発音機能を有する側溝構造
【課題】大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で異常に歩道部に近づいた際に、いち早く歩行者がそれに気づいて危険を回避すると同時に、運転者にも注意を与える。
【解決手段】車道部と歩道部の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に連通穴又は溝を介して振動共鳴させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたことを特徴とする発音機能を有する側溝構造である。発音手段の好ましい形状は、凸状部であり、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置し、又はその凸状部は走行車両の手前側を緩勾配とし、又は歩道部側を車道部側より高くする。
【解決手段】車道部と歩道部の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に連通穴又は溝を介して振動共鳴させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたことを特徴とする発音機能を有する側溝構造である。発音手段の好ましい形状は、凸状部であり、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置し、又はその凸状部は走行車両の手前側を緩勾配とし、又は歩道部側を車道部側より高くする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で異常に歩道部に近づいた場合、いち早く歩行者がそれに気づくことができるよう、走行車両のタイヤがその上部に載った時、共鳴音が発生する発音機能を有する側溝構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
側溝構造には、その上部に凹溝を施したものが多くある(例えば、特許文献1参照)。また、上部に格子状ないし網目状の多数の凹溝が形成されたものがある。(例えば、特許文献2参照)。更に、表面にタイル状突出板面等を施したものがある(例えば、特許文献3参照)。また、U字溝側壁の上端部に被着されたスリップ止めのついた金属製の保護枠がある(例えば特許文献4参照)。これらはそれぞれに排水性が良くなるとか、車や歩行者のスリップ防止といった効果がある。
【0003】
上記例のような、従来のコンクリート側溝の上部表面に施された溝や凹凸模様は、排水性を良くするか、又は人や車が通る際にスリップをしないようにする目的で設けられたものである。中にはデザイン的な要素を目的にしたものや、側溝側壁の上端部に破損防止の目的で被着された金属製のスリップ止めの付いた保護枠等もある。これらは安全上からはスリップ防止の効果はあるものの、歩行者を交通事故から守る本発明の目的とするものではない。
【0004】
また、道路の中央へ運転者に注意を促し車両のはみ出し防止の目的で、車両のタイヤが載ると振動や音のする機能を有する黄色いラインが設置した例もある。これは、はみ出し防止に優れた機能があるが、施工価格が一般のラインに比べ約2〜3倍と高額になる。その為、重大な事故につながる車同士の正面衝突を防止する中央ラインでの採用さえなかなか難しい状況にある。ましてや歩道部と車道部との境界付近にそういったものを設置するには相当の陳情が必要になるか、又はその場所で重大な事故が発生した等の事実がないと設置しない傾向が現状である。そのため価格アップとならないこれらと同等以上の性能を有した工法が必要となる。
【0005】
特許文献5のように、「車道又は道路の端部に設置され、雨水を集めて流すL型集水ブロックにおいて路面近くの部分の表面に、自動車のタイヤが乗り上げて振動を生じ、自動車が路端に近接したことを運転者に知らせる凹凸状部部を有することを特徴とする道路用L型集水ブロック」も出願されているが、この使用目的は、駐車等のために自動車を道路の端一杯に寄せる際に、振動により自動車が路端に近接したことを運転者に知らせるものであり、歩行者を交通事故から守る本発明の目的とするものではない。
【0006】
【特許文献1】特許第2896891号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】実開平2−97479号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開平11−217803号公報(第3頁、図11)
【特許文献4】実開平2−37989号公報(第1頁、図1)
