説明

白色フィルム

【課題】反射率及び隠蔽性に優れた白色フィルムを提供する。更に詳しくは面光源用反射部材として好適な、高い反射率と光拡散性を持つ白色フィルムを提供する。
【解決手段】フィルム内部にボイド核剤を含有する気泡を有するフィルムであって、各々の気泡について、フィルムの面方向における気泡の長さ(L)とフィルムの厚み方向における気泡の長さ(R)の比(L/R)を求めたとき、それら(L/R)が1.5以上5未満のボイドが全ボイド面積の50%以上を占め、白色フィルムの比重が1.0以下である事を特徴とする白色フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色フィルムに関する。更に詳しくは面光源用反射部材として好適な、高い反射率と光拡散性を持つ白色フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、テレビ、携帯電話などに用いられる表示装置として、液晶を利用したディスプレイが数多く用いられている。これらの液晶ディスプレイ自体は発光体でないために、裏側からバックライトと呼ばれる面光源を設置して光を照射することにより表示を可能としている。また、バックライトは、単に光を照射するだけでなく画面全体を均一に照射するために、サイドライト型もしくは直下型と呼ばれる面光源の構造をとっている。なかでも、薄型化や省エネルギー化が望まれるテレビ用途、モニター用途、ノート型パソコン等に使用される薄型液晶ディスプレイ用途には、光源にLEDを用いたサイドライト型のバックライトが適用されている。
【0003】
一般的に、このLEDを用いたサイドライト型バックライトでは、LEDを照明光源とし、光を均一に伝播・拡散する導光板のエッジから液晶ディスプレイ全体を均一に照射する導光板方式が採用されている。この照明方法において、光をより効率的に活用するため、導光板の背面には反射板を設けて導光板から拡散された光を液晶画面側に効率的に反射させている。
【0004】
このような液晶画面用の面光源に用いられるリフレクターや反射板( 面光源反射部材と総称する) には、薄膜であることと同時に高い反射機能が要求され、従来、白色顔料を添加したフィルムや内部に微細な気泡を含有させたフィルムが単独で、もしくはこれらのフィルムと金属板、プラスチック板などとを張り合わせたものが使用されてきた。特に内部に微細な気泡を含有させたフィルムを使用した場合には、輝度の向上効果や均一性に優れることから広く使用されている。かかる微細な気泡は、樹脂にそれとは非相溶な成分(ボイド核剤) を含有せしめ、一方向以上に延伸させることにより得ることができる。このような内部に微細な気泡を含有したフィルムは特許公報などに開示されている(特許文献1〜2参照)。また、ボイド核剤は通常1種類であることが多いが、2種類以上のボイド核剤を併用した例も開示されている(特許文献3〜4)。さらに、ボイド形状の厚み方向の長さと面内方向の長さの比の分散を制御することによって、反射率や隠蔽性を向上させる技術も開示されている。(特許文献5)
また、フィルム内部に多数の微細な気泡を含有させることによって白色化したフィルムは、高い反射性を有することから高い白色度を有するので、画像印字媒体、とりわけ昇華転写方式用の受像紙にも好ましく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−322153号公報
【特許文献2】特開平7−118433号公報
【特許文献3】特開2001−225433号公報
【特許文献4】特開2001−288291号公報
【特許文献5】特開2004−339403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の照明光源からの光の効率を向上させる為に、反射フィルムに対してはさらに高い反射率と隠蔽性が要求されているが、ボイド核剤を用いた反射フィルムにおいては、ボイド核剤を単純に増量した反射フィルムやボイド核剤を2種以上用いた反射フィルム等も提案されているが、光反射性やバックライト輝度特性の飛躍的な向上にはつながっておらず、さらなる光反射フィルムの反射性および隠蔽性向上が求められている。
【0007】
また画像印字媒体の分野においても、デジタルフォトの高画質化、高精細化にともない受像紙にはさらに高い白色度が要求され、光反射フィルムの反射性向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る白色フィルムは以下の構成を有する。
(1)フィルム内部にボイド核剤を含有する気泡を有するフィルムであって、各々の気泡について、フィルムの面方向における気泡の長さ(L)とフィルムの厚み方向における気泡の長さ(R)の比(L/R)を求めたとき、それら(L/R)が1.5以上5未満のボイドが全ボイド面積の50%以上を占め、白色フィルムの比重が1.0以下である事を特徴とする白色フィルム。
(2)前記ボイド核剤が白色フィルムを構成する主たる樹脂成分に非相溶な樹脂および/または無機粒子からなる、(1)の白色フィルム。
(3)前記白色フィルムを構成する主たる樹脂成分が芳香族ポリエステルである、(1)〜(2)の白色フィルム。
