説明

白乳菓の製造方法

【課題】 焼き表面部が白くてベタツキ感がなく、食感が良好で日持ちの良い乳菓及び該乳菓の製造方法を提供すること。
【解決手段】 澱粉類を実質的に含まず、生地中の小麦粉100重量部に対して、白餡55〜65重量部、卵20〜30重量部、水飴0〜5重量部、油脂16〜24重量部、加糖練乳10〜15重量部、砂糖20〜25重量部、トレハロース20〜25重量部、膨張剤1〜5重量部を含む生地に餡類を包餡後、175〜178℃で、15〜20分間焼成することを特徴とする白乳菓の製造方法に従って乳菓を製造すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き表面部の白い乳菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に乳菓と言われる菓子は、乳製品を主体にして作られるが、焼成することで焼き色が付き、乳のイメージとは逆行した商品となっていた。これを防ぐには、蒸して作る方法(特許文献1、特許文献2)があるが、日持ち性が悪いなどの問題が見られた。また、近年、白い鯛焼きが人気を集め、その製造用ミックス粉(特許文献3)も販売されているが、製造方法としては、専用型を使用した両面焼きで焼成時間は4分程度と短いこと、加工処理した各種澱粉を用いることなどにより、焼き色を抑えるようにしている。しかしそのため、生地表面色は白いものの生焼けであったり、老化が生じ易くなって食感が損なわれている。こういったことから、日持ち性のある白い外観をした、食感の良好な乳菓を製造するのは難しいのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−131544号公報
【特許文献2】特開平11−289988号公報
【特許文献3】特開2004−321182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、焼き表面部が白くてベタツキ感がなく、食感が良好で日持ちの良い乳菓の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、今回発明した所定の配合、製造方法を用いて焼成してなる乳菓を作製することで、焼き表面部を白くすることができることを見出し、見た目、食感ともに満足のゆく乳菓を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第一は、澱粉類を実質的に含まず、生地中の小麦粉100重量部に対して、白餡55〜65重量部、卵20〜30重量部、水飴0〜5重量部、油脂16〜24重量部、加糖練乳10〜15重量部、砂糖20〜25重量部、トレハロース20〜25重量部、膨張剤1〜5重量部、を含む生地に、包餡機を使用して餡類を包餡後、175〜178℃で、15〜20分間焼成することを特徴とする白乳菓の製造方法に関する。好ましい実施態様は、生地中の小麦粉100重量部に対して、マーガリンを、油脂分が16〜24重量部になるよう含有する上記記載の白乳菓の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従えば、焼き表面部が白くてベタツキ感がなく、食感が良好な乳菓の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1(右側)及び比較例1(左側)に係る乳菓の表面の焼き色を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の白乳菓の製造方法は、澱粉類を実質的に含まず、特定量の白餡、卵、水飴、油脂、加糖練乳、砂糖、トレハロース、膨張剤および香料を含む生地を、包餡機を使用して餡類を包餡後、焼成してなる。尚、ここで言う包餡の割合は、外生地(乳菓生地)100重量部に対し、内生地(餡類)は85〜120重量部であり、1個当たりの外生地(乳菓生地)量は25〜30gである。
【0010】
本発明による白乳菓とは、乳製品、小麦粉、油脂、砂糖、卵、餡を主体とする生地を用いて焼成して得られる乳菓で、焼成後の生地表面の色が通常の菓子よりも白いことが特徴である。ここで言う生地表面が白いとは、一般的な焼き菓子に見られるメイラード反応などによる褐色化が少なく、焼成前の生地の色調に近い状態を指す。焼成の温度は通常の180℃よりやや低めに調整して焼くのが好ましく、175〜178℃がより好ましい。175℃より低いと、生地表面色は白いが生焼けの場合があり、178℃より高いと生地表面色の白さが失われる場合がある。焼成時間は、15〜20分間が好ましい。15分間より短いと、生地表面色は白いが生焼けの場合があり、20分間より長いと生地表面色の白さが失われる場合がある。
【0011】
