説明

白色積層ポリエステルフィルム

【課題】反射特性、隠蔽性、剛性、耐ひっかき跡性に優れた白色積層ポリエステルフィルムに関し、LED光源を側面に配置させた薄型大画面用のバックライト装置、とくに20インチ以上のモニター用バックライト装置において、高い輝度を維持しつつ、かつ輝度ムラの発生を低減できる反射シート用白色積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】白色積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルで構成されたA層と、B層との少なくとも2層を有する2軸延伸ポリエステルフィルムであって、B層中に環状オレフィン共重合体および無機粒子を共に含有し、フィルム表面に垂直に切断した時のB層断面中での空洞占有率が10%以上25%以下、無機粒子の占有率が7%以上27%以下であって、A層中に20〜35wt%の無機粒子を含有し、A層の厚みが2μm〜16μm、白色積層ポリエステルフィルム全体の厚みが150μm以上350μm以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射板としての使用に好適な白色積層ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明はフィルム内部に空洞を含有し、反射特性、隠蔽性に優れ、かつ輝度ムラを低減させたポリエステルフィルムに関するもので、画像表示用のバックライト装置およびランプリフレクターの反射シート、照明用器具の反射シート、照明看板用反射シート、太陽電池用背面反射シート等に好適に使用され、特に画像表示用のバックライト装置の反射板に好適に使用することができる白色積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に用いられる平面型画像表示方式における、面光源装置の反射板および反射シート、照明看板の背面反射シート、太陽電池の背面反射シートなどの用途に、白色ポリエステルフィルムが、均一で高い輝度、寸法安定性、安価である等の特性から広く用いられている。高い輝度を発現する方法として、ポリエステルフィルム中に例えば硫酸バリウムなどの無機粒子を多数含有し、ポリエステル樹脂と粒子の界面および、粒子を核として生成する微細な空洞の空洞界面での光反射を利用する方法(特許文献1参照)、ポリエステルと非相溶な樹脂を混合することにより、非相溶な樹脂を核として生成する微細な空洞の空洞界面での光反射を利用する方法(特許文献2参照)、圧力容器中で不活性ガスをポリエステルフィルムに含浸させることで、内部に生成した空洞の界面での光反射を利用する方法(特許文献3参照)等、ポリエステルフィルム中に含有された無機粒子とポリエステル樹脂の屈折率差および微細な空洞とポリエステル樹脂の屈折率差を利用した方法が広く用いられている。
【0003】
近年、特に、液晶ディスプレイを利用した用途の拡大はめざましく、従来のノートパソコン、モニター、携帯端末に加えて、液晶テレビ用等にも広く採用されてきており、画面の高輝度化、高精細化、大画面化が求められてきている。画面の高輝度化に応じて、反射シートはより高輝度、高隠蔽性が要求されてきており、ポリエステルフィルム中の無機粒子を増量したり、空洞を増やす等、反射界面を増やすことが必要とされていた。
一方、液晶ディスプレイの光源として、消費電力量が小さく高出力化が可能なLED光源を使用する方式が用いられ、従来のバックライト装置の背面に光源を配置させる方式に加え、光源を側面に配置させた薄型化に有利な方式が採用されている。これに応じて、LEDバックライトの筐体には、筐体の強度向上や電気配線と基盤格納のために高さ10mm以下の凹凸状の加工や、LED光源に近い筐体端部に放熱用の溝加工が設けられていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−160682号公報
【特許文献2】特公平8−16175号公報
【特許文献3】特開2001−166295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大画面化に対応するにあたり、従来の空洞を増やし高輝度化を実現させた反射シートでは、空洞が多いが故に剛性が低く、加工や組み立て時に反射シートに折れしわが発生するといった問題、剛性確保のために厚膜化の必要が生じ高コスト化するという問題があった。
【0006】
さらに、LED光源を側面に配置した方式においては、反射シートは、上述のような凹凸のある筐体の上に設置され、さらに反射シートの上には導光板が重なられるため、導光板の重みにより、筐体の凹凸部に反射シートが押しつけられる。そのため、従来の反射シートでは表面に凹凸部によるひっかき跡ができ、輝度ムラを発生する懸念があった。また、反射シートが筐体の凹みに沿って撓み、輝度ムラが発生するという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題を解決し、筐体の凹凸によるひっかき跡、反射シートの撓みによる輝度ムラを低減した反射シート用白色積層ポリエステルフィルムを提供することを目的する。特に、LED光源を側面に配置させた20インチ以上のモニター用バックライト装置において、好適に用いられる反射シート用白色積層ポリエステルフィルムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルで構成されたA層と、B層との少なくとも2層を有する2軸延伸ポリエステルフィルムであって、B層中に環状オレフィン共重合体および無機粒子を共に含有し、フィルム表面に垂直に切断した時のB層断面中での空洞占有率が10%以上25%以下、無機粒子の占有率が7%以上27%以下であって、A層中に20〜35重量%の無機粒子を含有し、A層の厚みが2μm〜16μm、白色積層ポリエステルフィルム全体の厚みが150μm以上350μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、B層の断面構造、A層中の無機粒子量が規定されていることにより、反射特性、隠蔽性、剛性、耐ひっかき跡性に優れた白色積層ポリエステルフィルムを得ることができる。従って、LED光源を側面に配置させた薄型大画面用のバックライト装置において、高い輝度を維持しつつ、かつ輝度ムラの発生を低減でき、特に、LED光源を側面に配置させた20インチ以上のモニター用バックライト装置において、好適な反射シートとして使用することができる。また、剛性が高く、かつ耐ひっかき跡性に優れているため、加工、組み立て時に生じる折れ、ひっかき跡を低減でき、薄型大画面用LEDバックライト装置に限らず液晶ディスプレイ全般の反射シートとしても、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、前記課題の解決、すなわちLED光源を側面に配置させた薄型大画面用のLEDバックライト装置において、高い輝度を維持しつつ、かつ輝度ムラが発生しない反射シート用白色積層ポリエステルフィルムについて鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムが、かかる課題を一挙に解決する事ができることを見出し究明したものである。
