説明

白熱電球および照明装置

【課題】バルブ表面の温度が上昇することによって生じた上記の問題点に着目し、寿命末期であってもバルブに歪や微小クラックが生じたり破裂してガラスが飛散していたりしまうなどの虞を抑制する。
【解決手段】バルブ1の内外表面には、化学強化法によって得られる強化層1aが形成される。この強化層1aは、例えば、フレアステム2が封止される前のガラスバルブを、SO雰囲気で満たした炉内にガラスバルブ1を配置させ、炉内の温度がガラスバルブを形成しているガラス材の徐冷点温度以上、転移点以下の温度となるように設定し過熱することによって、バルブ表面のナトリウムイオンを除去して表面に圧縮歪を加えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白熱電球および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般照明用などに多用されている白熱電球は、軟質ガラスからなるバルブの端部に一対のリード線を備えたステムを封着し、上記のリード線間にタングステン製のコイル状のフィラメントを継線する構造が採用されている。このような白熱電球は、例えば特許文献1のように、フィラメントの支持部間の間隔とバルブの内面に形成される微粒子金属酸化物の頂部における膜厚を規定する事によって、フィラメント断線時にアークが発生して高温度のフィラメント片がバルブ面に落下してもガラスに与える熱的衝撃を和らげ、バルブにクラックを発生することがなくガラス飛散による人体への危険などを防止する白熱電球が開示されている。
【特許文献1】特開平9−17396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、白熱電球では、たとえフィラメントが断線しなくとも、点灯中の特に寿命末期に、バルブの表面に歪やクラックが生じ、バルブが破損するなどしてガラスが飛散してしまうなどの危険が生じる虞があった。そうして、万が一ランプが点灯中に破損するなどした場合、点灯中に高温となっているバルブのガラス破片が散乱し、使用者にやけどを与えてしまうことや使用場所によっては床面を焦がしてしまうなどの二次災害が起こる危険性があり、バルブの破損を抑制することが求められていた。
【0004】
寿命末期にバルブの表面に歪や微小クラックが生じることについて検討してみると、発明者らの試験によるとソーダライムガラスにあっては、200℃以上の雰囲気温度に数100時間曝すことによって、ガラス表面に歪や微小クラックが生じていることを確認した。そして、このガラスの表面を観察および分析を行うと、ガラスの表面にNaCOなどの炭酸塩が析出された。これは、ガラス表面を構成しているNaO2と大気中のO2、CO2、H2Oなどと反応され生成され、ガラス表面層に生成されたためと考えられる。そうして、このようなNaCOなどの炭酸塩が生成された事によって、ガラス表面に歪が生じこの歪によって微小なクラックが伸長してしまうと考察した。
【0005】
そこで、本発明では点灯中にフィラメントが高温となるとともにバルブ表面の温度が上昇することによって生じた上記の問題点に着目し、寿命末期であってもバルブに歪や微小クラックが生じたり破裂してガラスが飛散していたりしまうなどの虞を抑制する白熱電球およびこの白熱電球を使用した照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の白熱電球は、少なくとも外表面に強化層が形成されている軟質ガラスからなるガラスバルブと;このバルブ内に配設されたコイル状のフィラメントと;上記フィラメントを支持するフィラメント支持部材と;を具備している。
【0007】
ガラスバルブは、軟質ガラスの少なくとも内面に強化層として圧縮歪を形成したものである。軟質ガラスの表面に圧縮歪を形成する方法としては、風冷強化法と化学強化法の方法が挙げられるが、白熱電球のバルブに用いるような形状にあっては、化学強化法が適している。化学強化法は、例えばイオン交換法と呼ばれる方法であって、溶融カリウム塩にバルブを浸しナトリウムイオンとカリウムイオンを交換させて、硬質ガラス内の表面層のイオン半径の小さいNa+をよりイオン半径の大きいK+と置換してガラス表面に圧縮応力を発生させる方法である。他に、脱アルカリ処理と呼ばれるものでSO,SO、HS0を高温化でガラスの表面に反応させ脱アルカリ処理することで、ガラスの表面層をSiO2成分リッチとさせるとガラス表面に圧縮歪が形成され、ガラス強度を増大させる方法などが選択できる。
【0008】
また、強化層をバルブの表面に圧縮歪を形成して作成する場合であれば、強化層は少なくとも外表面に形成すればよく、内外面両面に形成することも許容する。外面のみに形成する方法としては、例えば脱アルカリ処理法を用いるとすれば、表面処理を行うときに反応させるガスをバルブの外側の雰囲気にのみ充填させて加熱することによって形成できる。
【0009】
請求項2の発明の照明装置は、基体に上記請求項1記載の白熱電球を光源として装着したことを特徴とする。
【0010】
照明装置は、一般に使用される屋内・屋外照明装置の他、車両用前照灯などのような投光形照明装置を含む。照明装置には基体のほかに反射鏡、光拡散レンズ、光拡散カバー等を含む。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、バルブ表面の温度が上昇することによって生じた上記の問題点に着目し、寿命末期であってもバルブに歪や微小クラックが生じたり破裂してガラスが飛散していたりしまうなどの虞を抑制する。
