説明

発電電動機の冷却構造及び発電電動機

【課題】冷却媒体で発電電動機を冷却するにあたって、冷却状態のばらつきを抑制すること。
【解決手段】発電電動機の冷却構造100は、発電電動機のフランジ12に設けられ、第1ハウジング11の内部に格納される入出力シャフト16の回転中心軸Zrに向かって延在して入出力シャフト16側に開口し、かつ途中に絞り部35を有する第1通路32と、フランジ12に設けられ、絞り部35よりも入出力シャフト16の径方向外側の位置で第1通路32から分岐してから入出力シャフト16の外側に取り付けられるローター20に向かって延在して、ローター20側に開口する第2通路33と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電電動機を冷却媒体で冷却することに関する。
【背景技術】
【0002】
発電電動機は様々な用途に用いられるが、ステーターが有するコイルのジュール発熱及びローターコアの渦電流損失及びヒステリシス損失等によって発熱する。発電電動機を冷却するため、例えば、潤滑油と冷却油とを兼ねた油等の冷却媒体を用いて発電電動機を冷却する技術が記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−71905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油等の冷却媒体を用いて発電電動機を冷却する場合、発電電動機内における冷却媒体の通路を流れる冷却媒体の流量がばらつくことにより、冷却対象となる部分の冷却状態にばらつきが発生するおそれがある。特許文献1には、冷却のアンバランスについては言及されておらず、改善の余地がある。本発明は、冷却媒体で発電電動機を冷却するにあたって、冷却状態のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発電電動機の筐体の一端部に配置される端部側部材に設けられ、前記筐体の内部に格納される入出力シャフトの回転中心軸に向かって延在して前記入出力シャフト側に開口し、かつ途中に絞り部を有する第1通路と、前記端部側部材に設けられ、前記絞り部よりも前記入出力シャフトの径方向外側の位置で前記第1通路から分岐してから前記入出力シャフトの外側に取り付けられるローターに向かって延在して、前記ローター側に開口する第2通路と、を含むことを特徴とする発電電動機の冷却構造である。
【0006】
本発明において、前記第1通路は、前記入出力シャフト側の内側第1通路と、前記内側第1通路よりも前記入出力シャフトの径方向外側に配置され、かつ前記内側第1通路よりも内径が大きい外側第1通路とを有し、前記内側第1通路と前記外側第1通路との間が前記絞り部となることが好ましい。
【0007】
本発明において、前記第1通路は、前記入出力シャフトの一端部の位置に開口することが好ましい。
【0008】
本発明において、前記端部側部材は、前記入出力シャフトに動力伝達部材を取り付けるための貫通孔と、前記貫通孔の内周部から前記回転中心軸に向かい、前記入出力シャフトの一端部と重ならないように、前記入出力シャフトの径方向途中の位置まで延出する張り出し部と、を有することが好ましい。
【0009】
本発明は、前記発電電動機の冷却構造を有する発電電動機である。
【0010】
本発明において、前記発電電動機は、前記入出力シャフトの一端に動力発生源の出力シャフトが接続され、他端に前記動力発生源の動力により駆動される駆動対象の入力シャフトが接続されることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記第1通路は、前記入出力シャフトと前記駆動対象の入力軸との接続部の位置に開口することが好ましい。
【0012】
本発明は、内燃機関と油圧ポンプとの間に設けられて前記内燃機関の動力を前記油圧ポンプに伝達するとともに電力を発生する発電電動機であり、前記発電電動機の筐体の一端部に配置される端部側部材に設けられ、前記筐体の内部に格納される入出力シャフトの回転中心軸に向かって延在して前記入出力シャフト側に開口する第1通路と、前記絞り部よりも前記入出力シャフトの径方向外側の位置で前記第1通路から分岐してから前記入出力シャフトの外側に取り付けられるローターに向かって延在して、前記ローター側に開口する第2通路と、を含み、前記第1通路は、前記入出力シャフト側の内側第1通路と、前記内側第1通路よりも前記入出力シャフトの径方向外側に配置され、かつ前記内側第1通路よりも内径が大きい外側第1通路とを有し、前記第2通路は、前記外側第1通路から分岐することを特徴とする発電電動機である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、冷却媒体で発電電動機を冷却するにあたって、冷却状態のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る発電電動機を用いたハイブリッド油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図2は、図1のA−A矢視図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る発電電動機の断面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る発電電動機の分解図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る発電電動機の入出力シャフト、ローター及びフランジの構造を示す斜視図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る発電電動機が備えるローターコアの斜視図である。
【図7】図7は、ローターコアに取り付けられるブレードを示す斜視図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る発電電動機が備えるステーターの正面図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る発電電動機が備える第1ハウジングの斜視図である。
【図10】図10は、本実施形態に係る発電電動機が備えるフランジの斜視図である。
【図11】図11は、本実施形態に係る発電電動機の冷却構造を示す図である。
【図12】図12は、本実施形態の変形例に係る発電電動機の冷却構造を示す図である。
【図13】図13は、本実施形態の変形例に係る発電電動機の冷却構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
<ハイブリッド油圧ショベル>
図1は、本実施形態に係る発電電動機を用いたハイブリッド油圧ショベルを示す側面図である。図2は、図1のA−A矢視図である。ハイブリッド油圧ショベル1は、内燃機関により発電電動機を駆動して電力を発生させ、前記電力によって電動機を駆動して上部旋回体を旋回させたり、ハイブリッド油圧ショベル1の補機類を駆動したりする、いわゆるハイブリッド方式の建設車両である。
