説明

白熱電球、事務機用両管型電球、照明装置および複写機

【目的】 光触媒作用を奏する膜を備えたハロゲン電球、ハロゲン電球を使用する照明装置および複写機の提供を目的とする。
【構成】 紫外線透過性を有するガラスバルブ1と、このガラスバルブ1内に封装された発光用フィラメント5と、前記ガラスバルブ1内の発光フィラメント5の両端へそれぞれ一端が接続してガラスバルブ1壁を気密に導出された電気導入手段3a,3bと、前記ガラスバルブ1外周面に設けられた紫外線透過率が少なくとも10%である光触媒作用を有する膜7とを備えていることを特徴とする白熱電球である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光触媒作用を奏する膜を備えた白熱電球、およびこの白熱電球の応用に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば住宅やオフィス、もしくは各種の乗り物などの居住空間は、その密閉度が高くなっており、このような居住環境の空気を清浄化したり、消臭や殺菌(減菌)などが課題となっており、この対応策として、光触媒による空気清浄化手段などが研究されている。すなわち、紫外線を放射する放電灯、換言すると、放電によって紫外線を放射する水銀などを封有する放電ランプの外周面(外表面)に、光触媒作用を有する物質の膜(たとえば TiO2 …酸化チタン,チタニア…層)を一体的に設けた放電ランプが知られている(特開平1-169866号公報)。そして、この種の放電ランプは、外周面に設けた光触媒作用を有する物質膜が、放電ランプ内部から放出(放射)される紫外線を受けると、脱臭などの作用を呈し、周囲の臭いなど消すように作用する。したがって、前記放電ランプを設置した雰囲気では、その雰囲気中の脱臭もしくは消臭、雰囲気中の有機成分の分解などが行われる。
【0003】この点さらに説明すると、以下の通りと考えられる。たとえば TiO2 (酸化チタン,チタニア)は、約 3.0eVのバンドギャップ(禁制帯幅)を有する半導体である。そして、前記バンドギャップよりも大きなエネルネギーを有する波長 400nm以下の紫外線が照射されると、チタニアに電子および電子の抜け穴(ホール)が生じ、このホールの移動で、表面において電子移動反応を起こす。このとき、ホールはバンドギャップ分のエネルギーに相当する電子を引き抜く力(酸化力)を持っているため、このホールの酸化力によって、チタニア表面に付着(もしくは接触)した物質を酸化させる作用を呈するといわれている。
【0004】上記のごとく、 TiO2 は紫外線を受けると強い酸化力を呈するため、表面に付着した物質、たとえばアセトアルデヒド,メチルメルカプタン,硫化水素,アンモニアなどの臭い発生物質の酸化分解を促す。したがって、大気汚染の防止,病院での空気中の雑菌やばい菌などの殺菌、浄水場での排水処理などへの利用も試みられている。
【0005】一方、白熱電球においては、その外周面にチタニア(酸化チタン TiO2 )および酸化鉄(Fe2 O 3 )の混合体から成る高屈折率層とシリカ(酸化ケイ素 SiO2)を主体とした低屈折率層を重ねて成る紫外線カットフィルター膜を設けた構成も知られている。すなわち、白熱電球の外周面に紫外線カットフィルター膜を設けることにより、紫外線の悪影響を除去することも知られている(特開昭61−253763号公報)。
【0006】さらに、事務機用光源として使用されるハロゲン電球においても、前記シリカを主体として成る低屈折率層およびチタニウを主体として成る高屈折率層を交互に多層化した光干渉膜を、石英ガラスバルブ内壁面や外周面に設けた構成が知られている。つまり、発光用フィラメントから放射された光のうち、可視光は光干渉膜を透過して石英ガラスバルブ外に放射させ、赤外線は光干渉膜での反射によって発光用フィラメントに帰還させ、発光用フィラメントを加熱する構成としている。