説明

白色ポリエステルフィルム

【課題】
液晶ディスプレイに使用された際に高い輝度を得ることができ、耐UV性に優れ従来よりも安価な光反射用白色ポリエステルフィルムを提供する。また、太陽電池のバックシートとして用いられる場合も反射性能、耐UV性に優れる。
【解決手段】
ポリエステルで構成されたA層とポリエステルで構成されたB層との少なくとも2層を有する白色ポリエステルフィルムであって、該白色ポリエステルフィルムが、下記の(1)〜(4)の要件をすべて満たすことを特徴とする白色ポリエステルフィルム。
(1)A層は二酸化チタン、硫酸バリウムおよび二酸化珪素の3種類の無機粒子を含有すること。
(2)B層は非晶性シクロオレフィン系コポリマーおよび無機粒子を含有するフィルムでかつ気泡を有すること。
(3)A層の厚みが2μm以上16μm以下であること。
(4)曲げ剛性度が1.0mN・m以上10mN・m未満であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射板としての使用に好適な白色ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの光源として、従来、ディスプレイの背面からライトをあてるバックライト方式や、特許文献1に示されるような光反射フィルムが、薄型で均一に照明できるメリットから広く用いられている。その際、照明光の画面背面への逃げを防ぐため、画面の背面に光反射板を設置する必要があるが、この反射板には薄さと光の高反射性が要求されることから、フィルム内部に微細な気泡を含有させ気泡界面で光を反射させることにより白色化された白色フィルムなどが主に用いられる(特許文献2)。
【0003】
反射板で反射された光は拡散され、真上に指向性がある光以外はプリズムで反射され、反射板との間で反射を繰り返し、最終的に光の指向性を高めた状態で液晶セルに送られる。この場合、反射板の反射効率が低かったり、系内に光の漏れや減衰させる要因があったりすると、反射を繰り返すうちに光ロスが発生してエネルギー効率が悪くなるため画面の輝度が低下したり、また経済性が低下したりする。
【0004】
さらに、冷陰極管から放射される紫外線によるフィルムの黄変色を防ぐために紫外線吸収層を積層した白色フィルムも提案されている(特許文献3、4)。
【0005】
これら反射フィルムにおいて、輝度の諸特性を改善するための様々な方法が開示されている。例えば、エッジライト方式での輝度向上を図るために、光源と反対側のフィルム面に光隠蔽層を設ける方法が開示されている(特許文献5)。また、球状粒子とバインダーとの屈折率差を選択することにより、光拡散性を制御し、光拡散シートによる正面輝度を改善する方法が開示されている(特許文献6)。さらに、直下型バックライトにおける反射シートにおいて、光源側のフィルム面の拡散性を制御することにより、バックライトでの輝度ムラを改善する方法も開示されている(特許文献7)。
【0006】
また、このような白色ポリエステルフィルムは太陽電池のバックシートにも利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−160682号公報
【特許文献2】特公平8−16175号公報
【特許文献3】特開2001−166295号公報
【特許文献4】特開2002−90515号公報
【特許文献5】特開2002−333510号公報
【特許文献6】特開2001−324608号公報
【特許文献7】特開2005−173546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
白色フィルムの反射効率を高めたまま、ランプ光源から放出されるあるいは太陽光の紫外線(以下、UVという)から白色フィルムの劣化を防ぐ必要がある。従来知られた方法としては、白色フィルムにUV吸収剤を含有した層を厚く塗布して、ポリエステル樹脂に到達する紫外線量を低減する方法があった。しかし、UV吸収剤を含有した層を後加工で処理するため、経済性、リードタイムに問題があった。また、小型軽量化や加工性の観点から反射板として用いるフィルムは薄い方が望ましいが、入射した光が背面に漏洩すると反射効率が低下するため漏洩は極力抑える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステルで構成されたA層とポリエステルで構成されたB層との少なくとも2層を有する白色ポリエステルフィルムであって、該白色ポリエステルフィルムが、下記の(1)〜(4)の要件をすべて満たすことを特徴とする白色ポリエステルフィルム。
(1)A層は二酸化チタン、硫酸バリウムおよび二酸化珪素の3種類の無機粒子を含有すること。
(2)B層は非晶性シクロオレフィン系コポリマーおよび無機粒子を含有するフィルムでかつ気泡を有すること。
(3)A層の厚みが2μm以上16μm以下であること。
(4)曲げ剛性度が1.0mN・m以上10mN・m未満であること。
【0010】
また本発明は本発明の白色ポリエステルフィルムを用いた光反射板である。
