説明

発電設備のドレン回収装置

【課題】 ドレン回収の設備費が安く簡単な構造で制御がし易いとともにドレン温度の降下が少ない発電設備のドレン回収装置を提供する。
【解決手段】 復水系統の復水器4と蒸気タービンとの間を連結させる復水管路16と、ドレンタンク14と復水器4との間を連結させるドレン管路17と、復水管路16及びドレン管路17の途中における交差位置に配設されて熱交換を行わせるドレンクーラ9と、復水管路16におけるドレンクーラ9の上流側の経路で熱交換を行うように配設されたグランドコンデンサ7と、このグランドコンデンサ7からドレンを抽出して切替弁24により分岐させて一方をドレンタンク14に他方を封水回収タンク25に各々流通させた分岐管路26と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電設備内の各所で発生する熱交換後のドレンの熱を有効に回収して、発電施設の効率を向上させることができる発電設備のドレン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に火力発電所等の発電設備では、ボイラで発生した蒸気によって蒸気タービンが駆動されて発電機により発電が行われている。蒸気タービンで仕事を終えた蒸気は、復水器で凝縮させて復水にしてから、復水系統を経て再びボイラに戻される。一方、発電の過程においては、発電設備内の各所で蒸気が凝縮してドレンが発生し、このドレンを集積して貯留するためのドレンタンクが設けられ、この集積された発電設備内のドレンを有効に利用するためのドレン管路が、復水系統の復水管路に交差するように配設されている。このような発電設備のドレン回収装置に関する公知技術として、例えば、特許文献1を挙げることができる。
【0003】
図2は、従来技術に係る発電設備のドレン回収装置を示す概略系統図である。図2に示すように、従来の発電設備のドレン回収装置は、燃料Fにより燃焼するボイラ1、蒸気タービン2、発電機3、復水器4、ドレンタンク14を備え、復水器4で蒸気が凝縮され復水とされ、この復水をボイラ1に供給するための復水管路16が配設されている。また、復水管路16には、交差するようにドレンを回収するドレン管路17が配設されている。
【0004】
ここで、復水管路16上には、熱交換器(復水熱交換器6、グランドコンデンサ7、ドレンクーラ9)が複数個設けられており、復水を各々の熱交換器で様々な熱媒体と熱交換しながら搬送している。また、ドレン管路17は、ドレンクーラ9から復水器4に第1調整弁18を介して連結され、この第1調整弁18の上流側で分岐させ、復水熱交換器6の下流側の復水管路16に合流させて連結する分岐管路19を備えている。この分岐管路19には、第2調整弁20とドレン圧送ポンプ21とが備えている。そして、復水管路16は、ドレンクーラ9の上流側に設けた送給ポンプ8により、復水をドレンクーラ9、次に第1および第2ヒータ10、11に送られて熱交換するとともに、脱気器12で不凝縮ガスを除去した後、給水ポンプ13によりボイラ1に給水するように配設されている。
【0005】
このような構成による従来の発電設備のドレン回収装置としては、発電設備が定常運転の場合、ドレン管路17の第1調整弁18を閉状態、分岐管路19の第2調整弁20を開状態にし、ドレンクーラ9で熱交換後のドレンを、ドレン管路17及び分岐管路19を経てドレン圧送ポンプ21により圧送して復水熱交換器6の下流側の復水管路16に合流させている。
【0006】
この結果、ドレンクーラ9のドレンと温度差の大きい復水器4にドレンを導入するよりも、ドレンクーラ9のドレンを温度差の小さい復水熱交換器6の下流側の復水管路16に合流させてドレンを回収するほうが、熱力学的にドレンの熱回収効率を高めることができる。
【0007】
なお、発電設備が起動時等、発電設備内を流通するドレンの温度が十分低い際には、ドレンクーラ9内を流通するドレンと復水器4の復水との温度差は小さいので、ドレン管路17の第1調整弁18を開状態、分岐管路19の第2調整弁20を閉状態にし、ドレンクーラ9で熱交換後のドレンを復水器4に導入している。
【0008】
ところで、グランドコンデンサ(グランド復水器)7は、ここで回収されたシール蒸気を、給水ポンプ13のグランド部をシールするために使用された封水とともに、封水として貯留するため、図2に示した封水回収タンク25に連結されている。また、この封水回収タンク25は、復水器4に連結されており、貯留した封水を復水として使用するために真空引きにより供給している(例えば、特許文献2(第2図、段落番号0015)参照。)。
