも外径が小さな有底円筒状の形状に形成されている。また、第2ケース42は、金属により形成されている。
【0044】
パッケージ40は、第1ケース41と第2ケース42との互いの内底面同士が対向し、第2ケース42の大部分が第1ケース41に収納されている。また、パッケージ40は、第1ケース41と第2ケース42とが、電気絶縁性を有する接合材料(例えば、エポキシ樹脂などの樹脂や、ガラスなど)からなる接合部44により接合されている。ここで、接合部44は、第2ケース42の円筒状の周壁42bと第1ケース41の円筒状の周壁41bとの全周に亘って設けられている。また、パッケージ40は、第2ケース42の外底面と第1ケース41の周壁41bの先端面とが面一とならないように、第1ケース41の周壁41bと第2ケース42の周壁42bとの互いに重なる領域を設定してある。
【0045】
なお、第2ケース42は、周壁42bの先端面に、回路基板30を位置決めする段部42cが形成されており、回路基板30が電気絶縁性を有する接合材料などによって固着されている。第2ケース42に回路基板30を位置決めして固定するための構造は上述の段部42cに限らず、例えば、第2ケース42の周壁42bの一部を内方へ切り起こしたり突出させて形成した突部により、回路基板30を厚み方向の両側から挟持するような構造を採用することもできる。また、発電装置1は、回路基板31を保持する保持台を別途に備えた構成とし、この保持台を第2ケース42内に収納して第2ケース42に固着するようにしてもよい。
【0046】
パッケージ40は、第1ケース41が正極を兼ね、第2ケース42が負極を兼ねているので、第1ケース41の外底面に、「+」の表示を設け、第2ケース42の外底面に「−」の表示を設けておくことが好ましい。これにより、発電装置1は、使用者などが正極および負極の極性を視認することが可能となる。
【0047】
パッケージ40は、カンチレバー部12と錘部13と発電部14とからなる振動部15の厚み方向に交差する第1ケース41の円板状の第1壁部(底壁)41aと第2ケース42の円板状の第2壁部(底壁)42aとの少なくとも一方に、連通部43を備えることが好ましい。ここで、図1の例では、第1壁部41aと第2壁部42aとの両方に、連通部43を設けた構成を例示してある。なお、図1中の矢印は、振動部15の振動方向を示し、図1中の一点鎖線は、第2ケース42側へ変位した錘部13およびカンチレバー部12を示している。
【0048】
また、パッケージ40は、連通部43が、密集して設けられた複数の貫通孔43からなることが好ましい。図2に示した例における連通部43は、複数の貫通孔43が、2次元アレイ状に配置されている。各貫通孔43の開口形状は、矩形状(図2の例では、正方形状であるが、長方形状でもよい)としてある。図2に示した例では、各貫通孔43の開口形状を一辺が0.5mmの正方形状とし、図2の上下方向もしくは左右方向において隣り合う貫通孔43間の距離を0.2mmとしてあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0049】
各貫通孔43の開口形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状としてもよい。また、連通部43は、複数の貫通孔43が2次元アレイ状に配置されているが、複数の貫通孔43の配置は特に限定するものではない。
【0050】
ところで、本願発明者らは、図3に示した構成の圧電型振動発電素子10の厚み方向の両側に図4に示すようにパッケージ用基板140を接合した参考形態の発電装置1”を試作して、参考形態の発電装置1”の特性を評価した。
【0051】
パッケージ用基板140としては、参考形態の発電装置1”のパッケージ用基板140の一例として、図5に示すように、矩形板状のガラス基板140aの一面に振動部15(図3(a)参照)の変位する空間を確保するための凹部140bを形成したものを用意した。また、パッケージ用基板140としては、参考形態の発電装置1”のパッケージ用基板140の他例として、図6に示すように、矩形板状のガラス基板140aの一面に振動部15の変位する空間を確保するための凹部140bを形成し且つ凹部140bの内底面と他面との部分を貫通する複数の貫通孔144を形成したものとを用意した。なお、図5および図6に示した各パッケージ用基板140には、第1パッド16aおよび第2パッド16cを露出可能とする開口部147を形成してある。ただし、この開口部147は、矩形枠状の支持部11と当該支持部11を厚み方向の両側から挟むように当該支持部11に接着される2枚のパッケージ用基板140とで構成されるパッケージの内外を連通させるものではない。図5に示したパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”では、パッケージ内の空間が気密空間となるので、この気密空間をNガス雰囲気とした。
【0052】
そして、パッケージなしの圧電型振動発電素子10、図5のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”および図6のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”それぞれをについて、圧電型振動発電素子10の錘部13に与える外部振動の加速度と錘部13の先端の振幅との関係を測定した結果を図7に示す。図7では、外部振動の加速度を横軸、錘部13の振幅を縦軸としてある。ここで、図7では、パッケージなしの圧電型振動発電素子10の錘部13の先端の振幅を黒色の菱形(A1)でプロットし、図5のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”における圧電型振動発電素子10の錘部13の先端の振幅を黒色の四角(A2)でプロットし、図6のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”における圧電型振動発電素子10の錘部13の先端の振幅を黒色の三角(A3)でプロットしてある。なお、単振動で与えている外部振動の振幅をB1、単振動で与えている外部振動の変位をzとすると、z=B1・sinωt(ただし、ωを共振周波数fに合わせている)で表され、加速度はB1・ω2で表される。また、各パッケージ用基板140において、凹部140bの深さ寸法は、0.3mm、凹部140bの開口形状は、矩形状とし、図5(a)および図6(a)の左右方向の寸法を7.4mm、上下方向の寸法を6.8mmとした。また、図6のパッケージ用基板140において、貫通孔144の開口形状は、矩形状とし、図5(a)および図6(a)の左右方向の寸法を1.8mm、上下方向の寸法を1.6mmとした。