【特許文献5】実開平1−75108号公報(第1頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在車道部と歩道部の境界には一般的には歩車道境界ブロックといった縁石が設置されている。しかしその縁石の高さは15cm前後であり、大型のダンプカーが乗り上げた場合、簡単に歩道部に達してしまう。その結果、女性や子供、お年寄りといった無防備な弱者の悲惨な交通事故が毎年繰り返されている。このように、歩行者の安全は運転者の安全意識や安全確認にほとんど頼っているのが現状である。
【0008】
しかし、最近問題になっている列車の運転手や飛行機のパイロットに起きている睡眠時無呼吸症候群といった病気による運転ミスがある。これは自動車の運転手にも同じ事がいえる。多くの国民が運転免許を持っている今日、大変危険な状況下にある。居眠り運転による睡眠時無呼吸症候群の交通事故率は一般の人に比べ、7倍といった結果が出ている。
【0009】
また、車両が歩道部に乗り上げないように、縁石の高いものに構造変更した場合、工費が大変高くなるといった経済的問題や、小さな子供が縁石に隠れてしまい、かえって飛び出し事故等危険な状況が発生するといった指摘もある。
以上のように歩道部の現在の構造は全国ほぼ同じであり、歩行者は常に危険と隣りあわせで交通事故の危険にさらされている事になる。運転手のちょっとした運転ミスから悲惨な事故が発生するといった大きな社会問題となっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車道部を走行中の車両が何らかの原因で歩道部に近づき、最後には歩道部に乗り上げてしまい、無防備な歩行者が悲惨な交通事故に遭遇する機会を減らそうとすることを目的としている。そこで、発明者は、上記の課題すなわち、大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で異常に歩道部に近づいた際、いち早く歩行者がそれに気づくことができるよう、次のような側溝構造を開発したものであり、その内容は以下の如くである。
【0011】
車道部と歩道部の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に設けた連通穴又は溝を介して振動共鳴した音を伝達させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたことを特徴とする発音機能を有する側溝構造である。この発音手段を設け側溝空洞部との間に連通穴又は溝を介して振動共鳴させる構造は発音装置ともいうべきである。
【0012】
発音手段は凸状部とし、その設置間隔を2〜50cmの間とし、側溝の車道部側の側壁上部付近から中央付近に設けると適当である。設置間隔が2〜50cmの範囲にないと良好な発音状態と振動共鳴の関係が保てない。
【0013】
発音手段には、コンクリート、ゴム、合成樹脂、石、タイル、鋼材等、磨耗しにくく滑りにくい材質を用い、またそのような性能を有する形状とする。
【0014】
本発明の側溝構造における発音手段の好ましい形状は、凸状部であり、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置し、又はその凸状部は走行車両の手前側を緩勾配とし、又は歩道部側を車道部側より高くすることである。
【0015】
発音手段を凸状部とし、側溝の上部又は側壁に排水用の穴を開け、その周囲に排水性舗装を施し、音が発生する発音手段を排水性舗装から若干突出させた側溝構造が高度に発音機能を有する。
【0016】
側溝は一体型又は二分割の二次製品か、又は、二次製品と現場打コンクリートとの複合構造で、空洞内部の形状がほぼ円形、卵形、楕円形、ハート形、四角形、又はU形としたものがよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
これを図によって説明する。図1は本発明に係る側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図で、図2は図1の施工例を示す斜視図である。図3から図9に示す例も側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図又は施工例を示す斜視図である。本発明は、車道部10と歩道部11の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段1を設けたことを特徴としている。発音手段1の上を走行車両のタイヤが載るとその音が、水路の空洞13内部で太鼓のように振動共鳴して、内部と外部と連通する穴2を通じて音が放出され、前方又は周囲を歩いている歩行者に危険をいち早く知らせるものである。この穴2は図1や図5のようにグレーチング穴2aでもいいし、図3のように連続した溝2bでもいい。更には図7や図9のように蓋についている取手用穴2cでもいい。また、図17のように排水性舗装の下に隠れる排水用穴2dでもよい。
【0018】
