説明

白色発光マイクロキャビティOLEDデバイス

【課題】発光効率の高い白色OLEDデバイスの提供。
【解決手段】白色発光OLED装置は、マイクロキャビティOLEDデバイスと光集積要素とを含み、その際マイクロキャビティOLEDデバイスは白色発光有機EL要素を有し、マイクロキャビティOLEDデバイスは角度依存狭帯域放射を有するよう構成され、光集積要素はマイクロキャビティOLEDデバイスからの異なる角度からの角度依存狭帯域放射を集積して白色発光を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電場発光(EL)装置に関する。さらに詳しく言うと、本発明は、効率を改善した白色発光EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)デバイスは、その低駆動電圧、高輝度、広視野角、及びフルカラー均一放射ディスプレイのための能力のため魅力的である。タン(Tang)他は、米国特許第4,769,292号及び第4,885,211号で多層OLEDデバイスを開示している。
【0003】
効率的な白色光を生じるOLEDデバイスは、極薄型光源、LCDディスプレイのバックライト、自動車の車内灯、及び事務所の照明といったいくつかの適用業務のための低費用な代替案であると考えられている。白色光を生じるOLEDデバイスは明るく、効率的であるべきであり、一般に可視波長範囲の大部分に及ぶ広い放射スペクトルを有する。本出願では、「白色」または「実質上白色」という用語は、白色またはオフホワイトとして知覚される光を意味するよう広範に使用する。
【0004】
以下の特許及び刊行物は、1対の電極の間に置かれた正孔輸送層と有機電場発光層とを備える、白色光を放射することのできる有機OLEDデバイスの準備を開示している。
【0005】
白色光を生じるOLEDデバイスは以前、米国特許第5,683,823号でJ.シ(J.Shi)によって報告されており、そこでは発光層は、ホスト放射材料中に均一に分散した赤色及び青色の発光材料を含んでいる。このデバイスは良好な電場発光特性を有しているが、赤色及び青色のドーパントの濃度は、ホスト材料の0.12%及び0.25%といった非常に小さなものである。大規模製造の際、こうした濃度を制御するのは困難である。佐藤(Sato)他は、日本国特許第JP07,142,169号で、正孔輸送層に隣接する青色の発光層と、それに続く、赤色蛍光層を含む領域を有する緑色の発光層とを形成することによって製造される、白色光を放射することのできるOLEDデバイスを開示している。
【0006】
城戸(Kido)他は、科学(Science)、第267巻、1332ページ(1995)及び応用物理通信(Applied Physics Letters)、第64巻、815ページ(1994)で、白色光を生じるOLEDデバイスを報告している。このデバイスでは、各々青色、緑色、または赤色を放射する、異なるキャリア輸送特性を備えた3つの放射層を使用して白色光を生成する。リットマン(Littman)他は、米国特許第5,405,709号で、正孔−電子の再結合に応答して白色光を放射することができ、青緑色から赤色までの範囲の可視光での蛍光性を備える別の白色発光デバイスを開示する。デーシュパーンデー(Deshpande)他は、応用物理通信(Applied Physics Letters)、第75巻、888ページ(1999)で、正孔阻止層によって分離された赤色、青色、及び緑色の蛍光層を使用する白色OLEDデバイスを記載している。
【0007】
OLEDデバイスは通常、インジウム−スズ酸化物(ITO)のような導電性酸化物から製造されることの多い少なくとも1つの透明な電極を有する。こうした材料は、個々の画素が1mm程度またはそれ未満であるディスプレイにとって十分な導電性を有する。しかし、パネル照明のように、個々の放射ユニットがより大きな適用業務の場合、こうした透明な電極の導電性は不十分なことがある。この欠点は、放射要素を細いストライプ状にすることによって克服できるが、位置合わせが困難になるためこうしたデバイスを製造するのはより困難になり、製造費用が増大する。その上、こうした透明な電極自体費用がかかり製造費用を増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、高い発光効率を備えた白色OLED装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、マイクロキャビティOLEDデバイスと光集積要素とを備える白色発光OLED装置であって、マイクロキャビティOLEDデバイスが白色発光有機EL要素を有し、マイクロキャビティOLEDデバイスが角度依存狭帯域放射を有するよう構成され、光集積要素がマイクロキャビティOLEDデバイスからの異なる角度からの角度依存狭帯域放射を集積して白色発光を形成する白色発光OLED装置によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、費用を下げ、導電性を高め、製造の容易さを改善するため金属電極だけを有するOLEDデバイスを利用する白色発光OLED装置を提供する。このOLED装置は性能を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る白色発光OLED装置の断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る白色発光OLED装置の断面図である。
【図3】本発明のまた別の実施形態に係る白色発光OLED装置の断面図である。
【図4】本装置の光透過効果の概略を示す、本発明に係るマイクロキャビティOLEDデバイスの断面図である。
【図5】本発明に係るマイクロキャビティOLEDデバイスの平面図である。
【図6】先行技術の非マイクロキャビティOLEDデバイスのスペクトル出力を示す。
【図7】先行技術のマイクロキャビティOLEDデバイスのスペクトル出力を示す。
【図8】本発明に係るマイクロキャビティOLED装置のスペクトル出力を示す。
【0012】
層の厚さといったデバイスの特徴的な寸法はマイクロメータ未満のものが多いため、図面の縮尺は寸法精度より視覚化の容易さを考慮したものになっている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「OLEDデバイス」という用語は、有機発光ダイオードを備える発光デバイスという当業技術分野で認識された意味で使用する。「OLED装置」という用語は、主要構成要素の1つとしてOLEDデバイスを含む装置を記述するために使用する。「白色光」という用語は、可視波長の大部分に及ぶ広い放射スペクトルを有し一般にユーザによって白色を有するものとして知覚される光に対して使用する。「マイクロキャビティOLEDデバイス」という用語は、30%以上の反射率を有する2つの反射ミラーの間に配置された有機EL要素を備えるOLEDデバイスを指すために使用する。大部分の場合、反射ミラーの1つは本質的に不透明であり、もう1つは1.0未満の光学濃度を有する半透明のものである。2つの反射ミラーは、OLEDデバイスの放射特性に強く影響するファブリーペローマイクロキャビティを形成する。キャビティの共振波長に対応する波長に近い放射は強調され、他の波長の放射は抑圧される。その最終的な結果は、放射される光の帯域幅が大きく狭まり、その輝度が大きく増大することである。また、放射スペクトルも高度に角度依存になる。「有機EL要素」という用語は、OLEDデバイスの動作中、印加された電圧下で光を放射するOLEDデバイスの2つの電極の間に配置された1つかそれ以上の有機層を指す。また、本願の目的は、「有機EL要素」は、無機の電子または正孔注入層がOLEDデバイス中で使用される場合、こうした層を含んでもよい。
【0014】
大面積の白色発光OLEDデバイスの場合、透明な導電性酸化物電極の使用に関連する問題、すなわち高い費用と低い導電率は、酸化物電極の代わりに薄い金属電極を使用することによって克服できる。しかし、十分な導電率の金属膜を使用する場合、それはむしろ反射性である。その結果、一般にもう一方の電極は金属であり反射性であるので、マイクロキャビティ構造が形成される。マイクロキャビティ構造は放射光の帯域幅を大きく狭める。デバイス中で白色発光有機EL要素を使用する場合でも、OLEDデバイスからの出力は狭帯域になる。そうなると白色発光OLEDデバイスとしては有用でなくなってしまう。
【0015】
本発明はこの問題を認識し、かつ、マイクロキャビティOLEDデバイスからの放射は高度に角度依存であることを認識する。マイクロキャビティOLEDデバイスの共振条件は、式1によって記述できる。
2Σniicosθi+(Qm1+Qm2)λ/2π=mλ 式1
ここで、