そして、このような構成を採ることによって、赤外線の外部放射が低減され、その赤外線による熱が発光用フィラメントの熱保持に利用されるので、ランプ効率の向上を図ることも知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記説明したように、光触媒作用(光触媒機能)を備えた放電ランプは知られ、またその応用もいろいろ試みられているが、ハロゲン電球など白熱電球についての光触媒作用(光触媒機能)付与の試みは未だ知られていない。すなわち、タングステンフィラメントを高温に熱し、所要のて光を出させる白熱電球は、波長400 nm以下の紫外線を放出することも知られている。たとえば、本発明者らの実験によると、石英ガラス製バルブを発光管とするハロゲンランプにおいて、発光管の外周面に光干渉膜を設けたもの( IRLランプ),発光管の外周面にチタニア膜など設けないもの(クリアランプ)の分光エネルギーをそれぞれ測定したところ、図8に示すような分光分布を示した。図8において曲線aは IRLランプの場合を、曲線bはクリアランプの場合をそれぞれ示し、いずれの場合も紫外線の透過が認められる。ここで、 IRLランプが 350nm付近まで紫外線放射が認められるのは、光干渉膜が当初考えていたよりも紫外線を透過すること、光干渉膜の非形成面領域での透過に負うといえる。
【0008】したがって、ハロゲン電球の外周面に光触媒膜を設けることにより、前記放電ランプの場合と同様な作用・効果を期待することも一応考えられる。
【0009】こうした観点に立って、本発明者らは種々検討を進めた。すなわち、前記タングステンフィラメントなどの抵抗発熱による発光を光源とするハロゲン電球の外周面に、光触媒膜を設け、その光触媒膜がハロゲン電球から放出される波長400nm以下の紫外線で、所要の光触媒作用,光触媒活性など呈し、十分な酸化作用を奏するか否かを鋭意検討した。しかし、波長400 nm以下の紫外線の放出量、もしくはハロゲン電球の構成に起因するのか、前記放電ランプと同じ条件設定では、十分な酸化作用を奏しなかった。こうした結果に立って、さらに検討を重ねたところ、ハロゲン電球など白熱電球の場合、紫外線透過性バルブを発光管としながらも、外周面に設ける光触媒膜の厚さが重要なポイントを成し、その厚さを適正に選択設定すると、前記図8に曲線Aで示すような紫外線分光分布を採った場合、所要の光触媒作用,光触媒活性など呈し、十分な酸化作用を奏することを見出した。すなわち、白熱電球の場合は、発光管外周面に設ける光触媒膜の厚さを、波長 300〜 370nmの紫外線の分光エネルギーの透過量10%以上に選択すると、実用上十分な酸化作用を呈することを確認した。
【0010】本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、光触媒作用を奏する膜を備えたハロゲン電球、およびこのハロゲン電球を使用する照明装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、紫外線透過性を有するバルブと、前記バルブ内に封装された発光フィラメントと、前記バルブ内の発光フィラメントの両端へそれぞれ一端が接続してバルブ壁を気密に導出された電気導入手段と、前記バルブ外周面に設けられた光触媒作用を有する膜とを備え、前記光触媒作用を有する膜は 300〜 370nmの紫外線の分光エネルギーの透過率が10%以上であることを特徴とする白熱電球である。
【0012】請求項2の発明は、光触媒作用を有する膜が、微粒子系で形成されていることを特徴とする請求項1記載の白熱電球である。
【0013】請求項3の発明は、光触媒作用を有する膜が、光学膜系で形成されていることを特徴とする請求項1記載の白熱電球である。
【0014】請求項4の発明は、バルブが管形で、かつ電気導入手段が両端に対向して設置されていることを特徴とする請求項1,請求項2もしくは請求項3記載の管形の両口金白熱電球である。
【0015】請求項5の発明は、紫外線透過性を有するバルブ、前記バルブ内に封装された発光フィラメント、および前記バルブ内の発光フィラメントの両端へそれぞれ一端が接続してバルブ壁を気密に導出された電気導入手段を備えた白熱電球と、前記白熱電球を電気的に接続・装着可能な電球装着部、電球からの放射光を反射する光反射部、および光反射部の開口部に配置され放射(投射)光を透過・投射する紫外線透過性を有するガラス窓を備えた外管と、前記外管のガラス窓外表面に設けられた光触媒作用を有する膜とを備え、かつ前記光触媒作用を有する膜は 300〜 370nmの紫外線の分光エネルギーの紫外線透過率が10%以上であることを特徴とする二重管型の白熱電球である。
