説明

白色系半導体発光デバイスおよびこれを用いた半導体発光装置

【課題】広い波長領域において発光波長のピークを有する比較的安価なGaN系の青色半導体発光素子を用いても、色合いが安定した半導体発光装置を安価に提供すること。
【解決手段】本発明による白色系半導体発光デバイス100は、従来の構成に加え、青色蛍光体20を具備したことで、従来の構成では有効利用できていなかった青色半導体発光素子13からの発光のうち、特に450nm以下の波長の光を、添加した青色蛍光体20が吸収し、450nm以上の青色発光に一旦変換させ、さらにこの発光の一部を黄色蛍光体11が黄色発光に変換させる構成とした結果、黄色蛍光体11を効率よく発光させることが可能となり、従来白色半導体発光素子の部材として適していなかった450nm以下に発光ピークをもつ青色半導体発光素子についても選択することができるようになり、白色系半導体発光デバイスの価格を引き下げることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色系発光を放つ半導体発光デバイス(以下白色系半導体発光デバイス)の内、特に青色発光する半導体発光素子と複数の蛍光体とを組み合わせて白色系の光を放つ白色系半導体発光デバイスと、この白色系半導体発光デバイスと、スイッチとを用いて構成した半導体発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の白色系半導体発光デバイスでは、青色発光する半導体発光素子の発光面上に、青色光を吸収して黄色に発光する蛍光体を、樹脂中に分散して配置し、前記半導体発光素子からの青色発光と、前記青色発光を吸収した前記蛍光体からの黄色発光とを、混色して白色発光としていた。特に前述の青色発光を吸収して黄色に発光する蛍光体としては、セリウムを付活したイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)蛍光体がその代表的蛍光体として知られている。
【0003】
図8に従来の白色系半導体発光デバイスの断面模式図を示す。図8に示すように、従来の白色系半導体発光デバイスは、青色発光する半導体発光素子13と、青色発光を吸収して黄色発光する黄色蛍光体11と、黄色蛍光体11を分散配置するための樹脂12とで構成されている。
【0004】
また、従来の別の白色系半導体発光デバイスでは、前述の青色半導体発光素子と黄色蛍光体との組み合わせ以外にも、紫外・近紫外半導体発光素子と複数の蛍光体との組み合わせによる白色系半導体発光デバイスも知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、色あいの向上および発光色の安定性の向上を目的に、紫外光を発光する半導体発光素子と、紫外光を吸収して青色を発光する青色蛍光体および、前記青色蛍光体からの青色発光を吸収して黄色発光をする黄色蛍光体とを順次層状に配置し、白色系半導体発光デバイスを構成した例が示されている。
また、特許文献2においては、紫外光を発光する半導体発光素子と、青色発光蛍光体と黄色発光蛍光体とを混合分散させた蛍光体層とを具備した白色系半導体発光デバイスの例が示されている。
【0006】
さらに、特許文献3においては、特許文献1および特許文献2と同様に紫外光を発光する半導体発光素子と、青色蛍光体と、黄色蛍光体とを具備した構成であって、特に青色蛍光体としてケイ酸塩蛍光体を用いた例が示されている。
【0007】
なお、ここに示した何れの特許文献において、紫外・近紫外の発光とは、350nm〜410nmの範囲に発光波長のピークを有する発光としている。また何れの特許文献においても、この紫外・近紫外の発光によって、具備している蛍光体を励起して、各蛍光体特有の波長の発光を得るか、もしくは、この紫外・近紫外の発光により励起された蛍光体からの発光により、さらに別の蛍光体を発光させる構成となっている。前記と特許文献1から3の何れの従来の構成においても、350nm〜410nmの範囲に発光波長のピークを有する半導体発光素子を用い、この半導体発光素子からの発光によって、青色蛍光体および黄色蛍光体を励起し、発光させていた。
【0008】
より詳細には、特許文献1においては、従来の410nm以上に発光波長のピークを有する従来の青色半導体素子を用いたのでは、その青色発光のピーク波長の変動幅が大きく、結果として白色系半導体発光デバイスの白色発光の色度が不安定になるとの課題を解決するために、半導体発光素子の発光バラツキに比較して、発光バラツキの少ない蛍光体を用いる構成としている。すなわち、半導体発光素子から放たれる紫外光を一旦青色蛍光体で吸収させ、青色を発光させ、この青色発光の一部をさらに別の蛍光体に吸収させ黄色発光とし、混色する構成を採っていた。
【0009】
また、特許文献2においては、特許文献1と同様に、半導体発光素子からの紫外・近紫外の発光により、青色蛍光体と黄色蛍光体とを励起させ、発光させ、混色することで白色としていた。