iは有機EL要素中のi番目の副層の屈折率であり、Liはその厚さであり、
θはOLEDデバイスの平面に対する法線を基準に測定したi番目の副層中の光の角度であり、
m1及びQm2は、それぞれ2つの有機EL要素と金属電極との境界面でのラジアンを単位とする位相シフトであり、
λはデバイスから放射される共振波長であり、
mは負でない整数である。
異なる副層のθi(デバイスの外部で放射される光の角度を含む)は独立ではなく、スネルの法則ni sinθi=nj sinθjにより互いに関連する。
【0016】
式1は、マイクロキャビティからの共振放射波長λが角度の関数であることを示している。角度が増大するに連れて共振放射波長は短くなる。実際には、0度から90度の角度範囲にわたって、放射波長が可視波長の大部分に及ぶことができるように、放射波長の変化を十分に大きくすることができる。
【0017】
すなわち、本発明によれば、白色OLED装置は、マイクロキャビティOLEDデバイスからの様々な角度の狭帯域放射光を、白色光として知覚できる角度依存を低減した単一の広帯域放射に集積するため、光集積要素をマイクロキャビティOLEDデバイスに追加することによって構成される。本発明によって実行される光モデル化シミュレーションが示唆するところによれば、集積された放射は本質的に、白色OLED装置が対象とする波長領域全体にわたって非マイクロキャビティデバイスにおける有機EL要素からの放射スペクトルの形状を再現できる。その上、マイクロキャビティOLEDデバイスが適切に設計されている場合、集積された総出力は、同じ有機EL要素を使用する非マイクロキャビティOLEDデバイスより改善できる。可視スペクトル全体に及ぶため、有機EL要素は白色光を放射するよう選択される。
【0018】
本発明はさらに、意外にも、式1の角度θiが実際にはマイクロキャビティ内の内角を指すという事実の重要な意味を認識した。OLED構造中の材料の屈折率は空気の屈折率より大きいので、空気中の角度θairはもっと大きくなる。その角度を越えるとマイクロキャビティからの放射が総内部反射のため閉じ込められるというクリティカルな内角θcが存在する。総内部反射による光の閉じ込めは従来の非マイクロキャビティOLEDデバイスについて十分に記録されているが、マイクロキャビティOLEDデバイスにおけるこうした光の閉じ込めのある重要な意味についてはこれまで認識されていなかった。
【0019】
本発明は、例えば、光が基板を通じて放射される下部発光OLEDデバイスの場合、基板中に完全に閉じ込められるかなりの量の光が存在することがあることを発見した。同様に、半透明のトップ電極の上に誘電体層が配置された上部発光OLEDデバイスの場合、かなりの量の光が誘電体層中に閉じ込められることがある。マイクロキャビティOLEDデバイスでは、放射スペクトルが角度によって変化し角度が増大するに連れて放射波長は一般に短くなるので、閉じ込められた光は、マイクロキャビティOLEDデバイスから空気中に放射される光より短い波長を有する。しかし、高次の短波長放射(式1の場合m>0)に合わせて調整されたマイクロキャビティOLEDの場合、角度が増大するに連れて低次空洞共振が赤外領域から可視領域に移動することがある。そして、この長い波長の放射はデバイス中に閉じ込められやすい傾向がある。これと比較して、従来の非マイクロキャビティOLEDデバイスでは、閉じ込められた光と放射光との間に存在するスペクトル差ははるかに小さい。例えば、赤色波長領域を放射するよう調整したマイクロキャビティOLEDデバイスの場合、角度が増大するに連れて放射される光は赤色から橙色、さらには黄色に変化することがある。かなりの量の緑色及び青色の光が基板内または高屈折率誘電体層内に閉じ込められることがある。本発明が発見したところによれば、この閉じ込められた光は、総内部反射フラストレータ(TIRF)を使用することによって基板または誘電体層の閉じ込めから解放されることができる。TIRFを提供する多くの方法が存在するが、それは本出願の後の部分で論じる。本発明の好適実施形態では、光散乱膜の形態のTIRFを下部発光OLEDデバイスの基板の外部表面に光学的に結合する。閉じ込められた光が光散乱膜に到達すると、その一部は伝播角度が変化し閉じ込めから解放される。残りの閉じ込められた光は基板内を伝播し、後で再び光散乱膜に到達した時閉じ込めから解放されることがある。閉じ込められた光は短い波長の光を含むので、閉じ込められた光の解放によって放射光の帯域幅も増大し、このことは白色OLED装置にとって極めて望ましい。本発明によって行われるモデルシミュレーションが示唆するところによれば、放射効率を改善するため、マイクロキャビティOLEDデバイスは、法線方向において、可視スペクトルの赤色領域にある、好適には600nmより長い共振放射波長を有するのが好適である。代替的には、マイクロキャビティOLEDデバイスは、波長が500nm未満の青色領域の高次(式1の場合m>0)共振に合わせて調整してもよい。この場合、(より小さな値のmとの共振から)閉じ込められた光は波長範囲の赤色領域内にあり、この光を閉じ込めから解放することによって、放射は再び向上し放射波長は再び広くなる。
【0020】
本発明の別の好適実施形態では、TIRFを、OLEDデバイスの基板または誘電体層と半透明の金属電極との間に配置する。半透明の金属電極に近いTIRFを有することによって、有機層中の光をも解放することが可能になり、OLEDデバイスの出力効率とスペクトル帯域幅がさらに改善される。
【0021】
光の方向を無作為に変化させる際有効な任意の構造を使用して広い角度にわたって放射される光を集積してもよい。当業技術分野で周知の方法は表面またはバルク散乱を含む光散乱層を含む。こうした層は当業技術分野で周知であり、それを使用してそれらを通過する光の方向を有効に変化させてもよい。例えば、光集積要素はマトリックス中に分散した包含物を有する層またはコーティングを備えてもよく、その際包含物の屈折率はマトリックスの屈折率と異なる。この1つの例は、TiO2のような1つかそれ以上の白色顔料を混入したプラスチック膜またはコーティングである。また、光集積要素は、異なる屈折率を有する結晶及びアモルファス領域を有するプラスチック膜またはコーティングを備えてもよい。こうしたプラスチックの例は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ETFE、ポリスチレン、及びポリプロピレンを含む。光集積要素は表面光散乱構造またはレンズを備えてもよい。また、散乱層を反射モードで使用して、表面から反射する光の方向を変化させて有効に集積し、均一な照射を形成してもよい。光集積要素はOLEDデバイスから離して配置してもよく、デバイス上またはデバイス内に組み込んでもよいが、最も好適な場合、光集積要素及びTIRF両方の機能を果たす単一層でもよい。例えば、この好適な場合では、白色発光装置は、基板の外部表面上に配置された光散乱要素を有する下部発光OLEDデバイスから構成してもよく、その際光散乱要素はTIRF及び光集積器両方の機能を果たすよう設計される。本発明の代替実施形態では、光集積要素及びTIRF両方の機能を果たす層を半透明の電極の近くに配置してもよい。
【0022】
また、TIRFは光散乱要素を備えてもよい。例えば、TIRFはマトリックス中に分散した包含物を有する層またはコーティングを備えてもよく、その際包含物の屈折率はマトリックスの屈折率と異なる。TIRFの特定の例は、TiO2のような1つかそれ以上の白色顔料を混入したプラスチック膜またはコーティングである。また、異なる屈折率を有する結晶及びアモルファス領域を有するプラスチック膜またはコーティングを備えてもよい。こうしたプラスチックの例は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ETFE、ポリスチレン、及びポリプロピレンを含む。TIRFは表面光散乱構造またはレンズ要素を備えてもよい。
【0023】
本発明の別の代替実施形態では、マイクロキャビティOLEDデバイスは、各々法線方向で異なる放射波長に合わせて調整された2つかそれ以上の副領域に分割される。これによって、白色OLED装置からの放射は確実に可視波長範囲全体に及ぶことができる。例えば、領域の1つを、法線方向で赤色または赤外光を放射するよう調整してもよい。この領域より大きな角度の放射は波長の黄色及び緑色領域に及ぶことができる。第2の領域を、法線方向で緑色光を放射するよう調整してもよく、このデバイスからのより大きな角度の放射は青色波長領域に及ぶことができる。2つかそれ以上の領域を使用することによって、全可視波長範囲を有効に対象とすることができ、同じ有機EL要素を使用する非マイクロキャビティOLEDデバイスよりも、集積された総出力を改善することができる。波長の対象範囲を改善するため、副領域の1つは、好適にはピーク波長が直角で550nmより大きい赤色光を放射するよう調整する。他の領域の少なくとも1つは、ピーク波長が直角で550nmより小さい光を放射するよう調整する。さらに、TIRFを追加してOLEDデバイスの光放射効率を改善しスペクトル出力を拡大してもよい。