また本発明の白乳菓には、実質的に澱粉類を含まず、即ち成分表示の必要な単品の澱粉類を含まない。その理由は、単品の澱粉類が含まれて、生地中の澱粉が増えすぎると、焼き色を抑えられるが、経時的に老化が生じ易くなり、食感が損なわれる場合があるからである。従って、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して、単品の澱粉の含有量は0.5重量部以下が好ましく、0重量部がより好ましい。
【0012】
本発明における小麦粉は、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、特級薄力粉等が挙げられるが、中でも蛋白量の少ない薄力粉、特級薄力粉が好ましい。
【0013】
本発明における白餡は、特に限定はしないが、通常の大豆手亡餡が好ましい。白餡の含有量は、白乳菓に含まれる小麦粉100重量部に対して、55〜65重量部が好ましい。白餡の含有量が55重量部より少ないと、生地が硬くなる場合があり、65重量部より多いと生地が軟化する場合がある。
【0014】
本発明における卵は、特に限定はしないが、液全卵、生卵黄、生卵白、凍結卵黄、凍結卵白等が挙げられ、中でも液全卵を用いることが好ましい。卵の含有量は、小麦粉100重量部に対して20〜30重量部が好ましく、より好ましくは22〜28重量部である。30重量部より多いと、生地が軟化する場合がある。また、20重量部より少ないと、風味が乏しく、食感は硬くなり好ましくない場合がある。
【0015】
本発明における油脂の種類は、特に限定はしないが、牛脂、豚脂、バターなどの動物油、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油などの植物油、それらをエステル交換、分別、硬化したものを、単独或いは2種以上混合したものが挙げられるが、中でも常温で固体の油脂が好ましい。油脂の具体例としては、例えば「コンセブールガトー」(商品名、株式会社カネカ社製)等が挙げられる。油脂の含有量は、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して16〜24重量部が好ましく、より好ましくは18〜22重量部である。油脂量が16重量部より少ないと、生地の粘度が上がり、食感も硬くなる場合がある。24重量部より多いと、保形性や火通りが悪くなり、食感もねちゃつく場合がある。そして、上記範囲の油脂を含有すると、しっとりとした口溶けのよい食感を生地に付与することが容易にできる。
【0016】
本発明における加糖練乳は、特に限定はしないが、全脂加糖練乳が好ましい。加糖練乳の含有量は、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して、10〜15重量部が好ましい。10重量部より少ないと、乳風味に欠ける場合がある。また、15重量部より多いと、乳風味が強くなる場合がある。
【0017】
本発明における砂糖は、上白糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、液糖等の一般的な糖質であればよいが、焼き色を抑える為、メイラード反応による褐変の少ない水飴、トレハロースなどの非還元糖を併用するのが好ましく、トレハロースの併用がより好ましい。砂糖の含有量は、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して20〜25重量部が好ましく、より好ましくは22〜23重量部である。砂糖の含有量が20重量部より少ないと、甘さの足りない、淡白な味になる場合がある。また25重量部より多いと、甘さが強く、濃厚な味になりすぎる場合がある。
【0018】
本発明におけるトレハロースは、特に限定はしないが、例えば「トレハオース」(商品名、林原(株)社製)等が挙げられる。トレハロースの含有量は、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して、20〜25重量部が好ましい。トレハロースの含有量が20重量部より少ないと、焼き色が付き易くなる場合があり、25重量部より多いと甘さが足りない場合がある。
【0019】
本発明の白乳菓の生地には、必要に応じて水飴を含有することができ、その含有量は糖分換算で75重量%、内麦芽糖がメインとなり、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して0〜5重量部が好ましい。水飴の含有量が5重量部を越えると、白乳菓の生地表面のベタツキ感が問題となる場合がある。
【0020】
本発明における膨張剤は、特に限定はしないが、遅効性のものが好ましい。膨張剤の含有量は、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して、1〜5重量部が好ましい。1重量部より少ないと、膨らみが悪い場合がある。また、5重量部より多いと、風味が損なわれる場合がある。
