説明

白化作用が低減されたポリアミン、およびエポキシ樹脂用硬化剤としてのその使用

本発明は、新規な式(I)または式(II)のポリアミンA1に関する。これらのポリアミンは、容易に入手可能な原材料から容易に合成することができ、第一級アミノ基を全く含まないかまたはほんのわずかな含量でしか含まず、したがって、いかなる白化作用(blushing effect)もほとんど全く示さない。これらのポリアミンの粘度は、ポリアミンA1がベースとするポリアミンのポリアミン/ポリエポキシド付加体と比べて、比較的低い。新規なポリアミンA1は、ベンジルアルコールを全く含まず、白化作用を全く引き起こさないエポキシ樹脂組成物の配合を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン類、およびエポキシ樹脂用硬化剤としてのその使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な種類のアミン類が、エポキシ樹脂用硬化剤として使用されている。これらのアミン硬化剤の大部分は、第一級アミノ基を主として含有しており、したがって、これらが大気からの二酸化炭素と共に安定なカーボネート塩またはカルバメート塩を形成するという大きな欠点を有している。第一に、このことは、これらの硬化剤を大気に曝した状態で貯蔵することができないこと、あるいはこれらの硬化剤が容器内で外皮(crust)を形成することを意味する。第二に、これらの硬化剤を(エポキシ樹脂と混合した後硬化中に)コーティング剤として使用する場合、このコーティング剤もCO2を取り込み、曇りまたは染みから不完全な硬化に亘る問題を有する審美的に不満足な粘着性の表面などの望ましくない作用を引き起こし得る。これらの作用は、当業者に「白化(blushing)」と呼ばれている。
【0003】
これらの欠点を緩和し、硬化剤の粘度を低下させるために、このようなアミン硬化剤は、大量のベンジルアルコールを含有することが多い。しかし、ベンジルアルコールはその固有の欠点を有する。一方では、ベンジルアルコールは揮発性有機化合物(VOC)であり、他方では、大量のベンジルアルコールは、硬化したエポキシ樹脂の機械的特性に明らかな悪影響を与える。
【0004】
第二級アミノ基を有するポリアミンであって、エポキシ樹脂用硬化剤として好適なものは、CO2と共にいかなる安定なカーボネートも形成せず、したがって、一般に、白化をもたらさない。しかし、これらのポリアミンは入手が困難であり、その製造がしばしば高価である。
【0005】
アミン硬化剤の第一級アミノ基を第二級アミノ基に変換させるためにしばしば用いられる1つの選択肢は、ポリエポキシドとの付加体を形成させることである。しかし、形成された付加体は、通常非常に高い粘度を有し、良好な作業性を達成するために溶媒またはベンジルアルコールで希釈しなければならず、したがって、再び、VOC含有組成物をもたらし、揮発性溶媒の使用に伴う機械的挙動および/または安定性への悪影響を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エポキシ樹脂用硬化剤として好適なポリアミンを提供することである。ここでは、これらのポリアミンは、第一級アミノ基を全く含まないかまたはほんのわずかな含量でしか含まず、比較的低い粘度を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本発明のこの目的が、請求項1に特定したポリアミンによって達成されることを見出した。これらのポリアミンは、容易に入手可能な材料から、容易に実施可能な反応で合成することができる。この反応性を最適化し、白化を避けるためには、本出願によれば、ポリアミンが第一級アミノ基を全く有さないか、第一級アミノ基の含量がほんのわずかであることが有利である。このことは、合成において選択する化学量論によって簡単に達成することができる。本発明のポリアミンは、低い粘度において際だっていて、これにより、VOCを含まない硬化剤またはエポキシ樹脂組成物が実現可能になる。
【0008】
本発明のさらなる有利な実施態様は、その他の従属請求項または独立請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、第一の態様において、下記式(I)または(II)のポリアミンA1に関する。
【化1】

【0010】
式中、aは、1〜100の整数である。
さらに、Aは、a個の第一級アミノ基を除去した後のポリアミンB1のa価の基であって、第二級アミノ基または第一級アミノ基の形態の少なくとも3個のアミノ基を有し、前記第二級アミノ基の数が前記第一級アミノ基の数より多い基を表す。
【0011】
さらに、RおよびRが、それぞれ独立に、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表し、かつ、Rが、水素原子、または、1〜12個のC原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表すか、または
およびRが一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜8個のC原子、好ましくは5または6個のC原子を有する炭化水素環の一部である二価の炭化水素基を表し、かつ、Rが、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表すか、または
およびRが一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜8個のC原子、好ましくは5または6個のC原子を有する炭化水素環の一部である二価の炭化水素基を表し、かつ、Rが、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表すかのいずれかである。
【0012】
最後に、RおよびRは、それぞれ独立に、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表す。
【0013】
本明細書において、用語「ポリアミン」は、少なくとも2個の第一級または第二級アミノ基を有する化合物を意味する。
【0014】
本明細書において、用語「第一級」アミノ基は、有機基に結合したNH2基を意味し、用語「第二級」アミノ基は、一緒になって環の一部を形成していてもよい2個の有機基に結合したNH基を意味する。
【0015】
式(i)のアシルエナミノ基は、式(ii)および式(iii)の互変異性体と平衡状態にある。式(i)のアシルエナミノ基に言及するそれぞれの場合において、例え明示の言及がなくとも、式(ii)および式(iii)の互変異性体をも意味する。
【化2】

【0016】
本明細書において式中の点線は、それぞれの場合において、置換基とそれぞれの分子部分との間の結合を表す。
【0017】
本明細書において、A1、B1、B2、K1、K2、C1、C11、C2、C22などの表示は、読み易さおよび区別のし易さだけのために用いる。
【0018】
およびRは、好ましくは、それぞれメチル基を表す。
は、好ましくは、水素原子を表す。
およびRは、好ましくは、それぞれメチル基を表す。
文字aは、好ましくは、2〜100の整数を表す。
文字aは、好ましくは、1〜10の整数を表す。
文字aは、好ましくは、2〜10の整数を表す。
【0019】
aが、2以上の値を有することが好ましい。このような式(I)のポリアミンA1は、白化が全くないことまたは白化が少なくともかなり低減されていることによって際だっているからである。
【0020】
好ましくは、Aは、a個の第一級アミノ基を除去した後のポリアミンB1のa価の基であって、ポリアミンB1が、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、5〜7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(「高級エチレンポリアミン」、HPEA)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、および、平均分子量500〜2500g/モルを有するポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択される基を表す。
【0021】
とりわけ好ましくは、Aは、a個の第一級アミノ基を除去した後のポリアミンB1のa価の基であって、ポリアミンB1が、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、5〜7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(「高級エチレンポリアミン」、HPEA)、および、平均分子量500〜2500g/モルを有するポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択される基を表す。
【0022】
本発明のさらなる主題は、式(I)または(II)のポリアミンA1の製造方法であって、少なくとも1種の式(III)のポリアミンB1を、少なくとも1種の式(IV)のジケトンK1または式(V)のジケトンK2:
【化3】