【0016】請求項6の発明は、光触媒作用を有する膜が、微粒子系で形成されていることを特徴とする請求項5記載の白熱電球である。
【0017】請求項7の発明は、光触媒作用を有する膜が、光学膜系で形成されていることを特徴とする請求項5記載の白熱電球である。
【0018】請求項8の発明は、請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6もしくは請求項7に記載された白熱電球と、前記白熱電球を電気的に接続・装着可能な電球装着部を有する照明器具とを備えた照明装置である。
【0019】請求項9の発明は、請求項4記載の管型電球と、前記管型電球を電気的に接続・装着可能な電球装着部を有する光源本体部とを備えた読取り光源もしくは熱定着光源を具備することを特徴とする複写機である。
【0020】本発明に係る白熱電球において、発光バルブ外周面もしくは光放射(光投射)窓外表面に設けられる光触媒膜の素材としては、たとえば TiO2 , LaRhO3 , FeTiO3 ,Fe2 O 3 , CdFeO4 ,WO3 , SrTiO3 ,CdSe,GeAs,GaAs, GaP, RuO2 , ZnOなどが挙げられる。そして、これら素材のうち、特に、 TiO2 (チタニア)がが好ましく、さらにはアナターゼを主成分としたチタニアが望ましい。また、これら光触媒膜の素材は2種以上の混合系として使用してもよい。
【0021】本発明に係る白熱電球において、外周面などに光触媒膜を形成する手段としては、たとえば前記素材の平均粒径0.05〜 1μ程度の微粉末懸濁液の塗布・焼き付け法、あるいは前記素材元素を含むアルコキシ化合物溶液の塗布・分解,焼き付け法(光学膜の形成)などがある。そして、微粉末系で形成した場合は、前記触媒性作用に加えて光拡散性を呈するので、殺菌や減菌などとともに投射光を和らげることも可能となる。一方、光学膜形成法の場合は、前記触媒性作用に加えて帯電防止性をも呈するので、活性面も確保され易くなって殺菌や減菌作用などさらに向上される。ただし、形成・具備させる光触媒膜厚の選択・設定は重要である。
【0022】つまり、光触媒膜の厚さは、白熱電球、たとえばハロゲン電球の内部から放出される波長 300〜 370nmの紫外線分光エネルギーの透過率が10%以上、さらに好ましくは50%以上であるように選択・設定する必要がある。ここで、前記波長 300〜 370nmの紫外線分光エネルギーの透過率が10%未満の厚さでは、所要の光触媒作用が得られないからであり、紫外線の透過率が50%以上に膜厚を選択・設定したときは、光触媒膜表面の紫外線照射が大きくなるので、光触媒作用がさらに向上する。なお、波長 300〜 370nmの領域を基準としたのは、一般的に波長 300nm未満の放射エネルギーは相対的に少なく無視できること、また波長 370nmを超える紫外線は、光触媒作用が急激に低減することによる。
【0023】本発明に係る白熱電球の構成におけるバルブの素材、もしくは二重管形白熱電球の構成における外管のガラス窓を成す素材としては、たとえば石英ガラス,ブラックライト用ガラスなどが挙げられる。図1は、前記石英ガラスやブラックライト用ガラスの初期紫外線透過率を示したもので、曲線B1 は高純度の石英ガラスの場合、曲線B2 は酸化鉄20 ppm含有石英ガラスの場合、曲線C1 は酸化鉄230ppm含有ブラックライト用ガラスの場合、曲線C2 は酸化鉄650ppm含有ブラックライト用ガラスの場合をそれぞれ示す。
【0024】
【作用】請求項1の発明においては、バルブ外周面に、光触媒膜を適正な膜厚にさで設けられているため、バルブ内で発生してバルブ壁を透過した紫外線が、有効に光触媒膜の活性確保に寄与し、実用上十分な光触媒作用を有する白熱電球として機能する。