【0010】
また、特許文献3においても前記と同様に紫外・近紫外光を発する半導体発光素子を用いた白色系半導体発光デバイスであって、その白色系光の光束が低かった課題に対して、前記半導体発光素子と組み合わせる、紫外・近紫外光によって効率よく発光する蛍光体を提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000-183408号公報
【特許文献2】特開2003-51622号公報
【特許文献3】特開2003-110150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の青色半導体発光素子と黄色蛍光体とで構成する白色系半導体発光デバイスにおいては、用いている青色半導体発光素子の発光ピークの波長のずれに起因し、白色の色合いが安定しないとの課題あった。
【0013】
この色合いが不安定な課題を抑制するため、従来は、用いる青色半導体発光素子の発光ピークの波長を厳密に選別していた。その結果、青色半導体発光素子の価格が高くなり、最終的な白色系半導体発光デバイスの価格を引き上げるとの課題があった。
【0014】
また、半導体発光素子として、紫外・近紫外、すなわち350nm〜410nm程度の範囲に発光波長のピークを有する半導体発光素子を用いる場合においても、従来の450nmを中心とする発光波長のピークを有する青色半導体発光素子に比較して、紫外もしくは近紫外の光を発光する半導体発光素子は、市場における流通量が少なく高価であり、結果的にそれを用いる白色系半導体発光デバイスの価格を引き上げるとの課題があった。
【0015】
さらに、これら比較的高価な白色系半導体発光デバイスとスイッチとを用いて構成した半導体発光装置も、その価格が高くなってしまうとの課題があった。
【0016】
本発明者らが解決しようとする課題もまさにここにあって、本発明は従来から用いられている450nm付近に発光ピークを持つ青色半導体発光素子において、特に広い波長領域において発光波長のピークを有する比較的安価なGaN系の青色半導体発光素子を用いても、白色発光の色合いを安定せしめ、白色系半導体発光デバイスを安価に提供することを目的にした。
【0017】
さらに白色発光の色合いが安定しており、安価な白色系半導体発光デバイスを用いること、色合いが安定した半導体発光装置を安価に提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記従来の課題を解決するために、本発明による白色系半導体発光素子は、410nmより大きく460nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光を放つ半導体発光素子と、前記半導体発光素子が放つ発光を吸収し、青色発光を放つ青色蛍光体と、前記半導体発光素子が放つ発光および、前記青色蛍光体が放つ発光とを吸収し、黄色発光を放つ黄色蛍光体とを具備している白色系半導体発光デバイスである。
【0019】
また、本発明による白色系半導体発光デバイスは、410nmより大きく460nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光を放つ半導体発光素子と、前記半導体発光素子が放つ発光を吸収し、青色発光を放つ青色蛍光体と、前記半導体発光素子が放つ発光および、前記青色蛍光体が放つ発光とを吸収し、黄色発光を放つ黄色蛍光体とを具備している白色系半導体発光デバイスであって、かつ400nm以上450nm以下の波長領域のいずれかの領域において、前記青色蛍光体の内部量子効率が、前記黄色蛍光体の内部量子効率より高い白色系半導体発光デバイスである。
【0020】
また、本発明による白色系半導体発光デバイスは、410nmより大きく460nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光を放つ半導体発光素子と、前記半導体発光素子が放つ発光を吸収し、青色発光を放つ青色蛍光体と、前記半導体発光素子が放つ発光および、前記青色蛍光体が放つ発光とを吸収し、黄色発光を放つ黄色蛍光体とを具備している白色系半導体発光デバイスであって、かつ400nm以上450nm以下の波長領域のいずれかの領域において、前記青色蛍光体の外部量子効率が、前記黄色蛍光体の外部量子効率より高い白色系半導体発光デバイスである。
【0021】
本発明による白色系半導体発光デバイスは、具備した半導体発光素子から発せられた青色発光の一部を具備した青色蛍光体による吸収させ、より発光波長の長い発光とし、さらにこの発光の一部を具備した黄色蛍光体に吸収させ、黄色発光とした。すなわち、半導体発光素子から発せられる青色発光と、具備した青色蛍光体から発せられる青色発光と、さらに具備した黄色蛍光体から発せられる黄色発光との混色により白色を発光する白色系半導体発光デバイスとした。