【0017】
ハイブリッド油圧ショベル1は、左右一対の履帯2Cを有する下部走行体2と、上部旋回体3と、ブーム4a、アーム4b及びバケット4cを含むとともに上部旋回体3に取り付けられた作業機4と、下部走行体2と上部旋回体3とを連結するスイングサークル5と、を含んでいる。左右一対の履帯2Cは、右走行油圧モータと左走行油圧モータとにより駆動されて、ハイブリッド油圧ショベル1を走行させる。右走行油圧モータ、左走行油圧モータは、図2に示す油圧ポンプ7から圧送される作動油が供給されて駆動される。
【0018】
上部旋回体3は、旋回モータとして機能する電動機5M(図2参照)により旋回する。上部旋回体3にはスイングサークル5のアウターレース5Oが固定されており、下部走行体2にはスイングサークル5のインナーレース5Iが固定されている。このような構造によって、スイングサークル5は、上部旋回体3と下部走行体2とを連結する。電動機5Mの入出力シャフトは、減速機構を備えたスイングマシナリを介してスイングピニオン5Pと連結している。スイングピニオン5Pは、スイングサークル5のインナーレース5Iに取り付けられた内歯に噛み合っている。電動機5Mの駆動力は、前記スイングマシナリを介してスイングピニオン5Pに伝達されて、上部旋回体3を旋回させる。本実施形態において、電動機5Mは、縦置き、すなわち、ハイブリッド油圧ショベル1を水平面に設置した場合において、電動機5Mの入出力シャフトが重力の作用する方向に向かうように設置される。ブーム4a、アーム4b及びバケット4cは、図2に示す油圧ポンプ7から圧送される作動油によって、コントロールバルブを介して各々ブーム4a用、アーム4b用、バケット4c用の油圧シリンダによって駆動されて、掘削等の作業を実行する。
【0019】
上部旋回体3は、平面視が略長方形形状の構造体である。上部旋回体3の操縦室3aは、ハイブリッド油圧ショベル1の作業中において操縦者の視線が主として向く方向を前方とした場合、上部旋回体3の前方左側に配置される。カウンターウェイト3bは、上部旋回体3の後方に配置される。上部旋回体3は、操縦室3a及びカウンターウェイト3bに加え、ハイブリッド油圧ショベル1の動力発生源としての内燃機関6と、本実施形態に係る発電電動機10と、油圧ポンプ7と、インバータ8と、蓄電装置9と、を有する。
【0020】
内燃機関6は、例えば、ディーゼルエンジンであるが、内燃機関6の種類は問わない。内燃機関6、発電電動機10、油圧ポンプ7、インバータ8及び蓄電装置9は、カウンターウェイト3bの前方、すなわち操縦室3a側に配置されている。内燃機関6と油圧ポンプ7との間に、発電電動機10が配置される。内燃機関6の出力シャフト6Sは発電電動機10の入出力シャフトに接続され、発電電動機10の入出力シャフトは油圧ポンプ7の入力シャフト7Sに接続される。このような構造により、内燃機関6は、発電電動機10を駆動して電力を発生させるとともに、油圧ポンプ7を駆動する。すなわち、油圧ポンプ7は、発電電動機10を介して駆動される。なお、発電電動機1はPTO(Power Take Off)を介して、エンジンの出力軸に間接的に接続されていてもよい。
【0021】
インバータ8の入出力端子と発電電動機10の電力入出力端子とは、高電圧配線CAaが電気的に接続している。インバータ8の出力端子と電動機5Mの入力端子とは、高電圧配線CAbが電気的に接続している。インバータ8は、発電電動機10が発生した電力を、キャパシタ又は二次電池等の蓄電装置9に蓄えたり、前記電力を電動機5Mに供給してこれを駆動したりする。また、インバータ8は、上部旋回体3に旋回ブレーキが作動したときに、電動機5Mが上部旋回体3の運動エネルギーを電気エネルギーに変換することによって得られた電力を、蓄電装置9に蓄える。蓄電装置9に蓄えられた電力は、次に上部旋回体3が旋回するときに、インバータ8が電動機5Mへ供給する。発電電動機1は、必要に応じて、蓄電装置9から電力の供給を受けて電動機として動作し、内燃機関6の補助をすることもできる。
【0022】
このように、本実施形態に係る発電電動機10は、建設車両の一種であるハイブリッド油圧ショベル1に適用される。なお、発電電動機10の適用対象は、ハイブリッド油圧ショベル1に限定されるものではない。例えば、発電電動機10は、ホイールローダー等の他のハイブリッド建設機械を適用対象としてもよい。
【0023】
<発電電動機>
図3は、本実施形態に係る発電電動機の断面図である。図3は、発電電動機10の回転中心軸Zrを含み、かつ回転中心軸Zrと平行な平面で発電電動機10を切ったときの断面を示している。図4は、本実施形態に係る発電電動機の分解図である。図5は、本実施形態に係る発電電動機の入出力シャフト、ローター及びフランジの構造を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係る発電電動機が備えるローターコアの斜視図である。図7は、ローターコアに取り付けられるブレードを示す斜視図である。図8は、本実施形態に係る発電電動機が備えるステーターの正面図である。図9は、本実施形態に係る発電電動機が備える第1ハウジングの斜視図である。図10は、本実施形態に係る発電電動機が備えるフランジの斜視図である。
【0024】
図2に示したように、発電電動機10は、内燃機関6と油圧ポンプ7との間に配置される。そして、内燃機関6の動力により電力を発生するとともに、内燃機関6の動力を油圧ポンプ7へ伝達する。発電電動機10は、例えば、油等の冷却媒体によって冷却されるとともに、前記冷却媒体で、入出力シャフト16を回転可能に支持する軸受50F、50R及びスプライン等の潤滑が必要な部分(摺動部分)を潤滑する。
【0025】
図3、図4に示すように、発電電動機10は、フライホイール14と、連結部材15と、入出力シャフト16と、ローター20と、ステーター24と、筐体の一部としての第1ハウジング11と、前記筐体の一端部、すなわち、第1ハウジング11の一端部に配置される端部側部材(第1の端部側部材)としてのフランジ12と、第1ハウジング11の他端部に配置され、前記筐体の一部となる第2ハウジング13と、を含む。
【0026】
フライホイール14は、円板形状の構造体であり、図2に示す内燃機関6の出力シャフト6Sが取り付けられる。フライホイール14は、外周部にスターターギヤ14Gを有する。スターターギヤ14Gは、外歯のリングギヤである。スターターギヤ14Gは、内燃機関6のスターターモーターの動力を内燃機関6の出力シャフト6Sに伝達して内燃機関6を始動させる機能を有している。なお、発電電動機10を電動機として作動させて、内燃機関6を始動させてもよい。
【0027】
<フライホイール>