発音手段1については、先ず、図1のような、音が発生する発音手段を凸状部1aとし、その設置間隔を2cmから50cmの間とし、車道部側の側壁上部付近から中央付近の位置に設けたものを示すことができる。この音が発生する発音手段1には色々な構造が考えられるが、凸状部1aの形状を図1は長方形状、図3は円形状、図5は棒状とした例である。この設置間隔は任意に変えられるが一般には10cm前後の間隔が音の発生に最も適している。ただし、市街地の中のように音のしない、振動だけが伝わるようにした無音タイプが必要な場合は、この間隔を狭めてランダムに設置、調整することにより対応できる。
【0019】
また、音が発生する発音手段1を側溝14の車道部側の側壁上部付近から中央付近の位置に設ければ車両が歩道部に近づいた場合、いち早く歩行者にそれを気づかせることができる。更に、音が発生する発音手段が凸状部の場合、タイヤが載ると衝撃が加わり、側溝上部の中央の場合負荷が大きくかかりヒビ割れ等が起きやすいが、車道側の側壁上部だと影響が小さくて済むメリットがある。
【0020】
図18は、発音手段1を側溝14と同時に作られたものに、更に機能を追加したものである。詳しく説明すると、側溝14とは別に製作された音が発生する発音手段であって、その材質がコンクリート、ゴム、合成樹脂、石、タイル、鋼材等で作られ、磨耗しにくい材質及び滑りにくい形状とし、コンクリート側溝製造時又は製造後、一体化した側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図である。上部には発音手段の2つの例を斜視図で示している。図19(a)(b)は音が発生する発音手段の側面図例2つである。これらは視覚的にも確認できるように黄色に着色するとか、図19(b)のように夜間用として夜光塗料や反射体1bを取り付けても良い。また、タイヤが載ったら図19(a)のように屈曲片1cの凸部が倒れて衝撃音がするものもよい。図20は音が発生する発音手段に硬質の石1dを埋めて利用した斜視図例で、図21はそのB−B断面図である。図22は音が発生する発音手段にタイル1eを利用した例の斜視図で図23はそのC−C断面図である。
【0021】
図9は音が発生する発音手段を凸状部1aとし、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置した例の斜視図で、歩道部に侵入してきた車両のタイヤに対して直角に作用するため、より大きな音が発生する効果がある。図10は図9の施工例の斜視図である。
【0022】
図11は発音手段1を凸状部1aとし、その高さを歩道部11側を車道部12側より高くしたもので、この事により車両のタイヤが歩道部11側に侵入すればするほど大きい音が発生する効果がある。また、降雨が舗装上部を流れる時、ゴミがこの装置に引っ掛かりにくいといった利点もある。図12は図11の施工例の断面図である。
【0023】
図13は発音手段1を凸状部1aとし、その高さを進行方向の手前側を緩勾配とした例の斜視図で、雪の多い場所で使用されたとき、除雪時、大型の除雪機であるグレーダーのブレードがこの凸部にひっかかり壊れるのを防ぐ効果がある。図14は図13の例の施工断面図で、図15は図14のA−A断面図である。
【0024】
図16は音が発生する発音手段1を凸状部1aとし、上部又は側壁に排水用の穴を開けその周囲に排水性舗装15を施し、音が発生する発音手段を排水性舗装15から若干突出させた側溝用ブロック14aの一実施例を示す斜視図である。これは近年使用が増加している排水性舗装用の例で、上面又は側面のいずれかに内部と外部と連通する穴2dがあり、その上部に多孔構造の排水性舗装15が薄く被さっていても薄層(通常3cm程度)の為、充分音を伝える効果がある。図17は図16の施工断面図である。
【0025】
図1、図3は、側溝用ブロックが一体型の例。図5、図7は上下二分割の例。図10は側溝用ブロック14aと現場打コンクリート14bとの複合構造の例である。空洞13内部の形状は、図11の様な円形、図3の様な卵形、図1、図5の様な四角形、図7のようなU形、その他楕円形、ハート形等と様々なものがある。
【0026】
図24は車道部を走行中の車両が何らかの原因で歩道部に近づき、発音機能1を有した側溝14の上をその車両が走行して、歩行者がその音に気づいた状況の本発明の概念図である。この例にみられるように設置される全ての側溝用ブロック14aにグレーチング等の穴2が開いていなくとも数本に一つ開いていれば充分その機能を有する。
【0027】
【発明の効果】
本発明は走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に連通穴又は溝を介して振動共鳴させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたので、大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で、異常に歩道部に近づいた際、いち早く歩行者がそれに気づくことができ、無防備な歩行者が悲惨な交通事故に遭遇する機会を減らすことが可能となった。
