説明

白色レーザーマーキング用樹脂組成物

【課題】 レーザー照射によってプラスチック成形品の表面に白色度が優秀な白色マーキングが可能であり、種々なレーザー装備で鮮明に白色マーキングをすることができる、樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 レーザーの照射による白色マーキングのとき、鮮明度と白色度が優秀な白色レーザーマーキング(white−laser−marking)用樹脂組成物に関するものであって、さらに詳しくは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂またはこれらの混合樹脂と黒色顔料およびアルカリ金属化合物を含んでなる白色レーザーマーキング用樹脂組成物に関するものである。本発明の樹脂組成物で成形された成形品の表面にレーザー光を照射して文字、記号、絵、写真等のマーキングをする場合、白色の鮮明なコントラストを有する白色マーキングを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザーの照射による白色マーキングのとき、鮮明度と白色度が優秀な白色レーザーマーキング(white−laser−marking)用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品にパターン、文字、数字、絵等をマーキングする従来の技術には、パッドプリンテイング(pad printing),含浸プリンテイング(impregnation printing),レーザーマーキング等の方法があるが、最近では環境的、エネルギー的、耐久性、経済性およびデザイン的な点で優秀なレーザーマーキング方法が電気電子製品、特にキーボードのキー印字、自動車の内装材等に多く利用されている。単純にカーボンブラックを添加した樹脂組成物で成形された成形品の黒色質にレーザーマーキングによって白色マーキングをする場合は、レーザーによる白色度や外観が劣って用途が極めて限定され、既存に知られたシリコン系物質や金属類、チタン酸化物、雲母等を配合した樹脂組成物で成形された成形品のマーキングのときには、白色度が十分でないばかりでなく、マーキングが均一でないので、各種の用途に適用するのに制限を有していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、レーザー照射によってプラスチック成形品の表面に白色度が優秀な白色マーキングが可能であり、種々なレーザー装備で鮮明に白色マーキングをすることができる、樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の白色レーザーマーキング用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂またはこれらの混合樹脂100重量部に対し、黒色顔料を0.01〜5重量部、およびアルカリ金属化合物を、そのアルカリ金属の重量基準で、0.05〜40重量部を含んでなることを特徴とする。
【0005】
本発明の樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP),ポリエステル、ポリフエニレンスルフイド(sulfide)、ポリカーボネート(PC), 変性ポリフエニルエーテル(mPPE),ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリメタクリル酸メタル樹脂(PMMA)、ポリアセタール、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ポリフエニレンオキサイド、ポリスチレン、アクリル系樹脂、各種エラストマー(天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーを含む)等を挙げることができ、上記熱硬化性樹脂としては、沃素樹脂、フエノール樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、上記樹脂等の混合樹脂および共重合体樹脂も使用することができ、上記言及された樹脂等に限定されるものではない。
【0006】
本発明の樹脂組成物において、上記黒色顔料としては、カーボンブラック、チタニウムブラック、フアーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック、スルフアブラック等の黒色顔料を1種或いは2種以上混合して使用することができ、特に、炭素粒子からなる顔料、例えば、カーボンブラックが最も好ましい。上記黒色顔料の好ましき平均粒径は10〜100nmであり、されに好ましくは30〜70nmである。上記黒色顔料の平均粒径が上記範囲を外れる場合には、レーザーマーキングの時、白色度が劣るので好ましくない。上記黒色顔料の含量は、上記樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2重量部である。黒色顔料の含量が5重量部を超えると、レーザ照射のとき、遮蔽効果により表面から深く照射されないので白色度が劣り、0.01重量部未満であれば、コントラストが弱くなって、鮮明度が劣り得るので好ましくない。
【0007】
本発明の樹脂組成物において、上記アルカリ金属化合物は、白色度発現に触媒作用をするものであって、上記アルカリ金属化合物はレーザー照射のとき、黒色顔料の分解を促進させ蒸発を誘発し、同時に黒色顔料が吸収したエネルギーを効果的に熱に発散させ、樹脂の溶融および発泡特性を向上させることにより、白色度と鮮明度を向上させる。
【0008】
上記アルカリ金属化合物のアルカリ金属成分としては、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、バリウム等を挙げることができ、上記アルカリ金属化合物の好ましきな具体的な例としては、水酸化カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、ヨードカリウム、硝酸カリウム、アセト酸カリウム、マンガン酸カリウム、カリウムシリケート、ステアリン酸カリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、、アセト酸ナトリウム、硫化ナトリウム、珪酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化バリウム等を1種または2種以上混合して使用することができる。上記アルカリ金属化合物の含量は、上記アルカリ金属化合物のアルカリ金属の重量を基準で、上記樹脂100重量部に対し、0.05〜40重量部であり、好ましくは0.1〜20重量部である。上記アルカリ金属化合物の含量が、アルカリ金属の重量基準で、0.05重量部未満であれば、マーキング性が劣り白色度が低下され好ましくなく、40重量部を超えるとマーキング性は高くなるが、炭化され白色度が低下され好ましくない。
【0009】
本発明の樹脂組成物には、材料の物性を向上させるための通常の種々な添加剤等、例えば、樹脂安定剤、核剤、可塑剤、難燃剤、スリップ剤、抗菌剤、フイラー(シリカ、タルク、ガラス繊維、雲母、珪石灰、炭酸カルシウム、硫化バリウム等)などが単独または混合して含まれ得る。このような添加剤等の添加によってレーザーマーキング後、耐久性、耐摩耗性などの特性を向上させることができる。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、種々なミキサー、例えば、ヘンシエルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダ、押出し機、ボールミキサー、連続フエラールミキサー, 擂り鉢等を利用して各成分を混練した後、押出す方法で製造することができる。上記混練方法は、黒色顔料とアルカリ金属化合物の分散性を増大させることができるものであれば特別に制限がなく、例えば、樹脂と黒色顔料にアルカリ金属化合物を添加する方法、黒色顔料とアルカリ金属化合物を共に十分にグラインデイングした後、樹脂と混練する方法、または種々な溶媒を使用してアルカリ金属化合物と黒色顔料の混練性を増大させる方法等種々な混練方法が利用され得る。
【0011】
本発明の樹脂組成物の製造時に、黒色顔料と上記アルカリ金属化合物の分散を向上させるために、混練過程で分散剤を添加することが好ましいが、上記分散剤の種類は特別に限定されないが、脂肪酸系化合物が好ましく利用され得る。上記脂肪酸系化合物としては、炭素数2〜32の飽和または不飽和脂肪酸またはその誘導体(塩、エステル、アミド等)を挙げることができ、好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸と、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、エチレンビスステアリルアミド、ラウリン酸アミド等の高級脂肪酸アミドを例示することができる。このような分散剤を添加するときには、レーザーマーキングのとき、白色度の増加のために、上記樹脂組成物100重量部に対し0.002〜10重量部、特に0.01〜5重量部を添加するのが好ましい。
【0012】
本発明の樹脂組成物を利用して成形物を製造する場合、成形方法には特別に制限がなく、例えば、射出成形やブロー成形、回転成形のような公知の成形方法で成形することができる。
【0013】
本発明の樹脂組成物で成形された成形品のマーキング時に使用されるレーザー光線の種類は特別に限定されず、ガスレーザー、半導体レーザー、エキシマ・レーザー等がすべて使用し得るし、カーボンブラックが吸収できる波長帯を有するNd:YAGレーザー,Nd:YVO4レーザーが最も好ましく利用され得る。上記レーザーは、ランプタイプ、ダイオードタイプ、フアイバータイプ等がすべて利用され得るし、ダイオードタイプとフアイバータイプのレーザーがランプタイプ対比優秀な白色度が発現されるのでさらに好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物によれば、白色レーザーマーキング時、成形体の表面に白色度および鮮明度が優秀な白色マーキングが可能な効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は下記の実施例によってより具体的に理解できるし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の保護範囲を制限しようとするものではない。
【0016】
(実施例および比較例)
下記表1に示した組成のとおり、各成分を配合して、樹脂組成物を製造した。製造された樹脂組成物を二軸押出し機を利用して210℃で押出した後、射出成形して、100mm×100mm×2mmの平たなシートを製造した。シートの表面にNd/YAGレーザー(Falcon社)を利用して、レーザーマーキングを40mm×40mm正四角形形状にマーキングをした後、カラー測定機でマーキングされた部分の白色度(WI)と明度(L)を測定して、5等級に判定した。ここで、1等級はマーキングの鮮明度と白色度が最も優秀な場合、5等級はマーキングの鮮明度と白色度が最も低い場合である。マーキング等級判定の結果を下記表1に共に示した。
【0017】
【表1】