【0022】
この構成により、具備した450nm付近に発光波長のピークを有する半導体発光素子からの青色発光の発光ピークが、設計時に想定した波長より、より短波長側に変化してしまった場合においても、構成される白色系半導体発光デバイスの色あいは変化しない。そのため、用いる青色半導体発光素子の発光ピーク波長の選択幅が広く、結果として安価な半導体発光素子を採用でき、結果として最終製品の白色系半導体発光デバイスもしくはそれを用いたい半導体発光装置を安価にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明者らは、白色系半導体発光デバイスの色合いが安定しない原因を詳細に検討した結果、次の結論に至った。
【0024】
すなわち、白色系半導体発光デバイスの色合いが安定しない原因は、それを構成する一部である青色半導体発光素子の発光の発光ピークの波長が、設計時に想定された波長より、短波長側に変化してしまうことが主原因であるとの結論に至った。さらに、この原因を抑制するために発光ピークの波長が一定なるように、青色半導体発光素子を選別して使用する必要が生じ、結果として、最終製品である白色系半導体発光デバイスの価格を引き上げているとの結論に至った。
【0025】
一方、本発明による白色系半導体発光デバイスは、前述従来の構成に加え、青色蛍光体を具備したことを特徴とする。本構成によれば、従来の構成では有効利用できていなかった青色半導体発光素子からの発光、特に450nm以下の波長の光を、添加した青色蛍光体が吸収し、450nm以上に波長のピークをもつ青色発光に一旦変換させ、この青色蛍光体からの発光の一部を黄色蛍光体が黄色発光に変換させる構成とした。この構成により、従来、黄色蛍光体が有効に利用でいなかった青色半導体発光素子からの発光をも、黄色発光に効率よく変化することが可能となる。またこの構成により、従来白色系半導体発光デバイスの部材として適していなかった450nm以下に発光ピークをもつ青色半導体発光素子についても使用できるようになる。結果として白色系半導体発光デバイスの価格を引き下げることが可能となる。さらにこれら安価な白色系半導体発光デバイスを用いることにより、半導体発光装置の価格をも低く抑えることが可能となる。
【0026】
なお、一般に白色系半導体発光デバイスは、GaN系青色半導体発光素子と、YAG黄色蛍光体によって構成されている。これら内、青色半導体発光素子として用いられているGaN系青色半導体素子の発光ピークの中心は、450nm程度であるが、素子の製造上のバラツキにより、410nm〜460nm程度の範囲で変化してしまうことが知られている。特に、GaN系青色半導体発光素子では、450nmより短波長側にシフトし易いことが一般的である。そのため、製造したGaN系青色半導体発光素子から、発光波長によって、選別することが一般的である。このことがGaN系青色半導体発光素子の製造歩留まりを低下させ、結果的に素子の価格を引き上げる結果となっている。
【0027】
また、一方YAG黄色蛍光体は、主に、400nm以上の波長をもつ光により励起されるが、より長波長の光ほど、励起され易い、すなわち波長変換効率が良いことが知られている。より具体的には、450nm以上の波長をもつ光による励起発光、波長変換効率が最も効率がよいことが知られている。
【0028】
従来の構成による白色系半導体発光デバイスでは、青色半導体発光素子からの450nm程度を中心に発光ピークを有する青色半導体発光素子を選択し、その上部に樹脂に分散させた黄色蛍光体を配置する構成としている。青色半導体発光素子からは、450nmの波長を中心とする青色発光が放出される。その青色発光の一部をYAG黄色蛍光体が吸収し、550nm程度の黄色発光に変換して放出する。これら青色半導体発光素子からの青色発光と黄色蛍光体からの黄色発光を混色することで白色発光を得ている。
【0029】
ところで、前述のように半導体発光素子からの青色発光の発光ピークが、設計時の期待より短波長側、すなわち450nmより小さくなって場合、その青色発光の一部を吸収して発光する黄色蛍光体の波長変換効率が低くなってしまう。結果として、黄色発光が少なくなり、混色した白色発光の色合いは相対的に青色が強い色合いとなる。これらのことが白色発光の色合いの不安定にさせている。
【0030】
そこで青色半導体発光素子の発光ピークを厳密に管理すること必要となる。より具体的には、製造した青色半導体発光素子の中から、450nmを中心、例えば448nm〜452nmの範囲に発光ピークを有する青色半導体発光素子のみを選別し、用いることで、前述の色合いの不安定さを抑制していた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1における白色系半導体発光デバイスの断面模式図
【図2】本発明による半導体発光装置の一例を示す図
