説明

白色カバーレイフィルム

【課題】 白色カバーレイフィルムを提供するにあたり、カバーレイ製造時の生産性を向上させるとともに、光硬化性樹脂組成物からなる光反射層の深部硬化性が改良された白色カバーレイフィルムを提供することにある。
【解決手段】 ポリイミドフィルムと光反射層の少なくとも2種の層からなり、光反射層は、(A)ラジカル硬化性樹脂、(B)光ラジカル開始剤、(C)白色顔料、(D)チオール系化合物を含有する光硬化性樹脂組成物とすることにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)等の発光素子が実装されるフレキシブルプリント配線板の光反射層として好適に用いられ、生産性に優れた白色カバーレイフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低消費電力、長寿命、小型化・薄膜化・軽量化が可能なことから、携帯端末、パソコンモニター、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の光源として、発光ダイオード(LED)が用いられるようになり、特にフレキシブルプリント配線板上にLEDチップを直接実装する用途が近年増加している。
【0003】
LEDチップを実装するフレキシブルプリント配線板は、LEDチップからの光を効率的に活用するために、LEDのパッケージ自体の光反射性を上げるだけでなく、フレキシブルプリント配線板の絶縁保護膜であるカバーレイフィルムにも光反射性能を有することが所望されるようになってきている。
【0004】
光反射性を向上する手段として、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラー、白色顔料を含有する樹脂組成物(特許文献1)やカルボキシル基含有樹脂、光重合開始剤、水添エポキシ樹脂、酸化チタン、希釈材からなる白色の熱硬化性・光硬化性ソルダーレジスト材料が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−260849号公報
【特許文献2】国際公開第2008/050768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、保存安定性の良い光反射率の高い樹脂組成物が得られるとされているが、高温で2時間程度の処理時間が必要となり、生産性に問題があった。また、上記特許文献2では光硬化のみでは最終硬化まで至らず、熱による二次硬化が必要であり、特許文献1同様、生産性に問題があった。また、生産性を向上させるには熱硬化性樹脂を併用せず、光硬化性樹脂単独とすればよいが、光硬化性樹脂に白色顔料を高充填させた光硬化性樹脂組成物を光硬化させる場合には、白色顔料により光が吸収または反射されてしまうため、光が届きにくい部分まで硬化しない、いわゆる深部硬化不良の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリイミドフィルムと光反射層の少なくとも2種の層からなり、光反射層は、
(A)ラジカル硬化性樹脂、
(B)光ラジカル開始剤、
(C)白色顔料、
(D)チオール系化合物
を含有する光硬化性樹脂組成物により形成することにより、生産性が向上された白色カバーレイフィルムを提供可能となることを見出した。
【0008】
すなわち本願発明は、以下の構成を有するものである。
1)ポリイミドフィルムと光反射層の少なくとも2種の層からなり、光反射層は、(A)ラジカル硬化性樹脂、(B)光ラジカル開始剤、(C)白色顔料、(D)チオール系化合物を含有する光硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする白色カバーレイフィルム。
2)前記(C)白色顔料が酸化チタンを含有することを特徴とする1)に記載の白色カバーレイフィルム。
3)前記光硬化性樹脂組成物が更に(D)リン含有化合物からなるフィラー型難燃剤を含有することを特徴とする1)または2)に記載の白色カバーレイフィルム。
4)前記白色カバーレイフィルムのポリイミドフィルム層側に更に接着層を備えることを特徴とする1)〜3)のいずれか1つに記載の白色カバーレイフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の白色カバーレイフィルムを提供することにより、カバーレイ製造時の生産性が向上するとともに、深部硬化性が改良された白色カバーレイフィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について、(I)光反射層、(II)ポリイミドフィルム、(III)白色カバーレイフィルム、(IV)白色カバーレイフィルムの利用方法の順に詳細に説明する。
【0011】
(I)光反射層
本発明の光反射層は、LEDチップから発生した光が反射もしくは散乱してフレキシブルプリント基板に届く光を効率よく反射する層である。この光反射層はカバーレイの生産性を向上させる必要があることから短時間で硬化する必要があること、また、意匠性の観点からも白色であることが好ましい。以上の観点から、光反射層は、(A)ラジカル硬化性樹脂、(B)光ラジカル開始剤、(C)白色顔料、(D)チオール系化合物を含有する光硬化性樹脂組成物から構成される。さらに、(E)リン含有化合物からなるフィラー型難燃剤を含有してもよい。
【0012】
まず(A)ラジカル硬化性樹脂について説明する。
【0013】
本発明のラジカル硬化性樹脂とはラジカル種の存在により重合反応が進行し、硬化反応が進むものであればよく、本発明においては、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するものが好ましく用いられる。
【0014】
