白毛の予防・治療剤、非治療的な美容方法、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤及びMITF−M遺伝子発現促進剤
【課題】有効な白毛の予防・治療剤、非治療的な美容方法、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤及びMITF−M遺伝子発現促進剤を提供すること。
【解決手段】色素幹細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤。
【解決手段】色素幹細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白毛の予防・治療剤、非治療的な美容方法、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤及びMITF−M遺伝子発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
体毛の色素は毛包に存在する色素細胞によって産生されている。色素を産生する色素細胞は色素幹細胞から分化・成熟したものである。毛周期(体毛のサイクル)の休止期ではいったん色素細胞が失われ、新たな体毛の成長が開始されたときに何らかの理由で色素細胞が毛包に存在しないと、当該新たな体毛は白毛となる。
【0003】
近年、高齢化の進行に伴って、体毛においては特に白髪に対する意識が高まっており、白髪を染める染毛剤や白髪の予防剤、治療剤が数多く提供されている。白髪の予防剤、治療剤は、染毛剤に比べて色の変化が現れるまでには時間が長くかかるものの皮膚への刺激が少なく酸化剤・アルカリ剤等による毛髪の損傷もないという長所があり、この長所に着目して好んで使用されている。
【0004】
体毛の色素であるメラニンはチロシンからつくられるので、従来においてはチロシナーゼと色素細胞の関係に着目した白髪の予防剤や治療剤などが開示されてきた。
【0005】
その後更に、転写因子であるMITFがチロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質‐1の発現量を制御しており、MITFの活性上昇が白髪の予防・改善に結びつくことや、メラニン産生とは別異の観点において、XVII型コラーゲンの発現により毛髪の脱色素化が抑制されることが開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−229889号公報 上記公報においては、サンショウ抽出物がメラノサイト遊走能力を増強すること、サンショウ抽出物はメラニン生合成系の酵素であるチロシナーゼの活性を増強せしめたこと、メラノサイトの遊走能力増強作用と抗白髪性はよく相関することが開示されている。
【特許文献2】特開2000−300298号公報 上記公報においては、チロシナーゼをコードするmRNAは一貫して、黒色毛髪の毛包では検出され、白色毛髪の毛包では検出されなかったことが開示されている。
【特許文献3】特開2003−171240号公報 上記公報においては、MITFの活性低下を防ぎ、更には活性上昇させることが、白髪の予防、改善に結びつくことが開示されている。
【特許文献4】特開2009−51753号公報 上記公報においては、XVII型コラーゲンの発現により毛髪の脱色素化が抑制されることが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、白髪に代表される白毛発症のメカニズムには複数の要素が関わっていることが推定され、当該メカニズムは未だ明らかではない。また、特定の酵素や遺伝子に着目した種々の白髪の予防剤、治療剤が開示されてきたが、その効果は未だ満足できるものではなかった。また、白髪以外の体毛においても、加齢と共に生じる白毛を色素を有する毛にしたいという要望がある。
【0008】
そこで本願発明者は、白毛発症のメカニズムに含まれる特定の酵素や遺伝子に着目するのではなく、ヒトは加齢と共に自然に白毛を発症しその進行は緩やかに進む、といういわば白毛の表現型に着目した。そして、ヒトと酷似した白髪表現型のマウスを用いて自然な白毛発症を予防・治療することができる成分を発見することが、有効な白毛の予防・治療剤及び非治療的な美容方法の開発につながると考えた。
【0009】
このような考えに基づき鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は色素幹細胞数の維持・増加、色素細胞数の維持・増加、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進又はMITF−M遺伝子の発現促進を示し、望ましくはこれらのうち複数の活性を示す成分が白毛の予防・治療及び非治療的な美容方法に有効であることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
よって、本発明は、有効な白毛の予防・治療剤、有効な非治療的な美容方法を提供することを解決すべき課題とする。また、有効なエンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進剤、有効なMITF−M遺伝子の発現促進剤を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、
色素幹細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0012】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、
前記色素幹細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種である第1発明に記載の白毛の予防・治療剤である。
【0013】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素幹細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0014】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、
色素細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0015】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、
前記色素細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種である第4発明に記載の白毛の予防・治療剤である。
【0016】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0017】
(第7発明)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤である。
【0018】
(第8発明)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、
第7発明に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0019】
(第9発明)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、
第7発明に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0020】
(第10発明)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするMITF−M遺伝子発現促進剤である。
【0021】
(第11発明)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、
第10発明に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0022】
(第12発明)
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、
第10発明に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0023】
上記第1発明から第12発明において、「サクラ抽出物」とは、バラ科のサクラ属の植物であるサクラの葉、茎、花、種子等から適宜な抽出溶媒等を用いて得られる抽出物をいう。「ローマカミツレ抽出物」とは、ローマカミツレ〔Chamaemelum nobile(L.)〕の葉、茎、花、種子等から適宜な抽出溶媒等を用いて得られる抽出物をいう。「メリッサ抽出物」とは、シソ科セイヨウヤマハッカ属に属し、レモンバームとも呼ばれる多年草メリッサ〔Melissa offcialis〕の葉、茎、花、種子等から適宜な抽出溶媒等を用いて得られる抽出物をいう。「ルテオリン」とは、下記化1に示す化合物である。
【化1】
【0024】
美白効果を有する成分としてジャーマンカミツレ〔Matrcaria chamomilla L.(Compositae)〕の抽出物が、例えば特開2004−51611号公報に開示されているが、上述の成分はローマカミツレ〔Chamaemelum nobile(L.)〕の抽出物である。ローマカミツレとジャーマンカミツレは異なる植物であり、両植物の違いは「カモミール辞典‐ハーブとしての効能・研究開発から産業への応用‐(フレグランスジャーナル社)」に詳しい。例えば、ジャーマンカミツレは細かい鋸歯の葉と白い頭花を持つ1年草であり、ローマカミツレは羽状の葉とヒナギク様の頭状花を持つ多年草である。
【0025】
上記第1発明から第12発明において、「色素幹細胞数の維持・増加」、「色素細胞数の維持・増加」とは、当該各細胞数の維持、当該各細胞数の増加の他、当該各細胞数の減少速度の抑制を含む概念である。また、「白毛の予防・治療」とは、色素を有する毛から白毛への変化の予防、色素を有する毛から白毛への変化の速度の抑制、現状の白毛状態の維持、白毛から色素を有する毛への変化を含む概念である。色素を有する毛は具体的には顕微鏡観察等にてメラニンの有無を確認することによって判断できる。色素を有する毛の色としては、黒色、栗色、亜麻色、茶色、金色、赤色などを例示することができる。「体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する」とは、現状の白毛状態の維持を含む概念である。
【発明の効果】
【0026】
白髪モデル動物は、ヒト以外の動物であって、体毛の白毛割合が経時変化するという表現型を持つ各種のモデル動物中から任意に選択することができるが、より好ましくは体毛の白毛化現象についてヒトとの共通性が大きい哺乳動物であり、更に好ましくは、小型、ヘアサイクルの適切さ、管理の容易さ等の点からラット、マウス等の齧歯目動物であり、とりわけ好ましくはマウスである。ヒトとの共通性が大きい白髪モデル動物を用いるので、当該モデル動物で確認される効果は、ヒトにおいても確認される蓋然性が高い。即ち、当該モデル動物で確認される効果は信頼性が高い。
【0027】
本願においては、白髪モデル動物として、PCT/JP2006/302783号に開示された公知の白髪モデルマウスを使用した。この白髪モデルマウスは、詳細な説明は省くが、一定の遺伝子型を持ったノックアウト・トランスジェニックマウスであって、生後はじめて生える体毛の色が黒色ないしほぼ黒色であり、加齢と共に白毛を自然発症するという表現型を持っている。
【0028】
(第1発明)
ヒトは加齢と共に自然に白毛を発症しその進行は緩やかに進む。当該白毛の進行の過程において色素幹細胞の数は加齢と共に減少していく。第1発明によれば、色素幹細胞数の維持・増加により新たな体毛の成長が開始されたとき(即ち、新たな体毛のサイクルが開始されたとき)に色素細胞へ分化・成熟すべき色素幹細胞が確保される。即ち、体毛のサイクルの開始段階で毛包に色素細胞が存在するので、色素を有する毛が生えてくる。
【0029】
(第2発明)
第2発明によれば、より有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンは色素幹細胞数の維持・増加成分であるが、色素細胞数の維持・増加が推定され、エンドセリンレセプターB遺伝子及びMITF−M遺伝子の発現も促進する。本願発明者は、これら複数の活性の複合的な関与により、より有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【0030】
(第3発明、第6発明、第9発明及び第12発明)
全体毛本数中における白毛本数の割合が増加するのは、加齢における自然な現象である。例えば、加齢にともない白髪や白ひげ等が増加する。第3発明、第6発明、第9発明及び第12発明によれば、体毛そのものの白毛化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物は、それぞれ、色素幹細胞数の維持・増加、色素細胞数の維持・増加、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進及びMITF−M遺伝子の発現促進から選ばれる複数の活性を有しているため、有効な非治療的美容方法が提供される。
白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「白毛の増加を抑制したい、現在の白毛状態を維持したい、又は白毛から色素を有する毛へ改善したい」など変化の度合いについての要望が多く、これらの要望に応えることができる非治療的美容方法が提供される。
【0031】
(第4発明)
第4発明によれば、新たな体毛の成長が開始されたとき(即ち、新たな体毛のサイクルが開始されたとき)に色素細胞が確保される。即ち、体毛のサイクルの開始段階で毛包に色素細胞が存在するので、色素を有する毛が生えてくる。
【0032】
(第5発明)
第5発明によれば、より有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンは色素幹細胞数を維持・増加させ、かつ、白毛の予防・治療効果を有しているので、色素細胞数、特に毛包における色素細胞数の維持・増加が合理的に推定される。また、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンはエンドセリンレセプターB遺伝子及びMITF−M遺伝子の発現も促進する。本願発明者は、上記した複数の活性の複合的な関与により、より有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【0033】
(第7発明)
第7発明によれば、有効なエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤が提供される。エンドセリンレセプターB遺伝子の発現が促進されると、白毛の予防・治療効果がある。
【0034】
(第8発明)
第8発明によれば、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進による、有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンはエンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する上に、色素幹細胞数を維持・増加し、色素細胞数の維持・増加が推定され、及びMITF−M遺伝子の発現を促進する。メリッサ抽出物は、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する上に、MITF−M遺伝子の発現を促進する。本願発明者は、これら複数の活性の複合的な関与により、有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【0035】
(第10発明)