【0024】
デバイスからの一般に均一な白色発光を必要とする多くの適用業務の場合、個々の領域の寸法は小さく保持してもよい。光集積要素による集積後、白色OLED装置からの放射が均一に見えるように、異なる領域を相互分散してもよい。
【0025】
法線方向で異なる色の光を放射するよう調整された異なる領域のために、共通の白色発光有機EL要素を使用してもよく、また、代替的には、異なる固有放射スペクトルを備えた放射材料を異なる領域で使用してもよい。例えば、有機層の合計厚さを変化させて、2つの反射電極の間の間隔を変化させることによって、異なる調整を達成してもよい。代替的には、有機層と反射電極の1つとの間で透明な導電相の層を使用して、2つの反射電極の間の間隔を調整してもよい。
【0026】
ここで図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る白色マイクロキャビティOLED装置100の断面図が示される。白色OLED装置はOLEDデバイス10と光集積要素95とを含む。OLEDデバイス10は最小限、基板20、一般にアノードとして構成されたボトム電極30、一般にカソードとして構成され、ボトム電極30から間隔の開いたトップ電極90、及び発光層50を含む。また、OLEDデバイスは、TIRF25のようなTIRF、透明な導電性スペーサ層35、正孔注入層40、正孔輸送層45、電子輸送層55、及び電子注入層60の1つかそれ以上を含んでもよい。見られるように、正孔注入層40、正孔輸送層45、発光層50、電子輸送層55、及び電子注入層60は有機EL要素70を備える。これらの構成要素は以下より詳細に説明する。
【0027】
基板20は、有機固体、無機固体、または有機及び無機固体の組み合わせでもよい。基板20は剛体または可撓性でよく、シートまたはウェハといった独立した別個の部片または連続ロールとして処理してもよい。通常の基板材料は、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、半導体窒化物、またはそれらの組み合わせを含む。基板20は材料の均質な混合物、材料の複合体、または材料の多数の層でもよい。基板20は、例えばアクティブマトリックス低温ポリシリコンまたはアモルファスシリコンTFT基板といったOLEDデバイスを準備するため一般的に使用される基板であるOLED基板でよい。基板20は、光放射の意図した方向に応じて光透過性または不透明の何れかでよい。光透過特性は基板を通じてEL放射を見るために望ましい。この場合、透明なガラスまたはプラスチックが一般に利用される。EL放射をトップ電極を通じて見る適用業務では、基板34の透過特性は重要でないので、光透過性、光吸収性または光反射性でもよい。この場合使用される基板は、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミックス、及び回路基板材料、または、パッシブマトリックスデバイスまたはアクティブマトリックスデバイスの何れかでよいOLEDデバイスを形成する際一般に使用される何らかの他のものを含むが、これらに制限されない。
【0028】
TIRF25は、有機EL要素70によって放射されOLEDデバイス10中に閉じ込められた光を閉じ込めから解放するよう設計された構造である。TIRF25は、例えば、光を散乱する光散乱要素でもよい。この場合、TIRF25は、粒子または空隙と異なる屈折率を有するマトリックス中に分散した粒子または空隙を含む容積光散乱要素でもよい。結晶相を含み白色を呈するかまたは半透明である多くの一般的なポリマーは良好な容積散乱要素となることができTIRFとして有効に使用できる。また、TiO2のような白色化剤を混入したポリマーもTIRFとして有効に使用できる。また、TIRFは、光を散乱する表面の造作または質感を含む表面光散乱要素でもよい。TIRFは基板20に取り付けられ光学的に結合した別個の要素でもよく、また基板の一体式部分でもよい。基板20を通じて放射し金属ボトム電極30が半透明であるOLEDデバイス10の場合、TIRF25は、図1に示すように、基板の外部表面上に配置してもよく、また、図2に示すように、基板20と金属ボトム電極30との間に配置してもよい。半透明のトップ電極90を有しトップ電極90を通じて放射するOLEDデバイス10の場合、TIRF25は半透明のトップ電極90の上に配置してもよい。場合によっては、透明な誘電体膜を、TIRF25と半透明のトップ電極90との間に配置してもよい。
【0029】
金属ボトム電極30は基板20の上に形成し、最も一般的にはアノードとして形成する。また、ボトム電極30は反射ミラーでもある。EL放射を基板20を通じて見る場合、ボトム電極30は反射性金属から製造するべきであり、半透明と呼ばれる、放射される光の波長で有限部分透過率を有するように十分薄いものであるべきである。実際のデバイスの場合、ボトム電極30は、一般的なガラスまたはプラスチックの透明な基板の上の単一の膜として測定した場合、少なくとも30%の反射率と1.0未満の光学濃度を有するべきである。AgまたはAu、及びそれらの金属の少なくとも1つを少なくとも50原子パーセント有する合金として定義されるそれらの合金を含む少数の金属だけが、好適にはボトム電極30として使用される。ボトム電極30の厚さ範囲は、OLEDデバイス10からの所定の波長の輝度光出力を最適化するよう制限され選択される。また、状況によっては、ボトム電極30中の薄い反射金属層と組み合わせた透明な導電酸化物層を含んでもよい。横方向のコンダクタンスは薄い反射性金属層によって提供されるので、透明な導電酸化物層の導電率は高い必要はない。適切な材料は、酸化インジウム(InOx)、酸化スズ(SnOx)、酸化亜鉛(ZnOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化アンチモン(SbOx)、またはこれらの混合物を含む。
【0030】
EL放射をトップ電極90を通じて見る場合、ボトム電極30は好適には、本質的に不透明な完全反射ミラーとなるように、1.5またはそれ以上の光学濃度を呈する厚さを備えた反射性金属である。OLEDデバイスの放射効率は、ボトム電極30の反射率が増大するに連れて増大する。ボトム電極30は好適には、AgまたはAu、Al、Mg、またはCa、またはこれらの合金を含むリストから選択する。
【0031】
必ずしも必要ではないが、有機発光ディスプレイ中のボトム電極30の上に正孔注入層40を形成するのが有用であることが多い。正孔注入材料は、後続の有機層の膜形成特性を改善し正孔輸送層への正孔の注入を促進する役目を果たすことがある。正孔注入層40で使用する適切な材料は、米国特許第4,720,432号に記載のポルフィリン化合物、米国特許第6,208,075号に記載のプラズマ蒸着フルオロカーボンポリマー、及び酸化バナジウム(VOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化ニッケル(NiOx)等を含む無機酸化物を含むが、これらに制限されない。有機ELデバイスにおいて有用であると伝えられる代替正孔注入材料は、第EP 0 891 121 A1号及び第EP 1 029 909 A1号に記載されている。
【0032】
必ずしも必要ではないが、ボトム電極30とトップ電極90との間に正孔輸送層45を形成し配置するのが有用であることが多い。望ましい正孔輸送材料は、気化、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、またはドナー材料からのレーザ熱転写といった何らかの適切な方法によって蒸着してよい。正孔輸送層45で有用な正孔輸送材料が芳香族第三級アミンのような化合物を含むことは周知であり、芳香族第三級アミンとは、少なくとも1つが芳香環の要素である炭素原子にだけ結合する少なくとも1つの三価窒素原子を含む化合物であると理解されている。1つの形態では、芳香族第三級アミンは、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、またはポリマーアリールアミンといったアリールアミンでもよい。モノマートリアリールアミンの例は、米国特許第3,180,730号で、クリュプフェル(Klupfel)他によって例示されている。1つかそれ以上のビニル基によって置換され、かつ/または少なくとも1つの活性水素を含む基を備える他の適切なトリアリールアミンは、米国特許第3,567,450号及び第3,658,520号でブラントリー(Brantly)他によって開示されている。
