白色発光デバイス
白色光発光半導体ナノクリスタルは、複数の半導体ナノクリスタルを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、それぞれその全体が引用により組み込まれている2006年2月14日出願の米国出願第60/773,119号及び2006年10月10日出願の米国出願第60/828,909号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、半導体ナノクリスタルを含む白色発光デバイスに関する。
【0003】
(連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発)
米国政府は、軍用ナノテクノロジー研究所(Institute for Soldier Nanotechnologies)を介する米国陸軍研究所(U.S. Army Research Office)からの助成金番号DAAD-19-02-0002及び全米科学財団(National Science Foundation)からの助成金番号DMR 0213282に従って、本発明において特定の権利を有することができる。
【背景技術】
【0004】
(背景)
小さい直径を有する半導体ナノクリスタルは、分子形態の物質とバルク形態の物質との中間の特性を有することができる。例えば、小さい直径を有する半導体材料に基づくナノクリスタルは、すべての3つの次元で電子及び正孔の双方の量子閉じ込めを発揮することができるため、ナノクリスタルのサイズを小さくしながら、材料の有効バンドギャップを大きくする。したがって、ナノクリスタルの光吸収及び発光は、ナノクリスタルのサイズが小さくなるに従って、共に青(即ちより高エネルギー)へとシフトする。半導体ナノクリスタルは、その発光波長がナノクリスタルのサイズ及び材質に応じて調整可能である狭い蛍光バンドを有することができる。
【0005】
発光デバイスは、例えば、ディスプレイ(例えば、フラットパネルディスプレイ)、スクリーン(例えば、コンピュータスクリーン)、及び照明を必要とする他の物品で使用され得る。したがって、発光デバイスの輝度は、デバイスの1つの重要な特徴である。また、低い動作電圧及び高い効率は、放出デバイス製造の実行可能性を改善し得る。多くの応用において、長いデバイス寿命が所望される。
【発明の開示】
【0006】
(要旨)
安定な白色発光材料は、ディスプレイ用途に極めて好ましい。発光半導体ナノクリスタルは、有機発光化合物より安定し得る。半導体ナノクリスタルは、有機化合物と比較して狭い発光バンド幅を有することもできる。
概して、発光デバイスは、複数の半導体ナノクリスタルを含む発光層を含み、該複数の半導体ナノクリスタルは、励起により白色光を発する。複数のナノクリスタルは、赤色、緑色及び青色発光ナノクリスタルを含むことができる。ナノクリスタルの少なくとも1つは、コアを含むことができる。ナノクリスタルは、コアの上にオーバーコーティングを含むことができる。オーバーコーティングは、第二の半導体材料を含むことができる。該デバイスは、少なくとも0.20%の外部量子効率を有することができる。該デバイスは、(0.35、0.41)のCIE座標を有することができる。該デバイスは、5500Kの黒体基準と比較して86の演色評価数(CRI)を有することができる。
【0007】
別の態様において、発光デバイスは、第一電極と、該第一電極に接触する正孔注入層と、該正孔注入層に接触する正孔輸送層と、該正孔輸送層に接触する正孔ブロッキング層と、該正孔ブロッキング層に接触する電子輸送層と、該電子輸送層に接触する第二電極と、該電子輸送層と該正孔ブロッキング層の間の複数の半導体ナノクリスタルとを含み、該複数の半導体ナノクリスタルは、励起されたときに少なくとも2色の異なる発光を含む。
第一電極は、透明電極であり得る。正孔注入層は、導電性ポリマーを含むことができる。正孔輸送層は、ベンジジンを含むことができる。正孔ブロッキング層は、トリアゾールを含むことができる。電子輸送層は、金属錯体を含むことができる。第二電極は、金属を含むことができる。複数の半導体ナノクリスタルは、励起されたときに少なくとも3色の異なる発光を含むことができる。それぞれの異なる色の発光は、複数の半導体ナノクリスタルのフォトルミネッセンススペクトルにおける局所的最大発光である。
【0008】
半導体ナノクリスタルを、発光デバイス内の発光団として使用することができる。半導体ナノクリスタルは、狭い発光線幅を有し、フォトルミネッセンス効率が良く、且つ発光波長の調節が可能であるので、望ましいルモフォア(lumophore)となることができる。半導体ナノクリスタルを、溶液中に分散させることができ、したがってスタンプ、プリント、回転成形、ドロップキャスティング、及び浸漬コーティングなどの薄膜堆積技法に適合する。しかし、これらの堆積技法から生じるバルク半導体ナノクリスタル固体は、固相発光デバイスにおいて低い電気的輸送性質を有する。バルク固体ではなく、半導体ナノクリスタルの単層を発光デバイスに使用することができる。単層は、電気的性能に対する影響を最小限にしながら半導体ナノクリスタルの有益な発光性質を提供する。
【0009】
正孔輸送層又は電子輸送層(又は両方)のための有機物質を用いるデバイスは、電気から光への高効率変換を有することができるが、該有機物質の固有の不安定性のために寿命が短くなる可能性がある。光ルミネッセンス研究により証明されたように、無機ナノクリスタル自体は、これらの有機ルモフォア対応物(organic lumophore counterparts)よりも本質的に安定であり得る。ルミネッセンスのための半導体ナノクリスタル、及び電子輸送のための無機物質を利用する発光デバイス(LED)は、優れた光電子性能、及び長期安定性を達成することができる。該無機半導体は、スパッタリング、真空蒸着、インクジェット印刷、又はイオンメッキなどの低温法により堆積され得る。
【0010】
半導体ナノクリスタルは、マイクロコンタクト印刷を使用して基板上に堆積され得る。有利には、マイクロコンタクト印刷は、表面上へのフィーチャのミクロンスケール、又はナノスケール(例えば1mm未満、500μm未満、200μm未満、100μm未満、25μm未満、又は1μm未満)パターニングを可能にする。特に、半導体ナノクリスタルの単層を、マイクロコンタクト印刷によって堆積することができる。この手法は、基板へのパターン化半導体ナノクリスタル被膜の実質的乾燥(即ち実質的に無溶媒)塗布を可能にする。したがって、幅広い種類の基板を使用することができる。なぜならば、基板の選択は、可溶性及び表面化学要件により制約されないためである。例えば、その全体が引用により組み込まれている2005年10月21日出願の米国出願第11/253,612号を参照されたい。
別の態様において、デバイスを形成する方法は、複数の半導体ナノクリスタルを含む層を第一電極と第二電極との間に配置することを含み、該複数の半導体ナノクリスタルは、例えば、ナノクリスタルを表面にプリント、スタンプ又は堆積することによって、励起により白色光を発生させる。光を発生させる方法は、デバイスの第一電極及び第二電極に発光電位を印加することを含む。ディスプレイは、複数の発光デバイスを含むことができる。
【0011】
ハイブリッド有機/無機構造における混合赤色、緑色及び青色発光コロイドナノクリスタルの単層からのエレクトロルミネッセンスに基づく白色光LEDを発生させることができる。コロイドナノクリスタルは、高発光を可能にし、デバイス用途再現可能な混合ナノクリスタル材料が使用される。白色ナノクリスタルLEDは、0.36%の外部量子効率、映像輝度における(0.35、0.41)のCIE(国際照明委員会)座標、及び5500Kの黒体基準と比較した場合における86の演色評価数(CRI)を示すことができる。有機電荷輸送層及び混合ナノクリスタル発光層の独立した処理は、エレクトロルミネッセンス層における異なるカラーナノクリスタルの比を単に変化させることによって、デバイス構造を変化させることなく発光スペクトルの厳密な調整を可能にする。実証されたデバイスは、固体の照明及び情報表示用途における白色ナノクリスタルLEDの将来の使用を示唆する。
本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面並びに特許請求の範囲から明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(詳細な説明)
白色光を発光することが可能な発光デバイスは、例えば、その全体が引用により組み込まれている2006年2月14日出願の米国出願第60/773,119号に記載されている。
小さな直径を有するナノクリスタルは、分子とバルク形態の物質との中間の性質を有することができる。例えば、小さな直径を有する半導体物質に基づくナノクリスタルは、3次元すべてにおいて電子と正孔との両方の量子閉じ込めを示すことができ、結晶サイズの減少に伴い、物質の有効なバンドギャップを増加させる。それゆえ、結晶のサイズが小さくなるにつれて、ナノクリスタルの吸光と発光との両方が、青色へ、即ち、より高いエネルギーへシフトする。
【0013】
ナノクリスタルからの発光は、狭いガウス発光バンド(Gaussian emission band)とすることができ、ナノクリスタルのサイズ、ナノクリスタルの組成、又はその両方を変化させることによって、紫外領域、可視領域、又は赤外領域のスペクトルの全波長範囲にわたって調整することができる。ナノクリスタルの集団の狭いサイズ分布は、狭いスペクトル範囲での発光を生じさせることができる。該集団は、単分散にすることができ、ナノクリスタルの直径について15%rms未満の偏差、好ましくは10%未満の偏差、より好ましくは5%未満の偏差を示すことができる。可視において発光するナノクリスタルのために、半値全幅(FWHM)が約75nm以下、好ましくは60nm以下、より好ましくは40nm以下、最も好ましくは30nm以下である狭い範囲のスペクトル発光を観察することができる。IR発光ナノクリスタルは、150nm以下、又は100nm以下のFWHMを有することができる。該発光のエネルギーの観点から表現すると、該発光は、0.05eV以下、又は0.03eV以下のFWHMを有することができる。発光の幅は、ナノクリスタル直径の分散性が減少するにつれて縮小する。半導体ナノクリスタルは、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%よりも大きい、高い発光量子効率を有することができる。
【0014】
ナノクリスタルを形成する半導体には、II-VI族の化合物、II-V族の化合物、III-VI族の化合物、III-V族の化合物、IV-VI族の化合物、I-III-VI族の化合物、II-IV-VI族の化合物、又はII-IV-V族の化合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はそれらの混合物を含めることができる。半導体は合金、例えば、CdS及びZnSの合金のような第II〜VI族化合物の合金であり得る。
【0015】
単分散半導体ナノクリスタルの調製方法は、高温の配位溶媒に注入されるジメチルカドミウムなど有機金属試薬の熱分解を含む。これは、離散的な核形成を可能にし、巨視量のナノクリスタルの制御された成長をもたらす。ナノクリスタルの調製及び操作は、例えば米国特許第6,322,901号及び第6,576,291号、並びに米国特許出願第60/550,314号に記載されており、各特許文献の全体は引用により組み込まれている。ナノクリスタルの製造方法は、コロイド成長プロセスである。コロイド成長は、Mドナー及びXドナーを高温配位溶媒に急速に注入することによって生じる。この注入は、核を生成し、該核は、ナノクリスタルを形成するために、制御された様式で成長させることができる。反応混合物を穏やかに加熱して、ナノクリスタルを成長させ、及びアニールすることができる。サンプル中のナノクリスタルの平均サイズとサイズ分布との両方が、成長温度に依存する。安定した成長を維持するために必要な成長温度は、平均結晶サイズの増加に伴って増加する。ナノクリスタルは、ナノクリスタルの集団のメンバーである。離散的な核形成及び制御された成長の結果、得られるナノクリスタルの集団は、狭い単分散の直径分布を有する。単分散の直径分布は、サイズということもできる。核形成に続く、配位溶媒中でのナノクリスタルの制御された成長及びアニーリングのプロセスは、一様な表面誘導体化及び規則的なコア構造を生じさせることもできる。サイズ分布が鋭くなるにつれて、安定した成長を維持するために、温度を上昇させることができる。より多くのMドナー又はXドナーを添加することによって、成長期間を短縮することができる。
【0016】
Mドナーは、無機化合物、有機金属化合物、又は元素金属とすることができる。Mは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はタリウムである。Xドナーは、Mドナーと反応して一般式MXを有する物質を生成することができる化合物である。通常、Xドナーは、カルコゲニドドナー又はプニクタイドドナー、例えば、ホスフィンカルコゲニド、ビス(シリル)カルコゲニド、二酸素、アンモニウム塩、又はトリス(シリル)プニクタイドである。適切なXドナーは、二酸素、ビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)2Se)、トリアルキルホスフィンセレニド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)セレニド(TOPSe)又は(トリ-n-ブチルホスフィン)セレニド(TBPSe)など)、トリアルキルホスフィンテルリド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)テルリド(TOPTe)又はヘキサプロピルホスホラストリアミドテルリド(HPPTTe)など)、ビス(トリメチルシリル)テルリド((TMS)2Te)、ビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)、トリアルキルホスフィンスルフィド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)スルフィド(TOPS)など)、アンモニウム塩(例えばハロゲン化アンモニウム(例えばNH4Cl)など)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィド((TMS)3P)、トリス(トリメチルシリル)アルセニド((TMS)3As)、又はトリス(トリメチルシリル)アンチモニド((TMS)3Sb)を含む。特定の実施態様では、Mドナー及びXドナーは、同一分子内の成分とすることができる。
【0017】
配位溶媒は、ナノクリスタルの成長の制御に役立たせることができる。配位溶媒は、ドナー孤立電子対を有する化合物であり、例えば、成長するナノクリスタルの表面に配位するのに利用できる孤立電子対を有する。溶媒配位は、成長するナノクリスタルを安定化させることができる。代表的な配位溶媒としては、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸があるが、ピリジン、フラン、及びアミンなどの他の配位溶媒も、ナノクリスタルの生成に適していることがある。適切な配位溶媒の例としては、ピリジン、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)、及びトリス-ヒドロキシルプロピルホスフィン(tHPP)がある。工業用のTOPOを使用することができる。
【0018】
反応の成長段階中のサイズ分布は、粒子の吸収線幅をモニタリングすることによって評価することができる。粒子の吸収スペクトルの変化に応じた反応温度の修正により、成長中、鋭い粒子サイズ分布の維持が可能になる。より大きな結晶を成長させるために、結晶成長中に、核形成溶液に反応物を添加することができる。特定のナノクリスタル平均直径で成長を停止させ、半導体物質の適切な組成を選択することによって、ナノクリスタルの発光スペクトルは、300nm〜5ミクロンの波長範囲にわたって、又はCdSe及びCdTeについては400nm〜800nmにわたって連続的に調整することができる。ナノクリスタルは、150Å未満の直径を有する。ナノクリスタルの集団は、15Å〜125Åの範囲の平均直径を有する。
【0019】
ナノクリスタルは、狭いサイズ分布を有するナノクリスタルの集団のメンバーであってよい。ナノクリスタルは、球形、棒状、円盤状、又は他の形状であってよい。ナノクリスタルは、半導体物質のコアを含むことができる。ナノクリスタルは、式MXを有するコアを含むことができ、ここでMは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、又はそれらの混合物であり、Xは、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、又はそれらの混合物である。
【0020】
コアは、該コアの表面上にオーバーコーティングを有することができる。オーバーコーティングは、該コアの組成物とは異なる組成物を有する半導体物質であってもよい。ナノクリスタルの表面上の半導体物質のオーバーコートは、II-VI族の化合物、II-V族の化合物、III-VI族の化合物、III-V族の化合物、IV-VI族の化合物、I-III-VI族の化合物、II-IV-VI族の化合物、又はII-IV-V族の化合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はそれらの混合物を含むことができる。例えば、ZnS、ZnSe、又はCdSオーバーコーティングを、CdSe又はCdTeナノクリスタル上に成長させることができる。オーバーコーティングプロセスは、例えば米国特許第6,322,901号に記載されている。オーバーコーティング中に反応混合物の温度を調節し、コアの吸収スペクトルをモニタリングすることによって、高い発光量子効率と狭いサイズ分布とを有するオーバーコート物質を得ることができる。オーバーコーティングは、1〜10層の単層の厚さとすることができる。
【0021】
粒子サイズ分布は、米国特許第6,322,901号に記載されている、メタノール/ブタノールなどのナノクリスタルに対する貧溶媒を用いるサイズ選択的沈殿法によって、さらに精製することができる。例えば、ナノクリスタルは、10%ブタノールのヘキサン溶液中に分散させることができる。メタノールは、乳光が持続するまで、攪拌溶液に滴下して加えることができる。遠心分離による上清と凝集物との分離により、サンプル中に最大結晶に富んだ沈殿物が生成される。この手順を、吸光スペクトルのさらなる鋭利化が認められなくなるまで繰り返すことができる。サイズ選択的沈殿法は、ピリジン/ヘキサン及びクロロホルム/メタノールを含めた種々の溶媒/非溶媒のペアで実施することができる。サイズ選択されたナノクリスタル集団は、平均直径から15%rms以下の偏差、好ましくは10%rms以下の偏差、より好ましくは5%rms以下の偏差を有することができる。
