説明

白色マーキングされた樹脂構造体及びその製造方法

【課題】背景色に対する印字部分のコントラストが高く、汚損・損耗等により印字部分の意匠性が低下することがなく、高い視認性を保持することができる白色マーキングされた樹脂構造体を提供する。
【解決手段】本発明の白色マーキングされた樹脂構造体は、結晶性樹脂(A)と樹脂(B)とからなる樹脂成形体に、レーザー光線照射により白色マーキングが施され、且つ、該白色マーキングが施された白色マーキング部上に、前記樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、前記樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上、且つ、前記樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより樹脂(C)からなる保護膜が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線を照射して樹脂の表面に発泡構造を形成することで白色マーキングが施された樹脂成形体の該白色マーキング部上に、汚損及び摩耗防止のための保護膜を有する白色マーキングされた樹脂構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インキによる印刷・塗装に替わる技術としてレーザー光線照射による印刷(レーザーマーキング)が普及しているが、被視認性・品質感の向上のために、最近では背景色に対する印字部分のコントラストの高さが要求される場合が多い。しかし、マーキング直後にはコントラストが優れていても、その後の加工工程や運搬時の汚損、損傷、更には使用する過程においてマーキング部分の汚損、摩耗、摩滅によりコントラストが低下して被視認性・品質感等が損なわれることが従来より問題視されている。
【0003】
例えば、発泡マーキングにより印字したボタンを使用し続けていると、印字部分が黒ずんできて印字が視認しにくくなるような場合があるが、それは主に次の2つの理由によるものである。一つ目の理由は、発泡マーキング表面が凹凸であるために、使用時に手の垢や埃が付着し、汚れていないマーキング部分との対比で汚損として認識されることである。そして、この付着した汚れは凹凸部分に入り込んでいるために完全に除去することは不可能である。二つ目の理由は、ボタンを押す際の圧力でマーキング部分の発泡構造が押し潰され、コントラストの低下として認識されることである。
【0004】
以上のように、発泡マーキングの場合には、印字部分の表面が凹凸の発泡構造を有することにより、そこに光が散乱して白色印字として認識される、という特徴を有することから経時的な影響を受けやすく、また、経時的な影響による質感の低下が顕著であるため対策が求められている。
【0005】
この問題を解決する手段として、マーキング部に直接触れないように保護層を設けることが考えられる。例えばマーキング後にマーキング部分をコーティングすることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、マーキング後のコーティングは、塗料中の溶剤によりマーキング部分の樹脂が侵されて、発泡構造が変化して文字の視認性が低下する場合があり、必ずしも好ましいとは言えない。また通常マーキング工程は部品組み立て後に実施されることが多いため、さらにその後にコーティングを施すことは、部品へ与える影響が懸念される。また、塗料の種類によっては加熱による塗膜乾燥、硬化工程が必要なものがあり、その熱処理により発泡構造が更に崩れてマーキング部分のコントラストをより低下させる恐れがある。
【0006】
その他、マーキング後に透明保護膜を設けて多層化する方法が提案されているが、保護膜を設ける際に加熱、圧着させる必要があり、その熱と圧力とで発泡構造が損なわれて、或いは、マーキング材との密着が不十分になることで、マーキング部分の視認性が低下するという問題がある。この問題に対して、多層化してからマーキングするという方法も提案されているが、マーキング時に保護膜との隙間が生じて文字のコントラストが悪くなったり、或いは保護膜の密着は十分であっても発色が不十分となる場合があることが問題となる。この原因をマーキング時に発生するガスの影響と考え、ガス透過性の良い材料を保護膜に使用して解決を図る試みが提案されている(特許文献2参照)。しかし、マーキング時のガス発生速度と保護膜のガス透過速度のバランスから考えると、この提案方法の効果には疑問が残る。
【0007】
以上のことから、発泡構造を形成することにより白色マーキングを行う場合に、その白色マーキング部分の汚損・摩耗を防止する目的で保護層を設ける方法について、優れた視認性を維持しながら保護層を設ける方法が見出されていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開2002−127599号公報
【特許文献2】特開2001−1642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、背景色に対する印字部分のコントラストが高く、汚損・損耗等により印字部分の意匠性が低下することがなく、高い視認性を保持することができる白色マーキングされた樹脂構造体を提供することにある。