第10発明によれば、有効なMITF−M遺伝子発現促進剤が提供される。MITF−M遺伝子の発現が促進されると、白毛の予防・治療効果がある。その他、色素細胞活性の促進などの効果がある。
【0036】
(第11発明)
第11発明によれば、MITF−M遺伝子の発現促進による、有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンはMITF−M遺伝子の発現を促進する上に、色素幹細胞数を維持・増加し、色素細胞数の維持・増加が推定され、及びエンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する。メリッサ抽出物は、MITF−M遺伝子の発現を促進する上に、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する。本願発明者は、これら複数の活性の複合的な関与により、有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】黒毛か白毛かの判断例を示す写真である。
【図2】L*値の測定に供した毛束を示す写真である。
【図3】ローマカミツレ抽出物の白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図4】ローマカミツレ抽出物の有する効果と濃度依存性の関係を示すグラフである。
【図5】サクラ抽出物の白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図6】ルテオリンの白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図7】メリッサ抽出物の白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図8】ローマカミツレ抽出物の色素幹細胞数維持・増加効果を示すグラフである。
【図9】サクラ抽出物の色素幹細胞数維持・増加効果を示すグラフである。
【図10】ルテオリンの色素幹細胞数維持・増加効果を示すグラフである。
【図11】ローマカミツレ抽出物のエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図12】サクラ抽出物のエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図13】ルテオリンのエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図14】メリッサ抽出物のエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図15】ローマカミツレ抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図16】サクラ抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図17】ルテオリンのMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図18】メリッサ抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図19】ヒト鬚に対するローマカミツレ抽出物の白鬚の予防・治療効果を示すグラフである。
【図20】ヒト眉毛に対するローマカミツレ抽出物の白眉毛の予防・治療効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0039】
〔サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、メリッサ抽出物、ルテオリン〕
「サクラ抽出物」とは、バラ科のサクラ属の植物であるサクラの葉、茎、花、種子等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。本発明の実施にあたっては、抽出物そのものを使用しても良いし、抽出溶媒等に溶解した状態の溶液を使用しても良い。サクラ抽出物を含有する具体的な市販品として、例えば、一丸ファルコス(株)製の商品名「サクラエキスB」を挙げることができる。
【0040】
上記したサクラは、バラ科サクラ属に分類される植物の総称であって、具体例として、サクラ亜属のヒガンザクラ、ソメイヨシノ、ヤエザクラ、オオシマザクラ、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、エドヒガン、マメザクラ、ミヤマザクラ、タカネザクラ、カスミザクラ、チョウジザクラ、コヒガン、サトザクラ、カンザクラ等を挙げることができる。
【0041】
上記した抽出溶媒の種類は限定されないが、具体例として、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、エーテル類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、これらの1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。抽出溶媒は特に水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0042】
「ローマカミツレ抽出物」とは、ローマカミツレ〔Chamaemelum nobile(L.)〕の葉、茎、花、種子等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。美白効果を有する成分としてジャーマンカミツレ〔Matrcaria chamomilla L.(Compositae)〕の抽出物が、例えば特開2004−51611号公報に開示されているが、ローマカミツレとジャーマンカミツレは異なる植物である。又、抽出物の意味及び抽出溶媒の種類については、サクラ抽出物の場合と同様である。ローマカミツレ抽出物を含有する具体的な市販品として、例えば、一丸ファルコス(株)製の商品名「ファルコレックスローマカミツレB」を挙げることができる。
【0043】
「メリッサ抽出物」とは、シソ科セイヨウヤマハッカ属に属し、レモンバームとも呼ばれる多年草メリッサ〔Melissa offcialis〕の葉、茎、花、種子等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。又、抽出物の意味及び抽出溶媒の種類については、サクラ抽出物の場合と同様である。メリッサ抽出物を含有する具体的な市販品として、例えば、一丸ファルコス(株)製の商品名「ファルコレックスメリッサB」を挙げることができる。
【0044】
「ルテオリン」とは、上記化1に示した化合物である。当該化合物は一般に市販されているものを使用してもよく、紫蘇、春菊、ピーマン、味噌、カミツレなどの植物から抽出、精製したものを使用しても良い。
【0045】
〔エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤〕
遺伝子の発現においては、遺伝子の転写、翻訳により遺伝子発現が実現するという流れがある。プロモーターとはRNA合成酵素の結合部位であり、プロモーターの活性化は当該プロモーターにより転写が支配される遺伝子のmRNA量の増加を意味し、ひいては遺伝子の発現促進につながる。ゆえに、本発明におけるエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤は、エンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性化剤を含む概念であり、MITF−M遺伝子発現促進剤はMITF−M遺伝子プロモーター活性化剤を含む概念である。
【0046】
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤は、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするものである。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種が必須成分である。
【0047】
(必須成分)
エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなる場合、例えば抽出物そのもの、ルテオリンそのもの、上記4成分の2種以上の混合物がエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤を構成する。この場合、当該剤の量そのものが有効成分量となる。
【0048】
エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする場合、本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤における上記有効成分の含有量(有効成分量)は特に限定されないが、0.0010質量%〜5.0質量%の範囲内が好ましく、0.010質量%〜3.0質量%の範囲内が特に好ましい。
【0049】
(その他の成分)
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、多価アルコールを含有させることができる。多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。
【0050】
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0051】
多価アルコールは、単独で配合してもよいし、複数種を組み合わせて配合してもよい。本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、アミノ酸類を含有させることができる。アミノ酸類としては、アミノ酸及びその塩が挙げられる。アミノ酸としては、グリシン、小麦アミノ酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、メチオニン等が挙げられる。
【0052】
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、剤型等に応じて、溶媒、油性成分、界面活性剤等を含有させることができる。溶媒としては、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール等が挙げられる。
【0053】
油性成分としては、油脂、ロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、シリコーン類、炭化水素等が挙げられる。
【0054】
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0055】
ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。
【0056】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0058】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0059】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0060】
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、グリセリン変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0061】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0062】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0063】
非イオン性界面活性剤としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0065】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、ホホバワックスPEG−80等が挙げられる。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0067】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
【0068】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0069】
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、さらにソルビトール、マルトース等の糖類、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム等の水溶性高分子化合物、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、EDTA−2Na等のキレート剤、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定剤、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸等のpH調整剤、植物又は生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤、美白剤、皮膚用柔軟化剤、殺菌剤等を任意に選択して配合することができる。
【0070】
また、本発明の効果を妨げない限りにおいて、常法で薬学的に許容される液体、固体等の公知の各種担体と混合し、また必要に応じて安定化剤、矯味剤、賦形剤、保存剤、溶解補助剤、等張化剤、無痛化剤、結合剤、被覆剤、潤沢剤、崩壊剤、などを加えることも可能である。
【0071】
更に、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0072】
(剤型)
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤の剤型は限定されないが、例えば液状、乳液状、クリーム状又はゲル状が好適である。また、顆粒剤、糖衣剤、カプセル剤、吸入剤とすることも好ましい。
【0073】
(投与経路)
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤の投与経路は特に限定されず、経口投与、吸入投与、手や塗布具等によって皮膚に塗布する経皮吸収、血管投与、皮下注射および皮内注射などが可能であり、経皮吸収及び経口投与が好ましく、経皮吸収が特に好ましい。
【0074】
〔体毛〕
本発明において体毛はヒトを含む動物の任意の毛を意味する。本発明における体毛は頭に生える毛髪、口髭や顎鬚を含むひげ、眉毛、睫毛、腕・脚・胸に生える毛を好ましく例示することができ、毛髪、ひげ、眉毛、睫毛を更に好ましく例示することができ、毛髪、ひげを特に好ましく例示することができる。
【0075】
また、体毛において、色素を有する毛とはメラニンを有する体毛であり、白毛とはメラニンを有しない体毛である。例えば、毛髪においては、色素を有する毛とは色素を有する髪であり、白毛とは白髪である。ひげにおいては、色素を有する毛とは色素を有するひげであり、白毛とは、白ひげである。他の体毛においても、メラニンの有無により適宜体毛の名称が異なる。
【0076】
〔色素幹細胞数の維持・増加成分及び色素幹細胞数の維持・増加剤〕
本発明における白毛の予防・治療剤の色素幹細胞数の維持・増加成分は特に限定されないが、上述のサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの1種を単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。本発明における色素幹細胞数の維持・増加剤は、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするものである。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が必須成分である。