【0028】
音が発生する発音機能を有した側溝を、事故の多い場所や通学路に設置すれば安全確保にも役立つ。設置方法も連続または部分的と自由に設置可能で経済的な施工となる。また、ダム沿いや山間部のような狭い道路に設置しておけば安全な確認走行ができる。
【0029】
また、運転者もちょっとしたミスにより重大な交通事故を一旦起こせば加害者であると同時に被害者にもなりうる悲惨な状況となる。この音の出る装置は、歩行者に危険を知らせると同時に運転者にも音と振動で注意を与えてくれる効果があり双方の安全性向上となる。
【0030】
更に、この発音機能を有した側溝は、コンクリート二次製品と一体に製造するものがほとんどで型枠の頂部を改造するだけで簡単に製造でき、単価アップにならないといった経済的メリットが大きい。よって、この側溝構造を採用した工事のコストアップも無く経済的な施工ができるようになった。
【0031】
また、タイヤで磨耗して何回も引きなおすライン線のように維持管理が必要な工法に比べ、施工後のメンテナンスが全く必要無い事も大きいメリットである。
このように本発明は歩行者の交通事故を未然にしかも経済的に防止する特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図4】図3の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図6】図5の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図8】図7の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図10】図9の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図12】図11の側溝用ブロックを用いた施工例の断面図である。
【図13】側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図で、音が発生する発音手段を凸状部とし、その高さを走行車両の手前側を緩勾配としたものである。
【図14】図13の側溝用ブロックを用いた施工例の断面図である。
【図15】図14のA−A断面図である。
【図16】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図17】図16の側溝用ブロックを用いた施工例の施工図である。
【図18】音が発生する発音手段を別体に作って一体化した側溝用ブロックの一実施例の斜視図である。
【図19】図18に示される発音手段の例を示す側面図である。(a)は屈曲片、(b)は反射体を取り付けた例である。
【図20】音が発生する発音手段を石とした例の斜視図である。
【図21】図20のB−B断面図である。
【図22】音が発生する発音手段をタイルとした例の斜視図である。
【図23】C−C断面図である。
【図24】本発明の概念図である。
【符号の説明】
1 発音手段
1a 凸状部
1b 反射体
1c 屈曲片
1d 石
1e タイル
2 穴
2a グレーチング穴
2b 連続した溝
2c 取手用穴
2d排水用穴
10 車道部
11 歩道部
13 水路の空洞
14 側溝
14a 側溝用ブロック
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で異常に歩道部に近づいた場合、いち早く歩行者がそれに気づくことができるよう、走行車両のタイヤがその上部に載った時、共鳴音が発生する発音機能を有する側溝構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
側溝構造には、その上部に凹溝を施したものが多くある(例えば、特許文献1参照)。また、上部に格子状ないし網目状の多数の凹溝が形成されたものがある。(例えば、特許文献2参照)。更に、表面にタイル状突出板面等を施したものがある(例えば、特許文献3参照)。また、U字溝側壁の上端部に被着されたスリップ止めのついた金属製の保護枠がある(例えば特許文献4参照)。これらはそれぞれに排水性が良くなるとか、車や歩行者のスリップ防止といった効果がある。
【0003】
上記例のような、従来のコンクリート側溝の上部表面に施された溝や凹凸模様は、排水性を良くするか、又は人や車が通る際にスリップをしないようにする目的で設けられたものである。中にはデザイン的な要素を目的にしたものや、側溝側壁の上端部に破損防止の目的で被着された金属製のスリップ止めの付いた保護枠等もある。これらは安全上からはスリップ防止の効果はあるものの、歩行者を交通事故から守る本発明の目的とするものではない。
【0004】
