説明

白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびそれからなる包装体、表示物、感熱転写記録用受容シート

【課題】比重が低く、高クッション性で光学濃度が高く隠蔽性に優れ、耐折れじわ性に優れるとともに、従来に比較して長手方向の剛性を高めた白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】空洞含有層であるA相の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂からなるB層が設置されてなり、比重が0.5〜0.85である積層フィルムであって、A層が230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレイト(MFR)との関係が、次式(1)
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.52 (1)
を満たすポリプロピレンからなることを特徴とする白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装用途、工業用途など広範な用途に好適な白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関するものである。詳しくは、一般包装体、ラベル、ポスター、ステッカーなどの表示物、および感熱転写記録体などの情報記録受容シートなどに用いられ、二次加工性、耐折れじわ性に優れ、感熱転写記録体の受容シートに用いた場合には上記特性に併せて感度に優れた白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
白色ポリプロピレンフィルムはパルプ紙と比較して耐水性、強度、平滑性などに優れた合成紙として、一般包装体、ラベル、ポスター、ステッカーなどの表示物、感熱転写記録受容シートなどに広く用いられている。ここで、感熱転写記録方式とは、色材含有層であるインキ層を有する転写シート(インキリボン)と受容シートを重ね合わせ、インキリボン側からのサーマルヘッドの加熱に応じて、溶融または昇華して移行する色材含有成分または色材を、受容シート上に微細な網点(ドット)状に転写して印字する方式である。
【0003】
このような白色フィルムを得るための様々な技術がこれまで提案されてきた(例えば、特許文献1〜17参照。)。
【0004】
従来、白色フィルムを得るために無機粒子を熱可塑性樹脂に添加し、一軸または二軸に延伸することは古くから公知である(例えば、特許文献1参照。)。また、例えば、結晶性ポリプロピレン65〜93重量%と、該結晶性ポリプロピレンに非相溶性で熱変形温度が120℃以上の熱可塑性樹脂5〜20重量%と、該結晶性ポリプロピレンに相溶性で融解温度が140℃以下の樹脂2〜15重量%とからなり、フィルム厚み30μmにおける光学濃度が0.35以上であることを特徴とする白色二軸延伸ポリオレフィンフィルム(特許文献2参照)、内部に層状の気孔層が存在する芯材層の表面に気泡を含まないスキン層を有したフィルム(特許文献3参照)、内部に層状の気泡層が存在する芯材層の表面に、マトリックス材とは非相溶性樹脂を核とした気泡を含むスキン層を有したフィルム(特許文献4参照)、などである。また、情報記録紙の耐折れじわ性を改善する目的に、ポリプロピレンに非相溶性樹脂性を混合して二軸延伸したポリプロピレン系空洞含有フィルムの気泡形状を規定したもの(特許文献5参照)や、β晶核剤を含有した結晶性ポリプロピレンに非相溶性で、溶融結晶化温度が140℃以上の熱可塑性樹脂であるポリ−4−メチルペンテン−1及びポリブチレンテレフタレートを添加して二軸延伸した白色不透明ポリオレフィンフィルム(特許文献6参照)などが提案されている。さらには、上記の気泡含有白色フィルムを用いて、色素画像受容層を上方に保有する基材を含むサーマルダイトランスファーに用いる受容素子において、前記基材が支持体に積層された複合材料フィルムを含み、前記色素画像受容層が基材の複合材料フィルム側にあり、そして前記複合材料フィルムがミクロボイドを保有する熱可塑性コア層および少なくとも1層の実質的にボイドを含まない熱可塑性表面層を含み、かつ前記コア層および表面層の同時押出しとそれに続く二軸延伸によって製造されたものであることを特徴とするサーマルダイトランスファーに用いる受容素子(特許文献7参照)などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭46−40794号公報
【0006】
【特許文献2】
特許第2800926号公報
【0007】
【特許文献3】
特公平3−24334号公報
【0008】
【特許文献4】
特許第3108473号公報
【0009】
【特許文献5】
特開平11−343357号公報
【0010】
【特許文献6】
特許第2917331号公報
【0011】
【特許文献7】
特許第2735989号公報
【0012】
【特許文献8】
特開平3−101924号公報
【0013】
【特許文献9】
特許第2964608号公報
【0014】
【特許文献10】
特開平6−228351号公報
【0015】
【特許文献11】
特開平7−309964号公報
【0016】
【特許文献12】
特許2611392号公報
【0017】
【特許文献13】
特許3139510号公報
【0018】
【特許文献14】
特開平9−31227号公報
【0019】
【特許文献15】
特開平11−293015号公報
【0020】
【特許文献16】
特開平11−293016号公報
【0021】
【特許文献17】
特開平11−343357号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
近年、印刷時や加工時の熱負荷が大きくなり、装置の小型化、加工速度の高速化に伴い、加工条件が過酷になることなど、印刷基材の使用される環境がより厳しいものになりつつある。また、蒸着やコーティングなどの二次加工を施したフィルムとした場合には、その後の製袋加工などの際に膜割れ(クラック)発生による品質低下などが問題となっている。これらの課題を背景として、基材に適用される白色フィルムには、感熱転写の際の感度、光沢(意匠性)を満足しながら、剛性、耐折れじわ性などに例示される優れた印刷特性、加工適性が強く求められている。しかしながら、特許文献1〜17のフィルムでは、感熱転写の際の感度、光沢と剛性、耐折れじわ性の相反する特性を両立するのは困難であった。例えば、特許文献2と5はフィルム厚み方向の空洞の均一性に劣り、感熱転写の際の感度にむらを生じ、高感度の感熱転写用記録紙が得られ難く、特許文献3と4ではフィルムの空洞の均一性と、耐折れじわ性に劣り、また、特許文献4では内層及びスキン層に空洞を有しているが、空洞の均一性に劣り、感熱転写記録用の受容シートとして感度のばらつきが大きく、また、スキン層に非相溶性樹脂性を核とする空洞を有するために、製膜工程及び感熱転写用記録紙製造工程にて空洞の核が脱落して工程を汚す欠点があった。特許文献6では、β晶核剤を添加したポリプロピレンを用いているが、非相溶性樹脂性のTgが100℃以下と低いために、二軸延伸工程で空洞が消失して空洞の均一性に劣り、クッション率が低いために感度が不十分となる問題があった。また、特許文献4以外は表層に空洞を含有していないために、サーマルヘッドからの熱の断熱性に劣り、高感度の感熱転写用記録紙が得られ難いという問題があった。さらに、いずれも長手方向の剛性が不十分なために、上記したように膜割れ(クラック)発生の問題があった。また、製造過程で空洞を形成するため、従来の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合に比較して破れが多いという潜在的な問題もあった。
【0023】
本発明の目的は、上記課題を解消すべくなされたものであり、空洞の均一性に優れるとともに、感度、光沢(意匠性)、剛性(特に長手方向の剛性)、耐折れじわ性などのいずれにも優れる白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびそれを用いた包装体、表示物、感熱転写記録用受容シートを提供することである。また、フィルム製造の際、破れなどの工程不良を減少し、蒸着、コーティングなどを施したフィルムとした場合も、二次加工後の特性低下を抑制できる白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびそれを用いた包装体、表示物、感熱転写記録用受容シートを提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために、主として、以下の構成を有する。
【0025】
すなわち、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、主として、空洞含有層であるA層の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂からなるB層が設置されてなり、比重が0.5〜0.85である積層フィルムであって、A層において230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレイト(MFR)との関係が、次式(1)
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.52 (1)
を満たすポリプロピレンからなることを特徴とする。
【0026】
また、好ましい態様として、B層の積層厚みが全体の1/3以下であること、またA層に含有される空洞が、空洞開始剤を内包すること、また空洞開始剤が、無機粒子および/またはポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂であること、また無機粒子が、炭酸カルシウムおよび/または二酸化チタンであること、またポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートおよび/または飽和ポリエステルであること、またA層に、延伸助剤が1種以上含有されたこと、また延伸助剤が極性基を実質的に含まない石油樹脂および/または極性基を実質的に含まないテルペン樹脂であること、またβ晶比率が10%以上であること、また25℃での長手方向のヤング率が1.5GPa以上であること、またB層に無核の空洞を有すること、またB層の表面光沢度が50%以上であること、また少なくとも片面に金属蒸着層を設けたことを特徴とする白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、また該白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いてなる包装体、また該白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いてなる表示物、また該白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いてなる感熱転写記録用受容シート。
である。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンの溶融張力(MS)とメルトフローレイト(MFR)の値は下記式(1)を満たす。下記式(1)を満たすポリプロピレンは、例えば下記式(2)を満たすような高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を汎用ポリプロピレンに添加混合したり、汎用ポリプロピレンの主鎖骨格中に長鎖分岐成分を共重合、グラフト重合などで導入することによって得られる。
【0028】
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.52 (1)
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンが、上記式(1)を満たすことにより、フィルム製造時の破れを抑制し、すなわち製膜性を向上でき、長手方向の剛性を高めるとともに、所望の耐折れじわ性、クッション率、光学濃度が得られる。本発明に使用するポリプロピレンは、より好ましくは下記式(1’)を満たすように、特に好ましくは下記式(1’’)を満たすことが好ましい。これらは、例えば下記のHMS−PPの添加量により調整可能であり、さらに長手方向の剛性、耐折れじわ性、クッション率、光学濃度を向上させることができる。
【0029】
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.56 (1’)
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.62 (1’’)
また、上記式(1)の関係は、製膜前のチップについて判定することが好ましいが、製膜後の積層フィルムについて該フィルムからB層を削り取るか、剥ぎ取って採取したA層樹脂について判定してもかまわない。また、製膜後の積層フィルム全体が上記式(1)(より好ましくは上記式(1’)、さらに好ましくは上記式(1’’))の関係を満たすことが好ましい。
【0030】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンには、従来に比較して溶融張力(MS)が高い、いわゆる高溶融張力ポリプロピレン(High Melt Strength−PP;HMS−PP)が含まれることが好ましい。
【0031】
上記HMS−PPは、230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレイト(MFR)が、下記式(2)
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.82 (2)
を満たすことが好ましい。ここで、230℃で測定したときのMSとは、東洋精機製メルトテンションテスターを用いて、ポリプロピレンを230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度15mm/分で吐出しストランドとし、このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、MS(単位:cN)とした。また、230℃で測定したときのMFRとは、JIS K6758に従って2.16kgの荷重下で測定したもの(単位:g/10分)である。
【0032】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、用いるポリプロピレンが式(2)を満たすHMS−PPを含むことにより、系全体に延伸応力が均一に伝播され、従来の白色フィルムの製造工程で空洞形成時に生じることのあったフィルム破れを抑制することができ、すなわち製膜性を向上できるとともに、縦延伸後の縦配向結晶の横延伸時の幅方向への再配列を抑制することにより長手方向の剛性を高くした白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造することができるので好ましい。用いるポリプロピレンが式(2)を満たすHMS−PPを含まないと、長手方向の剛性が不十分となったり、所望の耐折れじわ性、クッション率、光学濃度などが得られない場合があるだけでなく、製膜性が悪化する場合がある。
【0033】