【0012】
また、請求項2の発明によれば。請求項1の白熱電球を使用しているので、請求項1の発明の効果を奏した照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1はたとえば一般照明用などに用いられる散光形の白熱電球を示す一部切欠正面図、図2は、バルブの拡大断面図である。
【0014】
この白熱電球Lは、たとえば一般照明用などに用いられ、ミニクリプトンランプと呼ばれるのもので、ソーダライムガラスからなる最大径部35mm、全長67mmのPS形(洋梨形)のバルブ1の端部にフレアステム2が封止されている。また、このステム2には一対のリード線3、3が気密に封着されていて、両リード線3、3の先端部には二重コイル状のフィラメント4が継線されている。フィラメント4のほぼ中央部にはアンカー31と呼ばれる金属線によって指示されており、フィラメント4は略V字形状に支持されている。
【0015】
また、6はバルブ1端部の封止部を覆うようにして取付けられた口金で、上記のリード線3、3とそれぞれ電気的に接続している。また、バルブ1内にはクリプトン、アルゴンと窒素とからなる不活性ガス選択して充填されるものであって、本実施形態の場合、クリプトンが90%、窒素が10%の割合の混合ガスを常温で約70kPaとなるように封入している。
【0016】
バルブ1の内外表面には、化学強化法によって得られる強化層1aが形成される。この強化層1aは、例えば、フレアステム2が封止される前のガラスバルブを、SO雰囲気で満たした炉内にガラスバルブ1を配置させ、炉内の温度がガラスバルブ1を形成しているガラス材の徐冷点温度以上、転移点以下の温度となるように設定し過熱することによって、バルブ1表面のナトリウムイオンを除去して表面に圧縮歪を加える方法がある。
【0017】
本実施形態の場合、バルブ1はNaO−AlO−SiO系の軟質ガラスから構成されPS型に形成されたものをSO雰囲気で満たした炉に入れ、炉内温度を520℃から540℃にし数分から数十分程度加熱することで、厚さ0.45mm〜0.75mmのバルブ1の表面から10μm程度の深さまでに圧縮歪を形成する事ができる。本実施形態のような軟質ガラスの場合、540℃よりも高温で加熱を行うと、バルブ1表面にイオン交換によって圧縮歪を発生させてもガラスの転移点以上の温度で過熱された際にバルブ1全体の歪が除去されてしまい、外表面に圧縮歪を形成し表面を強化層1aとすることができなくなってしまうので、温度管理は重要となる。
【0018】
このように表面に圧縮歪を形成したバルブ1を用いて、点灯中のバルブ1温度が200℃〜220℃となる比較的バルブ温度が高温となりやすい電球を白熱電球Lとして製作し、使用したところ、表面に圧縮歪を形成しないバルブ1を用いて作成した白熱電球Lと比較して、寿命(約2000時間)までに白熱電球Lのバルブ1表面に生じたクラックの発生率が1/5まで減少させることができたものである。
【0019】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。たとえば、白熱電球Lとしては一般照明用に限らず、二重コイルフィラメントを用いた反射形の投光用電球などであってもよい。
また、ガラスバルブの形状はPS形に限らず、A形、G形やR形などであってもよく、その材質については、軟質ガラスはもちろん硬質ガラスであっても差支えない。
【0020】
さらに、バルブ1表面の温度が200℃を越えないように、フィラメント4の配置を変更することも寿命末期のバルブ1の破損を抑制するのに効果がある。例えば、上記実施形態では、フィラメント4はV字配置であるがこのV字の頂点がバルブ1に近づかないように、フィラメント4を支持しているリード線3の先端の幅を広くして、フィラメント4の頂点がバルブ1に近づかないように配置することもできる
【0021】
図3はこの電球Lを装着して点灯される照明器具などの照明装置である。白熱電球Lは第1の実施形態のランプであり、この白熱電球Lは、たとえば図3に示す照明器具DのソケットD1に口金6を上方にして装着され点灯する。なお、図3中D2は基体で、ソケットD1およびセードD3が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の白熱電球の実施例を示す一部切欠正面図である。
【図2】同じくバルブの拡大断面図である。
【図3】図1の白熱電球を装着した本発明の照明装置の実施例を示す一部切欠正面図である。
【符号の説明】
【0023】
L・・・白熱電球 1・・・バルブ 1a・・・強化層(圧縮歪層)2・・・ステム 3・・・リード線 4・・・フィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外表面に強化層が形成されている軟質ガラスからなるガラスバルブと;
このバルブ内に配設されたコイル状のフィラメントと;
上記フィラメントを支持するフィラメント支持部材と;
を具備していることを特徴とする白熱電球。
【請求項2】
基体に上記請求項1記載の白熱電球を光源として装着したことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−12435(P2006−12435A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183500(P2004−183500)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)