【0022】
ナノクリスタルの外部表面は、成長プロセス中に使用された配位溶媒から誘導される化合物の層を含むことができる。過剰な競合配位基へ繰り返し曝露することによって表面を改質することができる。例えば、覆われたナノクリスタルの分散は、ピリジンなどの配位性有機化合物を用いて処理し、ピリジン、メタノール、及び芳香族中では容易に分散するが、脂肪族溶媒中ではもはや分散しない結晶を生成することができる。そのような表面交換プロセスは、例えばホスフィン、チオール、アミン、及びリン酸塩を含めた、ナノクリスタルの外部表面と配位、又は結合できる任意の化合物を用いて実施することができる。ナノクリスタルは、表面に対して親和性を示し且つ懸濁液又は分散媒体に対して親和性を有する成分で終わる短鎖ポリマーに曝露させることができる。そのような親和性は、懸濁液の安定性を改善し、ナノクリスタルの凝集を妨げる。ナノクリスタル配位化合物は、米国特許第6,251,303号に記載されており、その全体は引用により組み込まれている。
【0023】
より具体的には、配位子が、次式を有することができる。
【化1】
式中、kは、2、3、又は5であり、nは、k-nが0未満にならないような1、2、3、4、又は5であり;Xは、O、S、S=O、SO2、Se、Se=O、N、N=O、P、P=O、As、又はAs=Oであり;Y及びLはそれぞれ、独立して、アリール、ヘテロアリール、或いは少なくとも1つの二重結合、少なくとも1つの三重結合、又は少なくとも1つの二重結合及び1つの三重結合を任意に含む直鎖状の、又は分岐したC2-12炭化水素鎖である。炭化水素鎖は、一種以上のC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、C3-5シクロアルキル、3〜5員環ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-4アルキルカルボニルオキシ、C1-4アルキルオキシカルボニル、C1-4アルキルカルボニル、又はホルミルによって任意に置換することができる。また、炭化水素鎖は、-O-、-S-、-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-N(Rb)-、-O-C(O)-O-、-P(Ra)-、又は-P(O)(Ra)-によって任意に中断することができる。Ra及びRbはそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0024】
アリール基は、置換又は非置換の環状芳香族基である。例としては、フェニル、ベンジル、ナフチル、トリル、アントラシル、ニトロフェニル、又はハロフェニルがある。ヘテロアリール基は、環の中に1つ以上のヘテロ原子を有するアリール基であり、例えばフリル、ピリジル、ピロリル、フェナントリルである。
適切な配位子を、商業的に購入することができ、又は、例えばJ. Marchの文献、「有機化学特論(Advanced Organic Chemistry)」(その全体は引用により組み込まれている)に記載されている通常の合成有機技法によって調製することができる。
【0025】
透過型電子顕微鏡(TEM)は、ナノクリスタル集団のサイズ、形状、及び分布に関する情報を提供することができる。粉末X線回折(XRD)パターンが、ナノクリスタルの結晶構造のタイプ及び質に関する最も完全な情報を提供することができる。また、粒子径は、X線コヒーレンス長を介してピーク幅に反比例するので、サイズの評価も可能である。例えば、ナノクリスタルの直径は、透過型電子顕微鏡によって直接測定することができ、又は、例えばシェラーの式を使用してX線回折データから評価することができる。また、UV/Vis吸収スペクトルから評価することもできる。
【0026】
亜鉛、カドミウム及び硫黄を含むコア、例えば、ZnS及びCdSの合金であるZnCdSを有し、直径が5から15ナノメートル、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15nmであるナノクリスタルは、放射によって励起されると発光することができる。
ナノクリスタルは、20〜40%の量子収率を有することができる。ZnCdS合金ナノクリスタルを例えばZnSでオーバーコートして、量子収率を40%〜60%まで高めることができる。ナノクリスタルの組成及び/又は直径を調節することによって、全幅半値が25〜30nmの415nmから510nmのいずれかで発光するようにこれらの材料を調整することができる。
【0027】
発光デバイスは、デバイスの2つの電極を分離する2つの層を含むことができる。一方の層、即ち正孔輸送層(HTL)の物質は、物質が正孔を輸送できる能力に基づいて選択することができる。他方の層、即ち電子輸送層(ETL)の物質は、物質が電子を輸送できる能力に基づいて選択することができる。通常、電子輸送層は、エレクトロルミネッセンス層を含む。電圧が印加されるとき、一方の電極は、正孔(正電荷キャリア)を正孔輸送層に注入し、他方の電極は、電子を電子輸送層に注入する。注入された正孔及び電子はそれぞれ、逆に荷電された電極に向かって移動する。電子及び正孔が同一分子に局在するとき、励起子が形成され、励起子は、再結合して光を放出することができる。該デバイスは、HTLとETLとの間の放出層を含むことができる。該放出層は、発光波長又は線幅など、その放出特性に関して選択された物質を含むことができる。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれている2005年3月4日出願の米国出願第11/071,244号及び2006年2月15日出願の米国出願第11/354,185号を参照されたい。青色発光デバイスは、白色発光デバイスの一部であり得る。例えば、その全体が引用により組み込まれている2006年2月14日出願の米国出願第60/773,119号を参照されたい。
【0028】
発光デバイスは、図1に示されるような構造を有することができ、図中、第一電極2と、電極2に接触する第一層3と、層3に接触する第二層4と、第二層4に接触する第二電極5とを有する。第一層3は、正孔輸送層とすることができ、第二層4は、電子輸送層とすることができる。少なくとも1つの層を、非重合性にすることができる。該層は無機物質を含むことができる。この構造の電極の1つは、基板1に接触している。各電極を電源に接触させ、該構造にわたって電圧を提供することができる。適切な極性の電圧がヘテロ構造にわたって印加されるとき、ヘテロ構造の放出層によってエレクトロルミネッセンスを生じさせることができる。第一層3は、複数の半導体ナノクリスタル、例えばナノクリスタルの実質的な単分散集団を含むことができる。別法として、別個の放出層(図1に示さず)を、正孔輸送層と電子輸送層との間に含むことができる。別個の放出層は、複数のナノクリスタルを含むことができる。ナノクリスタルを含む層は、ナノクリスタルの単層とすることができる。代表的な効率が図2に示されている。
【0029】
半導体ナノクリスタルを含む発光デバイスは、HTL有機半導体分子及び半導体ナノクリスタルを含む溶液を回転成形することによって作成することができ、該HTLは、相分離によって半導体ナノクリスタル単層の下に形成した(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれている2003年3月28日出願の米国特許出願第10/400,907号及び米国特許出願公開第2004/0023010号を参照されたい)。この相分離技法は、有機半導体HTLとETLとの間に半導体ナノクリスタルの単層を再現可能に配置し、それにより半導体ナノクリスタルの好ましい発光性質を効果的に活用し、それと共に、電気的性能へのそれらの影響を最小限にした。この技法によって作成されたデバイスは、溶媒中の不純物によって、及び半導体ナノクリスタルと同一の溶媒に可溶な有機半導体分子を使用する必要性によって制限された。相分離技法は、HTLとHILとの両方の上に半導体ナノクリスタルの単層を堆積するのには不適であった(溶媒が、下にある有機薄膜を破壊するため)。また、相分離方法は、同一基板上で、異なる色を放出する半導体ナノクリスタルの位置の制御を可能にしなかった。同様に、相分離方法は、同一基板上への、異なる色を放出するナノクリスタルのパターニングを可能にしなかった。
さらに、輸送層(即ち正孔輸送層、正孔注入層、又は電子輸送層)に使用される有機物質は、放出層に使用される半導体ナノクリスタルより不安定であり得る。結果として、該有機物質の運用年数は、該デバイスの寿命に制限される。該輸送層に長寿命物質を用いたデバイスを使用して、長寿命発光デバイスを製造することができる。
【0030】
基板は、不透明又は透明であり得る。透明基板を使用して透明LEDの製造に使用することができる。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているBulovic, V. らの論文, Nature 1996, 380, 29;及びGu, G.らの論文, Appl. Phys. Lett. 1996, 68, 2606-2608を参照されたい。透明LEDを、ヘルメットバイザー又は車のフロントガラスのようなヘッドアップディスプレイなどの応用に使用することができる。基板は、剛性又は可撓性であり得る。基板は、プラスチック、金属、又はガラスであり得る。第一電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)層などの、高い仕事関数の正孔注入導体とすることができる。他の第一電極物質は、ガリウムインジウムスズオキシド(gallium indium tin oxide)、亜鉛インジウムスズオキシド(zinc indium tin oxide)、窒化チタン、又はポリアニリンを含むことができる。第二電極は、例えば、Al、Ba、Yb、Ca、リチウムアルミニウム合金(Li:Al)、又はマグネシウム銀合金(Mg:Ag)などの、低い仕事関数(例えば4.0eV未満)の電子注入金属とすることができる。Mg:Agなどの第二電極は、不透明保護金属層、例えば大気の酸化から陰極層を保護するためのAgの層で、又は実質的に透明なITOの比較的薄い層で被覆することができる。第一電極は、約500オングストロームから4000オングストロームの厚さを有することができる。第一層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。第二層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。第二層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。第二電極は、約50オングストロームから約1000オングストロームよりも大きい厚さを有することができる。
【0031】
正孔輸送層(HTL)又は電子輸送層(ETL)は、無機半導体などの無機材料、又は有機材料を含むことができる。該層は、発光性材料の発光エネルギーより大きいバンドギャップを有する任意の材料であり得る。
【0032】
該層を、該電極の1つの表面上にスピンコーティング、ディップコーティング、蒸着、スパッタリング、又は他の薄層堆積方法により配置することができる。固体層の露出面上に該第二電極を、サンドイッチ、スパッタ、又は蒸着させることができる。該電極の1つ又は双方を、パターン状にすることができる。該デバイスの電極を、導電性経路により電圧源に接続することができる。電圧印加時に、該デバイスから光が発生する。2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,612号、双方とも2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,595号及び第11/253,612号、並びに2005年1月11日に出願された第11/032,163号を参照されたい。これらの各々は、その全体において引用により組み込まれている。
電子及び正孔がナノクリスタル上に局在するとき、発光波長で発光を起こすことができる。該発光は、量子閉じ込め半導体物質のバンドギャップに対応する周波数を有する。バンドギャップは、ナノクリスタルのサイズの関数である。
【0033】
個々のデバイスを、単一基板上の複数の位置に形成して、ディスプレイを製造することができる。該ディスプレイは、様々な波長で放出するデバイスを含むことができる。様々な色の発光半導体ナノクリスタルのアレイを該基板にパターニングすることにより、様々な色の画素を含むディスプレイを製造することができる。いくつかの適用例では、基板は、バックプレーンを含むことができる。該バックプレーンは、個々の画素への電力を制御する、又は切り換えるための能動又は受動電子回路を含む。バックプレーンを含むことは、ディスプレイ、センサ、又は撮像装置などの用途で有用になることがある。特に、該バックプレーンは、アクティブマトリックス、パッシブマトリックス、固定フォーマット、ダイレクトドライブ(directly drive)、又はハイブリッドとして構成することができる。ディスプレイは、静止画像用、動画用、又は照明用に構成することができる。照明ディスプレイは、白色光、単色光、又は色調整可能な光を提供することができる。例えば、その全体が引用により組み込まれている、2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,612号を参照されたい。
【0034】
デバイスは、製造プロセス中のルミネッセンス効率の低下を防止する、制御された(酸素を含まず、且つ水分を含まない)環境内で作成することができる。デバイス性能を改善するために、他の多層構造を使用することもできる(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれている2003年3月28日に出願された米国特許出願第10/400,907号及び第10/400,908号を参照されたい)。電子ブロッキング層(EBL)、正孔ブロッキング層(HBL)、又は正孔及び電子ブロッキング層(eBL)などのブロッキング層を構造内に導入することができる。ブロッキング層が含むことができるのは、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-ターシャリー-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、3,4,5-トリフェニル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ビス(4-ターシャリー-ブチルフェニル)-4-フェニル-1,2,4-トリアゾール、バトクプロイン(BCP)、4,4′,4"-トリス{N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ}トリフェニルアミン(m-MTDATA)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、1,3-ビス(5-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-ターシャリー-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、1,4-ビス(5-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン、又は1,3,5-トリス[5-(4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼンである。
【0035】
有機発光デバイスの性能は、それらの効率を高めること、それらの発光スペクトルを狭める、又は広げること、或いはそれらの発光を偏光させることによって改善することができる。例えば、Bulovicらの論文, Semiconductors and Semimetals 64, 255 (2000)、Adachiらの論文, Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Yamasakiらの論文, Appl. Phys. Lett. 76, 1243 (2000)、Dirrらの論文, Jpn. J. Appl. Phys. 37, 1457 (1998)、及びD'Andradeらの論文, MRS Fall Meeting, BB6.2 (2001)を参照のこと(各文献の全体は引用により組み込まれている)。ナノクリスタルは、効率の良いハイブリッド有機/無機発光デバイス内に含めることができる。
【0036】
ナノクリスタルの狭いFWHMは、飽和色の発光を生じることができる。これは、ナノクリスタル発光デバイスにおいて赤外及びUV発光へ光子が損失されないので、可視スペクトルの赤色及び青色部分でさえ効率の良いナノクリスタル発光デバイスをもたらすことができる。単一物質システムの可視スペクトル全体にわたる、広く調整可能な飽和色発光は、どのような種類の有機発色団とも一致しない(例えば、Dabbousiらの論文J. Phys. Chem. 101, 9463 (1997)を参照されたい。その全体は引用により組み込まれている)。ナノクリスタルの単分散集団は、狭い波長範囲にわたる光を放出する。複数のサイズのナノクリスタルを含むデバイスは、複数の狭い波長範囲内の光を放出することができる。観察者によって知覚される発光色は、デバイスにおけるナノクリスタルサイズと物質との適切な組合せを選択することによって制御することができる。ナノクリスタルのバンド端のエネルギー準位の縮退は、直接電荷注入によって生成されるにせよ、エネルギー移動によって生成されるにせよ、すべての生じ得る励起子の捕捉及び放射再結合を容易にする。したがって、理論上最大のナノクリスタル発光デバイス効率は、リン光性の有機発光デバイスの単一効率に匹敵する。ナノクリスタルの励起状態寿命(τ)は、典型的なリン光体(τ>0.5μs)よりもはるかに短く(τ〜10ns)、高電流密度でさえナノクリスタル発光デバイスが効率良く動作できるようにする。
【0037】
可視光又は赤外光を放出するデバイスを準備することができる。半導体ナノクリスタルのサイズ及び物質は、選択された波長の可視光又は赤外光をナノクリスタルが放出するように選択することができる。波長は、300nm〜2500nm以上の間、例えば300nm〜400nmの間、400nm〜700nmの間、700nm〜1100nmの間、1100nm〜2500nmの間、又は2500nmよりも大きくすることができる。