上記のようなHMS−PPを得るには、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているように長鎖分岐を導入せずに溶融張力と固有粘度、結晶化温度と融点とがそれぞれ特定の関係を満たし、かつ沸騰キシレン抽出残率が特定の範囲にある直鎖状の結晶性ポリプロピレンとする方法などが好ましく用いられる。
【0034】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層には、上記のうちポリプロピレン分子中に長鎖分岐を導入して溶融張力を高めたHMS−PPを用いることが特に好ましい。長鎖分岐を導入して溶融張力を高めたHMS−PPの具体例としては、Basell社製HMS−PP(タイプ名:PF−814など)、Borealis社製HMS−PP(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製HMS−PP(タイプ名:D201など)などが挙げられる。
【0035】
ポリプロピレンの長鎖分岐の程度を示す指標値として、下記式で表される分岐指数gが挙げられる。
【0036】
g=[η]LB/[η]Lin
ここで、[η]LBは長鎖分岐を有するポリプロピレンの固有粘度であり、[η]Linは長鎖分岐を有するポリプロピレンと実質的に同一の重量平均分子量を有する直鎖状の結晶性ポリプロピレンの固有粘度である。なお、固有粘度はテトラリンに溶解した試料について公知の方法で135℃にて測定する。また、重量平均分子量は、M.L.McConnellによってAmerican Laboratory、May、63−75(1978)に発表されている方法、すなわち低角度レーザー光散乱光度測定法で測定される。
【0037】
上記のHMS−PPの分岐指数gは、0.95以下であることが好ましい。分岐指数が上記範囲を超えると、HMS−PPの添加効果が低下し、フィルムとしたときの長手方向の剛性が不十分となったり、所望の耐折れじわ性、クッション率、光学濃度が得られない場合がある。分岐指数gは、より好ましくは0.9以下である。
【0038】
上記のHMS−PPの溶融張力(MS)は3〜100cNの範囲にあることが好ましい。MSが上記範囲未満であるとフィルムとしたときの長手方向の剛性が不十分となる場合がある。MSが大きいHMS−PPを用いるほど長手方向のヤング率は高くなる傾向にあるが、MSが上記範囲を超えると製膜性が悪化する場合がある。MSは、より好ましくは4〜80cN、さらに好ましくは5〜40cN、さらにより好ましくは5〜20cNである。
【0039】
上記のHMS−PPの混合量は、特に制限されないが、1〜60重量%でることが好ましく、比較的少量混合でもある程度の製膜性向上効果がみられるのが特徴である。混合量が上記範囲未満では製膜性向上効果が小さくなる場合があり、上記範囲を超えると、縦延伸性が悪化したり、フィルムの耐衝撃性などが悪化する場合がある。HMS−PPの混合量は、より好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは3〜40重量%である。
【0040】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンのメルトフローレイト(MFR)は製膜性の観点から1〜30g/10分の範囲にあることが好ましい。MFRが上記範囲未満であると、溶融押出時に濾圧が上昇したり、押出原料の置換に長時間を要する、均一なボイドが形成されなくなる、などの問題点が生じる場合がある。MFRが上記範囲を超えると、製膜されたフィルムの厚み斑が大きくなったり、均一なボイドが形成されなくなる、などの問題点が生じる場合がある。MFRは、より好ましくは1〜20g/10分である。
【0041】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンのメソペンタッド分率(mmmm)は85〜99.5%であることが好ましく、94〜99.5%であることがより好ましい。ここで、mmmmとは、ポリプロピレンにおけるアイソタクチックに立体構造を直接反映する指標である。mmmmを上記範囲とすることで、寸法安定性に優れ、耐熱性、剛性、防湿性、耐薬品性などが著しく向上したフィルムを安定製造することができるので、印刷、コーティング、蒸着、製袋、ラミネート、離型などのフィルム加工工程において、高い二次加工性を有するフィルムを提供することができる。mmmmが上記範囲未満であると、フィルムとしたときの腰が低下し、熱収縮率が大きくなったり、所望の耐折れじわ性、クッション率が得られなくなる場合がある。また、mmmmが上記範囲を超えると製膜性が悪化する場合がある。mmmmは、さらに好ましくは88〜99%、最も好ましくは90〜98.5%である。
【0042】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンのアイソタクチックインデックス(II)は、90〜99.8%の範囲にあることが好ましい。IIが上記範囲未満であると、フィルムとしたときの腰が低下し、熱収縮率が大きくなったり、所望の耐折れじわ性、クッション率が得られなくなる場合がある。IIが上記範囲を超えると製膜性が悪化する場合がある。IIは、より好ましくは92〜99.5%である。
【0043】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンは、経済性等の観点から、本発明の特性を損なわない範囲で、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する際に生じた屑フィルムや、他のフィルムを製造する際に生じた屑フィルム、その他の樹脂をブレンド使用しても構わない。この場合、ブレンド後のポリプロピレンが上記式(1)を満たすことが長手方向の剛性、耐折れじわ性、クッション率などの向上の観点から必要である。
【0044】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、上記式(1)を満たす範囲でプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされていてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテンー1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。特に、エチレンを共重合させるとA層のボイドの均一性が向上して好ましい場合がある。
【0045】
ここで、上記したMS、分岐指数g、MFR、mmmm、IIなどのポリプロピレンの特性値は、製膜前の原料チップを用いて判定することが望ましいが、製膜後のフィルムについても、該フィルムを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間程度抽出し、不純物・添加物を除去後、130℃で2時間以上真空乾燥したものをサンプルとして用い、判定することもでき、この際B層を削り取るか剥ぎ取ってA層だけについて測定することが好ましい。
【0046】
次に、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層は、空洞を含有する。ここで、空洞とは、フィルムに内包される空気の占める空間をいい、フィルムをミクロトームで切断し、断面を形成させ、該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて500〜10,000倍に拡大観察して断面写真を採取することにより、その存在が確認されるものをいう。A層に空洞を含有することによりフィルムに高い隠蔽性を付与することができ、空洞の構造を例えば下記に示すような手法を用いて制御することで優れた特性を有する白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムとすることができる。
【0047】
A層に含有される空洞は、微細な空洞であることが好ましい。フィルムの内部に微細な空洞を含有させることにより、例えば本発明のフィルムを感熱転写記録用の受容シートに用いた場合、感熱転写記録時にサーマルヘッドの加熱に対する断熱効果が得られ、印字部分に効率よく伝熱することが可能となる。具体的には、本発明における各々の空洞の断面積は、0.01〜60μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜55μm、さらに好ましくは0.5〜50μmである。また、各々の空洞の断面積の平均値は、1〜10μmであることが、上記断熱効果の観点から好ましく、各々が均一であることが好ましい。空洞の断面積の平均値は、好ましくは2〜8μmである。
【0048】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層が含有する空洞は、空洞開始剤を内包することが好ましい。すなわち、該空洞開始剤を溶融押出の際にポリプロピレン中に微分散させ、二軸延伸でポリプロピレンと該空洞開始剤間で界面剥離させて空洞を形成させることが好ましい。したがって、該空洞開始剤としてはポリプロピレンと親和性の低いものが好ましく、本発明では無機粒子および/またはポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
ここで、無機粒子としては、特に限定されないが、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどを例示できる。本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いる空洞開始剤としては、炭酸カルシウムおよび/または二酸化チタンを用いることが特に好ましい。
【0050】
該無機粒子の添加量は、特に制限は設けないが、製膜性、耐折れじわ性向上などの観点から1〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。
【0051】
また、空洞開始剤として用いる該無機粒子の粒径は、特に制限は設けないが、空洞形成性の観点から0.2〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることがより好ましい。
【0052】
また、ポリプロピレンに非相溶性の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリスチレン、飽和ポリエステル、ポリメチルペンテン、液晶樹脂(LCP)などを例示することができる。本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いる空洞開始剤としては、取り扱い性、製造コスト(原料価格)、ポリプロピレンへの分散性、空洞形成性などの観点からポリカーボネート、飽和ポリエステルを用いることが特に好ましい。
【0053】
上記ポリカーボネートとは、芳香族ジヒドロキシ化合物、またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンと反応させることによって製造される重合体であって、芳香族ジヒドロキシ化合物、またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応しても製造することができる。さらに、必要により分岐剤として三官能化合物、分子量調節剤も反応に供することができる。このポリカーボネートは、直鎖状または分岐鎖状の熱可塑性芳香族ポリカーボネートである。
【0054】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと略称することがある)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−イソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロへキサンなどを例示することができ、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0055】
また、分岐したポリカーボネートを得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物および3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール[=イサチン(ビスフェノールA)]、5−クロロイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロモイサチンなどを前記ジヒドロキシ化合物の一部、例えば、0.1〜2モル%をポリヒドロキシ化合物で置換する。
【0056】
さらに、分子量を調節するのに適した一価芳香族ヒドロキシ化合物は、m−およびp−メチルフェノール、m−およびp−プロピルフェノール、p−ブロモフェノール、p−第3級−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノールなどである。
【0057】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層の空洞開始剤として用いるポリカーボネートには、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物、特に好ましくはビスフェノールAを主原料に用いることが好ましい。また、2種以上のジヒドロキシ化合物を併用して得られるポリカーボネート共重合体、3価のフェノール系化合物を少量併用して得られる分岐ポリカーボネートも好ましい。他の樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンなどを共重合したものでもよい。
【0058】
該ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、30000以下、好ましくは20000以下であることが好ましい。また、MFR(300℃、1.2kg)は好ましくは10g/10分以上、より好ましくは20g/10分以上である。上記範囲を満すポリカーボネートを適宜選定することにより、溶融押出時のポリプロピレンへの均一分散性が良好となり、空洞も均一形成できるので好ましい。
【0059】
また、該ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましい。Tgが上記範囲未満であると、二軸延伸で空洞を形成する際に該ポリカーボネートがつぶれてしまう場合がある。Tgは、より好ましくは120℃以上である。また、ポリプロピレンに非相溶性の熱可塑性樹脂として、他の非晶性樹脂を用いる場合も同様に、該樹脂のTgは上記範囲を満たすことが好ましい。
