説明

白熱電球

【課題】外部電極に対する接点部に鉛はんだを使用した従来の白熱電球の寸法形状、扱い易さ及び機能等を損なうことなく、鉛フリー化された接点部を備えると共に接点部同士が外部電極を擦った削りカスの拡散堆積によるショートが生じないようなショート防止対策を施したダブルフィラメントのS25タイプの白熱電球を安価に実現することである。
【解決手段】ダブルフィラメントの夫々のフィラメント6、7に電気的に接続された導入線4b、5bを一対のアイレット部12a、12bの夫々に鉛フリーはんだではんだ接合してはんだ接点部9a、9bを形成し、アイレット部12a、12b間に線状の堰壁部13を設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白熱電球に関するものであり、詳しくは、テール&ストップランプやコーナリングランプ等の自動車用信号灯の光源として用いられる、2つのコイル状フィラメント(ダブルフィラメント)を備えたS25タイプの白熱電球に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の白熱電球(以下、電球と略称する)80の概略構成は、図8に示すように、内部に2つのコイル状フィラメント81、82を備えたガラスバルブ(以下、バルブと略称する)83と該バルブ83が装着された口金84とで構成されている。
【0003】
更に詳しくは、一方のフィラメント81は両端部を一対の導入線81a、81bで支持され、他方のフィラメント82は両端部を一対の導入線82a、82bで支持されており、これら導入線81a、81b、82a、82bはいずれもガラスステム87によって貫通支持されている。
【0004】
また、フィラメント81を支持する一対の導入線81a、81bとフィラメント82を支持する一対の導入線82a、82bは、夫々の一方の導入線81a、82a同士が口金84の円筒状の本体部85に電気的に接続されている。これにより、口金84の本体部85はフィラメント81とフィラメント82の共通電極として機能する。
【0005】
一対の導入線81a、81bと一対の導入線82a、82bの夫々の他方の導入線81b、82bは、口金84の本体部85の端部側に設けられた一対の接点部86a、86bに電気的に接続されている。これにより、接点部86a、86bの夫々はフィラメント81とフィラメント82の個別電極として機能する。
【0006】
そこで、口金84の本体部85と接点部86aとの間に所定の電圧を印加するとフィラメント81に電流が流れて発光し、口金84の本体部85と接点部86bとの間に所定の電圧を印加するとフィラメント82に電流が流れて発光する。一般的には共通電極の本体部85には電源の(−)側が接続され、個別電極の接点部86a、86bには電源の(+)側が接続される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−173786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成の白熱電球80は、導入線81b、82bが接続された接点部86a、86bは従来、鉛入りのはんだ(鉛はんだ)により形成されていたが、近年の鉛による汚染の問題に対処するために鉛を使用しないはんだ(鉛フリーはんだ)が用いられるようになった。
【0009】
しかしながら、鉛フリーはんだは従来の鉛はんだに比べて硬いため、白熱電球をソケットに装着した状態において振動や衝撃により接点部が該接点部と接触するソケット側の電極の表面を擦って削り、電極金属の長年の削りカスが電球の接点部間に拡散堆積して電気的なショート状態を生じる恐れがある。また、主線と副線を同時点灯すると、バルブが高温になり、破壊される恐れもある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、外部電極に接触して受電する接点部に鉛はんだを使用した従来の白熱電球の寸法形状、扱い易さ及び機能等を損なうことなく、鉛フリーはんだを使用した接点部を備えると共に接点部同士が外部電極を擦った削りカスの拡散堆積によりショート状態とならないようなショート防止対策を施したダブルフィラメントのS25タイプの白熱電球を安価に実現することである。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、内部に2つのフィラメントを有するカラスバルブが口金に装着され、前記口金の前記ガラスバルブが装着された側と対向する側の端部に、一対のアイレット部を備えた絶縁体が配設され、前記2つのフィラメントの夫々の一方の端部を支持する導入線同士が前記口金の円筒状の本体部にはんだを介して電気的に接続されると共に、前記2つのフィラメントの夫々の他方の端部を支持する各導入線が前記一対のアイレット部にはんだを介して電気的に接続されてなる白熱電球であって、前記一対のアイレット部の夫々のはんだ接合部を形成するはんだは鉛フリーはんだであると共に前記一対のアイレット部の夫々よりも突出して形成されており、且つ前記一対のアイレット部間に前記絶縁体から立ち上がって所定の幅で且つ所定の高さで線状に延びる堰壁部が設けられているか又は前記一対のアイレット部の夫々を含む各近傍領域を除いた部分に前記絶縁体から所定の高さで形成された堰壁部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記絶縁体の表面からの前記堰壁部の最高点の高さは、前記絶縁体の表面から各鉛フリーはんだの頂点までの高さのうち低い方の高さよりも低いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダブルフィラメントの白熱電球は、各フィラメントに電気的に接続された導入線を一対のアイレット部の夫々に鉛フリーはんだではんだ接合してはんだ接点部を形成し、且つアイレット間に線状の堰壁部を設けれるか又は各アイレット部の夫々を含む各近傍領域を除いた部分に堰壁部を設けた。