(4)厚みが30μm以上600μm以下である(1)〜(3)の白色フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の白色フィルムによれば、実用上十分な反射率および隠蔽性を備えた白色フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の白色フィルムは、白色フィルムを構成する主たる樹脂成分と、該樹脂成分に対して非相溶である成分(ボイド核剤)とを含有する。これらの混合物を溶融押出し、少なくとも一方向に延伸することによってフィルム中に均一に気泡を生成させる事が容易となる。
【0011】
白色フィルムを構成する主たる樹脂成分としては、可視光領域に吸収を有しないものが好ましい。また、本発明における白色フィルムは、フィルム内部の気泡と樹脂との気固界面にて光を反射・拡散させるため、固相を形成する樹脂成分の屈折率は、気相の屈折率との差が大であることが好ましい。屈折率差が小であると、気固界面での反射があまり起こらず、結果として所望の光反射効果が得られない。気体および真空の屈折率は実質1.0であることから、実質的に有効な光反射性を得るためには、樹脂成分の屈折率は1.4以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上である。かかる条件を満たす樹脂の例としては、ポリオレフィンやポリエステル等が挙げられる。中でも寸法安定性、機械特性、ハンドリング特性(取扱い性)が良好でかつ高い屈折率を有する芳香族ポリエステルを好適に用いることができる。
【0012】
さらに、芳香族ポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレ
フタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレン
テレフタレートなどは安価に入手でき、かつ製膜性も良好であるため、特に好適に用いる
ことができる。
【0013】
これらのポリエステルはホモポリマーであってもコポリマーであってもよいが、好ましくはホモポリマーである。コポリマーである場合の共重合成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、炭素数2〜15のジオール成分を挙げることができ、これらの例としては、たとえばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、スルホン酸塩基含有イソフタル酸、およびこれらのエステル形成性化合物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、分子量400〜2万のポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。
【0014】
これらのポリエステル樹脂中には本発明の効果が損なわれない範囲内で各種添加物、たとえば蛍光増白剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、耐光剤、帯電防止剤、染料、分散剤などが添加されていてもよい。
【0015】
次に、気泡を形成するために添加されるボイド核剤について述べる。ボイド核剤は白色フィルムを構成する主たる樹脂成分と同一ではなく、かつ樹脂成分中に粒子状に分散し得るものであればよく、例えば無機微粒子、有機微粒子、各種熱可塑性樹脂、などが挙げられる。
【0016】
ボイド核剤は、それ自体を核として気泡を形成し得るものが好ましく、たとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、雲母チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクなどの無機粒子や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が好適に用いられる。ボイド核剤は単一種でもよいが、2種類以上の成分を用いても良い。熱可塑性樹脂を用いる場合は白色フィルムを構成する主たる樹脂成分に非相溶な熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。本発明でいう主たる樹脂成分とは、白色フィルム中の連続相(マトリックス)を構成している樹脂中の51%以上を占める樹脂を示す。
【0017】
白色フィルムを構成する主たる樹脂成分が芳香族ポリエステル樹脂である場合、非相溶な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素系樹脂などが好ましく用いられる。これらは単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上の熱可塑性樹脂を併用してもよい。これらの中でも、臨界表面張力の小さなポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン共重合体のようなポリオレフィンが好ましく、さらにはポリメチルペンテン、シクロオレフィン共重合体がとくに好ましく用いられる。
【0018】