【0025】請求項2の発明においては、前記請求項1の発明で見られるような作用に加えて、光触媒膜が投射する光を拡散する作用も呈するので、発光の和らげられた白熱電球として機能する。
【0026】請求項3の発明においては、請求項1の発明で見られるような作用に加えて、光触媒膜が帯電防止性をも有するので、静電的な汚染など回避され、常に有効な光触媒作用を有する白熱電球として機能する。
【0027】請求項4の発明においては、前記請求項1,請求項2もしくは請求項3の白熱電球が管形で、かつ電気導入手段が両端に対向して設置された両口金型であるため、幅方向にわたる直射的な光投射などの場合、前記請求項1〜請求項3の場合の作用が、さらに有効に発現する白熱電球として機能する。
【0028】請求項5の発明においては、白熱電球が紫外線透過性を有するガラス窓を備え、かつ前記ガラス窓外表面に、光触媒膜を適正な膜厚にさで設けられているため、バルブ内で発生してバルブ壁およびガラス窓を透過した紫外線が、有効に光触媒膜の活性確保に寄与し、実用上十分な光触媒作用を有する投射用などに適する白熱電球として機能する。
【0029】請求項6の発明においては、前記二重管型の白熱電球の光触媒作用を有する膜が、微粒子系で形成されていることに伴って、投射する光を拡散する作用も併せて呈するので、発光の和らげられた白熱電球として機能する。
【0030】請求項7の発明においては、前記二重管型の白熱電球の光触媒作用を有する膜が、光学膜系で形成されていることに伴って、帯電防止する作用も併せて呈するので、静電的な汚染などの回避に寄与する白熱電球として機能する。
【0031】請求項8の発明においては、前記請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6もしくは請求項7の発明について記述した白熱電球の作用を効果的に発現する照明装置として機能する。
【0032】請求項9の発明においては、請求項4の発明に係る管型の白熱電球を、読取り光源もしくは熱定着光源として利用するため、前記読取り部や定着部の近傍に発生・存在し易い有機物などによる汚損などの解消がなされ、実用性がさらに高められた複写機として機能する。
【0033】
【実施例】
実施例1先ず、図2に一部切り欠き断面的に示すハロゲン電球を用意した。図2において、1は石英ガラスから成るバルブ、2は前記バルブ1の圧潰封止部、3a,3bは前記圧潰封止部2に気密に埋設された一対の導入リード線(電気導入手段)、4a,4bは前記導入リード線3a,3bに一端が接続する内導体、5は前記内導体4a,4b間に装架されたタングステンコイルフィラメント、6は前記導入リード線3a,3bに電気的に接続しながら圧潰封止部2に装着された口金である。
【0034】一方、テトライソプロピルチタネートを有機溶媒に溶解させ、テトライソプロピルチタネート含有量 2〜10質量%、粘度約2.0 cps の溶液を調製した。なお、ここで、テトライソプロピルチタネート溶液の代わりに、 TiO2 微粉末(特にアナターゼを主成分としたものが好ましい)の懸濁液であってもよい。
【0035】次に、前記ハロゲン電球を、前記テトライソプロピルチタネート溶液に浸漬してから所定速度で引上げ、乾燥後、空気中,約 700℃で 5分間焼成して、前記石英バルブ1外表(外周)面に、厚さ 1μm 程度の TiO2 膜7を形成した。このようにして、石英バルブ1外表(外周)面に、設けた厚さ 1μm 程度の TiO2 膜7は、前記ハロゲン電球内で生じ、石英バルブ1壁を透過して外表(外周)面に到達した紫外線の約60%を透過しており、この紫外線の透過によって、前記 TiO2膜7は光触媒として活性な機能・作用を呈することが確認された。すなわち、有機ガストしてアセトアルテヒド濃度(1300 ppm)の雰囲気下で、前記ハロゲンラ電球を点灯し、点灯時間の経過に伴うアセトアルテヒド濃度の変化・低減を測定したところ、図3に曲線Dで示す傾向が認められた。また、このハロゲン電球は、前記 TiO2 膜(光触媒膜)が光学膜を成しており、良好な帯電防止性を有しているため、雰囲気中の細かい塵埃などの付着も回避され、表面が清浄さを維持していた。