【0060】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層の空洞開始剤として好ましく用いられる飽和ポリエステルは、エステル結合を有する重合体であって、例えばジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる縮合重合体またはビスフェノールAとテレ/イソ混合フタル酸クロリドとからなる重合体である。ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを例示することができる。一方、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、などの脂肪族グリコール、シクロへキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール、ジエチレングリコールなどを例示することができる。また、ジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上併用してもよい。また、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸を一部に用いることができる。特に、好ましい飽和ポリエステルとしては、テレフタル酸とブタンジオールとからなるポリエステル、テレフタル酸、イソフタル酸とブタンジオール、ビスフェノールAよりなるポリエステルを例示できるが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0061】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層の空洞開始剤として好ましく用いられる、ポリプロピレンに非相溶性の熱可塑性樹脂のA層への添加量は、5〜30重量%であることが好ましい。添加量が上記範囲未満であると、空洞形成が不十分となり、比重、クッション率が適度な範囲とならない場合がある。添加量が上記範囲を超えると、安定な溶融押出が困難になったり、二軸延伸後に過度の空洞が生成して製膜性が悪化する場合がある。添加量は、より好ましくは8〜20重量%である。
【0062】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層のポリプロピレンは結晶形態がβ晶であるものを含むことが好ましく、β晶比率が20%以上であることがより好ましい。A層のβ晶比率が上記範囲未満であると、A層中の空洞形成が不十分であり、フィルムの厚み方向に均一な気泡が得られ難いことがある。A層のβ晶比率は、さらに好ましくは25%以上である。なお、本発明ではβ晶比率は後記するように示差走査熱量計(DSC)により、製膜前の樹脂チップもしくは製膜後のフィルムいずれかについて測定すればよい。なお、製膜後のフィルムについてA層のβ晶比率を測定する場合、まずフィルム全体のβ晶比率(rtotalと記す)を測定し、次いで該フィルムからB層を剥離して(削り取って)B層のβ晶比率(rと記す)を測定し、別途SEMによる断面観察から得たA層、B層の厚み(それぞれ、t、tと記す)とから、下記式にしたがってA層のβ晶比率(r)を逆算すればよい。
【0063】
=(1/t){(t+t)rtotal−t
A層のβ晶比率を上記範囲内にする方法としては、A層に用いるポリプロピレンにβ晶核剤を添加するのが好ましく、添加量はβ晶核剤の効果により適宜調整すればよいが、例えば0.001重量%以上であることが好ましい。β晶核剤の添加量が上記範囲未満であると、β晶比率を20%以上とすることが難しい場合がある。β晶核剤の添加量には、本発明の効果を奏する限り特に上限を設けないが、例えば、β晶生成の効果が平衡となる傾向にあるので、0.5重量%以下が好ましい。β晶核剤の添加量は、より好ましくは0.005重量%以上である。
【0064】
本発明のA層に好ましく用いられるβ晶核剤としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系、2塩基酸脂肪族系、元素周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物、アニリン系誘導体、アミド系化合物などが挙げられ、これらの少なくとも1種以上の混合物であることがより好ましい。また、β晶核剤添加ポリプロピレンとして、SUNOCO社製“Bepol”が挙げられる。
【0065】
次に、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層には、耐折れじわ性向上、クッション率向上、強力化、防湿性向上、製膜性向上などの観点から、延伸助剤が1種以上混合されることが好ましい。ここでいう延伸助剤とは、未添加の場合に比較して、安定でより高倍率の延伸を可能にする添加剤をいう。かかる延伸助剤が混合されないと、HMS−PPによる配向結晶の幅方向への再配列抑制効果が十分に発揮できず、製膜性が劣る場合がある。
【0066】
上記の延伸助剤は、ポリプロピレンに対する相溶性が高い樹脂であることが好ましく、また、ガラス転移温度(以下、Tgと記すことがある)は、60℃以上であることが好ましい。Tgが60℃以上であれば、フィルムの耐折れじわ性、クッション率、剛性、防湿性の向上効果が十分に得られるので好ましい。また、Tgの上限は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、120℃以下であると、ポリプロピレンとの相溶性、フィルムの耐折れじわ性、クッション率、剛性、延伸性、防湿性などが優れたものが得られるので好ましい。
【0067】
上記の延伸助剤としては、極性基を実質的に含まない石油樹脂および/または極性基を実質的に含まないテルペン樹脂の1種以上が、安定製膜、高倍率延伸、縦強力化、耐折れじわ性向上、クッション率向上、ガスバリア性向上などの観点から好ましく用いられる。
【0068】
ここで、極性基を実質的に含まない石油樹脂とは、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホン基またはそれらの変成体などからなる極性基を有さない石油樹脂であり、具体的には石油系不飽和炭化水素を原料とするシクロペンタジエン系、あるいは高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂である。
【0069】
さらに、かかる極性基を実質的に含まない石油樹脂のTgは、60℃以上であることが好ましい。Tgが上記範囲未満であると、耐折れじわ性、剛性などの向上効果が小さくなる場合がある。Tgの上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定はされないが、ポリプロピレンとの相溶性、フィルムの耐折れじわ性、クッション率、剛性、延伸性、防湿性などの観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0070】
また、かかる石油樹脂に水素を添加し、その水素添加率を90%以上、好ましくは99%以上とした水素添加(以下、水添と略すことがある)石油樹脂は、特に好ましく用いられる。代表的な水添石油樹脂としては、例えばTgが70℃以上で水添率99%以上のポリジシクロペンタジエン等の脂環族石油樹脂を挙げることができる。
【0071】
また、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂とは、水酸基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホン基またはそれらの変成体などからなる極性基を有さないテルペン樹脂、すなわち(C5H8)nの組成の炭化水素およびこれから導かれる変性化合物である。ここで、nは2〜20程度の自然数である。
【0072】
テルペン樹脂のことをテルペノイドと呼ぶこともあり、代表的な化合物としては、ピネン、ジペンテン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テレピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ビサボレン、ジンギペレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレン等があり、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフイルムの場合、水素を添加し、その水素添加率を90%以上とするのが好ましく、特に99%以上とするのが好ましい。なかでも、水添β−ピネン、水添β−ジペンテンなどが特に好ましく用いられる。
【0073】
かかる極性基を実質的に含まないテルペン樹脂のTgは、60℃以下であることが好ましい。Tgが上記範囲未満であると、耐折れじわ性、剛性の向上効果が小さくなる場合がある。Tgの上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定はされないが、ポリプロピレンとの相溶性、フィルムの耐折れじわ性、クッション率、剛性、延伸性、防湿性などの観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0074】
該石油樹脂またはテルペン樹脂の臭素価としては、10以下が好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは1以下のものがよい。
【0075】
上記延伸助剤の添加量は、その可塑化効果が発揮される量でよいが、特に前記石油樹脂およびテルペン樹脂の添加量を合わせて0.1〜30重量%であることが好ましい。該樹脂の添加量が上記範囲未満では延伸性、長手方向の剛性の向上効果が小さくなったり、所望の耐折れじわ性、クッション率が得られない場合がある。また、上記範囲を越えると、熱寸法安定性が悪化したり、フィルム表層に該添加剤がブリードアウトして滑り性が悪化したり、フィルム同士がブロッキングする場合がある。延伸助剤の添加量は合わせて、より好ましくは1〜20重量%の範囲であり、さらに好ましくは2〜15重量%の範囲である。
【0076】
また、延伸助剤として極性基を含有する石油樹脂および/またはテルペン樹脂を使用した場合には、該樹脂が帯電防止剤や滑剤のブリードアウト性を悪化させる可能性がある。
【0077】
かかる延伸助剤の具体例としては、例えばトーネックス(株)社製“エスコレッツ”(タイプ名:E5300シリーズなど)、ヤスハラケミカル(株)社製“クリアロン”(タイプ名:P−125など)、荒川化学工業(株)社製“アルコン”(タイプ名:P−125など)などが挙げられる。
【0078】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンには、蒸着フィルムとしてガスバリア性を付与する場合を除いては、フィルムの帯電による静電気障害防止のため帯電防止剤が好ましく添加される。本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンに含有される帯電防止剤は、特に限定されないが、例えば、ベタイン誘導体のエチレンオキサイド付加物、第4級アミン系化合物、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリドなど、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
【0079】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンには、蒸着フィルムとしてガスバリア性を付与する場合を除いては、滑剤を添加することが好ましく、上記耐電防止剤と併用することがより好ましい。これは、JIS用語で表現される熱可塑性樹脂の加熱成型時の流動性、離型性をよくするために添加されるもので、加工機械とフィルム表面、またはフィルム同士の間の摩擦力を調節するために添加される。
【0080】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンに添加される滑剤は、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸アミド、エルシン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどのアミド系化合物など、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層に用いるポリプロピレンに添加される帯電防止剤の添加量は、用いるA層樹脂100重量部に対して、0.3重量部以上添加されていることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.5重量部の範囲である。また帯電防止剤と滑剤の合計添加量は0.5〜2.0重量部が帯電防止性と滑り性の点でより好ましい。
【0082】
次に本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層の少なくとも片面には、ポリオレフィン系樹脂からなるB層が積層される。B層を積層しない、すなわちA層のみの単膜の場合では、製膜の際にA層表層が剥離して工程中のロールに付着して工程汚れを起こしたり、破れが多発して製膜性が悪化する場合がある。また、表面の凹凸が大きくなる場合があり、例えば本発明のフィルムのガスバリア性を高めるために蒸着フィルムとした場合には、蒸着膜にピンホールが生成してガスバリア性が悪化する場合があり、また本発明のフィルムを感熱転写記録体の受容シートに用いた場合には、サーマルヘッドとの密着性が低下して感熱転写記録用の受容シート基材として感度が低下する場合がある。
【0083】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層に用いるポリオレフィン系樹脂とは、エチレンもしくはα−オレフィンの単独重合体、またはエチレンもしくはα−オレフィンのうち少なくとも2種以上の単量体成分による共重合体などが挙げられ、これらのうち2種以上を混合したり、マレイン酸や無水マレイン酸などの極性基を有する化合物をグラフト重合したものでもよい。本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層には、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン3元共重合体、これらにマレイン酸や無水マレイン酸をグラフト重合した変性ポリオレフィン共重合体、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂を添加混合してもよく、適宜最適な樹脂を選定すればよい。本発明では、エチレン・プロピレンランダム共重合体を用いることが特に好ましく、A層およびB層(空洞を形成させる場合)の空洞の均一性が向上する場合がある。
【0084】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層に用いるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は1〜20g/10分(230℃、2.16kg)であることが、A層との共押出成形性および空洞形成性の点で好ましい。
【0085】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層は無核の空洞を有することが好ましい。ここで、無核の空洞とは、空洞内に空洞開始剤となる核を有さないものをいう。具体的には、フィルムの断面(厚み方向)を走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)などによって観察した場合に、空洞部分の断面を形成する境界線の内側に、空洞形成の開始剤となる無機粒子やポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂が観察されないものをいう。B層が空洞を有さなかったり、空洞が主に核を有すると、例えば本発明のフィルムを感熱転写記録用の受容シートに用いた場合、サーマルヘッドを通過する際に密着性が悪化したり、熱を放散するために転写性が悪化するために、受容シートの感度が悪化する場合がある。B層が有する無核の空洞の面積割合は、感度向上の観点からB層の空洞面積全体の50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。