また、道路の中央へ運転者に注意を促し車両のはみ出し防止の目的で、車両のタイヤが載ると振動や音のする機能を有する黄色いラインが設置した例もある。これは、はみ出し防止に優れた機能があるが、施工価格が一般のラインに比べ約2〜3倍と高額になる。その為、重大な事故につながる車同士の正面衝突を防止する中央ラインでの採用さえなかなか難しい状況にある。ましてや歩道部と車道部との境界付近にそういったものを設置するには相当の陳情が必要になるか、又はその場所で重大な事故が発生した等の事実がないと設置しない傾向が現状である。そのため価格アップとならないこれらと同等以上の性能を有した工法が必要となる。
【0005】
特許文献5のように、「車道又は道路の端部に設置され、雨水を集めて流すL型集水ブロックにおいて路面近くの部分の表面に、自動車のタイヤが乗り上げて振動を生じ、自動車が路端に近接したことを運転者に知らせる凹凸状部部を有することを特徴とする道路用L型集水ブロック」も出願されているが、この使用目的は、駐車等のために自動車を道路の端一杯に寄せる際に、振動により自動車が路端に近接したことを運転者に知らせるものであり、歩行者を交通事故から守る本発明の目的とするものではない。
【0006】
【特許文献1】特許第2896891号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】実開平2−97479号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開平11−217803号公報(第3頁、図11)
【特許文献4】実開平2−37989号公報(第1頁、図1)
【特許文献5】実開平1−75108号公報(第1頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在車道部と歩道部の境界には一般的には歩車道境界ブロックといった縁石が設置されている。しかしその縁石の高さは15cm前後であり、大型のダンプカーが乗り上げた場合、簡単に歩道部に達してしまう。その結果、女性や子供、お年寄りといった無防備な弱者の悲惨な交通事故が毎年繰り返されている。このように、歩行者の安全は運転者の安全意識や安全確認にほとんど頼っているのが現状である。
【0008】
しかし、最近問題になっている列車の運転手や飛行機のパイロットに起きている睡眠時無呼吸症候群といった病気による運転ミスがある。これは自動車の運転手にも同じ事がいえる。多くの国民が運転免許を持っている今日、大変危険な状況下にある。居眠り運転による睡眠時無呼吸症候群の交通事故率は一般の人に比べ、7倍といった結果が出ている。
【0009】
また、車両が歩道部に乗り上げないように、縁石の高いものに構造変更した場合、工費が大変高くなるといった経済的問題や、小さな子供が縁石に隠れてしまい、かえって飛び出し事故等危険な状況が発生するといった指摘もある。
以上のように歩道部の現在の構造は全国ほぼ同じであり、歩行者は常に危険と隣りあわせで交通事故の危険にさらされている事になる。運転手のちょっとした運転ミスから悲惨な事故が発生するといった大きな社会問題となっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車道部を走行中の車両が何らかの原因で歩道部に近づき、最後には歩道部に乗り上げてしまい、無防備な歩行者が悲惨な交通事故に遭遇する機会を減らそうとすることを目的としている。そこで、発明者は、上記の課題すなわち、大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で異常に歩道部に近づいた際、いち早く歩行者がそれに気づくことができるよう、次のような側溝構造を開発したものであり、その内容は以下の如くである。
【0011】
車道部と歩道部の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に設けた連通穴又は溝を介して振動共鳴した音を伝達させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたことを特徴とする発音機能を有する側溝構造である。この発音手段を設け側溝空洞部との間に連通穴又は溝を介して振動共鳴させる構造は発音装置ともいうべきである。
【0012】
発音手段は凸状部とし、その設置間隔を2〜50cmの間とし、側溝の車道部側の側壁上部付近から中央付近に設けると適当である。設置間隔が2〜50cmの範囲にないと良好な発音状態と振動共鳴の関係が保てない。
【0013】
発音手段には、コンクリート、ゴム、合成樹脂、石、タイル、鋼材等、磨耗しにくく滑りにくい材質を用い、またそのような性能を有する形状とする。
【0014】
本発明の側溝構造における発音手段の好ましい形状は、凸状部であり、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置し、又はその凸状部は走行車両の手前側を緩勾配とし、又は歩道部側を車道部側より高くすることである。
【0015】