【0077】
(必須成分)
本発明における色素幹細胞数の維持・増加剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなる場合、例えば抽出物そのもの、ルテオリンそのもの、上記3成分の2種以上の混合物が色素幹細胞数の維持・増加剤を構成する。この場合、当該剤の量そのものが有効成分量となる。
【0078】
本発明における白毛の予防・治療剤の色素幹細胞数の維持・増加成分、また色素幹細胞数の維持・増加剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種を有効成分とする場合においては、これらの成分の含有量は特に限定されないが、0.0010質量%〜5.0質量%の範囲内が好ましく、0.010質量%〜3.0質量%の範囲内が特に好ましい。
【0079】
本発明における色素幹細胞数の維持・増加剤に含有させることができるその他の成分、剤型及び投与経路については、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤についての(その他の成分)、(剤型)、(投与経路)の記載と同様である。
【0080】
〔色素細胞数の維持・増加成分及び色素細胞数の維持・増加剤〕
本発明における白毛の予防・治療剤の色素細胞数の維持・増加成分は特に限定されないが、上述のサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの1種を単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0081】
本発明における色素細胞数の維持・増加剤は、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするものである。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が必須成分である。
【0082】
本発明における白毛の予防・治療剤の色素細胞数の維持・増加成分、色素細胞数の維持・増加剤の必須成分、その他の成分,剤型、及び投与経路については、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤および色素幹細胞数の維持・増加剤についての(必須成分)、(その他の成分)、(剤型)、(投与経路)の記載と同様である。
【0083】
〔白毛の予防・治療剤〕
本発明における白毛の予防・治療剤は、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤、色素幹細胞数の維持・増加成分又は色素細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。また、これらの有効成分を複数含有する白毛の予防・治療剤としても良い。
【0084】
本発明の白毛の予防・治療剤における上記有効成分の含有量(有効成分量)は特に限定されないが、0.0010質量%〜5.0質量%の範囲内が好ましく、0.010質量%〜3.0質量%の範囲内が特に好ましい。
【0085】
当該有効成分量の計算は、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤における必須成分の有効成分量、MITF−M遺伝子発現促進剤における必須成分の有効成分量、色素幹細胞数の維持・増加成分の成分量、色素細胞数の維持・増加成分の成分量により計算される。
【0086】
本発明の白毛の予防・治療剤に含有させることができるその他の成分、剤型、及び投与経路については、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤、色素幹細胞数および色素細胞数の維持・増加剤についての(その他の成分)、(剤型)、(投与経路)の記載と同様である。
【0087】
白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「予防したい、維持したい、又は改善したい」など変化の度合いについての要望が多く、当該変化を望む部位に対する剤の投与量を適宜調節することにより、本発明はこれらの要望に応えることができる。
【0088】
〔非治療的な美容方法〕
本発明における非治療的な美容方法は、上述の色素幹細胞数の維持・増加剤、色素細胞数の維持・増加剤、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤又はMITF−M遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。また、これらの剤を複数用いても良い。
【0089】
本発明の非治療的な美容方法における剤の投与経路は特に限定されず、経口投与、吸入投与、手や塗布具等によって皮膚に塗布する経皮吸収、血管投与、皮下注射および皮内注射などが可能であり、経皮吸収及び経口投与が好ましく、経皮吸収が特に好ましい。経皮吸収においては、剤の毛髪又はひげが生えている部位への適用が好ましく、適用範囲は全体又は部分的な局部適用を含む。適用は塗布を含む概念である。
【0090】
白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「予防したい、維持したい、又は改善したい」など変化の度合いについての要望が多く、当該変化を望む部位に対する上記剤の投与量を適宜調節することにより、これらの要望に応えることができる。
【実施例】
【0091】
以下に本発明の実施例を比較例(コントロールとも称する)と共に説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0092】
(白髪モデルマウス)
白髪モデルマウスとして、PCT/JP2006/302783号に開示された公知の白髪モデルマウス(以下、単に「マウス」という)を使用した。このマウスは、詳細な説明は省くが、上述の通り一定の遺伝子型を持ったノックアウト・トランスジェニックマウスであって、生後はじめて生える体毛の色が黒色ないしほぼ黒色であり、加齢と共に白毛を自然発症するという表現型を持っている。
【0093】
以下の試験において、モデルマウスに生える毛は体毛と称し、メラニンを有する体毛を「黒毛」、メラニンを有しない体毛を「白毛」と称する。
【0094】
〔マウスによる薬剤の白毛の予防・治療効果の評価方法〕
マウスが生後4ケ月齢の時点で体毛のサイクルの休止期を迎えるのに合わせ、マウスの背中部における同一特定部位の特定面積の体毛をバリカンまたはシェーバーにより長方形の形状(サイズ:1.5cmx3.0cm)に毛刈りし(当該刈った体毛を以下、検体毛と称する)、毛刈によって得た全検体毛本数を計数した上で、以下の各例の方法で供試薬剤を当該毛刈り部位の皮膚表面に一日1回投与を続けた。最初に供試薬剤を投与した日が試験開始日である。その後1ヶ月ごとに供試薬剤の投与部位の毛刈りを実施し、検体毛の白毛率を後述の方法により必要に応じて測定した。
【0095】
〔白毛率の視覚的観察による測定方法〕
検体毛を、光学顕微鏡(オリンパス社製BX61、10倍〜20倍)にて1本ずつ白毛か黒毛かを分別し、白毛率=白毛本数/全検体毛本数として算出した。白毛か黒毛かの分別においては、マウス体毛である検体毛のメジュラー中にメラニンが見られるか否かを基準として判断した。この基準に基づく黒毛の例を図1の「黒毛」と表記した上側の顕微鏡写真(メジュラー中にメラニンが詰まっている)に、白毛の例を図1の「白毛」と表記した下側の顕微鏡写真(メジュラー中にメラニンが一切見られない)にそれぞれ示す。図1の例では両極端の例を示しているが、中間の場合、即ち少しでもメラニンが確認できれば、黒毛であるとして判断した。
【0096】
〔白毛率の色彩色差計による測定方法〕
検体毛の白毛率を色彩色差計を用いて測定する方法を検討した。予めマウスの、目視で明らかに白毛率が異なると思われる61種の体毛について前記視覚的観察による白毛率を求めた後、色彩測色計(コニカミノルタ社製CR−400)を用いて、L*a*b*表色系の明度指数L*を測定した。測定においては、図2に示すように刈り取った検体毛を毛束状にし、色彩色差計のプローブを毛束に押し当てて測定した。図2の右側はほぼ100%白毛の毛束を、左側は白毛混じりの毛束を示している。白毛率(%)と、測定したL*値との相関性を表計算ソフト(マイクロソフト社エクセル)により統計処理をしたところ、yを白毛率(%)、xをL*値、決定係数R2とした時、y=0.021x+0.4024 R2=0.9101という一次回帰直線を求めることができ、白毛率とL*値には相関があることが示された。
【0097】
〔実施例1:有効成分であるローマカミツレ抽出物の経皮吸収による白毛の予防・治療効果〕
ローマカミツレ抽出物試験区として、水と1,3−ブチレングリコールが質量比1:1で混合された溶媒中に有効成分としてのローマカミツレ抽出物を0.6質量%含有する一丸ファルコス(株)製「ファルコレックスローマカミツレB」の白毛予防・治療効果を評価した。マウスに対し、毛刈り部位に体積比(v/v)でエタノール:水=7:3(以下、70%エタノールと称する)にて希釈したファルコレックスローマカミツレBの10%(v/v)溶液を毎日200μL塗布した。コントロールとして、希釈溶媒である70%エタノールを同様に塗布した。n(以後、nは検体数を示す)=7にて5ヶ月間塗布しつづけ、試験開始から1ヶ月ごとに白毛率を求めた結果を図3に示す。なお、試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。
白毛率の平均は、ローマカミツレ抽出物の投与区(図3中では▲でプロットしている。)では、投与期間1ヶ月(図3中では1Mと表現している。以下、期間の長さに合わせて2M等とする。)で12.3%、2ヶ月で11.3%、3ヶ月で16.1%、4ヶ月で16.4%、5ヶ月で13.8%であった。一方、70%エタノールの投与区(図3中では◆でプロットしている。)では、1ヶ月で13.9%、2ヶ月で14.7%、3ヶ月で21.5%、4ヶ月で23.5%、5ヶ月で24.4%であった。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物試験区とコントロールの比較から、ローマカミツレ抽出物は有意に白毛率の上昇を抑制し、白毛予防・治療効果を有することが確認された。また、ローマカミツレ抽出物は非治療的な美容方法に用いることが可能であることが示された。
【0098】
〔実施例2:有効成分の濃度依存性〕
有効成分の濃度と効果の関係を評価した。マウスへの投与条件は実施例1と同様で、70%エタノールにて希釈したファルコレックスローマカミツレBの2%(v/v)溶液、5%(v/v)溶液および10%(v/v)溶液をそれぞれ5ヶ月間塗布し、試験開始から5ヶ月後に塗布部位の検体毛と、70%エタノールを同様に塗布した部位の検体毛とのL*値の差を比較した結果を白毛率に換算して図4に示す。なお、試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。
白毛率の平均は、70%エタノールの投与区が22.9%、2%(v/v)溶液の投与区が15.6%、5%(v/v)溶液の投与区が13.1%、10%(v/v)溶液の投与区が11.0%であった。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物の濃度と白毛率の上昇抑制効果は比例しており、白毛予防・治療効果は有効成分の濃度に依存することが確認された。また、非治療的な美容方法における効果も有効成分の濃度に依存することが確認された。本実施例の結果より、有効成分の投与量を調節することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化の抑制や体毛における白毛から色素を有する毛への変化の促進について所望の程度を実現可能であることが示された。
【0099】
〔実施例3,4:有効成分であるサクラ抽出物、ルテオリンの経皮吸収による白毛の予防・治療効果〕
実施例1と同様の条件で、サクラ抽出物試験区として、水と1,3−ブチレングリコールが質量比1:1で混合された溶媒中に有効成分としてのサクラ抽出物を2.0質量%含有する一丸ファルコス(株)製「サクラエキスB」を、70%エタノールにて10%(v/v)希釈した溶液を用いn=7にて白毛予防・治療効果を評価した結果を図5に示す。また、ルテオリン試験区として、LKT社製「ルテオリン」を70%エタノールにて1%(w/v)希釈した溶液を用いn=13にて白毛予防・治療効果を評価した結果を図6に示す。なお、それぞれの試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。
図5に示す白毛率の平均は、サクラ抽出物の投与区(図5中では■でプロットしている。)では、塗布前で7.0%、投与期間1ヶ月で12.0%、2ヶ月で11.4%、3ヶ月で16.1%、4ヶ月で15.3%、5ヶ月で17.8%、6ヶ月で19.3%、7ヶ月で15.9%、8ヶ月で19.0%、9ヶ月で19.0%であった。一方、70%エタノールの投与区(図5中では◆でプロットしている。)では、塗布前で7.0%、投与期間1ヶ月で13.9%、2ヶ月で14.7%、3ヶ月で21.5%、4ヶ月で23.5%、5ヶ月で24.4%、6ヶ月で26.7%、7ヶ月で26.8%、8ヶ月で31.2%、9ヶ月で35.3%であった。
図6に示す白毛率の平均は、ルテオリンの投与区(図6中では■でプロットしている。)では、塗布前で14.3%、投与期間1ヶ月で14.1%、2ヶ月で16.5%、3ヶ月で19.0%、4ヶ月で21.1%であった。一方、70%エタノールの投与区(図6中では◆でプロットしている。)では、塗布前で14.1%、1ヶ月で20.3%、2ヶ月で25.0%、3ヶ月で30.2%、4ヶ月で35.1%であった。
以上の通り、サクラ抽出物試験区とコントロールの比較、ルテオリン試験区とコントロールの比較から、サクラ抽出物、ルテオリンは有意に白毛率の上昇を抑制し、白毛予防・治療効果を有することが確認された。また、サクラ抽出物、ルテオリンは非治療的な美容方法に用いることが可能であることが示された。
【0100】
〔実施例5:有効成分であるメリッサ抽出物の経皮吸収による白毛の予防・治療効果〕
メリッサ抽出物試験区として、水と1,3−ブチレングリコールが質量比1:1で混合された溶媒中に有効成分としてのメリッサ抽出物を0.8質量%含有する一丸ファルコス(株)製「ファルコレックスメリッサB」を、70%エタノールにて10%(v/v)希釈した溶液を用いn=5にて白毛予防・治療効果を評価した。マウスへの投与条件は実施例1と同様であるが、溶液の塗布期間は2週間とし、試験開始から2週間後に塗布部位の検体毛と、70%エタノールを塗布した部位の体毛とのL*値の差(ΔL*)を比較した結果を図7に示す。なお、試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。ΔL*値の平均は、メリッサ抽出物の投与区で4.59、70%エタノールの投与区で2.13であった。
以上の通り、メリッサ抽出物試験区とコントロールの比較から、メリッサ抽出物は有意に体毛を黒色化し、白毛予防・治療効果を有することが確認された。また、メリッサ抽出物は非治療的な美容方法に用いることが可能であることが示された。
【0101】
〔実施例6:有効成分の経皮吸収による色素幹細胞数の維持・増加効果〕
有効成分が色素幹細胞数に与える効果を評価した。色素幹細胞数の計数は、以下の(1)〜(9)に述べる手順により実施した。
(1)検体毛を毛刈りした部分の皮膚の一部(約10mm×5mm角)を切除後に縫合可能なように切り取る。
(2)切り取った皮膚を未固定にて凍結包埋する