本発明の他の目的は、背景色に対する印字部分のコントラストが高く、汚損・損耗等により印字部分の意匠性が低下することがなく、高い視認性を保持することができる白色マーキングされた樹脂構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、レーザーマーキング用白発色可能な熱可塑性樹脂中に結晶性樹脂を含有することによって、マーキング部分の発泡構造が熱、圧力、溶剤等の影響を受けにくくなることを見出した。そして、この白発色可能な熱可塑性樹脂中に、前記結晶性樹脂以外に、前記結晶性樹脂の融点より低い温度で溶融又は軟化する樹脂を添加し、且つ、保護膜を形成する樹脂にも前記結晶性樹脂の融点より低い温度で溶融又は軟化する樹脂を使用し、前記結晶性樹脂の融点未満の温度で加熱して保護膜を接着することで、該結晶性樹脂により形成された発泡構造を損なうことなく保護膜を設けることができ、マーキングが経時的に汚損、摩耗することがなく、視認性が低下することがないことを見出した。本発明はこれらの知見に基づき、さらに研究を重ねて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、樹脂(A)と樹脂(B)とからなる樹脂成形体に、レーザー光線照射により白色マーキングが施され、且つ、該白色マーキングが施された白色マーキング部上に、前記樹脂(B)が樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、前記樹脂(B)が樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上、且つ、前記樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより樹脂(C)からなる保護膜が設けられている白色マーキングされた樹脂構造体を提供する。
樹脂(A):結晶性樹脂[融点(T1)]
樹脂(B):樹脂(A)の融点(T1)よりも低い融点(T2-1)を有する結晶性樹脂(B1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低いガラス転移温度(T2-2)を有する非晶性樹脂(B2)
樹脂(C):樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-2)以上の融点(T3-1)を有する結晶性樹脂(C1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-2)以上のガラス転移温度(T3-2)を有する非晶性樹脂(C2)
【0012】
樹脂(B)としては、非晶性樹脂(B2)であることが好ましく、樹脂(A)と樹脂(B)との配合割合[前者:後者(重量比)]が、20:80から80:20であることが好ましい。
【0013】
樹脂(C)としては、樹脂(B)と相溶性を有する樹脂であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、樹脂(A)と樹脂(B)とからなる樹脂成形体に、レーザー光線を照射して樹脂成形体表面に白色マーキングを施し、その後、該白色マーキング部分の表面に、前記樹脂(B)が樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、前記樹脂(B)が樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上、且つ、前記樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより樹脂(C)からなる保護膜を溶融接着することを特徴とする白色マーキングされた樹脂構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂成形体表面の白色マーキングを形成する発泡構造を損なうことなく、白色マーキング部分に密着して保護膜を設けることができるため、保護膜を設けることによるマーキング部分のコントラストの低下が起こることがない。また、白色マーキング部上に保護膜を設けるため、発泡構造が指等による圧力で押し潰されることを抑制することができる。また、手の垢や埃が発泡構造の凹凸部分に入り込むことがないため、経時的にマーキング部分のコントラストが低下することがなく、良好な視認性を維持することができ、質感を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[樹脂形成体]
本発明における樹脂形成体は、レーザー光線の照射により照射部分の樹脂が発泡して凹凸の発泡構造を形成し、該発泡構造に光が散乱することにより白色に認識され得る。該樹脂形成体は、結晶性樹脂(A)と、該結晶性樹脂(A)の融点(T1)よりも低い融点(T2-1)を有する結晶性樹脂(B1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低いガラス転移温度(T2-2)を有する非晶性樹脂(B2)との混合物である白発色熱可塑性樹脂を硬化させて得られる。
【0017】
前記結晶性樹脂(A)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹、ポリオキシメチレン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;液晶ポリマー;フッ素系樹脂等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹が成形加工性、及びコストバランスの点で好ましい。本発明においては、上記結晶性樹脂を単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