と反応させ、この反応において、ジケトンK1またはK2を、前記ポリアミンの第一級アミノ基に対して化学量論比または化学量論比を下回る比で用いる方法である。
【0023】
式(III)、(IV)、および(V)において、A、a、R、R、R、R、およびRは、既に上述した意味を有する。
【0024】
各ジケトンは、ポリアミンB1の第一級アミノ基と反応し、水を脱離する。
【0025】
式(IV)のジケトンK1(α-ジケトン、1,3-ジケトンとも呼ばれる)の場合、式(I)のポリアミンA1が形成され、反応したジケトンK1の1モル当たり1モルの水が放出される。この反応は急速かつほぼ定量的に起こる。20℃〜120℃の範囲の温度で実施することが好ましい。
【0026】
式(V)のジケトンK2(γ-ジケトン、1,4-ジケトンとも呼ばれる)の場合、式(II)のポリアミンA1が形成され、反応したジケトンK2の1モル当たり2モルの水が放出される。この反応は「Paal-Knorrピロール合成」の名でも知られている。式(II)のポリアミンA1が形成される際、式(II’)で示すとおりの非環式形態が、中間体(または副生成物)として出現する。
【化4】

【0027】
式(II’)において、記号R、R、A、およびaは、既に上述した意味を有する。
【0028】
ピロール基を形成する環化反応(縮合反応)は、主として、反応混合物を、高温、例えば60℃〜120℃の温度で、撹拌、例えば数時間の間撹拌すると起こる。
【0029】
式(I)のポリアミンA1を、式(IV)のジケトンK1の代わりに式(IVa)のケトンを用いることによって調製することも可能である。ここでは、少なくとも1種の式(III)のポリアミンB1を、少なくとも1種の式(IVa)のケトンと反応させ、この反応において、式(IVa)のケトンを前記ポリアミンの第一級アミノ基に対して化学量論比または化学量論比を下回る比で用いる。この場合、第一級アミノ基のアルキル化が、水の脱離なしに起こる。
【化5】