【0011】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂とは、その構成する成分として以下が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸では、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸およびそのエステル誘導体が挙げられ、また脂肪族ジカルボン酸では、アジピン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸およびそのエステル誘導体が、脂環族ジカルボン酸では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステル誘導体が挙げられ、また多官能酸では、トリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体が代表例として挙げられる。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコールやポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールのようなポリエーテルなどが代表例として挙げられる。製造されるポリエステルフィルムの機械強度、耐熱性、製造コストなどを加味すると、本発明におけるポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレートを基本構成とすることが好ましい。この場合の基本構成とは、含有されるポリエステル樹脂に対して50重量%以上がポリエチレンテレフタレートであるという意味である。
【0012】
また、本発明において、ポリエチレンテレフタレート基本構成に対して、共重合成分を導入してもよい。共重合成分を導入する方法としては、原料であるポリエステルペレットの重合時に共重合成分を添加し、あらかじめ共重合成分が重合されたペレットとして用いても良いし、また、例えば、ポリブチレンテレフタレートのように単独で重合されたペレットとポリエチレンテレフタレートペレットの混合物を押出し機に供給し、溶融時にエステル交換反応によって共重合化する方法を用いても良い。これらの共重合成分の量は、特に限定されないが、各特性面より、ジカルボン酸成分およびジオール成分とも、それぞれの成分に対して好ましくは1〜50モル%であり、より好ましくは1〜20モル%である。
【0013】
上記ポリエステル樹脂の重縮合反応に使用される触媒としては、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物およびマンガン化合物などが好ましく挙げられる。これら触媒は単独で、あるいは組み合わせで用いることができる。これらの触媒のうち、光を吸収する金属触媒凝集物を生成しにくいという点で、チタン化合物やゲルマニウム化合物が好ましく、コストの観点からはチタン化合物が好ましい。チタン化合物としては、具体的には、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシド等のチタンアルコキシド、二酸化チタン二酸化ケイ素複合酸化物等の主たる金属元素がチタンおよびケイ素からなる複合酸化物やチタン錯体等を使用することかできる。また、アコーディス社製のチタン・ケイ素複合酸化物(商品名:C−94)等の超微粒子酸化チタンを使用することもできる。
【0014】
これらのポリエステル樹脂中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加物、たとえば蛍光増白剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、有機の滑剤、無機の微粒子、充填剤、耐光剤、帯電防止剤、核剤、染料、分散剤、カップリンブ剤などが添加されていてもよい。
【0015】
本発明において、ポリエステルで構成されるB層には環状オレフィン共重合体および無機粒子を共に含有することが必要である。ポリエステル樹脂中に環状オレフィン共重合体を含有することにより、延伸時に環状オレフィン共重合体を核とした空洞が生まれ、この空洞界面により光反射が起きる。したがって高い反射率を得るためには、この空洞を増やせばよい。しかし、空洞の増加は、空洞同士の結合により反射界面を減少させることがある上に、反射シートの強度低下につながり、反射シートに局所的な力がかかった際に空洞が破壊しやすくなる。そのため、薄型大画面用のLEDバックライト筐体に反射シートが組み込まれた際に、筐体の凹凸部により反射シートにひっかき跡ができ、輝度ムラの発生させることがある。また、加工時、組み込み時に混入した異物により、ひっかき跡ができ歩留まりを低下させることがあり好ましくない。さらに、空洞の増加は、反射シートの見かけ密度を低下させ、剛性度が低下するため、耐折れしわ性を悪化させる。従って、加工、組み立て時に生じる折れ、筐体の凹凸部による反射シートの撓みが生じ、輝度ムラとなることがあるため好ましくない。一方、無機粒子は光を散乱させるため、その添加は反射率を向上させる。しかし、無機粒子の過剰な添加は、無機粒子の光吸収により反射率を低下させ、また無機粒子の凝集により反射率の向上効果を低減させたりするため好ましくない。また、製膜安定性といった観点からも好ましく無い。さらに、本発明のように環状オレフィン共重合体と併用した場合には、環状オレフィン共重合体を核とした空洞の均一な生成を阻害し、耐ひっかき跡性を悪化させるため好ましくない。
【0016】
したがって、剛性度、耐ひっかき跡性に優れ、輝度ムラを低減し、かつ高い輝度をも維持した反射シートを得るためには、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、フィルム表面に垂直に切断した時のB層断面中での空洞占有率が10%以上25%以下、無機粒子の占有率が7%以上27%以下であることが必要である。B層断面中での空洞占有率が10%未満であると、剛性度、耐ひっかき跡性に優れ、輝度ムラの発生は低減できるが、十分な輝度を得ることができず好ましくない。また、B層断面中での空洞占有率が25%を越えると、輝度は高くなるが、剛性度、耐ひっかき跡性が低下し輝度ムラが発生するため好ましくない。さらに、B層断面中での空洞占有率が10%以上25%以下であっても、B層断面中の無機粒子の占有率が7%未満であると、十分な輝度を得ることができず好ましくなく、B層断面中の無機粒子の占有率が27%を越えると、製膜安定性が悪化し、輝度が低下する上に、耐ひっかき跡性も悪化し輝度ムラが発生することがあり好ましくない。