フライホイール14は、複数のボルト15Bによって連結部材15に取り付けられる。フライホイール14は、内燃機関6の回転効率を高めるために作用する機能及び発電電動機10の発電効率及び電動機効率を向上させるための機能を有している。連結部材15は、略円筒形状の本体部15Sと、本体部15Sの一端部側から本体部15Sの径方向外側に向かって張り出す円形形状のフランジ部15Fとを有する。連結部材15のフランジ部15Fとフライホイール14とをボルト15Bで締結することにより、両者が固定される。本体部15Sは、内周部に内歯スプライン15Iを有する。
【0028】
<入出力シャフト>
入出力シャフト16は、円筒形状の構造体であり、一端部16Tpが油圧ポンプ7の入力シャフト7Sに接続され、他端部16Teが内燃機関6の出力シャフト6Sに接続される。入出力シャフト16は、一端部16Tp側の内周部に内歯スプライン16Iを、他端部16Te側の外周部に外歯スプライン16Oを有している。内歯スプライン16Iは、油圧ポンプ7の入力シャフト7Sが有する外歯スプラインと噛み合う。外歯スプライン16Oは、連結部材15が有する内歯スプライン15Iと噛み合う。このような構造により、内燃機関6の動力は、フライホイール14と、連結部材15とを介して入出力シャフト16に伝達され、入出力シャフト16に伝達された内燃機関6の動力は、内歯スプライン16Iを介して油圧ポンプ7の入力シャフト7Sに伝達される。
【0029】
入出力シャフト16は、回転中心軸Zrを中心として回転する。フライホイール14及び連結部材15も、回転中心軸Zrを中心として回転する。入出力シャフト16は、外周部から径方向外側に向かって張り出す円形形状のフランジ部16Fを有する。フランジ部16Fは、後述するローター20が取り付けられる部分である。また、入出力シャフト16は、一端部16Tpから他端部16Teに向かって貫通するシャフト貫通孔16ISを有する。シャフト貫通孔16ISは、発電電動機10を冷却する冷却媒体の通路となる。入出力シャフト16は、内周面に二箇所、一端部16Tpから他端部16Teにわたって形成された溝16Sを有する。溝16Sは、一端部16Tpから他端部16Teに向かって深さが大きくなっている。このような構造により、一端部16Tp側から流入した冷却媒体が、他端部16Teに向かって流れやすくなるので、冷却効率が向上する。本実施形態では、フライホイール14を用いた例を説明したが、フライホイール14を用いず、連結部材15と内燃機関6の出力シャフト6Sとをスプライン等によって接続してもよい。
【0030】
<ローター>
ローター20は、ローターコア17と、ローターコア17を保持するローターコア保持部材としてのローターホルダー18とを含む。ローターコア17は、複数の鋼板(電磁鋼板)を積層した構造体である。複数の鋼板が積層される方向(積層方向)は、ローターコア17が入出力シャフト16に取り付けられた状態において、回転中心軸Zrと平行である。ローターコア17は、図4に示すように、外周部の周方向に所定のピッチをもって複数(この例では24個)の誘導子17Iが突設されている。ローターコア17は、周方向に向かって複数のボルト孔17Hが積層方向に向かって貫通している。ローターコア17の内周面は、ローターホルダー18の外周面と接する。
【0031】
ローターホルダー18は、第1ホルダー部材18Liと、第2ホルダー部材18Loと、第3ホルダー部材18Tとを含む。第1ホルダー部材18Liは、中抜きの円板状の構造体である第1ホルダー部材18Liである。第2ホルダー部材18Loは、第1ホルダー部材18Liの外周部に設けられる、円筒形状の構造体である。第3ホルダー部材18Tは、第2ホルダー部材18Loの一端部に設けられる、中抜きの円板状の構造体であって、入出力シャフト16の径方向外側に延出する構造体である。本実施形態において、これらは、同一の材料で一体不可分に製造される。ローターホルダー18の材料は、例えば、鋼であるが、これに限定されるものではない。ローターホルダー18は、入出力シャフト16のフランジ部16Fに、ボルト16Bで締結される。ローターホルダー18は、入出力シャフト16とともに、回転中心軸Zrを中心として回転する。なお、第1ホルダー部材18Liは、ローターホルダー18の軸方向(回転中心軸Zrと平行な方向)と平行な軸方向貫通孔18Pを有する。軸方向貫通孔18Pは、冷却媒体の通路となる。
【0032】
ローターコア17は、第2ホルダー部材18Loの外周部に取り付けられる。このとき、ローターコア17のボルト孔17Hにローターコア取付ボルト19を差し込み、第3ホルダー部材18Tのねじ穴にねじ込むことにより、ローターコア17がローターホルダー18に固定される。本実施形態においては、ローターコア17の積層方向両側から第1ブレード40Fと第2ブレード40Rとでローターコア17を挟み込んだ状態で、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rとともにローターコア17をローターホルダー18に取り付ける。なお、第1ブレード40Fはフランジ12側に配置され、第2ブレード40Rは第2ハウジング13側に配置される。また、第1ブレード40Fよりもローターコア取付ボルト19のボルト頭側には、入出力シャフト16の回転数を検出する際に用いるセンサープレート22が配置されて、ローターコア取付ボルト19によりローターホルダー18に取り付けられる。センサープレート22は、環状の板材であって、図5に示すように、周方向に向かって複数の孔を有している。この複数の孔を光学センサ又は磁気センサ等で計数することにより、ローターホルダー18を介して入出力シャフト16の回転数が検出される。
【0033】
図7に示すように、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rは、環状の部材である。第1ブレード40F及び第2ブレード40Rは、複数の鋼板を有するローターコア17を保持する機能と、ステーター24が発生し、ローターコア17に入る磁束の漏れを抑制する機能とを有する。図7には、第1ブレード40Fのみを示すが、第2ブレード40Rも冷却媒体流出孔41F、41Rの配置及び中心の開口部の内径を除けば同様の形状及び寸法である。このため、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rについては、必要に応じて、第1ブレード40Fのみを説明する。なお、フランジ12側に配置される第1ブレード40Fは、第1軸受50F及び第2軸受50Rを固定するため、第2ブレード40Rよりも開口部の内径が小さくなっている。
【0034】
