説明

白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム

【課題】耐熱性が高く、加熱時の寸法安定性が良好であり、機械特性に優れ、かつ印刷性に優れた白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とからなるポリ乳酸を含有する樹脂組成物からなり、特定の温度範囲に結晶融解ピークを有し、特定のステレオコンプレックス結晶化度を有する白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムであって、L値および見掛け比重を特定の数値範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムに関する。さらに詳しくは、包装用、ラベル用等として好適に用いられる白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の見地から、また石油枯渇への懸念などから、非石油系樹脂が開発されている。なかでもポリ乳酸は、溶融成形可能であり、バイオマスを原料とし微生物を利用した発酵法により、経済的に製造できるようになり、包装用材料等の工業用材料としての利用が期待されている。
【0003】
しかしながら、従来からのポリ乳酸(ポリL−乳酸やポリD−乳酸)を用いた場合は、耐熱性が低く、熱収縮率が大きく、種々の加工工程において熱収縮によりシワが発生したり、カールが発生したりする問題があった(例えば特許文献1、2)。また、従来からのポリ乳酸は機械特性が低く、これも上記のシワ、カール発生の一因と推定される。
これらの問題から、たとえば包装用材料として好適に用いるために、耐熱性、熱寸法安定性、機械特性の優れ、かつ印刷性に優れた白色ポリ乳酸フィルムが要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−208817号公報
【特許文献2】特開2001−49004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐熱性が高く、加熱時の寸法安定性が良好であり、機械特性に優れ、かつ印刷性に優れた白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とからなるポリ乳酸を含有する樹脂組成物からなり、特定の温度範囲に結晶融解ピークを有し、特定のステレオコンプレックス結晶化度(S)を有する白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムであって、L値および見掛け比重を特定の数値範囲とすることによって、上記課題が達成されることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)ポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とからなるポリ乳酸(A成分)を含有する樹脂組成物よりなり、示差走査熱量計(DSC)測定で190℃以上に結晶融解ピークを有し、下記の(i)式で定義されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上である白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムであって、
色差計により求められるL値が85以上であり、
見掛け比重が1.30g/cmを超える
白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムである。
S(%)=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
(但し、ΔHmsはステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。ΔHmhはホモ相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。)
【0008】
さらに本発明は、
(2)100℃で1時間処理した時の縦方向および横方向の熱収縮率が3%以下であること、
(3)ステレオ化促進剤、および/または、ブロック形成剤を含有すること、
(4)ステレオ化促進剤が、リン酸金属塩であり、ブロック形成剤が、エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基およびカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を分子中に少なくとも1個有する化合物であること、
(5)平均粒径0.1μm以上5μm以下の粒子を3質量%以上45質量%以下含有すること、
(6)粒子の比重が2以上であること、
(7)粒子の屈折率が1.5以上であること
(8)縦方向の破断強度と横方向の破断強度との平均が100MPa以上であり、縦方向の破断強度と横方向の破断強度との差が50MPa以下であること、
のうち、少なくともいずれか1つの態様を具備することによって、さらに優れた白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムを提供することができる。
また本発明は、
(9)包装用として用いられる態様を包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とからなるポリ乳酸(A成分)を含有する樹脂組成物からなるステレオコンプレックス構造の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムを用いて、耐熱性が高く、加熱時の寸法安定性が良好であり、機械特性に優れ、かつ印刷性に優れた白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムを提供することができる。かかる白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、包装用、ラベル用等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明においては、フィルムを製膜する機械軸方向を縦方向または長手方向またはMDと呼称する場合がある。また、縦方向に垂直な方向を横方向または幅方向またはTDと呼称する場合がある。
【0011】
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とからなるポリ乳酸(A成分)を必須成分として含有する樹脂組成物を用いて成形されて得られるものである。また、本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、示差走査熱量計(DSC)測定により190℃以上に結晶融解ピークを有する。かかる190℃以上に現れる結晶融解ピークは、ステレオコンプレックス相(以下、コンプレックス相と略称することがある。)ポリ乳酸の結晶融解ピークである。
【0012】
<ポリ乳酸(A成分)>
ポリ乳酸(A成分)は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とから形成されるステレオコンプレックスポリ乳酸を含む。ポリL−乳酸、ポリD−乳酸は、下記式(1)で表されるL−乳酸単位またはD−乳酸単位から実質的になる。
【0013】
【化1】

【0014】
なお、「実質的に」とは、当該成分が、全成分を基準として好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上を占めていることをいう。
【0015】
ポリL−乳酸中のL−乳酸単位の含有量は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは97.5〜100モル%である。高融点を実現するためには99〜100モル%である。他の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。他の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0016】
ポリD−乳酸中のD−乳酸単位の含有量は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは97.5〜100モル%である。高融点を実現するためには99〜100モル%である。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。他の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0017】
乳酸以外の単位として、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
【0018】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールおよびこれらにエチレンオキシドが付加させたもの等の芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、p−オキシ安息香酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0019】
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸の重量平均分子量(Mw)は、樹脂組成物の機械物性および成形性を両立させるため、好ましくは10万〜50万、より好ましくは11万〜35万、さらに好ましくは12万〜25万の範囲である。
【0020】
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下加熱し、開環重合により製造することができる。また、金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を結晶化させた後、減圧下または加圧化、不活性ガス気流下の存在下、あるいは非存在下、加熱.固相重合させ製造することもできる。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸を脱水縮合させる直接重合法で製造することができる。
【0021】
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0022】
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等を好適に用いることができる。