特に、本発明においては、反応性の観点から、分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものが好適に用いられる。例えば、ダイセル・サイテック株式会社UV/EB硬化性樹脂カタログ記載のアクリレートモノマー、ウレタンアクリレート、ポリエーテル・ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、酸基含有アクリレートや、日本合成化学工業株式会社紫外線硬化型樹脂カタログ記載の紫光シリーズのウレタンアクリレート等を好適に用いることができる。これらのモノマーやオリゴマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
次に(B)光ラジカル開始剤について説明する。
【0016】
本発明の光ラジカル開始剤とは、UVなどの光エネルギーによって活性化し、ラジカル重合性基の反応を開始・促進させる化合物である。かかる光ラジカル開始剤としては、例えば、ミヒラ−ズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリス(ジメチルアミノ)トリフェニルメタン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ジイミダゾール、アセトフェノン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、メチルアントラキノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ル、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、ジ(テトラアルキルアンモニウム)−4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルフォネ−ト、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(n5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタノンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨード二ウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。上記光ラジカル開始剤は適宜選択することが好ましく、1種のみ、または2種以上を混合させて用いることが可能である。
【0017】
次に(C)白色顔料について説明する。
【0018】
白色顔料は樹脂組成物に配合し、光硬化後の光反射層を白色に着色していれば良い。本発明においては、タルク、マイカ、雲母、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、(中空)シリカ、チタン酸塩、硫酸バリウム、アルミナ、カオリン、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム等の汎用の白色顔料を用いることが可能であり、これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明においては、特に比較的少量の添加にて効果のある、酸化チタンが好適に用いられる。また、酸化チタンの中でも、耐光安定性の観点から結晶形態としてルチル型酸化チタンの使用が好ましい。また、酸化チタンは金属酸化物、金属窒化物といった無機顔料および/またはそれらを有機物、ガラス等で表面処理したものを1種類単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0020】
次に(D)チオール系化合物について説明する。
【0021】
本発明のチオール系化合物は、光反射層の光硬化時における硬化性を改善することが可能な点から、必須の化合物である。通常、空気雰囲気下においてラジカル硬化性樹脂に光ラジカル開始剤を配合してUV光による光ラジカル硬化を行うと、空気面側は酸素による重合阻害が生じ、表面硬化不良を引き起こす。また、白色顔料を添加した場合、白色顔料により光の反射や吸収が起こり、底部まで光が充分に届かなくなることから、深部硬化不良が発生する。しかし、チオール系化合物を添加することにより、酸素による重合阻害が緩和されるだけでなく、深部の硬化不良も大幅に抑制される。深部の硬化不良の改善効果については、詳細な機構は分かっていないが、おそらく、光硬化時に発生する重合熱によりラジカル硬化性樹脂とチオール系化合物の反応が進行し(エン/チオール硬化)、硬化不良が改善されると考えられる。
【0022】
チオール系化合物としては、チオール基を有する化合物であれば特に限定はされないが、揮発性や低臭気性の観点から、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−((3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等が好ましい。これらを単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0023】
次に(E)リン含有化合物からなるフィラー型難燃剤について説明する。
【0024】
本発明の難燃剤は光反射層に難燃性を付与する機能を持ち、光反射層において難燃効果を持つ成分が光硬化樹脂組成物中において粒子形態を保持されたまま分散して存在している。特に本発明においてリン含有化合物からなるフィラー型難燃剤としては難燃性効果と高耐熱性の観点からホスフィン酸塩を含むことが好ましい。
【0025】
上記のホスフィン酸塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記ホスフィン酸塩は市販品として購入することもでき、例えば、EXOLIT OP 930、EXOLIT OP 935、EXOLIT OP 940(いずれもクラリアント社製、商品名)を用いることもできる。特に耐折曲げ性の観点から、上記市販品のホスフィン酸塩を、ビーズミル等を用いて粉砕したものを用いることが好ましい。また、本発明におけるフィラー型難燃剤の添加量は、上記熱硬化性樹脂成分に対して1〜50wt%が好ましく、5〜30wt%添加することがより好ましい。