【0021】
本発明における香料は、特に限定はしないが、バニラ系が好ましい。香料の含有量は、白乳菓の生地に含まれる小麦粉100重量部に対して、1〜2重量部が好ましい。1重量部より少ないと、風味が乏しい場合がある。また、2重量部より多いと、風味が強い場合がある。
【0022】
本発明における生地の製法は、例えば以下の手順で行う。まず、所定量の油脂、砂糖、トレハロースを加え混合する。次に、白餡、加糖練乳、卵、水飴を所定量加えて混合する。最後に、所定量の予め篩った小麦粉、膨張剤と、香料を順次加え、均一に混合する。得られた生地は包餡機を使って餡類を包餡し、温度175〜178℃のオーブンで、15〜20分間焼成することにより、焼き表面部が白い乳菓を得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0024】
<色差計測定>
実施例・比較例で得られた乳菓の生地表面の色を、コニカミノルタ社製色彩色差計「K400」を使用して、測定ヘッドをサンプル表面に押しつけてL値、a値、b値を測定し、更には色差ΔL、Δa、Δb及び総合色差ΔEを算出した。
【0025】
<焼成後生地表面の色評価(目視)>
実施例・比較例で得られた乳菓を目視で観察し、以下の基準で生地表面の色を評価した。◎:焼き色を一切感じず真っ白である、○:やや焼き色を感じるが、ほぼ真っ白である、△:焼き色を感じ、真っ白ではない、×:焼き色があり、白さを殆ど感じない。
【0026】
<焼成後生地表面のベタツキ評価>
実施例・比較例で得られた乳菓を目視で観察し、以下の基準で生地表面のベタツキ感を評価した。◎:触っても全くベタツキを感じない、○:ほとんどベタツキを感じない、△:ベタツキは感じられるが、顕著ではない、×:顕著にベタツキが感じられる。
【0027】
<食感評価>
実施例・比較例で得られた乳菓を熟練した10人のパネラーに食べてもらい、その際の食感を以下の基準で評価してもらい、結果を集約した。◎:ねちゃつきはない、○:ねちゃつきはあるが軽微である、△:ねちゃつく、×:顕著にねちゃつく。
【0028】
(実施例1)
室温にてグラニュー糖22.5部、トレハロース22.5部、マーガリン((株)カネカ製「コンセブールガトー」、油分:80%)22.5部を加えて混合した。次に、室温にて全卵25部、加糖練乳10.5部、白餡62.5部、水飴2.5部、香料(バニラ系)1.0部を加え混合した。最後に、室温にて薄力粉(商品名:バイオレット、日清製粉(株)社製)100部、膨張剤1.0部を一緒に篩い加え、均一になるまで混練した。得られた生地は包餡機を使って餡類を包餡し、これを鉄板に並べ、175℃で20分間焼成した。焼成後の菓子は、焼き色、形状、食感の全てが良好な乳菓であった。それらの結果は、表1にまとめる。また、焼き色については写真も示す(図1)。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例2)
実施例1において、グラニュー糖を配合せず、トレハロースの量を45重量部にした以外は、同様の方法にて乳菓を作製した。得られた乳菓は、焼き色は白いが、甘さが不足した。
【0031】
(比較例1)
実施例1において、トレハロース、水飴をグラニュー糖に置き換えた以外は、同様の方法にて乳菓を作製した。得られた乳菓は、焼き色は白くならなかった(図1)。
【0032】
(比較例2)
実施例1において、マーガリンを除いた以外は、同様の方法にて乳菓を作製した。得られた乳菓は、焼き色は白いが、食感は硬く、口溶けも悪くなった。
【0033】
(比較例3)
実施例1において、トレハロースを水飴に置き換えた以外は、同様の方法にて乳菓を作製した。得られた乳菓は、焼き色は白いが、表面がべたついた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類を実質的に含まず、生地中の小麦粉100重量部に対して、白餡55〜65重量部、卵20〜30重量部、水飴0〜5重量部、油脂16〜24重量部、加糖練乳10〜15重量部、砂糖20〜25重量部、トレハロース20〜25重量部、膨張剤1〜5重量部、を含む生地に、包餡機を使用して餡類を包餡後、175〜178℃で、15〜20分間焼成することを特徴とする白乳菓の製造方法。
【請求項2】
生地中の小麦粉100重量部に対して、マーガリンを、油脂分が16〜24重量部になるよう含有する請求項1記載の白乳菓の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−152066(P2011−152066A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14697(P2010−14697)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】