【0023】
固相重合法では、前述した開環重合法や乳酸の直接重合法によって得られた比較的低分子量(おおよそ15〜203)のポリ乳酸をプレポリマーとして使用する。プレポリマーは、そのガラス転移点温度以上融点未満の温度範囲で予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい。結晶化させたプレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中に充填され、プレポリマーのガラス転移点温度以上融点未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇温させても何ら問題はない。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
【0024】
ポリ乳酸の重合時に使用される金属含有触媒は、使用に先立ち従来公知の失活剤で不活性化しておくことが、ポリ乳酸(A成分)および樹脂組成物の熱、水分に対する安定性を向上できるため好ましい。
かかる失活剤としてはイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンドが挙げられる。
【0025】
また、ジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸が挙げられる。
【0026】
また、式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
また、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が挙げられる。またこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エステル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体等が挙げられる。
【0028】
触媒失活能の観点から、式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸が好ましい。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が好ましい。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が好ましい。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が好ましい。またこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルリンオキソ酸あるいはこれらの酸性エステル類、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体が好適に使用される。
【0029】
メタリン酸系化合物は、3〜200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下DHPAと略称することがある。)等が好適に使用される。
【0030】
ポリ乳酸(A成分)中のポリL−乳酸とポリD−乳酸との混合比(質量比)は、90:10から10:90である。ポリ乳酸(A成分)のステレオコンプレックス結晶化度(S)の向上およびコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解温度を高めるためには、質量比は75:25から25:75であることが好ましく、さらに好ましくは60:40から40:60の範囲であり、できるだけ50:50に近い範囲が好適に選択される。
【0031】
(重量平均分子量(Mw))
ポリ乳酸(A成分)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜50万の範囲が樹脂組成物の成形性、物性を両立させる点より好適に選択される。より好ましくは10万〜30万、さらに好ましくは11万〜25万の範囲が好適に選択される。重量平均分子量(Mw)は、溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量値である。
【0032】
(ステレオコンプレックス結晶化度(S))
さらに本発明で用いるポリ乳酸(A成分)は、DSC測定において、結晶融解ピーク強度より下記式(i)で定義されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が好ましくは90%以上である。即ち、ポリ乳酸(A成分)はステレオコンプレックス相が高度に形成されていることが好ましい。
S(%)=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
式中、ΔHmsはステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。ΔHmhはホモ相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。DSC測定において190℃以上に現れる結晶融解ピークは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークであり、190℃未満に現れる結晶融解ピークは、ホモ相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークである。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は熱処理過程において最終的に生成するステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の割合を示すパラメーターである。
【0033】
ポリ乳酸(A成分)がかかる範囲のステレオコンプレックス結晶化度(S)を有することにより、本発明が規定するフィルムのステレオコンプレックス結晶化度(S)を達成しやすくなる。
【0034】
(結晶融解ピーク)
ポリ乳酸(A成分)は、好ましくは190〜250℃の範囲に結晶融解ピークを有する。ここでは、結晶融解ピークの頂点が好ましくは190〜250℃の範囲にあることを意味する。また、結晶融解ピークの頂点の温度を結晶融解温度と呼称する場合がある。かかる結晶融解ピークは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークである。より好ましくは200〜220℃の範囲に結晶融解ピークを有する態様である。結晶融解ピークが上記数値範囲にあると、耐熱性に優れる。結晶融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは30J/g以上である。
【0035】
(カルボキシル基濃度)
ポリ乳酸(A成分)のカルボキシル基濃度は、好ましくは10eq/ton以下、より好ましくは2eq/ton以下、さらに好ましくは1eq/ton以下の範囲である。カルボキシル基濃度がこの範囲内にある時には、ポリ乳酸(A成分)および樹脂組成物の溶融安定性、耐湿熱安定性等の物性も良好なものとすることができる。ポリ乳酸(A成分)のカルボキシル基濃度を10eq/ton以下にするには、ポリエステル組成物で公知のカルボキシル末端基濃度の低減方法を好適に適用することができる。具体的には、耐湿熱性改善剤等の末端封止剤を添加する方法または末端封止剤を添加せず、アルコール、アミンによってエステルまたはアミド化する方法を採用することができる。
【0036】
耐湿熱性改善剤としては、後述する特定官能基を有するカルボキシル基封止剤が好適に適用できる。中でも、特定官能基がカルボジイミド基であるカルボジイミド化合物がカルボキシル基を効果的に封止できるとともに、ポリ乳酸さらに本発明の樹脂組成物の色相、コンプレックス相の形成促進、耐湿熱性等の観点より好ましく選択される。
【0037】
(ラクチド含有量)
ポリ乳酸(A成分)のラクチド含有量は、好ましくは0〜1000ppm、より好ましくは0〜500ppm、さらに好ましくは0〜200ppm、特に好ましくは0〜100ppmの範囲である。ラクチド含有量がこの範囲にあることにより、フィルム製膜工程の設備汚れ、フィルムの表面欠点などの原因物の発生を抑制することができる。
【0038】
ラクチド含有量をかかる範囲に低減させるには、ポリL−乳酸およびポリD−乳酸の重合時点からポリ乳酸(A成分)製造の終了までの任意の段階において、従来公知のラクチド軽減処理法を単独であるいはこれらを組み合わせて実施することによって達成することが可能である。
【0039】
(ポリ乳酸(A成分)の製造)
ポリ乳酸(A成分)は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを所定の質量比で共存、接触させることにより製造することができる。
接触は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、フェノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチロラクトン、トリオキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール等の単独あるいは2種以上混合したものが好ましい。
【0040】
また、上記接触は、溶媒の非存在下で行うことができる。即ち、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを所定量混合した後に溶融混練する方法、いずれか一方を溶融させた後に残る一方を加えて混練する方法等を採用することができる。本発明においては、かかる溶融混練によりポリ乳酸(A成分)を得ることが、ポリ乳酸(A成分)を効率よく得ることができるという観点から好ましい。
【0041】
溶融混練温度は、ポリ乳酸の溶融時の安定性およびステレオコンプレックス結晶化度(S)の向上の観点より、好ましくは230〜300℃、より好ましくは240〜280℃、さらに好ましくは245〜275℃の範囲が選択される。
【0042】
前述したポリL−乳酸とポリD−乳酸との混合比、および上記溶融混練温度範囲で溶融混練することにより、ポリ乳酸(A成分)のステレオコンプレックス結晶化度(S)を80%以上にすることが容易となる。
【0043】
あるいは、接触が化学結合によりなされることも可能である。たとえばポリL−乳酸セグメントとポリD−乳酸セグメントが結合しているブロック重合体のポリ乳酸もコンプレックス相が高度に形成されやすく、かかるステレオブロックポリ乳酸も本発明で好適に用いることが出来る。