第1ブレード40Fは、第1部分43Fと、第2部分44Fと、第3部分45Fとを有する。第1部分43Fは、第1ブレード40Fがローターコア17の一端部と接する、中抜きの円板形状の部分である。第2部分44Fは、第1部分43Fの外周部に設けられて、ローターコア17と接する側とは反対側に延出する円筒形状の部分である。第2部分44Fの内周部には、周方向に向かって複数の突起46Fが設けられる。突起46Fは、第2部分44Fの内周部から径方向内側に向かって突出する。本実施形態において、それぞれの突起46Fは、第2部分44Fの周方向に向かって略等間隔に配置される。第3部分45Fは、第2部分44Fの第1部分43Fの端部とは反対側の端部に設けられて、回転中心軸Zrに向かって延在する鍔状かつ中抜きの円板形状の部分である。第3部分45Fの内径は、第1部分43Fの内径よりも大きい。
【0035】
第1部分43Fと、第2部分44Fと、第3部分45Fとは、いずれも同一の材料で一体不可分に製造される。本実施形態において、第1ブレード40Fは、例えば、アルミニウム合金を鋳造することによって製造される。なお、ブレード40Fは、第1部分43Fと、第2部分44Fと、第3部分45Fとをそれぞれ別個の部材として製造し、溶接又はボルトによる締結等により、これらを一体としてもよい。
【0036】
図3に示すように、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rは、外周部に、冷却媒体を保持する冷却媒体保持部42F、42Rを有する。冷却媒体保持部42Fは、第1部分43Fと、第2部分44Fと、第3部分45Fと、隣接する2つの突起46Fとで囲まれる部分である(第2ブレード40Rも同様)。なお、冷却媒体保持部42F、42Rは、必ずしも突起46Fを備える必要はない。また、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rは、外周部に、径方向外側に向かって貫通する冷却媒体流出孔41F、41Rを有する。冷却媒体流出孔41F、41Rは、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rの周方向に向かって複数設けられる。冷却媒体保持部42F、42Rに保持された冷却媒体は、ローター20の回転に起因する遠心力によって冷却媒体流出孔41F、41Rから流出し、第1ブレード40F及び第2ブレード40Rの径方向外側に放出される。冷却媒体流出孔41F、41Rは、コイルエンドに向かって開口していることが好ましく、コイルエンドに対向する位置に設けられていることがより好ましい。このようにすれば、冷却媒体を放出する際に、コイルエンドへ集中させることができるので、コイルエンドをより効果的に冷却することができる。
【0037】
フライホイール14、連結部材15、入出力シャフト16、ローターホルダー18、ローターコア17、第1ブレード40F、第2ブレード40R、センサープレート22及びこれらを締結するボルト16B、19等が、発電電動機10の回転要素となる。次に、ステーター24について説明する。
【0038】
<ステーター>
ステーター24は、ステーターコア24Kと、コイル24Cとを含む。コイル24Cは、ステーターコア24Kに取り付けられたインシュレーター24Iを介してステーターコア24Kに巻き回されている。ステーターコア24Kは、環状の鋼板(電磁鋼板)を複数積層させた環状の構造体である。ステーターコア24Kの内周部には、ステーターコア24Kの周方向に向かって所定のピッチで、複数の突部24Tが中心に向けて突出している。突起24Tは、ステーターコア24Kの一部である。それぞれの突部24Tは、発電電動機10の磁極となる。それぞれの突部24Tの周面には、コイル24Cとして、3本のコイルが、インシュレーター24Iを介して順次巻き回されている。前記環状の鋼板の積層方向におけるステーターコア24Kの両端部からはみ出した部分が、コイル24Cのコイルエンドである。
【0039】
インシュレーター24Iは、樹脂製の部材であり、コイル24Cとステーターコア24Kとの間に介在する。インシュレーター24Iは、コイル24Cのコイルエンドと重なる部分に切り欠きを有する。回転するローター20から放出された冷却媒体は、切り欠きを通ってコイルエンドに到達する。このように、インシュレーター24Iの切り欠きは、回転するローター20からの冷却媒体を直接コイルエンドに供給することができるので、コイルエンドを効率よく冷却することができる。
【0040】
本実施形態において、ステーターコア24Kは、計36個の突起24Tを有している。このような構造により、3相12極のSR(Switched Reluctance)モータを構成している。なお、本実施形態はこれに限定されず、例えば、PM(Permanent Magnet)モータ等、他の方式の発電電動機であってもよい。3本のコイル24Cの両端部における6本のコイル端子は、ハウジング11が有するコネクタボックス台座26に取り付けられるコネクタボックス26B(図4参照)に設けられた端子接続部と電気的に接続されている。前記6本のコイル端子は、前記端子接続部を介して、図2に示す高電圧配線CAaと電気的に接続する。
【0041】
ステーターコア24Kの外周部には、複数(本実施形態では3個)の突起部にボルト孔24Hが設けられている。それぞれの前記突起部は、ハウジング11の内周部に形成された凹部にそれぞれが嵌り合うようになっている。それぞれの前記突起部を前記凹部に嵌め合わせることで、ステーターコア24Kをハウジング11に対して位置決めすることができる。位置決めされたステーターコア24Kは、ボルト24Bをボルト孔24Hに貫通させてハウジング11に取り付けられる。
【0042】
発電電動機10は、ステーター24の内側に、ローター20が配置される。より具体的には、ステーターコア24Kの内側に、ローターコア17が配置される。このような配置により、ローターコア17が有する誘導子17Iと、ステーターコア24Kが有する突起24Tとが所定の間隔を有して対向する。上述したように、ステーターコア24Kの内周部に等間隔で設けられて磁極を構成する突部24Tは、計36個である。これに対して、ローターコア17の外周部に等間隔で設けられる誘導子17Iは、計24個である。このように、発電電動機10は、ステーターコア24Kにおける磁極(突起24T)の数、すなわち、各磁極(各突部24T)間のピッチと、ローターコア17における各誘導子17I間のピッチとの間に、ピッチ差を設けている。次に、発電電動機10の第1ハウジング11、フランジ12及び第2ハウジング13について説明する。
【0043】
<第1ハウジング>
図9、図4に示すように、第1ハウジング11は、略円筒形状の部分(円筒状部分)11Dと、円筒状部分11Dから、その径方向外側に向かって張り出した張り出し部11Fとを含む構造体であり、両方の端部に開口部を有している。第1ハウジング11は、一端部にフランジ12が取り付けられ、他端部に第2ハウジング13が取り付けられる。第1ハウジング11は、ローター20と、ローター20の外周部に配置されるステーター24とを内部に有している。より具体的には、第1ハウジング11と、フランジ12と、第2ハウジング13とで囲まれる空間に、ローター20とステーター24とが配置される。図3に示すように、張り出し部11Fの部分は、冷却媒体CLを溜める冷却媒体溜めとしてのオイルパン11Pとなる。第1ハウジング11の張り出し部11Fには、オイルパン11Pと外部とを連通する排出通路28が設けられる。また、ドレーンから、オイルパン11P内の冷却媒体を排出することができる。