【0026】
以上、光硬化性樹脂組成物の構成成分を順に説明したが、これら成分以外に、必要に応じて消泡剤やレベリング剤、ポリイミドフィルムとの接着性を向上させるためのシランカップリング剤やチタン系カップリング剤、耐熱安定性を向上させるための熱安定剤、耐候・耐光性を向上させるための紫外線吸収剤やHALS等の光安定剤を適宜加えてもよい。
【0027】
次に、光硬化性樹脂組成物の調整方法について説明する。
【0028】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分又は(A)〜(E)成分を粉砕・分散させて混合し、得られることができる。粉砕・分散方法としては、特に限定されるものではないが、例えばビーズミル、ボールミル、3本ロール等の一般的な混練装置を用いて行われる。この中でも、特にビーズミルを用いて粉砕・分散させて混同した場合、微粒子として存在する(C)白色顔料、(E)リン含有化合物からなる難燃剤の粒度分布が均一になるため好ましい。
【0029】
ビーズミルで粉砕・分散する例を挙げると、上記(A)〜(D)成分又は(A)〜(E)成分、必要に応じて溶媒を混合し、ビーズと混合して、所定の装置で攪拌することで、剪断をかけることで微粒子を粉砕・分散させて混合することができる。ビーズの種類はジルコニア、ジルコン、ガラス、チタニアなどを使用し、目標とする粒径や用途に適したビーズを使用すればよい。また、ビーズの粒径は、目標とする粒子径に適したものを使用すればよく、特に限定されるものではない。攪拌速度(周速)は、装置によって異なるが、100〜3000rpmの範囲で攪拌すればよく、高速になれば、温度が上昇するので、適宜、冷却水又は冷媒を流すことで、温度上昇を抑えればよい。所望の粒子径が得られれば、ビーズを濾別し、本願発明の光硬化性樹脂組成物を得ることができる。微粒子の粒子径はJIS K 5600−2−5で規定されたゲージを用いる方法で測定することができる。また粒度分布測定装置を使用すれば、平均粒子径、粒子径、粒度分布を測定することができる。
【0030】
(II)ポリイミドフィルム
次に本発明におけるポリイミドフィルムについて説明する。本発明に係るポリイミドフィルムは、通常、ポリアミド酸をその前駆体として用いて製造することができる。ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができる。通常、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的に等モル量となるように有機溶媒中に溶解、反応させてポリアミド酸有機溶媒溶液として得ることができる。
【0031】
また、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができる。特に、上記ポリアミド酸溶液に無水酢酸等のイミド化促進剤を加え加熱焼成によってイミド化する方法が生産性の観点から好ましい。
【0032】
本発明に係るポリイミドフィルムは市販品として購入することもできアピカルNPI(株式会社カネカ社製、商品名)等のこれまで単独でカバーレイフィルムとして用いられてきたものを用いることができる。
【0033】
本発明で用いられるポリイミドフィルムは光反射層との密着性や、カバーレイフィルムとして用いる場合の接着剤との密着性を上げる目的で表面処理をされていても良い。表面処理の方法は、コロナ処理やプラズマ処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明で用いられるポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが柔軟性、折り曲げ性の観点から5〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0035】
(III)白色カバーレイフィルム
本発明における白色カバーレイフィルムは上記光反射層がポリイミドフィルムの片方の面に設けられていることを特徴とする。光反射層をポリイミドフィルム上へ設ける方法は特に限定されないが、未硬化の光硬化性樹脂組成物をポリイミドフィルム上へ塗布し、UV光を照射することにより硬化させる方法が生産性の観点からは好ましい。また、溶剤により光硬化性樹脂組成物を希釈している場合にはUV光を照射する前に乾燥を行い、溶剤を留去しておくことが好ましい。
【0036】
ポリイミドフィルム上への塗布方法は、コンマコートやナイフコート、ダイコートやリップコート、刷毛塗り、浸漬塗布、ロールコーター、スプレー塗装、カーテンロール塗装等の従来公知の方法によることができる。
【0037】
(IV)白色カバーレイフィルムの利用方法
本発明に係る白色カバーレイフィルムの利用方法について説明する。
上記のように光反射層をポリイミドフィルムの片面に設けているが、ポリイミドフィルムのもう片方の面に、ポリエステルベース、アクリルベース、エポキシベース或いはポリイミドベース等、従来公知の接着剤層を設け、この接着剤層を介して回路を形成したフレキシブル配線板を被覆することで白色のフレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0038】
また、得られる白色のフレキシブルプリント基板は、LEDチップを実装した場合に、LEDチップから発せられる光を効率的に反射することができるとともに、意匠性に優れている。
【実施例】
【0039】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
<光硬化性樹脂組成物の調製>