【0086】
ここで、空洞の断面積とは、一定範囲のフィルムの断面(厚み方向)を走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)などによって観察したとき、空洞部分の断面を形成する境界線に囲まれる面積の総和をいう。
【0087】
B層に無核の空洞を形成するためには、B層がβ晶比率が20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上のポリプロピレン系樹脂を含有することが好ましい。B層に含有されるポリプロピレンのβ晶比率が上記範囲未満であると、二軸延伸工程内で空洞が消失し、B層の無核の空洞の生成率が低くなる場合がある。
【0088】
B層に含有されるβ晶比率が20%以上のポリプロピレン系樹脂の含有量は、70重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。該ポリプロピレン系樹脂の含有量が70重量%未満では、無核の空洞の生成率が低くなる場合がある。
【0089】
B層に含有されるポリプロピレン系樹脂のβ晶比率を20%以上にするには、該ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤を添加するのが好ましく、添加量はβ晶核剤の効果により適宜調整すればよいが、例えば0.001重量%以上であることが好ましい。β晶核剤が上記範囲未満であると、β晶比率を20%以上とすることが難しい場合がある。β晶核剤の添加量は特に上限は設けないが、例えばβ晶生成の効果が平衡となる傾向にあるので、0.5重量%以下であることが好ましい。
【0090】
本発明のB層に好ましく用いられるβ晶核剤としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系、2塩基酸脂肪族系、元素周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物、アニリン系誘導体、アミド系化合物などが挙げられ、これらの少なくとも1種以上の混合物であることがより好ましい。また、β晶核剤添加ポリプロピレンとして、SUNOCO社製“Bepol”が挙げられる。
【0091】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層の片面の積層厚みは、積層フィルム全体の厚みの1/3以下であることが好ましい。B層の厚みが上記範囲を越えると、感度、光沢度が悪化する場合がある。また、B層の総積層厚みは1μm以上であることが耐折れじわ性の観点から好ましい。さらに、B層はA層の両面に積層されていることがより好ましい。B層がA層の両面に積層されていると、A層の空洞開始剤が二軸延伸工程中で脱落して工程を汚すことを防止したり、フィルムの滑り性が良好となるので好ましい。、また、さらにB層の反対の面に第3の層を積層することもできる。
【0092】
また、B層には易滑剤として上記した無機粒子、および有機粒子の1種以上を添加することが好ましい。ただし、この際の添加量は5重量%以下であることが好ましい。添加量が5重量%を越えると、易滑剤が空洞の核となる場合があり、二軸延伸工程中などで樹脂や粒子が脱落して工程を汚す場合がある。添加量は、好ましくは3重量%以下である。また、無機粒子、有機粒子の代わりに上記したポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂を添加してもよい。
【0093】
上記有機粒子としては、高分子化合物を架橋剤を用いて架橋した粒子が挙げられる。具体的には、例えばポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物などである。
【0094】
また、上記無機粒子および架橋有機粒子の平均粒径は、0.5〜5μmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲未満であると、易滑効果が低くなる場合があり、上記範囲を越えると粒子が脱落したり、フィルム同士を擦った時にフィルム表面に傷がつきやすくなる場合がある。
【0095】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのA層およびB層には、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、充填剤、白色剤などを目的に応じて適宜含有させてもよい。ただし、ガスバリア性を高めるために本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとする場合には極力添加剤は使用しないことが好ましい。
【0096】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、空洞を含有するA層の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂からなるB層が積層されてなる2層以上の積層構成からなる。B層の空洞面積は、A層の空洞面積の1/10以下であることが好ましい。B層の空洞面積とA層の空洞面積の関係が上記範囲を満たさないと、フィルムの耐摩耗性が悪化し、劈開する場合がある。
【0097】
次に、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層上、もしくはA層上(B層がA層の片面に積層されている場合そのもう一方の面)には、添加剤飛散・ブリードアウト抑制、コーティング膜・蒸着膜易接着、易印刷性付与、ヒートシール性付与、光沢付与、滑り性付与、離型性付与、イージーピール性付与、表面硬度向上、平滑性付与、表面粗度向上、ガスバリア性向上、手切れ性付与など、種々の目的に応じて、適宜公知のポリオレフィン系樹脂およびその他の樹脂を積層することが好ましい。ここでいうポリオレフィン系樹脂とは、上記で示したポリオレフィン系樹脂の定義に準ずる。
【0098】
この際の積層厚みは、0.25μm以上であり、かつフィルムの全厚みの1/2以下であることが好ましい。積層厚みが0.25μm未満であると、膜切れなどにより均一な積層が困難となり、全厚みの1/2を越えると、機械特性に及ぼす表層の影響が大きくなり、フィルムの長手方向の剛性が低下し、抗張力性もまた悪化する。
【0099】
また、この際積層されるポリオレフィン系樹脂およびその他の樹脂の積層方法は、共押出、インライン・オフライン押出ラミネート、インライン・オフラインコーティングなどが挙げられるが、これらのうちいずれかに限定されるわけではなく、随時最良の方法を選択すればよい。
【0100】
特に、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのガスバリア性能をさらに向上させるために、エチレン・ビニルアルコール樹脂(EVOH)を積層することは好ましい。この際、フィルム構成は、B層/A層/EVOH層であってもよいし、B層/A層/B層/EVOH層でもよい。本発明では、該フィルム構成のB層面、EVOH面に金属蒸着層を付設することにより、さらによりガスバリア性能を向上させることができる。また、B層/A層(B層の反対面に適宜第3層を積層してもよい)、もしくはB層/A層/B層の構成の本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属蒸着層を付設し、該金属蒸着層上にEVOH層を積層してもよい。さらに、上記した全ての場合において、被積層面とEVOH層の間に両者の接着性を向上させるために、もしくはその他の目的で中間層を設けることも適宜好ましく行われる。
【0101】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、B層上、またはA層上(A層の片面にB層を積層した場合)、もしくはその他の層上(左記においてB層上もしくはA層上に上記に基づいてさらに他の樹脂層を設けた場合)にコロナ放電処理を施し、フィルム表面の濡れ張力を35mN/m以上に上げることは、印刷性、接着性、帯電防止性および滑剤のブリードアウト性を向上させるため好ましく採用することができる。この際、コロナ放電処理時の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、あるいは窒素/炭酸ガスの混合系などが好ましく、特に経済性の観点から空気中でコロナ放電処理をすることが好ましい。また、フレーム処理、プラズマ処理なども表面濡れ張力向上の観点から好ましい。濡れ張力の上限は特に設けないが、過度な表面処理は表面を劣化させる場合があり、60mN/m以下であることが好ましい。
【0102】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの比重は、0.5〜0.85である。比重が上記範囲未満であると、二次加工性が悪化したり、耐折れじわ性、クッション率などが悪化して、実用に耐えない場合がある。また、比重が上記範囲を越えると、所望の隠蔽性、耐折れじわ性、クッション率が得られなかったり、本発明のフィルムを例えば感熱転写記録用の受容シートに用いる際には断熱性の低下により感度が低下する、など白色フィルムとしての要求特性を満たさない場合がある。比重は、より好ましくは0.6〜0.8である。
【0103】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの光学濃度(OD)は、0.25以上であることが好ましい。ODが上記範囲未満であると、本発明のフィルムの特徴である優れた隠蔽性が低下し、本発明のフィルムを例えば感熱転写記録用の受容シートに用いる際には、印字画像が暗い印象となる場合がある。本発明では、ODには特に上限を設けないが、フィルム厚みによって値は変化するものの概ね1以下であることが耐折れじわ性の観点から好ましい。ODは、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.35以上、最も好ましくは0.4以上である。
【0104】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのクッション率は、10%以上であることが好ましい。クッション率が上記範囲未満であると、本発明のフィルムを例えば感熱転写記録用の受容シートに用いる際には、サーマルヘッドとの密着性が低下して熱の放熱が起こり、転写シートからの転写性が低下(感度が低下)する場合がある。本発明では、クッション率には特に上限を設けないが、耐折れじわ性が悪化しない程度であることが好ましく、例えば30%以下であることが好ましい。クッション率は、より好ましくは12%以上である。
【0105】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのβ晶比率は、10%以上であることが好ましい。フィルムのβ晶比率が上記範囲未満であると、フィルム内部の空洞形状が不均一となり、耐折れじわ性、長手方向の剛性、光学濃度などの品質がばらつく場合がある。フィルムのβ晶比率は、より好ましくは20%以上である。
【0106】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの25℃での長手方向のヤング率は、1.5GPa以上であることが好ましい。25℃での長手方向のヤング率が上記範囲を満たせば、加工張力に対する抗張力性に優れたフィルムとなり、コーティング、ラミネート、蒸着、印刷、製袋、離型などのフィルム加工工程で、膜割れ(クラック)やしわ入り、フィルムの伸び、印刷ピッチずれなどのベースフィルム起因のトラブルを防止することができる。また、本発明のフィルムのガスバリア性を高めるために蒸着フィルムとした場合、上記したような二次加工後も金属蒸着層に膜割れ(クラック)の発生を抑制でき、その結果二次加工後のガスバリア性の悪化を抑制することができる。さらに、従来品と同等の加工性を保持したままフィルムを薄くできるため、軽量化や廃棄物削減の効果がある。25℃での長手方向のヤング率が上記範囲未満であると、長手方向の剛性が不十分で、フィルム加工時の抗張力性に劣る場合がある。25℃での長手方向のヤング率は、より好ましくは1.7GPa以上、さらに好ましくは2GPa以上、最も好ましくは2.2GPa以上である。また、長手方向のヤング率は80℃においては0.1GPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2GPa以上である。また、長手方向のヤング率は、延伸助剤を添加し(上記)、長手方向の延伸倍率を6倍以上とする(下記)ことにより、さらに高めることができる。
【0107】
さらに、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、A層(およびB層)に空洞を内包するため、A層が空洞を内包しない場合のヤング率に換算したYo値を基準とすることができる。
【0108】
Yo=Y×(0.91/d)
ただし、Yは本発明のフィルムの25℃での長手方向のヤング率、dは本発明のフィルムの比重、0.91は空洞のない二軸延伸ポリプロピレンフィルムの比重である。また、上記式では粗い近似が行われているが、本発明では許容される。本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのYoは2GPa以上であることが好ましい。Yoが上記範囲を満たせば、加工張力に対する抗張力性に優れたフィルムとなり、コーティング、ラミネート、蒸着、印刷、製袋、離型などのフィルム加工工程で、膜割れ(クラック)やしわ入り、フィルムの伸び、印刷ピッチずれなどのベースフィルム起因のトラブルを防止することができる。また、本発明のフィルムをガスバリア性を高めるために蒸着フィルムとした場合、上記したような二次加工後も金属蒸着層に膜割れ(クラック)の発生を抑制でき、その結果二次加工後のガスバリア性の悪化を抑制することができる。さらに、従来品と同等の加工性を保持したままフィルムを薄くできるため、軽量化や廃棄物削減の効果がある。Yoが上記範囲未満であると、長手方向の剛性が不十分で、フィルム加工時の抗張力性に劣る場合がある。Yoは、より好ましくは2.2GPa以上、さらに好ましくは2.5GPa以上、最も好ましくは2.7GPa以上である。また、Yo値は、延伸助剤を添加し、長手方向の延伸倍率を6倍以上とすることにより、さらに高めることができる。
【0109】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの防湿性は、含有する空洞の構造、積層構成にもよるが、水蒸気透過率にして5g/m/d/0.1mm以下であることが好ましい。水蒸気透過率が上記範囲を超えると、本発明のフィルムを例えば内容物を外気と遮断する包装体に用いた場合に防湿性に劣る場合がある。水蒸気透過率は、より好ましくは4g/m/d/0.1mm以下である。
【0110】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層の表面光沢度は、50%以上であることが好ましい。B層の表面光沢度が上記範囲未満であると、白色フィルムとしての美観に劣る場合がある。B層の表面光沢度は、より好ましくは70%以上である。