前記ボイド核剤は、白色フィルムを構成するボイドを含有する層全体中10〜45重量%含有することが反射率の点から好ましい。より好ましくは25〜40重量%である。10%未満であると反射率が空洞が少なく、反射率が低いため好ましくない。また、45%より高くなると気泡が連結し反射率が低くなるばかりかフィルムの製造工程において破れが発生しやすく生産性が低下する場合があるため好ましくない。
【0019】
本発明の白色フィルムは、フィルム内部に気泡を有するフィルムであって、各々の気泡について、フィルムの面方向における気泡の長さ(L)とフィルムの厚み方向における気泡の長さ(R)の比(L/R)を求めたとき、それら(L/R)が1.5以上5未満のボイドが全体のボイド面積の50%以上を占めることが必要である。
【0020】
前記(L/R)が1.5以上5未満の気泡が全体のボイド面積の50%以上を占めることによって、フィルム表面に対して非平行な界面が多く形成されるために、光の拡散性が向上し白色フィルム全体の反射性能を向上させることができる。前記(L/R)が5以上であると、フィルム表面に対して平行な界面が多く、光の拡散性を向上させることができず白色フィルム全体の反射性能を向上が得られない。また、前記(L/R)が1.5未満であると反射に必要な樹脂と気相の界面の面積が小さく、十分な反射率を得られないため好ましくない。
【0021】
本発明において該気泡の(L/R)およびボイド面積を測定する具体的方法を、以下に示す。(1)後述する方法に則って得られる断面画像の画像写真を撮る(断面画像の取得は電子的な手法で行っても良い)。(2)該写真の上に十分に透明なフィルムもしくはトレーシングペーパーを重ね、該写真中の気泡の形状をトレースする。但し、トレースする際に用いるペンのペン先の太さは0.5mm以下とする。(3)CCDカメラ等を用いてトレーシングしたフィルムもしくはトレーシングペーパーの画像イメージをパソコンへ取り込み、画像解析ソフトを用いて各々の気泡の断面面積を求めボイド面積とした。さらにフィルム内部に存在する各々の気泡について(L)および(R)を測定し、次いで(L/R)を算出した。
【0022】
本発明の(L/R)を前記範囲にする方法としては、ボイド核剤を25〜40重量%含有させ、フィルムの製造時において長手方向に多段延伸した後に幅方向に延伸する方法が挙げられる。
【0023】
また、内部に微細な気泡を形成させた白色フィルムの片面もしくは両面に、共押出しなどの手法によって表皮層を形成することは妨げられるものではない。さらに、表皮層中に各種粒子や蛍光増白剤等が添加されていてもよい。かかる表皮層を積層することにより、機械的強度、表面平滑性などを白色フィルムに付与することができる。
【0024】
また、本発明の効果が損なわれない範囲で、白色フィルムの表面に、易接着性や帯電防止性、紫外光吸収性能等を付与するために、周知の技術を用いて種々の塗液を塗布したり、耐衝撃性を高めるためにハードコート層などを設けても良い。塗布は、フィルム製造時に塗布(インラインコーティング)してもよいし、フィルム製造後の白色フィルム上に塗布(オフラインコーティング)してもよい。
【0025】
さらに、電磁波遮蔽性や折り曲げ加工性付与などの目的で、白色フィルムの一方の表面にアルミニウム、銀などを貼り合わせたり、蒸着してもよい。
【0026】
本発明の白色フィルムの気泡含有率の目安となるみかけの比重は1.0以下であることが必要である。さらに好ましくは0.5以上0.8以下である。比重が0.5未満の場合はフィルムとしての機械的強度が不十分であったり、折れやすく取り扱い性に劣るなどの問題が生じる場合がある。一方、1.0を越える場合には気泡の含有量が低すぎて反射率が低下する傾向にある。
【0027】
本発明における白色フィルムの厚みは30〜600μmが好ましく、80〜450μ mがより好ましい。厚みが30μm未満の場合、フィルムの平坦性を確保することが困難となり、面光源として用いた際に、明るさにムラが生じやすい。一方、600μmより厚い場合、白色フィルムとして液晶ディスプレイなどに用いた場合、厚みが大きくなりすぎ薄膜化の要求に応えられないことがある。
【0028】
本発明の白色フィルムにおいて、光反射率は、光反射性およびバックライト輝度特性の点より、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%以上である。光反射率が90%未満の場合、隠蔽性に劣るフィルムとなり、また白色フィルムとして液晶ディスプレイなどに用いた場合、充分な輝度が得られないことがある。反射率の上限は特に規定されないが、光反射率の明度および色目の点より、200%以下が好ましい。
【0029】
次に本発明の白色フィルムの製造方法について、その一例を説明するが、かかる例に限定されるものではない。
【0030】
主押出機、副押出機を有する複合製膜装置において、必要に応じて十分な真空乾燥を行った白色フィルムを構成する芳香族ポリエステル樹脂のチップとボイド核剤を混合したものを加熱された主押し出し機に供給する。また、表皮層を積層するために、必要に応じて十分な真空乾燥を行った芳香族ポリエステル樹脂のチップ、無機粒子および蛍光増白剤を加熱された副押出機に供給する。
【0031】