上記表1〜3に示したとおり、本発明の実施例の樹脂組成物で製造した成形物のレーザーマーキング等級が比較例に比べて顕著に優秀であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂またはこれらの混合樹脂100重量部に対し、黒色顔料を0.01〜5重量部、およびアルカリ金属化合物を、そのアルカリ金属の重量を基準で、0.05〜40重量部を含むことを特徴とするレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン,ポリエステル、ポリフエニレンスルフイド、ポリカーボネート,変性ポリフエニルエーテル,ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン,アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリブチレンテレフタレート,ポリメタクリル酸メタル樹脂、ポリアセタール、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ポリフエニレンオキサイド、ポリスチレン、アクリル系樹脂およびエラストマーから選ばれ、上記熱硬化性樹脂は、沃素樹脂、フエノール樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項3】
上記黒色顔料は、カーボンブラック、チタニウムブラック、フアーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラックおよびスルフアブラックから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項4】
上記アルカリ金属化合物は、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムまたはバリウムの塩であることを特徴とする請求項1に記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項5】
上記ナトリウム化合物は、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アセト酸ナトリウム、硫化ナトリウム、珪酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムおよびオレイン酸ナトリウムから選ばれ、上記カリウム化合物は、水酸化カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、ヨードカリウム、硝酸カリウム、アセト酸カリウム、マンガン酸カリウム、カリウムシリケートおよびステアリン酸カリウムから選ばれ、上記カルシウム化合物は、炭酸カルシウムおよびステアリン酸カルシウムから選ばれ、上記バリウム化合物は、水酸化バリウムであることを特徴とする請求項4に記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−32452(P2011−32452A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213604(P2009−213604)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(507324740)サムスン トータル ペトロケミカルズ カンパニー リミテッド (16)
【Fターム(参考)】