デバイスを、該輸送層のすべてを塗布した後に熱的に処理することができる。熱処理は、ナノクリスタル内への電荷注入をさらに向上させ、且つナノクリスタル上の有機キャッピング基(organic capping groups)を排除することができる。該キャッピング基の不安定性は、デバイスの不安定性の原因となり得る。
【0038】
効率がより高く、色可調性がより良好で、形状、サイズ又は実装に対する制限がより少ないため、白色LEDパネルは、多くの照明用途において、白熱電球又は蛍光電球にいつかは取って代わる可能性がある。単一チップInGaN白色LED(WLED)、多チップWLED、ZnSe系WLED、並びに単一ユニット白色OLED(WOLED)、積層白色OLED(SOLED)、及び青色OLED排気無機蛍光体を使用して広域白色スペクトルを生成する白色LEDにさらに分類できる白色有機LED(OLED)を含むいくつかの種類の固体デバイスは、(15lm/Wから30lm/Wの範囲の)効率的な白色ルミネッセンスを既に実現した。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているY. Shimizuら、米国特許第5,998,925号、Schubert, E.F.らの論文、Science、2005、308、1274、H. Matsubaraら、米国特許第6,509,651号、D'Andradeらの論文、 Adv. Mater.、2004、16、624、Kanno, H.らの論文、Adv. Mater. 2006、18、339及びDuggal, A.らの論文、Appl. Phys. Lett.、2002、80、3470を参照されたい。単一チップInGaN WLEDは、一般的な照明用の低コスト高輝度効率デバイスを与えるが、それらの発光プロファイルが、青色InGaN成分及び黄色蛍光発光物(典型的にはイットリウムアルミニウムガーネットYAG)からなるため、演色評価数(CRI)が低い。多チップWLEDは、高い演色評価数(CRI)をもたらす赤色、緑色及び青色発光サブユニットからなるが、サブユニットの分解率が異なるため、比較的高価であり、複雑なフィードバックシステムを必要とする。ZnSe系WLEDでは、ZnSの青色発光とZnSe基板の黄色発光とを混合することによって白色発光が実現される。これらのデバイスは、InGaN系LEDと比較して、効率がより低く、寿命がより短い。最後に、WOLED及びSOLEDは、3つの種類の有機蛍光体からのエレクトロルミネッセンスを組み合わせて、高い電子リン光効率(WOLEDについては10%まで、SOLEDについては30%まで)の白色ルミネッセンスを実現する。しかし、白色エレクトロルミネッセンスを生成する有機染料は、一般に無機材料より光安定性が低く、その品質は、消費者向け電子ディスプレイにおけるそれらの使用を制限しないが、室内照明のような高輝度用途におけるそれらの使用には問題がある。コロイド量子ドット(ナノクリスタル)に基づくLED又はナノクリスタル-LED(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800、Zhao, J.らの論文、Nano Lett、2006、6、463、Mueller, A.H.らの論文、Nano Lett.、2005、5、1039参照)は、OLEDのそれにせまる効率及び輝度を示すが、格別の光安定性並びに可視域の色可調性を有するナノクリスタルルモフォアを合成することができ(それぞれその全体が引用により組み込まれているMurray, C.B.らの論文、J. Am. Chem. Soc、1993、115、8706、Hines, M. A.らの論文、J. Phys. Chem.、1996、100、468、Steckel, J. S.、Angew. Chem. Int. Ed、2004、43、2154)、この試験で証明されたように、混合色のナノクリスタル層からのルミネッセンスによる高品質の演色性を可能にすることができる。
【0039】
有機半導体電荷担持体輸送層を使用するナノクリスタル-LEDに関する先の研究は、それぞれ2.0%、0.5%及び0.2%の効率を有する飽和色の赤色、緑色及び青色(RGB)単色ナノクリスタル-LEDをもたらした。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800、Steckel, J. S.らの論文、Angew. Chem. Int. Ed.、2004、43、2154、Coe-Sullivan, S.の論文、Adv. Funct. Mater.、2005、15、1117、S. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005を参照されたい。効率が幾分低いナノクリスタル-LEDも無機輸送層を使用して作製され、空気及び湿分に敏感な有機膜の代わりに使用されている。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているMueller, A. H.らの論文、Nano Lett.、2005、5、1039を参照されたい。今日まで、コロイドナノクリスタルエミッタを使用して白色光LEDを作製するいくつかの試みがなされただけであった。最初の白色ナノクリスタル-LEDの1つは、ほぼ全可視スペクトルを網羅するナノクリスタルバンドギャップ内部の奥深くの電荷トラップ状態(深トラップ状態)から生じる広域スペクトル発光を利用するものであった。例えば、その全体が引用により組み込まれているGao, M.らの論文、Adv. Mater.、1997、9、802を参照されたい。最近になって、深トラップナノクリスタルルミネッセンスを市販の外部紫外線LEDによって光励起した同様の手法が、それぞれその全体が引用により組み込まれているBowersらの論文、J. Am. Chem. Soc、2005、127、15378及びChenらの論文、Appl. Phys. Lett、2005、86、131905による研究に採用された。これらの研究において、放射光は白色に見えるが、深トラップ発光のルミネッセンスが不十分であり、材料を1つの合成から次の合成に向けて容易に再生できない。赤色(例えば、その全体が引用により組み込まれているY. Liらの論文、J. Appl. Phys.、2005、97、113501参照)又は緑色(例えば、その全体が引用により組み込まれているPark, J. H.らの論文、Nanotechnology、2004、15、1271参照)発光ナノクリスタルをそれぞれ効率的な緑色又は青色発光有機材料と共に使用して、白色LEDを作製するのに必要なミッシング(missing)カラー成分を与える異なる手法がいくつかのグループによって採用されている。これらのデバイスは、理想的な(0.33、0.33)に近い良好なCRI及びCIE(国際照明委員会)座標を示したが、OLEDに特有の色可調性及び安定性の問題が残る。他の研究では、市販のInGaNチップからの青色発光を用いて、赤色及び緑色コロイドナノクリスタルを励起させると同時に、ナノクリスタル再発光は白色のルミネッセンススペクトルを構成した。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているJ. Leeらの論文、Adv. Mater.、2000、12 15、1102及びChen, H.-S.らの論文、Technol. Lett.、2006、18、193を参照されたい。
【0040】
これまで述べたすべてのデバイスのうち、赤色、緑色及び青色発光コロイドナノクリスタルの電気誘導ルミネッセンスを利用する白色LEDは、まだ文献に報告されていない。この理由により、本発明者らは、既に報告されたナノクリスタル-LEDと類似のデバイス構造に取り込まれる、狭い発光バンド幅を有する再生合成された高量子収率のナノクリスタル材料を利用した効率的で安定した白色発光ナノクリスタル-LEDを提供する。例えば、その全体が引用により組み込まれているCoe, Sらの論文、Nature、2002、420、800を参照されたい。ナノクリスタル単層の作製における最近の進歩は、ナノクリスタル発光層(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe-Sullivan, S.らの論文、Adv. Funct. Mater.、2005、15、1117及びS. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005)及び担持体輸送層の独立的な処理を可能にし、白色又は多色ナノクリスタル-LEDの作製を単色デバイスの作製と同等にしている。3つのRGBナノクリスタル材料を使用すると、ナノクリスタル堆積工程において各種類のナノクリスタルの濃度を単に変えることによって、白色ナノクリスタル-LEDのCIE座標及びCRIを調整することが可能になる。
【0041】
本発明者らのデバイスは、正孔注入層としての導電性ポリマー(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)PEDOT:PSS)の層、厚さ40nmのN,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)ベンジジン(TPD)の正孔輸送層(HTL)、コロイドナノクリスタルの発光性単層、厚さ27nmの3,4,5-トリフェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)の正孔ブロッキング層(HBL)(エキシトン形成をナノクリスタル部位/その付近に限定する)、厚さ20nmのトリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)の電子輸送層(ETL)、及び厚さ20nmの銀保護層で被覆された厚さ100nmのマグネシウム銀合金のカソードを有する、ガラス基板上のインジウム錫酸化物(ITO)アノードからなる(図5参照)。白色LEDの赤色、緑色及び青色スペクトル成分を実現するための3種類のコロイド合成ナノクリスタル(実験のセクション参照)を使用した。赤色ナノクリスタル溶液は、波長λ=620nmにフォトルミネッセンスピークを有するCdSe/ZnSコア-シェルナノクリスタルで構成されていた。緑色ナノクリスタル溶液は、λ=540nmにフォトルミネッセンスピークを有する、ZnSでオーバーコートされたZnSe/CdSe合金コアで構成されていた。最後に、青色ナノクリスタル溶液は、λ=440nmにフォトルミネッセンスピークを有するZnCdS合金ナノクリスタルで構成されていた。赤色ナノクリスタル溶液と、緑色ナノクリスタル溶液と、青色ナノクリスタル溶液を表面被覆率で1:2:10(R:G:B)の割合で混合することによって、白色ナノクリスタル-LEDのナノクリスタル溶液を調製した。
【0042】
赤色、緑色、青色及び白色発光ナノクリスタル-LEDのエレクトロルミネッセンススペクトルを映像輝度/その付近で測定する(図4)。赤色及び緑色ナノクリスタル-LEDのエレクトロルミネッセンスは、それぞれ(0.65、0.34)及び(0.31、0.65)のCIE座標を有するコロイドナノクリスタルに特有の色飽和フォトルミネッセンススペクトルに対応する。青色発光ナノクリスタル-LEDスペクトルは、支配的なナノクリスタル成分並びにより弱いAlq3及びTPD発光を有し、それは、効率的なエネルギー伝達(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているForster, Th.;Annalen der Physik、1948、6、55及びKuhn, H.、J. Chem. Phys.、1970、53、101参照)及びAlq3による深い青色ナノクリスタルルミネッセンスのダウンコンバージョン(Alq3吸収と青色ナノクリスタルフォトルミネッセンスのスペクトル重複から推定される)を示している。対照的に、TPDフォトルミネッセンスと青色ナノクリスタル吸収のスペクトル重複は、TPDから青色発光ナノクリスタルへのエネルギー伝達を介するTPDエレクトロルミネッセンスの完全な消光をもたらすのに不十分である。青色ナノクリスタル-LEDのCIE座標は、(0.19、0.11)である。正孔ブロッキングTAZ層の存在により、青色ナノクリスタル単層がAlq3膜から物理的に分離されて、ナノクリスタルからAlq3へのエネルギー伝達及びAlq3ルミネッセンスが阻害されることが推定されるであろう。しかし、芳香族TAZと、ナノクリスタルを覆う脂肪族有機体との化学的不相溶性により、TAZ膜は、ナノクリスタル単層上で成長する場合は平面にならないことが、先の研究によって示された(例えば、その全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800参照)。これは、Alq3膜とナノクリスタル単層のいくつかの部分とを物理的に接触させて、青色ナノクリスタルLEDにおけるAlq3エレクトロルミネッセンスに寄与する。
【0043】
白色ナノクリスタル-LEDの発光スペクトル(図4)は、赤色、緑色及び青色ナノクリスタルエレクトロルミネッセンス成分の明確な分布を示す。TPDエレクトロルミネッセンス信号は、赤色及び緑色ナノクリスタルへの効率的なエネルギー伝達により、たいてい消光される。Alq3は、依然として、青色ナノクリスタル-LEDに類似する白色ナノクリスタル-LEDに弱いスペクトル特徴を示しているようである。白色ナノクリスタル-LEDピクセルは、5500Kの黒体基準と比較すると、均一に発光しているようであり、眼には「白色」に見え(図3)、9Vの印加バイアス及び86のCRIにおけるCIE座標が(0.35、0.41)である。そのような高CRIは、「低温白色」蛍光(CRI=62)、白熱光(CRI=100)、及び染料強化InGaN/GaN固体LED(CRI>80)などの他の近代の白色光源に劣らない。例えば、その全体が引用により組み込まれているKrames, M. R.らの論文、Phys. Stat. Sol. A、2002、192、237を参照されたい。
【0044】
単色ナノクリスタル-LEDの最大外部ルミネッセンス量子効率(EQE)を測定すると、赤色デバイスでは4.6Vにおいて1.6%(0.29mA/cm2)、緑色デバイスでは5.2Vにおいて0.65%(0.63mA/cm2)、青色デバイスでは9.1Vにおいて0.35%(1.73mA/cm2)である(図5)。これらの値は、いずれも先に報告されたナノクリスタルLEDと同程度であり(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800、Steckel、J. S.らの論文、Angew. Chem. Int. Ed.、2004、43、2154、Coe-Sullivan, S.らの論文、Adv. Funct. Mater.、2005、15、1117及びS. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005参照)、青色ナノクリスタル-LEDは、先の報告より効率が75%高い(例えば、その全体が引用により組み込まれているSteckel, J. S.らの論文、Angew. Chem. Int. Ed.、2004、43、2154参照)。白色ナノクリスタル-LEDの最大EQEは、5.0Vにおいて0.36%(1.51mA/cm2)(図5)であり、0.44Cd/A及び0.28lm/W並びに142cd/m2の輝度に対応する。
【0045】
赤色ナノクリスタル-LEDと緑色ナノクリスタル-LEDと青色ナノクリスタル-LEDとのEQEの有意な差は、これらのデバイスの異なる動作メカニズムに端を発し得る。ナノクリスタル-LEDについて提案された2つの最も一般的な動作メカニズム(例えば、その全体が引用により組み込まれているS. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005を参照されたい)としては、以下のメカニズムを挙げることができる。第一のメカニズムでは、それぞれAlq3/TAZ及びTPDによって輸送された電子及び正孔がナノクリスタルに直接注入され、そこで放射再結合できるエキシトンを形成する。第二のメカニズムでは、TPDに形成されたエキシトンが、それらのエネルギーを、後に放射するナノクリスタルに伝達する。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているForster, Th.の論文;Annalen der Physik、1948、6、55及びKuhn, H.の論文;J. Chem. Phys.、1970、53、101を参照されたい。青色デバイスについて上述したように、TAZ正孔ブロッキング層に欠陥が存在する場合は、Alq3膜もナノクリスタルと部分的に接触し、エネルギーをより高エネルギーの青色ナノクリスタルから受け取るか、又はそれを赤色ナノクリスタルに戻すことが可能である。
【0046】
赤色ナノクリスタル-LEDにおいて、直接的電荷注入並びにTPD及びAlq3からのエネルギー伝達は、これらのデバイスの高EQEに寄与する可能性がある。緑色ナノクリスタル-LEDにおいて、緑色及び赤色ナノクリスタル電子基底状態が同様のエネルギー状態である場合は、直接電荷注入は、赤色ナノクリスタル-LEDの場合と同様であり得る(図6)。また、TPDから緑色ナノクリスタルへのエネルギー伝達は、TPD発光及び緑色ナノクリスタル吸収スペクトルの有意な重複により効率的なはずである。しかし、(TAZ層欠陥により)形成されるあらゆるAlq3エキシトンは、同様のエネルギーの緑色ナノクリスタルエキシトンへエネルギーを伝達することなく、Alq3分子上で緩む可能性がある。さらに、これらの実験に使用される緑色ナノクリスタル溶液のフォトルミネッセンス効率(〜65%)は、赤色ナノクリスタル溶液の効率(90%)より低く、それも緑色ナノクリスタル-LEDのより低い効率に寄与する可能性がある。青色デバイスにおけるより低い効率の考えられる理由の1つをTPDから青色ナノクリスタルへの正孔注入の効果に帰することが可能である。Alq3/TAZから青色ナノクリスタルへの電子注入は、赤色及び緑色ナノクリスタルへの電子注入と同様であることが想定されるが、TPDから青色ナノクリスタルへの正孔注入は、青色ナノクリスタル-LEDのより高い作動電圧及びより低いEQEをもたらすさらなる潜在的障壁によって妨害され得る(図5)。このさらなる障壁をTPD正孔輸送エネルギーレベルの青色ナノクリスタル基底状態電子のバンドラインアップ、或いは青色ナノクリスタルを覆う有機基を貫通するのに必要なエネルギーの差に帰することが可能である。また、TPD膜から青色ナノクリスタルへのエネルギー伝達は、赤色又は緑色ナノクリスタルの場合ほど効率的でないと同時に、青色ナノクリスタルは、それらのエキシトンをAlq3分子に効率的に伝達することができる。これは、ナノクリスタル単層及びTAZ膜における欠陥が有機層を直接通る電荷輸送をもたらし、ナノクリスタル自体内よりTPD及びAlq3層内のエキシトン形成の効率が高くなるため、青色ナノクリスタルLEDに対するさらなる問題を提起する。緑色及び赤色ナノクリスタルの場合は、ナノクリスタル単層のギャップに形成されたエキシトンをナノクリスタルへ共鳴伝達することができるが、青色ナノクリスタルの場合は、これらのエキシトンは、放射再結合して、ナノクリスタル-LEDエレクトロルミネッセンススペクトルに観察されるTPD及びAlq3スペクトル特徴に寄与する。
