説明

白色系有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高輝度、高効率、長寿命な白色系有機EL素子を提供する。
【解決手段】陰極及び陽極と、これらに挟持される少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有し、前記発光層が青色系発光層と黄色〜赤色系発光層との積層からなり、少なくとも一方の発光層由来の発光波長の半値幅が60nm以上である白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色系有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ用の有機EL素子の開発が、盛んに行われている。特に、白色系有機EL素子の開発は、モノカラー表示装置としての用途、バックライト等の照明用途及びカラーフィルターを使用したフルカラー表示装置等に使用できるため積極的に行われている。
【0003】
有機ELにより白色発光を得る方法は数多く開示されている。これらの方法は、1種類の発光材料だけで白色を得るものは少なく、通常は2種類又は3種類の発光材料を一つの有機ELの中で、同時に発光させている。3種類の発光材料を使用する場合は、光の三原色に対応する赤、青、緑の発光の組み合わせで白色にするが、色度制御が困難であり繰り返し再現性が悪いという問題があった。
【0004】
2種類の発光材料を使用する場合は、青系とその補色となる黄色〜赤色系の発光材料を選択するが、黄色〜赤色系の発光が強くなることが多く、色度変化を引き起こし易い。例えば、特許文献1の参考例1及び2に示されているように、従来の白色有機ELは青色が低下し易く、色度変化の問題点を有していた。また、青色系ドーパントと黄色〜赤色系ドーパントを同時にドープし、ドープ比を調整することでも、白色発光が得られるが、赤が強くなりやすいことに加え、青から赤へエネルギー移動し易いため、赤味を帯びた白色になりがちである。従って、白色を得るには、黄色〜赤色系ドーパントを非常に希薄にドープする必要があり、やはり再現性が難しいという問題があった。
【0005】
さらに、発光層を2分割するタイプにおいて、陽極側発光層を黄色〜赤色系発光層、陰極側を青色系発光層とした積層型がある。この場合、効率の面で優れているが、白色を得るためには黄色〜赤色系発光を押さえるため、黄色〜赤色系発光層を青色系発光層に比べて、膜厚を薄くしたり、ドープ濃度を薄くする必要があり、素子作製が難しくなっていた。具体的には黄色〜赤色系発光層の膜厚を、1〜2nm程度にしなければ、白色発光とならないことが多かった。この膜厚は、通常の低分子系有機ELの分子サイズと同等レベルの薄さであることから制御が極めて難しいと言える。
【0006】
これらの課題を解決するものとして、特許文献2には、発光層を2分割するタイプにおいて、発光層の発光領域が偏りやすい陽極側の発光層を青色系発光層とすることで、発光色が赤色に偏りがちな傾向を打ち消した白色系有機EL素子が開示されている。
【0007】
しかしながら、この白色系有機EL素子を、フルカラーディスプレイ用途又は車載向け等の様々な表示機器への適用を考えた場合、連続駆動時の輝度安定性、即ち寿命が必ずしも十分とはいえなかった。
【特許文献1】特開2001−52870号公報
【特許文献2】特開2003−272857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は高輝度、高効率、長寿命な白色系有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の白色系有機EL素子が提供される。
1.陰極及び陽極と、これらに挟持される少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有し、前記発光層が青色系発光層と黄色〜赤色系発光層との積層からなり、少なくとも一方の発光層由来の発光波長の半値幅が60nm以上である白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.発光波長の半値幅が60nm以上である発光層が、青色系発光層である1記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記青色系発光層が、青色系ホスト材料及び青色系ドーパントからなる1又は2記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記青色系ドーパントが、スチリルアミン、アミン置換スチリル化合物、アミン置換縮合芳香族環及び縮合芳香族環含有化合物より選択される少なくとも一種類の化合物である1〜3いずれか記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記青色系ホスト材料が、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、ジベンゾアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ベンゾピレン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾフルオレン誘導体、フルオランテン誘導体、ベンゾフルオランテン誘導体、ジベンゾフルオランテン誘導体、ナフチルフルオランテン誘導体、アセナフチルフルオランテン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体より選択される少なくとも一種類の化合物である1〜4いずれか記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.陽極、青色系発光層、黄色〜赤色系発光層及び陰極を、この順に含み、前記黄色〜赤色系発光層が、前記青色系発光層と同じホスト材料と、黄色〜赤色系ドーパントとを含む1〜5いずれか記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.前記黄色〜赤色系ドーパントが、フルオランテン骨格あるいはベンゾフルオランテン骨格を有する化合物である6記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.前記黄色〜赤色系ドーパントが、540nm〜700nmの蛍光ピーク波長を示す化合物である6又は7記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