前記結晶性樹脂(A)の融点(T1)としては、樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)より高ければよく、樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)より高ければよい。結晶性樹脂(A)の融点(T1)としては、例えば、80〜400℃程度、好ましくは100〜350℃程度である。結晶性樹脂の融点が80℃より低いと、結晶性樹脂(A)の融点(T1)より低い融点(T2-1)を有する結晶性樹脂(B1)、又は結晶性樹脂(A)の融点(T1)より低いガラス転移温度(T2-2)を有する非晶性樹脂(B2)として使用することができる樹脂の選択の幅が著しく狭まる傾向がある。
【0019】
本発明における樹脂(B)は、樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)が結晶性樹脂(A)の融点(T1)より低ければよく、樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)が結晶性樹脂(A)の融点(T1)より低ければよい。そして、発明における樹脂(B)は、樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上の温度で、且つ、結晶性樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより、また、樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上の温度で、且つ、結晶性樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより、保護膜を構成する樹脂(C)と溶融接着することができることを特徴とする。さらに、発明における樹脂(B)は、保護膜を形成する樹脂(C)と相溶性を有することが好ましい。
【0020】
結晶性樹脂(B1)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;液晶ポリマー;フッ素系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0021】
非晶性樹脂(B2)としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリルニトリル共重合体(AS)、スチレン−アクリルニトリルーブタジエン共重合体(ABS)、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体(MIP)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(MMA−AN−ST−Bd)等のスチレン系共重合体;ポリカーボネート;ポリフェニレンエーテル;ポリアクリレート;ポリサルホン;ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0022】
結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)及び非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-1)としては、結晶性樹脂(A)の融点(T1)より低ければよい。結晶性樹脂(A)の融点(T1)と結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)及び非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-1)の差としては、例えば、5〜300℃程度、好ましくは10〜200℃程度である。結晶性樹脂(A)の融点(T1)と結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-1)の温度差が小さすぎると、保護膜を溶融接着する際に、結晶性樹脂(A)により形成されている発泡構造が損なわれる場合があり、マーキング部分のコントラストが低下する場合がある。一方、結晶性樹脂(A)の融点(T1)と結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)及び非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-1)の温度差が大きすぎると、保護膜の密着性が低下する場合がある。
【0023】
本発明において、樹脂(B)としては、なかでも非晶性樹脂(B2)が寸法安定性に優れる点で好ましい。
【0024】
樹脂(A)と樹脂(B)との配合割合[前者:後者(重量比)]としては、例えば、20:80から80:20程度であり、なかでも25:75から75:25がより好ましく、30:70から70:30が特に好ましい。樹脂(B)に対する樹脂(A)の配合割合が20重量%を下回ると、発泡構造の強度が不足するため、マーキング部分に保護膜を設ける際の加熱、加圧により発泡構造が押しつぶされ、その結果、保護膜を設けることによりマーキング部分のコントラストが低下する傾向がある。一方、樹脂(B)に対する樹脂(A)の配合割合が80重量%を上回ると、保護膜を溶融接着する際に溶融して接着性を発揮する樹脂の量が不足するため、密着性が不十分となる傾向がある。