【0033】
芳香族第三級アミンのさらに好適な種類は、米国特許第4,720,432号及び第5,061,569号で開示されているような少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。こうした化合物は構造式Aによって表されるものを含む。
【0034】
【化1】

【0035】
ここで、
1及びQ2は別個に選択された芳香族第三級アミン部分であり、
Gは炭素−炭素結合のアリーレン、シクロアルキレン、またはアルキレン基といった結合基である。
【0036】
1つの実施形態では、Q1またはQ2の少なくとも1つは、例えばナフタレンのような多環式縮合環状構造を含む。Gがアリール基である場合、それは好都合にはフェニレン、ビフェニレン、またはナフタレン部分である。
【0037】
構造式Aを満足し2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な種類は構造式Bによって表される。
【0038】
【化2】

【0039】
ここで、
1及びR2は各々別個に水素原子、アリール基、またはアルキル基を表すか、またはR1及びR2は共にシクロアルキル基を完成する原子を表し、
3及びR4は各々別個にアリール基を表し、そのアリール基は、構造式Cによって示されるようなジアリール置換アミノ基によって置換される。
【0040】
【化3】

【0041】
ここでR5及びR6は別個に選択されたアリール基である。1つの実施形態では、R5及びR6の少なくとも1つは、例えばナフタレンのような多環式縮合環状構造を含む。
【0042】
芳香族第三級アミンの別の種類はテトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンはアリーレン基を介して結合した、式Cによって示されるような2つのジアリールアミノ基を含む。有用なテトラアリールジアミンは式Dによって表されるものを含む。
【0043】
【化4】

【0044】
ここで、
各Areは、フェニレンまたはアントラセン部分といった別個に選択されたアリーレン基であり、
nは1〜4の整数であり、
Ar、R7、R8、及びR9は別個に選択されたアリール基である。
【0045】
通常の実施形態では、Ar、R7、R8、及びR9の少なくとも1つは、例えばナフタレンのような多環式縮合環状構造を含む。
【0046】
上記の構造式A、B、C、Dの様々なアルキル、アルキレン、アリール、及びアリーレン部分は各々順番に置換してもよい。通常の置換基はアルキル基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシ基、及びフッ化物、塩化物、及び臭化物といったハロゲンを含む。様々なアルキル及びアルキレン部分は通常1個〜約6個の炭素原子を含む。シクロアルキル部分は3個〜約10個の炭素原子を含むことがあるが、通常は、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル環状構造といった5個、6個、または7個の炭素原子を含む。アリール及びアリーレン部分は普通フェニル及びフェニレン部分である。
【0047】
OLEDデバイスにおける正孔輸送層は単一の芳香族第三級アミン化合物またはその混合物から形成してよい。詳しく言うと、式Bを満足するトリアリールアミンのようなトリアリールアミンを、式Dによって示されるようなテトラアリールジアミンと組み合わせて利用してよい。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて利用する場合、後者は、トリアリールアミンと電子注入及び電子輸送層との間に挿入された層として配置する。有用な芳香族第三級アミンの例は以下である。
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン
4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン
N,N,N−トリ(p−トリル)アミン
4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4(ジ−p−トリルアミノ)−スチリル]スチルベン
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4−4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル
N−フェニルカルバゾール
ポリ(N−ビニルカルバゾール)
N,N’−ジ−1−ナフタレニル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’−ビス[N−(9−アンスリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”−ビス[N−(1−アンスリル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−フェナンスリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−コロレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4−4”−ジアミノ−p−テルフェニル
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4’−ビス「N−フェニル−N−(2−ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミン]フルオレン
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
【0048】
有用な正孔輸送材料の別の種類は、第EP 1 009 041号に記載の多環式芳香族化合物を含む。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びPEDOT/PSSとも呼ばれるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)のような共重合体といったポリマー正孔輸送材料を使用してもよい。
【0049】
発光層50は、正孔−電子の再結合に応答して光を生じる。発光層50は、ボトム電極30及びトップ電極90である反射ミラーの間に配置され、正孔輸送層45のような、何らかの他の層の上に形成される。望ましい有機発光材料は、気化、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、またはドナーシートからの放射熱転写といった何らかの適切な方法で蒸着してよい。有用な有機発光材料は周知である。米国特許第4,769,292号及び第5,935,721号にさらに十分に記載されているように、有機EL要素の発光層は、この領域での電子−正孔対の再結合の結果として電場発光が生じる発光または蛍光材料を備える。発光層は単一の材料から構成してもよいが、より一般的には、ゲスト化合物またはドーパントによってドープしたホスト材料を含み、発光は主としてドーパントから生じる。ドーパントは特定のスペクトルを有する色の光を生じるように選択する。発光層のホスト材料は、以下定義するような電子輸送材料、上記で定義したような正孔輸送材料、または正孔−電子の再結合をサポートする別の材料でもよい。ドーパントは普通、高度蛍光染料から選択するが、第WO98/55561号、第WO00/18851号、第WO00/57676号、及び第WO00/70655号に記載の遷移金属複合体のような燐光性化合物も有用である。通常、0.01〜10質量%のドーパントをホスト材料中にコーティングする。
【0050】
ドーパントとして染料を選択するための重要な関係は、分子の最高占有分子軌道と最低非占有分子軌道との間のエネルギー差として定義されるバンドギャップ電位の比較である。ホスト材料からドーパント分子への有効なエネルギー転写のため、必要な条件は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップより小さいことである。
【0051】
使用できることが知られているホスト及び発光分子は、米国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,294,870号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、及び第6,020,078号に記載のものを含むが、これらに制限されない。
【0052】
8−ヒドロキシキノリン及び同様の誘導体の金属複合体(式E)は、電場発光をサポートすることができる有用なホスト材料の1つの種類を構成し、例えば緑色、黄色、橙色、及び赤色といった500nmより長い波長の光放射に特に適している。