【0044】
このようなブロック重合体は、例えば、逐次開環重合によって製造する方法や、ポリL−乳酸とポリD−乳酸を重合しておいてあとで鎖交換反応や鎖延長剤で結合する方法、ポリL−乳酸とポリD−乳酸を重合しておいてブレンド後固相重合して鎖延長する方法、立体選択開環重合触媒を用いてラセミラクチドから製造する方法等上記の基本的構成を持つブロック共重合体であれば製造法によらず、用いることができるが、逐次開環重合によって得られる高融点のステレオブロック重合体、固相重合法によって得られる重合体を用いることが製造の容易さからより好ましい。
【0045】
本発明で用いるポリ乳酸(A成分)には、本発明の趣旨に反しない範囲において、コンプレックス相の形成を安定的且つ高度に進めるために特定の添加物を添加することが好ましい。かかる添加物の添加により、ステレオ化のための温度を低くすることができ、すなわち溶融混練温度や溶融押出温度を低くすることができる。
【0046】
(I)例えば、ステレオ化促進剤として下記式(2)または(3)で表されるリン酸金属塩を添加する手法が挙げられる。
【0047】
【化2】

【0048】
式(2)中、R11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0049】
【化3】

【0050】
式(3)中R14、R15およびR16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子のときは1または2を表す。
【0051】
式(2)または(3)で表されるリン酸金属塩のM、Mは、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、Li、なかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
【0052】
(II)また、エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基およびカルボジイミド基(以下、特定官能基と呼ぶことがある。)からなる群より選らばれる少なくとも1種の基を分子中に少なくとも1個有する化合物をブロック形成剤として添加する方法が挙げられる。
【0053】
リン酸金属塩の含有量は、ポリ乳酸(A成分)に対して、好ましくは10ppm〜2質量%、より好ましくは50ppm〜0.5質量%、さらに好ましくは100ppm〜0.3質量%である。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎると樹脂自体を劣化させるので好ましくない。
【0054】
さらに所望により、本発明の趣旨に反しない範囲において、リン酸金属塩の作用を強化するため、結晶化核剤を併用することができる。結晶化核剤としては、珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトが好ましい。リン酸金属塩の作用を強化させる結晶化核剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100質量部あたり、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.06〜2質量部、さらに好ましくは0.06〜1質量部の範囲である。
【0055】
本発明においてブロック形成剤は、特定官能基がポリ乳酸(A成分)の分子末端と反応して、部分的にポリL−乳酸ユニットとポリD−乳酸ユニットとを連結しブロック化ポリ乳酸を形成、ステレオコンプレックス相形成を促進させる。ブロック形成剤として、ポリエステルのカルボキシル基封止剤として知られているものを使用することができる。なかでも、ポリ乳酸および本発明の樹脂組成物の色調、熱分解性、耐加水分解性等に与える影響よりカルボジイミド化合物が好ましい。ブロック形成剤の使用量は、ポリ乳酸(A成分)100質量部あたり、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。この範囲を超えて多量に適用すると得られる樹脂色相を悪化、あるいは可塑化がおこる懸念が大きくなり好ましくない。また0.001質量部未満の使用量であるとその効果はほとんど認められず工業的な意義は小さい。
【0056】
上記(I)および(II)の手法は単独に適用することも可能であるが、組み合わせて適用する方法がポリ乳酸(A成分)のコンプレックス相形成をより一層効果的に促進できるために好ましい。
【0057】
本発明においてポリ乳酸(A成分)には、ブロック形成剤と耐湿熱性改善剤とを兼ねて特定官能基を有する化合物を含有させることが好ましい。かかる化合物としてカルボジイミド化合物が好ましい。カルボジイミド化合物の配合量はポリ乳酸(A成分)100質量部あたり、好ましくは0.001〜5質量部の範囲である。0.001質量部より少ないとブロック形成剤としても、またカルボキシル基封止剤としても、その機能を発揮することが不満足である。また、この範囲を超えて多量に適用すると、剤の分解等の好ましくない副反応により樹脂色相の悪化あるいは可塑化がおこる懸念が大きくなり好ましくない。
【0058】
本発明において特定官能基を有する化合物としてはカルボジイミド化合物を主たる成分として選択し、その他の化合物はカルボジイミド化合物の作用を補完、強化するために好適に選択される。
【0059】
本発明で適用可能な特定官能基を有する化合物としては、例えば以下のカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物等の化合物が例示され、カルボジイミド化合物としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、オクチルデシルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジベンジルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−トリルカルボジイミド、ジ−o−トルイルカルボジイミド、ジ−p−トルイルカルボジイミド、ビス(p−アミノフェニル)カルボジイミド、ビス(p−クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o−クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o−エチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−エチルフェニル)カルボジイミドビス(o−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(o−イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2−エチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2−ブチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリブチルフェニル)カルボジイミド、ジβナフチルカルボシイミド、N−トリル−N’−シクロヘキシルカルボシイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボシイミド、p−フェニレンビス(o−トルイルカルボジイミド)、p−フェニレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレンンビス(p−クロロフェニルカルボジイミド)、ヘキサメチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、エチレンビス(フェニルカルボジイミド)、エチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、等のモノまたはポリカルボジイミド化合物が例示される。なかでも反応性、安定性の観点、および工業的に入手しやすいという観点から、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドが好適に使用できる。
【0060】
さらに上記ポリカルボジイミド化合物として市販のポリカルボジイミド化合物は、合成する必要もなく好適に使用することができ、かかる市販のポリカルボジイミド化合物としては例えば日清紡(株)より市販されている「カルボジライト(登録商標)」の商品名で販売されている「カルボジライト(登録商標)」LA−1、あるいはHMV−8CA等を例示することができる。
【0061】
本発明で用いることのできるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリジジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、グリシジルアミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。かかる剤を配合することで、機械的特性、成型性、耐熱性、耐久性に優れたポリ乳酸樹脂組成物および成型品を得ることができる。
【0062】
グリシジルエーテル化合物の例としては例えば、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングルコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、その他ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等を挙げることができ、なかでもビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0063】
グリシジルエステル化合物の例としては例えば安息香酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、パーサティック酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等が挙げられ、なかでも安息香酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
【0064】
グリシジルアミン化合物の例としては例えば、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0065】