【0025】
本発明における樹脂成形体を構成する白発色熱可塑性樹脂には、上記樹脂(A)と樹脂(B)以外に、色材、高級脂肪酸又はその誘導体を含有することが好ましい。
【0026】
前記色材としては、有機又は無機の暗色系の染料又は顔料を少なくとも含むことが好ましい。暗色系の染顔料は、レーザー光線(例えば波長354〜1064nm)を吸収し、熱エネルギーに変換して、樹脂を発泡又はクレージングさせて白色マーキングを発現させる作用をする。
【0027】
暗色系染顔料としては、例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)、グラファイト、チタンブラック、黒色酸化鉄などが挙げられる。これらの中でも、分散性、発色性、コスト等の面からカーボンブラックが好ましい。暗色系染顔料は単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0028】
暗色系染顔料の平均粒子径は、例えば10nm〜3μm、好ましくは10nm〜1μmの広い範囲から適宜選択できる。暗色系染顔料がカーボンブラックの場合には、平均粒子径は、例えば10〜90nm、好ましくは12〜70nm、さらに好ましくは14〜50nm(特に16〜40nm)程度である。暗色系染顔料の粒子径が小さすぎると分散が困難になり、大きすぎるとマーキングが不鮮明になりやすい。
【0029】
暗色系染顔料の使用量は、前記白発色熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば0.0001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部、さらに好ましくは0.033〜2重量部程度である。暗色系染顔料の量が少なすぎると、レーザー光線の熱への変換効率が低下して発色が不十分になりやすく、逆に多すぎると、マーキングが過度になり黄変色を起こしやすくなる。
【0030】
本発明では、色材として暗色系染顔料以外の染顔料を用いることもできる。このような非暗色系染顔料は無機又は有機の何れであってもよい。非暗色系染顔料として、例えば、白色顔料(例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポンなど)、黄色顔料(例えば、カドミウムイエロー、黄鉛、チタンイエロー、ジンククロメート、黄土、黄色酸化鉄など)、赤色顔料(例えば、赤口顔料、アンバー、赤色酸化鉄、カドミウムレッド、鉛丹など)、青色顔料(例えば、紺青、群青、コバルトブルーなど)、緑色顔料(例えば、クロムグリーンなど)などが挙げられる。非暗色系染顔料は単独又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0031】
これらの中でも、安価であり、隠蔽力、分散性に優れ、極めて鮮明な白色マーキングを可能とする白色染顔料(例えば、酸化チタン)が好ましい。白色染顔料は、レーザー光線を散乱させることで、前記暗色系染顔料によるレーザー光線の吸収効率を向上させて熱への変換効率を高めるため、暗色系染顔料と白色染顔料とを組み合わせて使用すると、極めて白色度の高いマーキングが得られる。また、白色染顔料を含有させることにより、レーザー光線の照射エネルギーを低くしてもマーキングが可能になる。
【0032】
非暗色系染顔料の使用量は、前記白発色熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば2重量部以下(例えば0.0001〜2重量部)、好ましくは1.5重量部以下(例えば0.01〜1.5重量部)である。非暗色系染顔料の量が少なすぎると、レーザー光線の散乱効果が乏しくなり、逆に多すぎると、マーキング色が染顔料の色相を帯びるようになり好ましくない。
【0033】
使用する色材の総量は、前記白発色熱可塑性樹脂100重量部に対して、一般に0.0001〜5重量部、好ましくは0.01〜4重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度である。
【0034】
前記高級脂肪酸又はその誘導体は、配合することにより、前記カーボンブラック等の色材の分散性をよくし、発色性を向上することができる点で好ましい。また高級脂肪酸の誘導体として高級脂肪酸の金属塩を配合すると、レーザー光線の吸収効率が向上し、白色度の高い白色マーキングが得られる。
【0035】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数12〜30程度の飽和又は不飽和高級脂肪酸が例示される。高級脂肪酸の誘導体には、塩、エステル、アミドなどが含まれる。高級脂肪酸の塩としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などが挙げられる。高級脂肪酸のアミドとしては、例えば、エチレンビスステアリルアミド、ラウリン酸アミドなどが例示される。高級脂肪酸又はその誘導体としては、特にステアリン酸又はステアリン酸誘導体(塩、エステル、アミド等)が特に好ましく用いられる。
【0036】
高級脂肪酸又はその誘導体の使用量は、前記白発色熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜3重量部程度である。この使用量が0.01重量部未満では色材の分散性の向上効果が少なく、5重量部を超えると成形時に蒸発・揮散して金型汚染を起こす可能性が高くなる。