また本発明は本発明の白色ポリエステルフィルムをそのA層面側を光源側に向けて配されている液晶ディスプレイ用バックライトである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、輝度が高く、ランプまたは太陽からの紫外線による色調変化が少なく、背面への光漏洩を防ぐことができ、さらに後加工が不要な白色ポリエステルフィルムが提供される。本発明の白色ポリエステルフィルムは、テレビなどに使用される大型の直下型ライト方式の液晶ディスプレイや、ノートパソコンや携帯電話などに使用される小型のサイドライト方式の液晶ディスプレイに好適に使用される。また、太陽電池用のバックシートとしても使用でき、太陽光から電気へ変換する効率に寄与するほか太陽光からの紫外線についても耐性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】白色ポリエステルフィルムを組み込んだ液晶画面の概略断面図及び輝度測定法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステルで構成されたA層とポリエステルで構成されたB層との少なくとも2層を有する白色ポリエステルフィルムであって、該白色ポリエステルフィルムが、下記の(1)〜(4)の要件をすべて満たすことを特徴とする白色ポリエステルフィルム。
(1)A層は二酸化チタン、硫酸バリウムおよび二酸化珪素の3種類の無機粒子を含有すること。
(2)B層は非晶性シクロオレフィン系コポリマーおよび無機粒子を含有するフィルムでかつ気泡を有すること。
(3)A層の厚みが2μm以上16μm以下であること。
(4)曲げ剛性度が1.0mN・m以上10mN・m未満であること。
【0014】
A層はポリエステルに無機粒子を含有させた層であり、光を散乱させる役割と共に紫外線からフィルムを保護する役割がある。また背面への光漏洩を防ぐ役割、製膜を安定化させる支持層の役割がある。
【0015】
A層の光散乱性は主に表面粗さを制御することにより調整することができる。例えば、ポリエステル樹脂に屈折率の異なる粒子を添加する方法が挙げられる。
【0016】
本発明においては、A層の厚みは2μm以上16μm以下である。本発明の白色ポリエステルフィルムはB層が気泡を有する層であるために、A層の厚みが2μm以上16μm以下であると気泡に起因してA層の表面に適度な凹凸が形成され、光の散乱性が極めて良好になる。加えて、紫外線吸収能を有する無機粒子や光安定剤を含んだときには紫外線への耐性も良好で、輝度の高いフィルムとすることができる。A層を光源側に配置すると紫外線のエネルギーによってA層は徐々に分解を受ける。そのため、A層の厚みが2μm未満であると、ポリエステルの光分解が輝度に対して悪影響を及ぼし、高い輝度を維持することができない。一方、A層の厚みが16μmを超える場合は、A層における光エネルギーのロスが無視できなく、B層のボイドへ光が十分に届かなくなる。またB層に届いた光もボイド界面で多重反射したのち効率的にフィルム外部に出射出来ないため、光路長が長くなり、ロスとなる。そのため、高い輝度を得ることができない。A層の厚みの好ましい範囲は2μm以上8μm以下であり、更に好ましくは、2μm以上6μm以下である。
【0017】
なお、本発明の白色ポリエステルフィルムが、A層/B層/A層のように複数のA層が存在する構成の場合、少なくとも最外層で光源側に向けられるA層の厚みが2μm以上16μm以下である必要がある。上述のようにA層の厚みが2μm未満であると、ポリエステルの光分解が輝度に対して悪影響を及ぼし、高い輝度を維持することができない。一方、A層の厚みが16μmを超える場合は、A層における光エネルギーのロスが無視できなく、B層のボイドへ光が十分に届かなくなる。
【0018】
本発明の白色ポリエステルフィルムの全厚みは100μm以上500μm以下である。白色ポリエステルフィルムの全厚みが100μm以下であると反射率が不足する。また、上限は特に制限する必要はないが、500μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めないので、上限としては500μmである。
【0019】
本発明の白色ポリエステルは、曲げ剛性度が1.0mN・m以上10mN・m未満であ
る。曲げ剛性度が1.0mN・m未満であると、フィルムの強度が劣り加工時に破断を生
じたり、折れシワ性が悪化したり、また、フィルム製造工程において破断が多発し生産性
が劣るなどの問題が生じるため好ましくない。一方曲げ剛性度が10mN・mを超えると、
フィルム自体の柔軟性が低下するので好ましくない。
【0020】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、A層面側が光源側に向けて配されていることで、耐UV性、輝度ムラの低減、高反射率、導光板のキズおよび密着画面ムラの発生の抑制を得ることができる。層構成は、A層/B層の2層構成であってもよく、A層/B層/A層の3層構成、あるいは4層以上の構成であってもよいが、製膜上の容易さを考慮すると3層構成が好ましい。
【0021】
本発明においてA層およびB層を構成する樹脂はポリエステルである。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0022】
また、このポリエステルの中には、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤などが添加されていても良い。
【0023】
A層に含有させる紫外線吸収作用を有する無機粒子としては二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等からなる群から選ばれる粒子を用いることができる。本発明の場合、表面の耐紫外線性を保つために二酸化チタンを用いることが必要である。二酸化チタンを用いる場合、好ましくはルチル型二酸化チタンを用いる。ルチル型二酸化チタンを用いると、アナターゼ型酸化チタンを用いた場合よりも、光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制することができるので好ましい。このルチル型二酸化チタンは、ステアリン酸等の脂肪酸およびその誘導体等を用いて処理して用いると、分散性を向上させることができ、フィルムの光沢度を一層向上させることができるので好ましい。