【0053】
【化5】

【0054】
ここで、
Mは金属を表し、
nは1〜3の整数であり、
Zは発生する都度別個に、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成する原子を表す。
【0055】
上記から、金属は一価、二価、または三価の金属でもよいことが明らかである。金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムといったアルカリ金属、マグネシウムまたはカルシウムといったアルカリ土類金属、またはボロンまたはアルミニウムといった土類金属でもよい。一般に、有用なキレート化金属であることが知られた一価、二価、または三価の金属を利用すればよい。
【0056】
Zは、少なくとも1つがアゾール環またはアジン環である少なくとも2つの縮合芳香環を含む複素環核を完成する。必要な場合、脂肪族環及び芳香族環の両方を含む追加の環を2つの必要な環と共に縮合してもよい。機能を改善することなく分子の大きさを増やすのを避けるため、環の原子の数は18またはそれ未満に維持する。
【0057】
有用なキレート化オキシノイド化合物の例は以下である。
CO−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛(II)
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)
CO−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム]
CO−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]
CO−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]
CO−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0058】
9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(式F)の誘導体は、電場発光をサポートすることができる有用なホスト材料の1つの種類を構成し、例えば青色、緑色、黄色、橙色または赤色といった400nmより長い波長の光放射に特に適している。
【0059】
【化6】

【0060】
ここでR1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、各環についての1つかそれ以上の置換基を表し、各置換基は以下のグループから別個に選択する。
グループ1:水素、または1個〜24個の炭素原子のアルキル
グループ2:5個〜20個の炭素原子のアリールまたは置換アリール
グループ3:アンスラセニル、ピレニル、またはペリレニルの縮合芳香環を完成するために必要な4個〜24個の炭素原子
グループ4:フリル、チェニル、ピリジル、キノリニルまたは他の複素環系の縮合複素芳香環を完成するために必要な5個〜24個の炭素原子のヘテロアリールまたは置換ヘテロアリール
グループ5:1個〜24個の炭素原子のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、またはアリールアミノ
グループ6:フッ素、塩素、臭素またはシアン
【0061】
ベンザゾール誘導体(式G)は、電場発光をサポートすることができる有用なホストの別の種類を構成し、例えば青色、緑色、黄色、橙色または赤色といった400nmより長い波長の光放射に特に適している。
【0062】
【化7】

【0063】
ここで、
nは3〜8の整数であり、
ZはO、NRまたはSであり、
R’は水素、例えばプロピル、t−ブチル、ヘプチル等といった1個〜24個の炭素原子のアルキル、例えばフェニル及びナフチル、フリル、チェニル、ピリジル、キノリニル及び他の複素環系といった5個〜20個の炭素原子のアリールまたはヘテロ原子置換アリール、またはクロロ、フルオロといったハロゲン、または縮合芳香環を完成するために必要な原子であり、
Lは、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールを含む結合単位であり、多数のベンザゾールを互いに共役的または非共役的に接続する。
【0064】
有用なベンザゾールの例は、2,2’,2”−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール]である。
【0065】
望ましい蛍光ドーパントは、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム及びチアピリリウム化合物、及びカルボスチリル化合物の誘導体を含む。有用なドーパントの例は以下を含むが、これらに制限されない。
【0066】
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0067】
他の有機発光材料は、例えば、同じ譲受人に譲受された米国特許第6,194,119B1号及びそこに引用された参考文献でウォルク(Wolk)他によって教示されているポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ−ポリフェニレンビニレン、ポリ−パラ−フェニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体といったポリマー物質でもよい。
【0068】
図示されていないが、結果として得られるOLEDデバイスの適切な放射特性を得るために望ましいならば、デバイスはさらに2つかそれ以上の発光層を備えてもよい。
【0069】
必ずしも必要ではないが、OLEDデバイス10が発光層50の上に形成された電子輸送層55を含むのが有用であることが多い。望ましい電子輸送材料は、気化、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、またはドナー材料からのレーザ熱転写といった何らかの適切な方法によって蒸着してよい。電子輸送層55で使用するための好適な電子輸送材料は、(一般に8−キノリノールまたは8−ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)オキシン自体のキレートを含む金属キレート化オキシノイド化合物である。こうした化合物は電子の注入及び輸送を助け、どちらでも高いレベルの性能を示し薄膜の形態の製造が容易である。考慮されるオキシノイド化合物の例は、前に記載した式Eを満たすものである。
【0070】
他の電子輸送材料は、米国特許4,356,429号に記載されているような様々なブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号に記載されているような様々な複素環蛍光増白剤を含む。構造式Gを満たすベンザゾールも有用な電子輸送材料である。
【0071】
他の電子輸送材料は、例えば、導電性分子及びポリマー便覧、第1〜4巻、H.S.ナルワ編、ジョン ワイリー アンド サンズ、チチェスター(1997年)(Handbook of Conductive Molecule and Polymers,Vols.1−4、H.S.Nalwa,ed.,John Wiley and Sons,Chichester(1997))に記載されているようなポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ−パラ−フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及び他の導電性ポリマー有機材料といったポリマー物質でもよい。
【0072】
当業技術分野で周知のように、上記に記載した層の中には1つより多い機能を有してよいものがあることが理解されるだろう。例えば、発光層50はOLEDデバイスの性能のための必要に応じて正孔輸送特性または電子輸送特性を有してもよい。正孔輸送層45または電子輸送層55、またはそれらの両方は、放射特性を有してもよい。こうした場合、より少ない数の層でも望ましい放射特性のため十分なことがある。
【0073】
本発明を上首尾に実施できる有機EL媒体層の非常に多くの構成が存在する。白色光を放射する有機EL媒体層の例は、例えば、第EP 1 182 244号、米国特許出願公報第2002/0025419A1号、第EP 1 182 244号、米国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、及び5,283,182号に記載されている。第EP 1 187 235 A2号に示すように、スペクトルの可視領域中のほぼ連続的なスペクトルを備えた白色光放射有機EL媒体は、
アノードの上に配置された正孔注入層40、