【0037】
本発明における樹脂形成体を構成する白発色熱可塑性樹脂には、必要に応じて、相溶化剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、安定剤、滑剤、分散剤、添着剤、発泡剤、抗菌剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
[保護膜]
本発明における保護膜は、レーザー光線照射により発泡構造を形成して白色マーキングを施した樹脂成形体の、白色マーキング部上に貼り合わせることにより、発泡構造が指等による圧力で押し潰されることを防ぎ、手の垢や埃等が発泡構造の凹凸部分に入り込むことにより白色マーキング部分が黒ずむことを防ぐ効果を有するものである。
【0039】
本発明における保護膜は樹脂成形体表面の白色マーキング部上に密着して形成される。該保護膜は透明から半透明の樹脂で構成される単層、又は、更に一層以上の樹脂層が積層された多層構造の何れであってもよく、粘着層を有していてもよい。保護膜を構成する樹脂(C)は、結晶性樹脂(C1)であってもよく非晶性樹脂(C2)であってもよい。
【0040】
保護膜を形成する結晶性樹脂(C1)の融点(T3-1)としては、結晶性樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上であればよい。また、保護膜を形成する非晶性樹脂(C2)のガラス転移温度(T3-2)としては、結晶性樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上であればよい。
【0041】
また、樹脂(A)の融点(T1)と結晶性樹脂(C1)の融点(T3-1)の温度差、又は樹脂(A)の融点(T1)と非晶性樹脂(C2)のガラス転移温度(T3-2)の温度差としては、例えば、5〜300℃程度(好ましくは10〜200℃程度)である。樹脂(C)の融点(T3-1)又はガラス転移温度(T3-2)と樹脂(A)の融点(T1)との温度差が小さすぎると、保護膜を溶融接着する際に、樹脂(A)により形成されている発泡構造が損なわれる場合があり、マーキング部分のコントラストが低下する場合がある。
【0042】
さらに、保護膜を構成する樹脂(C)としては、前記樹脂(B)との相溶性を有する樹脂を使用することが好ましい。保護膜が多層構造の場合には樹脂成形体と直接密着しない樹脂層が存在するが、この層を構成する樹脂については特に限定されることなく、用途に適した物性を有する樹脂を選択することができる。
【0043】
保護膜を構成する樹脂(C)としては、単層の場合は、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;さらにそれら熱可塑性エラストマーにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂、6ナイロン、6−66共重合ナイロン、66ナイロン、6−12共重合ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレ−ト−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロ二トリル−スチレン−ブタジエン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を混合した組成物が挙げられる。
【0044】
保護膜が多層の場合、上記の密着樹脂層に積層する樹脂としては、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂、6ナイロン、6−66共重合ナイロン、66ナイロン、6−12共重合ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロ二トリル−スチレン−ブタジエン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂の1種または2種以上の混合物を使用できる。
【0045】
保護膜が有していても良い粘着層としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アイオノマー樹脂等の公知の樹脂を使用することができ、例えば、エチルセルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂又はスチレン系共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル共重合体系樹脂、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸エステル系樹脂、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン等のゴム系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
上記粘着層には粘着力を調整するためにα−メチルスチレン系樹脂、シリコーンエラストマー等が配合されていてもよい。
【0047】
多層化の方法については、上記樹脂種においてTダイ法またはインフレーション法等により積層一体化する多層共押出法、押出により積層する押出ラミネート法、熱ラミネート法等のラミネート手段、また上記樹脂を溶剤希釈した樹脂液を公知の印刷又は塗工手段によって多層化することが可能である。またさらに層間に粘着層を介して多層化することも可能である。