【0044】
第1ハウジング11は、一端部、すなわちフランジ12の取付側の内面(フランジ側内面)11Iaからステーター24に向かって突出する突起部60を有する。突起部60は、ローターホルダー18に取り付けられる第1ブレード40Fよりも径方向外側に設けられて、ステーター24のコイル24Cと対向する。突起部60は、ステーター24に沿って設けられる。すなわち、回転中心軸Zrを中心とした同心円上に設けられる。突起部60は、コネクタボックス台座26の位置に一部切り欠き部60Kを有する。この切り欠き部60Kから、図3に示すコイル24Cの導線を引き出す。突起部60の頂面、すなわち、コイル24Cと対向する面は、平面になっている。突起部60とコイル24Cとの間は、冷却媒体が通過する通路になる。突起部60の頂面は、第1ブレード40Fの第3部分45F(図7参照)よりもローターコア17側、すなわちコイル24C側に配置される。このようにすることで、第1ブレード40Fの冷却媒体流出孔41Fから放出された冷却媒体を、コイル24Cのコイルエンドに導くことができる。その結果、コイルエンドをより効果的に冷却することができる。
【0045】
第1ハウジング11は、頂部に冷却媒体供給口29が取り付けられている。発電電動機10は、張り出し部11Fを鉛直方向(重力の作用する方向、図3、図4の矢印Gで示す方向)側として使用されることを想定している。第1ハウジング11の頂部は、発電電動機10の張り出し部11Fを鉛直方向に向けて設置した場合に、設置面から最も高くなる部分である。第1ハウジング11は、冷却媒体供給口29から入出力シャフト16の回転中心軸Zrに向かって延在する冷却媒体導入通路30を有する。そして、第1ハウジング11は、冷却媒体導入通路30の終端近傍に、フランジ12側に向かって延在して開口する連結通路31Hを有する。第1ハウジング11の連結通路31Hは、フランジ12が有する連結通路31Fと接続される。
【0046】
冷却媒体供給口29には、冷却媒体戻し通路としての配管25が接続されている。冷却媒体供給口29から供給された冷却媒体は、発電電動機10の各部を冷却した後、オイルパン11Pに集められる。この冷却媒体は、排出通路28から図示しないフィルタ及びポンプを経由して、図4に示すオイルクーラー入口21に送られて、ここで冷却された後、オイルクーラー出口23から配管25を通って、再び冷却媒体供給口29から供給される。このように、冷却媒体は、発電電動機10の内部を循環している。
【0047】
<フランジ>
フランジ12は、複数のボルト12Bによって第1ハウジング11の一端部の開口部に取り付けられる。フランジ12は、図2に示す油圧ポンプ7側に配置される。そして、フランジ12は、第1ハウジング11に取り付けられる側とは反対側に、油圧ポンプ7の入力シャフト7Sを発電電動機10の入出力シャフト16に取り付けるための貫通孔12Hを有する。油圧ポンプ7の入力シャフト7Sは、貫通孔12Hから入出力シャフト16に取り付けられる。
【0048】
フランジ12は、入出力シャフト16が有するフランジ部16Fの径方向外側まで延出する軸受取付部材70を有する。軸受取付部材70は、円筒形状の部材であり、本実施形態においては、フランジ12と一体で構成される。なお、フランジ12と軸受取付部材70とを別部材として、ボルト等の締結手段又は溶接等の接合手段により両者を一体としてもよい。軸受取付部材70は、フランジ12の表面であって、図3に示す発電電動機10の筐体側、すなわち、第1ハウジング11側の面(筐体側内面)12Iaから突出している。軸受取付部材70は、ローターホルダー18の第1ホルダー部材18Li及び入出力シャフト16のフランジ部16Fと、ローターホルダー18の第2ホルダー部材18Loとの間に配置される。
【0049】
フランジ12の貫通孔12Hは、入出力シャフト16の径方向途中の位置、より具体的には、入出力シャフト16が有する内歯スプライン16Iの径方向途中の位置まで径方向内側に向かって延出する張り出し部12HFを有する。張り出し部12HFは、入出力シャフト16の一端部と重ならないように延出している。また、張り出し部12HFの内周部が、内歯スプライン16Iの途中の位置まで延出している。この張り出し部12HFは、内側第1通路32iから流出する冷却媒体を入出力シャフト16側に導くとともに、貫通孔12Hを通って油圧ポンプ7側へ流出する冷却媒体を最小限に抑える。このようにすることで、発電電動機1の内部から貫通孔12Hを通って外部へ流出する冷却媒体を最小限に抑え、発電電動機1の内部へ冷却媒体を導くことができる。
【0050】
図3、図5に示すように、軸受取付部材70の外周部には、第1軸受50Fと第2軸受50Rとが、環状かつ板状のスペーサー51を両者の間に挟んで取り付けられている。スペーサー51は、第1軸受50F及び第2軸受50Rの外輪側に配置される。本実施形態において、第1軸受50F及び第2軸受50Rは、いずれも深溝玉軸受であるが、これに限定されるものではない。第1軸受50Fがフランジ12側に、第2軸受50Rが第2ハウジング13側に配置される。本実施形態では、第1軸受50F及び第2軸受50Rの内輪が、軸受取付部材70に取り付けられる。軸受取付部材70は、入出力シャフト16の外周側に配置される。第1軸受50F及び第2軸受50Rの外輪は、ローターホルダー18の第2ホルダー部材18Loの内周部に取り付けられる。このような構造により、第1軸受50F及び第2軸受50Rは、軸受取付部材70とローターホルダー18との間に介在する。そして、軸受取付部材70は、第1軸受50F及び第2軸受50Rを介して、ローターホルダー18、入出力シャフト16、連結部材15及びフライホイール14を回転可能に支持する。
【0051】
第1軸受50Fと第2軸受50Rとの間であって、これらの外輪側には、スペーサー51が介在しているので、両者の間には、スペーサー51の厚み分の隙間が存在する。軸受取付部材70は、前記隙間の位置に開口する貫通孔71を有する。この貫通孔71は、冷却媒体の通路となって、前記隙間を介して冷却媒体を第1軸受50F及び第2軸受50Rに供給する。
【0052】
フランジ12は、軸受取付部材70の径方向外側かつローターホルダー18に取り付けられた第1ブレード40Fよりも径方向内側の位置に、第1ブレード40Fに向かって突出するリブ80を有する。リブ80は、回転中心軸Zrを中心とした同心円上に形成される円筒形状の部材であり、本実施形態においては、フランジ12と一体で構成される。なお、フランジ12とリブ80とを別部材として、ボルト等の締結手段又は溶接等の接合手段により両者を一体としてもよい。
【0053】