【0030】
式(IVa)において、記号RおよびRは、既に上述した意味を有する。
【0031】
好ましいポリアミンB1は、少なくとも1個の第一級アミノ基に加えて、第一級または第二級のアミノ基の形態のアミノ基を少なくとも3個有する。以下のポリアミン類は、ポリアミンB1として特に好適である。
−2個の第一級アミノ基と少なくとも2個の第二級アミノ基とを有する脂肪族ポリアミン。例えば、「ポリアルキレンアミン」、例えば、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、5〜7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(「高級エチレンポリアミン」、HPEA)、およびN,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン。このようなポリアルキレンアミン類は、例えば、1,2-ジクロロエタンおよびアンモニアによって、あるいは第一級ポリアミンのシアノエチル化もしくはシアノブチル化に次ぐ水素化によって合成する。
−「ポリエチレンイミン」(PEI)。これらは、エチレンイミンの重合によって誘導される分岐状高分子アミンである。好適なポリエチレンイミンは、典型的には、250〜25000g/モルの範囲の平均分子量を有し、第三級、第二級、および第一級アミノ基を有する。ポリエチレンイミンは、例えば、BASF社からLupasol(登録商標)の商標名、例えば、Lupasol(登録商標)FG、Lupasol(登録商標)G20、およびLupasol(登録商標)PR8515の下で入手可能である。
【0032】
好ましいポリアミンB1は、TETA、TEPA、PEHA、HEPA、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、および、500〜2500g/モルの平均分子量を有するポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択される。
【0033】
とりわけ好ましいポリアミンB1は、TEPA、PEHA、HEPA、および、500〜2500g/モルの平均分子量を有するポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択される。
【0034】
好適な式(IV)のジケトンK1は、特に、2,4-ペンタンジオン(=アセチルアセトン)、3-位がアルキル化された2,4-ペンタンジオン、したがって、特に、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン、3-プロピル-2,4-ペンタンジオン、3-イソプロピル-2,4-ペンタンジオン、3-ブチル-2,4-ペンタンジオン、3-tert-ブチル-2,4-ペンタンジオン、3-シクロヘキシル-2,4-ペンタンジオン、および3-フェニル-2,4-ペンタンジオン、1,1,1-トリフルオロ-2,4-ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオン、3,5-ヘプタンジオン、3,5-オクタンジオン、2,4-オクタンジオン、6-メチル-3,5-ヘプタンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、2,2,4,6,6-ペンタメチル-3,5-ヘプタンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、2-アセチルシクロペンタノン、2-アセチルシクロヘキサノン、2-ベンゾイルシクロペンタノン、および2-ベンゾイルシクロヘキサノンである。
【0035】
好ましいジケトンK1は、2,4-ペンタンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン、3-プロピル-2,4-ペンタンジオン、3-イソプロピル-2,4-ペンタンジオン、3-ブチル-2,4-ペンタンジオン、3-tert-ブチル-2,4-ペンタンジオン、3-シクロヘキシル-2,4-ペンタンジオン、3-フェニル-2,4-ペンタンジオン、3,5-ヘプタンジオン、6-メチル-3,5-ヘプタンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、2,2,4,6,6-ペンタメチル-3,5-ヘプタンジオン、2-アセチルシクロペンタノン、および2-アセチルシクロヘキサノンからなる群から選択される。
【0036】
2,4-ペンタンジオンが、ジケトンK1としてとりわけ好ましい。
【0037】
好適な式(V)のジケトンK2は、特に、2,5-ヘキサンンジオン(=アセチルアセトン)、3,4-ジメチル2,5-ヘキサンンジオン、1,2-ジベンゾイルエタン、1,4-ビス(2-フリル)-1,4-ブタンジオン、および2-(2-オキソプロピル)シクロペンタノンである。特に、2,5-ヘキサンジオンがジケトンK2として好ましい。
【0038】
式(I)または(II)のポリアミンA1は、容易に入手可能な原材料から簡易な方法で合成することができる。原材料は、エポキシ樹脂と反応可能なアミノ基を少なくとも3個有する。その第二級アミノ基の数は、第一級アミノ基の数より多い。こうしたポリアミンA1は、硬化剤、特にエポキシ樹脂用硬化剤として極めて好適である。
【0039】
ポリアミンA1は、さらに、第一級アミノ基を全く有さないか、第一級アミノ基の含量がほんのわずかである。特に、ポリアミンA1がベースとする相当するポリアミンB1と比較して、第一級アミノ基の含量がほんのわずかである。第一級アミノ基の含量が低いことは、同時に、高いNH2-当量質量を有することを意味する。したがって、ポリアミンA1は、大気からの二酸化炭素とほとんど反応しないかまたは全く反応せず、したがって、カーボネート塩および/またはカルバメート塩をほんのわずかしか形成しないかまたは全く形成しない。このような塩が形成されないことは、特に、コーティング用途において、ポリアミンA1をエポキシ樹脂用硬化剤として使用する場合に、非常に有利である。塩に関連する光学的および/または機械的欠陥、例えば、特に白化として知られる塗膜の曇りなどが、エポキシ樹脂の硬化中に起こり得ないからである。他方で、ポリアミンA1は、エポキシ基と反応可能なアミノ基を少なくとも3個有し、したがって、エポキシ基反応性官能基(「官能性」)が少なくとも3である。少なくとも3の官能性は、官能性2では鎖の伸長が起こるだけであり、官能性1では鎖の封鎖が起こるだけであるのに対して、硬化中に架橋をもたらすため、エポキシ樹脂用硬化剤には必須の官能性である。本発明に相当しないポリアミンは、したがって、例えば、トリエチレンテトラミン(TETA)と、ジケトンK1またはK2との1:2モル比の反応生成物である。この方法で反応したこれらのポリアミンは、第一級アミノ基を有しかつ第二級アミノ基を2個だけ有し、鎖の延長だけをもたらし、許容できない品質の膜をもたらすと考えられる。
【0040】
ポリアミンA1と、式(IV)のジケトンK1との反応から誘導された式(i)のアシルエナミノ基(または式(V)のジケトンK2との反応から誘導されたピロール基)は、水の存在下および高温(例えば、60℃など)下でも貯蔵安定性を有する。湿気の存在下でも、これらは、アシルエナミノ基のエナミン窒素が存在するにもかかわらず、エポキシ基と検出可能な程度には反応しない。アシルエナミノ基のエナミン窒素は、エナミン基上の水素原子がカルボニル酸素と安定な分子内水素結合を形成し得るビニル性のアミド基を表す。
【0041】
第一級アミノ基を多数有する従来技術のエポキシ樹脂用硬化剤は、相当量の希釈剤、特にベンジルアルコールと混合されることが多い。ベンジルアルコールも、エポキシ樹脂を用いる膜形成における白化を低下させる。しかし、ベンジルアルコール含量を高くすると、例えば、硬化した膜の硬度を望ましくない程度にまで低下させる問題も引き起こし得る。加えて、ベンジルアルコールは揮発性有機化合物(VOC)である。エポキシ樹脂用硬化剤としてポリアミンA1を使用すると、ベンジルアルコール含量を大幅に低減した組成物またはベンジルアルコールを全く含まない組成物が可能になる。ポリアミンA1が、第一級アミノ基を全く有さないか、第一級アミノ基の含量がほんのわずかであるため、いかなる白化も問題もほとんど全くないからであり、かつ、ポリアミンA1が比較的低い粘度を有するためである。特に、ポリアミンA1は、ポリアミンA1がベースとする相当するポリアミンB1およびポリエポキシドの付加体と比較して、明確に低い粘度を有する。特に、ポリアミンA1は、ポリアミンA1がベースとする相当するポリアミンB1およびビスフェノールAエポキシ樹脂の付加体と比較して、明確に低い粘性を有する。これらの付加体は、溶媒または希釈剤を加えた場合にのみ容易に取り扱うことができる。
【0042】
式(I)または(II)のポリアミンA1は、NH-基反応性基を有する物質に対する反応剤として使用することができる。NH-基反応性基は、例えば、イソシアネート、イソチオシアネート、シクロカーボネート、エポキシ、エピスルフィド、アジリジン、アクリル、メタクリル、1-エチニルカルボニル、1-プロピニルカルボニル、マレイミド、シトラコンイミド、ビニル、イソプロペニル、およびアリル基である。ポリアミンA1は、上述した反応性基を少なくとも2個有する物質のための硬化剤、特に、ポリイソシアネートおよびポリエポキシドのための硬化剤として有利に使用することができる。ポリアミンA1は、とりわけ、エポキシ樹脂用硬化剤として好適である。ポリアミンA1は、エポキシ樹脂用硬化剤として好適な物質を追加的に含有する混合物の成分として使用することもできる。
【0043】
本発明のさらなる主題は、
(a) 式(I)または(II)のポリアミンA1(例えば、上述したものなど)少なくとも1種と、
(b) 第一級アミノ基または第二級アミノ基の形態の少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンB2少なくとも1種と
を含有する、硬化剤組成物に関する。
【0044】
以下のポリアミンは、ポリアミンB2として特に好適である:
−脂肪族、脂環式、または芳香脂肪族(arylaliyphatic)第一級ジアミン、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン(DMAP)、1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン)、1,6-ヘキサンジアミン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2、2、4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,2-、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(H12−MDA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン(M-MECA)、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミンすなわちIPDA)、2-、および4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサンならびにこれらの混合物、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA)、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、1、8-メンタンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ならびに、1,3-および1,4-キシリレンジアミン;
−エーテル基含有脂肪族第一級ジアミン、例えば、ビス(2-アミノエチル)エーテル、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-2,9-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミンおよびこれらのジアミンの高級オリゴまー、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン、および350〜5200の範囲の分子量を有する他のポリテトラヒドロフランジアミン、ならびに、ポリオキシアルキレンジアミン。ポリオキシアルキレンジアミンは、典型的には、ポリオキシアルキルエンジオールのアミノ化生成物であり、例えば、Jeffamine(登録商標)(ハンター社製)の名称の下で、ポリエーテルアミン(BASF社製)の名称の下で、あるいはPC Amine(登録商標)(Nitroil社製)の名称の下で入手することができる。特に好適なポリオキシアルキレンジアミンは、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)XTJ-511、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine ED-900、Jeffamine(登録商標)ED-2003、Jeffamine(登録商標)XTJ-568、Jeffamine(登録商標)XTJ-569、Jeffamine(登録商標)XTJ-523、Jeffamine(登録商標)XTJ-536、Jeffamine(登録商標)XTJ-542、Jeffamine(登録商標)XTJ-559、Jeffamine(登録商標)EDR-104、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)EDR-176;Polyetheramine D 230、ポリエーテルアミンD 400、ポリエーテルアミンD 2000、PC Amine(登録商標)DA 250、PCアミン(登録商標)DA 400、PCアミン(登録商標)DA 650およびPC Amine(登録商標)DA 2000である;
−脂肪族、脂環式、または芳香脂肪族(arylaliyphatic)第一級トリアミン、例えば、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-アミノプロピル)アミン、トリス(3つのアミノプロピル)アミンなど;
−第一級ポリオキシアルキレントリアミン、典型的には、ポリオキシアルキレントリオール類のアミノ化生成物であり、例えば、Jeffamine(登録商標)(Huntsman社製)の商標名の下で、ポリエーテルアミン(BASF社製)の名称の下で、PC Amine(Nitroil社製)の名称の下で、例えば、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000;ポリエーテルアミンT403、ポリエーテルアミンT5000;およびPC Amine(登録商標)TA 403、PC Amine(登録商標)TA 5000などの名称の下で入手可能であるもの;
−第二級および第一級アミノ基を有するポリアミン、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(BHMT)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、N3-(3-アミノペンチル)-1,3-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン;ならびに、これらのポリアミンに加えて、好適なポリアミンB1として既に上述したもの;
−第三級アミノ基を有するポリアミン、例えば、N,N’-ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)エチルアミン、N、N-ビス(3-アミノプロピル)プロピルアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)-2-エチルヘキシルアミンなど、ならびに、天然の脂肪酸から誘導された脂肪族アミンの二重シアノエチル化およびその後の還元の生成物、例えば、N,N-ビス(3-アミノプロピル)ドデシルアミンおよびN,N-ビス(3-アミノプロピル)タロウアルキルアミン(Triameen(登録商標)Y12DおよびTriameen(登録商標)YT(Akzo Nobel社製)として入手可能)など;
−第二級アミノ基を有するポリアミン、例えば、N,N’-ジブチルエチレンジアミン; N,N’-ジ(tert-ブチル)エチレンジアミン、N,N’-ジエチル-1,6-ヘキサンジアミン、1-[(1-メチルエチル)アミノ]-3-[(1-メチルエチル)アミノメチル)]-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(Huntsman社製のJefflink(登録商標)754)、N4-シクロヘキシル-2-メチル-N2-(2-メチルプロピル)-2,4-ペンタンジアミン、N,N’-ジアルキル-1,3-キシリルエンジアミン、ビス[4-(N-アルキルアミノ)シクロヘキシル]メタン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、N-アルキル化ポリエーテルアミン、例えば、Jeffamine(登録商標)のSD-231、SD-401、SD-404、およびSD-2001タイプ(Huntsman社製)など;
−さらに、「ポリアミドアミン類」。ポリアミドアミンは、モノカルボン酸もしくはポリカルボン酸、またはこれらのエステルもしくは無水物と、脂肪族、脂環式、または芳香族ポリアミンとの反応生成物であって、この反応においてポリアミンが化学量論的過剰量で用いられたものを意味する。通常、「二量体脂肪酸」を、ポリカルボン酸として用い、通常ポリアルキレンアミン、例えば、TETAを、ポリアミンとして用いる。商業的に入手可能なポリアミドアミンは、例えば、Versamid(登録商標)100、125、140、および150(Cognis社製)、Aradur(登録商標)223、250、および848(Huntsman社製)、Euretek(登録商標)3607、Euretek(登録商標)530(Huntsman社製)、Beckopox(登録商標)EH 651、EH 654、EH 655、EH 661、およびEH 663(Cytec社製)である。
【0045】
ポリアミンB2は、好ましくは、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン)、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミンすなわちIPDA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-キシリレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、ならびに、500〜5000g/モルの分子量を有するポリオキシアルキレンジオールのアミノ化から誘導されるエーテル基含有ジアミン(特に、Jeffamine(登録商標)D-230およびJeffamine(登録商標)D-400)からなる群から選択される。
【0046】
硬化剤組成物は、アミン/ポリエポキシド付加体をさらに含有することができる。特に、ポリアミンの第一級および第二級のアミノ基が、ポリエポキシドのエポキシ基に対して化学量論的に過剰量で存在するような方法で反応が実施される場合に、ポリアミンB1またはポリアミンB2が部分的にポリエポキシドと反応して付加体を形成し得る。
【0047】
本明細書において、用語「ポリエポキシド」は、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。「ジエポキシド」は、2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
【0048】
本明細書において、用語「エポキシド基」または「エポキシ基」は、以下の構造要素:
【化6】

