説明

白米由来成分を有効成分とする寿命延長剤

本発明は、白米部分を必須的に含む米原料の水処理物に含まれる、エチルアルコール又はその酸化物以外の成分を有効成分とすることを特徴とする寿命延長剤であり、エチルアルコールのような精神面に対して好影響を与えるという作用機序ではなく、個体や細胞等に直接働きかけてこれらの寿命を延長させる効果を奏する、生体安全性に優れた天然物由来の寿命延長剤を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、白米由来成分を有効成分とする寿命延長剤に関するものである。
【背景技術】
ヒトをはじめとする個体は、誰しも年を取りやがて死を迎えるという現実から回避できない状況下、通常、一年でも長生きすることを切望している。ところで、百薬の長といわれる酒は、適量であれば、人を陽気にさせてストレスを解消させる等、特に精神面に対して好影響を与えることが周知である。そして、ほどほどの酒は、当該ストレス解消を通じて、人を長生きさせると考えられている。ここで、酒の場合は、酒の中に含まれるアルコール(エチルアルコール)が、ストレス解消の有効成分であると考えられている。[特許文献1]特開2003−225080
しかしながら、上記のアルコールは、それ自体に直接的に寿命延長効果がある訳ではなく、その効果は間接的である。また、アルコールの酸化物は、有毒であるか又は効果が無いことが確認されている。しかも、継続的なアルコール摂取はアルコール依存症になりやすく、また、過剰のアルコール摂取はアルコール中毒に繋がる可能性もあり、いずれも、むしろ寿命を短縮させる結果となり得る。本発明は、エチルアルコールのような精神面に対して好影響を与えるという作用機序ではなく、個体や細胞等に直接働きかけてこれらの寿命を延長させる効果を奏する、生体安全性に優れた天然物由来の寿命延長剤を提供することを目的とする。
【発明の開示】
これまでも本発明者らは、動植物合和すの観点から、主食であり安全性が最も高い白米を中心に様々な研究を進めている。それらの研究の途中で、偶然、当該原料に細胞レベルの顕著な寿命延長効果があることを発見し、このことを契機として組織や個体の寿命延長効果についても確認したところ、顕著な寿命延長効果を奏することを見出し、本発明に到達したものである。
本発明において、白米由来のどのような成分(又は複数の成分の組み合わせ、或いは所定存在比での複数の成分の組み合わせ)が寿命延長効果を有するのかに関しては、未だ解明されるに至っていないが、白米の水処理物{本発明(1)〜(4)}は、いずれも寿命延長効果を示すことが判明した。以下、本発明(1)〜(4)を列記する。
本発明(1)は、白米部分を必須的に含む米原料の水処理物に含まれる、エチルアルコール又はその酸化物以外の成分を有効成分とすることを特徴とする寿命延長剤である。
本発明(2)は、前記米原料が、白米、玄米、発芽米、白糠及びこれらの一種以上の組み合わせである、前記発明(1)の寿命延長剤である。
本発明(3)は、前記水処理物が、前記米原料の水抽出物、前記米原料又は前記水抽出物の澱粉加水分解処理物、前記米原料、前記水抽出物又は前記澱粉加水分解処理物の発酵物である、前記発明(1)又は(2)の寿命延長剤である。
本発明(4)は、前記水処理物が、澱粉加水分解酵素及び/又は麹で処理したものである、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの寿命延長剤である。
【図面の簡単な説明】
図1は、試験例1における本発明品を添加しなかった細胞の顕微鏡写真(14日間培養)である。ウェル底面に正常に接着できず、剥離している。
図2は、試験例1における本発明品を添加した細胞の顕微鏡写真(14日間培養)である。ウェル底面に正常に接着している。