【0024】
紫外線吸収作用を有する無機粒子の数平均粒径(直径)は0.1μm以上1.0μm以下が好ましい。数平均粒径が0.1μm未満であると凝集が生じ易くなり均一分散性不良により、耐光性が低下する場合がある。1.0μmを超えるとフィルムの延伸性が悪化しやすく、生産性が悪化しやすく、また耐光性が低下する場合がある。紫外線吸収作用を有する無機粒子の添加量は、A層全体の質量に対し2質量%以上6質量%以下が好ましい。耐UV性は、二酸化チタンの添加量が高いほど耐性が上がるが、反射性能ひいては輝度ムラ、画面輝度の向上が望めないため上限は6質量%である。また、二酸化チタンの添加量を多くしていくと、フィルムの延伸性が悪化しやすく、生産性が悪くなりやすいため添加量の適正化が好ましい。
【0025】
二酸化チタンの添加量が高いことで満足する耐UV性を発現することができるが、輝度ムラを生じるため、補完的に無機粒子を組み合わせることが好ましい。ここで、補完的な無機粒子としては紫外線吸収作用を有さない無機粒子のことである。補完的な無機粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等からなる群から選ばれる粒子を用いることができる。本発明の場合、良好な反射率、輝度ムラ低減から硫酸バリウムを用いることが必要である。無機粒子はポリエステルと非相溶であるため、A層でも微細な気泡を多数存在させることが出来、光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制することができるので好ましい。
【0026】
ここで、補完的な無機粒子の数平均粒径(直径)0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。数平均粒径が0.5μm未満であると凝集が生じ易く粒子が粗大化するため、均一分散性不良により、耐光性が低下する場合がある。3.0μmを超えるとフィルムの延伸性が悪化し、生産性が悪くなる場合がある。補完的な無機粒子の添加量は、A層の全質量に対し16質量%以上24質量%以下が好ましい。16質量%未満であると、反射率が低下したり、光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が多くなったり、色差の変化を抑制することが難しくなりやすい。一方、24質量%を超えるとフィルムの延伸性が悪化、生産性を悪化させるため添加量の適正化が好ましい。
【0027】
エッジライト方式では白色フィルムの平面性が高すぎるとフィルムと導光板が強く密着する箇所ができてしまい、そこで光の反射角度が変わることにより液晶画面内輝度にムラが発生してしまうことがある。そこで白色フィルムの表面、つまりA層の表面にある程度の粗さを持たせ、画面と白色フィルムの密着性を低下させる目的で二酸化珪素を添加する。二酸化珪素の数平均粒径(直径)は2.0μm以上5.0μm以下が好ましい。2.0μm未満だと、表面の粗さが低くなるため、フィルムと導光板の密着性が高くなってしまうことがある。また、液晶画面上に照明光源の光を直接反射する成分が増えるため、照明光源の間隔に応じた明暗の差(輝度ムラ)が発生してしまうため、液晶画面の明るさが均一とならない場合があり好ましくない。一方、5.0μmを超えると、粒子が非常に粗大化しているために粒子が脱落しやすく、導光板にキズをつけてしまうことがある。一方で直下型方式では導光板と反射フィルムの間に冷陰極管があるため、導光板と反射フィルムが直接接することがなく導光板のキズ及び密着画面ムラの発生の心配はない。
【0028】
また、二酸化珪素の含有量は、A層全体の質量に対し0.5質量%以上3質量%以下が好ましい。0.5質量%未満であると、表面の粗さが低くなるため、輝度ムラが発生してしまうため、液晶画面の明るさが均一とならない場合があり好ましくない。一方、3質量%を超えるとであるとフィルムの延伸性が悪化、生産性を悪化させるため添加量の適正化が好ましい。
【0029】
A層のトータルの質量100質量%あたりの無機粒子の割合は、好ましくは10質量%以上50質量%以下である。より好ましくは12質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下である。無機粒子の含有量が10質量%未満であると必要な耐UV性や反射率が得られにくくなりやすい。一方、50質量%を超えると製膜時に切断が発生しやすくなる。
【0030】
二酸化チタン、硫酸バリウムおよび二酸化珪素の3種類の無機粒子を併用することにより、耐UV性、輝度ムラの低減、高反射率、導光板のキズ及び密着画面ムラの発生の抑制を同時に満たすことができる。
【0031】
なお、本発明の白色ポリエステルフィルムが、A層/B層/A層のように複数のA層が存在する構成の場合、前述の紫外線吸収作用を有する無機粒子、補完的な無機粒子、二酸化珪素の含有量の範囲や数平均粒子径の範囲は、少なくとも最外層で光源側に向けられるA層についての規定である。
【0032】
B層は、ポリエステル樹脂、該ポリエステル樹脂とは非相溶の非晶性シクロオレフィン系コポリマー、および無機粒子を有していることが必要である。また、該非晶性シクロオレフィン系コポリマーを核とした空隙を有していることが必要である。
【0033】