を意味する。
【0049】
ジエポキシドは、付加体、特に芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/F液体樹脂など)のジグリシジルエーテルなどの調製のためのポリエポキシドとして特に好適である。
【0050】
式(I)もしくは(II)のポリアミンA1、または上述したものなどの硬化剤組成物は、ポリアミンA1が少なくとも1種のエポキシ樹脂組成物のための硬化剤として働くエポキシ樹脂組成物の成分として有利に使用することができる。
【0051】
本発明のさらなる主題は、したがって、硬化剤成分C1および樹脂成分C2からなる2成分形エポキシ樹脂組成物である。
【0052】
2成分形エポキシ樹脂組成物は、特に、接着剤、シーリングコンパウンド、ポッティングコンパウンド、コーティング剤、床被覆剤、塗料、ラッカー、プライマーもしくはプライマーコートとして使用することができ、好ましくはコーティング剤、特に床コーティング剤として使用することができる。
【0053】
硬化剤成分C1は、少なくとも1種の式(I)または(II)のポリアミンA1を、場合により上述した硬化剤組成物の1つの形態であってもよい形態で、含有する。
【0054】
樹脂成分C2は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有する。
【0055】
エポキシ化学において従来用いられているエポキシ樹脂が、このエポキシ樹脂として好適である。これらは、当分野で公知の方法、例えば、相当するオレフィンの酸化によって、またはエピクロロヒドリンと、相当するポリオール、ポリフェノール、またはアミンとの反応によって得られる。
【0056】
とりわけ好適なエポキシ樹脂は、以下の「液体ポリエポキシ樹脂」(「液体樹脂」と呼ぶ)である。これらは、25℃より高いガラス転移温度を有し且つ25℃で自由流動性粉末に粉砕することができる「固体樹脂」とは対照的に、通常25℃より低いガラス転移温度を有する。
【0057】
1つの実施態様では、液体樹脂は、芳香族ポリエポキシドである。例えば、式(VI)の液体樹脂が、本目的に好適である。
【化7】