【0014】
これにより、白熱電球を2枚の電極板(電極端子)を備えたソケットに装着して車両の信号灯に搭載した場合、車両の走行時の断続的な振動や衝撃による各接点部との摩擦によって削り取られる電極板(電極端子)の金属粉はその拡散が堰壁部で遮断され、各接点部の摩擦により発生した金属粉同士の重なり合いによる接点部間の電気的なショート状態の発生を防止することができる。その結果、電気的に信頼性の高い白熱電球を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係わる説明図である。
【図2】同じく、本発明の実施形態を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】実施形態の一部を説明する説明図である。
【図4】従来例の一部を説明する説明図である。
【図5】実施形態の一部を説明する説明図である。
【図6】ソケット側電極端子の説明図である。
【図7】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図7を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明に係わる実施形態の説明図である。
【0018】
本発明の白熱電球(以下、電球と略称する)20は、従来のダブルフィラメントのS52タイプの電球の構造を基本とするものである。
【0019】
その構造は、開口部をガラスステム1で気密封止された略球状のガラスバルブ2と、金属製で略円筒状の本体部8を有する口金3とが互いに接着固定されている。
【0020】
ガラスステム1には、該ガラスステム1を気密に貫通する一対の二組の導入線(4a、4b)、(5a、5b)が支持固定され、一方の一対の導入線は4a、4bはガラスバルブ2内に配置された2つのコイル状のフィラメント6、7のうち一方のフィラメント6の両端部を支持して電気的導通が図られ、他方の一対の導入線5a、5bは他方のフィラメント7の両端部を支持して電気的導通が図られている。
【0021】
一対の二組の導入線(4a、4b)、(5a、5b)のガラスバルブ2外に導出された部分は、フィラメント6、7の夫々の一方の端部を支持する導入線4a、5a同士が互いに接続されて口金3の本体部8に電気的に接続され、フィラメント6、7の夫々の他方の端部を支持する導入線4b、5bは夫々、口金3の本体部8の端部側に設けられた一対の接点部9a、9bに電気的に接続されている。
【0022】
これにより、口金3の本体部8はフィラメント6とフィラメント7の共通電極として機能し、接点部9a、9bの夫々はフィラメント6とフィラメント7の個別電極として機能する。そこで、この電球20を点灯する場合は、口金3の本体部8と接点部9aとの間に所定の電圧を印加するとフィラメント6に電流が流れて発光し、口金3の本体部8と接点部9bとの間に所定の電圧を印加するとフィラメント7に電流が流れて発光する。一般的には共通電極の本体部8には印加電圧の低電位(−)側が印加され、個別電極の接点部9a、9bには印加電圧の高電位(+)側が印加される。
【0023】
以上は、従来のダブルフィラメントのS52タイプの電球と同様の構造を示すものである。これに対し、本発明は口金3の接点部9a、9bの近傍に、実用状態において該接点部9a、9b間の電気的なショートを防止するようなショート防止手段を設けたものである。以下、その詳細について図2(電球を斜め下方から見た斜視図)を参照して説明する。
【0024】
口金3の、ガラスバルブ2と対向する側の端部10は、例えば、紙繊維あるいはガラス繊維が含有されたフェノール系樹脂からなる略平板状の絶縁体11で塞がれており、絶縁体11の中央部には、夫々貫通孔を有する一対のアイレット部12a、12bが設けられている。
【0025】
そのうち、アイレット部12aには、一端部がフィラメント6に電気的に接続された導入線4bの他端部が該アイレット部12aの貫通孔に挿通されて鉛フリーはんだにより接点部9aが形成され、アイレット部12bには、一端部がフィラメント7に電気的に接続された導入線5bの他端部が該アイレット部12bの貫通孔に挿通されて鉛フリーはんだにより接点部9bが形成されている。それと同時に、口金3の本体部8には、一端部が夫々フィラメント6及びフィラメント7に電気的に接続された導入線4a及び導入線5aの夫々の他端部が鉛フリーはんだによってはんだ接合されている。
【0026】
そして、アイレット部12aとアイレット部12bとの間に、絶縁体11から立ち上がって所定の幅で且つ所定の高さで線状に延びる堰壁部13を設けている。これにより、本電球を、例えば図3(a:部分側面図、b:底面図)のように、銅からなる2枚の電極板15a、15bを備えたソケットに装着して車両の信号灯に搭載した場合、夫々の電極板15a、15bに当接した各接点部9a、9bが車両の走行時の振動や衝撃によって断続的に電極の表面を擦ることになる。
【0027】