ここで、本明細書における各用語の意味について説明する。尚、説明の都合上、一部の用語の意味については「発明を実施するための最良の形態」の箇所で述べることとする。まず、「水処理物」とは、水を用いた米原料の加工品を指し、例えば、米原料の水抽出物、水存在下での米原料の澱粉加水分解処理物(例えば、米原料に水を加えて澱粉加水分解処理を施したもの、米原料の水抽出物を澱粉加水分解処理したもの)、水存在下での米原料の発酵物(例えば、米原料に水を加えて発酵させたもの、米原料の水抽出物を発酵させたもの、米原料の水抽出物を澱粉加水分解処理したものを発酵させたもの)を包含する。また、ここでの「水」は、水を必須的に含んでいる水性媒体を意味し、例えば、水や水とエチルアルコールとの任意の割合の混合液を含む。「水抽出物」とは、物理的処理(例えば、圧搾、加熱処理)、化学的処理(例えば、酸やアルカリ処理)、生物的(生化学的)処理(例えば、麹、微生物処理、酵素処理)を単独又は組み合わせて施したものをいう。例えば、米原料に水を加えたもの、米原料を酸又はアルカリで処理したもの、米原料の加水物に酵素(例えば澱粉加水分解酵素)及び/又は麹を作用させたもの(抽出前又は抽出と同時)、或いは、これらの処理を加熱又は非加熱下でおこなったものである態様を挙げることができる。「澱粉加水分解処理物」とは、澱粉加水分解処理を施したものである限り特に限定されず、非分解澱粉を含有していてもよい。ここで、「澱粉加水分解処理」とは、澱粉及び/又はその分解物である多糖類を加水分解する処理であれば特に限定されず、例えば、酵素による処理や酸による処理を挙げることができる。「発酵」とは、アルコール発酵や有機酸発酵(例えば乳酸発酵)を単独で又は組み合わせて行うことを指す。「有機酸発酵」とは、例えば、乳酸発酵や酢酸発酵を指す。「有効成分として含有する」とは、寿命延長効果を奏する程度に当該成分を含有することを意味し、当該成分が寿命延長剤の一部を構成する場合のみならず、当該成分が寿命延長剤のすべてを構成する場合を含む。「寿命延長剤」とは、投与した場合としない場合とを比較して、細胞、組織、臓器又は個体の寿命が延長される薬剤を意味する。ここで、細胞、組織、臓器又は個体に係る生命体は、多細胞生物(ヒトを含む哺乳類といった高等動物も含む)及び単細胞生物を指す。「エチルアルコール又はその酸化物以外の」とは、有効成分がエチルアルコールやその酸化物とは異なるという意味であり、エチルアルコールやその酸化物が含まれていても本件発明から除外されるとは限らない。尚、エチルアルコール又はその酸化物が含まれている製品が本発明の範囲に属するか否かを決定する際には、当該製品からエチルアルコールやその酸化物を除去したものとしないものとの両方について前記試験を行い、除去したものについて上記規定の効果を奏した場合、当該エチルアルコール又はその酸化物含有製品は本件発明の範囲内とする。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に係る「白米部分を必須的に含む米原料」とは、白米の少なくとも一部を含む限り特に限定されず、例えば、白米、玄米及び発芽させた米といった米だけでなく、白糠のみ、白糠と赤糠とのブレンドも含む概念である。ここで、白米及び玄米に関しては、ジャポニカ、インディカ米を問わず、うるち米や餅米等の玄米及び白米を指し、品種、種類は問わない。また、白糠とは、一般に、精白時に出てくる92%以下の白糠を指し、この範囲内の一部を原料として用いればよい(例えば、92%以下の白糠すべて、92〜80%の白糠のみ、60%以下の白糠)。赤糠とは、一般に、92%以上の赤糠を指す。尚、有効成分は、熱及び光に対して安定であるため、上記の原料は、浸漬、蒸煮、焙煎(砂焙り、網焙り、熱風焙煎等全てを指す)、蒸煮焙煎、凍結乾燥等の表面変性、UV照射等の光変性、パットライス等の加圧焙煎、揚げる等の原料処理をしてもよい。
発芽させた米を製造する場合、胚芽のついた米を水に浸漬或いは水を噴霧して発芽させる。発芽させる時の温度は5〜70℃である。但し、発芽さえすれば、温度及び時間は問わない。また、発芽中に水が腐敗する危険性がある場合は、腐敗しないように水を取り替えるか、何らかの防腐を行うのが好ましい。ここで、発芽とは、発芽する直前から発芽したものまで全てを指す。この発芽させた米をよく洗浄して用いる。この時、乾燥して用いてもよい。
水処理(例えば、水抽出)の際、米原料は顆粒又は粉体状であることが好適である。尚、顆粒又は粉体状でない場合には、処理時間を長くする。以下、水処理物の各態様について説明する。
まず、水抽出物について詳述する。米原料を水抽出する場合、抽出温度は、高温が効率的であるが、低温でも十分に抽出を行うことができる。但し、40℃以下の低温の場合は、pHを酸性或いはアルカリ性にするか、防腐剤或いはエチルアルコールを加えて、米原料が腐敗しないように処理することが望ましい。抽出時間は、有効成分さえ抽出できれば、長くても短くてもよく、抽出温度により定めればよい。また、水抽出は、加圧下又は常圧下で行っても、減圧下で行ってもよい。水抽出の場合、最も問題になるのは糊化現象である。糊状になれば、抽出効率が悪くなるばかりでなく、実作業においては困難を極める。これを防ぐためには、アミラーゼを加えて反応させるか、塩酸等で酸性にして澱粉を分解すればよく、この方法を用いることにより、十分に解決でき、実用上も全く問題はない。