発音手段を凸状部とし、側溝の上部又は側壁に排水用の穴を開け、その周囲に排水性舗装を施し、音が発生する発音手段を排水性舗装から若干突出させた側溝構造が高度に発音機能を有する。
【0016】
側溝は一体型又は二分割の二次製品か、又は、二次製品と現場打コンクリートとの複合構造で、空洞内部の形状がほぼ円形、卵形、楕円形、ハート形、四角形、又はU形としたものがよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
これを図によって説明する。図1は本発明に係る側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図で、図2は図1の施工例を示す斜視図である。図3から図9に示す例も側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図又は施工例を示す斜視図である。本発明は、車道部10と歩道部11の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段1を設けたことを特徴としている。発音手段1の上を走行車両のタイヤが載るとその音が、水路の空洞13内部で太鼓のように振動共鳴して、内部と外部と連通する穴2を通じて音が放出され、前方又は周囲を歩いている歩行者に危険をいち早く知らせるものである。この穴2は図1や図5のようにグレーチング穴2aでもいいし、図3のように連続した溝2bでもいい。更には図7や図9のように蓋についている取手用穴2cでもいい。また、図17のように排水性舗装の下に隠れる排水用穴2dでもよい。
【0018】
発音手段1については、先ず、図1のような、音が発生する発音手段を凸状部1aとし、その設置間隔を2cmから50cmの間とし、車道部側の側壁上部付近から中央付近の位置に設けたものを示すことができる。この音が発生する発音手段1には色々な構造が考えられるが、凸状部1aの形状を図1は長方形状、図3は円形状、図5は棒状とした例である。この設置間隔は任意に変えられるが一般には10cm前後の間隔が音の発生に最も適している。ただし、市街地の中のように音のしない、振動だけが伝わるようにした無音タイプが必要な場合は、この間隔を狭めてランダムに設置、調整することにより対応できる。
【0019】
また、音が発生する発音手段1を側溝14の車道部側の側壁上部付近から中央付近の位置に設ければ車両が歩道部に近づいた場合、いち早く歩行者にそれを気づかせることができる。更に、音が発生する発音手段が凸状部の場合、タイヤが載ると衝撃が加わり、側溝上部の中央の場合負荷が大きくかかりヒビ割れ等が起きやすいが、車道側の側壁上部だと影響が小さくて済むメリットがある。
【0020】
図18は、発音手段1を側溝14と同時に作られたものに、更に機能を追加したものである。詳しく説明すると、側溝14とは別に製作された音が発生する発音手段であって、その材質がコンクリート、ゴム、合成樹脂、石、タイル、鋼材等で作られ、磨耗しにくい材質及び滑りにくい形状とし、コンクリート側溝製造時又は製造後、一体化した側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図である。上部には発音手段の2つの例を斜視図で示している。図19(a)(b)は音が発生する発音手段の側面図例2つである。これらは視覚的にも確認できるように黄色に着色するとか、図19(b)のように夜間用として夜光塗料や反射体1bを取り付けても良い。また、タイヤが載ったら図19(a)のように屈曲片1cの凸部が倒れて衝撃音がするものもよい。図20は音が発生する発音手段に硬質の石1dを埋めて利用した斜視図例で、図21はそのB−B断面図である。図22は音が発生する発音手段にタイル1eを利用した例の斜視図で図23はそのC−C断面図である。
【0021】
図9は音が発生する発音手段を凸状部1aとし、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置した例の斜視図で、歩道部に侵入してきた車両のタイヤに対して直角に作用するため、より大きな音が発生する効果がある。図10は図9の施工例の斜視図である。
【0022】
図11は発音手段1を凸状部1aとし、その高さを歩道部11側を車道部12側より高くしたもので、この事により車両のタイヤが歩道部11側に侵入すればするほど大きい音が発生する効果がある。また、降雨が舗装上部を流れる時、ゴミがこの装置に引っ掛かりにくいといった利点もある。図12は図11の施工例の断面図である。
【0023】
図13は発音手段1を凸状部1aとし、その高さを進行方向の手前側を緩勾配とした例の斜視図で、雪の多い場所で使用されたとき、除雪時、大型の除雪機であるグレーダーのブレードがこの凸部にひっかかり壊れるのを防ぐ効果がある。図14は図13の例の施工断面図で、図15は図14のA−A断面図である。
【0024】