ポリエステル樹脂と、非晶性シクロオレフィン系コポリマーを用いることにより、後述するような方法により容易に非晶性シクロオレフィン系コポリマーを核として、その周りに気泡を含有させることが可能となり、その結果、低比重かつ、高い反射特性を有する白色フィルムを製造することが可能となる。無機粒子の周りには空隙が生成しづらいが、生成してもよい。ここでいう非晶性樹脂とは、結晶融解熱が1cal/g未満である樹脂を指す。
【0034】
B層のトータルの質量100質量%あたりの非晶性シクロオレフィン系コポリマーは、3重量%以上15重量%以下含有されていることが必要である。好ましくはシクロオレフィン系コポリマーの含有量は3重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは3重量%以上8重量%以下である。3重量%未満であると、白色性や光反射特性及び比重に劣ることがある。一方、15重量%を越えると、延伸時のフィルム破れや後加工の際に粉発生等の不都合を生じる。含有量をかかる範囲内にすることにより、十分な製膜性・白色性・反射性・軽量性を発現させることができる。
【0035】
B層の無機粒子としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、二酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等からなる群から選ばれる粒子を用いることができる。これらの中で、フィルムの巻取り性、長時間の製膜安定性、反射特性向上の観点から、二酸化チタンが最も好ましい。
【0036】
B層の無機粒子は、単独でも2種以上を併用してもよい。また、多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、さらには本発明の効果を阻害しない範囲内において、樹脂に対する分散性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。
【0037】
B層の無機粒子の数平均粒径(直径)は0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。数平均粒径が0.5μm未満であると凝集が生じ易く粒子が粗大化するため、均一分散性不良により、耐光性が低下する場合がある。3.0μmを超えるとフィルムの延伸性が悪化し、生産性が悪くなる場合がある。
【0038】
B層のトータルの質量100質量%あたりの無機粒子の含有量は、8重量%以上20重量%以下であることが必要であり、さらには10重量%以上20重量%以下の範囲にあることが特に好ましい。無機微粒子の含有量が8重量%より少ない場合には、フィルムの耐光性、白色性、隠蔽性などの特性を向上させることが難しくなることがあり好ましくない。一方、20重量%を超えると、フィルムの比重が増加したり、無機粒子の光吸収能により高反射特性を得ることが困難になったり、フィルム表面の平滑性が低下しやすくなるだけでなく、延伸時のフィルム破れや後加工の際に粉発生等の不都合を生じる場合がある。
【0039】
次に、本発明の白色ポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、この例に限定されるものではない。
【0040】
非相溶ポリマーとして環状オレフィンを、低比重化剤としてポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール共重合物を、ポリエチレンテレフタレートに混合し、それを充分混合・乾燥させて270〜300℃の温度に加熱された押出機Bに供給する。ルチル型二酸化チタン、硫酸バリウムおよび二酸化珪素の3種類の無機粒子を含んだポリエチレンテレフタレートを常法により押出機Aに供給して、Tダイ3層口金内で押出機B層のポリマーが両表層にくるようA層/B層/A層なる3層構成を得た。
【0041】
この溶融されたシートを、ドラム表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気力にて密着冷却固化し、該未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2.0〜5.0倍縦延伸し、20〜50℃のロール群で冷却する。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜140℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は、縦、横それぞれ2.5〜4.5倍に延伸するが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜16倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると得られるフィルムの白さが不良となり、逆に16倍を越えると延伸時に破れを生じやすくなり製膜性が不良となる傾向がある。こうして二軸延伸されたフィルムの平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り本発明の白色ポリエステルフィルムを得る。
【0042】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、A層面から測定した400〜700nmの波長における平均反射率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。平均反射率が90%未満の場合には、適用する液晶ディスプレイによっては輝度が不足する場合がある。