本発明において、B層中に含有させる環状オレフィン共重合体としては、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−i−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、2−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、5−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、トリシクロ〔4,4,0,12.5〕−3−デセン、10−メチル−トリシクロ〔4,4,0,12.5〕−3−デセンなどの非晶性環状オレフィン樹脂と、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテンなどの結晶性ポリオレフィン樹脂とが共重合されたものなどが挙げられる。これらは単独重合体であっても共重合体であってもよく、2種以上を併用してもよい。特にポリエステルとの臨界表面張力差が大きく、延伸後の熱処理によって変形しにくい樹脂が好ましく、中でも、エチレンとビシクロアルケンの共重合体が特に好ましい。また、フィルムを延伸すると環状オレフィン共重合体が塑性変形し空洞の成形が阻害されることがあるため、環状オレフィン共重合体のガラス転移温度Tgは、160〜220℃であることが好ましい。
【0017】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムにおいて、環状オレフィン共重合体は、ポリエステル樹脂からなるマトリックス中に数平均粒径が0.4から3.0μmで分散していることが、適切な反射界面数、フィルム強度を得る上で好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.5μmの範囲である。ここでいう数平均粒径とは、フィルムの断面を切り出し、その断面を日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM)S-2100A形を用いて観測される粒子100個の面積を求め、真円に換算した際の直径の平均値である。
【0018】
また、B層中に混合する共重合ポリエステル樹脂の共重合成分としては、上述の共重合成分の中で特にジオール成分の主成分が脂環族グリコールである共重合ポリエステル樹脂であることが、環状オレフィン共重合体の分散状態を安定させる働きがあるため好ましい。共重合成分の含有量は、添加量は空洞を含有する層(B層)の構成成分の総量に対して、1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1重量%以上6重量%以下である。
【0019】
さらに、ポリエステルに非相溶な環状オレフィン共重合体を好ましい形状に微分散化するためには、ポリアルキレングリコールと炭素数が2〜6の脂肪族ジオール成分とテレフタル酸からなるポリエステル樹脂とのブロック共重合体樹脂を添加することが好ましい。中でも、ポリアルキレングリコールとポリブチレンテレフタレートのブロック共重合体が特に好ましい。かかる樹脂は、あらかじめ重合反応において該樹脂を共重合化したポリエステルとして使用しても、直接そのまま使用してもよい。添加量は空洞を含有する層(B層)の構成成分の総量に対して、2〜10重量%とすることが環状オレフィン共重合体の微細化する効果を上で好ましく、より好ましくは3〜9重量%である。また、過剰な添加は、製膜安定性の低下したり、コストが上昇するため好ましくない。
【0020】
本発明において、B層中に含有させる無機粒子は、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウムなどが挙げられるが、これらの中で、400〜700nmの可視光域において吸収の少ない炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタンなどが反射特性や隠蔽性、製造コスト等の観点で好ましい。本発明において、炭酸カルシウムを用いる場合、コロイド炭酸カルシウムを使用することが安定性、および適度な分散径を得るのに好ましい。また、二酸化チタンを用いる場合、アナターゼ型と比較してルチル型の方が結晶構造が密であるため屈折率が高く、そのためポリエステル樹脂との屈折率差が大きくなり、界面での高い反射作用を得ることができるため、ルチル型二酸化チタンを使用する方が好ましい。粒径としては、数平均粒径で0.1〜0.7μmのものを使用することが優れた反射性、隠蔽性を実現する上で好適である。さらに好ましくは、0.2〜0.5μmである。
【0021】
本発明において、B層中に含有させる環状オレフィン共重合体および無機粒子の含有量は、以下の式を全て満たすことが好ましい。
3≦a≦8、10≦b≦30
ここで、a:B層の構成成分の総量に対しての環状オレフィン共重合体の含有量(重量%)、b:B層の構成成分の総量に対しての無機粒子の含有量(重量%)である。環状オレフィン共重合体の含有量を増やすことで空洞数が増えるため、空洞占有率は増加する。また、無機粒子の含有量が増えるとB層中の無機粒子占有率が増加するが、無機粒子は、環状オレフィン共重合体により生成した空洞同士を結合させることがある。空洞占有率は延伸条件にも左右されるためこの限りではないが、B層中に含有させる環状オレフィン共重合体および無機粒子の含有量を上記範囲とすることが、フィルム表面に垂直に切断した時のB層断面中での空洞占有率が10%以上25%以下、無機粒子の占有率が7%以上27%以下とする上で好ましい。
【0022】
本発明において、剛性度、ひっかき跡性に優れ、輝度ムラを低減した反射シートを得るためには、B層の空洞占有率、粒子占有率を上記範囲にするだけでは十分ではなく、表層に積層されたA層に無機粒子を含有させ、かつその無機粒子の含有量は、A層中の構成成分の総量に対して20〜35重量%であることが必要である。また、A層の厚みは2μm以上16μm以下であることが必要である。表層に積層したA層は、表面の光沢度調整や白色度調整、耐光性付与などといった機能性の付与や、製膜の安定化といった役割の他に、B層の空洞を潰れにくくし、ひっかき跡が発生しにくくするための保護層の役割も担っているからである。