図16は音が発生する発音手段1を凸状部1aとし、上部又は側壁に排水用の穴を開けその周囲に排水性舗装15を施し、音が発生する発音手段を排水性舗装15から若干突出させた側溝用ブロック14aの一実施例を示す斜視図である。これは近年使用が増加している排水性舗装用の例で、上面又は側面のいずれかに内部と外部と連通する穴2dがあり、その上部に多孔構造の排水性舗装15が薄く被さっていても薄層(通常3cm程度)の為、充分音を伝える効果がある。図17は図16の施工断面図である。
【0025】
図1、図3は、側溝用ブロックが一体型の例。図5、図7は上下二分割の例。図10は側溝用ブロック14aと現場打コンクリート14bとの複合構造の例である。空洞13内部の形状は、図11の様な円形、図3の様な卵形、図1、図5の様な四角形、図7のようなU形、その他楕円形、ハート形等と様々なものがある。
【0026】
図24は車道部を走行中の車両が何らかの原因で歩道部に近づき、発音機能1を有した側溝14の上をその車両が走行して、歩行者がその音に気づいた状況の本発明の概念図である。この例にみられるように設置される全ての側溝用ブロック14aにグレーチング等の穴2が開いていなくとも数本に一つ開いていれば充分その機能を有する。
【0027】
【発明の効果】
本発明は走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に連通穴又は溝を介して振動共鳴させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたので、大型車両の運転手等が居眠りやわき見運転で、異常に歩道部に近づいた際、いち早く歩行者がそれに気づくことができ、無防備な歩行者が悲惨な交通事故に遭遇する機会を減らすことが可能となった。
【0028】
音が発生する発音機能を有した側溝を、事故の多い場所や通学路に設置すれば安全確保にも役立つ。設置方法も連続または部分的と自由に設置可能で経済的な施工となる。また、ダム沿いや山間部のような狭い道路に設置しておけば安全な確認走行ができる。
【0029】
また、運転者もちょっとしたミスにより重大な交通事故を一旦起こせば加害者であると同時に被害者にもなりうる悲惨な状況となる。この音の出る装置は、歩行者に危険を知らせると同時に運転者にも音と振動で注意を与えてくれる効果があり双方の安全性向上となる。
【0030】
更に、この発音機能を有した側溝は、コンクリート二次製品と一体に製造するものがほとんどで型枠の頂部を改造するだけで簡単に製造でき、単価アップにならないといった経済的メリットが大きい。よって、この側溝構造を採用した工事のコストアップも無く経済的な施工ができるようになった。
【0031】
また、タイヤで磨耗して何回も引きなおすライン線のように維持管理が必要な工法に比べ、施工後のメンテナンスが全く必要無い事も大きいメリットである。
このように本発明は歩行者の交通事故を未然にしかも経済的に防止する特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る側溝用ブロックの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図4】図3の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図6】図5の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図8】図7の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図10】図9の側溝用ブロックを用いた施工例を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図12】図11の側溝用ブロックを用いた施工例の断面図である。
【図13】側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図で、音が発生する発音手段を凸状部とし、その高さを走行車両の手前側を緩勾配としたものである。
【図14】図13の側溝用ブロックを用いた施工例の断面図である。
【図15】図14のA−A断面図である。
【図16】本発明に係る側溝用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図17】図16の側溝用ブロックを用いた施工例の施工図である。
【図18】音が発生する発音手段を別体に作って一体化した側溝用ブロックの一実施例の斜視図である。
【図19】図18に示される発音手段の例を示す側面図である。(a)は屈曲片、(b)は反射体を取り付けた例である。
【図20】音が発生する発音手段を石とした例の斜視図である。
【図21】図20のB−B断面図である。
【図22】音が発生する発音手段をタイルとした例の斜視図である。
【図23】C−C断面図である。
【図24】本発明の概念図である。
【符号の説明】
1 発音手段
1a 凸状部
1b 反射体