【0043】
このようにして得られる本発明の白色ポリエステルフィルムは、液晶バックライトの輝度向上を図ることができ、長時間使用しても反射率の低下が少ないので、液晶画面用のエッジライトおよび直下型ライトの面光源の反射板、およびリフレクターとして好都合に使用することができる。かくして得られた本発明の液晶ディスプレイ反射用白色ポリエステルフィルムは、フィルム内部に微細な気泡が形成され高反射率が達成されており、サイドライトタイプ及び直下型ライトタイプの液晶ディスプレイの反射板として使用された場合に高い輝度を得ることができる。
【0044】
〔物性の測定ならびに効果の評価方法〕
本発明の物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0045】
(1)フィルム厚み・層厚み
フィルムの厚みは、JIS C2151−2006に準じて測定した。
フィルムをミクロトームを用いて厚み方向に切断し、切片サンプルを得た。
該切片サンプルの断面を日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-800を用いて、3000倍の倍率で撮像し、撮像から積層厚みを採寸し各層厚みと厚み比を算出した。
【0046】
(2)相対平均反射率
日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に積分球を取り付け、標準白色板(酸化アルミニウム)を100%とした時の反射率を波長400〜700nmにわたって測定する。得られたチャートより5nm間隔で反射率を読み取り、分光反射率とする。
【0047】
(3)見かけ比重
フィルムを100×100mm角に切取り、ダイアルゲージを取り付けたものにて10点の厚みを測定し、厚みの平均値d(μm)を計算する。また、このフィルムを直示天秤にて秤量し、重さw(g)を10−4gの単位まで読み取る。このとき見かけ比重=w/d×100とする。
【0048】
(4)相対輝度および輝度ムラ(直下型方式輝度)
図1に示したように181BLM07(NEC(株)製)のバックライト内に張り合わせてある反射フィルムを所定のフィルムサンプルに変更し、点灯させた。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し画像解析装置アイシステム製アイスケールで画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度に変換した。
輝度評価として、東レ株式会社製#250E6SLを基準サンプル(100%)とし、
下記の通りの評価結果とした。
優:102%以上
良:101%以上102%未満
可:100%以上101%未満
不可:100%未満。
【0049】
また、下記式に従って輝度均一性を評価した。目視でムラとして認識できないもの(可以上)を合格とした。輝度ムラ評価として、東レ株式会社製#250E6SLを基準サンプル(100%)とし、下記の通りの評価結果とした。
輝度ムラ(%)=(最大値―最小値)/平均値×100
優:80%未満
良:80%以上90%未満
可:90%以上100%未満
不可:100%以上。
【0050】
(5)フィルム中の無機粒子の平均粒径(直径)
透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、A層およびB層の断面を10,0000倍に拡大観察した断面写真から求めた。すなわち、断面写真の粒子部分を粒子形状に沿ってマーキングして、その粒子部分をハイビジョン画像解析処理装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理を行い、測定視野内の計100個の粒子を真円に換算した時の数平均径を算出し、無機粒子の平均粒径とした。
【0051】
(6)黄色味(b値)、Δb値
SMカラーコンピューター(スガ試験機(株)製)を用い、C/2°光源による反射測定法により、黄色味を表すb値を求めた。
【0052】
(7)耐光性(黄色味変化:Δb値)
岩崎電気製アイスーパーUVテスター(型番:SUV−W131)を用いてサンプルに紫外線を照射し、照射前後の色調b値を測定することで、耐光性の評価を行った。紫外線照射前後のb値の変化をΔbとした。Δb値は、UV照射後の黄色味b2初期の黄色味bとの変化量を示す
・Δb値 = UV照射後の黄色味b2―初期の黄色味b
「紫外線照射条件」
照度:100mW/cm、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:48時間
耐光性評価結果を下記により判定した。
優:黄色味変化量Δb値が3未満
良:黄色味変化量Δb値が3以上4未満
可:黄色味変化量Δb値が4以上5未満
不可:黄色味変化量Δb値が5以上。
【0053】
(8)製膜安定性
安定に製膜できるか、下記基準で評価した。
○:24時間以上安定に製膜できる。
△:12時間以上24時間未満安定に製膜できる。
×:12時間以内に破断が発生し、安定な製膜ができない。
【0054】
(9)曲げ剛性度
曲げ剛性度(mN・m)はJIS P−8125による曲げ角度15゜におけるものであり、テーパー式剛性度試験機TELEDYNE TABER MODEL150―D(NORTH Tonawanda, New York USA製)を使用した。
【実施例】
【0055】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0056】
[実施例1]