ここで、本発明の白色フィルムとするための方法として、ボイド核剤の含有量は20重量%〜45重量%含有させることが好ましい。かかる粒子量を含有させることによって、前記(L/R)が小さな気泡を多く生成させることができる。
【0032】
このようにして各押出機に原料を供給し、Tダイ複合口金内で主押出機のポリマーの少なくとも片面に副押出機のポリマーが来るように積層(A/BもしくはA/B/A)してシート状に共押し出し成形し、溶融積層シートを得る。
【0033】
この溶融積層シートを、冷却されたドラム上で密着冷却固定化し、未延伸積層フィルムを作製する。この時、均一なフィルムを得るために静電気を印加してドラムに密着させることが望ましい。その後、必要により延伸工程、熱処理工程等を経て目的の光反射フィルムを得る。
【0034】
延伸の方法は特に問われないが、長手方向の延伸と巾方向の延伸を分離して行う逐次二軸延伸法や長手方向の延伸と巾方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸法がある。
【0035】
逐次二軸延伸の方法としては、例えば、上記の未延伸積層フィルムを加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向) に延伸し、次いで冷却ロール群で冷却する方法が一般的である。
【0036】
長手方向における延伸工程では、延伸を2段階以上に分けて行う多段延伸法を用いることも(L/R)を小さくするために有効である。多段延伸を行う場合は、前の延伸段階の延伸温度は後の延伸段階の延伸温度よりも高くすることが望ましい。また、前の延伸段階での延伸倍率をできるだけ大きくすることも望ましい延伸法の一つである。以下、2段階延伸を行う場合の好ましい態様の一つを例示する。まず、延伸温度については、1段階目における延伸温度を白色フィルムを構成する主たる樹脂のガラス転移温度Tgに対し、(Tg+5℃)〜(Tg+15℃)とし、2段階目における延伸温度を(Tg−5℃)〜(Tg+5℃)とすることが好ましい。延伸倍率については、1段階目の延伸倍率が1.2〜2.0倍が好ましく、2段階目の延伸倍率が2.5倍〜3.2倍が前記(L/R)を小さくするために好ましい。
【0037】
長手方向に延伸した後、続いて巾方向の延伸を行うことができる。逐次二軸延伸法では、フィルムの両端をクリップで把持しながら加熱されたテンターに導き、長手方向に垂直な方向(横方向あるいは幅方向)に延伸を行うことができる。
【0038】
一方、同時二軸延伸の方法としては、例えば、上記の未延伸積層フィルムの両端をクリップで把持しながら加熱されたテンターに導き、巾方向に延伸を行うと同時にクリップ走行速度を加速していくことで、長手方向の延伸を同時に行う方法がある。この同時二軸延伸法は、フィルムが加熱されたロールに接触することがないため、フィルム表面に光学的な欠点となるキズが入らないという利点を有する。このとき、2段階で延伸を行い、1段階目における延伸温度を白色フィルムを構成する主たる樹脂のガラス転移温度Tgに対し、(Tg+5℃)〜(Tg+30℃)とし、2段階目における延伸温度を(Tg−5℃)〜(Tg+5℃)とし、1段階目の延伸倍率が1.2〜2.0倍が好ましく、2段階目の延伸倍率が2.5倍〜3.2倍が前記(L/R)を小さくするために好ましい。
【0039】
こうして得られた二軸延伸積層フィルムに平面安定性、寸法安定性を付与するため、引き続いてテンター内で熱処理(熱固定)を行い、均一に徐冷後、室温付近まで冷却した後、巻き取ることにより、本発明の白色フィルムを得ることができる。
【0040】
[特性の測定方法および評価方法]
(1)気泡の(L/R)およびボイド面積
(i)ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に垂直に切断する。
(ii)切断した断面を走査型電子顕微鏡S−2100A型((株)日立製作所)(以下SEM)を用いて、1画面中に気泡が100〜200個入るように、適当な倍率(500〜10000倍)に拡大観察し、画面を写真に撮り、画面イメージを取得する。本発明では、原則150個が入るように拡大倍率を決めて、その画面中に含まれた測定対象として有効な気泡の全数について測定した。なお、画面を写真に撮る際は、電子的な手法を用いてもよい。
(iii)拡大観察により得られた画像より、各々の気泡について、フィルムの面方向における気泡の長さ(L)とフィルムの厚み方向における気泡の長さ(R)およびそれらの比(L/R)を求める。ここでLおよびRはフィルム中の実際の気泡の面方向の長さ、厚み方向の長さとは限らないが、画像から求められる気泡の面方向の長さおよび厚み方向の長さで決定されるものとする。
なお、気泡の断面面積(ボイド面積)が0.1μm未満のものは測定対象とはしない。また、画面中に全部が含まれていない気泡(例えば、画面端で一部が欠けて見える気泡など)は測定の対象とはしない。
(iv)全ボイド面積に対して(L/R)が1.5以上5未満のボイド面積の和と割合を求める。
(v)無作為に抽出した5視野についてそれぞれ割合を求め、その平均値を(L/R)が1.5以上5未満のボイド面積の比率とした。
【0041】
(2)比重