(3)凍結切片を12μmの厚さにて作製する
(4)スライドグラスに切片をのせ、10分間冷アセトンで固定する
(5)PBSにて洗浄し、4℃で抗dct抗体(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)および抗c−kit抗体(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)にて免疫染色する
(6)12時間後、PBSにて洗浄する
(7)Alexa 594 donkey αgoat IgG(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)およびAlexa 488 donkey αRat IgG(サンタクルーズ社を1:1000)にて室温で10分間二次抗体反応をさせる。
(8)PBSにて洗浄し、核染色後封入する。
(9)光学顕微鏡(オリンパス社製BX61 20〜40倍)にて毛包を観察し、下記(I)〜(III)の全ての条件を満たす細胞を色素幹細胞とし、各例で評価するマウス皮膚中の毛包70本中の色素幹細胞を計数した。
なお、色素幹細胞と判断する条件は以下の(I)〜(III);
(I)体毛バルジ領域に存在する細胞である。
(II)dctが発現している。
(III)c−kitの発現がない細胞、もしくは弱い細胞である。
を満たすものとした。
以上の方法を用い、実施例1,3,4で使用したマウスおよびコントロールのマウスを対象に実施した結果を、図8〜10に示す。
図8について、実験開始後4ヶ月時点での色素幹細胞数の平均は、ファルコレックスローマカミツレBの10%(v/v)溶液の投与区(n=2)では22.2個、70%エタノールの投与区(n=5)では14.4個であり、t−testによりこれらの間には有意差が認められた。
図9について、実験開始後7ヶ月時点での色素幹細胞数の平均は、サクラエキスBの10%(v/v)溶液の投与区(n=4)では22.3個、70%エタノールの投与区(n=5)では14.4個であり、t−testによりこれらの間には有意差が認められた。
図10について、実験開始後4ヶ月時点での色素幹細胞数の平均は、ルテオリンの1%(w/v)溶液の投与区(n=6)では17.2個、70%エタノールの投与区では10.0個であり、Paired t−testによりこれらの間には有意差が認められた。
以上の通り、各試験区とコントロールの比較から、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンは有意に色素幹細胞数を維持・増加させる効果を有することが確認された。この結果は、これら成分が同時に色素細胞数を維持・増加する効果を有することも示しているのは明らかである。
【0102】
〔実施例7:有効成分のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進効果〕
有効成分がエンドセリンレセプターB(EDNRB)遺伝子発現促進に与える効果を評価した。評価は、以下の方法により実施した。
(1)6cm dishを用いて、SK−Mel28ヒトメラノーマ細胞にリポフェクトアミンLTX(Invitrogen社)を使用し、発明者らが作製したヒトEDNRB遺伝子プロモーター(上流1013bp)配列が入ったプラスミドDNAをトランスフェクションする。
(2)24時間後、96ウエルプレートに細胞をまきなおす。
(3)24時間後、有効成分を100μLの培地に対し0.1μL添加した。なお各有効成分は、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物およびメリッサ抽出物については実施例1,3,5で使用した市販品を希釈せずそのまま用い、ルテオリンについてはアナリティコン社製の10mg/mlジメチルスルホキシド溶液として市販されているものを用いた。コントロールとしては、各市販品の溶媒を用いた。
(4)24時間後、Dual Ruciferase Kit(Promega社)を使用しプロモーター活性を測定した。測定は、当該キットの説明書に記載の方法に従った。
以上の方法を用い、上述したローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物について評価した結果を図11〜14に示す。
ローマカミツレ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が3.50倍に上昇した(図11)。サクラ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が1.51倍に上昇した(図12)。ルテオリンの投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.63倍に上昇した(図13)。メリッサ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.57倍に上昇した(図14)。なお、遺伝子の発現においては、遺伝子の転写から翻訳へという流れがある。プロモーターの活性化からは転写の活性化(転写量の増大)が合理的に推測さるので、即ちプロモーターの活性化からは遺伝子発現の促進が合理的に推定できる。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物は有意にエンドセリンレセプターB遺伝子発現を促進させる効果を有することが確認された。
【0103】
〔実施例8:有効成分のMITF−M遺伝子発現促進効果〕
(1)6cm dishを用いて、SK−Mel28ヒトメラノーマ細胞にリポフェクトアミンLTX(Invitrogen社)を使用し、発明者らが作製したヒトMITF−M 遺伝子プロモーター(上流330bp)配列が入ったプラスミドDNAをトランスフェクションする。
(2)24時間後、96ウエルプレートに細胞をまきなおす。
(3)24時間後、有効成分を100μLの培地に対し0.1μL添加した。なお各有効成分は、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物およびメリッサ抽出物については実施例1,3,5で使用した市販品を希釈せずそのまま用い、ルテオリンについてはアナリティコン社製の10mg/mlジメチルスルホキシド溶液として市販されているものを用いた。コントロールとしては、各市販品の溶媒を用いた。
(4)24時間後、Dual Ruciferase Kit(Promega社)を使用しプロモーター活性を測定した。測定は、当該キットの説明書に記載の方法に従った。
以上の方法を用い、上述したローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物について評価した結果を図15〜18に示す。
ローマカミツレ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が1.79倍に上昇した(図15)。サクラ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.22倍に上昇した(図16)。ルテオリンの投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.68倍に上昇した(図17)。メリッサ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が1.88倍に上昇した(図18)。なお、遺伝子の発現においては、遺伝子の転写から翻訳へという流れがある。プロモーターの活性化からは転写の活性化(転写量の増大)が合理的に推測さるので、即ちプロモーターの活性化からは遺伝子発現の促進が合理的に推定できる。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物は有意にMITF−M遺伝子発現を促進させる効果を有することが確認された。
【0104】
〔実施例9:ヒトによる試験〕
頭髪に白髪が出始めた30代男性を被験者とし、70%エタノールにて希釈した上述の「サクラエキスB」の1%(v/v)溶液を被験者の白髪が出始めた部位の頭皮表面に1回あたり200μlずつ毎日2回、半年間塗布した。塗布を開始して半年間経過後、被験者の当該塗布部位の白髪は休止期になって抜け落ちたが、その後、1年半にわたり、当該塗布部位からは黒い髪しか生えてこなかった。
【0105】
〔実施例10:ヒトによる試験2〕
顎に白鬚が生えている40代男性を被験者とした。本実施例においては、原則として白黒の判別は目視にて行った。ただし、目視で白黒の判別がつきにくい場合は株式会社モリテックスのCharm View(30倍)を用いて鬚を撮影し、Adobe Photoshop Creative Suite 2 Premium(Adobe Systems Incorporated)を用いて以下のデータ処理を行った。鬚の表面画像の一部を0.3cm×1.0cmの範囲で選択し、この選択部について色調の平均化を行った。L*値が40を越える鬚を白鬚、40以下の鬚を黒鬚と判断した。
【0106】
まず、試験部位として白鬚を含む顎鬚が生えている部位(1cm2の枠が32個、合計32cm2)を選び、当該試験部位において3ヶ月間で白鬚率(全鬚本数に対する白鬚本数の割合)が変化するか確認した(当該最初の3ヶ月間を未塗布期間とも称する。)。その後、70%エタノールにて希釈した上述の「ファルコレックスローマカミツレB」の10%(v/v)溶液を試験部位の皮膚表面に毎日2回、3ヶ月間塗布した(当該塗布を続けた3ヶ月間を塗布期間とも称する。)。1回の塗布量は試験部位である上記32枠の合計で0.25mlとなるようにし、各枠に等量ずつ塗布した。白鬚率の測定は、未塗布期間開始時(プレ値)、未塗布期間終了時(3ヶ月時点)、及び塗布期間終了時(6ヶ月時点)に行った。
【0107】
未塗布期間、塗布期間ともに、毎日試験部位の鬚剃りを行った。但し、白鬚率の測定前3日間は鬚剃りを行わず鬚を伸ばした。当該伸ばした鬚をひげ剃りで剃ってから集め、目視又はL*値によりカウントを行って白鬚率を算出した。
【0108】
試験経過の概要及び試験結果を図19に示す。白鬚率は未塗布期間開始時が13.0%、未塗布期間終了時が18.3%、塗布期間終了時が12.2%であった。未塗布期間では白鬚率が13.0%から18.3%に増加したが、ローマカミツレ抽出物を3ヶ月間塗布したことで白鬚率が18.3%から12.2%に減少した。
【0109】
〔実施例11:ヒトによる試験3〕
左右両眉に白眉毛が生えている50代男性を被験者とした。本実施例においては、株式会社モリテックスのCharm View(30倍)を用いて眉毛を撮影し、原則として白黒の判別は撮影した写真の画像を用いて目視にて行った。ただし、目視で白黒の判別がつきにくい場合はAdobe Photoshop Creative Suite 2 Premium(Adobe Systems Incorporated)を用いて以下のデータ処理を行った。眉毛の表面画像の一部を0.3cm×1.0cmの範囲で選択し、この選択部について色調の平均化を行った。L*値が40を越える眉毛を白眉毛、40以下の眉毛を黒眉毛と判断した。
【0110】
本実施例は、70%エタノールにて希釈した上述の「ファルコレックスローマカミツレB」の10%(v/v)溶液を左眉に塗布することとし(本実施例において当該試験区をローマカミツレ(+)とも称する。)、コントロールとして70%エタノールを右眉に塗布する(本実施例において当該試験区をローマカミツレ(−)とも称する。)こととした。当該各眉へ塗布する液は「A」、「B」という仮の記号を付したバイアルに入れて被験者に渡し、バイアルに入った液の内容は被験者には知らせなかった。各液でシリンジを使い分け、被験者自身が渡された各液を自らの眉に塗布した。
【0111】
両眉の皮膚表面に上記各液を1回あたり0.25mlずつ毎日2回、3ヶ月間塗布した。塗布開始前及び3ヶ月間塗布後の時点で各眉を撮影し、当該撮影した写真の画像を用いて目視又はL*値により白眉毛の本数をカウントした。当該カウントは、被験者とは別の者によって行うこととし、当該カウントを行う者にも上記各眉に「A」、「B」どちらの液を塗布したのか知らせなかった。即ち、本実施例はダブルブラインドである。上述の実施例10の評価方法と異なり、白眉毛の本数の変化のみを評価した。
【0112】
試験結果を図20に示す。右眉(ローマカミツレ(−))は塗布開始前の白眉毛本数が50本であったのに対し、3ヶ月間塗布後では白眉毛本数が58本であった(白眉毛増加率1.16倍)。左眉(ローマカミツレ(+))は塗布開始前の白眉毛本数が61本であったのに対し、3ヶ月間塗布後では白眉毛本数が63本であり(白眉毛増加率1.03倍)、白眉毛の増加が抑えられた。
【0113】
上述の実施例により、色素幹細胞数の維持・増加、色素細胞数の維持・増加、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進又はMITF−M遺伝子の発現促進を示し、望ましくはこれらのうち複数の活性を示す成分が白毛の予防・治療、非治療的な美容方法に有効であることが示された。
【0114】
ヒトの体毛はその種類によってサイクルの長さが異なり、例えばヒトの鬚のサイクルは約7〜11ヶ月といわれており(参考文献 ひげの科学 小野三嗣 玉川大学出版部 1980年)、ヒトの髪のサイクルは4〜6年といわれているが、ヒトの体毛の種類に関わらず上述の効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明により、有効な白毛の予防・治療剤、有効な非治療的な美容方法が提供される。また、有効なエンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進剤、有効なMITF−M遺伝子の発現促進剤が提供される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、白毛の予防・治療剤、非治療的な美容方法、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤及びMITF−M遺伝子発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
体毛の色素は毛包に存在する色素細胞によって産生されている。色素を産生する色素細胞は色素幹細胞から分化・成熟したものである。毛周期(体毛のサイクル)の休止期ではいったん色素細胞が失われ、新たな体毛の成長が開始されたときに何らかの理由で色素細胞が毛包に存在しないと、当該新たな体毛は白毛となる。
【0003】
近年、高齢化の進行に伴って、体毛においては特に白髪に対する意識が高まっており、白髪を染める染毛剤や白髪の予防剤、治療剤が数多く提供されている。白髪の予防剤、治療剤は、染毛剤に比べて色の変化が現れるまでには時間が長くかかるものの皮膚への刺激が少なく酸化剤・アルカリ剤等による毛髪の損傷もないという長所があり、この長所に着目して好んで使用されている。
【0004】
体毛の色素であるメラニンはチロシンからつくられるので、従来においてはチロシナーゼと色素細胞の関係に着目した白髪の予防剤や治療剤などが開示されてきた。
【0005】
その後更に、転写因子であるMITFがチロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質‐1の発現量を制御しており、MITFの活性上昇が白髪の予防・改善に結びつくことや、メラニン産生とは別異の観点において、XVII型コラーゲンの発現により毛髪の脱色素化が抑制されることが開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−229889号公報 上記公報においては、サンショウ抽出物がメラノサイト遊走能力を増強すること、サンショウ抽出物はメラニン生合成系の酵素であるチロシナーゼの活性を増強せしめたこと、メラノサイトの遊走能力増強作用と抗白髪性はよく相関することが開示されている。