【図3】青色半導体発光素子の発光スペクトルを示す図
【図4】本発明による実施例で用いた青色蛍光体と黄色蛍光体の内部量子効率を示す図
【図5】本発明による実施例で用いた青色蛍光体と黄色蛍光体の外部量子効率を示す図
【図6】本発明による白色系半導体発光デバイスの製造方法を示す断面模式図、(a)シリコーン樹脂蛍光体混合物18を金型19に塗布、充填し、脱泡する工程を示す図、(b)基板と前記基板上に配置され、電極に配線された青色半導体発光素子を形成する工程を示す図、(c)基板上の青色半導体発光素子を、シリコーン樹脂蛍光体混合物18を充填した金型19とを、対向して貼り合わせる工程を示す図、(d)金型を取り外し、基板と基板上に配置、配線された青色半導体発光素子が、その発光面上部に配置された該シリコーン樹脂蛍光体混合物により封止された状態とした工程を示す図
【図7】実施例1および比較例1による白色系半導体発光デバイスの発光スペクトルを示す図
【図8】従来の白色系半導体発光デバイスの断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における白色系半導体発光デバイスの断面模式図である。
【0034】
本実施形態の白色系半導体発光デバイス100は、青色半導体発光素子13と、青色蛍光体20と、黄色蛍光体11とを含む。青色半導体発光素子13は、電圧を印加することにより、410nmより大きく、460nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光を放つ。青色蛍光体20は、青色半導体発光素子13が放つ発光を吸収し、青色発光を放つ。黄色蛍光体11は、青色半導体発光素子13が放つ発光と、青色蛍光体20が放つ発光とを吸収し、黄色発光を放つ。
【0035】
本実施形態においては、図1に示すように、青色半導体発光素子13は、基板17にダイボンド15により、担時されている。また、青色半導体発光素子13は、ボンディングワイヤ16により、電極14に電気的に接続されている。この電極14に所定の電圧を加えることにより、青色半導体発光素子13は発光する。
【0036】
この青色半導体発光素子13の発光面上部に、黄色蛍光体11と青色蛍光体20とが、樹脂12により担時され配置されている構造となっている。
【0037】
図1における青色半導体発光素子13から発せられた青色光の一部はそのまま青色光として放出される。さらに、前記青色半導体発光素子13から発光された青色発光の別の一部は、黄色蛍光体11により、黄色発光に変換され放出される。さらに青色半導体発光素子13から発光された青色発光の一部は、具備している青色蛍光体20に吸収され、別の青色発光に変換される。前記青色蛍光体20から放出された青色発光の内の一部は、さらに具備された黄色蛍光体11により、黄色発光に変換され、青色蛍光体20からの青色発光とともに放出される。
【0038】
以上の説明をまとめると、本実施形態の白色系半導体発光デバイスにおいては、下記の4種類の発光を混色することで白色発光を得る構成となっている。(なお、下記「→」の表記は、左記の発光を吸収し、右記の発光に波長変換することを表している。)
(1)青色半導体発光素子13からの直接的な青色発光
(2)青色半導体発光素子13からの青色発光→黄色蛍光体11による黄色発光
(3)青色半導体発光素子13からの青色発光→青色蛍光体20による青色発光
(4)青色半導体発光素子13からの青色発光→青色蛍光体20による青色発光
→黄色蛍光体11による黄色発光
これら(1)〜(4)の発光のうち、(3)および(4)の発光は、従来の構成による白色系半導体発光デバイスには存在しない発光にほかならない。
【0039】
かかる構成によれば、従来の白色系半導体発光デバイスの構成においては、比較的有効に利用されていなかった、特に450nmより短い波長をもつ発光の一部を、本発明の構成において具備された青色蛍光体が吸収し、より波長の長い青色発光((3)の発光)に変換すること、さらにこの青色蛍光体から放出された前記青色発光((3)の発光)を、具備された黄色蛍光体が吸収し黄色発光((4)の発光)に変換することができる。その結果、同じ青色半導体発光素子からの発光((1)の発光)を、従来の構成に比較して、より効率よく黄色発光((2)の発光+(4)の発光)に変換せしめることが可能となる。特に、従来の構成では、比較的有効利用できなかった450nmより短い波長の光を効率よく黄色発光に変換することが可能となる。
【0040】
その結果、青色半導体発光素子の発光が、設計時に想定された波長より、短波長側にずれてしまった場合においても、本発明による構成を採れば、黄色発光成分が想定以上に減少することが起こりにくく、結果として構成される白色系半導体発光デバイスの色合いは安定する。
【0041】