本発明において、A層には無気粒子を含有させることが必要である。無機粒子を添加することにより、フィルム表面の硬度が向上し、さらに表面のスベリも良くなるために耐ひっかき跡性に優れたフィルムを得ることができる。また、表面のスベリの良化はハンドリング性という観点からも好ましい。
【0023】
ここで、A層に含有させる無機微粒子の種類としては、特に限定されるものではないが、耐ひっかき跡性という点からモース硬度3.0以上であることが好ましく、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、アルミナなどが挙げられる。この中でも、耐紫外線性という観点からは、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等が、紫外線吸収作用を有するために好ましい。これらの無機粒子は、光沢度調整や白色度調整、耐光性付与などといった耐ひっかき跡性以外の表面機能の付与の必要性に応じて、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明において、A層中の無機粒子の含有量は、A層中の構成成分の総量に対して20〜35重量%であることが必要であり、さらには24〜30重量%であることが好ましい。無機粒子の含有量が20重量%未満の場合は、表面の硬度が低下し、耐ひっかき跡性が低下するため好ましくない。また、無機粒子の含有量が35重量%を超える場合は、粒子の脱落による削れが発生するため好ましくない。また、フィルムの延伸性が悪化により製膜安定性が低下したり、400−700nmの可視光域に吸収がある無機粒子を使用した際は、反射層であるB層に到達する光量を減少させ、結果として輝度を低下させることがあり好ましくない。
【0025】
本発明のA層に含有させる無機粒子の数平均粒径(直径)は、0.1μm以上、5.0μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以上、3.0μm以下である。0.1μm未満であると粒子の凝集が生じ粗大化しやすく、耐ひっかき跡性が低下するため好ましくない。また、5.0μmを越える場合は、粒子が脱落しやすくなるため耐ひっかき跡性が低下したり、脱落した粒子が異物とし導光板を傷つけてしまうことがあるため好ましくない。
【0026】
本発明においては、A層の厚みは2μm以上16μm以下であることが必要であり、さらには4μm以上8μm以下であることが好ましい。本発明の反射シートは、無機粒子を含有させたA層を、空洞を含有するB層の表層に積層することにより、耐ひっかき跡性を向上させているが、A層の厚みが2μm未満であると、耐ひっかき跡性の向上効果が十分に発揮されなかったり、A層が剥離するといった問題を生じる場合があり好ましくない。また、A層に、耐光性を付与する目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等を使用した場合や、反射率向上のため硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を使用した場合は、A層の厚みは2μm未満であると、その機能が十分に発揮されないため好ましくない。一方、A層の厚みが16μmを超える場合は、A層における光エネルギーのロスが無視できなく、反射層であるB層に光が十分に届かなくなる。またB層に届いた光も空洞界面で多重反射したのち効率的にフィルム外部に出射出来ないため、光路長が長くなり、ロスとなる。そのため、高い輝度を得ることができず好ましくない。また、A層の厚みが16μmを超える場合、フィルムの製造工程から回収された廃チップの再利用が困難という観点からも好ましくない。
【0027】
本発明において、白色積層ポリエステルフィルムの全厚みは150μm以上350μm以下であり、好ましくは180μm以上250μm以下である。白色積層ポリエステルフィルムの全厚みが150μm未満であると反射率が不足したり、また剛性度が低下したりするため好ましくない。また、上限は特に制限する必要はないが、350μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めず、コストも高くなり好ましくない。
【0028】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、A層/B層の2層構成であってもよく、A層/B層/A層の3層構成、あるいは4層以上の構成であってもよいが、製膜上の容易さを考慮すると3層構成が好ましい。
【0029】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムにおいて、剛性度が1.0mN・m以上、10mN・m未満であることが好ましく、さらに好ましくは1.1mN・m以上、10mN・m未満である。剛性度が1.0mN・m以上とすることは、加工、組み立て時に生じる折れ、筐体の凹凸部による反射シートの撓みによる輝度ムラを抑制するため好ましい。また、フィルムの搬送、巻き取り性といった観点からは、フィルムには柔軟性があることが好ましく、剛性度が10mN・m未満であることが好ましい。
【0030】
さらに、本発明において、白色積層ポリエステルフィルムの全体の見かけ密度は0.8〜1.1g/cmが好ましく、さらに好ましくは0.85〜1.1g/cmである。見かけ密度が0.8g/cm以上とすることで、剛性が高くなり、加工、組み立て時に生じる折れ、筐体の凹凸部による反射シートの撓みによる輝度ムラを抑制できる。また、見かけ密度を1.1g/cm以下とすることは、B層の空洞占有率を上記範囲にする上で好適である。
【0031】
また本発明の白色積層ポリエステルフィルムにおいて、全光線透過率が5%未満であることが隠蔽性を保つために好ましい。全光線透過率を5%未満とするためにはフィルム全体の厚みを上げたり、適切な空洞比率を高めたり、フィルム中の環状オレフィン共重合体および無機粒子の数平均粒径を細かくしたりすることで達成することができる。なお全光線透過率はより好ましくは3%以下である。
【0032】
また本発明の白色積層ポリエステルフィルムの少なくとも片側表面の波長560nmの相対反射率が98.0%以上であることが、バックライトに組み込んだ際に高い輝度を得るのに好ましい。相対反射率を98.0%以上とするためには、本発明のB層の構成とした上で、フィルム全体の厚みを上げたり、環状オレフィン共重合体および無機粒子の数平均粒径を細かくしたりすることで達成することができる。なお相対反射率は99%以上がより好ましく、最も好ましくは100%以上である。
【0033】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムの少なくとも片側表面の白色度は、80%以上であることが好ましい。白色度とは、分光式色差計SE―2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722(2000年)に準じた光学条件にて色の三刺激値であるX値、Y値、Z値を測定し、下記式より求めたものである。