【0111】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを感熱転写記録用の受容シートに用いる場合、単独で用いても、他の素材と貼合わせて用いてもよい。該素材としては、例えば普通紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、ラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、グラシン紙、ラミネート紙などの紙、合成紙、不織布、あるいは他種フィルムなどが挙げられる。ただし、本発明のフィルムを他の素材と貼合わせる場合、受容層を設ける面と反対側の面に貼合わせることが好ましい。
【0112】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムのB層が受容層塗布面となるように上記の素材と貼合わせ、B層に受容層塗布後の表面光沢度は、60%以上であることが、転写された印字や画像が鮮明となり好ましく、80%以上がより好ましい。
【0113】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みは、感度と耐折れじわ性両立の観点から、10〜100μmであることが好ましい。より好ましくは20〜80μmである。また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを他の素材と貼合わせる場合には、貼合わせ後の厚みは取扱性の観点から80μm以下であることが好ましい。より好ましくは50μm以下である。
【0114】
次に、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、微細で均一な空洞形成により高い光学濃度、クッション率、耐折れじわ性、低比重を付与し、かつ長手方向の剛性を高めるために二軸延伸される。本発明のフィルムが二軸延伸されないと、長手方向の剛性が不十分で二次加工における抗張力性に劣り、また均一で微細な空洞が十分に得られず、高い光学濃度、クッション率、耐折れじわ性、低比重に劣る場合がある。また、二軸延伸は逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また二軸延伸後に縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。本発明のフィルムの製造には、汎用の縦−横逐次二軸延伸法を用いることが、設備費削減などの観点から好ましい。
【0115】
以下に本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法の一例を例示するが、本発明がこの方法に限定されるものではない。
【0116】
押出機(a)と押出機(b)を有する複合製膜装置において、空洞を含有するA層樹脂として、例えば上記(1)式を満たすポリプロピレン(適宜上記(1)式を満たす範囲内で、β晶比率が80%以上のポリプロピレンを添加混合してもよい)に、二軸延伸で空洞を形成させるために空洞開始剤として無機粒子および/またはポリプロピレンに対して非相溶性性の熱可塑性樹脂を添加混合し(予めポリプロピレンのマスターバッチとしたものを使用してもよい)、β晶核剤、延伸助剤として極性基を実質的に含まない石油樹脂および/または極性基を実質的に含まないテルペン樹脂などを必要に応じて添加混合した樹脂組成を用いる。また、B層樹脂としては、上記したなかから適宜選定した公知のポリオレフィン系樹脂を用いる。B層に無核の気泡を生成させるためには、B層樹脂にβ晶比率が20%以上の結晶性ポリプロピレンを70重量%以上を添加混合すればよい。また、B層原料には必要に応じて、易滑剤としてA層に添加する無機粒子、有機粒子、もしくはポリプロピレンに対して非相溶性性の熱可塑性樹脂のなかから適宜選定される1種以上を5重量%以下に添加せしめてもよい。
【0117】
これらのA層、B層樹脂をそれぞれ240〜300℃に加熱された押出機(a)、(b)に供給し、溶融混練して濾過フィルターを経た後、Tダイ複合口金内に導入する。次いで、押出機(b)のB層ポリマーが押出機(a)のA層ポリマーの表層(片面)あるいは両表層(両面)にくるように積層してスリット状口金から押し出し、金属ドラムに巻き付けてシート状に冷却固化せしめ未延伸フィルムとする。この際、二軸延伸後に微細で均一な空洞を形成させるためには押出時に上記空洞開始剤を微分散させるために、適宜押出条件を調整して溶融ポリマーに剪断力を十分かけることが重要である。また、必要に応じてB層を片面積層とし、もう一方の面に押出機(c)を用いて、例えば、ヒートシール層として、C層を積層し、B層/A層/C層の異種3層構成としてもよい。さらに、4層以上の構成を必要に応じてとることができる。この場合、ドラムの温度は20〜140℃とし、フィルムを適度に結晶化させてβ晶比率を高めることが、縦強力化、微細で均一な空洞形成の観点から好ましい。また、冷却ドラムへの密着方法としては静電印可法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る手法としては、厚み制御性が良好なエアーナイフ法が好ましい。
【0118】
さらに、いずれかの層にβ晶核剤を添加した場合、β晶核剤の効果を高め、各層のβ晶比率を高めるには、溶融押出温度240℃〜300℃で押出してシート化後、縦延伸の予熱までの間に110℃〜140℃の温度で1秒以上保持することが好ましい。
【0119】
次に、得られた未延伸フィルムを、従来一般的に行われる汎用の縦−横逐次二軸延伸法を用いて二軸延伸する。未延伸フィルムを100〜180℃に加熱したロール群またはオーブンに導き、縦延伸時のフィルム温度を100℃〜160℃にして、引き続きそのフィルムを周速差を設けたロール間に通して長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に4.2倍以上に延伸し、30℃〜100℃のロール群で冷却する。この際、縦延伸を2段階以上に分けて延伸する方法を用いることもできる。また、縦延伸後の冷却過程において、フィルムの厚みムラが悪化しない程度に長手方向に弛緩を与えることは、長手方向の寸法安定性向上の観点から好ましい。
【0120】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法において、縦−横逐次二軸延伸法で長手方向の剛性を高めたフィルムとするためには、実効延伸倍率を6倍以上にすることが好ましい。長手方向の実効延伸倍率が上記範囲未満であると、得られるフィルムの長手方向の剛性が不足したり、薄膜化を行った際のフィルムの腰が不十分となる場合がある。本発明の製造方法では、(1)式を満たすポリプロピレンを必須成分とし、上記した延伸助剤を用いることにより6倍以上の高倍率延伸にしても安定な横延伸が可能であり、かつ縦強力化した白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる。より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは8倍以上のものである。
【0121】
続いて、この縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、150〜190℃に加熱した雰囲気中(フィルム温度:150℃〜165℃)で長手方向に垂直な方向(横方向、もしくは幅方向)に5〜12倍に延伸する。この際の温度条件は、安定製膜、厚み斑、長手方向の強力化、微細で均一な空洞形成などの観点から適宜最適な条件を選定すればよい。
【0122】
幅方向の実効延伸倍率は、5〜12倍であることが好ましい。幅方向の実効延伸倍率が上記範囲未満であると、得られるフィルムの長手方向の剛性が不足したり、空洞形成が不十分となる場合がある。幅方向の実効延伸倍率が上記範囲を超えると、フィルムが破れて製膜が不安定になる場合がある。
【0123】
このようにして得られた白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜170℃で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明の白色積層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる。なお、上記熱処理工程中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0124】
このようにして得られた本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面には、蒸着膜易接着、易印刷性付与、受容層塗布または他基材ラミネートのために、空気中または窒素ガス、炭酸ガスの1種以上の雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を35mN/m以上にして巻き取ることもできる。
【0125】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、低比重で、光学濃度が高く、さらに表面平滑性、高光沢度のフィルムであり、このようなフィルムとするためには二軸延伸中に生成した空洞が安定に存在すること、すなわち二軸延伸中に各延伸条件での空洞開始剤の熱変形が小さく、生成した空洞がつぶれないことが重要である。
【0126】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法は、延伸倍率を上記の範囲に設定した場合でも、従来一般的に行われる汎用の縦−横逐次二軸延伸法を用いて安定な製造が可能であるので、既存の縦−横逐次二軸延伸製膜機を用いることができ、大きな設備投資を必要としない利点がある。
【0127】
次に、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとする際の製造方法の一例を例示するが、本発明がこの方法に限定されるものではない。
【0128】
例えば上記した方法で得られた白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの金属蒸着面を、蒸着膜易接着のために、空気中または窒素ガス、炭酸ガスの1種以上の雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を35mN/m以上にして巻き取る。ここで、該金属蒸着用白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを40〜60℃でエージングすることが、フィルムの構造(好ましくは結晶性)が安定化してヤング率が向上し、また金属蒸着層との接着強度も向上して、ガスバリア性能が向上するため好ましい。エージングを行う時間は、12時間以上が金属蒸着層との接着強度向上、耐薬品性向上の効果の点から好ましく、さらに好ましくは24時間以上である。
【0129】
次いで、該金属蒸着用白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属蒸着層を形成する。金属蒸着は、金属の真空蒸着によって行い、蒸発源から金属を蒸着させ、金属蒸着層を形成することが好ましい。金属蒸着の蒸発源としては抵抗加熱方式のボート形式や、輻射あるいは高周波加熱によるルツボ形式や、電子ビーム加熱による方式などがあるが、特に限定されない。また、金属蒸着はB層上に行うことが好ましい。
【0130】
金属蒸着に用いる金属としては、Al,Zn,Mg,Sn,Siなどの金属が好ましいが、Ti,In,Cr,Ni,Cu,Pb,Feなども使用できる。これらの金属はその純度が99%以上、望ましくは99.5%以上の粒状、ロッド状、タブレット状、ワイヤー状あるいはルツボの形状に加工したものが好ましい。
【0131】
また、この蒸着金属の中で、金属蒸着層の耐久性、生産性、コスト面から、アルミニウムの蒸着層を本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に設けることが特に好ましい。このときアルミニウムと同時あるいは逐次に、例えばニッケル、銅、金、銀、クロム、亜鉛などの他の金属成分も蒸着することができる。
【0132】
例えば、真空度10−4Torr以下の高度の真空装置内でフィルムを走行させ、アルミニウム金属を加熱溶融して蒸発させ、フィルム表面に凝集堆積させ、金属蒸着層を付設する。
【0133】
金属蒸着層の厚さは10nm以上であることが高度なガスバリア性能を発現するために好ましい。さらに好ましくは20nm以上である。蒸着層の上限は特に設けないが、経済性、生産性の点から500nm未満がより好ましい。
【0134】
金属蒸着層の光沢度は、600%以上が好ましく、700%以上がさらに好ましい。
【0135】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとする場合、白色フィルムと金属蒸着層との接着強度は、0.3N/cm以上であることが好ましく、0.5N/cm以上であることがより好ましい。金属蒸着層の接着強度が上記範囲未満であると、蒸着フィルムをロール状に長尺に巻き取り、二次加工時に巻き出す際に金属蒸着層が剥ぎ取られ、ガスバリア性能が悪化する場合がある。
【0136】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとする場合、そのガスバリア性能は、水蒸気透過率が5g/m/d以下、好ましくは3g/m/d以下であり、酸素透過率が1000ml/m/d以下、好ましくは500ml/m/d以下であることが食品包装袋として用いた場合に好ましい。
【0137】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、従来の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムに比較して微細で均一な空洞を有することから、低比重で、光学濃度が高く隠蔽性に優れ、クッション率が高いとともに耐折れじわ性に優れる。また、B層に無核の気泡を導入すれば、本発明のフィルムを例えば感熱転写記録用の受容シートに用いた場合、感度が高く、耐折れじわ性に優れた受容シートとして極めて好適に使用できる。用いるポリプロピレンのβ晶比率を制御することで、上記特性をさらに高めることができる。
【0138】
また、本発明のフィルムのA層には特定のMSとMFRの関係を満たすポリプロピレンを用いることにより、二軸延伸工程中に破れなどの工程トラブルを未然に防ぐことができ、製膜がより安定化し、生産コストを著しく低減することができる。
【0139】
さらに、本発明のフィルムのA層に上記ポリプロピレンに加えて、ポリプロピレンに相溶し延伸時に可塑化効果を具備させうる添加剤を混合せしめることにより、より高倍率の縦延伸が可能となり、長手方向の剛性をさらに高めたフィルムを安定に製造することができる。
【0140】