【0047】
白色ナノクリスタル-LEDは、電荷注入に対する応答が異なる3種類のナノクリスタルを含むため、エレクトロルミネッセンススペクトルがデバイス誘導条件に依存すると想定される。図4(a)において、印加バイアスを5Vから9Vに変化させて、図4(c)に示されるように、CIE座標及びCRIのわずかな変化をもたらしたときの白色ナノクリスタル-LEDにおけるエレクトロルミネッセンススペクトル色変化を示す。電圧を高くすると、最初に支配的であった緑色ナノクリスタルスペクトル成分と比較して、白色ナノクリスタル-LEDスペクトルにおける赤色及び青色ナノクリスタルスペクトル成分が増加するのが観察される。この効果は、一部には、赤色、緑色及び青色の単色ナノクリスタル-LEDの電流-電圧(IV)特性の分析(図5(a))及び図6の提案されたエネルギーバンド図によって説明され得る。青色ナノクリスタル-LEDは、赤色及び緑色デバイスより高い電圧で映像輝度に達する。すべての電流に対する青色ナノクリスタル-LEDのより高い抵抗を、青色ナノクリスタルへの正孔注入に対するより高いエネルギー障壁に帰することができ、青色ナノクリスタルエキシトンを生成するためにより大きい印加電圧が必要である。白色ナノクリスタル-LEDにおいて、混合ナノクリスタル膜への電荷注入は、低い印加バイアス(5V)において、緑色及び赤色ナノクリスタルへの注入が支配的である。ナノクリスタル混合物は、赤色ナノクリスタルの2倍の緑色ナノクリスタルを含むため、低い印加バイアスにおいて、緑色ナノクリスタルのより大きい部分が、赤色ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスと比較してより高強度の緑色エレクトロルミネッセンス成分に寄与する。緑色ナノクリスタルが赤色ナノクリスタルの隣に位置する確率が低いため、緑色ナノクリスタルから赤色ナノクリスタルへの共鳴エネルギー伝達は、混合ナノクリスタル単層における青色ナノクリスタルと比較して相対的に小数の赤色及び緑色ナノクリスタルによって阻害される。より高い印加バイアスでは、青色ナノクリスタルへの電荷注入がより効率的になり、青色ナノクリスタルのエレクトロルミネッセンス成分がより大きくなる。青色ナノクリスタル上のエキシトン形成の増強は、青色ナノクリスタルから赤色及び緑色ナノクリスタルへのエキシトンエネルギー伝達により、赤色及び緑色ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスにとっても有益である。赤色ナノクリスタルへのエネルギー伝達は、スペクトル重複が大きくなるため、緑色ナノクリスタルへのエネルギー伝達より効率的であり、その結果、(より高い動作電圧において)青色ナノクリスタルルミネッセンスが強くなると、赤色ナノクリスタルルミネッセンスが緑色ナノクリスタルルミネッセンスより上昇することに留意されたい。混合ナノクリスタル単層において最も数の多い青色ナノクリスタル上のエキシトン形成は、単色青色ナノクリスタル-LEDの効率を厳密に追跡する白色ナノクリスタル-LEDの効率データに反映されるように、白色デバイスの全体効率を支配する。
【0048】
白色ナノクリスタル-LEDの動作は、すべての単色ナノクリスタル-LEDにおいて同一の電子輸送、正孔ブロッキング及び正孔輸送層を使用することによって可能になる。塗装場における色の混合と同様に、理想的なデバイスでは、ナノクリスタルの溶液を正確に混合して、所望のスペクトルを達成することができる。これは、最良のOLEDの可調性を凌ぐナノクリスタル-LED光源の固有の機能であり、ナノクリスタル-LED設計の簡潔さ及びナノクリスタルルモフォアの色純度に起因する。40nmのFWHM幅スペクトルを有する5つのナノクリスタルルモフォアを使用することによって、(0.33、0.35)のCIE座標及びCRI=98で白色光源を構成する完成白色ナノクリスタル-LEDのシミュレート発光スペクトルの一例が図7に示されている。当該シミュレートデバイスは、スペクトルのUV及びIR部で光子を放射しないため、輝度効率が最大になることに留意されたい。
【0049】
図8を参照すると、スペクトル重複を証明する、それぞれ標識されたTPD及びAlq3フォトルミネッセンススペクトルと共に、それぞれ標識された赤色、緑色及び青色半導体ナノクリスタル(「QD」)吸収スペクトルが示されている。
これは、そのスペクトルが成分ナノクリスタルの混合物であるエレクトロルミネッセンスデバイスを作製するために混合ナノクリスタル膜を使用することの実用性を証明するものである。したがって、白色発光ナノクリスタル-LEDは、低コスト材料、パターン化及び可撓性基板及び比較的高い効率を含む白色OLEDのすべての魅力に加えて、ナノクリスタルエミッタの耐久性及び色可調性を提供する。そのように、このナノクリスタル-LED白色光エミッタは、新たなより汎用的な混合スペクトル及び白色光技術の開発にナノクリスタルを使用する第一のステップになり得る。
【実施例】
【0050】
(実験)
(合成):
赤色、緑色及び青色を表す3色(RBG)を作成するために、3つの異なる種類のコロイド量子ドット(ナノクリスタル)を使用した。第一の種類のナノクリスタルは、λ=622mmにフォトルミネッセンス最大値を有するCdSe/ZnSがオーバーコートされたコア-シェルナノクリスタルである。第二の種類は、λ=540mm付近にフォトルミネッセンス最大値を有するZnSe/CdSe/ZnSコア-シェル/合金オーバーコートされたナノクリスタルである。第三の種類は、λ=440mm付近にフォトルミネッセンス最大値を有するCdZnS合金ナノクリスタルコアである。これらの3つの種類のナノクリスタルは、RGB色スキームの成分を構成する。狭い分布及び最大の量子収率を有する特異的波長エミッタを実現するのに、報告された調製法(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているIvanov, S. A.らの論文、J. Phys. Chem. B、2004、108、10625及びZhong, X.らの論文、J. Am. Chem. Soc、2003、125、13559)によるナノクリスタル合成が広く適応されている。発色対象は、それぞれλ=620nm、λ=530nm及びλ=470nmの人間の眼におけるRGBに対する最大検出領域に最も良く適合することで、可能な限り明るい外観を達成するように選択される。
【0051】
Quantum Dot社から購入した赤色CdSe/ZnSコア-シェルナノクリスタルは、λ=622nmにフォトルミネッセンスピークを示し、溶液フォトルミネッセンス量子収率が約90%である。
その全体が引用により組み込まれているIvanovらの論文、J. Phys. Chem. B、2004. 108、10625から適応されるように、ZnSe/CdSe合金コアを作製することによって緑色発光量子ドットを調製し、続いてZnSでオーバーコートした。そのために、ジエチル亜鉛、セレン化トリオクチルホスフィン(TOP-Se)及びTOPを310℃でヘキサデシルアミン(HDA)のフラスコに注入することによって、ZnSeコアを最初に調製した。次いで、λ=354nmに第一の吸収ピークが現れるまで270℃で〜2時間コアを成長させた。次いで、ZnSeの高いバンドギャップによりまだ透明に見える溶液を150℃まで冷却し、成長溶液の5mlをTOPO及びヘキシルホスホン酸(HPA)の脱ガス溶液に直ちに注入した。注入後直ちに、ジメチルカドミウム、TOP-Se及びTOPの溶液を溶媒/ZnSe混合物に一滴ずつ添加し、λ=540nmに発光が生じるまで該溶液を150℃で〜19時間(2日間を超えない)加熱した。次いで、ZnSe及びCdSeで構成されたこれらのコアを、メタノール/ブタノールを使用して2回析出させ、ヘキサンに再溶解させた。次いで、この溶液を脱ガスされたTOPO及びHPAのフラスコに80℃で注入し、ヘキサンを真空下で1時間にわたって除去した。一方がジメチルカドミウム、ジエチル亜鉛及びTOPを含み、他方がTMS2-S及びTOPを含む2つの溶液を2ml/時の速度でシリンジポンプによって150℃で〜2時間にわたってフラスコに徐々に加えた後、溶液を室温まで冷却した。次いで、上記のようにメタノール/ブタノールを使用してナノ粒子を析出し、ヘキサンに再分散させることが可能であった。この処理を3回実施し、各分散後に、0.2μmフィルタで濾過し、最終工程でクロロホルムに再溶解させた。基準としてクマリン540(エタノール中の量子収率89%(その全体が引用により組み込まれているFletcher, A.N.らの論文、Appl. Phys.、1978、16、289))を使用してZnSe/CdSe/ZnSの量子収率を測定したところ、〜65%であった。
【0052】
その全体が引用により組み込まれているZhongらの論文、J. Am. Chem. Soc、2003、125、13559の実験にいくつかの改変を加えたものに従って、CdO及びZnOをオレイン酸及びオクタデセンに溶解させた透明溶液を含むフラスコに、オレイルアミン及び硫黄元素を含むシリンジを、アルゴン下にて310℃で注入することによって青色発光ZnCdSコアを調製した。溶液は、透明から黄色に素早く変化し、ポットにおいて270℃で〜30分間攪拌された。その後、アセトンを成長溶液に添加することによってZnCdSコアを析出させ、遠心分離によって上澄みから分離した。次いで、上記のように、メタノール/ブタノールを使用してナノクリスタルを再び析出させ、遠心分離し、クロロホルムに再分散させた。基準としてクマリン480(エタノール中の量子収率99%、例えば、その全体が引用により組み込まれているKubi, R.F.;A.N. Fletcherの論文;Chem. Phys. Lett.、1983、99 1、49参照)を使用して、ZnCdsコアの量子収率が〜48%であることが見出された。
【0053】
(デバイスの作製)
すべてのナノクリスタルを受領し、保管し、クロロホルムのナノ粒子溶液として処理した。ナノクリスタル単層をスピンキャスティング(spin-casting)で製造するために、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて溶液濃度を較正した(図3)。すべての有機膜(PEDOT:PSSを除く)を<5×10-7Torrの圧力及び〜0.1nm/sの速度で加熱蒸発させた。PEDOT:PSS膜をITO基板上にスピンキャストし、N2雰囲気中で15分間にわたって110℃で焼成した。ナノクリスタル-LED及びAFMサンプルのためのITO基板を多工程溶媒洗浄法で洗浄した後、5分間O2プラズマに曝した。カバーガラス及びUV硬化性エポキシを使用して、ナノクリスタル-LEDをN2グローブボックスで梱包した。電流-電圧特性及び量子効率測定を半導体パラメータ分析装置HP 4145B及び較正フォトダイオードNewport 2101によって行った。エレクトロルミネッセンスのランバート分布を想定して、測光単位(cd/m2)のデバイス輝度を順方向の目視方向で計算した。例えば、その全体が引用により組み込まれているGreenham, N. C.らの論文、Adv. Mater.、1994、6、491を参照されたい。
他の実施態様は、上記請求項の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】発光デバイスを示す概略図である。
【図2】発光デバイスの外部量子効率対電圧を示す図である。
【図3】(a)は、厚さ40nmのTPD膜の上部に約1.1の単層を形成する青色発光半導体ナノクリスタル(QD)の原子間力顕微鏡位相画像を示す図であり;(b)は、白色QD-LEDのデバイス断面を示す図であり;(c)は、10Vの印加順方向バイアスで動作する白色QD-LEDを示す写真である。
【0055】
【図4】(a)は、赤色及び青色発光QDスペクトル成分の相対強度が、より高いバイアスにおいて緑色QD成分と比較して高くなる、一連の増強印加電圧に対する白色QD-LEDの正規化ELスペクトルを示す図であり;(b)は、赤色、緑色及び青色の単色QD-LED(それぞれ赤色、緑色及び青色ライン)の正規化エレクトロルミネッセンススペクトルを示す図であり;(c)は、円記号が、印加バイアスの増加の際の白色QD-LEDのCIE座標及びCRIの変化を示す赤色、緑色、青色QD-LED(三角形)のCIE座標を示す図である。
【0056】
【図5】それぞれ赤色、緑色、青色及び黒色のラインで標識された赤色、緑色、青色及び白色のQD-LEDに対して測定した電流-電圧特性(a)及び外部エレクトロルミネッセンス量子効率(b)を示す図である。矢印は、100cd/m2の輝度における値を示す。
【図6】この試験のQD-LEDの示唆されたバンド構造を示す図である。赤色QDの導電及び価電子バンド位置が、赤色エネルギーレベルで標識されている。陰影部分は、緑色及び青色発光QDの導電及び価電子バンドの見込まれるエネルギーレベル位置の範囲を示す。
【0057】
【図7】それぞれ40nmFWHMスペクトル発光を有する5つのQDルモフォア(lumophore)によるシュミレートされたQD-LED白色光源を示す図である。その複合発光スペクトルは、CRI=98の演色評価数を有し、スペクトルの紫外線部及び赤外線部で光子を浪費しない。T=5500Kの黒体光源の発光スペクトルが重畳されている。
【図8】それぞれ標識されたTPD及びAlq3フォトルミネッセンススペクトルと共に、それぞれ標識された赤色、緑色及び青色発光半導体ナノクリスタル(「QD」)吸収スペクトルを示す図であり、これはスペクトル重複を証明する。
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、それぞれその全体が引用により組み込まれている2006年2月14日出願の米国出願第60/773,119号及び2006年10月10日出願の米国出願第60/828,909号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、半導体ナノクリスタルを含む白色発光デバイスに関する。
【0003】
(連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発)
米国政府は、軍用ナノテクノロジー研究所(Institute for Soldier Nanotechnologies)を介する米国陸軍研究所(U.S. Army Research Office)からの助成金番号DAAD-19-02-0002及び全米科学財団(National Science Foundation)からの助成金番号DMR 0213282に従って、本発明において特定の権利を有することができる。
【背景技術】
【0004】
(背景)
小さい直径を有する半導体ナノクリスタルは、分子形態の物質とバルク形態の物質との中間の特性を有することができる。例えば、小さい直径を有する半導体材料に基づくナノクリスタルは、すべての3つの次元で電子及び正孔の双方の量子閉じ込めを発揮することができるため、ナノクリスタルのサイズを小さくしながら、材料の有効バンドギャップを大きくする。したがって、ナノクリスタルの光吸収及び発光は、ナノクリスタルのサイズが小さくなるに従って、共に青(即ちより高エネルギー)へとシフトする。半導体ナノクリスタルは、その発光波長がナノクリスタルのサイズ及び材質に応じて調整可能である狭い蛍光バンドを有することができる。
【0005】
発光デバイスは、例えば、ディスプレイ(例えば、フラットパネルディスプレイ)、スクリーン(例えば、コンピュータスクリーン)、及び照明を必要とする他の物品で使用され得る。したがって、発光デバイスの輝度は、デバイスの1つの重要な特徴である。また、低い動作電圧及び高い効率は、放出デバイス製造の実行可能性を改善し得る。多くの応用において、長いデバイス寿命が所望される。
【発明の開示】
【0006】
(要旨)
安定な白色発光材料は、ディスプレイ用途に極めて好ましい。発光半導体ナノクリスタルは、有機発光化合物より安定し得る。半導体ナノクリスタルは、有機化合物と比較して狭い発光バンド幅を有することもできる。
概して、発光デバイスは、複数の半導体ナノクリスタルを含む発光層を含み、該複数の半導体ナノクリスタルは、励起により白色光を発する。複数のナノクリスタルは、赤色、緑色及び青色発光ナノクリスタルを含むことができる。ナノクリスタルの少なくとも1つは、コアを含むことができる。ナノクリスタルは、コアの上にオーバーコーティングを含むことができる。オーバーコーティングは、第二の半導体材料を含むことができる。該デバイスは、少なくとも0.20%の外部量子効率を有することができる。該デバイスは、(0.35、0.41)のCIE座標を有することができる。該デバイスは、5500Kの黒体基準と比較して86の演色評価数(CRI)を有することができる。
【0007】
別の態様において、発光デバイスは、第一電極と、該第一電極に接触する正孔注入層と、該正孔注入層に接触する正孔輸送層と、該正孔輸送層に接触する正孔ブロッキング層と、該正孔ブロッキング層に接触する電子輸送層と、該電子輸送層に接触する第二電極と、該電子輸送層と該正孔ブロッキング層の間の複数の半導体ナノクリスタルとを含み、該複数の半導体ナノクリスタルは、励起されたときに少なくとも2色の異なる発光を含む。
第一電極は、透明電極であり得る。正孔注入層は、導電性ポリマーを含むことができる。正孔輸送層は、ベンジジンを含むことができる。正孔ブロッキング層は、トリアゾールを含むことができる。電子輸送層は、金属錯体を含むことができる。第二電極は、金属を含むことができる。複数の半導体ナノクリスタルは、励起されたときに少なくとも3色の異なる発光を含むことができる。それぞれの異なる色の発光は、複数の半導体ナノクリスタルのフォトルミネッセンススペクトルにおける局所的最大発光である。
【0008】