【0053】
図7のA1、A2およびA3の比較から、パッケージなしの圧電型振動発電素子10の錘部13の振幅が最も大きく、図5のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”では圧電型振動発電素子10の振幅が大きく低下していることが分かる。これに対して、図6のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”では、パッケージなしの圧電型振動発電素子10の錘部13の振幅よりは低下するものの、図5のパッケージ用基板140を備えた参考形態の発電装置1”に比べて振幅が大きくなる傾向があることが分かる。そして、このような傾向は、図1に示すようにボタン形のパッケージ40に貫通孔43を設けた本実施形態の発電装置1と、図8に示すようにボタン形のパッケージ40に貫通孔43を設けていない比較例の発電装置1’との比較においても、同様であり、本実施形態の発電装置1のほうが比較例の発電装置1’に比べて、パッケージ40を備えた構成でパッケージ40の薄型化を図りながらも出力の低下を抑制することが可能となる。ここで、本実施形態の発電装置1では、振動部15と第1ケース41の第1壁部41aおよび第2ケース42の第2壁部42aとの各ギャップを小さくすることでパッケージ40の薄型化を図った場合でも、比較例の発電装置1’に比べて、錘部13の振動を抑制するスクイーズフィルム効果によるダンピングが低減されることにより、錘部13の振動が抑制され、結果的に発電部14の歪みが大きくなり、圧電型振動発電素子10の発電量を大きくすることができ、発電装置1の出力を大きくすることが可能となる。
【0054】
以上説明した本実施形態の発電装置1は、ボタン形のパッケージ40を備えた構成でパッケージ40の薄型化を図りながらも出力の低下を抑制することが可能となる。
【0055】
ところで、パッケージ40は、上述のように、振動部15の厚み方向に交差する第1ケース41の第1壁部41aと第2ケース42の第2壁部42aとの少なくとも一方に、連通部43を備えていることが好ましく、例えば、図1の構造に限らず、例えば、図9、図10および図11などの構造としてもよい。ここで、図9に示した構造の発電装置1は、第1壁部41aのみに複数の貫通孔44を密集して設けることで連通部43が形成されている。また、図10に示した構造の発電装置1は、第1壁部41aのみに1つの連通部43が形成されている。また、図11に示した構造の発電装置1は、第1壁部41aおよび第2壁部42aの各々に1つの連通部43が形成されている。
【0056】
図1に示した構造の発電装置1と図9に示した構造の発電装置1とでは、図1に示した構造の発電装置1のように第1壁部41aと第2壁部42aとの両方に連通部43が形成されているほうが、錘部13の振動を抑制するスクイーズフィルム効果によるダンピングを、より抑制することが可能となり、パッケージ40を備えたことによる出力の低下を抑制することが可能となる。また、図10に示した構造の発電装置1と図11に示した構造の発電装置1とでは、図11に示した構造の発電装置1のように第1壁部41aと第2壁部42aとの両方に連通部43が形成されているほうが、錘部13の振動を抑制するスクイーズフィルム効果によるダンピングを、より抑制することが可能となり、パッケージ40を備えたことによる出力の低下を抑制することが可能となる。
【0057】
また、図1および図9の各発電装置1は、連通部43が複数の貫通孔44を密集することで形成してあるので、図10および図11の各発電装置1のように連通部43が1つの比較的大きな貫通孔44を設けることで形成してある場合に比べて、スクイーズフィルム効果によるダンピングを同程度に抑えながらも、パッケージ40の外からパッケージ40内へ異物が侵入するのを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 発電装置
10 圧電型振動発電素子
11 支持部
12 カンチレバー部
13 錘部
14 発電部
15 振動部
20 蓄電部
30 充電手段
40 パッケージ
41 第1ケース(正極)
41a 第1壁部
42 第2ケース(負極)
42a 第2壁部
43 連通部
44 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電型振動発電素子と、蓄電部と、前記圧電型振動発電素子で発生する交流電圧を整流して前記蓄電部を充電する充電手段と、前記圧電型振動発電素子、前記蓄電部および前記充電手段を収納したボタン形のパッケージとを備え、前記圧電型振動発電素子は、支持部と、前記支持部に揺動自在に支持されたカンチレバー部と、前記カンチレバー部における前記支持部側とは反対の先端部に設けられた錘部と、前記カンチレバー部に設けられ前記カンチレバー部の振動に応じて交流電圧を発生する発電部とを備え、前記パッケージは、前記蓄電部から放電するための正極を兼ねる第1ケースおよび負極を兼ねる第2ケースと、前記パッケージの内外を連通させる連通部とを備えることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記パッケージは、前記カンチレバー部と前記錘部と前記発電部とからなる振動部の厚み方向に交差する第1ケースの第1壁部と前記第2ケースの第2壁部との少なくとも一方に、前記連通部を備えることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記パッケージは、前記連通部が、密集して設けられた複数の貫通孔からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−110920(P2013−110920A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255960(P2011−255960)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)