1c 屈曲片
1d 石
1e タイル
2 穴
2a グレーチング穴
2b 連続した溝
2c 取手用穴
2d排水用穴
10 車道部
11 歩道部
13 水路の空洞
14 側溝
14a 側溝用ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道部と歩道部の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に設けた連通穴又は溝を介して振動共鳴した音を伝達させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたことを特徴とする発音機能を有する側溝構造。
【請求項2】
発音手段を凸状部とし、その設置間隔を2〜50cmの間とし、側溝の車道部側の側壁上部付近から中央付近の位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項3】
発音手段をコンクリート、ゴム、合成樹脂、石、タイル、鋼材等、磨耗しにくく滑りにくい材質及び形状としたことを特徴とする請求項1又は2記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項4】
発音手段を凸状部とし、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置し、又はその凸状部は走行車両の手前側を緩勾配とし、又は歩道部側を車道部側より高くしたことを特徴とする請求項1〜3記載のいずれかに記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項5】
発音手段を凸状部とし、側溝の上部又は側壁に排水用の穴を開け、その周囲に排水性舗装を施し、音が発生する発音手段を排水性舗装から若干突出させたことを特徴とする請求項1〜4記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項6】
側溝が一体型又は二分割の二次製品か又は、二次製品と現場打コンクリートとの複合構造で、空洞内部の形状がほぼ、円形、卵形、楕円形、ハート形、四角形、又はU形としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項1】
車道部と歩道部の境界付近に車両の進行方向にほぼ並行状態かつ、間欠的に走行車両のタイヤがその上部に載ると音が発生する発音手段を設け、側溝空洞部との間に設けた連通穴又は溝を介して振動共鳴した音を伝達させ、その発生音によって歩行者に知らせるようにしたことを特徴とする発音機能を有する側溝構造。
【請求項2】
発音手段を凸状部とし、その設置間隔を2〜50cmの間とし、側溝の車道部側の側壁上部付近から中央付近の位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項3】
発音手段をコンクリート、ゴム、合成樹脂、石、タイル、鋼材等、磨耗しにくく滑りにくい材質及び形状としたことを特徴とする請求項1又は2記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項4】
発音手段を凸状部とし、その位置を車両進行方向直角より少し角度をもって配置し、又はその凸状部は走行車両の手前側を緩勾配とし、又は歩道部側を車道部側より高くしたことを特徴とする請求項1〜3記載のいずれかに記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項5】
発音手段を凸状部とし、側溝の上部又は側壁に排水用の穴を開け、その周囲に排水性舗装を施し、音が発生する発音手段を排水性舗装から若干突出させたことを特徴とする請求項1〜4記載の発音機能を有する側溝構造。
【請求項6】
側溝が一体型又は二分割の二次製品か又は、二次製品と現場打コンクリートとの複合構造で、空洞内部の形状がほぼ、円形、卵形、楕円形、ハート形、四角形、又はU形としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発音機能を有する側溝構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2004−332321(P2004−332321A)
【公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−127867(P2003−127867)
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(303006709)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(303006709)
【Fターム(参考)】
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