【0036】比較のため、前記において、石英バルブ1外表(外周)面に、 TiO2 膜7を設けないハロゲン電球を用いた他は同一条件で、点灯時間の経過に伴うアセトアルテヒド濃度の変化・低減を測定したところ、図3に曲線dで示すごとくであった。 さらに、前記実施例で、 TiO2 微粉末(特にアナターゼを主成分としたものが好ましい)の懸濁液を用いて、石英バルブ1外表(外周)面に、 TiO2 微粉末系の膜を形成した場合も、前記アセトアルテヒドを含有する雰囲気中で、良好な酸化作用を行って臭気など除去することができた。なお、このハロゲン電球の場合は、光触媒膜を成す TiO2 微粉末系の膜が光散乱性をも呈するので投射する光が和らげられた状態であった。
【0037】実施例2この実施例は二重管形の白熱電球の場合であり、図4は二重管形の白熱電球の要部構成例を示す断面図である。ここで、8は反射面8aを有する反射構体、9は前記反射構体8の反射面8a開口部に装着配置された紫外線透過性を有するガラス窓で、反射構体8とで外管10を構成している。また、11は前記反射構体8の反射面8a側部に装着・配置されたハロゲン電球であり、このハロゲン電球11の構成は、前記図2に図示した場合と基本的には同様である。すなわち、前記ハロゲン電球11は、石英ガラスから成るバルブ1、前記バルブ1のほぼ中央部に内装・配置されたタングステンコイルフィラメント5、このタングステンコイルフィラメント5に接続・装架する内導体4a,4b、前記内導体4a,4bの他端側を封止するバルブ1の圧潰封止部2、前記圧潰封止部2に埋設され内導体4a,4bの他端側および導入リード線3a,3bを接続するモリブデン箔3a′,3b′で構成され、さらに前記実施例1の場合と同じ条件で,光触媒膜7がガラス窓9の外表面に設けられたものである。なお、図4において、12は反射構体8とこれに装着・配置されたハロゲン電球11との間を充填し、これらを一体化する接合材、 13a, 13bは端子である。 前記構成の二重管形ハロゲン電球では、組み合わせ・装着したハロゲン電球11から放射された可視光は反射構体8の反射面8aで反射され、かつ反射構体8のガラス窓9を透過して投射される。このとき、同じくハロゲン電球11内で生じ、石英ガラスバルブ1を透過した紫外線も、反射構体8のガラス窓9を透過し、さらに光触媒膜7表面に到達して、所要の光触媒作用を呈する。すなわち、この二重管形のハロゲン電球を、実施例1の場合と同様の雰囲気下に設置し、その雰囲気中の有機ガス成分の酸化・分解・除去について、試験評価を行ったところ実施例1の場合と同様の結果が確認された。
【0038】実施例3図5に断面的に示す管形ハロゲン電球を用意した。図5において、13は石英ガラスから成る管形バルブ、14は前記管形バルブ13の圧潰封止部、 15a, 15bは前記圧潰封止部14に気密に埋設された一対の導入リード線(電気導入手段)、16は前記導入リード線 15a, 15b間に装架されたフィラメントである。ここで、フィラメント16は発光部 16aおよび非発光部 16bで構成され、サポーター 16cによって管形バルブ13内壁面に非接触に支持されている。また、17は接点 17aを有するベース部で、前記圧潰封止部14に気密に埋設されたモリブデン箔 15a′, 15b′を介して、導入リード線 15a, 15bに電気的に接続されている。
【0039】一方、テトライソプロピルチタネートを有機溶媒に溶解させ、テトライソプロピルチタネート含有量 2〜10質量%、粘度約2.0 cps の溶液を調製した。なお、ここで、テトライソプロピルチタネート溶液の代わりに、 TiO2 微粉末(特にアナターゼを主成分としたものが好ましい)の懸濁液であってもよい。