【0009】
このように、従来のドレン回収装置では、復水とドレンとの間で熱交換が行われるように、復水管路16とドレン管路17との交差位置にドレンクーラ9を配置し、このドレンクーラ9の上流側で分岐する分岐管路19を設けて復水熱交換器6の下流側の復水管路16に合流させることで、発電設備の熱回収効率を向上させていた。さらに、グランドコンデンサ7は、封水回収タンク25に連結されてシール水などの封水を貯留して復水器4の復水として使用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−8290号公報
【特許文献2】特開2011−157855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の発電設備のドレン回収装置では、復水器4への供給が、封水回収タンク25からの封水(ドレン)の供給と、ドレンタンク14からのドレンの供給とを同時に制御して供給する必要があるため、複雑な制御および構造となり、制御が難しく設備費が高くなるという不具合があった。
【0012】
また、従来の発電設備のドレン回収装置では、封水回収タンク25に貯留するグランドコンデンサ7の高い温度のドレンが、給水ポンプ13のグランド部をシールするシール水などの低い温度の封水と混合されて、熱回収前に温度が低下してしまうという不具合があった。
【0013】
さらに、従来の発電設備のドレン回収装置では、封水回収タンク25に貯留される封水
(特にグランドコンデンサ7からのドレン)が高い熱量(例えば、1t/H×90℃)を有しているのにもかかわらず、復水器4に直接流れてしまいドレンの熱量が有効利用されないという不具合があった。
【0014】
そこでこの発明は、ドレン回収の設備費が安く簡単な構造で制御がし易いとともに、ドレン温度の降下が少ない発電設備のドレン回収装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、蒸気タービンに復水器から復水を戻す復水系統を備えてドレンタンクに集積した発電設備のドレンを前記復水器に戻す発電設備のドレン回収装置であって、前記復水系統の前記復水器と蒸気タービンとの間を連結させる復水管路と、前記ドレンタンクと前記復水器との間を連結させるドレン管路と、前記復水管路及びドレン管路の途中における交差位置に配設されて熱交換を行わせるドレンクーラと、前記復水管路における前記ドレンクーラの上流側の経路で熱交換を行うように配設されたグランドコンデンサと、前記グランドコンデンサからドレンを抽出して切替弁により分岐させて一方を前記ドレンタンクに他方を封水回収タンクに各々流通させた分岐管路と、を有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、グランドコンデンサから分岐管路で封水回収タンクとドレンタンクとを1つの管路に連結させる簡単な構造により、復水器へのドレン供給をドレン管路のみにでき、容易に制御可能になる。また、封水回収タンクを用いず、ドレンタンクのみで供給することが可能になる。さらに、封水回収タンクに入る前に、切替弁でドレンタンクに回収してドレンクーラで熱回収を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、グランドコンデンサから分岐管路で封水回収タンクとドレンタンクとを1つの管路に連結させる簡単な構造により、復水器へのドレン供給をドレン管路のみにできるため、制御および構造が簡単になり、かつ設備費が安くできる。特に、ドレンタンクの圧力が低い(真空の)ためドレンタンクへの供給および排出が制御し易い。また、封水回収タンクを用いず、温度低下が少ないドレンタンクのみで供給するため、従来のように他のドレン(封水)が混合されて温度が低下することを防止できる。さらに、封水回収タンクに入る前に切替弁によってドレンタンクに回収した後にドレンクーラで熱回収が行われるため、従来有効利用されていなかったドレンの熱回収効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態に係る発電設備のドレン回収装置を示す概略系統図である。