ところで、本電球の各接点部9a、9bを形成する鉛フリーはんだは従来の鉛はんだに比べて硬いため、各接点部9a、9bとの摩擦によって削り取られる電極板15a、15bの金属粉(この場合は銅粉)14の量も鉛はんだの場合よりも多くなる。そして、削り取られた金属粉14は各接点部9a、9bを中心として、該各接点部9a、9b及び各アイレット部12a、12bに沿って徐々に周囲に拡散され、絶縁体11上にまで堆積される。
【0028】
そこで、図4(堰壁体を設けない電球の底面図)のように、アイレット部12aとアイレット部12bとの間に本発明のような堰壁体が設けられていない場合は、金属粉14の拡散が拡がるにつれて絶縁体11上の2つのアイレット部12a、12bの夫々の周囲に堆積した金属粉14同士がアイレット部12a、12b間で重なり合うことになり、それによって接点部9a、9b間が電気的なショート状態となる恐れがある。
【0029】
これに対し、図3に戻って、本発明の電球20は、アイレット部12aとアイレット部12bとの間に、絶縁体11から立ち上がって所定の幅で且つ所定の高さで線状に延びる堰壁部13が設けられている。そのため、各接点部9a、9bとの摩擦によって削り取られる電極板15a、15bの金属粉14はその拡散が堰壁部13で遮断され、接点部9aの摩擦により発生した金属粉14aと接点部9bの摩擦により発生した金属粉14bとの重なり合いによる接点部9a、9b間の電気的なショート状態の発生を防止することができる。
【0030】
堰壁部13は、絶縁素材で形成することが好ましく、絶縁体11を形成する素材と同一の素材でもよいし、絶縁体11と異なる素材で形成してもよい。絶縁体11を形成する素材と同一の素材で形成する場合は、絶縁体11と一体に形成してもよいし、個別に形成して接着等の方法により一体化することも可能である。
【0031】
なお、図5(側面図の部分拡大図)のように、絶縁体11の表面からの堰壁部13の最高点の高さをH、絶縁体11の表面から各接点部9a、9bの頂点までの高さのうち低い方の高さをhとすると、HとhとはH<hの関係にあることが好ましい。つまり、堰壁部13はいずれの接点部9a、9bよりも出っ張らないことが好ましい。
【0032】
これにより、電球をソケットに装着したときに、ソケット側の電極板(電極端子)のいずれに対しても接点部9a、9bを確実に接触させることが可能になると共に、金属粉により接点部9a、9b間がショート状態になるのを確実に防止することができる。その結果、電気的に信頼性の高い電球を実現することができる。
【0033】
なお、図6(ソケット側電極端子の説明図)のように、ソケット側の電極板(電極端子)17、18の夫々に貫通孔17a、18a或いは凹みを設け、電球をソケットに装着したときに該電球の接点部9a、9bがその貫通孔17a、18a或いは凹みの夫々に嵌るようにしてもよい。これにより、電球の振動が、電極板(電極端子)17、18の貫通孔17a、18a或いは凹みに嵌った接点部9a、9bを介して抑制され、堰壁体が設けられた電球をソケット装着状態において更に電気的に信頼性の高いものとすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1… ガラスステム
2… ガラスバルブ
3… 口金
4a、4b… 導入線
5a、5b… 導入線
6… フィラメント
7… フィラメント
8… 本体部
9a、9b… 接点部
10… 端部
11… 絶縁体
12a、12b… アイレット部
13… 堰壁部
14… 金属粉
14a、14b…金属粉
15a、15b… 電極板
17… 電極板(電極端子)
17a… 貫通孔
18… 電極板(電極端子)
18a… 貫通孔
20… 白熱電球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に2つのフィラメントを有するカラスバルブが口金に装着され、
前記口金の前記ガラスバルブが装着された側と対向する側の端部に、一対のアイレット部を備えた絶縁体が配設され、
前記2つのフィラメントの夫々の一方の端部を支持する導入線同士が前記口金の円筒状の本体部にはんだを介して電気的に接続されると共に、前記2つのフィラメントの夫々の他方の端部を支持する各導入線が前記一対のアイレット部にはんだを介して電気的に接続されてなる白熱電球であって、
前記一対のアイレット部の夫々のはんだ接合部を形成するはんだは鉛フリーはんだであると共に前記一対のアイレット部の夫々よりも突出して形成されており、且つ前記一対のアイレット部間に前記絶縁体から立ち上がって所定の幅で且つ所定の高さで線状に延びる堰壁部が設けられているか又は前記一対のアイレット部の夫々を含む各近傍領域を除いた部分に前記絶縁体から所定の高さで形成された堰壁部が設けられていることを特徴とする白熱電球。
【請求項2】
前記絶縁体の表面からの前記堰壁部の最高点の高さは、前記絶縁体の表面から各鉛フリーはんだの頂点までの高さのうち低い方の高さよりも低いことを特徴とする請求項1に記載の白熱電球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−178258(P2012−178258A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40166(P2011−40166)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)