【0058】
式中、R’基およびR’’基は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基のいずれかであり、sは、平均で、0〜1の数を表す。好ましい式(VI)の液体樹脂は、sが、平均で、0.2未満の数を表す液体樹脂である。
【0059】
式(VI)の液体樹脂には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルが含まれる。ここで、Aはアセトンを表し、Fはホルムアルデヒドを表し、これらは、これらのビスフェノール類の製造のための出発原料として用いられるものである。したがって、式(VI)中のR’およびR’’として、液体ビスフェノールA樹脂は、メチル基を有し、液体ビスフェノールF樹脂は、水素原子を有し、液体ビスフェノールA/F樹脂は、メチル基と水素原子との両方を有する。ビスフェノールFの場合、位置異性体、特に、2,4’-および2,2’-ヒドロキシフェニルメタンから誘導された異性体も存在し得る。
【0060】
さらに好適な芳香族液体樹脂は、以下の物質のグリシジル化生成物である。
−ジヒドロキシベンゼン誘導体、例えば、レゾルシノール、ヒドロキノン、およびピロカテコール;
−他のビスフェノール類またはポリフェノール類、例えば、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノール
C)、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールP)、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、ジヒドロキシジフェニル(DOD)、4,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシナフト-1-イル)メタン、ビス(4-ヒドロキシナフト-1-イル)メタン、1,5-ジオキシナフタレン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン;
−酸性条件下で得られるフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応生成物、例えば、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラック;
−芳香族アミン、例えば、アニリン、トルイジン、4-アミノフェノール、4,4-メチレンジフェニルジアミン(MDA)、4,4’-メチレンジフェニルジ(N-メチル)アミン、4,4’-[(1,4-フェニレン)-ビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンP)、4,4’-[(1,3-フェニレン)ビス(1-メチルエチリデン]) ビスアニリン(ビスアニリンM)。
【0061】
好適なエポキシ樹脂はまた、脂肪族または脂環式ポリエポキシド、例えば、
−飽和または不飽和の、分岐または非分岐の、環状または開鎖状のC〜C30ジオールのグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコールグリコール;
−三官能性または四官能性の、飽和または不飽和の、分岐または非分岐の、環状または開鎖状のポリオール(例えば、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、またはグリセリン、並びに、アルコキシル化グリセリンまたはアルコキシル化トリメチロールプロパンなど)のグリシジルエーテル;
−水素化ビスフェノールA、F、A/F液体樹脂、または、水素化ビスフェノールA、F、A/F液体樹脂のグリシジル化生成物;
−アミドまたは複素環性窒素の塩基のN-グリシジル誘導体、例えば、トリグリシジルシアヌレートおよびトリグリシジルイソシアヌレート、ならびに、エピクロロヒドリンとヒダントインとの間の反応生成物である。
【0062】
好適なエポキシ樹脂はまた、ビスフェノールA、F、A/F固体樹脂であり、これらは、下付き文字sが2〜12の値を有することに加えて、25℃より高いガラス転移温度を有することを除いて、既に上述した式(VI)の液体樹脂と同様に調製することができる。
【0063】
最後に、好適なエポキシ樹脂は、オレフィンの酸化から誘導されたエポキシ樹脂でもある。例えば、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロドデカジエン、シクロドデカトリエン、イソプレン、1,5-ヘキサジエン、ブタジエン、ポリブタジエン、またはジビニルベンゼンの酸化からのエポキシ樹脂である。
【0064】
好ましいエポキシ樹脂は、固体または液体のビスフェノールA、F、A/F樹脂、例えば、Dow社、Huntsman社、およびHexion社から商業的に入手可能なものなど、
【0065】
エポキシ樹脂は、「反応性希釈剤」を含有していてよい。好適な反応性希釈剤は、モノ-およびポリ-エポキシド、例えば、一価または多価のフェノールのグリシジルエーテル、および脂肪族または脂環式アルコールのグリシジルエーテル、例えば、特に、既に上述したジオールまたはポリオールのポリグリシジルエーテル、ならびに、特に、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ならびに、天然のアルコール類のグリシジルエーテル、例えば、C〜C10アルキルグリシジルエーテル、C12〜C14アルキルグリシジルエーテルである¥。エポキシ樹脂に反応性希釈剤を添加することによって、粘度が低下するだけでなく、(エポキシ樹脂組成物が硬化した状態で)低められたガラス転移温度および低められた機械的特性がもたらされる。
【0066】
式(I)または(II)のポリアミンA1は、2成分形エポキシ樹脂組成物において、系内(in-situ)での方法によって製造することもできる。ここで、ポリアミンA1がベースとしたポリアミンB1は、エポキシ樹脂を混合した直後に、最初に式(IV)のジケトンK1と接触することになるかまたは式(V)のジケトンK2と接触することになる。したがって、相当する式(I)または(II)のポリアミンA1が、系内で、すなわちエポキシ樹脂中で直接形成される。
【0067】
本発明のさらなる主題は、したがって、硬化剤成分C11と、樹脂成分C22とからなる2成分形エポキシ樹脂組成物であって、既に上述したエポキシ樹脂組成物と同様に使用することができる組成物である。
【0068】
硬化剤成分C11は、少なくとも1種の式(III)のポリアミンB1を含有する。
【0069】
樹脂成分C22は、少なくとも1種の上述したエポキシ樹脂に加えて、式(IV)のジケトンK1または式(V)のジケトンK2の少なくとも1種をさらに含有する。ここで、ジケトンは、ポリアミンB1の第一級アミノ基に対して化学量論比または化学量論比より小さい比で存在し、したがって、両成分が混合されると、少なくとも1種の式(I)または(II)のポリアミンA1が形成される。
【0070】
硬化剤成分C1またはC11、および樹脂成分C2またはC22の両方が、例えば以下のような他の助剤および添加剤を含有していてもよい:
−非反応性希釈剤、溶媒、または皮膜形成性助剤、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、2-エトキシエタノール、2-エトキシエチルアセテート、またはベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ビスフェノール類、およびフェノール樹脂、ジフェニルメタン、ジイソプロピルナフタレン、ならびに、石油留分(例えば、Solvessoタイプの石油留分(Exxon社製)など)、芳香族炭化水素樹脂、セバケート、フタルレート、有機リン酸エステル、およびスルホン酸エステル、およびスルホンアミド;
−反応性希釈剤および増量剤、例えば、エポキシ基含有反応性希釈剤(例えば、既に上述したものなど)、エポキシ化大豆油、ブチロラクトン、トリフェニルホスファイト、およびポリアミド類、カルボキシル基を有するポリマー、イソシアネート類、反応性基含有シリコーン類、ポリスルフィド類、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、およびポリウレタン;
−ポリマー、例えば、ポリアミド、ポリスルフィド、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PUR)、スチレン/ブタジエンコポリマー、不飽和モノマー(特に、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、ビニルアセテート、およびアルキル(メタ)アクリレートを含む群からの不飽和モノマー)のホモポリマーまたはコポリマー、特に、クロロスルホン化ポリエチレンおよびフッ素含有ポリマー、スルホンアミド変性メラミンなど;
−熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、およびアスファルトなど;
−無機または有機フィラー、例えば、場合に脂肪酸(例えば、ステアレート)でコーティングされていてもよい粉砕または沈降炭酸カルシウム、バライト(重晶石)、タルク、石英紛末、石鋭砂粒、ドロマイト、ウォラストナイト、カオリン、マイカ(カリウムアルミニウムシリケート)、モレキュラーシーブ、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、ケイ酸、セメント、石膏、フライアッシュ、カーボンブラック、グラファイト、金属紛(例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、スチールなど)、PVC紛、または中空球;
−繊維、例えば、プラスチックファイバーまたはガラスファイバー;
−顔料、例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄;
−アミノ基とエポキシ基との間の反応を加速する促進剤、例えば、酸、または加水分解して酸を形成し得る化合物、例えば、有機カルボン酸、(例えば、酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸、乳酸など)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、または4-ドデシルベンゼンスルホン酸など)、スルホン酸エステル、他の有機酸または無機酸(例えば、リン酸、または前述した酸および酸エステルの混合物など)、第三級アミン(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、または2,4,6-トリス-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなど)、これらの第三級アミンの塩、四級アンモニウム塩(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなど)、ならびにホスファイト(例えば、トリフェニルホスファイトなど);
−レオロジー改質剤、例えば、特に、増粘剤、例えば、層状シリケート(例えば、ベントナイトなど)、ヒマシ油の誘導体、水素化ヒマシ油、ポリアミド、ポリウレタン、尿素化合物、焼成ケイ酸、セルロースエーテル、および疎水性変性ポリオキシエチレン;
−接着促進剤、例えば、オルガノアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、または、メトキシ基の代わりにエトキシ基を有する相当するオルガノシラン;
−熱、光、およびUV放射線安定剤;
−難燃剤;
−界面活性剤、例えば、湿潤剤、流動性制御剤、脱気剤、または消泡剤;
−殺生物剤、例えば、殺藻剤、殺菌剤、またはかびの生成阻害剤。
【0071】
エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、5質量%未満、好ましくは2重量%未満のベンジルアルコールの含量を有する。エポキシ樹脂組成物は、特に、ベンジルアルコールを含まない。
【0072】
硬化剤成分C1またはC11、および樹脂成分C2またはC22は、それぞれ、それらの適用(application)前に、適切な容器または装置内で貯蔵することができる。例えば、ドラム、ホボック、バッグ、バケツ、キャニスター、カートリッジ、またはチューブ内で、数ヶ月〜1年またはそれ以上の期間の間、それぞれの特性がその用途に関連する程度に変化することなしに貯蔵することができる。
【0073】
硬化剤成分C1と、樹脂成分C2との間の混合比は、硬化剤成分C1のエポキシ基反応性基と、樹脂成分C2のエポキシ基との間の比が好適となるように選択することが好ましい。硬化前は、0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.1当量のエポキシ基活性NH水素を、エポキシ基1当量当たり存在させることが好ましい。
【0074】
硬化剤成分C11と、樹脂成分C22との間の混合比は、ジケトンK1またはK2と反応した後残っている硬化剤成分C11のエポキシ基反応性基と、樹脂成分C22のエポキシ基との間の比が好適となるように選択することが好ましい。ジケトンK1またはK2と反応した後であって硬化前に、エポキシ基1当量当たり0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.1当量のエポキシ基活性NH水素を存在させることが好ましい。
【0075】
質量部では、硬化剤成分C1またはC11と、樹脂成分C2またはC22との間の混合比は、通常、1:10〜10:1の範囲である。
【0076】
適用前または適用時に、適切な方法によって両成分を一緒に混合する。混合は、連続式であっても回分式であってもよい。適用前に混合を実施する場合には、成分の混合工程と適用工程との間に過度に長い時間が経過しないことを確実にしなければならない。これによって、例えば、基材への接着過程の遅延または不完全な接着などの問題が引き起こされ得るからである。
【0077】
硬化反応は、混合によって開始される。エポキシ樹脂組成物中に存在するエポキシ基反応性NH水素は、存在するエポキシ基と反応し、これによって、その後組成物が硬化する。したがって、本発明は、上述した2成分形エポキシ樹脂組成物の成分C1およびC2、または成分C11およびC22を混合することによって得られる硬化した組成物についても記述する。
【0078】
適用および硬化は、5℃〜50℃の範囲の温度にて実施することが有利である。
【0079】
硬化速度は、周囲温度および場合により存在させてもよい促進剤次第である。
【0080】
上述したエポキシ樹脂組成物の硬化中、典型的には、審美的に満足な皮膜(フィルム)が形成される一方、ポリアミンA1の代わりに相当するポリアミンB1を硬化剤として含有する組成物は、曇りおよび粘着性などの白化効果を及ぼす傾向がある。上述したエポキシ樹脂組成物の硬化した皮膜は、典型的には、透明かつ光沢があり、時にはわずかに不透明であり、かつ、大幅に粘着性がない。
【0081】
本エポキシ樹脂組成物は、接着剤、シーリングコンパウンド、ポッティングコンパウンド、コーティング剤、床被覆剤、塗料、ラッカー、プライマーもしくはプライマーコートとして使用することができ、その際、撥水性、腐食防止、耐化学性、ならびに/または、高い硬度および靭性が顕著である。これらは、土木建築、工業製品または消費財の製造または修理に使用することができる。
【0082】
本エポキシ樹脂組成物は、例えば「白化」などの硬化中の表面問題を起こす傾向が顕著に低い。白化問題は、とりわけ、表面に塗布されたエポキシ樹脂組成物が高い湿度で硬化される場合に現れる。水中に溶解したCO2が、硬化剤成分からの第一級アミノ基と反応して、カーボネート塩またはカルバメート塩を形成し得、これが、一方では硬化反応の化学量論を変化させ、結果としてエポキシ基の不完全な反応をもたらし、粘着性の表面に導く。他方では、形成された塩が表面に移行し、そこで、魅力のない染みまたは曇りの原因となる。本明細書において記述したエポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の式(I)または(II)のポリアミンA1を含有し、第一級アミノ基を全く有さないかわずかな数しか有さない。したがって、本エポキシ樹脂組成物は、CO2とほとんど反応しないかまたは全く反応せず、したがって、カーボネート塩および/またはカルバメート塩をほとんど形成しないかまたは全く形成しない。したがって、高湿条件下であっても硬化して、大部分に白化がない、透明かつ光沢がある表面からわずかに不透明な表面までの平坦な皮膜を形成する。したがって、この皮膜は、表面の染みまたは曇りがなく、エポキシ基の不完全な反応に起因するいかなる機械的な欠陥もない。したがって、ベンジルアルコールを上述したエポキシ樹脂組成物に添加することをほとんどまたは完全に避けることができる。こうして、揮発性有機化合物(VOC)の含量がわずかしかないかまたはVOCを含まないエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0083】
このように、上述したポリアミンA1を、場合により硬化剤組成物の形態で、エポキシ樹脂組成物の白化を低減するために使用することができることが示された。この結果、これらのエポキシ樹脂組成物は、審美的が要求される用途、例えば、コーティング剤、とりわけ床コーティング剤にとりわけ好適である。
【0084】
上述したエポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の基材に適用される。ここで、以下のものが基材として好適である。
−ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、プラスター、および天然石、例えば花崗岩または大理石;
−金属またはアロイ、例えば、アルミニウム、スチール、鉄、非鉄金属、亜鉛めっきした金属;
−革、織物、紙、木材、樹脂接着木材製品、樹脂/織物複合材、および他の「ポリマーコンポジット」;
−プラスチック、例えば、ポリビニルクロライド(硬質PVCおよび軟質PVC)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)、SMC(シート成形コンパウンド)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)、およびエチレン/プロピレンジエンテルポリマー(EPDM)(ここで、これらのプラスチックは、プラズマ、コロナ、または火炎で表面処理されていることも好ましい);
−コーティングされた基材、例えば、パウダーコーティングされた金属またはアロイ;並びに塗料およびラッカー。
【0085】
エポキシ樹脂組成物の適用前に、基材は、必要に応じて前処理されていてもよい。このような前処理には、特に、物理的および/または科学的洗浄法(例えば、研磨、サンドブラスト、ショットピーニング、白化など)が含まれる。これらの工程中、形成されたダストを真空によって除去することが有利である。加えて、洗浄剤または溶媒を用いる追加の処理、または、接着促進剤、接着促進剤溶液、またはプライマーの適用を行うことも有利である。
【実施例】
【0086】
1.測定方法の説明
粘度を、Rheotec RC30コーン−プレート粘度計で測定した(コーンの直径25 mm、コーン角度1°、コーンチップとプレートとの間のギャップ0.05 nm、剪断速度50秒-1)。20℃にて測定した粘度を、表1にη20℃として示した。
【0087】
2.使用原料
・ペンタエチレンヘキサミン(Delamine社)(「PEHA」):工業グレード、分子量約232 g/mol、アミン価1220 mg KOH/g
・テトラエチレンペンタミン(Delamine社)(「TEPA」):工業グレード、分子量約189 g/mol、アミン価1350 mg KOH/g
・N4-アミン(BASF社):N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、分子量=174 g/mol
・Lupasol(登録商標)FG(BASF社)(「PEI」):ポリエチレンイミン、平均分子量800 g/mol、一級:二級:三級アミノ基比約1:0.9:0.5
・2,4-ペンタンジオン(Wacker社):分子量=100 g/mol
・2,5-ヘキサンジオン(Wacker社):分子量=114 g/mol
【0088】
3.ポリアミンA1型のポリアミンの調製
[実施例1]
232 gのペンタエチレンヘキサミンを、窒素雰囲気下、50℃の温度に置いた。200 gの2,4-ペンタンジオンを、良好な撹拌下で、滴下によりゆっくりと添加した。その後、形成された水を、真空下、80℃にて1時間の間、ロータリーエバポレーター内で留去して除いた。
【0089】
[実施例2〜13]
実施例2〜13を、実施例1と同様に調製した。用いた成分を表1に示した。量はグラムで記載した。2,4-ペンタンジオンの代わりに2,5-ヘキサンジオンを用いた実施例4、5、6、12、および13は、ロータリーエバポレーター内に80℃にて1時間置く代わりに2時間置いた。
【0090】
実施例1〜13のポリアミンA1型の樹脂はいずれも、透明な黄色、黄色〜緑色、または橙色の液体である。表1において、各場合の外観として、液体の色を示した。ここで、「Y」は黄色、「YG」は黄色〜緑色、「O」は橙色、「LO」は淡橙色を意味する。表1に示したNH-当量は、計算値である。
【0091】
【表1】