【図2】従来技術に係るドレン回収装置を備えた発電設備の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態に係る発電設備のドレン回収装置を示す概略系統図である。なお、従来技術と同じ構成要素には、同一の符号を付している。本実施の形態は、従来技術と同様に発電設備のボイラ(図示せず)とこのボイラの蒸気により駆動する蒸気タービン(図示せず)とを備えて発電が行われ、図1に示すように、蒸気タービンからの蒸気を凝縮させて復水とする復水器4を備えている。
【0021】
ここで、まず復水系統として、復水器4の下流側に復水管路16と復水ポンプ5とが備えられ、この復水管路16に沿って順に、復水器4、復水熱交換器6、空気抽出器22、グランドコンデンサ7、及びドレンクーラ9が各々連結されている。
【0022】
この復水系統に備えられた、復水熱交換器6、グランドコンデンサ7、ドレンクーラ9は、熱交換器として駆動される。具体的に、復水熱交換器6は、復水と蒸気タービン(図2参照)の軸受冷却水として使用された水を熱交換させて、復水の温度を上昇させる装置である。グランドコンデンサ7は、蒸気タービンのグランドシール部をシールするために使用したシール蒸気(グランド蒸気)を空気と一緒に回収し、この混合ガスと復水とを熱交換させ、水(復水)の温度を上昇させる装置である。このグランドコンデンサ7は、復水管路16におけるドレンクーラ9の上流側の経路で熱交換を行うように配設されている。また、グランドコンデンサ7には、グランド蒸気復水器23が連結されており、蒸気ビン環内で大気圧よりわずかに低い圧力を得るために設置されている。ドレンクーラ9は、蒸気ビン抽気が冷却されて生成されたドレンと復水とを熱交換させ、復水の温度を上昇させるとともに、このドレンを冷却するための装置である。
【0023】
また、空気抽出器22は、復水器4の蒸気側が運転中高真空に保たれているが、僅かな量の空気が侵入するため、この空気を蒸気噴流によるジェット作用で取り出し復水器4の真空を保持するものである。
【0024】
一方、復水系統の復水管路16には、発電設備内のドレンを回収するためのドレン管路17が、熱交換器であるドレンクーラ9の位置で交差するように配設されている。すなわち、復水管路16及びドレン管路17の途中における交差位置に、ドレンクーラ9を配置させて熱交換が行えるよう形成されている。このドレン管路17には、発電設備内で発生したドレンを集積して貯留するためのドレンタンク14、熱交換器であるドレンクーラ9、および復水器4が各々連結されている。尚、ドレンタンク14とドレンクーラ9との間のドレン管路17には、ドレンポンプ15が備えられ、ドレンタンク14のドレンをドレンクーラ9に送れるように配置されている。
【0025】
ここで、本実施の形態では、従来のドレン回収装置とは異なり、図1の復水管路16とドレン管路17とは別に、グランドコンデンサ7からドレンを抜き出し切替弁24を介して二股に分岐させて、一方をドレンタンク14に、他方を封水回収タンク25に、各々流通させる分岐管路26を備えている。すなわち、従来技術のドレンタンク14と封水回収タンク25とが各々別々に復水器4へ供給していた管路を、分岐管路26による一つの管路で連結させた簡単な構造により、制御を容易にし、設備費を安価にしている。
【0026】
この実施の形態では、グランドコンデンサ7のドレンを、封水回収タンク25に流入させる前に切替弁24の切替えによりドレンタンク14に流して一旦回収させている。その後、回収されたドレンは、ドレンポンプ15によりドレンクーラ9に送られて十分に熱回収させて復水器4に供給されるため、従来技術のような貯留タンク内での温度低下などの不具合を確実に防止できる。
【0027】
ここで、ドレンクーラ9では、ドレンタンク14からのドレンの熱量により、復水管路16の復水の温度を上昇させて熱交換させた後、このドレンを冷却して復水器4に供給させている。すなわち、本実施の形態では、従来技術のようにドレンが高い熱量(例えば、1t/H×90℃)を有しているのにもかかわらず復水器4に直接流れていた図2の封水回収タンク25とは異なり、この熱量をドレンタンク14で保持して熱交換させた後に冷却して復水器4に送るドレンクーラ9を用いる(冷却器で凝縮したドレンを利用する)ことを特徴としている。
【0028】
次に、このようなドレン回収装置を備えた発電設備の運転方法について説明する。まず、発電設備の通常の運転中は、切替弁24を切替えてドレンがドレンタンク14側に流れるように設定される。このように運転が開始されると、ボイラー(図2参照)が点火されて蒸気タービン(図2参照)が駆動され、ここで発生する蒸気を、図1に示した復水器4が凝縮させて復水とし、ドレンポンプ15により復水管路16に流通させてボイラ(図2参照)まで搬送される。