グリシジルイミド、グリシジルアミド化合物として、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジル−1,2,3,4−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジルステアリルアミド等が挙げられる。なかでもN−グリシジルフタルイミドが好ましい。
【0066】
脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド等が挙げられる。
【0067】
その他のエポキシ化合物として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油等のエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0068】
本発明で用いるカルボキシル基封止剤として用いることができるオキサゾリン化合物として、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ステアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−ベンジルオキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)等が挙げられる。さらに上記化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物等も挙げられる。
【0069】
本発明で用いることができるオキサジン化合物として、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシー5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等が挙げられる。
【0070】
さらに2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−P,P’−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等が挙げられる。さらに上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサジン化合物等が挙げられる。
【0071】
上記オキサゾリン化合物やオキサジン化合物のなかでは2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)や2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)が好ましいものとして挙げられる。
【0072】
本発明で用いることができるイソシアネート化合物として、芳香族、脂肪族、脂環式イソシアネート化合物およびこれらの混合物が挙げられる。
モノイソシアネート化合物としてはたとえばフェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)混合物、シクロヘキサン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニル−1,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物のなかでは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニルイソシアネート等の芳香族イソシアネートが好ましい。
【0074】
本発明で用いることができるケテン化合物として、芳香族、脂肪族、脂環式ケテン化合物およびこれらの混合物が挙げられる。具体的には、ジフェニルケテン、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ケテン、ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)ケテン、ジシクロヘキシルケテン等を例示することができる。これらのケテン化合物のなかではジフェニルケテン、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ケテン、ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)ケテン等の芳香族ケテンが好ましい。
【0075】
上記ブロック形成剤、耐湿熱性改善剤は1種または2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。耐湿熱性改善剤によりブロック構造の形成を促進するとともにカルボキシル基末端や、酸性低分子化合物の一部の封止を行うことも、好適な実施態様の一つとして例示される。
【0076】
<樹脂組成物>
本発明における樹脂組成物は、ポリ乳酸(A成分)を含有する。かかる樹脂組成物は、実質的にポリ乳酸(A成分)のみよりなることが好ましい。なお、「実質的に」とは、当該成分が、全成分を基準として好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上を占めていることをいう。
【0077】
樹脂組成物は、前記式(i)によって求められるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上であることが好ましい。ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上であると、フィルムの90℃における熱収縮率を低下させることができる。樹脂組成物のステレオコンプレックス結晶化度(S)は、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が100%である。
【0078】
樹脂組成物は、加水分解抑制剤を加えることにより、ポリ乳酸(A成分)の加水分解による分子量低下を抑えることが可能となり、例えば強度低下等を抑えることができる。加水分解抑制剤としては、ポリ乳酸の末端官能基であるカルボン酸および水酸基との反応性を有する化合物、例えば前述の特定官能基を有する化合物が好適に適用され、なかでもカルボジイミド化合物が好適に選択される。
【0079】
このときポリ乳酸(A成分)の質量を基準にしてカルボジイミド化合物が0.001〜5質量%含有されることが好ましい。カルボジイミド化合物の量がかかる範囲を満足することにより樹脂組成物の水分に対する安定性、耐加水分解安定性を好適に高めることができるからである。
【0080】
かかる観点より、カルボジイミド化合物の含有割合は、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜4質量%の範囲が選択される。この範囲より少量に過ぎるとカルボジイミド化合物適用の効果が有効に認められない。またこの範囲を超えて多量に適用すると、耐加水分解安定性の更なる向上は期待されず、逆に樹脂組成物色相が悪化する等の好ましくない現象が発生する懸念がある。
【0081】
また、樹脂組成物は、ポリ乳酸(A成分)以外の他の重合体を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。他の重合体として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらは1種以上を含有させることができる。
【0082】
さらに樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。添加剤として、無機充填剤や、酸化鉄等の顔料が挙げられる。またステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤や、離型剤が挙げられる。またパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)、難燃剤、帯電防止剤が挙げられる。また有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、静電密着改良剤が挙げられる。またこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色が少ないことからベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0084】
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートとの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)328(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
【0085】
樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、ポリ乳酸(A成分)、必要に応じて耐加水分解抑制剤や上記その他の成分を添加して溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。
【0086】
<粒子>
本発明においてフィルムを白色とするためには、ポリ乳酸フィルムにボイドを形成するための添加物を添加して白色とする方法、ポリ乳酸フィルムに白色の層を共押出法、ラミネート法、コーティング法などで積層する方法等が挙げられるが、ボイドを形成するための添加物を添加する方法が、面内で均一なL値および白色度を有する白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムを得ることができるため好ましい。かかる添加物としては、粒子が好ましい。
【0087】
かかる粒子としては、有機粒子、無機粒子のいずれであっても良い。無機粒子としては、酸化チタン(TiO)、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素(SiO)、タルク、カオリン等を挙げることができる。有機粒子としては、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子等を挙げることができる。また、これらの二次凝集体であってもよい。本発明においては、これらの粒子を1種類または2種類以上用いることができる。なお、本発明における粒子は、ポリ乳酸(A成分)等、樹脂組成物に含有される成分に対して不活性である。
【0088】
本発明においては、効率よく白色化できることから無機粒子が好ましい。また、無機粒子であると、白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムの見掛け比重を本発明が規定する数値範囲にしやすくなる。
【0089】