【0092】
4.エポキシ樹脂組成物の調製
[実施例14〜26および実施例27〜30(比較)]
42質量部のAraldite(登録商標)GY 250 (ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Huntsman社製、EEW = 187.5 g/当量)および8質量部のAraldite(登録商標)DY-E (C12〜C14アルコールのモノグリシジルエーテル、Huntsman社製、EEW = 290 g/当量)の混合物50質量部を、各場合において、表2に(質量部で)示した量の所与の硬化剤と混合した。被膜(film)を、混合した組成物を用いて、500 μmの膜厚でガラスプレートに適用した。これを23°Cおよび50%の相対湿度で7日間貯蔵するか、あるいは硬化させた。その後、皮膜の外観を評価した。皮膜は、透明であり硬度を有し、組織を有さない粘着性のない表面である場合に「欠陥がない」とされる。皮膜の鉛筆硬度(Wolff-Wilbornスクラッチ硬度、ISO 15184に準拠して測定)も測定した。23°Cおよび50%の相対湿度で6ヶ月間の貯蔵後に、被膜に粘着性がない場合に、ケーニッヒ鉛筆硬度をDIN EN ISO 1522に準拠して測定し、「ケーニッヒ硬度」として表中に示した。
【0093】
結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表2から、さまざまな比でジケトンと反応させたポリアミンを硬化剤として含有する本発明による実施例14〜26は、ジケトンと反応させていない相当するポリアミンを用いた比較実施例27〜30より明らかに少ない白化を示した。実施例14が、比較実施例15および16と比較してより魅力的な皮膜を与えることも明らかになった。実施例14に含有させた硬化剤は、第一級アミノ基をほとんど含まないのに対し、実施例15および16に含ませた硬化剤は、2,4-ペンタンジオンを、第一級アミノ基に対して化学量論比を下回る比で反応させたため、第一級アミノ基をなお含有している。実施例19〜22は、明らかに白化が低減された皮膜を与えたが、2ヶ月の貯蔵後には、表面にコーティングを有した。この実施例19〜22は、第一級アミノ基に対するジケトンとの反応程度が化学量論を下回る程度であった。
【0096】
4.系内(In-situ)法でのエポキシ樹脂組成物の調製
[実施例31〜42ならびに実施例43および44(比較)]:
各場合において、所与の物質の表3に(質量部で)示した量を、硬化剤成分または樹脂成分と混合し、次いで両成分を一緒に混合した。被膜(film)を、混合した組成物を用いて、500 μmの膜厚でガラスプレートに適用し、実施例14に記載した通りにその外観を評価した。23°Cおよび50%の相対湿度で28日間貯蔵した後、実施例14に記載した方法でケーニッヒ鉛筆硬度を測定した。
【0097】
表3で用いる略号:
「D-230」:Jeffamine(登録商標)D-230 (平均分子量240 g/mol を有するポリオキシプロピレンジアミン、Huntsman社製)、
「IPDA」:イソホロンジアミン (分子量 = 170 g/mol)
「GY-250」:Araldite(登録商標)GY 250 (ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Huntsman社製, EEW = 187.5 g/当量)
「DY-E」:Araldite(登録商標)DY-E (C12〜C14アルコールのモノグリシジルエーテル、Huntsman社製, EEW = 290 g/当量)、
「TEPA付加体」:37.58質量部のTEPAと、12.43質量部のAraldite(登録商標)GY 250との付加体(理論的に第一級アミノ基を150.9 g/当量有し、37.7 gのNH-当量質量を有する)、
「PEHA付加体」:39.39質量部のPEHAと、10.61質量部のAraldite(登録商標)GY 250との付加体(理論的に第一級アミノ基を176.7 g/当量有し、38.4 gのNH-当量質量を有する);および
「DETA」:ジエチレントリアミン。
【0098】
【表3】