白色フィルムを5cm×5cmの大きさに切りだし、JIS K7112(1980版)に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。なお、各白色フィルムについて5枚用意し、それぞれを測定し、その平均値でもって該白色フィルムの比重とした。
【0042】
(3)反射率
分光光度計U−3410((株)日立製作所)に、φ60積分球130−0632((株)日立製作所)(内面が硫酸バリウム製)および10°傾斜スペーサーを取りつけた状態で560nmの光反射率を求めた。なお、光反射率は白色積層フィルムのコーティング層側から計測して求めた値を当該白色フィルムの反射率とした。標準白色板には(株)日立計測器サービス製の部品番号210−0740(酸化アルミニウム)を用いた。
[原料]
(1)ポリエステル樹脂(a)
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ4.186J/g以上であり、結晶性のポリエステル樹脂である。この樹脂の融点Tmを測定したところ、250℃であった。
【0043】
(2)非相溶性樹脂(b)
ガラス転移温度が178℃、メルトボリュームレートMVR(260℃/2.16kg)が4.5ml/10mimである環状オレフィン樹脂「TOPAS」(ポリプラスチック社製)を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ4.186J/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
表1に示した原料の混合物を180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機に供給し、280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
【0045】
次いで、該Tダイ複合口金内で、ポリエステル層(B)がポリエステル層(A)の両表層に積層(B/A/B)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを100℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、長手方向(縦方向)に1.3倍延伸を行い、さらに83℃に冷却した後に長手方向に2.8倍延伸した後に25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。その後、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内で110℃にて長手方向に垂直な方向(横方向)に3.3倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで190℃ の熱処理を施し、さらに180℃で4%横方向に弛緩処理を行った後、更に110℃で1%弛緩処理を行い、次いで均一に徐冷後に巻き取って、厚み188μmのフィルムを得た。
【0046】
得られたフィルムの(L/R)が1.5〜5のボイド面積は全ボイド面積の68%であり、反射率に優れた白色フィルムを得られた。
【0047】
[実施例2〜3]
表1に示した条件以外は、実施例1と同様の条件にて製膜を行い、厚さ188μmの積層の白色フィルムを得た。フィルムの各種特性を表1に示す。
【0048】
[比較例1〜3]
表1に示した条件以外は、実施例1と同様の条件にて製膜を行い、厚さ188μmの積層の白色フィルムを得た。フィルムの各種特性を表1に示す。(L/R)の小さなボイドが少なく、反射率が実施例1と比較して低かった。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のフィルムは、面光源用反射部材として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム内部にボイド核剤を含有する気泡を有するフィルムであって、各々の気泡について、フィルムの面方向における気泡の長さ(L)とフィルムの厚み方向における気泡の長さ(R)の比(L/R)を求めたとき、それら(L/R)が1.5以上5未満のボイドが全ボイド面積の50%以上を占め、白色フィルムの比重が1.0以下である事を特徴とする白色フィルム。
【請求項2】
前記ボイド核剤が白色フィルムを構成する主たる樹脂成分に非相溶な樹脂および/または無機粒子からなる、請求項1に記載の白色フィルム。
【請求項3】
前記白色フィルムを構成する主たる樹脂成分が芳香族ポリエステルである請求項1または2に記載の白色フィルム。
【請求項4】
厚みが30μm以上600μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の白色フィルム。

【公開番号】特開2012−207153(P2012−207153A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74636(P2011−74636)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】