これより、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムのハンドリング性に優れるだけでなく、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋などのフィルム加工時に、加工張力に対する優れた抗張力性を示し、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れなどのトラブルを解消することができる。例えば、本発明のフィルムのガスバリア性をさらに高めるために金属蒸着フィルムとした場合、二次加工後も金属蒸着層に膜割れ(クラック)が発生しにくく、二次加工によるガスバリア性の悪化を未然に抑えることができる。
【0141】
さらに、従来の汎用の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムより薄くしても寸法安定性・防湿性に優れることから、従来より薄くしても熱寸法安定性・防湿性などのその他の特性を損なうことなく、加工特性を保持することができる。かつ、既存の縦−横逐次二軸延伸機を用いることから、大きな設備投資を必要とせず、上記特性を持ったフィルムを低コストで安定製造することができる。
【0142】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、他のフィルムと複合化して構成体に加工して用いるような場合でも、該構成体の二次加工性やガスバリア性能を向上させることができる。また、本発明のフィルム、もしくは本発明のフィルムと複合化する他のフィルムを適宜薄膜化できるため、廃棄物や資源を削減することができる。
【0143】
以上のことから、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、包装用、工業用等に好ましく用いることができる。
[特性値の測定方法]
本発明で用いられている用語および測定方法を以下にまとめて説明する。
(1)溶融張力(MS)
JIS K 7210に従って溶融張力(MS)を測定した。東洋精機製メルトテンションテスターを用いて、ポリプロピレンを230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度15mm/分で吐出し、ストランドとし、このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、MSとした。
(2)メルトフローレート(MFR)
結晶性ポリプロピレンの流れ特性の尺度として、JIS K 6758に示されるポリプロピレン試験方法(230℃、2.16kgf)に従って測定した。また、エチレン系樹脂の流れ特性の尺度として、JIS K 7210の条件4に従って測定する(190℃、2.16kgf)。ポリカーボネートはJIS K 7210の条件99に従って測定する(300℃、1.2kgf)。
(3)フィルムを構成する各層の厚み(μm)
フィルムをミクロトームを用いて切断し、断面を形成させ、該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて500〜10,000倍に拡大観察して断面写真を採取する。該断面写真において、各層の厚み方向の長さを計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚みを求めた。ただし、各層の厚みは、断面採取位置を変えて計5回測定を行い、各々について厚みの平均値として算出した。
(4)β晶比率(%)
各サンプルを示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS K−7122に準拠して窒素雰囲気下で5mgの試料を20℃/分の速度で250℃まで昇温させ、5分間保持した後に20℃/分の冷却速度で20℃まで冷却する。次いで、再度20℃/分の速度で昇温した際に、145℃〜157℃間にピークを有するポリプロピレンのβ晶由来の融解吸熱ピークの熱量(ΔH)と、160℃以上に融解ピークを有する、β晶以外のポリプロピレン由来の融解吸熱ピークの融解熱量(ΔH)から次式で求めた。
【0144】
β晶比率(%)= {ΔH/(ΔH+ΔH)}×100
なお、製膜後のフィルムについてA層とB層のβ晶比率をそれぞれ測定する場合、まずフィルム全体のβ晶比率(rtotalと記す)を測定し、次いで該フィルムからB層を剥離して(もしくは削り取って)B層のβ晶比率(rと記す)を測定し、別途SEMによる断面観察から得たA層、B層の厚み(それぞれ、t、tと記す)とから、下記式にしたがってA層のβ晶比率(r)を逆算すればよい。
【0145】
=(1/t){(t+t)rtotal−t
(5)フィルム厚み(μm)
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B−7509、測定子5mmφ平型)を用いて測定した。
(6)長手方向のヤング率(GPa)
25℃でのヤング率は、(株)オリエンテック社製フィルム強伸度測定装置(AMF/RTA−100)を用いて、65%RHにて測定した。サンプルを測定方向:15cm、測定方向と直角の方向:1cmのサイズに切り出し、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張して、JIS−Z1702に規定された方法に従い測定した。また、80℃などの高温で測定を行う際は、ゴンドー科学(株)社製高低温度恒温層を装着し、上記と同様の条件にて測定した。
(7)表面光沢度(%)
JIS Z8741に基づいて、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計(UGV−5D)を用い、入出角度45°での光沢度として求めた。また、紙とフィルムをラミネートして受容層を塗布した受容シートの光沢度は、受容層を塗布した面について測定し、表面光沢度とした。
(8)固有粘度([η])
135℃のテトラリン中に溶解したポリプロピレンについて、三井東圧化学(株)製のオストワルド粘度計を用いて測定した。
(9)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレンをo−ジクロロベンゼン−D6に溶解させ、JEOL製JNM−GX270装置を用い、共鳴周波数67.93MHzで13C−NMRを測定した。得られたスペクトルの帰属、およびメソペンタッド分率の計算については、T.Hayashiらが行った方法(Polymer、29、138〜143(1988))に基づき、メチル基由来のスペクトルについて、mmmmピークを21.855ppmとして各ピークの帰属を行い、ピーク面積を求めてメチル基由来全ピーク面積に対する比率を百分率で表示した。詳細な測定条件は以下のとおりである。
【0146】
測定濃度:15〜20wt%
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン(90wt%)/ベンゼン−D6(10wt%)
測定温度:120〜130℃
共鳴周波数:67.93MHz
パルス幅:10μ秒(45°パルス)
パルス繰り返し時間:7.091秒
データ点:32K
積算回数:8168
測定モード:ノイズデカップリング
(10)アイソタクチックインデックス(II)
ポリプロピレンを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の添加物を除去する。その後130℃で2時間真空乾燥する。これから重量W(mg)の試料を取り、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取り出し、アセトンで十分洗浄した後、130℃で6時間真空乾燥し、その後常温まで冷却し、重量W’(mg)を測定し、次式で求めた。
【0147】
II=(W’/W)×100(%)
(11)フィルム内部の空洞の有無、および空洞内の空洞開始剤の有無
フィルムをミクロトーム切断し、断面を形成させ、該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて500〜10,000倍に拡大観察して断面写真を採取し、空洞の有無を調べた。また、採取した断面写真において、空洞の断面を形成する境界線をマーキングして、その内側における空洞開始剤の有無を観察することにより、空洞内の空洞開始剤の有無を調べた。
(12)粒子の平均粒径
堀場製作所(株)製の遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA−700を用いて測定した。
(13)ガラス転移温度(Tg)
示差走査型熱量計(DSC)を用いて、JIS K7122に従って測定した。Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型に、サンプルを重量5mgとしてアルミニウムパンに封入して装填し、窒素雰囲気下で20℃/分の速度で昇温し、得られた熱量曲線から同社製熱分析システムSSC5200の内蔵プログラムを用い、ガラス転移の開始点をガラス転移温度(Tg)とした。また、空洞開始剤としてポリプロピレンに対して非相溶性の非晶性熱可塑性樹脂を用いた場合、フィルム中の該非晶性樹脂のTgを測定するには、主原料のPPのTgが少なくとも0℃以下であることから、0℃を越えたガラス転移の開始点をTgとした。この際、シグナルが微弱な場合にはサンプル量を適宜増やせばよい。
(14)臭素価
JIS K 2543(1979)に準じて測定した。試料油100g中の不飽和成分に付加される臭素のg数で表される。
(15)空洞の断面積
フィルムをミクロトーム切断し、断面を形成させ、該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて500〜10,000倍に拡大観察して断面写真を採取する。該断面写真において、空洞の断面を形成する境界線を全てマーキングし、該マーキング部分をハイビジョン画像解析装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理することにより、各々の空洞の断面積を算出した。ただし、空洞の断面積の平均値は、断面採取位置を変えて計5回測定を行い、得られた各々の空洞の断面積を平均して算出した。
(16)濡れ張力(mN/m)
ホルムアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液を用いて、JIS K6768に規定された測定方法に基づいて測定した。
(17)比重
フィルムを50mm×60mmの大きさにカットして得たサンプルを、高精度電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用い、JIS K7112のA法(水中置換法)に準じて測定した。なお、測定は温度23℃、相対湿度65%の条件下にて行なった。
(18)光学濃度(OD)
Macbeth社製光学濃度計(TD−504)を用いて測定した。
(19)クッション率(%)
ダイヤルゲージ(三豊製作所社製)に標準測定子(No.900030)を取り付け、ダイヤルゲージスタンド(No.7001DGS−M)に設置する。ダイヤルゲージ押さえ部分に50gと500gの荷重をかけた時のそれぞれのフィルム厚みをd50g、d500gとして、下記式で求めた。
【0148】
クッション率(%)={(d50g−d500g)/d50g}×100
(20)水蒸気透過率(g/m/d/0.1mm)
MOCON/Modern Controls社製の水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−W3/30を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。
(21)実効延伸倍率
スリット状口金から押し出し、金属ドラムに巻き付けてシート上に冷却固化せしめた未延伸フィルムに長さ1cm四方の升目をそれぞれの辺がフィルムの長手方向、幅方向に平行になるように刻印した後、延伸・巻き取りを行い、得られたフィルムの升目の長さ(cm)を測定し、これを長手方向・横方向の実効延伸倍率とした。
(22)製膜安定性
本発明の白色フィルムを巻取速度100m/分で12時間製膜した際に、下記の基準で判定した。
【0149】
A級:破れが0〜1回発生。
【0150】
B級:破れが2〜4回発生。
【0151】
C級:破れが5〜8回発生。
【0152】
D級:破れが9回以上発生。
とした。工業的に実用に供することができるのは、A級、B級である。
(23)耐折れじわ性
白色フィルムの表面(受容層形成面と反対面)に厚さ65μmの粘着剤付き上質紙(コクヨ(株)ワープロ用ラベルシート、タイ−2110−W)に均一に貼り合わせ、折れじわ評価用のシートを作製した。該シートを長さ200mm、幅15mmに切り出し、一端を固定し、200gの重りをワイヤーにて両サイドに繋げた直径5mmの鉄の円芯を軸にフィルム面を内側にして180度折り返しながら残る一端を200mm/秒で引張し、フィルム面上のしわの発生状態を実体顕微鏡で観察し、以下のように判定した。
【0153】
A級:しわの発生が0〜2個/cm
B級:しわの発生が3〜5個/cm
C級:しわの発生が6〜8個/cm
D級:しわの発生が9個以上/cm
とした。A級、B級が実用に供するものである。
(24)二次加工性
長さ1000mの本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムをアルミニウムの膜厚が50nmになるように真空蒸着機内で金属蒸着を行う。該金属蒸着フィルムの蒸着面に、厚さ20μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートして食品包装用フィルムとした。該フィルムを未延伸ポリプロピレンフィルム層が内層になるようにして、(株)フジキカイ製の縦型ピロー包装機(FUJI FW−77)を用いて、フィルムを筒状に挿入し、製袋した。
【0154】
その際、フィルムにシワや伸びなどが入らず、製袋品の形状がよいものを○とし、フィルムの長手方向のヤング率が低かったり腰が不十分であるためにフィルムが伸びたり、フィルムの滑り性が悪かったり、抗張力性に劣るためにシワが入ったりして製袋品の形状が悪くなったり、該製袋品を光学顕微鏡で観察した際に金属蒸着フィルムの金属蒸着層にクラックが一面にスジ状に発生したを×として評価した。
(25)二次加工後のガスバリア性変化
上記(23)項で、蒸着フィルムの二次加工前後における水蒸気透過率の変化を測定した。下記式で定義する水蒸気透過率、酸素透過率の悪化率がいずれも500%未満のものを○、500%以上悪化したものを×として評価した。本評価では、○のものを合格とした。
【0155】
悪化率(%)=([二次加工後の透過率]−[二次加工前の透過率])/[二次加工前の透過率]×100
(26)感度
本発明の白色フィルムを厚さ150μmの紙に貼合せた後、フィルム表面に以下の受容層形成塗液をマイクログラビアコーターにて塗工量が乾燥時で3g/mとなるように塗布し、感熱転写記録用の受容シートを得た。
[受容層形成塗液]
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン200) 20部
シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、X−22−3000T) 2部
トルエン 39部
メチルエチルケトン 39部
次にカラープリンターとして「Professional Color Point 1835」(セイコー電子工業(株)製)を用い、専用のインキリボンを用いて、該受容シートの受容層形成面にテスト印字を行った。次に、印字したテストパターンを用いて10回同じテストを実施し、下記により判定し、画像再現性について評価した。