本発明における粒子は、比重が大きいことが好ましい。粒子の比重が大きいと、白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムの見掛け比重を大きくすることができる。そして、これにより耐熱性(寸法安定性)および白色性、印刷性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、粒子の比重は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、3.5以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましい。
【0090】
また、本発明における粒子の屈折率は、1.5以上が好ましい。屈折率が上記数値範囲にあると、光を反射しやすくなり、適度な光沢度となり、外観に優れ好ましい。このような観点から、屈折率は、1.8以上がより好ましく、2.2以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。
【0091】
以上のような比重および屈折率を同時に満たすことができるという観点からも、無機粒子が好ましく、具体的には炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンが好ましい。なかでも酸化チタン、硫酸バリウムが好ましく、酸化チタンとしてはルチル型酸化チタンが好ましく、硫酸バリウムとしては沈降硫酸バリウムが好ましい。これらの粒子を用いることによって、本発明における好ましいL値、白色度、見掛け比重を得ることが容易となる。本発明においては、特にルチル型酸化チタンが好ましい。
【0092】
上記のような粒子の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、また3μm以下がより好ましく、1.4μm以下がさらに好ましい。平均粒径が小さすぎると、白色フィルムが得られにくくなり、他方、大きすぎると製膜時に破れが起き易くなったり、加工工程等において粒子が脱落しやすくなったりして、工程汚れが発生する等の欠点が生じやすくなる傾向にある。
【0093】
また、粒子の含有量は、白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムの質量を基準として、3質量%以上45質量%以下が好ましい。さらに好ましくは5質量%以上20質量%以下である。含有量が上記数値範囲にあると、本発明におけるL値と白色度と見掛け密度とを同時に達成しやすくなる。含有量が少なすぎると、白色フィルムが得られにくくなり、他方、含有量が多すぎると、延伸工程で破れが発生しやすくなる、溶融押出工程においてダイのリップが汚れ易くなる等、製膜工程におけるトラブルが発生しやすくなる傾向にあり、生産効率が悪くなる傾向にある。
上記のような粒子は、樹脂組成物に含有させて、白色二軸延伸フィルムに含有させることが好ましい。
【0094】
<フィルムの製造>
(押出)
得られた樹脂組成物を製膜するには、押出成形、キャスト成形等の成形手法を用いることができる。例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、製膜することができる。このうち、押出成形が好ましい。
【0095】
押出成形により未延伸フィルムを得る場合は、事前にポリ乳酸(A成分)、および任意に添加してもよい加水分解抑制剤等のその他の成分や、任意に添加してもよい添加剤等を溶融混練した材料を用いることもできれば、押出成形時に溶融混練を経て成形することもできる。未延伸フィルムは、溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出し、次いで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造することができる。このとき溶融フィルムにはスルホン酸四級ホスホニウム塩等の静電密着剤を配合し、電極よりフィルム溶融面に非接触的に電荷を印加し、それによってフィルムを回転する冷却ドラムに密着させることにより、表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることもできる。
【0096】
事前に溶融混練した材料を用いて未延伸フィルムを押出成形する場合は、溶融押出温度は230〜250℃が好ましい。溶融押出温度が上記数値範囲にあると、未溶融部分を低減することができる。また、熱分解や熱劣化が生じにくく、分解物や劣化物による異物を低減することができる。溶融押出温度が低すぎる場合は、未溶融部分が増加する傾向にある。他方、溶融押出温度が高すぎる場合は、分解物や劣化物による異物が増加する傾向にある。このような観点から、溶融押出温度は、さらに好ましくは230〜245℃、特に好ましくは230〜240℃である。さらに、スレテオ化をより促進するという観点においては、溶融押出温度は240〜280℃が好ましく、245〜275℃がさらに好ましい。溶融押出温度が高い方が、ステレオ化が促進される傾向にある。
【0097】
押出成形時に溶融混練を経て未延伸フィルムを押出成形する場合は、溶融押出温度(すなわちかかる温度が溶融混練温度になる。)は230〜300℃である。溶融押出温度を上記数値範囲とすることによって、得られるフィルムのステレオコンプレックス結晶化度(S)を本発明が規定する範囲にすることができる。溶融押出温度は高い方がステレオ化が起こりやすい傾向にあるが、高すぎる場合は、分解物や劣化物による異物が増加する傾向にある。他方、低すぎる場合は、所定のステレオコンプレックス化度(S)が得られない。このような観点から、溶融押出温度は、好ましくは240〜280℃、さらに好ましくは245〜275℃である。
【0098】
その際、押出用ダイのリップ開度と冷却ドラム上に押し出されたシートの厚みとの比(ドラフト比、押出用ダイのリップ開度を、冷却ドラム上に押し出されたシート(未延伸フィルム)の厚みで除して求められる比率)が2以上80以下であることが好ましい。
【0099】
ドラフト比が小さくなると、押出用ダイリップからの引取り速度が遅くなりすぎ、ダイリップからのポリマーの離れ速度が遅いためか、ダイリップスジ欠点等の欠点が多くなり好ましくない。このような観点から、ドラフト比の下限は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、10以上が特に好ましい。また、ドラフト比が大きくなりすぎると、ポリマーがダイリップから離れる時の変形が大きすぎるためか、流動が不安定となり厚み変動(厚み斑)が悪くなり、好ましくない。このような観点から、ドラフト比の上限は、50以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、15以下であることが特に好ましい。
【0100】
また、ポリ乳酸(A成分)の溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、ポリ乳酸(A成分)他を溶解後、キャスト乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形もすることができる。
【0101】
(延伸)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、実用上充分なフィルム強度など所望の機械特性、耐熱性を得るために、二軸延伸を施したものである。
未延伸フィルムを二軸延伸する際は、ロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することができる。
【0102】
二軸延伸の延伸倍率は、面積延伸倍率(縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率)の下限は、4.0倍以上、好ましくは8.0倍以上、さらに好ましくは10.0倍以上、特に好ましくは11.0倍以上である。他方その上限は、特に制限されないが、好ましくは25倍以下、より好ましくは18倍以下、さらに好ましくは13倍以下である。面積延伸倍率を上記数値範囲にすることによって、優れた機械特性、耐熱性を得ることができる。
【0103】
縦方向および横方向各々の延伸倍率については、縦方向の延伸倍率は、良好な機械特性、耐熱性を得るため、2.0倍以上が好ましく、2.5倍以上がより好ましく、3.0倍以上がさらに好ましい。また、製膜時の破断を少なくするためには、5.0倍以下が好ましく、4.0倍以下がより好ましく、3.7倍以下がさらに好ましい。横方向の延伸倍率は、良好な機械特性、耐熱性を得るため、2.0倍以上が好ましく、2.8倍以上がより好ましく、3.3倍以上がさらに好ましい。また、製膜時の破断を少なくするためには、5.0倍以下が好ましく、4.2倍以下がより好ましく、3.8倍以下がさらに好ましい。
【0104】
縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率との差は、特に制限されないが、延伸倍率の差の絶対値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.4以下である。延伸倍率の差の絶対値を上記数値範囲とすることによって、機械特性他の物性のバランスを良くすることができる。
【0105】
延伸温度は、樹脂組成物のガラス転移点温度(Tg、単位:℃)以上結晶化温度(Tc、単位:℃)以下の範囲が好適に選択される。なかでも、できるだけTcに近い温度範囲、すなわちポリ乳酸(A成分)の結晶化が進みにくい温度範囲がより好適に採用される。
【0106】
Tgより低い温度では分子鎖が固定されているので、延伸操作を好適に進めることが困難となる傾向にある。
従って延伸温度の下限としては、Tg+5℃以上がより好ましく、Tg+10℃以上がさらに好ましい。他方、上限は、Tc−5℃以下がより好ましく、Tc−10℃以下がさらに好ましい。
【0107】
本発明において、フィルム物性、延伸工程安定化の両立の観点より、延伸温度は上記の温度範囲より好適に設定される。延伸温度の上限値に関しては、フィルム物性と延伸工程安定化が相反する挙動をとるので、装置特性を勘案して、適宜設定すべきである。
【0108】