白色度(%)=4×0.847×Z値―3×Y値
次に、本発明の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、この例に限定されるものではない。
【0034】
押出機(M)と押出機(S)を有する複合製膜装置において、まず、A層を形成するため、融点230〜280℃のポリエステルペレットおよび無機粒子のマスターペレットを、無機粒子がA層の構成成分の総量に対して10〜30重量%となるよう混合し、十分に真空乾燥する。この乾燥原料には、必要に応じて紫外線吸収剤などの添加剤を加えてもよい。次に、この乾燥原料を、240〜300℃の温度に加熱された押出機(S)に供給し、溶融押出後10〜50μmカットのフィルターにて濾過した後に、Tダイ複合口金内に導入する。なお、この原料には、必要に応じて共重合ポリエステル樹脂を1〜10重量%添加してもよい。
【0035】
一方、B層を形成するため、真空乾燥したポリエステルペレットと、真空乾燥した環状オレフィン共重合体のマスターペレット、更に無機粒子のマスターペレットとを、B層に対して環状オレフィン共重合体を3〜10重量%、無機粒子を10〜30重量%となるように混合する。それぞれの樹脂を均一な比率で溶融押出しフィルム性能の均一化を図ること、押し出し時の吐出変動防止やフィルターへの圧力変動防止、さらにはフィルム中の環状オレフィン共重合体の粒径分布をより小さくできることからポリエステル樹脂と環状オレフィン共重合体を押出機等を用いて予め溶融混練した原料を用いることが好ましい。混合された樹脂を260〜300℃の温度に加熱された押出機(M)に供給し、ポリエステルA層の場合と同様に溶融し、濾過してTダイ複合口金内に導入する。なお、この原料には、必要に応じて共重合ポリエステル樹脂を1〜10重量%添加してもよく、ポリアルキレングリコールとポリブチレンテレフタレートのブロック共重合体を2〜10重量%添加してもよい。さらに、一度本発明の白色フィルムを生産する際に生じたロス分を回収原料としてリサイクルして使用してもよい。
【0036】
Tダイ複合口金内では押出機(M)のポリマーが中央部に押出機(S)のポリマーが両表面側にA/B/Aとなるように積層してシート状に共押出成形し、溶融積層シートを得る。
【0037】
この溶融積層シートを表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを作製する。該未延伸積層フィルムを70〜120℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に3〜4倍延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。
【0038】
続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3〜4倍に延伸する。
【0039】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜15倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると、得られる2軸延伸積層フィルムの強度が不十分となり、逆に面積倍率が15倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。また、面積倍率を高くするにつれ、B層の空洞占有率は増加し、また空洞同士が結合しやすくなるため、空洞占有率の観点からも、面積倍率は上記範囲とすることが好ましい。
【0040】
得られた2軸延伸積層フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて[Tg−10](℃)以上[Tg+10](℃)以下の温度で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却し、その後必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、巻き取ることにより、本発明の白色ポリエステルフィルムを得ることができる。ここで、Tgとは、環状オレフィン共重合体のガラス転移温度である。上記熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0041】
また、2軸延伸は逐次延伸あるいは同時2軸延伸のいずれでもよいが、同時2軸延伸法を用いた場合は、製造工程のフィルム破れを防止できたり、加熱ロールに粘着することによって生ずる転写欠点が発生しにくい。また2軸延伸後に長手方向、幅方向いずれかの方向に再延伸してもよい。
【0042】
このようにして得られる本発明の白色ポリエステルフィルムは、液晶バックライトの輝度を維持しつつ、輝度ムラが低減されているので、液晶画面用のエッジライトおよび直下型ライトの面光源の反射シート、およびリフレクターとして好適に使用することができる。特に、LED光源を側面に配置させた画面の対角寸法が20インチ以上のモニター用バックライト装置において、好適に使用することができる。
【0043】
〔物性の測定ならびに効果の評価方法〕
本発明の物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0044】
(1)フィルム厚み・層厚み
フィルムの厚みは、JIS C2151−2006に準じて測定した。
フィルムをミクロトームを用いて厚み方向に潰すことなく切断し、切片サンプルを得た。
該切片サンプルの断面を日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE-SEM)S-2100A形を用いて、3000倍の倍率で撮像し、撮像から積層厚みを採寸し各層厚みと厚み比を算出した。
【0045】
(2)B層の空洞占有率および無機粒子占有率
上記(1)のように走査型電子顕微鏡で撮影した断面写真から、空洞部分または無機粒子部分のみOHP用透明フィルム上に、油性ペンでトレースしたのち、イメージアナライザーを使用して、油性ペンで塗りつぶされた空洞の占有面積(A)、または無機粒子の占有面積(B)を算出した。得られた占有面積(A)(B)、およびB層全体の面積を用い、下記の式で計算される値を空洞占有率、および無機粒子占有率とする。
【0046】
B層中の空洞占有率=(A)/B層全体の面積×100 (%)
B層中の無機粒子の占有率=(B)/B層全体の面積×100 (%)。
【0047】
(3)見かけ密度