正孔注入層40の上に配置され、スペクトルの黄色領域の光を放射するためルブレン化合物によってドープした正孔輸送層45、
正孔輸送層45の上に配置され、青色光を放射する化合物によってドープした発光層50、及び
電子輸送層55、
を含むことによって達成してよい。
【0074】
上記で言及した有機材料は昇華のような気相法を通じて適切に蒸着されるが、膜形成を改善するため、例えば必要に応じてバインダを加えた溶剤のような流体から蒸着してもよい。材料がポリマーである場合、溶剤蒸着は有用であるが、スパッタリングまたはドナーシートからの熱転写といった他の方法を使用してもよい。昇華によって蒸着される材料は、例えば米国特許第6,237,529号に記載のようなタンタル材料から構成されることの多い昇華器「ボート」から気化してもよく、またまずドナーシートにコーティングしてから基板の近くで昇華させてもよい。材料が混合物である層は別個の気化ボートを利用してもよく、また材料を予備混合して単一のボートまたはドナーシートからコーティングしてもよい。
【0075】
また、電子注入層60はカソードと電子輸送層との間に存在してもよい。電子注入材料の例は、アルカリまたはアルカリ土類金属、上記で言及したLiFのようなハロゲン化アルカリ塩、またはアルカリもしくはアルカリ土類金属でドープした有機層を含む。
【0076】
電子輸送層を使用しない場合、トップ電極90は電子輸送層55の上または発光層50の上に形成する。また、トップ電極90は反射ミラーでもある。光放射をボトム電極30を通じて見る場合、トップ電極90の材料は好適には、本質的に不透明及び反射性になるように1.5またはそれより高い光学濃度を呈する厚さを備えた反射性金属である。OLEDデバイスの放射効率はトップ電極90の反射率が増大すると共に増大する。トップ電極90は好適にはAg、Au、Al、Mg、またはCa、またはこれらの合金を含むリストから選択する。
【0077】
光放射をトップ電極90を通じて見る場合、放射される光に対して半透明になるように十分に薄い反射性金属を含む必要がある。これは好適にはAgまたはAu、またはこれらの合金を含むリストから選択する。以下さらに説明するように、トップ電極90の厚さ範囲は、OLEDデバイス10からの所定の波長の輝度光出力を最適化するよう制限され選択される。また、状況によっては、トップ電極90中の薄い反射性金属層と組み合わせた透明な導電酸化物層を含んでもよい。横方向のコンダクタンスは薄い反射性金属層によって提供されるので、透明な導電酸化物層の導電率は高い必要はない。適切な材料は、酸化インジウム(InOx)、酸化スズ(SnOx)、酸化亜鉛(ZnOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化アンチモン(SbOx)、またはこれらの混合物を含む。
【0078】
カソード材料は気化、スパッタリング、または化学蒸着によって蒸着してよい。必要な場合、スルーマスク蒸着、例えば米国特許第5,276,380号及び欧州特許第EP 0 732 868号に記載のもののような一体型シャドーマスキング、レーザーアブレーション、及び選択的化学蒸着を含むが、これらに制限されない多くの周知の方法を通じてパターン化を達成してもよい。
【0079】
ここで図2を参照すると、本発明の別の実施形態に係るOLEDデバイスの断面図が示される。この実施形態は、TIRF25が基板20の上及びボトム電極30の下に配置される以外は、以前の実施形態と同様である。
【0080】
ここで図3を参照すると、本発明の第3の実施形態に係る白色発光OLED装置の断面図が示される。この実施形態では、個別のTIRF層は存在しない。基板20の起伏のある表面上に形成されたボトム電極85はTIRFとして機能し、有機EL要素70から放射された光を散乱し閉じ込めから解放する。
【0081】
図4は、マイクロキャビティ中の光放射の効果の概略を示す。マイクロキャビティOLEDデバイスは、先行技術で、色度と放射効率の改善を達成することが報告されている。OLEDデバイス10は下部から発光するように示されている(すなわち、下部発光デバイス)が、実施形態によっては、OLEDデバイス10は上部発光デバイスでもよいことが理解されるだろう。
【0082】
本発明によれば、有機EL要素70の厚さは、マイクロキャビティ共振波長を調整するために変化させてもよい。マイクロキャビティ共振波長を調整する追加的な方法として、透明な導電スペーサ層35を使用してもよい。透明な導電スペーサ層35は金属電極の1つと発光層50との間に配置してもよい。これは放射光に対して透明である必要があり、金属電極と発光層50との間で電荷を伝えるため導電性である必要がある。膜間コンダクタンスだけが重要なので、バルク抵抗率は約108オーム−cm未満で十分である。インジウム−スズ酸化物(ITOx)、亜鉛−スズ酸化物(ZTOx)、酸化スズ(SnOx)、酸化インジウム(InOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化テルル(TeOx)、酸化アンチモン(SbOx)、及び酸化亜鉛(ZnOx)等だが、これらに制限されない多くの金属酸化物を使用してよい。
【0083】
この実施形態では、正孔輸送層45と発光層50との境界面で光が放射されるように示される。光105は反射性のトップ電極90の方向に放射され、反射光110として反射される。光115は半透明のボトム電極30の方向に放射され部分反射光120として部分的に反射され、部分透過光125として部分的に透過される。部分透過光140はOLEDデバイス10によって異なる方向に放射される光である。放射光130はOLEDデバイスから空気中に実際に放射される光である。
【0084】
金属の半透明反射性ボトム電極30による光の吸収は実現可能な限り低いのが望ましいので、金属の半透明ボトム電極30と基板20との間に吸収低減層を追加するのが有用である。この層の目的は半透明ボトム電極30自体の中で光波によって生じる電界(及びひいては光波の吸収)を低減することである。良好な近似のため、この結果は、吸収低減層と基板20との間の境界面から後方反射した光波の電界がデバイスを通じて出る光の電界を相殺し、ひいては部分的に打ち消しあうようにすることによって達成する。そして、基本的な光学的考慮が示唆するところによれば、これは、以下の式をほぼ満足する時、(基板より高い屈折率を有する吸収低減層について)発生する。
2nAA+nTT=(mA+1/2)λ 式2
ここで、
A及びLAは、それぞれ吸収低減層の屈折率及び厚さであり、
T及びLTは、それぞれ半透明アノードの屈折率の実数部及び厚さであり、
Aは負でない整数である。
現実的である限り小さい、普通0及び通常2未満のmAを有するのが好適である。トップ電極90を通じて光を放射するOLEDデバイスの場合、吸収低減層はトップ電極90の上に配置する。
【0085】
デバイスの代替構成では、ボトム電極30がカソードでもよくトップ電極90がアノードでもよい。こうした場合、有機EL要素70はほぼ、正孔注入及び正孔輸送層がアノードに近づき、電子注入及び電子輸送層がカソードに近づくように方向付ける。
【0086】
可視スペクトル全体に及ぶため、別個の放射スペクトルを備えた2つかそれ以上の異なるマイクロキャビティを提供するのが望ましいことがある。ここで図5を参照すると、本発明に係るOLEDデバイスの平面図が示される。OLEDデバイス200は第1のカラー発光体210と第2のカラー発光体220とのストリップを備える。第1及び第2のカラー発光体210及び220は、上記で説明したような個別のOLEDデバイスでもよく、マイクロキャビティは各々特定の相補的な色を呈するように調整されている。例えば、第1のカラー発光体210は赤色光の放射を強調するマイクロキャビティを有してもよく、一方第2のカラー発光体220は上記で説明したように緑色光の放射を強調するマイクロキャビティを有してもよい。例えば、1つの発光体(例えば、赤色)に透明な導電スペーサ層35を提供してもよく、一方もう1つの発光体(例えば、緑色)にそれを提供しなくてもよい。代替的には、別の層、例えば正孔輸送層45、の厚さを変化させて同じ効果を達成してもよい。2つの発光体が十分に近く光集積要素が十分であれば、総放射光は白色として知覚される。TIRF25をさらに使用して白色OLED装置の発光出力とスペクトル範囲を改善してもよい。
【0087】