さらに、延伸工程においては、延伸開始部分の温度よりも延伸終了部分の温度が1℃以上高い態様が好ましく、フィルムの厚み斑が良好となるため、望ましい。また、延伸開始部分の温度よりも延伸終了部分の温度が高い方が、粒子の周囲の空隙ができにくくなるためか、見掛け比重が高くなる傾向にあり、見掛け比重を本発明が規定する数値範囲とすることが容易となる。このような観点から、延伸終了部分の温度は、延伸開始部分の温度より2℃以上高いことがより好ましく、3℃以上高いことがさらに好ましく、4℃以上高いことが特に好ましい。他方、延伸終了部分の温度が延伸開始部分の温度よりも高くなりすぎると、フィルム幅方向の物性差が出てくるようになる傾向にある。このような観点から、延伸終了部分と延伸開始部分との温度差は30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましく、10℃以下が特に好ましい。
【0109】
また、延伸速度は遅い方が、粒子の周囲に空隙ができにくくなるためか、見掛け比重が高くなる傾向にあり、見掛け比重を本発明が規定する数値範囲とすることが容易となる。このような観点から、横延伸時の延伸速度の上限は、10000%/分以下が好ましく、6000%/分以下がより好ましく、2000%/分以下がさらに好ましい。他方、横延伸速度が遅すぎると、加熱時間が長くなりすぎるためか厚み斑が悪くなり、好ましくない。このような観点から、横延伸時の延伸速度の下限は、100%/分以上が好ましく、200%/分以上がより好ましく、400%/分以上がさらに好ましい。
【0110】
(熱処理)
上記の未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムは、110℃以上200℃以下で熱処理することが好ましい。かかる熱処理は、所謂熱固定処理に相当する。この熱処理により、コンプレックス相ポリ乳酸の結晶化を進め、得られる白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムの熱収縮率を好適に低下させることができる。このような観点から、熱処理温度の下限は、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上、特に好ましくは190℃以上である。他方、熱処理温度が高くなりすぎ、樹脂組成物の溶融温度に近くなりすぎると、ポリ乳酸フィルムの破断強度等の機械特性が低くなる傾向にあり、また厚み斑が悪くなる傾向にある。このような観点から、熱処理温度の上限は、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは195℃以下、特に好ましくは190℃以下である。
【0111】
熱処理時間は、1秒から30分の範囲で実施することが好ましい。熱寸法安定性の向上効果を高くする目的においては、熱処理温度が高いときは相対的に短い時間の熱処理、熱処理温度が低いときは相対的に長い時間の熱処理を要する。例えば、Tcが140℃の樹脂組成物では、熱処理温度140℃では、少なくとも30秒の熱処理が必要であるが、熱処理温度150℃では、10秒の熱処理で、フィルムの90℃、5時間での熱収縮率を4%以下とすることができる。
【0112】
上述の延伸倍率の範囲において、熱処理として上記態様を採用することは、機械特性、耐熱性、熱収縮率を本発明が規定する数値範囲とするための好ましい手段の一つである。
また、かかる熱処理を施すことによって、得られたフィルムは機械特性、および耐熱性に優れたものとなる。具体的には、100℃で1時間処理した時の熱収縮率や、150℃で30分間処理した時の熱収縮率を小さくすることができる。
【0113】
かくして得られたフィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
また、得られた白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、必要に応じて、例えば、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理、防汚処理等の表面機能化処理をすることもできる。
【0114】
<フィルムの特性>
(見掛け比重)
本発明における白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、その見掛け比重が1.30g/cmを超えることが必要である。好ましくは1.33g/cm以上、より好ましくは1.345g/cm以上、さらに好ましくは1.36g/cm以上、特に好ましくは1.375g/cm以上である。見掛け比重が上記数値範囲にあると、印刷性、白色性、寸法安定性に優れる。また、適度な光沢度とすることができる。見掛け比重が小さいと、白色性および光沢度が低くなる傾向に有り、見掛け比重が小さくなりすぎると、白色性、光沢度、印刷性に劣る傾向にあり、見掛け比重が1.30g/cm以下となると特に顕著になる。また、寸法安定性に劣る。これらは、見掛け比重が低くなると、粒子周囲の空隙が多くなりすぎるためか、粒子が脱落し易くなるためと推測される。他方、見掛け比重が大きいと、白色性、印刷性、寸法安定性に優れる傾向にあるが、大きすぎると、製膜時の延伸性が悪くなる傾向にあり、破断が生じやすくなる傾向にあるため、このような問題が生じない程度の適度な上限とするとよい。
【0115】
見掛け比重を上述の如くとするための方法は特に限定されるものではないが、例えば表面に塗料を塗る方法、フィルム内部に無機粒子及び/又は有機粒子などの不活性粒子を含有させる方法などが挙げられる。例えば、見掛け比重を大きくするためには、添加する粒子の比重を大きくする、粒子の添加量を多くする、フィルム製膜においては、延伸工程で延伸開始部分の温度よりも延伸終了部分の温度を高くする、延伸速度を遅くする等の手段があり、これらを単独、あるいは組み合わせて用いれば良い。延伸速度については、横方向の延伸速度を遅くすることが効果が大きく重要である。
【0116】
本発明においては、とりわけ、特定のステレオコンプレックス結晶化度(S)を有し、かつ見掛け比重を上記の如くすることによって、耐熱性が向上し、汎用のPETフィルムに施すのと同等の印刷加工性、蒸着加工性等の2次加工が可能となるものである。
【0117】
(L値)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、色差計により求められるL値が85以上である。L値が上記数値範囲にあると、白色性、隠蔽性に優れる。また印刷性に優れる。L値が85未満であると、印刷性や筆記の鮮明性に劣る傾向にある。このような観点から、L値は、好ましくは90以上、さらに好ましくは93以上である。
【0118】
このようなL値は、粒子の屈折率、粒子径、比重、添加量を適宜調整することによって達成される。例えば、屈折率の高い粒子を用いたり、粒子の添加量を増やすと、L値は高くなる傾向にある。また、製膜時の延伸倍率、延伸温度、延伸速度を適宜調整することによって達成される。例えば、延伸温度を低くすると、L値は高くなる傾向にある。また、見掛け比重を本発明が規定する数値範囲とすることも、L値を達成するための有効な手段である。
【0119】
(白色度)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、外観を良好にするという観点から、下記式により求められる白色度(単位:%)が、好ましくは83〜100%、より好ましくは87〜99%、さらに好ましくは91〜99である。とりわけ、白色度が上記数値範囲にあると包装用途に特に好適に用いられる。
白色度(%)=100−((100−L)+a+b1/2
ここでL、a、bは色差計により求められる数値である。
【0120】
このような白色度は、粒子の屈折率、粒子径、比重、添加量を適宜調整することによって達成される。例えば、用いる粒子の比重を高くしたり、屈折率を高くしたり、添加量を多くしたりすれば、白色度は高くなる傾向にある。また、製膜時の延伸倍率、延伸温度、延伸速度を適宜調整することによって達成される。例えば、延伸速度を速くするなどにより、白色度は高くなる傾向にある。また、見掛け比重を本発明が規定する数値範囲とすることも、白色度を達成するための有効な手段である。
【0121】
(光沢度)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、外観を良好にするという観点から、光沢度が、好ましくは10〜70、より好ましくは30〜70、さらに好ましくは30〜60である。とりわけ、光沢度が上記数値範囲にあると包装用途に特に好適に用いられる。
【0122】
光沢度は、用いる粒子の比重、屈折率、粒子径、屈折率を適宜調整することによって達成される。例えば、用いる粒子の比重を高くしたり、添加量を多くしたりすれば、光沢度は低くなる傾向にある。また、製膜時の延伸温度、その温度勾配、延伸速度を適宜調整することによって達成される。例えば、延伸温度を低くしたり、延伸速度を速くしたりすれば、光沢度は低くなる傾向にある。また、見掛け比重を本発明が規定する数値範囲とすることも、光沢度を達成するための有効な手段である。
【0123】
(破断強度)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、縦方向の破断強度と横方向の破断強度との平均が100MPa以上であることが好ましく、縦方向の破断強度と横方向の破断強度との差が50MPa以下であることが好ましい。破断強度の平均が大きくなると機械特性が向上し、フィルム加工時の搬送性が良くなる。一方、破断強度が大きすぎると、製膜時に破断が起きやすくなる等、生産効率が悪くなる傾向にある。また、縦方向の破断強度と横方向の破断強度との差が大きくなると、カールが発生しやすくなる傾向にあり、加工装置への挿入性が悪くなるなど加工性、搬送性が悪くなる傾向にある。このような観点から、縦方向と横方向の破断強度の平均は、110MPa以上がより好ましく、120MPa以上がさらに好ましく、130MPa以上が特に好ましい。また、縦方向と横方向の破断強度の差は、40MPa以下がより好ましく、30MPa以下がさらに好ましく、20MPa以上が特に好ましい。また、縦方向の破断強度が横方向の破断強度より大きい態様が好ましい。このような機械特性を得るには、延伸倍率を高くしたり、延伸倍率の縦と横のバランスを調整したり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を高くしたりすればよい。
【0124】
(厚み)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムの厚みは、好ましくは1〜300μmである。かかる厚みは、取り扱い時のシワになり易さ(シワ防止)の観点からは厚い方が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、30μm以上が特に好ましい。他方、厚すぎると作業性、取り扱い性が悪くなる傾向がみられ、この観点からは、250μm以下であることがより好ましく、190μm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましい。