【0029】
この際、グランドコンデンサ7は、復水器4からの復水を熱交換することで回収された蒸気によるドレンを、分岐管路26に流通させることで、前述した切替弁24の切替えによるドレンタンク14側に流して一旦貯留させる。このドレンタンク14は、圧力が低い(真空の)ため、制御がし易いとともに、温度低下も少ないため、熱回収効率を高めることが可能になる。そして、ドレンタンク14のドレンは、ドレンポンプ15によりドレンクーラ9に供給されて復水との熱回収を行った後、冷却されて復水器4に搬送される。
【0030】
このように、ドレンタンク14や封水回収タンク25などの既存の装置を利用して構築できる簡単な構造のため、設備費のコスト低減を実現できるとともに、グランドコンデンサでのドレン量自体は少ないが、常時安定した高温のドレンを有効利用することで、プラント効率の向上に繋げることができる。
【0031】
また、発電設備の停止時には、ボイラの消火により発電設備内を流通するドレンの温度が低いため、ドレンタンク14に流通させず、切替弁24を切替えてドレンが封水回収タンク25側に流れるように設定される。ここで、停止時には、起動モード(前述した通常の運転中)における停止時も含まれ、必ずドレンの温度が低いとは限らない。すなわち、切替弁24は、グランドコンデンサ7の高い熱量のドレンのみをドレンタンク14に流通させるとともに、そうでない低い熱量のドレンを封水回収タンク25に流通させて貯留させて、適宜、ドレン温度(運転状況)に応じて切替えられている。そして、このドレンタンク14に貯留させた高い熱量のドレンのみをドレンクーラ9に流通させて熱回収することで、ドレンの熱回収効率を高めている。
【0032】
以上のように、この発電設備のドレン回収装置によれば、グランドコンデンサ7から分岐管路26で封水回収タンク25とドレンタンク14とを1つの管路に連結させる簡単な構造により、復水器4へのドレン供給をドレン管路17のみにできるため、制御および構造が簡単になり、かつ設備費が安くできる。特に、ドレンタンク14の圧力が低い(真空の)ためドレンタンク14の供給および排出が制御し易い。また、封水回収タンク25を用いず、温度低下が少ないドレンタンク14のみで供給するため、従来のように他のドレン(封水)が混合されて温度が低下することを防止できる。さらに、封水回収タンク25に入る前に切替弁24によってドレンタンク14に回収した後にドレンクーラ9で熱回収が行われるため、従来有効利用されていなかったドレンの熱回収効率を高めることが可能になる。
【0033】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、火力発電所に使用された発電設備のドレン回収装置を説明したが、原子力発電所などでも実施することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
4 復水器
5 復水ポンプ
6 復水熱交換器
7 グランドコンデンサ
9 ドレンクーラ
14 ドレンタンク
15 ドレンポンプ
16 復水管路
17 ドレン管路
22 空気抽出器
23 グランド蒸気復水器
24 切替弁
25 封水回収タンク
26 分岐管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンに復水器から復水を戻す復水系統を備え、ドレンタンクに集積した発電設備のドレンを、前記復水器に戻す発電設備のドレン回収装置であって、
前記復水系統の前記復水器と蒸気タービンとの間を連結させる復水管路と、
前記ドレンタンクと前記復水器との間を連結させるドレン管路と、
前記復水管路及びドレン管路の途中における交差位置に配設されて熱交換を行わせるドレンクーラと、
前記復水管路における前記ドレンクーラの上流側の経路で熱交換を行うように配設されたグランドコンデンサと、
前記グランドコンデンサからドレンを抽出して切替弁により分岐させ、一方を前記ドレンタンクに、他方を封水回収タンクに各々流通させた分岐管路と、
を有することを特徴とするドレン回収装置。

【図1】
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【図2】
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