半導体ナノクリスタルを、発光デバイス内の発光団として使用することができる。半導体ナノクリスタルは、狭い発光線幅を有し、フォトルミネッセンス効率が良く、且つ発光波長の調節が可能であるので、望ましいルモフォア(lumophore)となることができる。半導体ナノクリスタルを、溶液中に分散させることができ、したがってスタンプ、プリント、回転成形、ドロップキャスティング、及び浸漬コーティングなどの薄膜堆積技法に適合する。しかし、これらの堆積技法から生じるバルク半導体ナノクリスタル固体は、固相発光デバイスにおいて低い電気的輸送性質を有する。バルク固体ではなく、半導体ナノクリスタルの単層を発光デバイスに使用することができる。単層は、電気的性能に対する影響を最小限にしながら半導体ナノクリスタルの有益な発光性質を提供する。
【0009】
正孔輸送層又は電子輸送層(又は両方)のための有機物質を用いるデバイスは、電気から光への高効率変換を有することができるが、該有機物質の固有の不安定性のために寿命が短くなる可能性がある。光ルミネッセンス研究により証明されたように、無機ナノクリスタル自体は、これらの有機ルモフォア対応物(organic lumophore counterparts)よりも本質的に安定であり得る。ルミネッセンスのための半導体ナノクリスタル、及び電子輸送のための無機物質を利用する発光デバイス(LED)は、優れた光電子性能、及び長期安定性を達成することができる。該無機半導体は、スパッタリング、真空蒸着、インクジェット印刷、又はイオンメッキなどの低温法により堆積され得る。
【0010】
半導体ナノクリスタルは、マイクロコンタクト印刷を使用して基板上に堆積され得る。有利には、マイクロコンタクト印刷は、表面上へのフィーチャのミクロンスケール、又はナノスケール(例えば1mm未満、500μm未満、200μm未満、100μm未満、25μm未満、又は1μm未満)パターニングを可能にする。特に、半導体ナノクリスタルの単層を、マイクロコンタクト印刷によって堆積することができる。この手法は、基板へのパターン化半導体ナノクリスタル被膜の実質的乾燥(即ち実質的に無溶媒)塗布を可能にする。したがって、幅広い種類の基板を使用することができる。なぜならば、基板の選択は、可溶性及び表面化学要件により制約されないためである。例えば、その全体が引用により組み込まれている2005年10月21日出願の米国出願第11/253,612号を参照されたい。
別の態様において、デバイスを形成する方法は、複数の半導体ナノクリスタルを含む層を第一電極と第二電極との間に配置することを含み、該複数の半導体ナノクリスタルは、例えば、ナノクリスタルを表面にプリント、スタンプ又は堆積することによって、励起により白色光を発生させる。光を発生させる方法は、デバイスの第一電極及び第二電極に発光電位を印加することを含む。ディスプレイは、複数の発光デバイスを含むことができる。
【0011】
ハイブリッド有機/無機構造における混合赤色、緑色及び青色発光コロイドナノクリスタルの単層からのエレクトロルミネッセンスに基づく白色光LEDを発生させることができる。コロイドナノクリスタルは、高発光を可能にし、デバイス用途再現可能な混合ナノクリスタル材料が使用される。白色ナノクリスタルLEDは、0.36%の外部量子効率、映像輝度における(0.35、0.41)のCIE(国際照明委員会)座標、及び5500Kの黒体基準と比較した場合における86の演色評価数(CRI)を示すことができる。有機電荷輸送層及び混合ナノクリスタル発光層の独立した処理は、エレクトロルミネッセンス層における異なるカラーナノクリスタルの比を単に変化させることによって、デバイス構造を変化させることなく発光スペクトルの厳密な調整を可能にする。実証されたデバイスは、固体の照明及び情報表示用途における白色ナノクリスタルLEDの将来の使用を示唆する。
本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面並びに特許請求の範囲から明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(詳細な説明)
白色光を発光することが可能な発光デバイスは、例えば、その全体が引用により組み込まれている2006年2月14日出願の米国出願第60/773,119号に記載されている。
小さな直径を有するナノクリスタルは、分子とバルク形態の物質との中間の性質を有することができる。例えば、小さな直径を有する半導体物質に基づくナノクリスタルは、3次元すべてにおいて電子と正孔との両方の量子閉じ込めを示すことができ、結晶サイズの減少に伴い、物質の有効なバンドギャップを増加させる。それゆえ、結晶のサイズが小さくなるにつれて、ナノクリスタルの吸光と発光との両方が、青色へ、即ち、より高いエネルギーへシフトする。
【0013】
ナノクリスタルからの発光は、狭いガウス発光バンド(Gaussian emission band)とすることができ、ナノクリスタルのサイズ、ナノクリスタルの組成、又はその両方を変化させることによって、紫外領域、可視領域、又は赤外領域のスペクトルの全波長範囲にわたって調整することができる。ナノクリスタルの集団の狭いサイズ分布は、狭いスペクトル範囲での発光を生じさせることができる。該集団は、単分散にすることができ、ナノクリスタルの直径について15%rms未満の偏差、好ましくは10%未満の偏差、より好ましくは5%未満の偏差を示すことができる。可視において発光するナノクリスタルのために、半値全幅(FWHM)が約75nm以下、好ましくは60nm以下、より好ましくは40nm以下、最も好ましくは30nm以下である狭い範囲のスペクトル発光を観察することができる。IR発光ナノクリスタルは、150nm以下、又は100nm以下のFWHMを有することができる。該発光のエネルギーの観点から表現すると、該発光は、0.05eV以下、又は0.03eV以下のFWHMを有することができる。発光の幅は、ナノクリスタル直径の分散性が減少するにつれて縮小する。半導体ナノクリスタルは、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%よりも大きい、高い発光量子効率を有することができる。
【0014】
ナノクリスタルを形成する半導体には、II-VI族の化合物、II-V族の化合物、III-VI族の化合物、III-V族の化合物、IV-VI族の化合物、I-III-VI族の化合物、II-IV-VI族の化合物、又はII-IV-V族の化合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はそれらの混合物を含めることができる。半導体は合金、例えば、CdS及びZnSの合金のような第II〜VI族化合物の合金であり得る。
【0015】
単分散半導体ナノクリスタルの調製方法は、高温の配位溶媒に注入されるジメチルカドミウムなど有機金属試薬の熱分解を含む。これは、離散的な核形成を可能にし、巨視量のナノクリスタルの制御された成長をもたらす。ナノクリスタルの調製及び操作は、例えば米国特許第6,322,901号及び第6,576,291号、並びに米国特許出願第60/550,314号に記載されており、各特許文献の全体は引用により組み込まれている。ナノクリスタルの製造方法は、コロイド成長プロセスである。コロイド成長は、Mドナー及びXドナーを高温配位溶媒に急速に注入することによって生じる。この注入は、核を生成し、該核は、ナノクリスタルを形成するために、制御された様式で成長させることができる。反応混合物を穏やかに加熱して、ナノクリスタルを成長させ、及びアニールすることができる。サンプル中のナノクリスタルの平均サイズとサイズ分布との両方が、成長温度に依存する。安定した成長を維持するために必要な成長温度は、平均結晶サイズの増加に伴って増加する。ナノクリスタルは、ナノクリスタルの集団のメンバーである。離散的な核形成及び制御された成長の結果、得られるナノクリスタルの集団は、狭い単分散の直径分布を有する。単分散の直径分布は、サイズということもできる。核形成に続く、配位溶媒中でのナノクリスタルの制御された成長及びアニーリングのプロセスは、一様な表面誘導体化及び規則的なコア構造を生じさせることもできる。サイズ分布が鋭くなるにつれて、安定した成長を維持するために、温度を上昇させることができる。より多くのMドナー又はXドナーを添加することによって、成長期間を短縮することができる。
【0016】
Mドナーは、無機化合物、有機金属化合物、又は元素金属とすることができる。Mは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はタリウムである。Xドナーは、Mドナーと反応して一般式MXを有する物質を生成することができる化合物である。通常、Xドナーは、カルコゲニドドナー又はプニクタイドドナー、例えば、ホスフィンカルコゲニド、ビス(シリル)カルコゲニド、二酸素、アンモニウム塩、又はトリス(シリル)プニクタイドである。適切なXドナーは、二酸素、ビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)2Se)、トリアルキルホスフィンセレニド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)セレニド(TOPSe)又は(トリ-n-ブチルホスフィン)セレニド(TBPSe)など)、トリアルキルホスフィンテルリド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)テルリド(TOPTe)又はヘキサプロピルホスホラストリアミドテルリド(HPPTTe)など)、ビス(トリメチルシリル)テルリド((TMS)2Te)、ビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)、トリアルキルホスフィンスルフィド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)スルフィド(TOPS)など)、アンモニウム塩(例えばハロゲン化アンモニウム(例えばNH4Cl)など)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィド((TMS)3P)、トリス(トリメチルシリル)アルセニド((TMS)3As)、又はトリス(トリメチルシリル)アンチモニド((TMS)3Sb)を含む。特定の実施態様では、Mドナー及びXドナーは、同一分子内の成分とすることができる。
【0017】
配位溶媒は、ナノクリスタルの成長の制御に役立たせることができる。配位溶媒は、ドナー孤立電子対を有する化合物であり、例えば、成長するナノクリスタルの表面に配位するのに利用できる孤立電子対を有する。溶媒配位は、成長するナノクリスタルを安定化させることができる。代表的な配位溶媒としては、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸があるが、ピリジン、フラン、及びアミンなどの他の配位溶媒も、ナノクリスタルの生成に適していることがある。適切な配位溶媒の例としては、ピリジン、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)、及びトリス-ヒドロキシルプロピルホスフィン(tHPP)がある。工業用のTOPOを使用することができる。
【0018】
反応の成長段階中のサイズ分布は、粒子の吸収線幅をモニタリングすることによって評価することができる。粒子の吸収スペクトルの変化に応じた反応温度の修正により、成長中、鋭い粒子サイズ分布の維持が可能になる。より大きな結晶を成長させるために、結晶成長中に、核形成溶液に反応物を添加することができる。特定のナノクリスタル平均直径で成長を停止させ、半導体物質の適切な組成を選択することによって、ナノクリスタルの発光スペクトルは、300nm〜5ミクロンの波長範囲にわたって、又はCdSe及びCdTeについては400nm〜800nmにわたって連続的に調整することができる。ナノクリスタルは、150Å未満の直径を有する。ナノクリスタルの集団は、15Å〜125Åの範囲の平均直径を有する。
【0019】
ナノクリスタルは、狭いサイズ分布を有するナノクリスタルの集団のメンバーであってよい。ナノクリスタルは、球形、棒状、円盤状、又は他の形状であってよい。ナノクリスタルは、半導体物質のコアを含むことができる。ナノクリスタルは、式MXを有するコアを含むことができ、ここでMは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、又はそれらの混合物であり、Xは、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、又はそれらの混合物である。
【0020】
コアは、該コアの表面上にオーバーコーティングを有することができる。オーバーコーティングは、該コアの組成物とは異なる組成物を有する半導体物質であってもよい。ナノクリスタルの表面上の半導体物質のオーバーコートは、II-VI族の化合物、II-V族の化合物、III-VI族の化合物、III-V族の化合物、IV-VI族の化合物、I-III-VI族の化合物、II-IV-VI族の化合物、又はII-IV-V族の化合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はそれらの混合物を含むことができる。例えば、ZnS、ZnSe、又はCdSオーバーコーティングを、CdSe又はCdTeナノクリスタル上に成長させることができる。オーバーコーティングプロセスは、例えば米国特許第6,322,901号に記載されている。オーバーコーティング中に反応混合物の温度を調節し、コアの吸収スペクトルをモニタリングすることによって、高い発光量子効率と狭いサイズ分布とを有するオーバーコート物質を得ることができる。オーバーコーティングは、1〜10層の単層の厚さとすることができる。
【0021】
粒子サイズ分布は、米国特許第6,322,901号に記載されている、メタノール/ブタノールなどのナノクリスタルに対する貧溶媒を用いるサイズ選択的沈殿法によって、さらに精製することができる。例えば、ナノクリスタルは、10%ブタノールのヘキサン溶液中に分散させることができる。メタノールは、乳光が持続するまで、攪拌溶液に滴下して加えることができる。遠心分離による上清と凝集物との分離により、サンプル中に最大結晶に富んだ沈殿物が生成される。この手順を、吸光スペクトルのさらなる鋭利化が認められなくなるまで繰り返すことができる。サイズ選択的沈殿法は、ピリジン/ヘキサン及びクロロホルム/メタノールを含めた種々の溶媒/非溶媒のペアで実施することができる。サイズ選択されたナノクリスタル集団は、平均直径から15%rms以下の偏差、好ましくは10%rms以下の偏差、より好ましくは5%rms以下の偏差を有することができる。
【0022】
ナノクリスタルの外部表面は、成長プロセス中に使用された配位溶媒から誘導される化合物の層を含むことができる。過剰な競合配位基へ繰り返し曝露することによって表面を改質することができる。例えば、覆われたナノクリスタルの分散は、ピリジンなどの配位性有機化合物を用いて処理し、ピリジン、メタノール、及び芳香族中では容易に分散するが、脂肪族溶媒中ではもはや分散しない結晶を生成することができる。そのような表面交換プロセスは、例えばホスフィン、チオール、アミン、及びリン酸塩を含めた、ナノクリスタルの外部表面と配位、又は結合できる任意の化合物を用いて実施することができる。ナノクリスタルは、表面に対して親和性を示し且つ懸濁液又は分散媒体に対して親和性を有する成分で終わる短鎖ポリマーに曝露させることができる。そのような親和性は、懸濁液の安定性を改善し、ナノクリスタルの凝集を妨げる。ナノクリスタル配位化合物は、米国特許第6,251,303号に記載されており、その全体は引用により組み込まれている。
【0023】
より具体的には、配位子が、次式を有することができる。
【化1】
式中、kは、2、3、又は5であり、nは、k-nが0未満にならないような1、2、3、4、又は5であり;Xは、O、S、S=O、SO2、Se、Se=O、N、N=O、P、P=O、As、又はAs=Oであり;Y及びLはそれぞれ、独立して、アリール、ヘテロアリール、或いは少なくとも1つの二重結合、少なくとも1つの三重結合、又は少なくとも1つの二重結合及び1つの三重結合を任意に含む直鎖状の、又は分岐したC2-12炭化水素鎖である。炭化水素鎖は、一種以上のC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、C3-5シクロアルキル、3〜5員環ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-4アルキルカルボニルオキシ、C1-4アルキルオキシカルボニル、C1-4アルキルカルボニル、又はホルミルによって任意に置換することができる。また、炭化水素鎖は、-O-、-S-、-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-N(Rb)-、-O-C(O)-O-、-P(Ra)-、又は-P(O)(Ra)-によって任意に中断することができる。Ra及びRbはそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0024】
アリール基は、置換又は非置換の環状芳香族基である。例としては、フェニル、ベンジル、ナフチル、トリル、アントラシル、ニトロフェニル、又はハロフェニルがある。ヘテロアリール基は、環の中に1つ以上のヘテロ原子を有するアリール基であり、例えばフリル、ピリジル、ピロリル、フェナントリルである。
適切な配位子を、商業的に購入することができ、又は、例えばJ. Marchの文献、「有機化学特論(Advanced Organic Chemistry)」(その全体は引用により組み込まれている)に記載されている通常の合成有機技法によって調製することができる。
【0025】
透過型電子顕微鏡(TEM)は、ナノクリスタル集団のサイズ、形状、及び分布に関する情報を提供することができる。粉末X線回折(XRD)パターンが、ナノクリスタルの結晶構造のタイプ及び質に関する最も完全な情報を提供することができる。また、粒子径は、X線コヒーレンス長を介してピーク幅に反比例するので、サイズの評価も可能である。例えば、ナノクリスタルの直径は、透過型電子顕微鏡によって直接測定することができ、又は、例えばシェラーの式を使用してX線回折データから評価することができる。また、UV/Vis吸収スペクトルから評価することもできる。
【0026】
亜鉛、カドミウム及び硫黄を含むコア、例えば、ZnS及びCdSの合金であるZnCdSを有し、直径が5から15ナノメートル、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15nmであるナノクリスタルは、放射によって励起されると発光することができる。