分子量4000のポリエチレングリコールを使用し、重合後のポリエチレンテレフタレートの色調(JIS K7105−1981、刺激値直読方法で測定)がL値62.8、b値0.5、ヘイズ0.2%であるポリエチレンテレフタレートを使用し、ポリエチレンテレフタレート73質量部、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの(PBT/PTMG)共重合物を2質量部(商品名:東レデュポン社製ハイトレル)、エチレングリコールに対し1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(33mol%CHDM共重合PET)2質量部、ポリ(5−メチル)ノルボルネン3質量部、二酸化チタン20重量部を調整混合し、180℃で3時間乾燥させた後、270〜300℃に加熱された押出機Bに供給(B層)した。
【0057】
一方、数平均粒径0.25μmの二酸化チタンポリエチレンテレフタレートマスター(マスターチップ総量に対して二酸化チタン36質量%含有)を28質量部と、数平均粒径3.5μmの二酸化珪素粒子ポリエチレンテレフタレートマスター6.7質量部(マスターチップ総量に対して二酸化珪素6質量%含有)と、数平均粒径1.4μmの硫酸バリウム粒子ポリエチレンテレフタレートマスター50質量部(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム60質量%含有)と、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を18mol%共重合したもの(PET/I)を2.3質量部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1質量部と、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール重縮合物を12質量部とを180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Aに供給し(A層)、これらポリマーをA層/B層/A層となるように積層装置を通して積層し、Tダイよりシート状に成形した。さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で200℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却し二軸延伸された積層フィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りである。
【0058】
[実施例2〜28]
A、B層の原料組成、A層の厚み、フィルム全厚みを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色ポリエステルフィルムを得た。いずれの実施例も剛性度、相対輝度、輝度ムラ、耐光性は良好であった。
【0059】
[比較例1]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み188μmのフィルムを得た。剛性度は1.82mN・m、耐光性は十分であったが、B層に環状オレフィンを添加していないため、相対反射率は100.0%、輝度が不十分であった。
【0060】
[比較例2]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み188μmのフィルムを得た。製膜安定性があり、相対反射率は、104.2%、相対輝度でも高い輝度が得られたが、剛性度は0.78mN・mで不十分でありA層に二酸化珪素を添加していないため輝度ムラが不十分であった。
【0061】
[比較例3]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み188μmのフィルムを得た。相対反射率は、104.3%、相対輝度でも高い輝度が得られたが、剛性度は0.77mN・mで不十分でありA層に二酸化チタンを添加していないため耐光性が不十分であった。
【0062】
[比較例4]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み188μmのフィルムを得た。製膜安定性があり、相対反射率は、103.5%、相対輝度でも高い輝度が得られたが、剛性度は0.75mN・mで不十分でありA層に硫酸バリウムを添加していないため、A層での微細な気泡を発現させることができず、耐光性が不十分であった。
【0063】
[比較例5]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み188μmのフィルムを得た。製膜安定性があり、相対反射率は、104.4%、相対輝度でも高い輝度が得られたが、剛性度は0.72mN・mで不十分でありA層の厚みが薄いため製膜安定性が不足しており、耐光性も不十分であった。
【0064】
[比較例6]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み188μmのフィルムを得た。相対反射率は、103.8%、相対輝度でも高い輝度が得られたが、製膜安定性が不足しており、剛性度は0.90mN・mで不十分であり、A層の厚みが厚いため輝度ムラも不十分であった。
【0065】
[比較例7]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み250μmのフィルムを得た。相対反射率は、102.0%、相対輝度が十分であったが、高い輝度が得られたが、剛性度は0.94mN・mで不十分であり、A層に二酸化チタンを添加していないため耐光性も不十分であった。