【特許文献2】特開2000−300298号公報 上記公報においては、チロシナーゼをコードするmRNAは一貫して、黒色毛髪の毛包では検出され、白色毛髪の毛包では検出されなかったことが開示されている。
【特許文献3】特開2003−171240号公報 上記公報においては、MITFの活性低下を防ぎ、更には活性上昇させることが、白髪の予防、改善に結びつくことが開示されている。
【特許文献4】特開2009−51753号公報 上記公報においては、XVII型コラーゲンの発現により毛髪の脱色素化が抑制されることが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、白髪に代表される白毛発症のメカニズムには複数の要素が関わっていることが推定され、当該メカニズムは未だ明らかではない。また、特定の酵素や遺伝子に着目した種々の白髪の予防剤、治療剤が開示されてきたが、その効果は未だ満足できるものではなかった。また、白髪以外の体毛においても、加齢と共に生じる白毛を色素を有する毛にしたいという要望がある。
【0008】
そこで本願発明者は、白毛発症のメカニズムに含まれる特定の酵素や遺伝子に着目するのではなく、ヒトは加齢と共に自然に白毛を発症しその進行は緩やかに進む、といういわば白毛の表現型に着目した。そして、ヒトと酷似した白髪表現型のマウスを用いて自然な白毛発症を予防・治療することができる成分を発見することが、有効な白毛の予防・治療剤及び非治療的な美容方法の開発につながると考えた。
【0009】
このような考えに基づき鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は色素幹細胞数の維持・増加、色素細胞数の維持・増加、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進又はMITF−M遺伝子の発現促進を示し、望ましくはこれらのうち複数の活性を示す成分が白毛の予防・治療及び非治療的な美容方法に有効であることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
よって、本発明は、有効な白毛の予防・治療剤、有効な非治療的な美容方法を提供することを解決すべき課題とする。また、有効なエンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進剤、有効なMITF−M遺伝子の発現促進剤を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、
色素幹細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0012】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、
前記色素幹細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種である第1発明に記載の白毛の予防・治療剤である。
【0013】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素幹細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0014】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、
色素細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0015】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、
前記色素細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種である第4発明に記載の白毛の予防・治療剤である。
【0016】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0017】
(第7発明)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤である。
【0018】
(第8発明)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、
第7発明に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0019】
(第9発明)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、
第7発明に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0020】
(第10発明)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするMITF−M遺伝子発現促進剤である。
【0021】
(第11発明)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、
第10発明に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。
【0022】
(第12発明)
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、
第10発明に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。
【0023】
上記第1発明から第12発明において、「サクラ抽出物」とは、バラ科のサクラ属の植物であるサクラの葉、茎、花、種子等から適宜な抽出溶媒等を用いて得られる抽出物をいう。「ローマカミツレ抽出物」とは、ローマカミツレ〔Chamaemelum nobile(L.)〕の葉、茎、花、種子等から適宜な抽出溶媒等を用いて得られる抽出物をいう。「メリッサ抽出物」とは、シソ科セイヨウヤマハッカ属に属し、レモンバームとも呼ばれる多年草メリッサ〔Melissa offcialis〕の葉、茎、花、種子等から適宜な抽出溶媒等を用いて得られる抽出物をいう。「ルテオリン」とは、下記化1に示す化合物である。
【化1】
【0024】
美白効果を有する成分としてジャーマンカミツレ〔Matrcaria chamomilla L.(Compositae)〕の抽出物が、例えば特開2004−51611号公報に開示されているが、上述の成分はローマカミツレ〔Chamaemelum nobile(L.)〕の抽出物である。ローマカミツレとジャーマンカミツレは異なる植物であり、両植物の違いは「カモミール辞典‐ハーブとしての効能・研究開発から産業への応用‐(フレグランスジャーナル社)」に詳しい。例えば、ジャーマンカミツレは細かい鋸歯の葉と白い頭花を持つ1年草であり、ローマカミツレは羽状の葉とヒナギク様の頭状花を持つ多年草である。
【0025】
上記第1発明から第12発明において、「色素幹細胞数の維持・増加」、「色素細胞数の維持・増加」とは、当該各細胞数の維持、当該各細胞数の増加の他、当該各細胞数の減少速度の抑制を含む概念である。また、「白毛の予防・治療」とは、色素を有する毛から白毛への変化の予防、色素を有する毛から白毛への変化の速度の抑制、現状の白毛状態の維持、白毛から色素を有する毛への変化を含む概念である。色素を有する毛は具体的には顕微鏡観察等にてメラニンの有無を確認することによって判断できる。色素を有する毛の色としては、黒色、栗色、亜麻色、茶色、金色、赤色などを例示することができる。「体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する」とは、現状の白毛状態の維持を含む概念である。
【発明の効果】
【0026】
白髪モデル動物は、ヒト以外の動物であって、体毛の白毛割合が経時変化するという表現型を持つ各種のモデル動物中から任意に選択することができるが、より好ましくは体毛の白毛化現象についてヒトとの共通性が大きい哺乳動物であり、更に好ましくは、小型、ヘアサイクルの適切さ、管理の容易さ等の点からラット、マウス等の齧歯目動物であり、とりわけ好ましくはマウスである。ヒトとの共通性が大きい白髪モデル動物を用いるので、当該モデル動物で確認される効果は、ヒトにおいても確認される蓋然性が高い。即ち、当該モデル動物で確認される効果は信頼性が高い。
【0027】
本願においては、白髪モデル動物として、PCT/JP2006/302783号に開示された公知の白髪モデルマウスを使用した。この白髪モデルマウスは、詳細な説明は省くが、一定の遺伝子型を持ったノックアウト・トランスジェニックマウスであって、生後はじめて生える体毛の色が黒色ないしほぼ黒色であり、加齢と共に白毛を自然発症するという表現型を持っている。
【0028】
(第1発明)
ヒトは加齢と共に自然に白毛を発症しその進行は緩やかに進む。当該白毛の進行の過程において色素幹細胞の数は加齢と共に減少していく。第1発明によれば、色素幹細胞数の維持・増加により新たな体毛の成長が開始されたとき(即ち、新たな体毛のサイクルが開始されたとき)に色素細胞へ分化・成熟すべき色素幹細胞が確保される。即ち、体毛のサイクルの開始段階で毛包に色素細胞が存在するので、色素を有する毛が生えてくる。
【0029】
(第2発明)
第2発明によれば、より有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンは色素幹細胞数の維持・増加成分であるが、色素細胞数の維持・増加が推定され、エンドセリンレセプターB遺伝子及びMITF−M遺伝子の発現も促進する。本願発明者は、これら複数の活性の複合的な関与により、より有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【0030】
(第3発明、第6発明、第9発明及び第12発明)
全体毛本数中における白毛本数の割合が増加するのは、加齢における自然な現象である。例えば、加齢にともない白髪や白ひげ等が増加する。第3発明、第6発明、第9発明及び第12発明によれば、体毛そのものの白毛化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物は、それぞれ、色素幹細胞数の維持・増加、色素細胞数の維持・増加、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進及びMITF−M遺伝子の発現促進から選ばれる複数の活性を有しているため、有効な非治療的美容方法が提供される。
白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「白毛の増加を抑制したい、現在の白毛状態を維持したい、又は白毛から色素を有する毛へ改善したい」など変化の度合いについての要望が多く、これらの要望に応えることができる非治療的美容方法が提供される。
【0031】
(第4発明)
第4発明によれば、新たな体毛の成長が開始されたとき(即ち、新たな体毛のサイクルが開始されたとき)に色素細胞が確保される。即ち、体毛のサイクルの開始段階で毛包に色素細胞が存在するので、色素を有する毛が生えてくる。
【0032】
(第5発明)
第5発明によれば、より有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンは色素幹細胞数を維持・増加させ、かつ、白毛の予防・治療効果を有しているので、色素細胞数、特に毛包における色素細胞数の維持・増加が合理的に推定される。また、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンはエンドセリンレセプターB遺伝子及びMITF−M遺伝子の発現も促進する。本願発明者は、上記した複数の活性の複合的な関与により、より有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【0033】
(第7発明)
第7発明によれば、有効なエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤が提供される。エンドセリンレセプターB遺伝子の発現が促進されると、白毛の予防・治療効果がある。
【0034】
(第8発明)
第8発明によれば、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進による、有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンはエンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する上に、色素幹細胞数を維持・増加し、色素細胞数の維持・増加が推定され、及びMITF−M遺伝子の発現を促進する。メリッサ抽出物は、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する上に、MITF−M遺伝子の発現を促進する。本願発明者は、これら複数の活性の複合的な関与により、有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【0035】
(第10発明)
第10発明によれば、有効なMITF−M遺伝子発現促進剤が提供される。MITF−M遺伝子の発現が促進されると、白毛の予防・治療効果がある。その他、色素細胞活性の促進などの効果がある。
【0036】
(第11発明)
第11発明によれば、MITF−M遺伝子の発現促進による、有効な白毛の予防・治療剤が提供される。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンはMITF−M遺伝子の発現を促進する上に、色素幹細胞数を維持・増加し、色素細胞数の維持・増加が推定され、及びエンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する。メリッサ抽出物は、MITF−M遺伝子の発現を促進する上に、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現を促進する。本願発明者は、これら複数の活性の複合的な関与により、有効な白毛の予防・治療剤が実現したと推定している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】黒毛か白毛かの判断例を示す写真である。
【図2】L*値の測定に供した毛束を示す写真である。
【図3】ローマカミツレ抽出物の白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図4】ローマカミツレ抽出物の有する効果と濃度依存性の関係を示すグラフである。
【図5】サクラ抽出物の白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図6】ルテオリンの白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図7】メリッサ抽出物の白毛予防・治療効果を示すグラフである。
【図8】ローマカミツレ抽出物の色素幹細胞数維持・増加効果を示すグラフである。
【図9】サクラ抽出物の色素幹細胞数維持・増加効果を示すグラフである。
【図10】ルテオリンの色素幹細胞数維持・増加効果を示すグラフである。
【図11】ローマカミツレ抽出物のエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図12】サクラ抽出物のエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図13】ルテオリンのエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図14】メリッサ抽出物のエンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図15】ローマカミツレ抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図16】サクラ抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図17】ルテオリンのMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図18】メリッサ抽出物のMITF−M遺伝子プロモーター活性促進効果を示すグラフである。コントロールに対する相対比で示す。