水抽出物中の有効成分は、酸、アルカリに安定であるので、酸分解抽出又はアルカリ分解抽出を行うのも有効である。この場合、必要により中和、脱塩を行う。また、米原料を酵素分解及び/又は麹を作用させてもよい。ここでいう酵素分解とは、澱粉加水分解酵素(液化酵素、糖化酵素)、蛋白分解酵素、脂肪分解酵素、繊維分解酵素、リグニン分解酵素、ペクチン分解酵素等米に働く酵素を1種又は2種以上作用させることをいう。例えば、液化酵素と糖化酵素との組み合わせを挙げることができる。また、麹として麹菌の種類及び米の品種、種類は問わない。尚、抽出を行うに際し、酵素や麹を作用させるタイミングは、抽出の前又は抽出と同時のいずれでもよい。
次に、澱粉加水分解処理物について詳述する。当該澱粉加水分解処理物は、好適には、水の存在下で米原料に澱粉加水分解酵素及び/又は麹を作用させるか、または、前記抽出物に澱粉加水分解酵素及び/又は麹を作用させたものである。当該澱粉加水分解は、上記処理(水抽出処理)の後に限られず、これと同時に行ってもよい。また、麹は、上記同様、麹菌の種類及び米の品種や種類は問わない。また、前記抽出物に澱粉加水分解酵素を作用させる態様には、前記抽出物自体が既に部分的に澱粉加水分解されているものも含む(例えば、抽出段階で液化酵素を使用している場合)が、これは、当該部分澱粉加水分解物を更に加水分解させることを意味する。
次に、発酵物について詳述する。当該発酵物は、水の存在下で米原料を発酵させるか、前記水抽出物を発酵させるか、又は、前記澱粉分解処理物を発酵させたものである。ここで、当該発酵は、アルコール発酵や有機酸発酵(乳酸発酵等)を指し、また、当該発酵は、上記処理(水抽出処理、澱粉分解処理)の後に限られず、これと同時に行ってもよい。ここで、アルコール発酵法に関しては、より高い寿命延長効果を奏するには、清酒の製造方法である並行複発酵よりも、単行複発酵の方が好適である。尚、エチルアルコール自体は、摂取しすぎると寿命延長効果が無いだけでなくむしろ寿命延長の阻害効果が確認されているので、存在しない方がよい。但し、有効成分が存在している以上、寿命延長効果が多少下がる程度であるので、エチルアルコールが存在する態様も本発明に属する。尚、酵母による通気発酵、エチルアルコール沈澱等を行なって除糖してもよい。また、有機酸発酵を行うと、更に寿命延長効果が高まる。特に、乳酸発酵が好適である。
以上のようにして得られた本発明に係る寿命延長剤は、残渣と分離することなくそのままの状態で、或いは、圧搾や濾過を行った後、対象物(細胞、組織、臓器又は個体)に適用する。ここで、そのまま用いるときは、殺菌或いは除菌を行うことが好適である。本発明に係る寿命延長剤は、例えば個体に適用する場合、内用でも外用でもよい。具体的には、実際の用途に応じ、常法にしたがってクリーム、洗顔料、乳液、化粧水、クレンジング、パック、石鹸等の化粧料、軟膏剤、パスタ剤、ローション剤、チンキ剤、リエメント剤、ゼリー剤、エアゾール剤、液剤、ゼリー剤、エリキシル剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、散剤、細粒剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、リモナーデ剤等の経口剤、注射剤等の剤型で用いる。更には、食品や飲料に添加する処方も含む。また、入浴剤の形態で使用してもよい。尚、用途に応じ、他の配合成分や薬剤を添加してもよい。ヒトに投与する場合の投与量は、使用者の年齢、体重や重篤度等にもよるが、例えば、体重1kg当たり、一日0.01〜20mlである。また、製品製造においては、例えば、製品100重量部当たり、本発明品を0.1〜30重量部添加する。