【0125】
なお、本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、2層、あるいは3層以上の積層フィルムであっても良い。また3層以上の場合には、表層の粒子の含有量は、内層の粒子の含有量よりも高い含有量であることが好ましい。このような態様とすることによって、製膜性を維持しながらL値、白色度や隠蔽性をより高くすることができる。
【0126】
(ステレオコンプレックス結晶化度(S))
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、DSC測定の結晶融解ピーク強度より下記式(i)で定義されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上である。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は、さらに好ましくは97〜100%、特に好ましくは100%である。即ち本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、ステレオコンプレックス相が高度に形成されていることが好ましい。かかる態様により耐熱性に優れる。
S(%)=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
ΔHmsはステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。ΔHmhはホモ相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。ステレオコンプレックス結晶化度(S)は熱処理過程において最終的に生成するステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の割合を示すパラメーターである。
【0127】
本発明では、DSC測定において190℃以上に現れる結晶融解ピークは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークであり、190℃未満に現れる結晶融解ピークは、ホモ相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークである。
【0128】
(結晶融解ピーク)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、示差走査熱量計(DSC)測定で190℃以上に結晶融解ピークを有する。ここでは、結晶融解ピークの頂点が好ましくは190〜250℃の範囲にあることを意味する。また、結晶融解ピークの頂点の温度を結晶融解温度と呼称する場合がある。かかる結晶融解ピークは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークである。本発明においては、190〜250℃の範囲に結晶融解ピークを有する態様が好ましく、200〜220℃の範囲に結晶融解ピークを有する態様がさらに好ましい。結晶融解ピークが上記数値範囲にあると、耐熱性に優れる。
【0129】
(熱収縮率)
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、温度100℃で1時間処理したときの縦方向(MD)および横方向(TD)の熱収縮率が、共に3%以下であることが好ましい。熱収縮率は、より好ましくは共に2.5%以下、さらに好ましくは共に2%以下、特に好ましくは共に1%以下である。100℃の熱収縮率が上記数値範囲にあると、加工時等において熱がかかるような場合でもフィルムの平面性が維持され、カールも起きにくく、搬送性に優れる。また、印刷性に優れる。
【0130】
また、本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、温度150℃で30分間処理したときの縦方向(MD)および横方向(TD)の熱収縮率が、共に5%以下であることが好ましい。熱収縮率は、より好ましくは共に4%以下、さらに好ましくは共に3%以下である。150℃の熱収縮率が上記数値範囲にあると、加工時等において熱がかかるような場合でも加熱収縮斑が起きにくく、白色度の斑も起きにくくなる。また、印刷性に優れる。
【0131】
本発明においては、100℃の熱収縮率、または150℃の熱収縮率のどちらかが上記態様であれば、印刷性の向上効果を高くすることができるが、これらの熱収縮率を同時に満たすことによって、印刷性の向上効果をさらに高くすることができる。
熱収縮率は、延伸条件および熱処理条件を上述した本発明の好ましい態様とすることにより達成することができ、特に熱処理を施すことが重要である。
【0132】
<その他の層>
本発明の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムには、さらに機能を向上させる目的において、ハードコート層、ガスバリア層、滑り層、帯電防止層、下塗り層、保護層、等を組み合わせて使用することもできる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。(I)評価法および(II)原材料を説明する。
【0134】
(I)評価法
本発明および実施例で用いた評価法を説明する。
(1)分子量
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定機器は、
検出器;(株)島津製作所示差屈折計RID−6A
カラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
【0135】
(2)ラクチド含有量
試料をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、13C−NMR法により定量した。
【0136】
(3)カルボジイミド化合物含有量
ニコレ(株)製MAGJA−750フーリエ変換赤外分光光度計により樹脂特性吸収とカルボジイミド特性吸収の比較により、含有量を測定した。
【0137】
(4)カルボキシル基濃度
試料を精製o−クレゾールに溶解、窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
【0138】
(5)ステレオコンプレックス結晶化度(S)、結晶融解温度、結晶融解ピーク
ステレオコンプレックス結晶化度(S)、結晶融解温度、結晶融解ピークは、DSC(TAインストルメント社製TA−2920)を用いて結晶融解ピーク結晶融解温度(単位:℃)、結晶融解エンタルピー(単位:J/g)を測定し、ステレオコンプレックス結晶化度(S)は、その結晶融解エンタルピーから下記式(i)に従って求めた。なお、DSC測定におけるサンプル量は、フィルム状とする前の樹脂の場合は10mg、フィルムの場合は20mgとし、測定温度範囲25℃〜290℃、昇温速度20℃/分とした。
S(%)=[ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)]×100 (i)
(但し、ΔHmsはコンプレックス相の結晶融解エンタルピー(単位:J/g)、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(単位:J/g)をそれぞれ表わす。)
【0139】
(6)フィルム熱収縮率
ASTM D1204に準じ、温度100℃で1時間処理した後、または150℃で30分熱処理した後、室温(25℃)に戻し、長さ変化より熱収縮率をもとめた。
【0140】
(7)L値、白色度
日本電色(株)製、分光式色差計SZ−Σ90を使用し、L、a、b値を求め、JIS L1015C法に準拠してL値および白色度を求めた。
なお、白色度(単位:%)は、下記式を用いて求めた。
白色度(%)=100−((100−L)+a+b1/2
【0141】
(8)ガラス転移点温度
DSC(TAインストルメント社製TA−2920)を用いて求めた。サンプル量は、フィルム状とする前の樹脂の場合は10mg、フィルムの場合は20mgとし、測定温度範囲25℃〜290℃、昇温速度20℃/分とした。
【0142】
(9)比重(見掛け比重、密度)
硝酸カルシウム水溶液を溶媒として用いた密度勾配管中、25℃で浮沈法により測定した。
【0143】
(10)厚み斑
フィルムの厚みを、横方向(TD、機械的流れ方向と垂直な方向)に電子マイクロメーターで0.5m測定し、最高厚さ(単位:μm)と最低厚さ(単位:μm)との差と、平均厚み(単位:μm)との比(百分率)を求め、厚み斑(単位:%)とし、以下に準じて評価した。
◎:厚み斑が2%以下
○:厚み斑が2%を超え4%以下
△:厚み斑が4%を超え6%以下
×:厚み斑が6%を超える
厚み斑は低い方が好ましく、大きすぎると、機械特性にバラツキが生じる等の弊害があり好ましくない。厚み斑が6%を超えると実用に耐えない。
【0144】
(11)粒子の平均粒径
試料台上に、粒子の粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないように散在させ、金スパッター装置によりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200〜300オングストロームで形成し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3満倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも110個の粒子について、長径(Dli)、短径(Dsi)、および面積円相当径(Di)を求めた。
粒子の個数nとし、上記で得られた値を下記式に用いて、面積相当粒径(Di)の数平均値を平均粒径(D)とした。
【0145】
【数1】

【0146】
(12)破断強度、破断伸度
破断強度と破断伸度は、引張試験機(東洋ボールドウィン社製、商品名「テンシロン」)を用いて測定した。サンプルフィルムから、縦方向(MD)と横方向(TD)について、それぞれ長さ200mm×幅10mmのサンプルを採取し、間隔を100mmにセットしたチャックに挟んで固定した。100mm/分の速度で引張り、試験機に装着されたロードセルで荷重を測定した。荷伸曲線の破断時の荷重を読取り、引張前のサンプル断面積で割って破断強度(単位:MPa)を求めた。また、破断伸度は、初期のチャック間隔(L)と破断時のチャック間隔(L)から、下記式を用いて算出し、破断伸度(単位:%)とした。