リブ80は、ローター20と対向する。リブ80の頂面、すなわち、ローター20と対向する面は、平面になっている。リブ80とローター20との間は、冷却媒体が通過する通路になる。リブ80の頂面は、入出力シャフト16の回転中心軸Zrと平行な方向において、第1ブレード40Fと一部が重なっている。すなわち、リブ80の頂面は、フランジ12側における第1ブレード40Fの端面よりも、ローター20側(冷却媒体保持部42F側)にある。このようにすることで、第1ブレード40Fの冷却媒体保持部42F内に冷却媒体をより確実に導入することができる。
【0054】
フランジ12は、第1ハウジング11の連結通路31Hと接続される連結通路31Fと、連結通路31Fと接続される第1通路32と、第1通路32から分岐する第2通路33とを有する。図10に示すように、連結通路31Fは、フランジ12の外周部の一部に開口している。この開口が、連通通路31Fの入口31FHになる。第1通路32は、外側第1通路32oと、外側第1通路32oに接続するとともに、内径が外側第1通路32oよりも小さい内側第1通路32iとを有する。なお、内側第1通路32iは、外側第1通路32oよりも入出力シャフト16側に配置される。第1通路32の内側第1通路32iは、フランジ12の入出力シャフト16側、より具体的には、回転中心軸Zr方向において、入出力シャフト16の一部とフランジ12とが重なる部分に開口する。内側第1通路32iの入出力シャフト16側における開口部が、第1通路出口32Hである。
【0055】
第2通路33は、外側第1通路32oから分岐する。すなわち、第2通路33は、第1通路32の内径が小さくなる前に分岐する。そして、第2通路33は、入出力シャフト16の外側に取り付けられるローター20に向かって延在して、フランジ12のローター20側に開口する。第1通路32から分岐する部分が第2通路入口33Iであり、第2通路33のローター20側における開口部が、第2通路出口33Hである(図3、図10参照)。
【0056】
<第2ハウジング>
第2ハウジング13は、第1ハウジング11の他端部の開口部に取り付けられる。第2ハウジング13は、図2に示す内燃機関6側に配置される。そして、第2ハウジング13は、第1ハウジング11に取り付けられる側とは反対側に、内燃機関6の出力シャフト6Sを発電電動機10の入出力シャフト16に取り付けるための貫通孔13Hを有する。内燃機関6の出力シャフト6Sは、貫通孔13Hからフライホイール14に取り付けられる。次に、発電電動機10内における冷却媒体の経路を説明する。
【0057】
<冷却媒体の経路>
冷却媒体供給口29から流入した冷却媒体は、冷却媒体導入通路30、連結通路31H、31Fを通って第1通路32に流入する。第1通路32に流入した冷却媒体は、一部が第2通路33に分岐し、残りは内側第1通路32iに流れて、第1通路出口32Hから流出する。第1通路出口32Hから流出した冷却媒体は、入出力シャフト16の内歯スプライン16Iと図2に示す油圧ポンプ7の入力シャフト7Sの外歯スプラインとの間から、一部がシャフト貫通孔16IS内へ流入する。残りは、入出力シャフト16とフランジ12との間及び入出力シャフト16と軸受取付部材70との間の空間を通って、軸受取付部材70の貫通孔71から第1軸受50F及び第2軸受50Rとの隙間に流入する。
【0058】
第1通路出口32Hは、入出力シャフト16の一端部16Tpの位置に開口することが好ましい。すなわち、第1通路出口32Hは、入出力シャフト16と、内燃機関6の駆動対象である油圧ポンプ7の入力シャフト7Sとの接続部の位置に開口することが好ましい。このようにすれば、入出力シャフト16と油圧ポンプ7の入力シャフト7Sとの間、より具体的には、入出力シャフト16の内歯スプライン16Iと図2に示す油圧ポンプ7の入力シャフト7Sの外歯スプラインとの間に冷却媒体を供給できる。その結果、シャフト貫通孔16IS内へ冷却媒体を効率的に導入することができる。また、上述したように、フランジ12の貫通孔12Hが有する張り出し部12HFは、出口32Hから出てくる冷却媒体を、油圧ポンプ7側に流れ込まないように規制しているので、シャフト貫通孔16IS内へ冷却媒体を効率的に導入することができる。
【0059】
第1軸受50F及び第2軸受50Rとの隙間に流入した冷却媒体は、第1軸受50F及び第2軸受50Rを冷却及び潤滑した後、一部が軸受取付部材70とリブ80との間に流入する。残りの冷却媒体は、ローターホルダー18の第1ホルダー部材18Liが有する軸方向貫通孔18Pを通過する。軸受取付部材70とリブ80との間に流入した冷却媒体は、第1ブレード40Fの冷却媒体保持部42F内に流入した後、冷却媒体保持部42Fの冷却媒体流出孔41Fから流出する。この冷却媒体は、ローター20の回転に起因する遠心力によってローター20の径方向外側に放出されて、コイル24Cのコイルエンドに散布されてこれを冷却する。コイルエンドを冷却した冷却媒体は、オイルパン11Pに集められる。
【0060】
第1ホルダー部材18Liが有する軸方向貫通孔18Pを通過した冷却媒体CLは、ローターホルダー18の第3ホルダー部材18Tに沿って流れてから第2ブレード40Rの冷却媒体保持部42R内に流入し、冷却媒体保持部42Rの冷却媒体流出孔41Rから流出する。この冷却媒体CLは、ローター20の回転に起因する遠心力によってローター20の径方向外側に放出されて、コイル24Cのコイルエンドに散布されてこれを冷却する。コイルエンドを冷却した冷却媒体は、オイルパン11Pに集められる。
【0061】
シャフト貫通孔16IS内へ流入した冷却媒体は、入出力シャフト16の一端部16Tpから他端部16Teに向かって流れて、他端部16Teから流出する。この冷却媒体は、入出力シャフト16の外歯スプライン16Oと連結部材15の内歯スプライン15Iとの間を通って、連結部材15とローターホルダー18との間に流出する。冷却媒体は、ローターホルダー18の第1ホルダー部材18Li及び第3ホルダー部材18Tに沿って径方向外側に流れた後、第2ブレード40Rの冷却媒体保持部42R内に流入し、冷却媒体保持部42Rの冷却媒体流出孔41Rから流出する。この冷却媒体は、ローター20の回転に起因する遠心力によってローター20の径方向外側に放出されて、コイル24Cのコイルエンドに散布されてこれを冷却する。コイルエンドを冷却した冷却媒体は、オイルパン11Pに集められる。
【0062】
第2通路33を通過した冷却媒体は、第2通路出口33Hから流出して、ローター20に向かって流れる。ローター20に到達した冷却媒体は、ローター20の回転に起因する遠心力によってローター20の径方向外側に放出されて、フランジ12側のコイル24Cのコイルエンドに散布されてこれを冷却する。コイルエンドを冷却した冷却媒体は、重力の作用で下方に流れてオイルパン11Pに集められる。オイルパン11Pに集められた冷却媒体は、排出通路28から図示しないフィルタ、ポンプを経由して図4に示すオイルクーラー入口21に送られ、ここで冷却された後、オイルクーラー出口23から配管25を通って、再び冷却媒体供給口29から供給される。