白色発光有機EL要素を達成する多くの方法があることを当業者は理解するだろう。大面積照射適用業務に特に関係するのは積層OLEDアーキテクチャを使用することである。積層OLEDデバイスは、先行技術で、米国特許第6,107,734号、米国特許第6,337,492号、及び第6,274,980号に記載されている。これは互いに垂直に積層された2つかそれ以上のOLEDユニットを備える。各OLEDユニットは固有の有機EL要素を有し、1対のOLEDユニットの間には、その1対の中で電子を1つのデバイスの電子輸送層(ETL)に供給し正孔をもう1つのデバイスの正孔輸送層(HTL)に供給する接続要素が存在する。全てのユニットを同じ白色光スペクトルを放射するよう設計してもよく、また、代替的には、各々可視スペクトルの一部を放射するよう設計し、組み合わせて白色発光を生じるようにしてもよい。例えば、非マイクロキャビティデバイスにおいて積層OLEDデバイスが組み合わせて白色光を放射するように、1つのユニットを赤色光を放射するよう設計し別のユニットを緑色光を放射するよう設計してもよい。本発明によれば、積層OLEDデバイスは、2つの反射性金属電極を有するマイクロキャビティ構造を有するよう構成する。マイクロキャビティ積層OLEDデバイスは角度依存を伴う狭帯域光を放射する。そして、このマイクロキャビティ積層OLEDデバイスは光集積要素及び、必要に応じてTIRFと組み合わされ、白色OLED装置を達成する。
【0088】
その開示を引用によって本出願の記載に援用する、ユアン−シェンタン(Yuan−Sheng Tyan)による「一連のOLEDデバイスを含むOLED装置(“OLED
Apparatus Including a Series of OLED Devices”)」という名称の2002年8月7日出願の同じ譲受人に譲受された米国特許出願第10/213,853号、ロナルドS.コック(Ronald S.Cok)他による「面照射のための直列接続OLEDデバイス(“Serially Connecting OLED Devices for Area Illumination”)」という名称の2002年8月7日出願の同じ譲受人に譲受された米国特許出願第10/214,035号、及び応用物理通信(Appl.Phys.Lett.)82、2580(2003)で開示されているようなモノリシック一体式直列接続構造も、本発明と組み合わせて有効に使用してよい。本発明によれば、モノリシックに直列接続された2つかそれ以上の個別のOLED要素を備えるOLEDデバイスを光集積器と組み合わせて白色OLED装置を達成する。デバイス中の個別のOLED要素は各々、2つの金属の反射性電極の間に配置された白色有機EL要素を有するマイクロキャビティOLEDデバイスとして構成する。マイクロキャビティOLEDデバイスに関するこれまでの全ての議論はデバイス中の個別のOLED要素にも適用可能である。
【実施例】
【0089】
OLEDデバイスの出力を向上するためマイクロキャビティを利用する際の本発明の有効性を以下の例で例示する。
【0090】
例1(従来のOLED−比較例)
従来の非マイクロキャビティOLEDの準備は以下の通りである。透明なITO導電層でコーティングした1mm厚のガラス基板を市販のガラス洗浄工具を使用して清掃及び乾燥した。ITOの厚さは約42nmであり、ITOのシート抵抗は約68Ω/スクエアである。次いで、ITOの表面を酸化性プラズマで処理し、表面をアノードとして調整した。RFプラズマ処理チャンバ内でCHF3ガスを分解することによって、1nm厚のCFx、ポリマー化フルオロカーボン、の層を、清掃したITOの表面に正孔注入層として蒸着した。そして、基板を真空蒸着チャンバ内に移動し、基板の上部に他の全ての層を蒸着した。約10-6トールの真空下で加熱したボートから昇華することによって、以下の層を以下の順序で蒸着した。
1)正孔輸送層、107nm厚、N,N’−ジ(ナフタレン−1−yl)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)を含む。
2)電子輸送層(発光層の役目も果たす)、62nm厚、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(III)(Alq)。
3)電子注入層、1nm厚、Liを含む。
4)カソード、約50nm厚、Agを含む。
これらの層を蒸着した後、カプセル化のためデバイスを蒸着チャンバからドライボックス内に移動した。完成したデバイス構造をガラス/ITO(42)/CFx(1)/NPB(107)/Alq(62)/Li(1)/Ag(50)として示す。
【0091】
この下部発光デバイスは20mA/cm2を流すのに8.2Vの駆動電圧を必要とし、輝度効率は4.35cd/Aであり、FWHM帯域幅は100nmであり、色座標はCIE−x=0.352、CIE−y=0.562である。20mA/cm2での放射スペクトルを図6に示す。放射はほぼ完全拡散であり、角度依存はほとんどない。AlqによるOLEDデバイスは白色ではなく緑色の放射を有したが、放射スペクトルは広く、450nm〜650nm以上の範囲に及んだ。これは本発明の有用性を例示するため好都合に使用された。
【0092】
例2(従来のマイクロキャビティOLEDデバイス)
従来のマイクロキャビティOLEDを以下の通り製造した。ガラス基板を、約4mトールの圧力のAr中でのDCスパッタリング処理によって、Agを含む、22.5nm厚の半透明のアノード層によってコーティングした。酸化モリブデン、MoO3、の0.5nm厚の層を、熱気化を使用して、真空チャンバ内で、Agアノード層の表面上に正孔注入層として蒸着した。約10-6トールの真空下で加熱したボートから昇華することによって、以下の層を以下の順序で蒸着した。
1)正孔輸送層、430nm厚、N,N’−ジ(ナフタレン−1−yl)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)を含む。
2)電子輸送層(発光層の役目も果たす)、70nm厚、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(III)(Alq)を含む。
3)電子注入層、1nm厚、Liを含む。
4)カソード、約75nm厚、Agを含む。
これらの層を蒸着した後、カプセル化のためデバイスを蒸着チャンバからドライボックス内に移動した。完成したデバイス構造をガラス/Ag(22.5)/MoO3(0.5)/NPB(430)/Alq(70)/Li(1)/Ag(75)として示す。
【0093】
20mA/cm2で、このデバイスは10.1ボルトの駆動電圧を必要とした。デバイスに対して直角な方向で、放射出力効率は1.7cd/Aであり、色座標はCIE−x=0.454、CIE−y=0.351であった。10mA/cm2での放射スペクトルを角度の関数として図7に示す。放射は角度依存の強い関数であり、各角度で、放射光は2つの狭いピークを含んだ。マイクロキャビティ構造はAlqの広帯域放射を狭帯域角度依存放射に変換した。この放射挙動は、従来のマイクロキャビティOLEDデバイスの放射挙動の典型である。すなわち、従来のOLEDデバイスは明らかに白色光適用業務に適していなかった。
【0094】
例3
例2の比較例のマイクロキャビティOLEDデバイスを使用して本例の広帯域放射OLED装置を構成した。1片の0.125mm厚のテフロン(登録商標)箔を、真空グリースを使用して、例2のマイクロキャビティOLEDデバイスのガラス基板の外部表面に取り付けた。異なる角度で得られた出力スペクトルを図8に示す。放射が示す角度依存はほとんどなく、スペクトル出力は例1及び図6に示すようなAlq発光体のものに類似していた。全ての角度にわたる総集積出力は同様の形状を示し、450nm〜650nmの広い波長範囲に及ぶと予想される。この例では緑色のAlq有機EL要素を使用しているため、結果として得られる出力は緑色であって白色ではなかった。しかし、発光体のスペクトル出力を再現するこのOLED装置の能力は、白色発光有機EL要素を使用していたならば白色発光OLED装置が得られたであろうことを明らかに実証した。この例では、0.125mmのテフロン(登録商標)箔は、集積要素及びTIRF両方の役目を果たした。これは装置のスペクトル出力を拡大し角度依存を低減した。
【符号の説明】
【0095】
10 OLEDデバイス
20 基板
25 総内部反射フラストレータ
30 ボトム電極
35 透明な導電性スペーサ層
40 正孔注入層
45 正孔輸送層
50 発光層
55 電子輸送層
60 電子注入層
70 有機EL要素
85 ボトム電極
90 トップ電極
95 光集積要素
100 白色マイクロキャビティOLED装置
105 光
110 反射光
115 光
120 部分反射光
125 部分透過光
130 放射光
140 部分透過光
200 OLEDデバイス
210 第1のカラー発光体
220 第2のカラー発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャビティOLEDデバイスと光集積要素とを備える白色発光OLED装置であって、前記マイクロキャビティOLEDデバイスが白色発光有機EL要素を有し、前記マイクロキャビティOLEDデバイスが角度依存狭帯域放射を有するよう構成され、前記光集積要素が前記マイクロキャビティOLEDデバイスからの異なる角度からの角度依存狭帯域放射を集積して白色発光を形成する白色発光OLED装置。