フィルムを100×100mm角に切取り、ダイアルゲージ(三豊製作所製No.2109−10)に、直径10mmの測定子(No.7002)を取り付けたものにて10点の厚みを測定し、厚みの平均値d(μm)を計算する。また、このフィルムを直示天秤にて秤量し、重さw(g)を10−4gの単位まで読み取る。下記の式で計算される値を見かけ密度とする。
見かけ密度=w/d×100 (g/cm)。
【0048】
(4)剛性度
剛性度は、JIS P−8125−2000による曲げ角度15°におけるものであり、テーパー式剛性度試験器TELEDYNE MODEL150−D(NORTH Tonowanda、New York USA製)を使用した。
【0049】
(5)相対反射率
分光光度計((株)島津製作所UV2450)に積分球付属装置((株)島津製作所製ISR2200)を取り付け、硫酸バリウムを標準板とし、標準板を100%としたときの550nmの波長における相対反射率を測定した。
◎:100%以上
○:99%以上100%未満
△:98%以上99%未満
×:98%未満
上記の◎および○を合格とした。
【0050】
(6)相対輝度(直下型方式輝度)
図1に示したように181BLM07(NEC(株)製)のバックライト内に張り合わせてあるフィルムを所定のフィルムサンプルに変更し、点灯させた。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し画像解析装置アイシステム製アイスケールで画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度に変換した。
輝度評価として、東レ株式会社製#250E6SLを基準サンプル(100%)とし、
下記の通りの評価結果とした。
◎:102%以上
○:101%以上102%未満
△:100%以上101%未満
×:100%未満。
【0051】
上記の◎および○を合格とした。
【0052】
(7)輝度ムラ
LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社製21.5型液晶ディスプレイE2240Vのバックライト内に張り合わせてある反射フィルムを所定のフィルムサンプルに変更し、点灯させた。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、500lxの照明環境下または暗所環境下において目視で輝度ムラとして認識できるものを観察し、下記の通りの評価結果とした。なお、ここでいう輝度ムラとは、反射シートの撓み、およびひっかき跡によるものである。
◎:優良 (500lxの照明環境下、暗所環境下ともに、輝度ムラが見えない。)
○:良好 (500lxの照明環境下においては、輝度ムラが見えるが、暗所環境下においては、輝度ムラが見えない。)
△:劣る (500lxの照明環境下、暗所環境下ともに、輝度ムラが見える。)
×:非常に劣る (500lxの照明環境下、暗所環境下ともに、非常に強い輝度ムラが見える。)
上記の◎および○を合格とした。
【0053】
(8)耐ひっかき跡性
4Bの硬度の鉛筆(三菱uni)を芯が円柱状になるように木部だけ削り、芯部を5〜6mm露出させた。新東科学(株)製HEIDONを用いて、芯部のみが露出した鉛筆を45度の角度でフィルム表面に当て、速度30mm/min、荷重100gで10mmの距離を引っ掻いた。測定は3回行い、鉛筆によるひっかき跡の深さをキャノン販売株式会社製のZygo New View200(3次元表面構造解析顕微鏡)を使用して測定し、下記基準で評価した。
ひっかき跡の深さについて、3回の測定の平均値を求め、評価した。
◎:優良 鉛筆によるひっかき跡はない
○:良好 深さ1μm未満のひっかき跡ができる
△:やや劣る 深さ1μm以上3μm未満のひっかき跡ができる
×:劣る 深さ3μm以上のひっかき跡ができる
上記の◎および○を合格とした。
【0054】
(9)製膜安定性
安定に製膜できるか、下記基準で評価した。
○:24時間以上安定に製膜できる。
△:12時間以上24時間未満安定に製膜できる。
×:12時間以内に破断が発生し、安定な製膜ができない。
【実施例】
【0055】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0056】
<実施例1>
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。
【0057】
このポリエチレンテレフタレート(PET)72質量部に、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、東レデュポン社製「ハイトレル」(登録商標))を4質量部、エチレングリコールに対し1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を4質量部、環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレンーノルボルネン共重合体(COC)5質量部、無機粒子として数平均粒径0.25μmの二酸化チタン15質量部を調整混合し、160℃で2時間乾燥させた後、270〜300℃に加熱された押出機Bに供給(B層)した。
【0058】
一方、ポリエチレンテレフタレートのチップと、数平均粒径0.25μmのルチル型酸化チタンポリエチレンテレフタレートマスターと、数平均粒径3.5μmの二酸化珪素粒子ポリエチレンテレフタレートマスターと、数平均粒径1.4μmの硫酸バリウム粒子ポリエチレンテレフタレートマスターと、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を15mol%共重合したもの(PET/I)とを、ポリエチレンテレフタレートが56質量部、酸化チタンが4質量部、二酸化珪素が1質量部、硫酸バリウムが20質量部、PET/Iが19質量部となるように配合し、160℃で2時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Aに供給し(A層)、これらポリマーをA層/B層/A層となるように積層装置を通して積層し、Tダイよりシート状に成形した。さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.5倍縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で190℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却し二軸延伸された白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは優良であった。
【0059】
<実施例2>
A層/B層となるように積層装置を通して積層した以外は実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは優良であった。なお、反射率、輝度、耐ひっかき跡性の測定はA層側から測定し、輝度ムラの測定ではA層が筐体側となるようにフィルムを設置した。