(A)ラジカル硬化性樹脂として、日本合成化学製ウレタンアクリレート(UV7650B)60g、(B)光ラジカル開始剤として、BASF社製アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(DAROCUR TPO)3g、(C)白色顔料として、石原産業製ルチル型酸化チタン(CR−60)を60g、(D)チオール系化合物として、SC有機化学株式会社製ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)6g、(E)リン含有化合物からなるフィラー型難燃剤としてクラリアント社製Exolit OP−935を15g、希釈剤としてMIBKを60g、その他成分としてBASF社製Irganox1010を0.15g、全ての材料をAIMEX社製ビーズミルに入れ、760rpmで混合攪拌した。次いで、粒径1mmのジルコニアビーズを充填率70%になるよう添加し、1000rpmで攪拌して分散した後にジルコニアビーズを濾別し、本発明の光硬化性樹脂組成物溶液を取得した。
【0041】
<白色カバーレイフィルムの作製>
上記光硬化性樹脂組成物溶液を、ベーカー式アプリケーターを用いて、12.5μm厚のポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:NPI)に対して、光反射層の最終乾燥・硬化厚みが15μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で30秒乾燥した後、メタルハライドランプにて300mJ/cm(365nm換算)のUV照射を行い、白色カバーレイフィルムを形成した。
【0042】
<白色カバーレイフィルムの評価>
(i)表面硬化性
上記にて得られたポリイミドフィルム上に形成された光反射層の表面を指触し、粘着性の有無を評価した。
【0043】
(ii)深部硬化性
上記にて得られたポリイミドフィルム上に形成された光反射層をテープにて引き剥がし、ポリイミドフィルムに面していた部分の表面を指触し、粘着性の有無を評価した。
【0044】
(i)、(ii)の評価結果の指標としては、
○:粘着性なし
×:粘着性あり
とした。
【0045】
(iii)難燃性
プラスチック材料の燃焼性試験規格UL94VTMに従い、上記にて作製した白色カバーレイフィルムを寸法:50mm幅×200mm長さに切り出し、125mmの部分に標線を入れ、直径約13mmの筒状に丸め、標線よりも上の重ね合わせ部分(75mmの箇所)、及び、上部に隙間がないようにPIテープを貼り、燃焼性試験用の筒を10本用意した。23℃/50%相対湿度/48時間で処理した評価サンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を3秒間近づけて着火し、3秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定した。
評価結果の指標としては、以下の通りとした。
○:サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で10秒以内、最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火し、かつ、標線まで燃焼が達していないもの。
×:1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎が標線以上のところまで上昇して燃焼するもの。
【0046】
(iv)反射率
上記にて得られた白色カバーレイフィルムの450nmの光の反射率を測定した。
使用装置:日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−650
測定波長領域:300〜800nm
標準白板:ラブスフェア社製 スペクトラロンTM。
【0047】
(i)〜(iv)の評価結果を表1に記載した。
【0048】
(比較例1)
実施例1における<光硬化性樹脂組成物の調製>において、(D)チオール系化合物のペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を添加しなかった以外は、全て実施例1と同様の手順ならびに評価を実施した。評価結果は表1に記載した。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムと光反射層の少なくとも2種の層からなり、光反射層は、
(A)ラジカル硬化性樹脂、
(B)光ラジカル開始剤、
(C)白色顔料、
(D)チオール系化合物
を含有する光硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする白色カバーレイフィルム。
【請求項2】
前記(C)白色顔料が酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の白色カバーレイフィルム。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂組成物が更に(E)リン含有化合物からなるフィラー型難燃剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の白色カバーレイフィルム。
【請求項4】
前記白色カバーレイフィルムのポリイミドフィルム層側に更に接着層を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色カバーレイフィルム。

【公開番号】特開2012−99734(P2012−99734A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247770(P2010−247770)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】