一方、これらの効果により、本発明における白色系半導体発光デバイスでは、従来の構成に比較して、発光波長がより広い範囲、より具体的には450nmよりも短い波長の発光ピークをもつ青色半導体発光素子をも採用し、活用することができる。その結果、比較的に安価に白色系半導体発光デバイスを提供することが可能となる。
【0042】
なお、ここで、通常は、黄色蛍光体11と青色蛍光体20は、通常は、それぞれ複数の蛍光体より構成されている。したがって、黄色蛍光体11についてみると、1個の黄色蛍光体が、(2)の発光、(4)の発光の両方に寄与しなくても良い。つまり、黄色蛍光体11全体として、(2)の発光、(4)の発光の両方の機能があればよい。
【0043】
また、本願においては、内部量子効率および外部量子効率について、以下のように定義した。すなわち、一定の波長範囲に分光して蛍光体に照射した光の光子数を励起光子数(A)とし、この励起光子数から蛍光体を透過した(吸収されなかった)光子数を引いた光子数を入射光子数(B)とし、一方蛍光体から発光について、430.54nm〜 800.33nm波長範囲において発生した全光子数を発光光子数(C)とした。前記入射光子数に対する前記発光光子数の比(すなわち、C/B)を内部量子効率と定義し、励起光子数に対する前記発光光子数の比(すなわち、C/A)を外部量子効率と定義した。
【0044】
なお、本発明による白色系半導体発光デバイスにおいては、400nm以上450nm以下の波長領域のいずれかの領域において、具備された黄色蛍光体の内部量子効率より、より高い内部量子効率をもつ青色蛍光体を用いることが好ましい。
【0045】
なお、本発明による白色系半導体発光デバイスにおいては、400nm以上450nm以下の波長領域のいずれかの領域において、具備された黄色蛍光体の外部量子効率より、より高い外部量子効率をもつ青色蛍光体を用いることが好ましい。
【0046】
なお、本実施の形態において、黄色蛍光体11として、一般式、
(Y3-x、Cex)Al5O12
(ただし、xは、0<x<3を満足する数値)
で示されるYAG蛍光体を用いることができる。
【0047】
なお、本発明による白色系半導体発光デバイスにおいては、発光ピークが450nm以上である青色蛍光体を具備することが好ましい。
【0048】
なお、本実施の形態においては、青色蛍光体として、一般式、
(Sr3-x、Eux)MgSi2O8
(ただし、xは、0<x<3を満足する数値)
で示されるケイ酸塩蛍光体を用いることができる。
【0049】
特に一般式、
(Sr3-x、Eux)MgSi2O8
(ただし、xは、0<x<3を満足する数値)
で示されるケイ酸塩蛍光体の内、その発光ピークが450nm以上のケイ酸塩蛍光体を用いることがより好ましい。
【0050】
前記一般式
(Sr3-x、Eux)MgSi2O8
(ただし、xは、0<x<3を満足する数値)
で示されるケイ酸塩蛍光体を用いることで、青色蛍光体の発光ピークを450nm以上にすることが可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、青色蛍光体として前記以外にも、Sr227:Sn4+、Sr4Al1425:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、SrGa24:Ce3+、CaGa24:Ce3+、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017:Eu2+、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+、BaAl2SiO8:Eu2+、Sr227:Eu2+、Sr5(PO43Cl:Eu2+、(Sr,Ca,Ba)5(PO43Cl:Eu2+、BaMg2Al1627:Eu2+、(Ba,Ca)5(PO43Cl:Eu2+、Ba3MgSi28:Eu2+、などを用いて良い。
【0052】
なお、本実施の形態においては、黄色蛍光体として前記以外にも、(Sr,Ba,Ca)2SiO4:Eu2+、を用いても良い。
【0053】
なお、本実施の形態においては、最終的に得られる白色系半導体発光デバイスの色合いの調整のため、前述以外に、赤色系蛍光体や緑色系蛍光体等を必要に応じて添加してもよい。
【0054】
なお、本実施の形態においては、青色蛍光体および黄色蛍光体を、樹脂に分散し、配置させる構成の例を示したが、必ずしも均一に分散し、配置される必要はない。本願の構成に必要な青色蛍光体および黄色蛍光体を、上下方向もしくは左右方向に層状に配置したりしてもよく、さらにはその配置の順序、および量についても特に限定されるものではない。
【0055】
(実施の形態2)
本発明による実施の形態2は、前述実施の形態1で示した白色系半導体発光デバイスとスイッチとをもちいた半導体発光装置である。
【0056】