【0156】
A級:全て濃度が高く、きれいであり極めて良好。
【0157】
B級:1〜2回、若干濃度が低いか、僅かに「欠け」が見られるものがあるがそれ以外は濃度が高く、きれいであり良好。
【0158】
C級:3〜5回濃度が低いか、「欠け」や「つぶれ」が見られるものがある。
【0159】
D級:6回以上濃度が低いか、「欠け」や「つぶれ」が見られるものがある。とした。A級、B級が実用に供するものである。
【0160】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0161】
実施例1
A層樹脂として、溶融張力(MS)が20cN、メルトフローレート(MFR)が3g/10分の長鎖分岐を有する高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP;アイソタクチックインデックス(II):96.5%、メソペンタッド分率(mmmm):97%)とMSが1.5cN、MFRが2.3g/10分の公知の汎用ポリプロピレン(アイソタクチックインデックス(II):96%、メソペンタッド分率(mmmm):92%)を10:90の割合に混合したポリプロピレン85重量%に、空洞開始剤の無機粒子として平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム、平均粒径0.8μmの二酸化チタンをそれぞれ8重量%、7重量%添加混合し、二軸押出機に供給して260℃でガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥し、チップを得た。該チップを280℃に加熱された押出機(a)に供給し、溶融させてTダイ複合口金内に導入した。
【0162】
一方、B層樹脂として、ホモポリプロピレン(融点:163℃、MFR:4g/10分)99重量%に平均粒径0.8μmの二酸化チタン粒子を1重量%添加した樹脂組成100重量部に、β晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.05重量部添加混合し、二軸押出機に供給して260℃でガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥し、チップを得た。該チップを270℃に加熱された押出機(b)に供給し、A層樹脂と同様に溶融させてTダイ複合口金内に導入した。
【0163】
次いで、口金内で押出機(b)の溶融ポリマーを押出機(a)の溶融ポリマーの両表層に積層して、シート状に共押出成形し、該シートを表面温度40℃に冷却された金属ドラムに巻き付けて密着冷却固化し、未延伸積層(B層/A層/B層)シートを作製した。
【0164】
この未延伸シートを150℃に加熱保持されたオーブンに導いて予熱後、長手方向(縦方向)に5倍延伸して直ちに室温に冷却する。引き続き、この縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導入して、165℃に加熱された雰囲気下で幅方向に9倍延伸し、次いで二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために幅方向に8%の弛緩を与えつつ160℃で熱固定をした後、均一に徐冷後室温まで冷却した。
【0165】
さらに、該白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを蒸着フィルムとする場合には、蒸着面側に窒素ガス85%、炭酸ガス15%の混合ガスの雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を45mN/m以上にして冷却後巻き取った。
【0166】
また、該白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを受容シートとする場合には、受像層塗布面を窒素ガス85%、炭酸ガス15%の混合ガスの雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を45mN/mにし、もう一方の面(他基材との貼合わせ面)を空気中でコロナ放電処理を行い表面の濡れ張力を37mN/mにして巻き取った。
【0167】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた断面観察より、得られた白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚み構成はB層/A層/A層=3/29/3μmであった。また、該フィルムはA層およびB層に微細な空洞を有していることを確認した。A層の微細な空洞は、主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。また、B層には核のない空洞が全ての空洞の50%以上存在することを併せて確認した。
【0168】
次に、上記白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムおよび感熱転写記録用の受容シートに二次加工する。
【0169】
蒸着フィルムとする場合には、上記白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを真空蒸着機内に入れて走行させ、加熱溶融し蒸発させたアルミニウム金属を該コロナ放電処理面に厚さ50nmに凝集堆積させ、金属蒸着層を付設し、金属蒸着白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0170】
受容シートとする場合には、上記白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを厚さ150μmの紙に貼り合わせた後、マイクログラビアコーターを用いてフィルム表面に上記した受容層形成塗布液を塗工量が乾燥時で3g/mとなるように塗布し、感熱転写記録用の受容シートを得た。
【0171】
かくして得られた白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその加工品の評価結果をまとめて表1、2に示す。得られたフィルムは、優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れていた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0172】
実施例2
実施例1において、A層樹脂として、同じポリプロピレン75重量%に、炭酸カルシウム、二酸化チタンをそれぞれ8重量%、7重量%添加し、極性基を実質的に含まない石油樹脂として、Tg80℃、臭素価3cg/g、水添率99%のポリジシクロペンタジエンを10重量%添加混合した樹脂100重量部に、β晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.1重量部添加混合した樹脂組成を用い、B層樹脂としてエチレン共重合量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体(融点:162℃、MFR:4g/10分)99.8重量%に平均粒径2μmの架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子を0.2重量%添加した樹脂組成を用い、長手方向に8倍、幅方向に8倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例2とした。
【0173】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0174】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0175】
実施例3
実施例1において、A層樹脂として、同じポリプロピレン85重量%に、空洞開始剤の無機粒子の代わりに、ポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂として、ガラス転移温度(Tg)150℃のポリカーボネート(分子量:15000、MFR:65g/10分)を15重量%添加した樹脂100重量部に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドを0.01重量部添加混合した樹脂組成を用い、B層樹脂として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学製“アドマーQF−500”、融点:162℃、MFR:3g/10分)99.9重量%に平均粒径2μmの架橋シリコン粒子を0.1重量%添加した樹脂組成を用い、長手方向に5倍、幅方向に9倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例3とした。
【0176】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0177】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れていた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0178】
実施例4
実施例1において、A層樹脂として、HMS−PP、汎用ポリプロピレン、およびβ晶核剤添加ポリプロピレンであるSUNOCO社製“Bepol”(タイプ:BI−4020−SP)を10:63:27の割合に混合したポリプロピレン75重量%に、空洞開始剤の無機粒子の代わりにポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂として、ガラス転移温度(Tg)150℃のポリカーボネート(分子量:15000、MFR:65g/10分)を15重量%添加し、極性基を実質的に含まない石油樹脂として、Tg80℃、臭素価3cg/g、水添率99%のポリジシクロペンタジエンを10重量%添加混合した樹脂組成を用い、B層樹脂として、エチレン共重合量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体(融点:162℃、MFR:4g/10分)99重量%に平均粒径0.8μmの二酸化チタン粒子を1重量%添加した樹脂組成を用い、長手方向に8倍、幅方向に8倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例4とした。
【0179】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0180】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0181】
実施例5
実施例3において、A層樹脂として、同じポリプロピレン80重量%に、ポリカーボネート15重量%、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂として、Tg75℃、臭素価4cg/g、水添率99%のβ−ピネン5重量%を添加混合した樹脂組成100重量部に、β晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.1重量部添加混合した樹脂組成を用い、長手方向に7倍、幅方向に9倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例5とした。
【0182】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0183】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0184】
実施例6
実施例4において、A層樹脂の空洞開始剤として、ポリカーボネートの代わりにポリブチレンテレフタレート(融点:227℃、軟化温度:150℃)を用い、B層樹脂の易滑剤として、二酸化チタンの代わりに平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子を0.2重量%の比率で添加した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例6とした。
【0185】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0186】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0187】
実施例7
実施例4において、A層樹脂として、同じポリプロピレン70重量%に、ポリカーボネートを15重量%、ポリジシクロペンタジエンの代わりに、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂として、Tg75℃、臭素価4cg/g、水添率99%のβ−ピネンを15重量%を添加し、B層樹脂の易滑剤として、二酸化チタンの代わりに平均粒径2μmの架橋PMMA粒子を0.1重量%の比率で添加して、長手方向に10倍、幅方向に7倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例7とした。
【0188】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0189】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0190】
実施例8
実施例4において、B層樹脂として、エチレン共重合量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体(融点:162℃、MFR:4g/10分)99.8重量%に、平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子を0.2重量%添加した樹脂組成100重量部に、β晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.05重量部添加混合した樹脂組成を用い、長手方向の延伸倍率を9倍に上げた以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例8とした。
【0191】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。また、B層には核のない空洞が全ての空洞の50%以上存在することを併せて確認した。
【0192】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0193】
実施例9
実施例5において、A層樹脂として、HMS−PPと汎用ポリプロピレンの混合比率を30:70とし、B層樹脂として、エチレン共重合量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体(融点:162℃、MFR:4g/10分)98重量%に、A層に用いたものと同じポリカーボネートを2重量%添加した樹脂組成100重量部に、β晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.05重量部添加混合した樹脂組成を用いた以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例9とした。