【0099】
結果を表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
実施例31〜42から、系内での方法を用いて、比較実施例27〜30および43と比較して明らかに白化が低減された皮膜が形成された。実施例31〜34は、実施例14、17、23、および25に相当するが、系内法を用いている。PEHAまたはPEIと混合した場合に、明らかに、相当するポリアミンA1が、第一級アミノ基がエポキシ基と検出可能な程度に反応する前に優先的に形成される。なぜなら、これらの皮膜は、相当する実施例14、17、23、および25と同程度の審美性を有する外観を有し、一部の場合には幾分より魅力的な外観を有するからである。実施例36〜42は、系内法でも、ポリアミンB1とポリアミンB2との混合物、またはポリアミンB1とポリアミンB1およびエポキシ樹脂の付加体との混合物が存在する硬化剤組成物を用いて、良好な皮膜をが得られることを示している。実施例44と比較して、DATAをジケトンと、系内法で1:1モル比で反応させた。このポリアミンは、アシルエナミノ基に加えて、1個の第二級アミノ基および1個の第一級アミノ基のみを有する。したがって、硬化剤中の第一級アミノ基の濃度が比較的高い。この結果、曇りのある比較的やわらかい皮膜が形成され、明らかに白化を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または(II)のポリアミンA1:
【化1】