ナノクリスタルは、20〜40%の量子収率を有することができる。ZnCdS合金ナノクリスタルを例えばZnSでオーバーコートして、量子収率を40%〜60%まで高めることができる。ナノクリスタルの組成及び/又は直径を調節することによって、全幅半値が25〜30nmの415nmから510nmのいずれかで発光するようにこれらの材料を調整することができる。
【0027】
発光デバイスは、デバイスの2つの電極を分離する2つの層を含むことができる。一方の層、即ち正孔輸送層(HTL)の物質は、物質が正孔を輸送できる能力に基づいて選択することができる。他方の層、即ち電子輸送層(ETL)の物質は、物質が電子を輸送できる能力に基づいて選択することができる。通常、電子輸送層は、エレクトロルミネッセンス層を含む。電圧が印加されるとき、一方の電極は、正孔(正電荷キャリア)を正孔輸送層に注入し、他方の電極は、電子を電子輸送層に注入する。注入された正孔及び電子はそれぞれ、逆に荷電された電極に向かって移動する。電子及び正孔が同一分子に局在するとき、励起子が形成され、励起子は、再結合して光を放出することができる。該デバイスは、HTLとETLとの間の放出層を含むことができる。該放出層は、発光波長又は線幅など、その放出特性に関して選択された物質を含むことができる。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれている2005年3月4日出願の米国出願第11/071,244号及び2006年2月15日出願の米国出願第11/354,185号を参照されたい。青色発光デバイスは、白色発光デバイスの一部であり得る。例えば、その全体が引用により組み込まれている2006年2月14日出願の米国出願第60/773,119号を参照されたい。
【0028】
発光デバイスは、図1に示されるような構造を有することができ、図中、第一電極2と、電極2に接触する第一層3と、層3に接触する第二層4と、第二層4に接触する第二電極5とを有する。第一層3は、正孔輸送層とすることができ、第二層4は、電子輸送層とすることができる。少なくとも1つの層を、非重合性にすることができる。該層は無機物質を含むことができる。この構造の電極の1つは、基板1に接触している。各電極を電源に接触させ、該構造にわたって電圧を提供することができる。適切な極性の電圧がヘテロ構造にわたって印加されるとき、ヘテロ構造の放出層によってエレクトロルミネッセンスを生じさせることができる。第一層3は、複数の半導体ナノクリスタル、例えばナノクリスタルの実質的な単分散集団を含むことができる。別法として、別個の放出層(図1に示さず)を、正孔輸送層と電子輸送層との間に含むことができる。別個の放出層は、複数のナノクリスタルを含むことができる。ナノクリスタルを含む層は、ナノクリスタルの単層とすることができる。代表的な効率が図2に示されている。
【0029】
半導体ナノクリスタルを含む発光デバイスは、HTL有機半導体分子及び半導体ナノクリスタルを含む溶液を回転成形することによって作成することができ、該HTLは、相分離によって半導体ナノクリスタル単層の下に形成した(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれている2003年3月28日出願の米国特許出願第10/400,907号及び米国特許出願公開第2004/0023010号を参照されたい)。この相分離技法は、有機半導体HTLとETLとの間に半導体ナノクリスタルの単層を再現可能に配置し、それにより半導体ナノクリスタルの好ましい発光性質を効果的に活用し、それと共に、電気的性能へのそれらの影響を最小限にした。この技法によって作成されたデバイスは、溶媒中の不純物によって、及び半導体ナノクリスタルと同一の溶媒に可溶な有機半導体分子を使用する必要性によって制限された。相分離技法は、HTLとHILとの両方の上に半導体ナノクリスタルの単層を堆積するのには不適であった(溶媒が、下にある有機薄膜を破壊するため)。また、相分離方法は、同一基板上で、異なる色を放出する半導体ナノクリスタルの位置の制御を可能にしなかった。同様に、相分離方法は、同一基板上への、異なる色を放出するナノクリスタルのパターニングを可能にしなかった。
さらに、輸送層(即ち正孔輸送層、正孔注入層、又は電子輸送層)に使用される有機物質は、放出層に使用される半導体ナノクリスタルより不安定であり得る。結果として、該有機物質の運用年数は、該デバイスの寿命に制限される。該輸送層に長寿命物質を用いたデバイスを使用して、長寿命発光デバイスを製造することができる。
【0030】
基板は、不透明又は透明であり得る。透明基板を使用して透明LEDの製造に使用することができる。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているBulovic, V. らの論文, Nature 1996, 380, 29;及びGu, G.らの論文, Appl. Phys. Lett. 1996, 68, 2606-2608を参照されたい。透明LEDを、ヘルメットバイザー又は車のフロントガラスのようなヘッドアップディスプレイなどの応用に使用することができる。基板は、剛性又は可撓性であり得る。基板は、プラスチック、金属、又はガラスであり得る。第一電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)層などの、高い仕事関数の正孔注入導体とすることができる。他の第一電極物質は、ガリウムインジウムスズオキシド(gallium indium tin oxide)、亜鉛インジウムスズオキシド(zinc indium tin oxide)、窒化チタン、又はポリアニリンを含むことができる。第二電極は、例えば、Al、Ba、Yb、Ca、リチウムアルミニウム合金(Li:Al)、又はマグネシウム銀合金(Mg:Ag)などの、低い仕事関数(例えば4.0eV未満)の電子注入金属とすることができる。Mg:Agなどの第二電極は、不透明保護金属層、例えば大気の酸化から陰極層を保護するためのAgの層で、又は実質的に透明なITOの比較的薄い層で被覆することができる。第一電極は、約500オングストロームから4000オングストロームの厚さを有することができる。第一層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。第二層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。第二層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。第二電極は、約50オングストロームから約1000オングストロームよりも大きい厚さを有することができる。
【0031】
正孔輸送層(HTL)又は電子輸送層(ETL)は、無機半導体などの無機材料、又は有機材料を含むことができる。該層は、発光性材料の発光エネルギーより大きいバンドギャップを有する任意の材料であり得る。
【0032】
該層を、該電極の1つの表面上にスピンコーティング、ディップコーティング、蒸着、スパッタリング、又は他の薄層堆積方法により配置することができる。固体層の露出面上に該第二電極を、サンドイッチ、スパッタ、又は蒸着させることができる。該電極の1つ又は双方を、パターン状にすることができる。該デバイスの電極を、導電性経路により電圧源に接続することができる。電圧印加時に、該デバイスから光が発生する。2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,612号、双方とも2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,595号及び第11/253,612号、並びに2005年1月11日に出願された第11/032,163号を参照されたい。これらの各々は、その全体において引用により組み込まれている。
電子及び正孔がナノクリスタル上に局在するとき、発光波長で発光を起こすことができる。該発光は、量子閉じ込め半導体物質のバンドギャップに対応する周波数を有する。バンドギャップは、ナノクリスタルのサイズの関数である。
【0033】
個々のデバイスを、単一基板上の複数の位置に形成して、ディスプレイを製造することができる。該ディスプレイは、様々な波長で放出するデバイスを含むことができる。様々な色の発光半導体ナノクリスタルのアレイを該基板にパターニングすることにより、様々な色の画素を含むディスプレイを製造することができる。いくつかの適用例では、基板は、バックプレーンを含むことができる。該バックプレーンは、個々の画素への電力を制御する、又は切り換えるための能動又は受動電子回路を含む。バックプレーンを含むことは、ディスプレイ、センサ、又は撮像装置などの用途で有用になることがある。特に、該バックプレーンは、アクティブマトリックス、パッシブマトリックス、固定フォーマット、ダイレクトドライブ(directly drive)、又はハイブリッドとして構成することができる。ディスプレイは、静止画像用、動画用、又は照明用に構成することができる。照明ディスプレイは、白色光、単色光、又は色調整可能な光を提供することができる。例えば、その全体が引用により組み込まれている、2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,612号を参照されたい。
【0034】
デバイスは、製造プロセス中のルミネッセンス効率の低下を防止する、制御された(酸素を含まず、且つ水分を含まない)環境内で作成することができる。デバイス性能を改善するために、他の多層構造を使用することもできる(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれている2003年3月28日に出願された米国特許出願第10/400,907号及び第10/400,908号を参照されたい)。電子ブロッキング層(EBL)、正孔ブロッキング層(HBL)、又は正孔及び電子ブロッキング層(eBL)などのブロッキング層を構造内に導入することができる。ブロッキング層が含むことができるのは、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-ターシャリー-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、3,4,5-トリフェニル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ビス(4-ターシャリー-ブチルフェニル)-4-フェニル-1,2,4-トリアゾール、バトクプロイン(BCP)、4,4′,4"-トリス{N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ}トリフェニルアミン(m-MTDATA)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、1,3-ビス(5-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-ターシャリー-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、1,4-ビス(5-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン、又は1,3,5-トリス[5-(4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼンである。
【0035】
有機発光デバイスの性能は、それらの効率を高めること、それらの発光スペクトルを狭める、又は広げること、或いはそれらの発光を偏光させることによって改善することができる。例えば、Bulovicらの論文, Semiconductors and Semimetals 64, 255 (2000)、Adachiらの論文, Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Yamasakiらの論文, Appl. Phys. Lett. 76, 1243 (2000)、Dirrらの論文, Jpn. J. Appl. Phys. 37, 1457 (1998)、及びD'Andradeらの論文, MRS Fall Meeting, BB6.2 (2001)を参照のこと(各文献の全体は引用により組み込まれている)。ナノクリスタルは、効率の良いハイブリッド有機/無機発光デバイス内に含めることができる。
【0036】
ナノクリスタルの狭いFWHMは、飽和色の発光を生じることができる。これは、ナノクリスタル発光デバイスにおいて赤外及びUV発光へ光子が損失されないので、可視スペクトルの赤色及び青色部分でさえ効率の良いナノクリスタル発光デバイスをもたらすことができる。単一物質システムの可視スペクトル全体にわたる、広く調整可能な飽和色発光は、どのような種類の有機発色団とも一致しない(例えば、Dabbousiらの論文J. Phys. Chem. 101, 9463 (1997)を参照されたい。その全体は引用により組み込まれている)。ナノクリスタルの単分散集団は、狭い波長範囲にわたる光を放出する。複数のサイズのナノクリスタルを含むデバイスは、複数の狭い波長範囲内の光を放出することができる。観察者によって知覚される発光色は、デバイスにおけるナノクリスタルサイズと物質との適切な組合せを選択することによって制御することができる。ナノクリスタルのバンド端のエネルギー準位の縮退は、直接電荷注入によって生成されるにせよ、エネルギー移動によって生成されるにせよ、すべての生じ得る励起子の捕捉及び放射再結合を容易にする。したがって、理論上最大のナノクリスタル発光デバイス効率は、リン光性の有機発光デバイスの単一効率に匹敵する。ナノクリスタルの励起状態寿命(τ)は、典型的なリン光体(τ>0.5μs)よりもはるかに短く(τ〜10ns)、高電流密度でさえナノクリスタル発光デバイスが効率良く動作できるようにする。
【0037】
可視光又は赤外光を放出するデバイスを準備することができる。半導体ナノクリスタルのサイズ及び物質は、選択された波長の可視光又は赤外光をナノクリスタルが放出するように選択することができる。波長は、300nm〜2500nm以上の間、例えば300nm〜400nmの間、400nm〜700nmの間、700nm〜1100nmの間、1100nm〜2500nmの間、又は2500nmよりも大きくすることができる。
デバイスを、該輸送層のすべてを塗布した後に熱的に処理することができる。熱処理は、ナノクリスタル内への電荷注入をさらに向上させ、且つナノクリスタル上の有機キャッピング基(organic capping groups)を排除することができる。該キャッピング基の不安定性は、デバイスの不安定性の原因となり得る。
【0038】
効率がより高く、色可調性がより良好で、形状、サイズ又は実装に対する制限がより少ないため、白色LEDパネルは、多くの照明用途において、白熱電球又は蛍光電球にいつかは取って代わる可能性がある。単一チップInGaN白色LED(WLED)、多チップWLED、ZnSe系WLED、並びに単一ユニット白色OLED(WOLED)、積層白色OLED(SOLED)、及び青色OLED排気無機蛍光体を使用して広域白色スペクトルを生成する白色LEDにさらに分類できる白色有機LED(OLED)を含むいくつかの種類の固体デバイスは、(15lm/Wから30lm/Wの範囲の)効率的な白色ルミネッセンスを既に実現した。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているY. Shimizuら、米国特許第5,998,925号、Schubert, E.F.らの論文、Science、2005、308、1274、H. Matsubaraら、米国特許第6,509,651号、D'Andradeらの論文、 Adv. Mater.、2004、16、624、Kanno, H.らの論文、Adv. Mater. 2006、18、339及びDuggal, A.らの論文、Appl. Phys. Lett.、2002、80、3470を参照されたい。単一チップInGaN WLEDは、一般的な照明用の低コスト高輝度効率デバイスを与えるが、それらの発光プロファイルが、青色InGaN成分及び黄色蛍光発光物(典型的にはイットリウムアルミニウムガーネットYAG)からなるため、演色評価数(CRI)が低い。多チップWLEDは、高い演色評価数(CRI)をもたらす赤色、緑色及び青色発光サブユニットからなるが、サブユニットの分解率が異なるため、比較的高価であり、複雑なフィードバックシステムを必要とする。ZnSe系WLEDでは、ZnSの青色発光とZnSe基板の黄色発光とを混合することによって白色発光が実現される。これらのデバイスは、InGaN系LEDと比較して、効率がより低く、寿命がより短い。最後に、WOLED及びSOLEDは、3つの種類の有機蛍光体からのエレクトロルミネッセンスを組み合わせて、高い電子リン光効率(WOLEDについては10%まで、SOLEDについては30%まで)の白色ルミネッセンスを実現する。しかし、白色エレクトロルミネッセンスを生成する有機染料は、一般に無機材料より光安定性が低く、その品質は、消費者向け電子ディスプレイにおけるそれらの使用を制限しないが、室内照明のような高輝度用途におけるそれらの使用には問題がある。コロイド量子ドット(ナノクリスタル)に基づくLED又はナノクリスタル-LED(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800、Zhao, J.らの論文、Nano Lett、2006、6、463、Mueller, A.H.らの論文、Nano Lett.、2005、5、1039参照)は、OLEDのそれにせまる効率及び輝度を示すが、格別の光安定性並びに可視域の色可調性を有するナノクリスタルルモフォアを合成することができ(それぞれその全体が引用により組み込まれているMurray, C.B.らの論文、J. Am. Chem. Soc、1993、115、8706、Hines, M. A.らの論文、J. Phys. Chem.、1996、100、468、Steckel, J. S.、Angew. Chem. Int. Ed、2004、43、2154)、この試験で証明されたように、混合色のナノクリスタル層からのルミネッセンスによる高品質の演色性を可能にすることができる。
【0039】