破断伸度(%)=(L−L)/L×100
【0147】
(13)光沢度
日本電色工業(株)製グロスメーターを使用しJIS K7105に準拠して60度光沢度(60度の角度で入射した光線に対する表面の正反射光の割合である鏡面光沢度)を測定した。測定は、サンプル表面において任意の10箇所について実施し、それらの平均値を測定値とした。
【0148】
(14)印刷性
日本加工塗料(株)製ネアレックス70の赤色を厚さ2μmとなるように塗布し120℃で乾燥後、外観を見て評価した。インク層の収縮の著しいものを×、収縮の小さいものを○、これらの中間のものを△として評価した。
【0149】
(II)原材料
ポリ乳酸(A成分)は、以下の製造例で調製した。
[製造例1−1]ポリL−乳酸(PLLA1)の製造
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加し、その後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリL−乳酸(PLLA1)を得た。
得られたポリL−乳酸(PLLA1)の重量平均分子量(Mw)は15.2万、ガラス転移点温度(Tg)は55℃、融点は175℃、カルボキシル基濃度は14eq/ton、ラクチド含有量は350ppmであった。
【0150】
[製造例1−2]ポリD−乳酸(PDLA1)の製造
製造例1−1のL−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更し、他は同じ条件で重合を行い、ポリD−乳酸(PDLA1)を得た。
得られたポリD−乳酸(PDLA1)の重量平均分子量(Mw)は15.1万、ガラス転移点温度(Tg)は55℃、融点は175℃、カルボキシル基濃度は15eq/ton、ラクチド含有量は450ppmであった。結果をまとめて表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
[製造例2−1]ポリ乳酸A1の製造
上記製造例1−1で得られたポリL−乳酸(PLLA1)と、上記製造例1−2で得られたポリD−乳酸(PDLA1)とを各50質量部、およびリン酸金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−71)0.03質量部を、2軸混練装置の第一供給口より供給、シリンダー温度245℃で溶融混練した。さらに日清紡(株)製「カルボジライト」LA−1を、ポリL−乳酸とポリD−乳酸との合計量100質量部あたり0.3質量部、第二供給口より供給し、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練した。次いで、押し出し、冷却してペレット化し、ポリ乳酸A1を得た。
また、酸化チタン(石原産業(株)CR-63)を、その濃度が60質量%となるように2軸混練装置の第一供給口より供給し、混合する以外は上記と同様にして、酸化チタン含有のポリ乳酸A1Wを得た。得られたポリ乳酸A1Wの特性は、酸化チタンを含有する以外はポリ乳酸A1と同等であった。
【0153】
[製造例2−2]ポリ乳酸A2の製造
NA−71、およびLA−1を添加しない以外は上記製造例2−1と同様にしてポリ乳酸を得て、ポリ乳酸A2とした。
得られたポリ乳酸A2の重量平均分子量(Mw)、カルボキシル基濃度、ラクチド含有量、ステレオコンプレックス結晶化度(S)、ガラス転移点温度(Tg)、結晶融解温度をまとめて表2に示す。
また、酸化チタン(石原産業(株)CR-63)を、その濃度が60質量%となるように2軸混練装置の第一供給口より供給し、混合する以外は上記と同様にして、酸化チタン含有のポリ乳酸A2Wを得た。得られたポリ乳酸A2Wの特性は、酸化チタンを含有する以外はポリ乳酸A2と同等であった。
【0154】
[製造例2−3]ポリ乳酸A3の製造
上記製造例1−1において得られたポリL−乳酸(PLLA1)をポリ乳酸A3として用いた。
また、上記製造例1−1において、酸化チタン(石原産業(株)CR-63)を、その濃度が60質量%となるように供給し、酸化チタン含有のポリ乳酸A3Wを得た。得られたポリ乳酸A3Wの特性は、酸化チタンを含有する以外はポリ乳酸A3と同等であった。
【0155】
【表2】

【0156】
[実施例1〜4]
製造例2−1の操作で得られたポリ乳酸A1に、表3に記載の如くの酸化チタン(石原産業(株)CR-63)の混合されたポリ乳酸A1Wを、表3に記載の如くの酸化チタン濃度となるようにブレンドし、これを110℃で5時間乾燥した後、表3に記載の溶融押出温度で押出機にて溶融混練し、表3に記載のリップ開度を有するダイを用い、ダイ温度230℃でフィルム状に溶融押出し、冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルムを得た。なお、酸化チタンの純度は97%、比重は4.2、屈折率は2.7であった。
次いで、得られた未延伸フィルムを、表3に記載の製膜条件で延伸、熱処理(100秒間)し、ポリ乳酸フィルムを得た。得られたポリ乳酸フィルムの物性を表3に示す。
【0157】
[実施例5]
ルチル型酸化チタンの代わりに、アナターゼ型酸化チタン(富士チタン工業(株)TA−200)を用い、実施例1と同様にしてポリ乳酸フィルムを得た。得られたポリ乳酸フィルムの物性を表3に示す。なおアナターゼ型酸化チタンの平均粒径は0.39μm、比重は3.9、屈折率は2.52であった。
【0158】
[比較例1]
酸化チタンの代わりにシリカ(日本触媒、シーホスターKE-E30)を混合すること以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸フィルムを得た。なお、シリカの平均粒径は0.27μm、比重は2.1、屈折率は1.45であった。得られたポリ乳酸フィルムの物性を表3に示す。
比較例1で得られたポリ乳酸フィルムは、見掛け比重が小さいものであり、L値および白色度が低く、また光沢度が高すぎ、包装用、ラベル用などの白色フィルムとしては不充分であった。
【0159】
[比較例2、3]
実施例1におけるポリ乳酸A1およびA1Wの代わりに、比較例2においては上記製造例3の操作で得られたポリ乳酸A3およびA3Wを用い、比較例3においては上記製造例2の操作で得られたポリ乳酸A2およびA2Wを用い、押出条件および製膜条件を表3に記載のとおりとする以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸フィルムを得た。得られたポリ乳酸フィルムの物性を表3に示す。
なお、比較例2においては、熱固定温度が190℃ではフィルムが溶融、破断してしまったので熱固定温度を140℃として製膜した。
比較例2で得られたポリ乳酸フィルムは、フィルムが一部溶融したり、シワにより大きく変形してしまったため、150℃熱収縮率を測定することができず、熱寸法安定性が低いものであった。また、印刷性に劣るものであった。
比較例3で得られたポリ乳酸フィルムは、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が低いものであり、熱寸法安定性に劣るものであった。また、印刷性に劣るものであった。
【0160】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とからなるポリ乳酸(A成分)を含有する樹脂組成物よりなり、示差走査熱量計(DSC)測定で190℃以上に結晶融解ピークを有し、下記の(i)式で定義されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上である白色二軸延伸ポリ乳酸フィルムであって、
色差計により求められるL値が85以上であり、
見掛け比重が1.30g/cmを超える
白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
S(%)=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
(但し、ΔHmsはステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。ΔHmhはホモ相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。)
【請求項2】
100℃で1時間処理した時の縦方向および横方向の熱収縮率が3%以下である請求項1に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項3】
ステレオ化促進剤、および/または、ブロック形成剤を含有する請求項1または2に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項4】
ステレオ化促進剤が、リン酸金属塩であり、ブロック形成剤が、エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基およびカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を分子中に少なくとも1個有する化合物である請求項3に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項5】
平均粒径0.1μm以上5μm以下の粒子を3質量%以上45質量%以下含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項6】
粒子の比重が2以上である請求項5に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項7】
粒子の屈折率が1.5以上である請求項5または6に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項8】
縦方向の破断強度と横方向の破断強度との平均が100MPa以上であり、縦方向の破断強度と横方向の破断強度との差が50MPa以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。
【請求項9】
包装用として用いられる請求項1〜8のいずれか1項に記載の白色二軸延伸ポリ乳酸フィルム。

【公開番号】特開2011−162713(P2011−162713A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29017(P2010−29017)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】