【0194】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。また、B層には核のない空洞が全ての空洞の50%以上存在することを併せて確認した。
【0195】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0196】
実施例10
実施例4において、A層樹脂として、ポリカーボネートの添加量を20重量%とし、B層樹脂として、同じ樹脂組成100重量部に、β晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.05重量部添加混合した樹脂組成を用いた以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを実施例10とした。
【0197】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。また、B層には核のない空洞が全ての空洞の50%以上存在することを併せて確認した。
【0198】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは優れた隠蔽性とクッション率、ならびに耐折れじわ性を併せ持ち、かつ安定に製膜できた。また、長手方向のヤング率が高く抗張力性に優れることから、金属蒸着フィルムとしても二次加工性に優れるとともに、二次加工後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性を保持することができた。さらに、受容シートとしても感度が良好であった。
【0199】
比較例1
実施例1において、A層樹脂として、HMS−PPを添加せず、汎用ポリプロピレン単体85重量%に、炭酸カルシウム、二酸化チタンをそれぞれ8重量%、7重量%添加混合した樹脂組成を用い、B層樹脂として、エチレン共重合量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体(融点:162℃、MFR:4g/10分)99.8重量%に平均粒径2μmの架橋PMMA粒子を0.2重量%添加した樹脂組成を用いた以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを比較例1とした。
【0200】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0201】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは隠蔽性、クッション率に劣り、かつ製膜が不安定で破れが頻発した。また、長手方向のヤング率が低く抗張力性に劣ることから、金属蒸着フィルムとした際の二次加工性に劣り、二次加工後の金属蒸着層には全面にスジ状のクラックが観察され、ガスバリア性が大きく悪化した。さらに、受容シートとしての感度も不十分であった。
【0202】
比較例2
実施例3において、A層樹脂として、HMS−PPおよびβ晶核剤を添加せず、汎用ポリプロピレン単体85重量%に、ポリカーボネートを15重量%添加混合した樹脂組成を用い、B層樹脂として、エチレン共重合量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体(融点:162℃、MFR:4g/10分)99.8重量%に平均粒径2μmの架橋PMMA粒子を0.2重量%添加した樹脂組成を用いた以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを比較例2とした。
【0203】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0204】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは隠蔽性、クッション率に劣り、かつ製膜が不安定で破れが頻発した。また、長手方向のヤング率が低く抗張力性に劣ることから、金属蒸着フィルムとした際の二次加工性に劣り、二次加工後の金属蒸着層には全面にスジ状のクラックが観察され、ガスバリア性が大きく悪化した。さらに、受容シートとしての感度も不十分であった。
【0205】
比較例3
実施例5において、B層を設置しない以外は同様の条件で作製した厚さ35μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを比較例3とした。
【0206】
SEMによる断面観察より、該フィルムは微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0207】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは隠蔽性、クッション率には優れていたが、製膜の際にA層表層が剥離(劈開)して工程中のロールに付着し、工程汚れを引き起こすとともに、製膜が不安定で破れが頻発した。また、得られたフィルムは表面の凹凸により光沢に劣っていた。さらに、長手方向のヤング率は高いものの、耐折れじわ性に劣り、金属蒸着フィルムとして二次加工に供した際に、上記劈開により工程を汚すとともに、折れじわが発生して製袋品の外観が悪くなり、ガスバリア性能も大きく悪化した。受容シートとしての感度も不十分であった。
【0208】
比較例4
実施例1において、厚み構成を13/9/13μmとし、B層にβ晶核剤を添加しないこと以外は同様の条件で作製した白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例4とした。
【0209】
SEMによる断面観察より、該フィルムはA層に微細な空洞を有し、該空洞は主にマトリックスであるポリプロピレン中に分散せしめられた無機粒子を核としてその周囲に形成されており、長径が延伸方向、短径がフィルム厚み方向で、細長い形状であった。
【0210】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、耐折れじわ性には優れていたものの、空洞含有層であるA層が薄いため、隠蔽性、クッション率に劣っていた。また、金属蒸着フィルムとした際には、二次加工後の金属蒸着層に全面のスジ状のクラックが観察され、ガスバリア性が大きく悪化した。さらに、受容シートとしての感度も不十分であった。
【0211】
比較例5
実施例2において、A層樹脂として、汎用ポリプロピレン単体100重量部にβ晶核剤として、2塩基酸脂肪族系のアゼライン酸と周期表第2族アルカリ土類金属の酸化物として酸化マグネシウムを1:1の混合比で0.1重量部添加混合した樹脂組成を用い、長手方向に5倍、幅方向に9倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚み構成3/29/3μmの白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム、およびそれを用いた金属蒸着フィルム、感熱転写記録用受容シートを比較例5とした。
【0212】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、二軸延伸工程中での空洞の形成が不十分で、隠蔽性、クッション率に劣っていた。また、金属蒸着フィルムとした際には、二次加工後の金属蒸着層に全面のスジ状のクラックが観察され、ガスバリア性が大きく悪化した。さらに、受容シートとしての感度も不十分であった。
【0213】
【表1】



【0214】
【表2】



【0215】
表1〜2より、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記式(1)を満たすポリプロピレンからなることにより、二軸延伸時の製膜安定性を著しく高めることができた。また、上記構成に延伸助剤を添加し、縦高倍率延伸することにより、長手方向の剛性を著しく高められるとともに、隠蔽性、クッション率も向上した。このようなフィルムを光沢性や耐折れじわ性を損なうことなく、安定して製膜することができた。また、A層、B層の原料組成(樹脂、空洞開始剤、β晶核剤)により、各層の空洞形成性を制御することができた。さらに、これらのフィルムは金属蒸着フィルム用や受容シート用のフィルムとして優れた特性を有することが分かった。
【0216】
【発明の効果】
本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、従来の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムに比較して微細で均一な空洞を有することから、低比重で、光学濃度が高く隠蔽性に優れ、クッション率が高いとともに耐折れじわ性に優れる。また、B層に無核の気泡を導入すれば、本発明のフィルムを例えば感熱転写記録用の受容シートに用いた場合、感度が高く、耐折れじわ性に優れた受容シートとして極めて好適に使用できる。用いるポリプロピレンのβ晶比率を制御することで、上記特性をさらに高めることができる。
【0217】
また、本発明のフィルムのA層には特定のMSとMFRの関係を満たすポリプロピレンを用いるため、二軸延伸工程中に破れなどの工程トラブルを未然に防ぐことができ、製膜が安定化する。
【0218】
さらに、本発明のフィルムのA層に上記ポリプロピレンに加えて、ポリプロピレンに相溶して延伸時に過疎化効果を具備させうる添加剤を混合せしめることにより、より高倍率の縦延伸が可能となり、長手方向の剛性をさらに高めたフィルムを安定に製造することができる。
【0219】
これより、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムのハンドリング性に優れるだけでなく、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋などのフィルム加工時に、加工張力に対する優れた抗張力性を示し、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れなどのトラブルを解消することができる。例えば、本発明のフィルムのガスバリア性をさらに高めるために金属蒸着フィルムとした場合、二次加工後も金属蒸着層に膜割れ(クラック)が発生しにくく、二次加工によるガスバリア性の悪化を未然に抑えることができる。
【0220】
さらに、従来の汎用の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムより薄くしても寸法安定性・防湿性に優れることから、従来より薄くしても熱寸法安定性・防湿性などのその他の特性を損なうことなく、加工特性を保持することができる。かつ、既存の縦−横逐次二軸延伸機を用いることから、大きな設備投資を必要とせず、上記特性を持ったフィルムを低コストで安定製造することができる。
【0221】
また、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、他のフィルムと複合化して構成体に加工して用いるような場合でも、該構成体の二次加工性やガスバリア性能を向上させることができる。また、本発明のフィルム、もしくは本発明のフィルムと複合化する他のフィルムを適宜薄膜化できるため、廃棄物や資源を削減することができる。
【0222】
以上のことから、本発明の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、包装用、工業用等に好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞含有層であるA層の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂からなるB層が設置されてなり、比重が0.5〜0.85である積層フィルムであって、A層において230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレイト(MFR)との関係が、次式(1)
log(MS)>−0.61log(MFR)+0.52 (1)
を満たすポリプロピレンからなることを特徴とする白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
B層の積層厚みが全体の厚みの1/3以下である請求項1記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
A層に含有される空洞が、空洞開始剤を内包する請求項1または2に記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
空洞開始剤が、無機粒子および/またはポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂である請求項3記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
無機粒子が、炭酸カルシウムおよび/または二酸化チタンである請求項4記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
ポリプロピレンに対して非相溶性の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートおよび/または飽和ポリエステルである請求項4記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
A層に、延伸助剤が1種以上含有された請求項1〜6のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
延伸助剤が極性基を実質的に含まない石油樹脂および/または極性基を実質的に含まないテルペン樹脂である請求項7記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項9】
β晶比率が10%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項10】
25℃での長手方向のヤング率が1.5GPa以上である請求項1〜9記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項11】
B層が無核の空洞を有する請求項1〜10のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項12】
B層の表面光沢度が50%以上である請求項1〜11のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属蒸着層を設けた金属蒸着白色二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた包装体。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた表示物。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた感熱転写記録用受容シート。

【公開番号】特開2004−160689(P2004−160689A)
【公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−325947(P2002−325947)
【出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】