本発明による実施の形態1の白色系半導体発光デバイスは、その色合いのばらつきが少なく、安価であるので、本発明に係る白色系半導体発光デバイスとスイッチとを用いて発光装置を構成すると、その発光装置の色合いも安定し、かつ安価にすることが可能となる。
【0057】
なお、ここで、半導体発光装置の具体例としては、LED情報表示端末、LED交通信号灯、自動車のLEDストップランプ、LED方向指示灯などの各種表示装置や、LED屋内外照明灯、車内LED灯、LED非常灯、LED面発光源などの各種照明装置を挙げることができる。
【0058】
図2に本発明による半導体発光装置200の一例を示す。図2において、100は本発明による白色系半導体発光デバイスであり、電源ケーブル22から電力を供給し、スイッチ21により白色系半導体発光デバイスを点灯、もしくは消灯することが出来る。
【0059】
本発明に係る半導体発光装置としての照明装置は特定の色温度に限定されるものではないが、この例の半導体発光装置において、好ましい色温度は2000K以上12000K以下、好ましくは3000K以上10000K以下、さらに3500K以上8000K以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
本実施例1では、本発明による白色系半導体発光デバイスを構成するために用いた、青色半導体発光素子、黄色蛍光体および青色蛍光体について説明する。次に、用いた前記蛍光体材料について、その発光スペクトル評価を行った結果を示す。さらにそれら部材による白色系半導体発光デバイスの製造方法について図面をもって詳細に説明する。
【0061】
1)青色半導体発光素子
本実施例においては、青色半導体発光素子13として、600μm角のGaN系半導体発光素子を用いた。このGaN系半導体発光素子を、基板にダイボンディングし、電極に配線し発光素子とした。本実施例で用いた前記青色半導体発光素子の発光スペクトルを図3に示す。図3から判るようにその発光ピークはおよそ442nmであった。
【0062】
2)黄色蛍光体
本実施例においては、黄色蛍光体11としてYAG(イットリウム・アルミ・ガーネット)蛍光体を用いた。より具体的には、根本特殊化学株式会社製、品番:YAG 4−3−3(粒径14.4μm)を用いた。
【0063】
3)青色蛍光体
本実施例においては、青色蛍光体20として、下記の化学式で表される化合物を主体にしてなるケイ酸塩蛍光体を合成して用いた。
【0064】
(Sr3-x、Eux)MgSi2O8
ただし、xは、0<x<3を満足する数値である。
【0065】
以下に、用いたケイ酸塩蛍光体の合成方法を詳細に記載する。
【0066】
まず出発原料として、純度99%以上の炭酸ストロンチウム(SrCO3)、純度99%以上の酸化ユウロピウム(Eu23)、純度99%以上の酸化マグネシウム(MgO)、純度99%以上の酸化シリコン(SiO2)および純度99%以上の塩化カルシウム(CaCl2)を、一般式2.991SrO・0.009EuO・MgO・2.000SiO2・0.010CaCl2になるように秤量した。秤量した出発原料について、ボールミルを用いて純水中で24時間湿式混合し、さらに120℃で24時間乾燥させることで混合粉を得た。得られた混合粉を大気中1000℃で4時間仮焼し、その後さらに1300℃、1×10-12.41atmの酸素分圧を有する雰囲気下で4時間熱処理を行い、青色蛍光体を得た。(以下本実施例において合成した青色蛍光体を「SMS蛍光体」と呼ぶ。)
a)蛍光体発光評価
本実施例1で用いた黄色蛍光体および青色蛍光体について、その発光波長のピーク、内部量子効率、および外部量子効率の評価を行った。
【0067】
評価にあたっては、量子効率測定装置として、浜松ホトニクス株式会社製、絶対PL量子収率測定装置;C9920-03GおよびPL量子収率測定ソフトウエア;U6039-05を用いた。
【0068】
黄色蛍光体の発光波長の測定においては、450±2.5nmの励起光で励起させ、発光スペクトルを計測した。その結果、本実施例で用いた黄色蛍光体としてのYAG蛍光体の発光波長のピークは、558.8nmであった。
【0069】
また、青色蛍光他の発光波長の測定においては、410±2.5nmの励起光で励起させ、発光スペクトルを計測した。その結果、本実施例で用いた青色蛍光体としてのSMS蛍光体の発光波長のピークは、458.4nmであった。
【0070】
一方、内部量子効率および外部量子効率の測定条件としては、励起光の波長として、300nm〜500nmの範囲において、5nmステップ変化させ、蛍光体に照射し、蛍光体からの発光を測定評価した。量子効率の算出にあたっては、まず5nm幅で分光し蛍光体に照射した光の光子数を励起光子数(A)とし、この励起光子数から蛍光体を透過した(吸収されなかった)光子数を引いた光子数を入射光子数(B)とした。一方、蛍光体から発光について、430.5nm〜 800.3nm波長範囲において発生した全光子数を測定し、発光光子数(C)とした。分光して照射した各入射光子数に対する前記発光光子数の比(すなわち、C/B)を各照射波長における内部量子効率とて算出し、励起光子数に対する前記発光光子数の比(すなわち、C/A)を各照射波長における外部量子効率として算出した。