【請求項2】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスが、法線方向で600nmを越えるかまたは500nm未満のピーク放射波長を有するよう調整される、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項3】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスが、
a)第1の表面と第2の表面とを有する基板と、
b)前記基板の前記第1の表面の上に配置された金属のボトム電極と、
c)前記金属のボトム電極から間隔の開いた金属のトップ電極と、
d)前記金属のトップ電極と前記金属のボトム電極との間に配置され、前記金属の電極の一方が半透明でありもう一方がほぼ不透明及び反射性である白色発光有機EL要素とを備え、
e)前記金属の電極が白色発光を角度依存狭帯域光に変換するマイクロキャビティ構造を形成する、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項4】
前記半透明の電極層のための材料がAgまたはAu、またはこれらの合金を含む、請求項3に記載の白色発光OLED装置。
【請求項5】
前記反射性の電極層のための材料がAg、Au、Al、Mg、またはCa、またはこれらの合金を含む、請求項3に記載の白色発光OLED装置。
【請求項6】
前記有機EL要素が多数の発光層を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項7】
前記有機EL要素が積層構造を有する、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項8】
前記光集積要素が前記マイクロキャビティOLEDデバイスから間隔を開けている、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項9】
前記光集積要素が前記マイクロキャビティOLEDデバイスに取り付けられる、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項10】
前記光集積要素が光散乱構造を有する、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項11】
前記光集積要素が、マトリックス中に分散した包含物を備え、前記包含物の屈折率が前記マトリックスの屈折率と異なる、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項12】
前記光集積層要素が、1つかそれ以上の白色顔料を混入したプラスチックマトリックスを備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項13】
前記白色顔料がTiO2である、請求項12に記載の白色発光OLED装置。
【請求項14】
前記光集積要素が、異なる屈折率を有する結晶及びアモルファス領域を有するプラスチック層を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項15】
前記光集積要素が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ETFE、ポリスチレン、及びポリプロピレンから選択されるプラスチック層を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項16】
前記光集積要素が表面光散乱構造を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項17】
前記光集積要素がレンズ要素を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項18】
前記光集積要素が拡散反射要素を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項19】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスが総内部反射フラストレータ要素を含む、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項20】
前記総内部反射フラストレータ要素が光散乱要素を備える、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項21】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスが下部発光であり、前記総内部反射フラストレータ要素が前記基板の前記第2の表面の上に配置される、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項22】
前記総内部反射フラストレータ要素が前記OLEDデバイスの前記半透明の電極の近くに配置される、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項23】
前記総内部反射フラストレータ要素が、マトリックス中に分散した包含物を備え、前記包含物の屈折率が前記マトリックスの屈折率と異なる、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項24】
前記総内部反射フラストレータ要素が、1つかそれ以上の白色顔料を混入したプラスチックマトリックスを備える、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項25】
前記白色顔料がTiO2である、請求項24に記載の白色発光OLED装置。
【請求項26】
前記総内部反射フラストレータ要素が、異なる屈折率を有する結晶及びアモルファス領域を有するプラスチック層を備える、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項27】
前記総内部反射フラストレータ要素が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ETFE、ポリスチレン、及びポリプロピレンから選択されるプラスチック層を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項28】
前記総内部反射フラストレータ要素が表面光散乱構造を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項29】
前記総内部反射フラストレータ要素がレンズ要素を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項30】
前記総内部反射フラストレータ要素が拡散反射要素を備える、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項31】
前記総内部反射フラストレータ要素が前記光集積要素の役目をも果たす、請求項19に記載の白色発光OLED装置。
【請求項32】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスがモノリシック一体式直列接続構造を有する、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項33】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスが、各々異なる角度依存狭帯域放射スペクトルを放射するよう調整された2つかそれ以上の放射領域を有する、請求項1に記載の白色発光OLED装置。
【請求項34】
前記マイクロキャビティOLEDデバイスが、少なくとも1つの領域が550nmを越えるピーク放射波長を有し1つの領域が550nm未満のピーク放射波長を有する2つかそれ以上の放射領域を有する、請求項1に記載の白色発光OLED装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54583(P2011−54583A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282769(P2010−282769)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2006−534032(P2006−534032)の分割
【原出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】