【0066】
[比較例8]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した他は、実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。但し、A/B層の2層積層するフィードブロックにて積層し、Tダイよりシート状に押出して溶融シートとした。製膜安定性が不足しており、相対反射率は、剛性度は1.93mN・m、103.0%、相対輝度でも高い輝度が得られたが、耐光性が不十分であった。
【0067】
[比較例9]
積層構成・原料組成を表4に記載した様に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。但し、A層には原料を供給せず、A層を形成していない。製膜安定性があり、相対反射率は、100.0%、剛性度は2.20mN・m、相対輝度、輝度ムラおよび耐光性が不十分であった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
ただし、
PET:ポリエチレンテレフタレート、
PET/I/PEG:エチレングリコール/テレフタル酸/イソフタル酸共縮合物(分子量1000のポリエチレングリコール5mol%が共重合されたポリエチレンテレフタレート共重合体)、
PET/CHDM:ポリエチレン−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(エチレングリコールに対し1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合されたポリエチレンテレフタレート共重合体)、
PBT/PTMG:ポリエステルエーテルエラストマブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート(ブチレンテレフタレートに対し、アルキレングリコールが30mol%の共重合体)(商品名:東レデュポン社製ハイトレル)
である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、光反射板として好適な用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1;光反射用白色ポリエステルフィルム
2;冷陰極管
3;乳白板
4;拡散板
5;プリズムシート
6;偏光プリズムシート
7;CCDカメラ
8;画像解析装置(アイスケール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルで構成されたA層とポリエステルで構成されたB層との少なくとも2層を有する白色ポリエステルフィルムであって、該白色ポリエステルフィルムが、下記の(1)〜(4)の要件をすべて満たすことを特徴とする白色ポリエステルフィルム。
(1)A層は二酸化チタン、硫酸バリウムおよび二酸化珪素の3種類の無機粒子を含有すること。
(2)B層は非晶性シクロオレフィン系コポリマーおよび無機粒子を含有するフィルムでかつ気泡を有すること。
(3)A層の厚みが2μm以上16μm以下であること。
(4)曲げ剛性度が1.0mN・m以上10mN・m未満であること。
【請求項2】
前記B層の無機粒子が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の白色ポリエステルフィルム
【請求項3】
前記A層が、二酸化チタンを該A層の全質量に対して2質量%以上6質量%以下、前記硫酸バリウムを該A層の全質量に対して16質量%以上24質量%以下、前記二酸化珪素を該A層の全質量に対して0.5質量%以上3質量%以下含有する請求項1または2に記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記B層が、前記非晶性シクロオレフィン系コポリマーを該B層の全質量に対して3重量%以上15重量%以下、前記二酸化チタンを該B層の全質量に対して8重量%以上20重量%以下含有する請求項1〜3のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記A層に照度:100mW/cm、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:48時間の条件で紫外線を照射したときの、紫外線照射前と紫外線照射後とでの黄色味変化量:Δb値が5未満である請求項1〜4のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項6】
560nmにおける相対反射率が100%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルムを用いた光反射板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルムがそのA層面側を光源側に向けて配されている液晶ディスプレイ用バックライト。

【図1】
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【公開番号】特開2012−135952(P2012−135952A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289981(P2010−289981)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】