[式中、
aは、1〜100の整数であり;
Aは、a個の第一級アミノ基を除去した後のポリアミンB1のa価の基であって、第二級アミノ基または第一級アミノ基の形態の少なくとも3個のアミノ基を有し、前記第二級アミノ基の数が前記第一級アミノ基の数より多い基を表し;
およびRが、それぞれ独立に、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表し、かつ、Rが、水素原子、または、1〜12個のC原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表すか、または
およびRが一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜8個のC原子、好ましくは5または6個のC原子を有する炭化水素環の一部である二価の炭化水素基を表し、かつ、Rが、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表すか、または
およびRが一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜8個のC原子、好ましくは5または6個のC原子を有する炭化水素環の一部である二価の炭化水素基を表し、かつ、Rが、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表すかのいずれかであり;かつ
およびRは、それぞれ独立に、1〜12個のC原子を有し、場合によりエーテル基またはハロゲン原子を有していてもよい、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基を表す]。
【請求項2】
式(I)または(II)中の下付き文字aが、2〜100、特に2〜10を表すことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミンA1。
【請求項3】
ポリアミンB1が、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、5〜7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(「高級エチレンポリアミン」、HPEA)、および、平均分子量500〜2500g/モルを有するポリエチレンイミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアミンA1。
【請求項4】
およびRがそれぞれメチル基を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミンA1。
【請求項5】
が水素原子を表すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミンA1。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)または(II)のポリアミンA1の製造方法であって、少なくとも1種の式(III)のポリアミンB1を、少なくとも1種の式(IV)のジケトンK1または式(V)のジケトンK2:
【化2】

と反応させ、この反応において、ジケトンK1またはK2を、前記ポリアミンの第一級アミノ基に対して化学量論比または化学量論比を下回る比で用いることを特徴とする、方法。
【請求項7】
ジケトンK1が、2,4-ペンタンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン、3-プロピル-2,4-ペンタンジオン、3-イソプロピル-2,4-ペンタンジオン、3-ブチル-2,4-ペンタンジオン、3-tert-ブチル-2,4-ペンタンジオン、3-シクロヘキシル-2,4-ペンタンジオン、3-フェニル-2,4-ペンタンジオン、3,5-ヘプタンジオン、6-メチル-3,5-ヘプタンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、2,2,4,6,6-ペンタメチル-3,5-ヘプタンジオン、2-アセチルシクロペンタノン、および2-アセチルシクロヘキサノンからなる群から選択され、2,4-ペンタンジオンが好ましいことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)のポリアミンA1の製造方法であって、少なくとも1種の式(III)のポリアミンB1を、少なくとも1種の式(IVa)のケトン:
【化3】

と反応させ、この反応において、式(IVa)のケトンを、前記ポリアミンの第一級アミノ基に対して化学量論比または化学量論比を下回る比で用いることを特徴とする、方法。
【請求項9】
ポリアミンB1が、テトラエチレンペンタミン(TPEA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、5〜7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(「高級エチレンポリアミン」、HPEA)、および、平均分子量500〜2500g/モルを有するポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a) 請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)または(II)のポリアミンA1少なくとも1種と、
(b) 第一級アミノ基または第二級アミノ基の形態の少なくとも2個のアミノ基を有するポリアミンB2少なくとも1種と
を含む、硬化剤組成物。
【請求項11】
ポリアミンB2が、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン)、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミンンすなわちIPDA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン1,3-キシリレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、および、500〜2500g/モルの分子量を有するポリオキシアルキレンジオールのアミノ化から誘導されるエーテル基含有ジアミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の硬化剤組成物。
【請求項12】
硬化剤成分C1またはC11と、樹脂成分C2またはC22とからなる2成分形エポキシ樹脂組成物であって、
硬化剤成分C1またはC11が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1種の式(I)または式(II)のポリアミンA1を、場合により請求項10または11に記載の硬化剤組成物の形態であってもよい形態で含有し、
樹脂成分C2またはC22が、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有する
ことを特徴とする、2成分形エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
ベンジルアルコールの含量が、5質量%未満、好ましくは2質量%未満であり、特に、ベンジルアルコールを含まないことを特徴とする、請求項12に記載の2成分形エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の2成分形エポキシ樹脂組成物の2つの成分である、C1およびC2、またはC11およびC22を、混合することによって得られる硬化した組成物。
【請求項15】
請求項12または13に記載の2成分形エポキシ樹脂組成物の、接着剤、シーリングコンパウンド、ポッティングコンパウンド、コーティング剤、床被覆剤、塗料、ラッカー、プライマーもしくはプライマーコート、好ましくはコーティング剤、特に床コーティング剤としての、使用。
【請求項16】
エポキシ樹脂組成物の白化(blushing)を低減するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミンA1または請求項10もしくは11に記載の硬化剤組成物の使用。

【公表番号】特表2011−522945(P2011−522945A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512989(P2011−512989)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057272
【国際公開番号】WO2009/150219
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】