【0048】
保護膜は、マーキングによる印字を視認できる程度の透明性を有していればよく、例えば、保護膜(使用時の厚みにおいて)の全光線透過率は35〜100%程度であり、好ましくは45〜100%、さらに好ましくは50〜100%である。保護膜の全光線透過率が35%未満である場合には保護膜を通して印字の視認が困難になる。
【0049】
保護膜の厚みとしては、通常5〜5000μm、より好ましくは10〜3000μm、さらに好ましくは20〜2000μmである。保護膜の厚みが5μm未満である場合には印字された発泡層構造の保護が不十分になりやすく、5000μmを超える場合は印字の視認が困難となる傾向があり、また、保護膜を設けることにより製品が変形する恐れがある。
【0050】
保護膜は印字の視認性及び発泡構造の保護性を損なわない限り、必要に応じて色材、相溶化剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、安定剤、滑剤、分散剤、添着剤、発泡剤、抗菌剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0051】
[白色マーキングされた樹脂構造体の製造方法]
本発明に係る白色マーキングされた樹脂構造体の製造方法としては、樹脂(A)と樹脂(B)とからなる樹脂成形体に、レーザー光線を照射して樹脂成形体表面に白色マーキングを施し、その後、該白色マーキング部分の表面に、前記樹脂(B)が樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、前記樹脂(B)が樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上、且つ、前記樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより樹脂(C)からなる保護膜を溶融接着することを特徴とする。
【0052】
前記樹脂成形体は、白発色可能な熱可塑性樹脂を、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形などの慣用の成形法に供することにより製造することができる。樹脂成形体の形状としては、目的、最終製品の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、角柱状、円柱状、平板状(プレート状)、シート状等の何れであってもよい。
【0053】
こうして得られる樹脂成形体にレーザー光線を照射することにより樹脂成形体表面に発泡構造を形成して、白色マーキングが施された樹脂成形体が得られる。白色マーキングは、該発泡構造に光が散乱して白く視認されることにより文字等が認識されるものである。マーキングに用いるレーザーの種類は特に限定されず、ガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、YAGレーザーなどの何れであってもよいが、YAGレーザーが最も好適に使用される。マーキングの種類は特に限定されず、文字、記号、図柄、絵、写真等の何れであってもよい。
【0054】
保護膜を白色マーキングが施された樹脂成形体のマーキング部分の表面に密着、積層させる方法としては、既存の方法が可能であり、二色成形、インサート成形、インモールド成形、共押出、熱プレス、真空熱プレス、圧空成形、レーザー溶着、振動溶着、熱板溶着などの方法を採用できる。
【0055】
本発明に係る白色マーキングされた樹脂構造体の製造方法は、樹脂(B)の融点(T2-1)又はガラス転移温度(T2-2)以上、結晶性樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより保護膜を溶融接着することを特徴とする。結晶性樹脂(A)の融点(T1)以上の温度で加熱すると、結晶性樹脂(A)が溶融するため、レーザー光線照射により形成された発泡構造が損なわれて、マーキング部分のコントラストが低下する。一方、加熱温度が樹脂(B)の融点(T2-1)又はガラス転移温度(T2-2)未満では、樹脂(B)が溶融又は軟化しないため、接着性が不足して保護膜を発泡構造表面に密着させることが困難となる。具体的には、樹脂(B)が結晶性樹脂(B1)である場合は、結晶性樹脂(B1)のガラス転移温度以上融点(T2-1)未満で加熱しても、結晶構造により形状が保持されるために接着性を発揮することはなく、融点(T2-1)以上で加熱することにより初めて溶融して保護膜を接着することができるためである。また、樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)である場合は、ガラス転移温度(T2-2)以上で加熱することにより、軟化、溶融して保護膜を接着することができるためである。
【0056】
また、加熱温度は、樹脂(A)の融点(T1)未満で、且つ、樹脂(B)の融点(T2-1)又はガラス転移温度(T2-2)以上、保護膜を形成する樹脂(C)の融点(T3-1)又はガラス転移温度(T3-2)未満の温度であることが、保護膜の密着性、及び、白色マーキングを形成する発泡構造の維持の点でより好ましい。
【0057】