【図19】ヒト鬚に対するローマカミツレ抽出物の白鬚の予防・治療効果を示すグラフである。
【図20】ヒト眉毛に対するローマカミツレ抽出物の白眉毛の予防・治療効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0039】
〔サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、メリッサ抽出物、ルテオリン〕
「サクラ抽出物」とは、バラ科のサクラ属の植物であるサクラの葉、茎、花、種子等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。本発明の実施にあたっては、抽出物そのものを使用しても良いし、抽出溶媒等に溶解した状態の溶液を使用しても良い。サクラ抽出物を含有する具体的な市販品として、例えば、一丸ファルコス(株)製の商品名「サクラエキスB」を挙げることができる。
【0040】
上記したサクラは、バラ科サクラ属に分類される植物の総称であって、具体例として、サクラ亜属のヒガンザクラ、ソメイヨシノ、ヤエザクラ、オオシマザクラ、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、エドヒガン、マメザクラ、ミヤマザクラ、タカネザクラ、カスミザクラ、チョウジザクラ、コヒガン、サトザクラ、カンザクラ等を挙げることができる。
【0041】
上記した抽出溶媒の種類は限定されないが、具体例として、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、エーテル類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、これらの1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。抽出溶媒は特に水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0042】
「ローマカミツレ抽出物」とは、ローマカミツレ〔Chamaemelum nobile(L.)〕の葉、茎、花、種子等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。美白効果を有する成分としてジャーマンカミツレ〔Matrcaria chamomilla L.(Compositae)〕の抽出物が、例えば特開2004−51611号公報に開示されているが、ローマカミツレとジャーマンカミツレは異なる植物である。又、抽出物の意味及び抽出溶媒の種類については、サクラ抽出物の場合と同様である。ローマカミツレ抽出物を含有する具体的な市販品として、例えば、一丸ファルコス(株)製の商品名「ファルコレックスローマカミツレB」を挙げることができる。
【0043】
「メリッサ抽出物」とは、シソ科セイヨウヤマハッカ属に属し、レモンバームとも呼ばれる多年草メリッサ〔Melissa offcialis〕の葉、茎、花、種子等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の方法により得られる抽出物をいう。又、抽出物の意味及び抽出溶媒の種類については、サクラ抽出物の場合と同様である。メリッサ抽出物を含有する具体的な市販品として、例えば、一丸ファルコス(株)製の商品名「ファルコレックスメリッサB」を挙げることができる。
【0044】
「ルテオリン」とは、上記化1に示した化合物である。当該化合物は一般に市販されているものを使用してもよく、紫蘇、春菊、ピーマン、味噌、カミツレなどの植物から抽出、精製したものを使用しても良い。
【0045】
〔エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤〕
遺伝子の発現においては、遺伝子の転写、翻訳により遺伝子発現が実現するという流れがある。プロモーターとはRNA合成酵素の結合部位であり、プロモーターの活性化は当該プロモーターにより転写が支配される遺伝子のmRNA量の増加を意味し、ひいては遺伝子の発現促進につながる。ゆえに、本発明におけるエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤は、エンドセリンレセプターB遺伝子プロモーター活性化剤を含む概念であり、MITF−M遺伝子発現促進剤はMITF−M遺伝子プロモーター活性化剤を含む概念である。
【0046】
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤は、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするものである。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種が必須成分である。
【0047】
(必須成分)
エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなる場合、例えば抽出物そのもの、ルテオリンそのもの、上記4成分の2種以上の混合物がエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤を構成する。この場合、当該剤の量そのものが有効成分量となる。
【0048】
エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする場合、本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤における上記有効成分の含有量(有効成分量)は特に限定されないが、0.0010質量%〜5.0質量%の範囲内が好ましく、0.010質量%〜3.0質量%の範囲内が特に好ましい。
【0049】
(その他の成分)
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、多価アルコールを含有させることができる。多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。
【0050】
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0051】
多価アルコールは、単独で配合してもよいし、複数種を組み合わせて配合してもよい。本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、アミノ酸類を含有させることができる。アミノ酸類としては、アミノ酸及びその塩が挙げられる。アミノ酸としては、グリシン、小麦アミノ酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、メチオニン等が挙げられる。
【0052】
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、剤型等に応じて、溶媒、油性成分、界面活性剤等を含有させることができる。溶媒としては、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール等が挙げられる。
【0053】
油性成分としては、油脂、ロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、シリコーン類、炭化水素等が挙げられる。
【0054】
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0055】
ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。
【0056】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0058】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0059】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0060】
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、グリセリン変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0061】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0062】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0063】
非イオン性界面活性剤としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0065】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、ホホバワックスPEG−80等が挙げられる。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0067】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
【0068】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0069】
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤には、さらにソルビトール、マルトース等の糖類、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム等の水溶性高分子化合物、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、EDTA−2Na等のキレート剤、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定剤、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸等のpH調整剤、植物又は生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤、美白剤、皮膚用柔軟化剤、殺菌剤等を任意に選択して配合することができる。
【0070】
また、本発明の効果を妨げない限りにおいて、常法で薬学的に許容される液体、固体等の公知の各種担体と混合し、また必要に応じて安定化剤、矯味剤、賦形剤、保存剤、溶解補助剤、等張化剤、無痛化剤、結合剤、被覆剤、潤沢剤、崩壊剤、などを加えることも可能である。
【0071】
更に、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0072】
(剤型)
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤の剤型は限定されないが、例えば液状、乳液状、クリーム状又はゲル状が好適である。また、顆粒剤、糖衣剤、カプセル剤、吸入剤とすることも好ましい。
【0073】
(投与経路)
本発明のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤の投与経路は特に限定されず、経口投与、吸入投与、手や塗布具等によって皮膚に塗布する経皮吸収、血管投与、皮下注射および皮内注射などが可能であり、経皮吸収及び経口投与が好ましく、経皮吸収が特に好ましい。
【0074】
〔体毛〕
本発明において体毛はヒトを含む動物の任意の毛を意味する。本発明における体毛は頭に生える毛髪、口髭や顎鬚を含むひげ、眉毛、睫毛、腕・脚・胸に生える毛を好ましく例示することができ、毛髪、ひげ、眉毛、睫毛を更に好ましく例示することができ、毛髪、ひげを特に好ましく例示することができる。
【0075】
また、体毛において、色素を有する毛とはメラニンを有する体毛であり、白毛とはメラニンを有しない体毛である。例えば、毛髪においては、色素を有する毛とは色素を有する髪であり、白毛とは白髪である。ひげにおいては、色素を有する毛とは色素を有するひげであり、白毛とは、白ひげである。他の体毛においても、メラニンの有無により適宜体毛の名称が異なる。
【0076】
〔色素幹細胞数の維持・増加成分及び色素幹細胞数の維持・増加剤〕
本発明における白毛の予防・治療剤の色素幹細胞数の維持・増加成分は特に限定されないが、上述のサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの1種を単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。本発明における色素幹細胞数の維持・増加剤は、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするものである。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が必須成分である。
【0077】
(必須成分)
本発明における色素幹細胞数の維持・増加剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなる場合、例えば抽出物そのもの、ルテオリンそのもの、上記3成分の2種以上の混合物が色素幹細胞数の維持・増加剤を構成する。この場合、当該剤の量そのものが有効成分量となる。
【0078】
本発明における白毛の予防・治療剤の色素幹細胞数の維持・増加成分、また色素幹細胞数の維持・増加剤がサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種を有効成分とする場合においては、これらの成分の含有量は特に限定されないが、0.0010質量%〜5.0質量%の範囲内が好ましく、0.010質量%〜3.0質量%の範囲内が特に好ましい。
【0079】
本発明における色素幹細胞数の維持・増加剤に含有させることができるその他の成分、剤型及び投与経路については、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤についての(その他の成分)、(剤型)、(投与経路)の記載と同様である。
【0080】
〔色素細胞数の維持・増加成分及び色素細胞数の維持・増加剤〕
本発明における白毛の予防・治療剤の色素細胞数の維持・増加成分は特に限定されないが、上述のサクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの1種を単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0081】
本発明における色素細胞数の維持・増加剤は、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とするものである。サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種が必須成分である。
【0082】
本発明における白毛の予防・治療剤の色素細胞数の維持・増加成分、色素細胞数の維持・増加剤の必須成分、その他の成分,剤型、及び投与経路については、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤および色素幹細胞数の維持・増加剤についての(必須成分)、(その他の成分)、(剤型)、(投与経路)の記載と同様である。
【0083】
〔白毛の予防・治療剤〕