【0040】次に、前記ハロゲン電球を、前記テトライソプロピルチタネート溶液に浸漬してから所定速度で引上げ、乾燥後、空気中,約 700℃で 5分間焼成して、前記石英バルブ13外表(外周)面に、厚さ 1μm 程度の TiO2 膜18を形成した。このようにして、石英バルブ13外表(外周)面に、設けた厚さ 1μm 程度の TiO2 膜18は、前記ハロゲン電球内で生じ、石英バルブ13壁を透過して外表(外周)面に到達した紫外線の約60%を透過しており、この紫外線の透過によって、前記 TiO2膜18は光触媒として活性な機能・作用を呈することが確認された。すなわち、有機ガストしてアセトアルテヒド濃度(1300 ppm)の雰囲気下で、前記ハロゲンラ電球を点灯し、点灯時間の経過に伴うアセトアルテヒド濃度の変化・低減を測定したところ、前記図2に曲線Dで示したと同様の傾向が認められた。また、この管形のハロゲン電球は、前記 TiO2 膜(光触媒膜)が光学膜を成しており、良好な帯電防止性を有しているため、雰囲気中の細かい塵埃などの付着も回避され、表面が清浄さを維持していた。
【0041】さらに、上記構成の管形ハロゲン電球19を、両端側に電気的な接続装着部を備えたリフレクター20に組み込み、図6に断面的に示すような、複写機用の読取り光源部21を作成した。そして、この複写機用の読取り光源部21を、図7に要部構成の概略を断面的に示すごとく、複写機の原稿読取り部に装着し、複写機としての機能評価を行った。図7において、22は露光用ユニットで、前記読取り光源部21、原稿台ガラス23, 反射鏡24など構成されている。また、25は前記反射鏡24で反射導光される光を集光する指定レンズユニット、26は指定レンズユニット25からの光を受ける受光器、27は指定レンズユニット25および受光器26を内装する暗室である。
【0042】前記複写機について、繰り返し所要の複写操作を行ったところ、前記露光ユニット22の管形ハロゲン電球19表面は、清浄さが保持されており、信頼性の高い露光光源として機能することが確認された。これは、露光ユニット22部における雰囲気に浮遊する汚染などの原因となる有機物が、管形ハロゲン電球19表面の光り触媒膜18に接触することによって、容易に酸化・分解して除去されるためである。 上記実施例では、管形ハロゲン電球19を露光ユニット22の光源として組み込んだ複写機について説明したが、トナー像を記録紙などに転写した後の、定着用ユニットの熱定着光源として組み込んでも、同様の作用・効果が認められる。
【0043】なお、本発明は前記実施例に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲でいろいろの変形を採り得る。たとえば、上記では白熱電球として、一般的なハロゲン電球、事務機用などの管形ハロゲンランプを例示したが、車輛前照灯用のハロゲン電球、照明装置などであってもよい。
【0044】
【発明の効果】上記説明したように、請求項1の発明によれば、白熱電球が光源として機能しながら一方では、点灯・使用雰囲気中の有機成分など容易に酸化・分解除去し得るので、殺菌もしくは減菌、臭気の除去(脱臭)などが要望される居住空間、たとえば病院用光源として有効な光源の提供が可能である。
【0045】請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明で見られるような効果に加えて、発光の和らさもあり、その実用性がさらに助長される。
【0046】請求項3の発明によれば、請求項1の発明で見られるような効果に加えて白熱電球が管形で、かつ電気導入手段が両端に対向して設置された両口金型であるため、静電的な汚染など回避されるので、その実用性がさらに助長される。
【0047】請求項4の発明によれば、前記請求項1,請求項2もしくは請求項3の発明に見られる効果に加えて、両口金型の白熱電球てあることにより、事務用機器の読取り用光源もしくはトナー像定着用熱源などとして応用で信頼性の高い事務用機器の提供に寄与する。
【0048】請求項5の発明によれば、二重管型の白熱光源として機能しながら一方では、点灯・使用雰囲気中の有機成分など容易に酸化・分解除去し得るので、殺菌もしくは減菌、臭気の除去(脱臭)などが要望される居住空間用に十分耐え得る光源を提供する。
【0049】請求項6の発明によれば、前記請求項5の発明で見られるような効果に加えて、発光の和らさもあり、その実用性がさらに助長される。
【0050】請求項7の発明によれば、請求項5の発明で見られるような効果に加えて白熱電球が管形で、かつ電気導入手段が両端に対向して設置された両口金型であるため、静電的な汚染など回避されるので、その実用性がさらに助長される。