こうして得られる白色マーキングされた樹脂構造体は、結晶性樹脂(A)による強固な発泡構造を有し、且つ、結晶性樹脂(A)の融点未満の温度で溶融、又は軟化する樹脂を含有するため、結晶性樹脂(A)の融点未満の温度で加熱することにより、保護膜を該発泡構造上に発泡構造を押し潰すことなく密着して積層することができる。そして、レーザー光線照射による発泡構造上に、該発泡構造を損なうことなく保護膜を密着させて積層することができるため、保護膜の積層により発泡構造が押し潰されることが原因の白色マーキングのコントラストの低下が起こることがない。また、保護膜と白色マーキングとの密着が不十分なために引き起こされる視認性の低下が生じることがない。さらにまた、発泡構造が保護膜により保護されているため、指等による圧力で押しつぶされることがなく、手の垢や埃が発泡構造の凹凸部分に入り込むことがないため、経時的にマーキング部分のコントラストが低下することがなく、印字等の良好な視認性を維持することができる。そして、マーキング部分のコントラストの低下を防ぐことで、コントラストの低下が原因の質感の損失を防ぐことができる。
【0058】
本発明に係る白色マーキングされた樹脂構造体は、例えば、コンピュータのキーボード等のOA機器、自動車部品(ボタン部品等)、家庭用品、建築材料などに幅広く利用できる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
(保護膜用樹脂フィルムの作成)
表1に示す保護膜用樹脂をTダイ法によって押出し、厚み20μm、200μm、1000μmの保護膜用樹脂フィルムを作成した。なお、加工温度は、エラストマー2、3、4、5は200℃、エラストマー1、6、AS、MMA−AN−ST−Bdについては230℃であった。フィルム厚みは、標準外側マイクロメータ、商品名「MDC−25SB」(ミツトヨ(株)製)を用いて測定した。
【0061】
実施例1〜17、比較例1〜3
(白発色熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体の作成)
表2〜4に示す各成分をブレンドし、押出加工することによりペレットを製造し、このペレットを射出成形することにより厚さ2mmの樹脂成形体(マーキング発色樹脂平板;120mm×120mm)を作成した。
【0062】
(マーキング方法)
得られた樹脂成形体に、レーザー光線を照射して、樹脂成形体表面に、白色マーキング[10mm角BOX(線間距離75μm)を描写]を施した。レーザーとしてNd:YAGレーザー(波長1064nm)を使用した。照射条件としては、アパーチャーを径2mmに固定し、光源電流値(LC)、振動数(QS)及び印字スピード(SP)を下記の範囲で変化させ、最も明瞭な白色印字が得られる条件でマーキングを実施した。
光源電流値(LC):8〜20A
振動数(QS):1〜10kHz
印字スピード(SP):100〜1500mm/sec
【0063】
(樹脂成形体と保護膜との積層方法)
厚さ2mmの樹脂成形体(120mm×120mm)のマーキング部分の表面に、上記で得られた保護膜用樹脂フィルムを熱プレスすることにより溶融接着させて、試験体を得た。
【0064】
実施例及び比較例で得られた各樹脂成形体及び各試験体について、下記の評価試験を行った。
【0065】
(1)保護膜の光透過性(%)
得られた保護膜用樹脂フィルムについて、ヘーズメーター(商品名「全自動ヘーズメーター TC−HIIIDPK」、有限会社 東京電色製)を用いて、JIS K7105に準じて全光線透過率(T%)を測定した。
【0066】
(2)白発色熱可塑性樹脂のマーキング性
実施例及び比較例で得られた白発色熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体について、レーザー光線を照射して印字を施し、施された印字について、形状が正しく印字されているか否かを目視で観察し、下記基準に従って評価した。
評価基準
デザインどおりに印字されている:○
印字が不十分である:×
【0067】
(3)保護膜の密着性
実施例及び比較例で得られた試験体を捻って保護膜と樹脂成形体(マーキング層)の間に空隙が発生するか否かを目視で確認し、下記基準に従って評価した。
評価基準
空隙が発生しなかった:○
空隙が発生した:×
【0068】
(4)印字の視認性
実施例及び比較例において、保護膜の積層工程前後における印字のコントラストの変化により引き起こされる視認性の変化を目視で観察し、下記基準に従って評価した。
評価基準
コントラストの低下がなく、視認性に変化がない:○
コントラストが低下し、視認性が低下した:×
【0069】
(実施例及び比較例で使用した成分)
結晶性樹脂
PP:ポリプロピレン、商品名「サンアロマーPM870L」、サンアロマー(株)製
PET:ポリエチレンテレフタレート、商品名「ベルペットEFG6C」、カネボウ合繊(株)社製
PBT:ポリブチレンテレフタレート、商品名「TRE−DM2」、ウインテックポリマー(株)製
PA:ポリアミド(PA6):商品名「A1030BRL」、ユニチカ(株)製
【0070】
非晶性樹脂
AS:スチレン(St)76重量%、アクリロニトリル(AN)24重量%からなる共重合体、220℃/10kg条件でのMI=32g/10分
ABS−1:St45重量%、AN15重量%、ブタジエン(Bd)40重量%からなる共重合体、MEK(メチルエチルケトン)30℃のη粘度0.47
ABS−2:St40重量%、AN15重量%、Bd40重量%、メタクリル酸(MA)5重量%からなる共重合体、MEK30℃のη粘度0.67
SEBS:無水マレイン酸変性スチレン/エチレン・ブチレン/スチレンブロック共重合体、商品名「タフテックM1943」、旭化成ケミカルズ(株)製