【0063】
外側第1通路32oを流れる冷却媒体は下向きの速度を持っているため、第1通路32と第2通路33との通路断面積(通路の延在方向と直交する断面の面積)が同じ大きさであっても、第1通路32を流れる冷却媒体の流量の方が、第2通路33を流れる冷却媒体の流量よりも大きくなる。その結果、第2通路33を通過する冷却媒体によって冷却される部分と、第1通路32を通過する冷却媒体によって冷却される部分との間で、冷却状態のばらつきが発生する。具体的には、フランジ12側かつ回転中心軸Zrよりも頂部側のコイル24Cのコイルエンドが、他の部分におけるコイル24Cのコイルエンドよりも冷却されにくくなり、より昇温しやすくなる。そこで、本実施形態は、次のような冷却構造により、冷却状態のばらつきを抑制する。
【0064】
図11は、本実施形態に係る発電電動機の冷却構造を示す図である。本実施形態に係る発電電動機の冷却構造(以下、必要に応じて冷却構造という)100は、第1通路32で冷却媒体を2方向に分配するにあたって、第1通路と第2通路33との間における冷却媒体の流量差を低減する。このため、冷却構造100は、第1通路32が、発電電動機10の筐体の一部としての第1ハウジング11の内部に格納される入出力シャフト16の回転中心軸Zrに向かって延在して入出力シャフト16側に開口し、かつ途中に絞り部35を有する。そして、第2通路33は、絞り部35よりも入出力シャフトの径方向外側の位置で第1通路32から分岐して、入出力シャフト16の外側に取り付けられるローター20に向かって延在し、ローター20と対向する位置に開口する。
【0065】
このような構造により、絞り部35を通過して第1通路32を流れる冷却媒体の流量が減少し、第2通路33を流れる冷却媒体の流量が増加する。その結果、第1通路32と第2通路33とを流れる冷却媒体の流量差を低減することができる。その結果、第2通路33を通過する冷却媒体によって冷却される部分と、第1通路32を通過する冷却媒体によって冷却される部分との間における冷却状態のばらつきを抑制することができる。第1通路32の内径D1が太くなり、第1通路32を流れる冷却媒体の流量が大きくなると、第1通路32と第2通路33とを流れる冷却媒体の流量差が大きくなる。冷却構造100は、絞り部35による絞りの程度を調整することにより、第1通路32を流れる冷却媒体と第2通路33を流れる冷却媒体との流量バランスを調整できるので、調整の自由度が大きい。このため、冷却構造20は、第1通路32の内径D1が太くなり、大量の冷却媒体を流す必要がある場合に、特に有利である。
【0066】
本実施形態において、内側第1通路32iの内径D2を外側第1通路32oの内径D1よりも小さくし(D2<D1)、内側第1通路32iと外側第1通路32oとの間を絞り部35としている。第2通路33の内径D3は、適宜設定することが可能であるが、本実施形態では、D2に等しくしてある。
【0067】
内側第1通路32iの内径D2を外側第1通路32oの内径D1よりも小さくすることで、絞り部35を比較的容易に設けることができる。第1通路32は、例えば、フランジ12をドリル等で穿孔することにより形成されるが、まず、外側第1通路32oの内径D1に相当する外径のドリルで穿孔して外側第1通路32oを形成する。次に、内側第1通路32iの内径D2(<D1)のドリルを用いて内側第1通路32iを形成する。最後に、フランジ12のローター20側から外側第1通路32oに向かってドリルで穿孔することにより、第2通路33を形成する。このように、異なる外径のドリルで穿孔することで絞り部35を有する第1通路32を形成することができる。なお、この方法は、第1通路32の開口部が第1通路出口32Hの他にもう一つできるので、第1通路出口32H以外の開口部を栓34で封止する。
【0068】
最初に小さい内径の内側第1通路32iを長く穿孔するのは機械加工上難しい場合がある。上述したように、先に大きい内径の外側第1通路32oを穿孔し、その後、より小さい内径の内側第1通路32iを穿孔すれば、小さい孔を穿孔する距離を短くすることができる。このため、上述した方法によれば、外側第1通路32oの内径よりも小さい内径の内側第1通路32iを容易に加工することができる。なお、内側第1通路32i、外側第1通路32oの順に穿孔することを除外するものではない。
【0069】
冷却媒体導入通路30及び連結通路31H、31Fも、ドリルによる穿孔で形成することができる。冷却媒体導入通路30及び連結通路31H、31Fを通過した冷却媒体は、第1通路入口32Iから外側第1通路32oに流入して流れ、第2通路入口33Iから第2通路33に分岐し、残りは内側第1通路32iを流れる。冷却構造100は、絞り部35によって内側第1通路32iへ流入する冷却媒体の量が制限されるので、第2通路33へより多くの冷却媒体が流れて第2通路出口33Hから流出する。その結果、冷却構造100は、第1通路32と第2通路33との間における冷却媒体の流量差を抑制して、冷却状態のばらつきを抑制できる。また、冷却構造100は、絞り部35により第1通路32と第2通路33との間の流量バランスを設定するので、冷却媒体導入通路30に供給される冷却媒体の流量が変動したり、冷却媒体の粘度が変動したりした場合でも、第1通路32と第2通路33との流量比を一定に保ちやすくなる。
【0070】
また、発電電動機10は、内燃機関6の動力を油圧ポンプ7へ伝達する機能も有している。このとき、内燃機関6又は油圧ポンプ7の仕様等によって入出力シャフト16を通過するトルクが大きくなると、第1通路32と第2通路33との流量比を変更する必要がある。このような場合でも、外側第1通路32oの内径D2と内側第1通路32iの内径D1との比率を変更することで容易に前記流量比を変更することができる。このため、冷却構造100は、動力発生源からの動力を、発電電動機10以外の駆動源へ伝達する機能を有しているものに対して好適である。
【0071】
本実施形態において、第1通路32は、入出力シャフト16の径方向と平行に延在している。第1通路32は、入出力シャフト16に向かって延在していれば、入出力シャフト16の径方向と平行でなくてもよい。また、第1通路32は、曲がり部を有していてもよいが、本実施形態のように、第1通路32を直線とすることにより、第1通路32を容易に形成することができる。
【0072】
本実施形態において、第2通路33は、入出力シャフト16の回転中心軸Zrと平行に形成されている。第2通路33は、第1通路32からローター20に向かって延在していればよいので、回転中心軸Zrと平行でなくてもよい。このため、第2通路33は、図11の二点鎖線で示すように、ローター20及び回転中心軸に向かって延在していてもよい。また、第2通路33は、絞り部35から所定の位置、すなわち、内側第1通路32iの入口から所定の距離だけ径方向外側に離れた位置で外側第1通路32oから分岐して、入出力シャフト16の回転中心軸Zrに向かって延在する。