尚、実際の製品との関係では、例えば、寿命延長のために用いられるものである旨の表示を製品(例えば、薬剤、化粧品、飲食品)のパッケージ、パンフレット及び取扱説明書等に付した態様が好適である。このような表示を付することにより、本発明品がそのような効果を奏することが、ユーザーに一目瞭然となる。加えて、他の法律(薬事法)の制限により、製品等に直接表示できない場合には、例えば、インターネットや新聞記事等の形で当該製品の効能をユーザーに間接的に告知する手法や、営業が口頭で当該効能をユーザーに告知する手法も想定される。したがって、「寿命延長のために用いられるものである旨の表示」には、これらの手法も含め、寿命延長を明記した場合のみならず、寿命延長を示唆する表示や行為も包含される。また、寿命延長効果としては、試験例1においてはいずれかの培養日数において、コントロールに対して生存率が10%程度上昇することが好適であり、30%程度上昇することがより好適であり、50%程度上昇することが最も好適である。また、試験例2においては、コントロールに対して平均寿命が5%程度上昇することが好適であり、10%程度上昇することがより好適であり、20%程度上昇することが最も好適である。
【実施例】
[実施例1]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に液化酵素10gと水1500mLを添加した。その後、徐々に温度を上げていき5分間煮沸抽出した後、冷却した。その後、絞り機で絞り、本発明品を得た。
[実施例2]
白米を粉砕機にかけ白米の粉砕物を500gを得た。この粉砕物に米麹300gと水1500mLを添加し、55℃で20時間放置した。その後絞り機で絞り、本発明品を得た。
[実施例3]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に糖化酵素(グルコアミラーゼ)5gと水3Lを添加し、55℃で16時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.5Lを得た。
[実施例4]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に蛋白質分解酵素5gと水3Lを添加し、50℃で16時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.3Lを得た。
[実施例5]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと繊維分解酵素5gと水3Lを添加し、50℃で16時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.2Lを得た。
[実施例6]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと脂肪分解酵素5gと水3Lを添加し、50℃で16時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.1Lを得た。
[実施例7]
白米を粉砕機にかけ白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に液化酵素10gと水1500mLを添加した。その後、徐々に温度を上げていき、該酵素を作用させた後、5分間煮沸抽出し、冷却した。抽出物を絞り機で絞り、本発明品1420mLと残渣500gを得た。
[実施例8]
白米を粉砕機にかけ白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物にタンパク質分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2g、糖化酵素2g、ペクチン分解酵素2gと水1500mLを添加し、50℃で20時間放置した。その後、徐々に温度を上げていき5分間煮沸抽出した後冷却した。抽出物を絞り機で絞り、本発明品1470mLと残渣450gを得た。
[実施例9]
精白歩合50〜70%の特白糠490g、92%以上の赤糠10gに、タンパク質分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2g、糖化酵素2g、ペクチン分解酵素2gと水1500mLを加え、50℃で20時間放置した。その後、徐々に温度を上げていき、5分間煮沸抽出した後、30℃まで冷却し、絞り機で絞り、本発明品1400mLと残渣550gを得た。
[実施例10]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと水3Lを添加し、60℃で4時間放置した。その後、加熱昇温させ、冷却した後、糖化酵素5gを加え、55℃で4時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.6Lを得た。