有機半導体電荷担持体輸送層を使用するナノクリスタル-LEDに関する先の研究は、それぞれ2.0%、0.5%及び0.2%の効率を有する飽和色の赤色、緑色及び青色(RGB)単色ナノクリスタル-LEDをもたらした。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800、Steckel, J. S.らの論文、Angew. Chem. Int. Ed.、2004、43、2154、Coe-Sullivan, S.の論文、Adv. Funct. Mater.、2005、15、1117、S. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005を参照されたい。効率が幾分低いナノクリスタル-LEDも無機輸送層を使用して作製され、空気及び湿分に敏感な有機膜の代わりに使用されている。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているMueller, A. H.らの論文、Nano Lett.、2005、5、1039を参照されたい。今日まで、コロイドナノクリスタルエミッタを使用して白色光LEDを作製するいくつかの試みがなされただけであった。最初の白色ナノクリスタル-LEDの1つは、ほぼ全可視スペクトルを網羅するナノクリスタルバンドギャップ内部の奥深くの電荷トラップ状態(深トラップ状態)から生じる広域スペクトル発光を利用するものであった。例えば、その全体が引用により組み込まれているGao, M.らの論文、Adv. Mater.、1997、9、802を参照されたい。最近になって、深トラップナノクリスタルルミネッセンスを市販の外部紫外線LEDによって光励起した同様の手法が、それぞれその全体が引用により組み込まれているBowersらの論文、J. Am. Chem. Soc、2005、127、15378及びChenらの論文、Appl. Phys. Lett、2005、86、131905による研究に採用された。これらの研究において、放射光は白色に見えるが、深トラップ発光のルミネッセンスが不十分であり、材料を1つの合成から次の合成に向けて容易に再生できない。赤色(例えば、その全体が引用により組み込まれているY. Liらの論文、J. Appl. Phys.、2005、97、113501参照)又は緑色(例えば、その全体が引用により組み込まれているPark, J. H.らの論文、Nanotechnology、2004、15、1271参照)発光ナノクリスタルをそれぞれ効率的な緑色又は青色発光有機材料と共に使用して、白色LEDを作製するのに必要なミッシング(missing)カラー成分を与える異なる手法がいくつかのグループによって採用されている。これらのデバイスは、理想的な(0.33、0.33)に近い良好なCRI及びCIE(国際照明委員会)座標を示したが、OLEDに特有の色可調性及び安定性の問題が残る。他の研究では、市販のInGaNチップからの青色発光を用いて、赤色及び緑色コロイドナノクリスタルを励起させると同時に、ナノクリスタル再発光は白色のルミネッセンススペクトルを構成した。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているJ. Leeらの論文、Adv. Mater.、2000、12 15、1102及びChen, H.-S.らの論文、Technol. Lett.、2006、18、193を参照されたい。
【0040】
これまで述べたすべてのデバイスのうち、赤色、緑色及び青色発光コロイドナノクリスタルの電気誘導ルミネッセンスを利用する白色LEDは、まだ文献に報告されていない。この理由により、本発明者らは、既に報告されたナノクリスタル-LEDと類似のデバイス構造に取り込まれる、狭い発光バンド幅を有する再生合成された高量子収率のナノクリスタル材料を利用した効率的で安定した白色発光ナノクリスタル-LEDを提供する。例えば、その全体が引用により組み込まれているCoe, Sらの論文、Nature、2002、420、800を参照されたい。ナノクリスタル単層の作製における最近の進歩は、ナノクリスタル発光層(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe-Sullivan, S.らの論文、Adv. Funct. Mater.、2005、15、1117及びS. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005)及び担持体輸送層の独立的な処理を可能にし、白色又は多色ナノクリスタル-LEDの作製を単色デバイスの作製と同等にしている。3つのRGBナノクリスタル材料を使用すると、ナノクリスタル堆積工程において各種類のナノクリスタルの濃度を単に変えることによって、白色ナノクリスタル-LEDのCIE座標及びCRIを調整することが可能になる。
【0041】
本発明者らのデバイスは、正孔注入層としての導電性ポリマー(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)PEDOT:PSS)の層、厚さ40nmのN,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)ベンジジン(TPD)の正孔輸送層(HTL)、コロイドナノクリスタルの発光性単層、厚さ27nmの3,4,5-トリフェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)の正孔ブロッキング層(HBL)(エキシトン形成をナノクリスタル部位/その付近に限定する)、厚さ20nmのトリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)の電子輸送層(ETL)、及び厚さ20nmの銀保護層で被覆された厚さ100nmのマグネシウム銀合金のカソードを有する、ガラス基板上のインジウム錫酸化物(ITO)アノードからなる(図5参照)。白色LEDの赤色、緑色及び青色スペクトル成分を実現するための3種類のコロイド合成ナノクリスタル(実験のセクション参照)を使用した。赤色ナノクリスタル溶液は、波長λ=620nmにフォトルミネッセンスピークを有するCdSe/ZnSコア-シェルナノクリスタルで構成されていた。緑色ナノクリスタル溶液は、λ=540nmにフォトルミネッセンスピークを有する、ZnSでオーバーコートされたZnSe/CdSe合金コアで構成されていた。最後に、青色ナノクリスタル溶液は、λ=440nmにフォトルミネッセンスピークを有するZnCdS合金ナノクリスタルで構成されていた。赤色ナノクリスタル溶液と、緑色ナノクリスタル溶液と、青色ナノクリスタル溶液を表面被覆率で1:2:10(R:G:B)の割合で混合することによって、白色ナノクリスタル-LEDのナノクリスタル溶液を調製した。
【0042】
赤色、緑色、青色及び白色発光ナノクリスタル-LEDのエレクトロルミネッセンススペクトルを映像輝度/その付近で測定する(図4)。赤色及び緑色ナノクリスタル-LEDのエレクトロルミネッセンスは、それぞれ(0.65、0.34)及び(0.31、0.65)のCIE座標を有するコロイドナノクリスタルに特有の色飽和フォトルミネッセンススペクトルに対応する。青色発光ナノクリスタル-LEDスペクトルは、支配的なナノクリスタル成分並びにより弱いAlq3及びTPD発光を有し、それは、効率的なエネルギー伝達(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているForster, Th.;Annalen der Physik、1948、6、55及びKuhn, H.、J. Chem. Phys.、1970、53、101参照)及びAlq3による深い青色ナノクリスタルルミネッセンスのダウンコンバージョン(Alq3吸収と青色ナノクリスタルフォトルミネッセンスのスペクトル重複から推定される)を示している。対照的に、TPDフォトルミネッセンスと青色ナノクリスタル吸収のスペクトル重複は、TPDから青色発光ナノクリスタルへのエネルギー伝達を介するTPDエレクトロルミネッセンスの完全な消光をもたらすのに不十分である。青色ナノクリスタル-LEDのCIE座標は、(0.19、0.11)である。正孔ブロッキングTAZ層の存在により、青色ナノクリスタル単層がAlq3膜から物理的に分離されて、ナノクリスタルからAlq3へのエネルギー伝達及びAlq3ルミネッセンスが阻害されることが推定されるであろう。しかし、芳香族TAZと、ナノクリスタルを覆う脂肪族有機体との化学的不相溶性により、TAZ膜は、ナノクリスタル単層上で成長する場合は平面にならないことが、先の研究によって示された(例えば、その全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800参照)。これは、Alq3膜とナノクリスタル単層のいくつかの部分とを物理的に接触させて、青色ナノクリスタルLEDにおけるAlq3エレクトロルミネッセンスに寄与する。
【0043】
白色ナノクリスタル-LEDの発光スペクトル(図4)は、赤色、緑色及び青色ナノクリスタルエレクトロルミネッセンス成分の明確な分布を示す。TPDエレクトロルミネッセンス信号は、赤色及び緑色ナノクリスタルへの効率的なエネルギー伝達により、たいてい消光される。Alq3は、依然として、青色ナノクリスタル-LEDに類似する白色ナノクリスタル-LEDに弱いスペクトル特徴を示しているようである。白色ナノクリスタル-LEDピクセルは、5500Kの黒体基準と比較すると、均一に発光しているようであり、眼には「白色」に見え(図3)、9Vの印加バイアス及び86のCRIにおけるCIE座標が(0.35、0.41)である。そのような高CRIは、「低温白色」蛍光(CRI=62)、白熱光(CRI=100)、及び染料強化InGaN/GaN固体LED(CRI>80)などの他の近代の白色光源に劣らない。例えば、その全体が引用により組み込まれているKrames, M. R.らの論文、Phys. Stat. Sol. A、2002、192、237を参照されたい。
【0044】
単色ナノクリスタル-LEDの最大外部ルミネッセンス量子効率(EQE)を測定すると、赤色デバイスでは4.6Vにおいて1.6%(0.29mA/cm2)、緑色デバイスでは5.2Vにおいて0.65%(0.63mA/cm2)、青色デバイスでは9.1Vにおいて0.35%(1.73mA/cm2)である(図5)。これらの値は、いずれも先に報告されたナノクリスタルLEDと同程度であり(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているCoe, S.らの論文、Nature、2002、420、800、Steckel、J. S.らの論文、Angew. Chem. Int. Ed.、2004、43、2154、Coe-Sullivan, S.らの論文、Adv. Funct. Mater.、2005、15、1117及びS. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005参照)、青色ナノクリスタル-LEDは、先の報告より効率が75%高い(例えば、その全体が引用により組み込まれているSteckel, J. S.らの論文、Angew. Chem. Int. Ed.、2004、43、2154参照)。白色ナノクリスタル-LEDの最大EQEは、5.0Vにおいて0.36%(1.51mA/cm2)(図5)であり、0.44Cd/A及び0.28lm/W並びに142cd/m2の輝度に対応する。
【0045】
赤色ナノクリスタル-LEDと緑色ナノクリスタル-LEDと青色ナノクリスタル-LEDとのEQEの有意な差は、これらのデバイスの異なる動作メカニズムに端を発し得る。ナノクリスタル-LEDについて提案された2つの最も一般的な動作メカニズム(例えば、その全体が引用により組み込まれているS. Coe-Sullivanの博士論文、Department of Electrical Engineering and Computer Science、マサチューセッツ工科大学、2005を参照されたい)としては、以下のメカニズムを挙げることができる。第一のメカニズムでは、それぞれAlq3/TAZ及びTPDによって輸送された電子及び正孔がナノクリスタルに直接注入され、そこで放射再結合できるエキシトンを形成する。第二のメカニズムでは、TPDに形成されたエキシトンが、それらのエネルギーを、後に放射するナノクリスタルに伝達する。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているForster, Th.の論文;Annalen der Physik、1948、6、55及びKuhn, H.の論文;J. Chem. Phys.、1970、53、101を参照されたい。青色デバイスについて上述したように、TAZ正孔ブロッキング層に欠陥が存在する場合は、Alq3膜もナノクリスタルと部分的に接触し、エネルギーをより高エネルギーの青色ナノクリスタルから受け取るか、又はそれを赤色ナノクリスタルに戻すことが可能である。
【0046】
赤色ナノクリスタル-LEDにおいて、直接的電荷注入並びにTPD及びAlq3からのエネルギー伝達は、これらのデバイスの高EQEに寄与する可能性がある。緑色ナノクリスタル-LEDにおいて、緑色及び赤色ナノクリスタル電子基底状態が同様のエネルギー状態である場合は、直接電荷注入は、赤色ナノクリスタル-LEDの場合と同様であり得る(図6)。また、TPDから緑色ナノクリスタルへのエネルギー伝達は、TPD発光及び緑色ナノクリスタル吸収スペクトルの有意な重複により効率的なはずである。しかし、(TAZ層欠陥により)形成されるあらゆるAlq3エキシトンは、同様のエネルギーの緑色ナノクリスタルエキシトンへエネルギーを伝達することなく、Alq3分子上で緩む可能性がある。さらに、これらの実験に使用される緑色ナノクリスタル溶液のフォトルミネッセンス効率(〜65%)は、赤色ナノクリスタル溶液の効率(90%)より低く、それも緑色ナノクリスタル-LEDのより低い効率に寄与する可能性がある。青色デバイスにおけるより低い効率の考えられる理由の1つをTPDから青色ナノクリスタルへの正孔注入の効果に帰することが可能である。Alq3/TAZから青色ナノクリスタルへの電子注入は、赤色及び緑色ナノクリスタルへの電子注入と同様であることが想定されるが、TPDから青色ナノクリスタルへの正孔注入は、青色ナノクリスタル-LEDのより高い作動電圧及びより低いEQEをもたらすさらなる潜在的障壁によって妨害され得る(図5)。このさらなる障壁をTPD正孔輸送エネルギーレベルの青色ナノクリスタル基底状態電子のバンドラインアップ、或いは青色ナノクリスタルを覆う有機基を貫通するのに必要なエネルギーの差に帰することが可能である。また、TPD膜から青色ナノクリスタルへのエネルギー伝達は、赤色又は緑色ナノクリスタルの場合ほど効率的でないと同時に、青色ナノクリスタルは、それらのエキシトンをAlq3分子に効率的に伝達することができる。これは、ナノクリスタル単層及びTAZ膜における欠陥が有機層を直接通る電荷輸送をもたらし、ナノクリスタル自体内よりTPD及びAlq3層内のエキシトン形成の効率が高くなるため、青色ナノクリスタルLEDに対するさらなる問題を提起する。緑色及び赤色ナノクリスタルの場合は、ナノクリスタル単層のギャップに形成されたエキシトンをナノクリスタルへ共鳴伝達することができるが、青色ナノクリスタルの場合は、これらのエキシトンは、放射再結合して、ナノクリスタル-LEDエレクトロルミネッセンススペクトルに観察されるTPD及びAlq3スペクトル特徴に寄与する。
【0047】
白色ナノクリスタル-LEDは、電荷注入に対する応答が異なる3種類のナノクリスタルを含むため、エレクトロルミネッセンススペクトルがデバイス誘導条件に依存すると想定される。図4(a)において、印加バイアスを5Vから9Vに変化させて、図4(c)に示されるように、CIE座標及びCRIのわずかな変化をもたらしたときの白色ナノクリスタル-LEDにおけるエレクトロルミネッセンススペクトル色変化を示す。電圧を高くすると、最初に支配的であった緑色ナノクリスタルスペクトル成分と比較して、白色ナノクリスタル-LEDスペクトルにおける赤色及び青色ナノクリスタルスペクトル成分が増加するのが観察される。この効果は、一部には、赤色、緑色及び青色の単色ナノクリスタル-LEDの電流-電圧(IV)特性の分析(図5(a))及び図6の提案されたエネルギーバンド図によって説明され得る。青色ナノクリスタル-LEDは、赤色及び緑色デバイスより高い電圧で映像輝度に達する。すべての電流に対する青色ナノクリスタル-LEDのより高い抵抗を、青色ナノクリスタルへの正孔注入に対するより高いエネルギー障壁に帰することができ、青色ナノクリスタルエキシトンを生成するためにより大きい印加電圧が必要である。白色ナノクリスタル-LEDにおいて、混合ナノクリスタル膜への電荷注入は、低い印加バイアス(5V)において、緑色及び赤色ナノクリスタルへの注入が支配的である。ナノクリスタル混合物は、赤色ナノクリスタルの2倍の緑色ナノクリスタルを含むため、低い印加バイアスにおいて、緑色ナノクリスタルのより大きい部分が、赤色ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスと比較してより高強度の緑色エレクトロルミネッセンス成分に寄与する。緑色ナノクリスタルが赤色ナノクリスタルの隣に位置する確率が低いため、緑色ナノクリスタルから赤色ナノクリスタルへの共鳴エネルギー伝達は、混合ナノクリスタル単層における青色ナノクリスタルと比較して相対的に小数の赤色及び緑色ナノクリスタルによって阻害される。より高い印加バイアスでは、青色ナノクリスタルへの電荷注入がより効率的になり、青色ナノクリスタルのエレクトロルミネッセンス成分がより大きくなる。青色ナノクリスタル上のエキシトン形成の増強は、青色ナノクリスタルから赤色及び緑色ナノクリスタルへのエキシトンエネルギー伝達により、赤色及び緑色ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスにとっても有益である。赤色ナノクリスタルへのエネルギー伝達は、スペクトル重複が大きくなるため、緑色ナノクリスタルへのエネルギー伝達より効率的であり、その結果、(より高い動作電圧において)青色ナノクリスタルルミネッセンスが強くなると、赤色ナノクリスタルルミネッセンスが緑色ナノクリスタルルミネッセンスより上昇することに留意されたい。混合ナノクリスタル単層において最も数の多い青色ナノクリスタル上のエキシトン形成は、単色青色ナノクリスタル-LEDの効率を厳密に追跡する白色ナノクリスタル-LEDの効率データに反映されるように、白色デバイスの全体効率を支配する。
【0048】