【0051】請求項8の発明によれば、前記請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6もしくは請求項7の発明に見られる効果が、効果的に発現される。
【0052】請求項9の発明によれば、複写機の露光用ユニットもしくは熱定着ユニットの信頼性などが向上するだけでなく、駆動・動作過程で発生・存在し易い有機物などによる汚損、あるいはオゾンなどの解消がなされ、実用性がさらに高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るハロゲン電球用ガラスバルブの紫外線波長の透過率例を示す曲線図。
【図2】本発明に係るハロゲン電球の要部構造例を示す一部切り欠き断面図。
【図3】本発明に係るハロゲン電球の光触媒作用と従来のハロゲン電球の光触媒作用都を比較して示す特性図。
【図4】本発明に係る二重管型の白熱電球の要部構成例を示す断面図。
【図5】本発明に係るハロゲン電球の他の要部構成例を示す断面図。
【図6】本発明に係る照明装置の要部構成例を示す断面図。
【図7】本発明に係る複写機の要部構成例を示す断面図。
【図8】ハロゲン電球の紫外分光放射分布例を示す特性図。
【符号の説明】
1……石英ガラスバルブ
2……圧潰封止部
3a,3b, 15a, 15b……導入リード線
4a,4b……内導線
5……コイルフィラメント
6……口金
7,18……光触媒膜
8……反射構体
8a……反射面
9……紫外線透過性を有するガラス窓
10……外管
11,19……ハロゲン電球
13……管型の石英ガラスバルブ
21……読取り光源部
22……露光用ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 紫外線透過性を有するバルブと;前記バルブ内に封装された発光フィラメントと;前記バルブ内の発光フィラメントの両端へそれぞれ一端が接続してバルブ壁を気密に導出された電気導入手段と;前記バルブ外周面に設けられた光触媒作用を有する膜とを備え、前記光触媒作用を有する膜は 300〜 370nmの紫外線分光エネルギーの透過率が10%以上であることを特徴とする白熱電球。
【請求項2】 光触媒作用を有する膜が、微粒子系で形成されていることを特徴とする請求項1記載の白熱電球。
【請求項3】 光触媒作用を有する膜が、光学膜系で形成されていることを特徴とする請求項1記載の白熱電球。
【請求項4】 バルブが管形で、かつ電気導入手段が両端に対向して設置されていることを特徴とする請求項1,請求項2もしくは請求項3記載の白熱電球。
【請求項5】 紫外線透過性を有するバルブ、前記バルブ内に封装された発光フィラメント、および前記バルブ内の発光フィラメントの両端へそれぞれ一端が接続してバルブ壁を気密に導出された電気導入手段を備えた白熱電球と;前記白熱電球を電気的に接続・装着可能な電球装着部、電球からの放射光を反射する光反射部、および光反射部の開口部に配置され放射光を透過・投射する紫外線透過性を有するガラス窓を備えた外管と;前記外管のガラス窓外表面に設けられた光触媒作用を有する膜とを備え、前記光触媒作用を有する膜は 300〜 370nmの紫外線分光エネルギーの透過率が10%以上であることを特徴とする二重管型の白熱電球。
【請求項6】 光触媒作用を有する膜が、微粒子系で形成されていることを特徴とする請求項5記載の白熱電球。
【請求項7】 光触媒作用を有する膜が、光学膜系で形成されていることを特徴とする請求項5記載の白熱電球。
【請求項8】 請求項1ないし請求項7記載のいずれかの白熱電球と、前記白熱電球を電気的に接続・装着する照明器具とを備えた照明装置。
【請求項9】 請求項4記載の管型電球、および前記管型電球を電気的に接続・装着する光源本体部を有する読取り光源もしくは熱定着光源を具備することを特徴とする複写機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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