[実施例11]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと水3Lを添加し、60℃で4時間放置した。その後、加熱昇温させ、冷却した後、麹50gを加え、55℃で4時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.6Lを得た。
[実施例12]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと水3Lを添加し、60℃で4時間放置した。その後、加熱昇温させ、冷却した後、蛋白質分解酵素5gを加え、55℃で4時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.5Lを得た。
[実施例13]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと水3Lを添加し、60℃で4時間放置した。その後、加熱昇温させ、冷却した後脂肪分解酵素5gを加え、55℃で4時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.5Lを得た。
[実施例14]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に液化酵素5gと水3Lを添加し、60℃で4時間放置した。その後、加熱昇温させ、冷却した後、繊維分解酵素5gを加え、55℃で4時間放置した。その後濾過器を用いて固液分離を行い、ろ液2.5Lを得た。
[実施例15]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に1/10N塩酸3Lを添加し、よく撹拌し24時間放置した。その後、濾過器を用いて固液分離を行い、苛性ソーダで中和し、2.3Lの抽出液を得た。
[実施例16]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物1kgを得た。この粉砕物に95%エタノール3Lを添加し、よく撹拌し4日間放置した。その後、濾過器を用いて固液分離を行い、2Lの抽出液を得た。このろ液に水4Lを加え、ロータリーエバポレーターでエタノールを留去し2Lとした。
[実施例17]
実施例2で得た米エキス1500mLに酵母を添加し、7日間アルコール発酵を行なった。その後、濾過器で酵母を濾別し、本発明品を得た。
[実施例18]
実施例1で得た米エキス1500mLに乳酸菌を添加し、2日間乳酸発酵を行なった。その後、濾過器で乳酸菌を濾別し、本発明品を得た。
[実施例19]
白米を粉砕機にかけ白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物にタンパク質分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2g、糖化酵素2g、ペクチン分解酵素2gと水1500mLを添加し、50℃で20時間放置した。その後徐々に温度を上げていき5分間煮沸抽出した後冷却した。この酵素分解抽出物に酵母を添加し、7日間アルコール発酵した。その後、絞り機で絞り、本発明品を得た。
[実施例20]
白米を粉砕機にかけ白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物にタンパク質分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2g、糖化酵素2g、ペクチン分解酵素2gと水1500mLを添加し、50℃で20時間放置した。その後徐々に温度を上げていき5分間煮沸抽出した後冷却した。この酵素分解抽出物に乳酸菌を添加し、2日間乳酸発酵した。その後、絞り機で絞り、本発明品を得た。
[実施例21]
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に液化酵素10gと水1500mLを添加した。その後、徐々に温度を上げていき、該酵素を作用させた後、5分間煮沸抽出し、冷却した。これに95%エタノール100mLを添加し、20日間酢酸発酵を行なった。その後ろ過し、本発明品1400mLを得た。
試験例1