本発明における白毛の予防・治療剤は、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤、色素幹細胞数の維持・増加成分又は色素細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有する白毛の予防・治療剤である。また、これらの有効成分を複数含有する白毛の予防・治療剤としても良い。
【0084】
本発明の白毛の予防・治療剤における上記有効成分の含有量(有効成分量)は特に限定されないが、0.0010質量%〜5.0質量%の範囲内が好ましく、0.010質量%〜3.0質量%の範囲内が特に好ましい。
【0085】
当該有効成分量の計算は、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤における必須成分の有効成分量、MITF−M遺伝子発現促進剤における必須成分の有効成分量、色素幹細胞数の維持・増加成分の成分量、色素細胞数の維持・増加成分の成分量により計算される。
【0086】
本発明の白毛の予防・治療剤に含有させることができるその他の成分、剤型、及び投与経路については、上述のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤、MITF−M遺伝子発現促進剤、色素幹細胞数および色素細胞数の維持・増加剤についての(その他の成分)、(剤型)、(投与経路)の記載と同様である。
【0087】
白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「予防したい、維持したい、又は改善したい」など変化の度合いについての要望が多く、当該変化を望む部位に対する剤の投与量を適宜調節することにより、本発明はこれらの要望に応えることができる。
【0088】
〔非治療的な美容方法〕
本発明における非治療的な美容方法は、上述の色素幹細胞数の維持・増加剤、色素細胞数の維持・増加剤、エンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤又はMITF−M遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進する非治療的な美容方法である。また、これらの剤を複数用いても良い。
【0089】
本発明の非治療的な美容方法における剤の投与経路は特に限定されず、経口投与、吸入投与、手や塗布具等によって皮膚に塗布する経皮吸収、血管投与、皮下注射および皮内注射などが可能であり、経皮吸収及び経口投与が好ましく、経皮吸収が特に好ましい。経皮吸収においては、剤の毛髪又はひげが生えている部位への適用が好ましく、適用範囲は全体又は部分的な局部適用を含む。適用は塗布を含む概念である。
【0090】
白髪を含む白毛の状態・変化については一律の評価を得ることは難しく、むしろ現状について「予防したい、維持したい、又は改善したい」など変化の度合いについての要望が多く、当該変化を望む部位に対する上記剤の投与量を適宜調節することにより、これらの要望に応えることができる。
【実施例】
【0091】
以下に本発明の実施例を比較例(コントロールとも称する)と共に説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0092】
(白髪モデルマウス)
白髪モデルマウスとして、PCT/JP2006/302783号に開示された公知の白髪モデルマウス(以下、単に「マウス」という)を使用した。このマウスは、詳細な説明は省くが、上述の通り一定の遺伝子型を持ったノックアウト・トランスジェニックマウスであって、生後はじめて生える体毛の色が黒色ないしほぼ黒色であり、加齢と共に白毛を自然発症するという表現型を持っている。
【0093】
以下の試験において、モデルマウスに生える毛は体毛と称し、メラニンを有する体毛を「黒毛」、メラニンを有しない体毛を「白毛」と称する。
【0094】
〔マウスによる薬剤の白毛の予防・治療効果の評価方法〕
マウスが生後4ケ月齢の時点で体毛のサイクルの休止期を迎えるのに合わせ、マウスの背中部における同一特定部位の特定面積の体毛をバリカンまたはシェーバーにより長方形の形状(サイズ:1.5cmx3.0cm)に毛刈りし(当該刈った体毛を以下、検体毛と称する)、毛刈によって得た全検体毛本数を計数した上で、以下の各例の方法で供試薬剤を当該毛刈り部位の皮膚表面に一日1回投与を続けた。最初に供試薬剤を投与した日が試験開始日である。その後1ヶ月ごとに供試薬剤の投与部位の毛刈りを実施し、検体毛の白毛率を後述の方法により必要に応じて測定した。
【0095】
〔白毛率の視覚的観察による測定方法〕
検体毛を、光学顕微鏡(オリンパス社製BX61、10倍〜20倍)にて1本ずつ白毛か黒毛かを分別し、白毛率=白毛本数/全検体毛本数として算出した。白毛か黒毛かの分別においては、マウス体毛である検体毛のメジュラー中にメラニンが見られるか否かを基準として判断した。この基準に基づく黒毛の例を図1の「黒毛」と表記した上側の顕微鏡写真(メジュラー中にメラニンが詰まっている)に、白毛の例を図1の「白毛」と表記した下側の顕微鏡写真(メジュラー中にメラニンが一切見られない)にそれぞれ示す。図1の例では両極端の例を示しているが、中間の場合、即ち少しでもメラニンが確認できれば、黒毛であるとして判断した。
【0096】
〔白毛率の色彩色差計による測定方法〕
検体毛の白毛率を色彩色差計を用いて測定する方法を検討した。予めマウスの、目視で明らかに白毛率が異なると思われる61種の体毛について前記視覚的観察による白毛率を求めた後、色彩測色計(コニカミノルタ社製CR−400)を用いて、L*a*b*表色系の明度指数L*を測定した。測定においては、図2に示すように刈り取った検体毛を毛束状にし、色彩色差計のプローブを毛束に押し当てて測定した。図2の右側はほぼ100%白毛の毛束を、左側は白毛混じりの毛束を示している。白毛率(%)と、測定したL*値との相関性を表計算ソフト(マイクロソフト社エクセル)により統計処理をしたところ、yを白毛率(%)、xをL*値、決定係数R2とした時、y=0.021x+0.4024 R2=0.9101という一次回帰直線を求めることができ、白毛率とL*値には相関があることが示された。
【0097】
〔実施例1:有効成分であるローマカミツレ抽出物の経皮吸収による白毛の予防・治療効果〕
ローマカミツレ抽出物試験区として、水と1,3−ブチレングリコールが質量比1:1で混合された溶媒中に有効成分としてのローマカミツレ抽出物を0.6質量%含有する一丸ファルコス(株)製「ファルコレックスローマカミツレB」の白毛予防・治療効果を評価した。マウスに対し、毛刈り部位に体積比(v/v)でエタノール:水=7:3(以下、70%エタノールと称する)にて希釈したファルコレックスローマカミツレBの10%(v/v)溶液を毎日200μL塗布した。コントロールとして、希釈溶媒である70%エタノールを同様に塗布した。n(以後、nは検体数を示す)=7にて5ヶ月間塗布しつづけ、試験開始から1ヶ月ごとに白毛率を求めた結果を図3に示す。なお、試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。
白毛率の平均は、ローマカミツレ抽出物の投与区(図3中では▲でプロットしている。)では、投与期間1ヶ月(図3中では1Mと表現している。以下、期間の長さに合わせて2M等とする。)で12.3%、2ヶ月で11.3%、3ヶ月で16.1%、4ヶ月で16.4%、5ヶ月で13.8%であった。一方、70%エタノールの投与区(図3中では◆でプロットしている。)では、1ヶ月で13.9%、2ヶ月で14.7%、3ヶ月で21.5%、4ヶ月で23.5%、5ヶ月で24.4%であった。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物試験区とコントロールの比較から、ローマカミツレ抽出物は有意に白毛率の上昇を抑制し、白毛予防・治療効果を有することが確認された。また、ローマカミツレ抽出物は非治療的な美容方法に用いることが可能であることが示された。
【0098】
〔実施例2:有効成分の濃度依存性〕
有効成分の濃度と効果の関係を評価した。マウスへの投与条件は実施例1と同様で、70%エタノールにて希釈したファルコレックスローマカミツレBの2%(v/v)溶液、5%(v/v)溶液および10%(v/v)溶液をそれぞれ5ヶ月間塗布し、試験開始から5ヶ月後に塗布部位の検体毛と、70%エタノールを同様に塗布した部位の検体毛とのL*値の差を比較した結果を白毛率に換算して図4に示す。なお、試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。
白毛率の平均は、70%エタノールの投与区が22.9%、2%(v/v)溶液の投与区が15.6%、5%(v/v)溶液の投与区が13.1%、10%(v/v)溶液の投与区が11.0%であった。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物の濃度と白毛率の上昇抑制効果は比例しており、白毛予防・治療効果は有効成分の濃度に依存することが確認された。また、非治療的な美容方法における効果も有効成分の濃度に依存することが確認された。本実施例の結果より、有効成分の投与量を調節することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化の抑制や体毛における白毛から色素を有する毛への変化の促進について所望の程度を実現可能であることが示された。
【0099】
〔実施例3,4:有効成分であるサクラ抽出物、ルテオリンの経皮吸収による白毛の予防・治療効果〕
実施例1と同様の条件で、サクラ抽出物試験区として、水と1,3−ブチレングリコールが質量比1:1で混合された溶媒中に有効成分としてのサクラ抽出物を2.0質量%含有する一丸ファルコス(株)製「サクラエキスB」を、70%エタノールにて10%(v/v)希釈した溶液を用いn=7にて白毛予防・治療効果を評価した結果を図5に示す。また、ルテオリン試験区として、LKT社製「ルテオリン」を70%エタノールにて1%(w/v)希釈した溶液を用いn=13にて白毛予防・治療効果を評価した結果を図6に示す。なお、それぞれの試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。
図5に示す白毛率の平均は、サクラ抽出物の投与区(図5中では■でプロットしている。)では、塗布前で7.0%、投与期間1ヶ月で12.0%、2ヶ月で11.4%、3ヶ月で16.1%、4ヶ月で15.3%、5ヶ月で17.8%、6ヶ月で19.3%、7ヶ月で15.9%、8ヶ月で19.0%、9ヶ月で19.0%であった。一方、70%エタノールの投与区(図5中では◆でプロットしている。)では、塗布前で7.0%、投与期間1ヶ月で13.9%、2ヶ月で14.7%、3ヶ月で21.5%、4ヶ月で23.5%、5ヶ月で24.4%、6ヶ月で26.7%、7ヶ月で26.8%、8ヶ月で31.2%、9ヶ月で35.3%であった。
図6に示す白毛率の平均は、ルテオリンの投与区(図6中では■でプロットしている。)では、塗布前で14.3%、投与期間1ヶ月で14.1%、2ヶ月で16.5%、3ヶ月で19.0%、4ヶ月で21.1%であった。一方、70%エタノールの投与区(図6中では◆でプロットしている。)では、塗布前で14.1%、1ヶ月で20.3%、2ヶ月で25.0%、3ヶ月で30.2%、4ヶ月で35.1%であった。
以上の通り、サクラ抽出物試験区とコントロールの比較、ルテオリン試験区とコントロールの比較から、サクラ抽出物、ルテオリンは有意に白毛率の上昇を抑制し、白毛予防・治療効果を有することが確認された。また、サクラ抽出物、ルテオリンは非治療的な美容方法に用いることが可能であることが示された。
【0100】
〔実施例5:有効成分であるメリッサ抽出物の経皮吸収による白毛の予防・治療効果〕
メリッサ抽出物試験区として、水と1,3−ブチレングリコールが質量比1:1で混合された溶媒中に有効成分としてのメリッサ抽出物を0.8質量%含有する一丸ファルコス(株)製「ファルコレックスメリッサB」を、70%エタノールにて10%(v/v)希釈した溶液を用いn=5にて白毛予防・治療効果を評価した。マウスへの投与条件は実施例1と同様であるが、溶液の塗布期間は2週間とし、試験開始から2週間後に塗布部位の検体毛と、70%エタノールを塗布した部位の体毛とのL*値の差(ΔL*)を比較した結果を図7に示す。なお、試験期間中の毛刈部位の全検体毛本数はほぼ一定の数で推移した。ΔL*値の平均は、メリッサ抽出物の投与区で4.59、70%エタノールの投与区で2.13であった。
以上の通り、メリッサ抽出物試験区とコントロールの比較から、メリッサ抽出物は有意に体毛を黒色化し、白毛予防・治療効果を有することが確認された。また、メリッサ抽出物は非治療的な美容方法に用いることが可能であることが示された。
【0101】
〔実施例6:有効成分の経皮吸収による色素幹細胞数の維持・増加効果〕
有効成分が色素幹細胞数に与える効果を評価した。色素幹細胞数の計数は、以下の(1)〜(9)に述べる手順により実施した。
(1)検体毛を毛刈りした部分の皮膚の一部(約10mm×5mm角)を切除後に縫合可能なように切り取る。
(2)切り取った皮膚を未固定にて凍結包埋する
(3)凍結切片を12μmの厚さにて作製する
(4)スライドグラスに切片をのせ、10分間冷アセトンで固定する
(5)PBSにて洗浄し、4℃で抗dct抗体(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)および抗c−kit抗体(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)にて免疫染色する
(6)12時間後、PBSにて洗浄する
(7)Alexa 594 donkey αgoat IgG(サンタクルーズ社製を1:1000で使用)およびAlexa 488 donkey αRat IgG(サンタクルーズ社を1:1000)にて室温で10分間二次抗体反応をさせる。
(8)PBSにて洗浄し、核染色後封入する。
(9)光学顕微鏡(オリンパス社製BX61 20〜40倍)にて毛包を観察し、下記(I)〜(III)の全ての条件を満たす細胞を色素幹細胞とし、各例で評価するマウス皮膚中の毛包70本中の色素幹細胞を計数した。
なお、色素幹細胞と判断する条件は以下の(I)〜(III);
(I)体毛バルジ領域に存在する細胞である。
(II)dctが発現している。
(III)c−kitの発現がない細胞、もしくは弱い細胞である。
を満たすものとした。
以上の方法を用い、実施例1,3,4で使用したマウスおよびコントロールのマウスを対象に実施した結果を、図8〜10に示す。
図8について、実験開始後4ヶ月時点での色素幹細胞数の平均は、ファルコレックスローマカミツレBの10%(v/v)溶液の投与区(n=2)では22.2個、70%エタノールの投与区(n=5)では14.4個であり、t−testによりこれらの間には有意差が認められた。
図9について、実験開始後7ヶ月時点での色素幹細胞数の平均は、サクラエキスBの10%(v/v)溶液の投与区(n=4)では22.3個、70%エタノールの投与区(n=5)では14.4個であり、t−testによりこれらの間には有意差が認められた。
図10について、実験開始後4ヶ月時点での色素幹細胞数の平均は、ルテオリンの1%(w/v)溶液の投与区(n=6)では17.2個、70%エタノールの投与区では10.0個であり、Paired t−testによりこれらの間には有意差が認められた。
以上の通り、各試験区とコントロールの比較から、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンは有意に色素幹細胞数を維持・増加させる効果を有することが確認された。この結果は、これら成分が同時に色素細胞数を維持・増加する効果を有することも示しているのは明らかである。
【0102】
〔実施例7:有効成分のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進効果〕