白色ナノクリスタル-LEDの動作は、すべての単色ナノクリスタル-LEDにおいて同一の電子輸送、正孔ブロッキング及び正孔輸送層を使用することによって可能になる。塗装場における色の混合と同様に、理想的なデバイスでは、ナノクリスタルの溶液を正確に混合して、所望のスペクトルを達成することができる。これは、最良のOLEDの可調性を凌ぐナノクリスタル-LED光源の固有の機能であり、ナノクリスタル-LED設計の簡潔さ及びナノクリスタルルモフォアの色純度に起因する。40nmのFWHM幅スペクトルを有する5つのナノクリスタルルモフォアを使用することによって、(0.33、0.35)のCIE座標及びCRI=98で白色光源を構成する完成白色ナノクリスタル-LEDのシミュレート発光スペクトルの一例が図7に示されている。当該シミュレートデバイスは、スペクトルのUV及びIR部で光子を放射しないため、輝度効率が最大になることに留意されたい。
【0049】
図8を参照すると、スペクトル重複を証明する、それぞれ標識されたTPD及びAlq3フォトルミネッセンススペクトルと共に、それぞれ標識された赤色、緑色及び青色半導体ナノクリスタル(「QD」)吸収スペクトルが示されている。
これは、そのスペクトルが成分ナノクリスタルの混合物であるエレクトロルミネッセンスデバイスを作製するために混合ナノクリスタル膜を使用することの実用性を証明するものである。したがって、白色発光ナノクリスタル-LEDは、低コスト材料、パターン化及び可撓性基板及び比較的高い効率を含む白色OLEDのすべての魅力に加えて、ナノクリスタルエミッタの耐久性及び色可調性を提供する。そのように、このナノクリスタル-LED白色光エミッタは、新たなより汎用的な混合スペクトル及び白色光技術の開発にナノクリスタルを使用する第一のステップになり得る。
【実施例】
【0050】
(実験)
(合成):
赤色、緑色及び青色を表す3色(RBG)を作成するために、3つの異なる種類のコロイド量子ドット(ナノクリスタル)を使用した。第一の種類のナノクリスタルは、λ=622mmにフォトルミネッセンス最大値を有するCdSe/ZnSがオーバーコートされたコア-シェルナノクリスタルである。第二の種類は、λ=540mm付近にフォトルミネッセンス最大値を有するZnSe/CdSe/ZnSコア-シェル/合金オーバーコートされたナノクリスタルである。第三の種類は、λ=440mm付近にフォトルミネッセンス最大値を有するCdZnS合金ナノクリスタルコアである。これらの3つの種類のナノクリスタルは、RGB色スキームの成分を構成する。狭い分布及び最大の量子収率を有する特異的波長エミッタを実現するのに、報告された調製法(例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれているIvanov, S. A.らの論文、J. Phys. Chem. B、2004、108、10625及びZhong, X.らの論文、J. Am. Chem. Soc、2003、125、13559)によるナノクリスタル合成が広く適応されている。発色対象は、それぞれλ=620nm、λ=530nm及びλ=470nmの人間の眼におけるRGBに対する最大検出領域に最も良く適合することで、可能な限り明るい外観を達成するように選択される。
【0051】
Quantum Dot社から購入した赤色CdSe/ZnSコア-シェルナノクリスタルは、λ=622nmにフォトルミネッセンスピークを示し、溶液フォトルミネッセンス量子収率が約90%である。
その全体が引用により組み込まれているIvanovらの論文、J. Phys. Chem. B、2004. 108、10625から適応されるように、ZnSe/CdSe合金コアを作製することによって緑色発光量子ドットを調製し、続いてZnSでオーバーコートした。そのために、ジエチル亜鉛、セレン化トリオクチルホスフィン(TOP-Se)及びTOPを310℃でヘキサデシルアミン(HDA)のフラスコに注入することによって、ZnSeコアを最初に調製した。次いで、λ=354nmに第一の吸収ピークが現れるまで270℃で〜2時間コアを成長させた。次いで、ZnSeの高いバンドギャップによりまだ透明に見える溶液を150℃まで冷却し、成長溶液の5mlをTOPO及びヘキシルホスホン酸(HPA)の脱ガス溶液に直ちに注入した。注入後直ちに、ジメチルカドミウム、TOP-Se及びTOPの溶液を溶媒/ZnSe混合物に一滴ずつ添加し、λ=540nmに発光が生じるまで該溶液を150℃で〜19時間(2日間を超えない)加熱した。次いで、ZnSe及びCdSeで構成されたこれらのコアを、メタノール/ブタノールを使用して2回析出させ、ヘキサンに再溶解させた。次いで、この溶液を脱ガスされたTOPO及びHPAのフラスコに80℃で注入し、ヘキサンを真空下で1時間にわたって除去した。一方がジメチルカドミウム、ジエチル亜鉛及びTOPを含み、他方がTMS2-S及びTOPを含む2つの溶液を2ml/時の速度でシリンジポンプによって150℃で〜2時間にわたってフラスコに徐々に加えた後、溶液を室温まで冷却した。次いで、上記のようにメタノール/ブタノールを使用してナノ粒子を析出し、ヘキサンに再分散させることが可能であった。この処理を3回実施し、各分散後に、0.2μmフィルタで濾過し、最終工程でクロロホルムに再溶解させた。基準としてクマリン540(エタノール中の量子収率89%(その全体が引用により組み込まれているFletcher, A.N.らの論文、Appl. Phys.、1978、16、289))を使用してZnSe/CdSe/ZnSの量子収率を測定したところ、〜65%であった。
【0052】
その全体が引用により組み込まれているZhongらの論文、J. Am. Chem. Soc、2003、125、13559の実験にいくつかの改変を加えたものに従って、CdO及びZnOをオレイン酸及びオクタデセンに溶解させた透明溶液を含むフラスコに、オレイルアミン及び硫黄元素を含むシリンジを、アルゴン下にて310℃で注入することによって青色発光ZnCdSコアを調製した。溶液は、透明から黄色に素早く変化し、ポットにおいて270℃で〜30分間攪拌された。その後、アセトンを成長溶液に添加することによってZnCdSコアを析出させ、遠心分離によって上澄みから分離した。次いで、上記のように、メタノール/ブタノールを使用してナノクリスタルを再び析出させ、遠心分離し、クロロホルムに再分散させた。基準としてクマリン480(エタノール中の量子収率99%、例えば、その全体が引用により組み込まれているKubi, R.F.;A.N. Fletcherの論文;Chem. Phys. Lett.、1983、99 1、49参照)を使用して、ZnCdsコアの量子収率が〜48%であることが見出された。
【0053】
(デバイスの作製)
すべてのナノクリスタルを受領し、保管し、クロロホルムのナノ粒子溶液として処理した。ナノクリスタル単層をスピンキャスティング(spin-casting)で製造するために、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて溶液濃度を較正した(図3)。すべての有機膜(PEDOT:PSSを除く)を<5×10-7Torrの圧力及び〜0.1nm/sの速度で加熱蒸発させた。PEDOT:PSS膜をITO基板上にスピンキャストし、N2雰囲気中で15分間にわたって110℃で焼成した。ナノクリスタル-LED及びAFMサンプルのためのITO基板を多工程溶媒洗浄法で洗浄した後、5分間O2プラズマに曝した。カバーガラス及びUV硬化性エポキシを使用して、ナノクリスタル-LEDをN2グローブボックスで梱包した。電流-電圧特性及び量子効率測定を半導体パラメータ分析装置HP 4145B及び較正フォトダイオードNewport 2101によって行った。エレクトロルミネッセンスのランバート分布を想定して、測光単位(cd/m2)のデバイス輝度を順方向の目視方向で計算した。例えば、その全体が引用により組み込まれているGreenham, N. C.らの論文、Adv. Mater.、1994、6、491を参照されたい。
他の実施態様は、上記請求項の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】発光デバイスを示す概略図である。
【図2】発光デバイスの外部量子効率対電圧を示す図である。
【図3】(a)は、厚さ40nmのTPD膜の上部に約1.1の単層を形成する青色発光半導体ナノクリスタル(QD)の原子間力顕微鏡位相画像を示す図であり;(b)は、白色QD-LEDのデバイス断面を示す図であり;(c)は、10Vの印加順方向バイアスで動作する白色QD-LEDを示す写真である。
【0055】
【図4】(a)は、赤色及び青色発光QDスペクトル成分の相対強度が、より高いバイアスにおいて緑色QD成分と比較して高くなる、一連の増強印加電圧に対する白色QD-LEDの正規化ELスペクトルを示す図であり;(b)は、赤色、緑色及び青色の単色QD-LED(それぞれ赤色、緑色及び青色ライン)の正規化エレクトロルミネッセンススペクトルを示す図であり;(c)は、円記号が、印加バイアスの増加の際の白色QD-LEDのCIE座標及びCRIの変化を示す赤色、緑色、青色QD-LED(三角形)のCIE座標を示す図である。
【0056】
【図5】それぞれ赤色、緑色、青色及び黒色のラインで標識された赤色、緑色、青色及び白色のQD-LEDに対して測定した電流-電圧特性(a)及び外部エレクトロルミネッセンス量子効率(b)を示す図である。矢印は、100cd/m2の輝度における値を示す。
【図6】この試験のQD-LEDの示唆されたバンド構造を示す図である。赤色QDの導電及び価電子バンド位置が、赤色エネルギーレベルで標識されている。陰影部分は、緑色及び青色発光QDの導電及び価電子バンドの見込まれるエネルギーレベル位置の範囲を示す。
【0057】
【図7】それぞれ40nmFWHMスペクトル発光を有する5つのQDルモフォア(lumophore)によるシュミレートされたQD-LED白色光源を示す図である。その複合発光スペクトルは、CRI=98の演色評価数を有し、スペクトルの紫外線部及び赤外線部で光子を浪費しない。T=5500Kの黒体光源の発光スペクトルが重畳されている。
【図8】それぞれ標識されたTPD及びAlq3フォトルミネッセンススペクトルと共に、それぞれ標識された赤色、緑色及び青色発光半導体ナノクリスタル(「QD」)吸収スペクトルを示す図であり、これはスペクトル重複を証明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体ナノクリスタルを含む発光層を含む発光デバイスであって、該複数の半導体ナノクリスタルは、励起により白色光を発光する、前記発光デバイス。
【請求項2】
第一電極;
該第一電極に接触する正孔注入層;
該正孔注入層に接触する正孔輸送層;
該正孔輸送層に接触する正孔ブロッキング層;
該正孔ブロッキング層に接触する電子輸送層;
該電子輸送層に接触する第二電極;及び
該電子輸送層と該正孔ブロッキング層の間に存在し、励起されたときに少なくとも2色の異なる発光を含む複数の半導体ナノクリスタル;を含む、発光デバイス。
【請求項3】
前記第一電極が透明電極である、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
正孔注入層が導電性ポリマーを含む、請求項2又は3記載のデバイス。
【請求項5】
前記正孔輸送層がベンジジンを含む、請求項2から4のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項6】
前記正孔ブロッキング層がトリアゾールを含む、請求項2から5のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項7】
前記電子輸送層が金属錯体を含む、請求項2から6のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項8】
前記第二電極が金属を含む、請求項2から7のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、励起されたときに少なくとも3色の異なる発光を含むことができる、請求項2から8のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項10】
前記複数のナノクリスタルが、赤色、緑色及び青色発光ナノクリスタルを含む、請求項1から9のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項11】
ナノクリスタルがコアを含む、請求項1から10のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項12】
前記コア上にオーバーコーティングをさらに含み、該オーバーコーティングが第二の半導体材料を含む、請求項1から9のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項13】
少なくとも0.20%の外部量子効率を有する、請求項1から12のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項14】
(0.35、0.41)のCIE座標を有する、請求項1から13のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項15】
5500Kの黒体基準と比較して86の演色評価数(CRI)を有する、請求項1から14のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項記載のデバイスを形成する方法であって、第一電極と第二電極の間に複数の半導体ナノクリスタルを配置することを含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項記載のデバイスに発光電位を印加することを含む、発光方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項記載の複数の発光デバイスを含む、ディスプレイ。
【請求項1】
複数の半導体ナノクリスタルを含む発光層を含む発光デバイスであって、該複数の半導体ナノクリスタルは、励起により白色光を発光する、前記発光デバイス。
【請求項2】
第一電極;
該第一電極に接触する正孔注入層;
該正孔注入層に接触する正孔輸送層;
該正孔輸送層に接触する正孔ブロッキング層;
該正孔ブロッキング層に接触する電子輸送層;
該電子輸送層に接触する第二電極;及び
該電子輸送層と該正孔ブロッキング層の間に存在し、励起されたときに少なくとも2色の異なる発光を含む複数の半導体ナノクリスタル;を含む、発光デバイス。
【請求項3】
前記第一電極が透明電極である、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
正孔注入層が導電性ポリマーを含む、請求項2又は3記載のデバイス。
【請求項5】
前記正孔輸送層がベンジジンを含む、請求項2から4のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項6】
前記正孔ブロッキング層がトリアゾールを含む、請求項2から5のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項7】
前記電子輸送層が金属錯体を含む、請求項2から6のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項8】
前記第二電極が金属を含む、請求項2から7のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、励起されたときに少なくとも3色の異なる発光を含むことができる、請求項2から8のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項10】
前記複数のナノクリスタルが、赤色、緑色及び青色発光ナノクリスタルを含む、請求項1から9のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項11】
ナノクリスタルがコアを含む、請求項1から10のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項12】
前記コア上にオーバーコーティングをさらに含み、該オーバーコーティングが第二の半導体材料を含む、請求項1から9のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項13】
少なくとも0.20%の外部量子効率を有する、請求項1から12のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項14】
(0.35、0.41)のCIE座標を有する、請求項1から13のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項15】
5500Kの黒体基準と比較して86の演色評価数(CRI)を有する、請求項1から14のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項記載のデバイスを形成する方法であって、第一電極と第二電極の間に複数の半導体ナノクリスタルを配置することを含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項記載のデバイスに発光電位を印加することを含む、発光方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項記載の複数の発光デバイスを含む、ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2009−527099(P2009−527099A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555296(P2008−555296)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/003677
【国際公開番号】WO2007/095173
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(591091892)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/003677
【国際公開番号】WO2007/095173
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(591091892)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (16)
【Fターム(参考)】
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