方法:コンフルエントに培養した小腸粘膜上皮細胞(IEC−6)を、1%試料を添加した培養液で30日間培養し、細胞の30日間生存率を調べた。試料添加後、培地交換は行わなかった。なお、容器は6wellプレート(NUNC)、培地はGIT培地(日本製薬(株))を用い、通常の5%炭酸ガス、36.5℃で培養した。
試料:実施例1、10、18
結果:14日間培養した後のIEC−6を観察した結果、本発明品を添加した細胞は異常が全く認められず、正常な状態を維持し生存し続けていることが判明した。一方本発明品を添加しなかった細胞(コントロール)では、死滅した細胞が認められた(一例として14日間培養後のコントロール細胞及び実施例1を添加した細胞の顕微鏡写真をそれぞれ図1及び図2に示す)。さらに30日間培養した後のIEC−6を観察した結果、本発明品を添加した細胞はやはり異常が全く認められず、正常な状態を維持し生存し続けていることが判明した。一方、試料を添加しなかった細胞では、生存し続けることができなかった。各試料における細胞の30日間生存率を表1に示す。

表1のとおり、本発明品を添加した培地で培養した細胞の30日間生存率は85%以上であり、通常の培地のみで培養した細胞の30日間生存率は0%で全て死滅していた。以上の試験より本発明品による寿命延長効果が実証された。コントロールは、14日目程度より死滅が始めるため、一般的には週に2回培養液を交換している。従って本発明品は、寿命延長効果のみならず、細胞を使った実験にも多大な貢献をするものである。尚、30日後の細胞は癌化しているものではなかった。また、細胞の形態は正常であった。
試験例2
実験動物を用いて本発明を摂食させたグループと摂食させないグループについて寿命を調査し、本発明の寿命延長効果を調べた。
方法:
4週齢の雄性BALB/a系マウス10匹を一匹ずつ個別にケージに入れ、通常の食餌、飲水を自由にさせた状態で35週齢まで予備飼育した。その後(35週令以降は)、10匹中5匹は、予備飼育後、通常の餌に本発明品を0.6%(v/w)配合した餌を与え、残りの5匹は通常の餌を与え、各々死亡するまで飼育し、寿命を測定した。
試料:実施例1
結果:
長期飼育試験の結果、本発明品配合の餌を与えたBALB/a系マウス(本発明品群)は、67、129、87、100、92週まで生存した。一方、通常の餌を与えたBALB/a系マウス(コントロール群)は、78、84、80、64、60週まで生存した。本発明群の平均寿命は95週、コントロール群の平均寿命は73.2週であり、本発明品を与えたマウスは、与えなかったマウスと比較して平均寿命が約30%長かった。これより、本発明による寿命延長効果が動物においても証明された。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、ヒト等の個体に投与した場合に、細胞の寿命が延長され、細胞から構成される各種細胞群(組織や臓器)の寿命が延長され、ひいては、体全体(個体)の寿命が延長されるという効果を奏する。そして、個体を構成する細胞等に関し、細胞機能、細胞活性、細胞周期、若々しさ、遺伝子機能の正常化をもたらし、更には、個体を構成する器官・臓器・組織・体液に関しても、機能の向上若しくは改善、正常化、健全化、老化防止、若々しさ保持又は若返りをもたらす。更に、これらの結果として、多くの疾病の予防・治癒効果をもたらす。例えば、循環器系(心臓、血管、血液・造血器系)、免疫系(リンパ性組織・器官、脾臓、胸腺)、皮膚、皮膚付属器官、消化器系(口唇、扁桃、歯、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆管系、脾臓)、呼吸器系(鼻、咽頭、喉頭、気管、肺)、泌尿器系(腎臓、尿路)、性殖系(男性生殖器、女性生殖器)、内分泌系(下垂体、松果体、甲状腺、副腎)、脳、神経系(末梢神経、中枢神経)、代謝系(糖、脂質、尿酸代謝)、平衡・聴覚器、視覚器、各粘膜系、運動器(骨、関節、筋肉、腱、靱帯)等の機能の向上又は改善、正常化、健全化、老化防止、若々しさ保持或いは若返り;生命体或いは個体、器官、臓器、組織、体液又は細胞等における疾患及び諸症状の予防、悪化防止、改善、治療;循環器系(心臓、血管、血液・造血器系)、免疫系(リンパ性組織・器官、脾臓、胸腺)、皮膚、皮膚付属器官、消化器系(口唇、扁桃、歯、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆管系、脾臓)、呼吸器系(鼻、咽頭、喉頭、気管、肺)、泌尿器系(腎臓、尿路)、性殖系(男性生殖器、女性生殖器)、内分泌系(下垂体、松果体、甲状腺、副腎)、脳、神経系(末梢神経、中枢神経)、代謝系(糖、脂質、尿酸代謝)、平衡・聴覚器、視覚器、各粘膜系、運動器(骨、関節、筋肉、腱、靱帯)等における疾患及び諸症状の予防、悪化防止、改善、治療;表皮・真皮に起因する皮膚障害、細胞障害、DNA障害、アトピー性皮膚炎、ドライスキン等の乾燥性皮膚症状(アトピー皮膚、乾燥・ソゾウ化皮膚、老化皮膚、魚鱗癬、かさかさ肌、荒れ肌、皮脂欠乏症、乾皮症、乾燥性湿疹、進行性手掌角皮症、紅斑、硬化・角化、亀裂、鱗屑、紋理、痒み、掻瘢痕)、シミ、ソバカス、掻痒症、あせも、荒れ性、しもやけ、ひび、あかぎれ、皮膚老化症状(しわ、ハリ・弾力の低下、たるみ、シミ)、油性肌、ニキビ、色素異常症、紫外線による皮膚障害(シミ、ソバカス)、光炎症、くすみ、黒ずみ、物理・化学的皮膚障害(切り傷、火傷、床ずれ)、水、石けん、洗剤、界面活性剤、溶媒の使用により引き起こされる皮膚症状、皮膚外用剤等の医薬品の副作用、生物的皮膚障害(皮膚感染症)、水虫、皮膚炎、湿疹、創傷治癒、育毛、養毛、発毛、脱毛症等の予防、悪化防止、改善、治療;シミ、ソバカス、老人性色素斑等の予防、悪化防止、改善、治療;各種炎症、感染症、アレルギー、免疫機能障害、粘膜障害、細胞障害、DNA障害、腫瘍、潰瘍、高脂血症、肥満、糖尿病、動脈硬化、痛風、血圧の健全化、改善(高血圧、低血圧)、ボケ、痴呆症、鼻炎、喘息、目の諸症状、風邪、血管障害、うちみ、肩こり、くじき、神経痛、腰痛、リウマチ、痔、疲労回復、産前産後の冷え症、口内炎、のどの炎症、痛み、咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、歯周炎、歯槽膿漏、歯肉炎、骨粗鬆症、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、体力低下、塩害防止、ヘリコバクターピロリ生育阻止、ストレス、医薬品による副作用等の予防、悪化防止、改善、治療;腫瘍の予防、悪化防止、改善;癌予防、悪化防止、進行抑制、転移防止、改善、治療;性機能の向上、改善、正常化、健全化又は老化防止、若々しさ保持或いは若返りが期待できる。更に、臓器保存剤や細胞保存剤(例えば培地の添加剤として使用)としても有用である。
また、白米は、食用以外に新規な利用用途はほとんど開発されていなかった。更に、白米は、主食として毎日摂取しても危険視する向きも無く、安全性も実証されている。すなわち、本発明は、非常に優れた寿命延長効果を持っているばかりでなく、安全性も十分に実証されているものを見出したものであり、さまざまな医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等に利用できる非常に有意義な発明といえる。また、米の過剰生産といわれている現在、新たな米の利用用途を見出したことと、米のイメージアップによる消費拡大を図り得ることは、極めて有意義なことである。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白米部分を必須的に含む米原料の水処理物に含まれる、エチルアルコール又はその酸化物以外の成分を有効成分とすることを特徴とする寿命延長剤。
【請求項2】
前記米原料が、白米、玄米、発芽米、白糠及びこれらの一種以上の組み合わせである、請求項1記載の寿命延長剤。
【請求項3】
前記水処理物が、前記米原料の水抽出物、前記米原料又は前記水抽出物の澱粉加水分解処理物、或いは、前記米原料、前記水抽出物又は前記澱粉加水分解処理物の発酵物である、請求項1又は2記載の寿命延長剤。
【請求項4】
前記水処理物が、澱粉加水分解酵素及び/又は麹で処理したものである、請求項1〜3のいずれか一項記載の寿命延長剤。

【国際公開番号】WO2005/065700
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516915(P2005−516915)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000261
【国際出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(504007475)
【Fターム(参考)】