【0073】
第1通路32及び第2通路33は、それぞれの延在方向と直交する断面の形状は限定されるものではなく、円形、楕円形等の他、三角形、四角形又は六角形等の多角形であってもよい。しかし、第1通路32及び第2通路33の前記断面の形状をいずれも円形とすることにより、ドリルによって穿孔することで第1通路32及び第2通路33を容易に形成することができるので好ましい。なお、前記断面の形状が円形以外である場合、第1通路32及び第2通路33の内径は、等価直径(4×A/C、Aは通路断面の面積、Cは前記通路断面の周長)を用いる。
【0074】
図12、図13は、本実施形態の変形例に係る発電電動機の冷却構造を示す図である。図12に示す冷却構造100aは、内径がD2のスリーブ35aを用いて絞り部を形成する。スリーブ35aは、第1通路32の第1通路出口32Hとは反対側における開口32Itから第1通路32に挿入されて、取り付けられる。なお、開口32Itには栓34が取り付けられる。スリーブ35aは、開口32It側の端部が第2通路入口33Iよりも第1通路出口32H側になる位置に取り付けられる。スリーブ35aは、例えば、第1通路32が形成されるフランジ12よりも軟らかい材料としておき、これを第1通路32へ打ち込むことにより、第1通路32の所定の位置にスリーブ35aを取り付ける。この冷却構造100aは、外側第1通路32oと内側第1通路32iとの間で内径D1を変更しなくてもよいので、その分加工が容易になる。絞り部としては、スリーブ35aの代わりに、図13に示す外歯スプライン形状の通路断面積調整部材35bを用いてもよい。この場合、外歯スプライン35btと内側第1通路32iとで囲まれる空間32ipを冷却媒体が通過する。
【0075】
以上、本実施形態及びその変形例は、発電電動機の入出力シャフトの回転中心軸に向かって延在して入出力シャフト側に開口し、かつ途中に絞り部を有する第1通路と、絞り部よりも入出力シャフトの径方向外側の位置で第1通路から分岐してから入出力シャフトの外側に取り付けられるローターに向かって延在して、前記ローター側に開口する第2通路と、を含むようにした。このように、第1通路に絞り部を設けるとともに、絞り部よりも冷却媒体の流れの上流側で第2通路を分岐させるので、絞り部よりも第1通路の下流に流れる冷却媒体の流量が低減され、その分第2通路を流れる冷却媒体の流量を大きくすることができる。その結果、第1通路と第2通路とにおける冷却媒体の流量のアンバランスが抑制されるので、発電電動機の冷却対象となる部分の冷却状態のばらつきを抑制することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ハイブリッド油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
6 内燃機関
6S 出力シャフト
7 油圧ポンプ
7S 入力シャフト
10 発電電動機
11 第1ハウジング
12 フランジ
13 第2ハウジング
14 フライホイール
15 連結部材
16 入出力シャフト
17 ローターコア
18 ローターホルダー
18Li 第1ホルダー部材
18Lo 第2ホルダー部材
18T 第3ホルダー部材
20 ローター
24 ステーター
24C コイル
24I インシュレーター
24K ステーターコア
32 第1通路
32i 内側第1通路
32o 外側第1通路
32H 第1通路出口
32I 第1通路入口
33 第2通路
33H 第2通路出口
33I 第2通路入口
35 絞り部
40F 第1ブレード
40R 第2ブレード
50F 第1軸受
50R 第2軸受
60 突起部
70 軸受取付部材
71 貫通孔
80 リブ
100、100a 冷却構造
Zr 回転中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電電動機の筐体の一端部に配置される端部側部材に設けられ、前記筐体の内部に格納される入出力シャフトの回転中心軸に向かって延在して前記入出力シャフト側に開口し、かつ途中に絞り部を有する第1通路と、
前記端部側部材に設けられ、前記絞り部よりも前記入出力シャフトの径方向外側の位置で前記第1通路から分岐してから前記入出力シャフトの外側に取り付けられるローターに向かって延在して、前記ローター側に開口する第2通路と、
を含むことを特徴とする発電電動機の冷却構造。
【請求項2】
前記第1通路は、前記入出力シャフト側の内側第1通路と、前記内側第1通路よりも前記入出力シャフトの径方向外側に配置され、かつ前記内側第1通路よりも内径が大きい外側第1通路とを有し、前記内側第1通路と前記外側第1通路との間が前記絞り部となる請求項1に記載の発電電動機の冷却構造。
【請求項3】
前記第1通路は、前記入出力シャフトの一端部の位置に開口する請求項1又は2に記載の発電電動機の冷却構造。
【請求項4】
前記端部側部材は、
前記入出力シャフトに動力伝達部材を取り付けるための貫通孔と、
前記貫通孔の内周部から前記回転中心軸に向かい、前記入出力シャフトの一端部と重ならないように、前記入出力シャフトの径方向途中の位置まで延出する張り出し部と、
を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の発電電動機の冷却構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の発電電動機の冷却構造を有する発電電動機。
【請求項6】
前記発電電動機は、前記入出力シャフトの一端に動力発生源の出力シャフトが接続され、他端に前記動力発生源の動力により駆動される駆動対象の入力シャフトが接続される請求項5に記載の発電電動機。
【請求項7】
前記第1通路は、前記入出力シャフトと前記駆動対象の入力軸との接続部の位置に開口する請求項5又は6に記載の発電電動機。
【請求項8】
内燃機関と油圧ポンプとの間に設けられて前記内燃機関の動力を前記油圧ポンプに伝達するとともに電力を発生する発電電動機であり、
前記発電電動機の筐体の一端部に配置される端部側部材に設けられ、前記筐体の内部に格納される入出力シャフトの回転中心軸に向かって延在して前記入出力シャフト側に開口する第1通路と、
前記絞り部よりも前記入出力シャフトの径方向外側の位置で前記第1通路から分岐してから前記入出力シャフトの外側に取り付けられるローターに向かって延在して、前記ローター側に開口する第2通路と、を含み、
前記第1通路は、前記入出力シャフト側の内側第1通路と、前記内側第1通路よりも前記入出力シャフトの径方向外側に配置され、かつ前記内側第1通路よりも内径が大きい外側第1通路とを有し、前記第2通路は、前記外側第1通路から分岐することを特徴とする発電電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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