【0060】
<実施例3〜14>
A、B層の原料組成、A層の厚み、フィルム全厚みを表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、いずれの実施例も相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは良好であった。
ただし、実施例4はA層の無機粒子の含有量が好ましい範囲よりも少なかったので、耐ひっかき跡性にやや劣り、輝度ムラにやや劣ったものの実用上使用できる範囲内であった。
【0061】
実施例6はフィルム全体の厚みが好ましい範囲よりも薄く、剛性度がやや低く、反射シートの撓みによる輝度ムラが若干発生したものの、実用上使用できる範囲内であった。
【0062】
実施例8はB層の空洞占有率がやや高く、耐ひっかき跡性にやや劣り、輝度ムラにやや劣ったものの実用上使用できる範囲内であった。
【0063】
実施例9は空洞占有率がやや低く、相対輝度がやや低かったものの実用上使用できる範囲内であった。
【0064】
実施例10は空洞占有率がやや低く、相対輝度がやや低かったものの実用上使用できる範囲内であった。また、フィルム全体の厚みが好ましい範囲よりも薄く、剛性度がやや低く、反射シートの撓みによる輝度ムラが若干発生したものの、実用上使用できる範囲内であった。
【0065】
実施例11はB層中の無機粒子占有率が大きく、問題のない範囲内であるものの製膜性にもやや劣った。
【0066】
実施例12はA層の厚みが薄く、耐ひっかき跡性にやや劣り輝度ムラにやや劣ったものの実用上使用できる範囲内であった。また、問題のない範囲内であるものの製膜性にもやや劣った。
【0067】
実施例14はA層の厚みが厚く、相対輝度にやや劣るものの実用上使用できる範囲内であった。
【0068】
<実施例15>
B層の原料組成を表1に記載したように変更し、縦延伸倍率を3.3倍、横延伸倍率を3.5倍とした以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、優良な相対輝度を得た。ただし、B層の空洞占有率がやや高く、耐ひっかき跡性にやや劣り輝度ムラにやや劣ったものの実用上使用できる範囲内であった。
【0069】
<実施例16>
縦延伸倍率を3.7倍、横延伸倍率を3.7倍とした以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは優良であった。ただし、問題のない範囲内であるものの製膜性にもやや劣った。
【0070】
<実施例17>
B層の環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度180℃であるエチレンーノルボルネン共重合体(COC)を用い、A層の原料組成を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは優良であった。
【0071】
<実施例18>
B層の環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度180℃であるエチレンーノルボルネン共重合体(COC)を、無機粒子として数平均粒径0.5μmの硫酸バリウムを用いて、A層、B層の原料組成を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、いずれの実施例も相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは優良であった。
【0072】
<実施例19>
B層の環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度160℃であるエチレンーノルボルネン共重合体(COC)を、無機粒子として数平均粒径0.5μmの硫酸バリウムを用いて、A層、B層の原料組成を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表1の通りであり、いずれの実施例も相対輝度、耐ひっかき跡性、輝度ムラは優良であった。
【0073】
<比較例1>
B層を積層せず、A層のみ単層構成にした以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な相対輝度、剛性度が得られたものの、B層を積層していないため耐ひっかき跡性が不十分となり、輝度ムラが不十分であった。
【0074】
<比較例2>
A層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な相対輝度、剛性度が得られたものの、A層の無機粒子量が多くひっかき跡性に劣り、輝度ムラに劣るものであった。また、問題のない範囲内であるものの製膜性にもやや劣った。
【0075】
<比較例3>
A層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な相対輝度、剛性度が得られたものの、A層の無機粒子量が少なく、耐ひっかき跡性に劣り、輝度ムラに劣るものであった。
【0076】
<比較例4>
B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、比較例3と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度が得られたものの、B層の空洞占有率が大きいため、耐ひっかき跡性が比較例3よりさらに悪化し、輝度ムラが不十分であった。
【0077】
<比較例5>
B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例12と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。空洞含有率が大きいため、耐ひっかき跡性、剛性度に劣り、輝度ムラに劣るものであった。
【0078】
<比較例6>
A層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、比較例5と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。A層の無機粒子が少ないため、耐ひっかき跡性が比較例3よりさらに悪化し不十分なものであり、輝度ムラが不十分であった。
【0079】
<比較例7>
A、B層の原料組成、A層の厚み、フィルム全厚みを表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。なお、空洞を形成するための核剤としては、環状オレフィン共重合体に変え、ポリメチルペンテン(三井化学(株)製“TPX”)を用いた。光反射用基材としての物性は表2の通りである。剛性度にやや劣るものの実用上使用できる範囲内であったが、A層の無機粒子が少なく、またB層の空洞占有率も大きいため、耐ひっかき跡性が劣っており、輝度ムラに劣った。また、B層に無機粒子を含有していないため、相対輝度に劣るものであった。