MIP:スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体、商品名「マレッカMS−NC」、電気化学工業(株)製
MMA−AN−ST−Bd:St22重量%、AN11重量%、MMA58重量%及びBd9重量%からなる4元共重合体(220℃/10kg条件でのMI=18g/10分)、ゴム平均粒子径250μm)
【0071】
色材
CB:カーボンブラック、市販品、平均粒径17nm
TiO2:二酸化チタン、市販品、平均粒径0.18μm
【0072】
その他の添加剤
酸化防止剤1:フェノール系酸化防止剤、商品名「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製
酸化防止剤2:イオウ系酸化防止剤、商品名「スミライザーTPS」、住友化学工業(株)製
【0073】
エラストマー
エラストマー1:ポリエーテルエステルアミドエラストマー(PEEA)、商品名「ペレスタットNC6321」、三洋化成工業(株)製
エラストマー2:ポリエーテルエステルアミドエラストマー(PEEA)、商品名「ペレスタット300」、三洋化成工業(株)製
エラストマー3:ポリエステル系熱可塑性エラストマー(ポリエステル EL)、商品名「プリマロイA1606C」、三菱化学(株)製
エラストマー4:ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU EL)、商品名「エラストランS95A」、BASFジャパン(株)製
エラストマー5:オレフィン系熱可塑性エラストマー(オレフィン EL)、商品名「ゼラスMC717」、三菱化学(株)製
エラストマー6:ポリエステル系熱可塑性エラストマー(ポリエステル EL)、商品名「ECDEL9966」、イーストマンケミカルジャパン(株)製
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と樹脂(B)とからなる樹脂成形体に、レーザー光線照射により白色マーキングが施され、且つ、該白色マーキングが施された白色マーキング部上に、前記樹脂(B)が樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、前記樹脂(B)が樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上、且つ、前記樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより樹脂(C)からなる保護膜が設けられている白色マーキングされた樹脂構造体。
樹脂(A):結晶性樹脂[融点(T1)]
樹脂(B):樹脂(A)の融点(T1)よりも低い融点(T2-1)を有する結晶性樹脂(B1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低いガラス転移温度(T2-2)を有する非晶性樹脂(B2)
樹脂(C):樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-2)以上の融点(T3-1)を有する結晶性樹脂(C1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-2)以上のガラス転移温度(T3-2)を有する非晶性樹脂(C2)
【請求項2】
樹脂(B)が非晶性樹脂(B2)である請求項1に記載の白色マーキングされた樹脂構造体。
【請求項3】
樹脂(A)と樹脂(B)との配合割合[前者:後者(重量比)]が、20:80から80:20である請求項1又は2に記載の白色マーキングされた樹脂構造体。
【請求項4】
樹脂(C)が樹脂(B)と相溶性を有する樹脂である請求項1〜3の何れかの項に記載の白色マーキングされた樹脂構造体。
【請求項5】
樹脂(A)と樹脂(B)とからなる樹脂成形体に、レーザー光線を照射して樹脂成形体表面に白色マーキングを施し、その後、該白色マーキング部分の表面に、前記樹脂(B)が樹脂(B1)の場合はその融点(T2-1)以上、前記樹脂(B)が樹脂(B2)の場合はそのガラス転移温度(T2-2)以上、且つ、前記樹脂(A)の融点(T1)未満の温度で加熱することにより樹脂(C)からなる保護膜を溶融接着することを特徴とする白色マーキングされた樹脂構造体の製造方法。
樹脂(A):結晶性樹脂[融点(T1)]
樹脂(B):樹脂(A)の融点(T1)よりも低い融点(T2-1)を有する結晶性樹脂(B1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低いガラス転移温度(T2-2)を有する非晶性樹脂(B2)
樹脂(C):樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-2)以上の融点(T3-1)を有する結晶性樹脂(C1)、又は、樹脂(A)の融点(T1)よりも低く、結晶性樹脂(B1)の融点(T2-1)又は非晶性樹脂(B2)のガラス転移温度(T2-2)以上のガラス転移温度(T3-2)を有する非晶性樹脂(C2)

【公開番号】特開2009−166274(P2009−166274A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4183(P2008−4183)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】