【0071】
図4に本発明による実施例で用いた青色蛍光体としてのSMS蛍光体と。黄色蛍光体としてのYAG蛍光体の内部量子効率評価結果を示す。図4からもわかるように400nm以上450nm以下の波長領域、特に400nm以上410nm程度までの波長領域において、黄色蛍光体の内部量子効率より、青色蛍光体の内部量子効率が高い。
【0072】
また図5に本発明による実施例で用いた青色蛍光体としてのSMS蛍光体と、黄色蛍光体としてのYAG蛍光体の外部量子効率評価結果を示す。図5からもわかるように400nm以上450nm以下の波長領域、特に400nm以上415nm程度までの波長領域において、黄色蛍光体の外部量子効率より、青色蛍光体の外部量子効率が高い。
【0073】
b)白色系半導体発光デバイスの製作
ジメチルシリコーン樹脂(信越化学製KER−2600)A剤5g、B剤5gに対し、前述の黄色蛍光体としてのYAG蛍光体を3.7g、前述の青色蛍光体としてのSMS蛍光体を0.6g添加し、三本ロール混練機(EXAKT製M50)で3回通しシリコーン樹脂蛍光体混合物を得た。
【0074】
まず、図6(a)のように本発明による前記シリコーン樹脂蛍光体混合物18を金型19としてのSUS製金型に塗布、充填し、真空脱法装置(日電アネルバ製)で5分脱泡を行った。その後、図6(b)に示したような、基板と前記基板上に配置され、電極に配線された青色半導体発光素子と、前述のシリコーン樹脂蛍光体混合物を充填した金型とを、図6(c)のように対向して貼り合わせ、150℃、10分の仮加熱硬化を行った。さらにその後金型を取り外し、図6(d)に示したような、基板と基板上に配置、配線された青色半導体発光素子が、その発光面上部に配置された該シリコーン樹脂蛍光体混合物により封止された状態とした。最後にこれを150℃で4時間加熱し、硬化させ、図1に示したような本発明による白色系半導体発光デバイス得た。
【0075】
(比較例1)
比較例として、従来の技術による白色系半導体発光デバイスを作製した。比較例1においては青色蛍光体を添加せずに作製した。それ以外の部材および製造方法は前述の本発明の実施例1と全く同じにした。すなわち、用いた青色半導体発光素子、黄色蛍光体およびシリコーン樹脂の各材料は実施例1と全く同じものを用い、さらに素子の製作の条件も前述の実施例1の製作に用いた方法と全く同じにした。最終的に、図8に示したような青色蛍光体は具備しない、従来の技術による白色系半導体発光デバイス110を得た。
【0076】
a)白色系半導体発光デバイスの評価
以下に、前述までに説明した本発明による白色系半導体発光デバイスである(実施例1)と従来の技術による白色系半導体発光デバイスである(比較例1)について、その素子の発光スペクトルの評価を行った。発光スペクトルの評価装置としては、大塚電子株式会社製の「全光束測定システム;HMφ300mm」、および「ソフト:瞬間マルチ測光システム」を用い、製作した白色系半導体発光デバイスに、500mAの電流を30msのパルス幅で与え、その際の白色発光を検出器で300ms測定した。その際、測定された(実施例1)および(比較例1)の発光スペクトルを図7に示す。
【0077】
図7から判るように、本発明にかかる(実施例1)による発光スペクトルは、(比較例1)に比べ、440nm程度の発光強度がひくく、同時に560nm付近の発光が強くなっていることが判る。このことから明らかに、本発明による(実施例1)の白色系半導体発光デバイスは、従来の技術による(比較例1)にはない青色蛍光体を具備した結果、前記青色蛍光体が、青色半導体発光素子の発光の一部を吸収し、青色発光し、さらにこの青色蛍光体からの青色発光により同時に具備させた黄色蛍光体を励起し、黄色発光を強めた結果であることが判る。
【0078】
前述のような、青色半導体発光素子からの青色発光の一部を具備した青色蛍光体に一旦吸収させ、より長波長の青色光を発光させ、これによって黄色蛍光体を励起、発光せしめる効果は、先図4および図5に示したように、具備した青色蛍光体の特定の波長域(特に450nmより短い波長領域)での内部量子効率もしくは外部量子効率が、同時に具備した黄色蛍光体のそれらより高い結果であると言える。
【0079】
すなわち、本発明による白色系半導体発光デバイスによれば、同じ青色半導体発光素子からの発光を、従来の技術による構成に比較して、より効率よく黄色発光に変換せしめることが可能となる。特に、従来の構成では、比較的有効利用できなかった450nmより短い波長の光を効率よく黄色発光に変換することが可能となる。
【0080】