有効成分がエンドセリンレセプターB(EDNRB)遺伝子発現促進に与える効果を評価した。評価は、以下の方法により実施した。
(1)6cm dishを用いて、SK−Mel28ヒトメラノーマ細胞にリポフェクトアミンLTX(Invitrogen社)を使用し、発明者らが作製したヒトEDNRB遺伝子プロモーター(上流1013bp)配列が入ったプラスミドDNAをトランスフェクションする。
(2)24時間後、96ウエルプレートに細胞をまきなおす。
(3)24時間後、有効成分を100μLの培地に対し0.1μL添加した。なお各有効成分は、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物およびメリッサ抽出物については実施例1,3,5で使用した市販品を希釈せずそのまま用い、ルテオリンについてはアナリティコン社製の10mg/mlジメチルスルホキシド溶液として市販されているものを用いた。コントロールとしては、各市販品の溶媒を用いた。
(4)24時間後、Dual Ruciferase Kit(Promega社)を使用しプロモーター活性を測定した。測定は、当該キットの説明書に記載の方法に従った。
以上の方法を用い、上述したローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物について評価した結果を図11〜14に示す。
ローマカミツレ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が3.50倍に上昇した(図11)。サクラ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が1.51倍に上昇した(図12)。ルテオリンの投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.63倍に上昇した(図13)。メリッサ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.57倍に上昇した(図14)。なお、遺伝子の発現においては、遺伝子の転写から翻訳へという流れがある。プロモーターの活性化からは転写の活性化(転写量の増大)が合理的に推測さるので、即ちプロモーターの活性化からは遺伝子発現の促進が合理的に推定できる。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物は有意にエンドセリンレセプターB遺伝子発現を促進させる効果を有することが確認された。
【0103】
〔実施例8:有効成分のMITF−M遺伝子発現促進効果〕
(1)6cm dishを用いて、SK−Mel28ヒトメラノーマ細胞にリポフェクトアミンLTX(Invitrogen社)を使用し、発明者らが作製したヒトMITF−M 遺伝子プロモーター(上流330bp)配列が入ったプラスミドDNAをトランスフェクションする。
(2)24時間後、96ウエルプレートに細胞をまきなおす。
(3)24時間後、有効成分を100μLの培地に対し0.1μL添加した。なお各有効成分は、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物およびメリッサ抽出物については実施例1,3,5で使用した市販品を希釈せずそのまま用い、ルテオリンについてはアナリティコン社製の10mg/mlジメチルスルホキシド溶液として市販されているものを用いた。コントロールとしては、各市販品の溶媒を用いた。
(4)24時間後、Dual Ruciferase Kit(Promega社)を使用しプロモーター活性を測定した。測定は、当該キットの説明書に記載の方法に従った。
以上の方法を用い、上述したローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物について評価した結果を図15〜18に示す。
ローマカミツレ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が1.79倍に上昇した(図15)。サクラ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.22倍に上昇した(図16)。ルテオリンの投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が2.68倍に上昇した(図17)。メリッサ抽出物の投与区では、コントロールと比較してプロモーター活性が1.88倍に上昇した(図18)。なお、遺伝子の発現においては、遺伝子の転写から翻訳へという流れがある。プロモーターの活性化からは転写の活性化(転写量の増大)が合理的に推測さるので、即ちプロモーターの活性化からは遺伝子発現の促進が合理的に推定できる。
以上の通り、ローマカミツレ抽出物、サクラ抽出物、ルテオリンおよびメリッサ抽出物は有意にMITF−M遺伝子発現を促進させる効果を有することが確認された。
【0104】
〔実施例9:ヒトによる試験〕
頭髪に白髪が出始めた30代男性を被験者とし、70%エタノールにて希釈した上述の「サクラエキスB」の1%(v/v)溶液を被験者の白髪が出始めた部位の頭皮表面に1回あたり200μlずつ毎日2回、半年間塗布した。塗布を開始して半年間経過後、被験者の当該塗布部位の白髪は休止期になって抜け落ちたが、その後、1年半にわたり、当該塗布部位からは黒い髪しか生えてこなかった。
【0105】
〔実施例10:ヒトによる試験2〕
顎に白鬚が生えている40代男性を被験者とした。本実施例においては、原則として白黒の判別は目視にて行った。ただし、目視で白黒の判別がつきにくい場合は株式会社モリテックスのCharm View(30倍)を用いて鬚を撮影し、Adobe Photoshop Creative Suite 2 Premium(Adobe Systems Incorporated)を用いて以下のデータ処理を行った。鬚の表面画像の一部を0.3cm×1.0cmの範囲で選択し、この選択部について色調の平均化を行った。L*値が40を越える鬚を白鬚、40以下の鬚を黒鬚と判断した。
【0106】
まず、試験部位として白鬚を含む顎鬚が生えている部位(1cm2の枠が32個、合計32cm2)を選び、当該試験部位において3ヶ月間で白鬚率(全鬚本数に対する白鬚本数の割合)が変化するか確認した(当該最初の3ヶ月間を未塗布期間とも称する。)。その後、70%エタノールにて希釈した上述の「ファルコレックスローマカミツレB」の10%(v/v)溶液を試験部位の皮膚表面に毎日2回、3ヶ月間塗布した(当該塗布を続けた3ヶ月間を塗布期間とも称する。)。1回の塗布量は試験部位である上記32枠の合計で0.25mlとなるようにし、各枠に等量ずつ塗布した。白鬚率の測定は、未塗布期間開始時(プレ値)、未塗布期間終了時(3ヶ月時点)、及び塗布期間終了時(6ヶ月時点)に行った。
【0107】
未塗布期間、塗布期間ともに、毎日試験部位の鬚剃りを行った。但し、白鬚率の測定前3日間は鬚剃りを行わず鬚を伸ばした。当該伸ばした鬚をひげ剃りで剃ってから集め、目視又はL*値によりカウントを行って白鬚率を算出した。
【0108】
試験経過の概要及び試験結果を図19に示す。白鬚率は未塗布期間開始時が13.0%、未塗布期間終了時が18.3%、塗布期間終了時が12.2%であった。未塗布期間では白鬚率が13.0%から18.3%に増加したが、ローマカミツレ抽出物を3ヶ月間塗布したことで白鬚率が18.3%から12.2%に減少した。
【0109】
〔実施例11:ヒトによる試験3〕
左右両眉に白眉毛が生えている50代男性を被験者とした。本実施例においては、株式会社モリテックスのCharm View(30倍)を用いて眉毛を撮影し、原則として白黒の判別は撮影した写真の画像を用いて目視にて行った。ただし、目視で白黒の判別がつきにくい場合はAdobe Photoshop Creative Suite 2 Premium(Adobe Systems Incorporated)を用いて以下のデータ処理を行った。眉毛の表面画像の一部を0.3cm×1.0cmの範囲で選択し、この選択部について色調の平均化を行った。L*値が40を越える眉毛を白眉毛、40以下の眉毛を黒眉毛と判断した。
【0110】
本実施例は、70%エタノールにて希釈した上述の「ファルコレックスローマカミツレB」の10%(v/v)溶液を左眉に塗布することとし(本実施例において当該試験区をローマカミツレ(+)とも称する。)、コントロールとして70%エタノールを右眉に塗布する(本実施例において当該試験区をローマカミツレ(−)とも称する。)こととした。当該各眉へ塗布する液は「A」、「B」という仮の記号を付したバイアルに入れて被験者に渡し、バイアルに入った液の内容は被験者には知らせなかった。各液でシリンジを使い分け、被験者自身が渡された各液を自らの眉に塗布した。
【0111】
両眉の皮膚表面に上記各液を1回あたり0.25mlずつ毎日2回、3ヶ月間塗布した。塗布開始前及び3ヶ月間塗布後の時点で各眉を撮影し、当該撮影した写真の画像を用いて目視又はL*値により白眉毛の本数をカウントした。当該カウントは、被験者とは別の者によって行うこととし、当該カウントを行う者にも上記各眉に「A」、「B」どちらの液を塗布したのか知らせなかった。即ち、本実施例はダブルブラインドである。上述の実施例10の評価方法と異なり、白眉毛の本数の変化のみを評価した。
【0112】
試験結果を図20に示す。右眉(ローマカミツレ(−))は塗布開始前の白眉毛本数が50本であったのに対し、3ヶ月間塗布後では白眉毛本数が58本であった(白眉毛増加率1.16倍)。左眉(ローマカミツレ(+))は塗布開始前の白眉毛本数が61本であったのに対し、3ヶ月間塗布後では白眉毛本数が63本であり(白眉毛増加率1.03倍)、白眉毛の増加が抑えられた。
【0113】
上述の実施例により、色素幹細胞数の維持・増加、色素細胞数の維持・増加、エンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進又はMITF−M遺伝子の発現促進を示し、望ましくはこれらのうち複数の活性を示す成分が白毛の予防・治療、非治療的な美容方法に有効であることが示された。
【0114】
ヒトの体毛はその種類によってサイクルの長さが異なり、例えばヒトの鬚のサイクルは約7〜11ヶ月といわれており(参考文献 ひげの科学 小野三嗣 玉川大学出版部 1980年)、ヒトの髪のサイクルは4〜6年といわれているが、ヒトの体毛の種類に関わらず上述の効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明により、有効な白毛の予防・治療剤、有効な非治療的な美容方法が提供される。また、有効なエンドセリンレセプターB遺伝子の発現促進剤、有効なMITF−M遺伝子の発現促進剤が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素幹細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項2】
前記色素幹細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の白毛の予防・治療剤。
【請求項3】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素幹細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項4】
色素細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項5】
前記色素細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の白毛の予防・治療剤。
【請求項6】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項7】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤。
【請求項8】
請求項7に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項9】
請求項7に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項10】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするMITF−M遺伝子発現促進剤。
【請求項11】
請求項10に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項12】
請求項10に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項1】
色素幹細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項2】
前記色素幹細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の白毛の予防・治療剤。
【請求項3】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素幹細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項4】
色素細胞数の維持・増加成分を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項5】
前記色素細胞数の維持・増加成分が、サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の白毛の予防・治療剤。
【請求項6】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリンから選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する色素細胞数の維持・増加剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項7】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤。
【請求項8】
請求項7に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項9】
請求項7に記載のエンドセリンレセプターB遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【請求項10】
サクラ抽出物、ローマカミツレ抽出物、ルテオリン、メリッサ抽出物から選ばれる少なくとも1種からなり又はこれらの少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするMITF−M遺伝子発現促進剤。
【請求項11】
請求項10に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を有効成分として含有することを特徴とする白毛の予防・治療剤。
【請求項12】
請求項10に記載のMITF−M遺伝子発現促進剤を投与することにより、体毛における色素を有する毛から白毛への変化を抑制し又は白毛から色素を有する毛への変化を促進することを特徴とする非治療的な美容方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−25736(P2012−25736A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129093(P2011−129093)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【Fターム(参考)】
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