【0080】
<比較例8>
A、B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、比較例7と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。比較例7に比べ、さらにA層の無機粒子が少なく、また空洞占有率も大きいため、剛性度、耐ひっかき跡性、剛性度が不十分であり、輝度ムラが不十分であった。
【0081】
<比較例9>
A層の原料組成、A層の厚み、フィルム全厚みを表2に記載したように変更した以外は、比較例8と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。比較例8に比べて、フィルム全体の厚みが厚く、剛性度は良好であった。また、A層の無機粒子が好ましい範囲内であるため、比較例8に比べると耐ひっかき跡性はやや良化したものの、空洞占有率が大きいため、まだ劣るものであり、輝度ムラに劣るものであった。
【0082】
<比較例10>
B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度、相対輝度が得られたものの、空洞占有率が大きく、耐ひっかき跡性に劣り、輝度ムラに劣るものであった。
【0083】
<比較例11>
A層、B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度、耐ひっかき跡性が得られ、輝度ムラが良好であったものの、環状オレフィン共重合体を含有せず、輝度が不十分であった。
【0084】
<比較例12>
B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度、耐ひっかき跡性が得られ、輝度ムラが良好であったものの、B層中の無機粒子占有率が低く、輝度に劣った。
【0085】
<比較例13>
B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度、耐ひっかき跡性が得られ、輝度ムラが良好であったものの、製膜中にフィルムが破れ、製膜安定性が不十分であった。
【0086】
<比較例14>
A層の厚み、B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度、相対輝度が得られたものの、A層の厚みが薄く、耐ひっかき跡性に劣り、輝度ムラに劣るものであった。また、問題のない範囲内であるものの製膜性にやや劣るものであった。
【0087】
<比較例15>
A層の厚み、A層、B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な剛性度、耐ひっかき跡性が得られたものの、A層が厚く、相対輝度に劣るものであった。
【0088】
<比較例16>
フィルム全体の厚み、B層の原料組成を表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色積層ポリエステルフィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。良好な耐ひっかき跡性が得られたものの、フィルム全体の厚みが薄く、剛性が不十分であり、輝度ムラが不十分なものであった。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
ただし、
PET:ポリエチレンテレフタレート、
PET/I:ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を15mol%共重合したもの、
PET/CHDM:ポリエチレン−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(エチレングリコールに対し1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合されたポリエチレンテレフタレート共重合体)、
PBT/PTMG:ポリエステルエーテルエラストマブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート(商品名:東レデュポン社製ハイトレル)
COC:環状オレフィン共重合体(エチレンとノルボルネンの共重合樹脂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルで構成されたA層と、空洞を含有するB層との少なくとも2層を有し、下記の(1)〜(5)のすべての要件を満たすフィルムであって、二軸延伸された白色積層ポリエステルフィルム。
(1)B層中に、環状オレフィン共重合体および無機粒子を共に含有すること
(2)フィルム表面に垂直に切断した時のB層断面中における空洞占有率が10%以上25%以下、無機粒子の占有率が7%以上27%以下であること
(3)A層の厚みが2μm〜16μmであること
(4)A層中の無機粒子の含有量が20〜35%であること
(5)白色積層ポリエステルフィルム全体の厚みが150μm以上350μm以下であること
【請求項2】
前記B層中の環状オレフィン共重合体および無機粒子の含有量が、以下の式を満たす請求項1に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
3<a≦8、10≦b≦30
ここで、a:環状オレフィン共重合体の含有量(重量%)、b:無機粒子の含有量(重量%)
【請求項3】
見かけ密度が0.8g/cm以上、1.1g/cm以下である請求項1又は2に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
剛性度が1.0mN/m以上、10mN/m未満である請求項1〜3いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
少なくとも片側表面の波長560nmの相対反射率が98.0%以上である請求項1〜4いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1〜6いずれかの白色積層ポリエステルフィルムを用いた光反射シート。

【公開番号】特開2012−179816(P2012−179816A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44756(P2011−44756)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】