また、本発明による構成によれば、仮に青色半導体発光素子の発光が設計時に期待した発光波長より、短波長側にずれてしまった場合においても、黄色発光成分が減少することは起こりにくく、結果として構成される白色系半導体発光デバイスの色合いは安定する。
【0081】
さらに、これらの効果により、本発明における白色系半導体発光デバイスでは、従来の構成に比較して、発光波長がより広い範囲、より具体的には450nmよりも短い発光ピークをもつ青色半導体発光素子をも選択し、活用することができる。これら比較的広い波長領域において発光波長のピークを有する比較的安価なGaN系の青色半導体発光素子を用いても、白色発光の色合いが安定した白色系半導体発光デバイスを安価に実現することができる。
【0082】
さらに白色発光の色合いが安定し、かつ安価な白色系半導体発光デバイスを用いること、半導体発光装置を安価に提供することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかる白色系半導体発光デバイスは、白色の発光の色合いが安定し、かつ安価に製造できる特徴を有し、半導体発光装置としての照明装置等として有用である。
【符号の説明】
【0084】
11 黄色蛍光体
12 樹脂
13 半導体発光素子
14 電極
15 ダイボンド
16 ボンディングワイヤ
17 基板
18 シリコーン樹脂蛍光体混合物
19 金型
20 青色蛍光体
21 スイッチ
22 電源ケーブル
100 白色系半導体発光デバイス
110 従来技術による白色系半導体発光デバイス
200 半導体発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
410nmより大きく、460nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光を放つ半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が放つ発光を吸収し、青色発光を放つ青色蛍光体と、
前記半導体発光素子が放つ発光および、前記青色蛍光体が放つ発光とを吸収し、黄色発光を放つ黄色蛍光体とを
具備している白色系半導体発光デバイス。
【請求項2】
400nm以上450nm以下の波長領域のいずれかの領域において、
前記青色蛍光体の内部量子効率が、前記黄色蛍光体の内部量子効率より高い、
請求項1記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項3】
400nm以上450nm以下の波長領域のいずれかの領域において、
前記青色蛍光体の外部量子効率が、前記黄色蛍光体の外部量子効率より高い、
請求項1記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項4】
前記青色蛍光体が放つ青色発光の発光ピークが450nm以上であることを特徴とする、
請求項1記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項5】
前記青色蛍光体が、下記の化学式(1)
(Sr3-x、Eux)MgSi2O8 (ただし、xは、0<x<3を満足する数値) (1)
で表される化合物を主体にしてなるケイ酸塩蛍光体である、
請求項1〜4のいずれかに記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項6】
前記青色蛍光体が、一般式xSrO・yEuO・MgO・zSiO2(2.970≦x≦3.500,0.001≦y≦0.030,1.900≦z≦2.100)で表される青色蛍光体である、
請求項1から4のいずれかに記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項7】
前記黄色蛍光体が、下記の化学式(2)
(Y3-x、Cex)Al5O12 (ただし、xは、0<x<3を満足する数値) (2) で表される化合物を主体にしてなるアルミン酸塩蛍光体である、
請求項1から4のいずれかに記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項8】
前記半導体発光素子が、窒化ガリウム系化合物半導体で構成した発光層を有する半導体発光素子である、
請求項1から7のいずれかに記載の白色系半導体発光デバイス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の白色系半導体発光デバイスと、
スイッチとを、用いて構成した半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−12627(P2013−12627A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145191(P2011−145191)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】