説明

発音駆動装置及びこれを設けてなる時計

【課題】 より合理的に構成された発音駆動装置を得ること。
【解決手段】 装飾体20と、音程調整用のスライダ部31を備えた笛体30と、笛体に空気を送る鞴40と、装飾体を駆動する第1ソレノイド50と、鞴を駆動する第2ソレノイド60と、スライダ部を駆動する第3ソレノイド70と、第1ソレノイド、第2ソレノイド、及び第3ソレノイドをそれぞれ所定のタイミングで通電する制御部6とを備え、第1ソレノイドと第2ソレノイドとを同時に通電するようにした構成の発音駆動装置である。また、かかる発音駆動装置を設けてなる時計であって、装飾体を外部から見える位置に配置するとともに、笛体、鞴、第2ソレノイド、及び第3ソレノイドを支持体に支持し、それらを外部から見えない位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体を駆動するとともに笛体を鳴らす装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動的に笛体を鳴らす装置としては、特許文献1に開示されているように、ソレノイドを用いたものが知られている。
【特許文献1】特許第3896977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、本願発明者は、この種の装置について趣向を向上すべく、笛体による発音にあわせて装飾体を駆動させる構成について検討した。例えば、時計に装飾体と笛体を設け、笛体が発音すると同時に装飾体を駆動させるものである。装飾体は、笛体を操作するソレノイドにリンクさせれば、笛体による発音にあわせて駆動させることが可能である。但し、その場合は、装飾体と笛体を機械的に連結することになるため、それらのレイアウトが制限されてしまうという不都合がある。つまるところ、時計のような装置に設ける場合は、配置の自由度を確保することが非常に重要な課題となる。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より合理的に構成された発音駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願第1請求項に記載した発明は、装飾体と、音程調整用のスライダ部を備えた笛体と、前記笛体に空気を送る鞴と、前記装飾体を駆動する第1ソレノイドと、前記鞴を駆動する第2ソレノイドと、前記スライダ部を駆動する第3ソレノイドと、前記第1ソレノイド、前記第2ソレノイド、及び前記第3ソレノイドをそれぞれ所定のタイミングで通電する制御部とを備え、前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドとを同時に通電するようにした構成の発音駆動装置である。
【0005】
本願第2請求項に記載した発明は、請求項1記載の発音駆動装置を設けてなる時計であって、前記装飾体を外部から見える位置に配置するとともに、前記笛体、前記鞴、前記第2ソレノイド、及び前記第3ソレノイドを支持体に支持し、それらを外部から見えない位置に配置した構成の時計である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より合理的に構成された発音駆動装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1に示す時計1は、本例の発音駆動装置10を設けてなる置時計である。この時計1は、台座2の上部に時刻表示部3を設けるとともに、その時刻表示部3をドーム状の透明カバー4にて覆ったものである。図例した時刻表示部3は、樹木を模した飾りの内部に指針を駆動するムーブメントを設けてなるものである。台座2の内部には、当該時計1の電源となる電池5が収納されている。
【0008】
発音駆動装置10は、装飾体20と、音程調整用のスライダ部31を備えた笛体30と、笛体30に空気を送る鞴40と、装飾体を駆動する第1ソレノイド50と、鞴40を駆動する第2ソレノイド60と、スライダ部31を駆動する第3ソレノイド70と、第1ソレノイド50、第2ソレノイド60、及び第3ソレノイド70をそれぞれ所定のタイミングで通電する制御部6とを備えている。この制御部6は、台座2の内部に配置された回路基板であって、当該時計1を制御するものであり、第1ソレノイド50と第2ソレノイド60は、同時に通電される構成となっている。図2は、各ソレノイド50,60,70の通電回路の構成を示している。正時になると、制御部6は、予め設定された所定のプログラムに基づいて、第1ソレノイド50及び第2ソレノイド60を通電する第1スイッチS1と、第3ソレノイド70を通電する第2スイッチS2とをそれぞれ所定のタイミングでON/OFFする構成となっている。
【0009】
装飾体20は、小鳥を模した人形であり、時刻表示部3とともに台座2の上部に配置されている。すなわち、外部から見える位置に配置している。また、笛体30、鞴40、第2ソレノイド60、及び第3ソレノイド70は、支持体80に支持し、台座2の内部に配置している。すなわち、外部から見えない位置に配置されている。
【0010】
装飾体20の駆動機構については、特に限定はしないが、本例の場合、図3に示すように、装飾体20の基端部21を枢支し、基端部21から延出した槓杆部22を第1ソレノイド50が操作する構成となっている。槓杆部22は、弾性部材23によって一方に付勢されており、第1ソレノイド50が通電されると、第1ソレノイド50の可動鉄芯部51に押されて他方に移動する。このとき弾性部材23が圧縮されるので、通電が解除されると槓杆部22はその弾性力にて元の位置に復帰する。すなわち、第1ソレノイド50に対する通電のON/OFFに伴い、装飾体20が基端部21を中心に揺動する。尚、このような装飾体20については、その揺動に連動して羽や嘴等の各部が駆動するように構成することも可能である。基端部21、槓杆部22、弾性部材23、及び第1ソレノイド50は、所定のケース24の内部に収納されており、台座2に対しては、ケース24を固定している。
【0011】
図4に示すように、笛体30は、所定のリード構造を備えた管状のものであり、スライダ部31を移動することによりその管長が変化して、音程調整がなされる構成となっている。笛体30の内部には、スライダ部31を外部に向って付勢する弾性部材が収納されており、スライダ部31は、笛体30の一方の端部から突出しており、弾性部材を圧縮しつつ外部から押し込むように移動させる。スライダ部31を押す力が解除されると、スライダ部31は圧縮された弾性部材の弾性力にて元の位置に復帰する。
【0012】
鞴40は、笛体30の他方の端部(空気を吹き込む側の端部)に装着されている。この鞴40は、所定の弾性力を有するゴム製のものであって、内部に空気を取り込むノズル41を備え、ノズル41の先端を押すとノズル41が塞がれつつ体積が変化して、笛体30に空気を吹き込む構成となっている。ノズル41の先端を押す力が解除されると、その弾性力にてノズル41から空気を取り込むととに形状が復元する。尚、鞴40の内部には、復元力を補完する弾性部材を設けてもよい。
【0013】
第2ソレノイド60は、その可動鉄芯部61を鞴40のノズル41に対して移動する。第2ソレノイド60が通電されると、ノズル41が可動鉄芯部61に押されて笛体30に空気が吹き込まれ、笛体30が鳴る。通電が解除されるとノズル41を押す力も解除され、鞴40が復元する。
【0014】
また、第3ソレノイド70は、その可動鉄芯部71を笛体30のスライダ部31に連結されている。第3ソレノイド70が通電されると、スライダ部31が可動鉄芯部71に押されて笛体30の内部に押し込まれ、笛体30の音程が変化する。通電が解除されると、スライダ部31を押す力も解除され、スライダ部31が元の位置に復帰する。笛体30の音程は、変化前の状態に戻る。
【0015】
支持体80は、笛体30を支持する支持部81、第2ソレノイド60を支持する支持部82、第3ソレノイドを支持する支持部83を備えたプレート状の部材である。支持体80にて笛体30及びこれを操作する各部材をユニット化することにより、製造及びメンテナンスの容易化を達成している。特に本例の場合、第2ソレノイド60の可動鉄芯部61と、第3ソレノイド70の可動鉄芯部71は、それらの移動方向が一直線上に並ぶように配置している。このような構成によると、第2ソレノイド60及び第3ソレノイド70の駆動に伴う各部材の機械的ストレスが低減されるという利点がある。
【0016】
以上説明した本例の発音駆動装置1によると、笛体30による発音にあわせて装飾体20を駆動させることができ、且つその笛体30の音程を適宜変化させることができる。例えば、第1ソレノイド50及び第2ソレノイド60を断続的に通電すれば、小鳥がピピピッとさえずりながら動く様子を醸し出すことができる。更に、第3ソレノイド70を通電すれば、その小鳥の鳴き声が変化する。各ソレノイド50,60,70を通電するタイミングは任意に設定することができるので、小鳥の動作も変化に富んだものとなる。
【0017】
また、装飾体20と鞴40とを同時に駆動するもであれば、それらを共通のソレノイドにて駆動することも可能であるところ、本例では、あえてそのような構成を回避している。つまり、装飾体20と鞴40とをそれぞれ個別のソレノイドにて駆動することにより、機械的連結によってそれらのレイアウトが制限されてしまうという不都合を回避している。かかる構成は、時計に組み込む装置として、配置の自由度を向上するとともに組み付けを容易化するという点で極めて有効である。特に近年、時計のデザインや機能は益々多様化される傾向にあり、本例の構成は、稠密化及び複雑化する時計設計の現状に対処するものとして提案された次第である。尚、本例における各部の構成は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において適宜に設計変更が可能であり、図例説明したものに限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の発音駆動装置は、時計を装飾する装置として好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係り、発音駆動装置を設けた時計を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例に係り、通電回路の説明図である。
【図3】本発明の実施例に係り、装飾体及び第1ソレノイドを示す正面図である。
【図4】本発明の実施例に係り、(a)は笛体、鞴、第2ソレノイド、及び第3ソレノイドを示す上面図であり、(b)はその正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 時計
2 台座
3 時刻表示部
4 透明カバー
5 電池
6 制御部
10 発音駆動装置
20 装飾体
21 基端部
22 槓杆部
23 弾性部材
24 ケース
30 笛体
31 スライダ部
40 鞴
50 第1ソレノイド
51 可動鉄芯部
60 第2ソレノイド
61 可動鉄芯部
70 第3ソレノイド
71 可動鉄芯部
80 支持体
81 支持部
82 支持部
83 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾体と、音程調整用のスライダ部を備えた笛体と、前記笛体に空気を送る鞴と、前記装飾体を駆動する第1ソレノイドと、前記鞴を駆動する第2ソレノイドと、前記スライダ部を駆動する第3ソレノイドと、前記第1ソレノイド、前記第2ソレノイド、及び前記第3ソレノイドをそれぞれ所定のタイミングで通電する制御部とを備え、前記第1ソレノイドと前記第2ソレノイドとを同時に通電するようにしたことを特徴とする発音駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の発音駆動装置を設けてなる時計であって、前記装飾体を外部から見える位置に配置するとともに、前記笛体、前記鞴、前記第2ソレノイド、及び前記第3ソレノイドを支持体に支持し、それらを外部から見えない位置に配置したことを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−134176(P2009−134176A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311447(P2007−311447)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000115773)リズム時計工業株式会社 (208)