9.前記黄色〜赤色系ホスト材料が、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、ジベンゾアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ベンゾピレン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾフルオレン誘導体、フルオランテン誘導体、ベンゾフルオランテン誘導体、ジベンゾフルオランテン誘導体、ナフチルフルオランテン誘導体、アセナフチルフルオランテン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体より選択される少なくとも一種類の化合物である6〜8いずれか記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.前記青色系発光層及び黄色〜赤色系発光層の膜厚が、それぞれ5nm以上である1〜9いずれか記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高輝度、高効率、長寿命な白色系有機EL素子を提供できる。
特に本発明の有機EL素子は、従来の2波長型や3波長型の白色系有機EL素子が内包していた課題を解決し、色度変化が少なく、使用材料が3波長型よりも少ないことから生産性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の白色系有機EL素子は、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている。発光層は、青色系発光層と黄色〜赤色系発光層との積層からなり、いずれかの発光層由来の発光波長の半値幅が60nm以上である。前記半値幅は、好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
発光波長の半値幅が60nm以上である発光層は、好ましくは青色系発光層である。
【0012】
本発明の白色系有機EL素子の層構成としては、例えば、以下のような構成が挙げられる。
(1) 陽極/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/陰極
(2) 陽極/正孔輸送層/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/陰極
(3) 陽極/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/電子輸送層/陰極
(4) 陽極/正孔輸送層/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/電子輸送層/陰極
(5) 陽極/正孔注入層/正孔輸送層/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/電子輸送層/陰極
(6) 陽極/正孔輸送層/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(7) 陽極/正孔注入層/正孔輸送層/青色系発光層/黄〜赤色系発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(8) 陽極/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/陰極
(9) 陽極/正孔輸送層/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/陰極
(10)陽極/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/電子輸送層/陰極
(11)陽極/正孔輸送層/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/電子輸送層/陰極
(12)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/電子輸送層/陰極
(13)陽極/正孔輸送層/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(14)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/黄〜赤色系発光層/青色系発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0013】
本発明の白色系有機EL素子は、このように発光層が青色系発光層と黄色〜赤色系発光層とに2分割された構造であればよく、青色系発光層や黄色〜赤色系発光層が、それぞれ2層以上からなる多層構造であってもよいが、青色系発光層と黄色〜赤色系発光層との2層からなるものが好ましい。
また、本発明の白色系有機EL素子は、青色系発光層が陽極側、黄色〜赤色系発光層が陰極側にあるのが好ましい。
【0014】
青色系発光層は、好ましくは青色系ホスト材料及び青色系ドーパントからなる。
また、青色系発光層の膜厚は、5nm以上が好ましく、さらに好ましくは5〜30nm、特に好ましくは7〜30nm、最も好ましくは10〜30nmである。青色系発光層の膜厚が5nm以上であれば、発光層形成や色度の調整が困難となることがなく、30nm以下であれば、駆動電圧が上昇することがない。
【0015】
青色系ホスト材料としては特に制限されず、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、クリセン化合物、非対称なこれらの化合物等を用いることができる。
これらのうち、アントラセン化合物、特に、非対称アントラセン系化合物が好ましく、例えば、特願2004−042694号記載の化合物を使用できる。
【0016】
本発明で好適に使用される青色系ホスト材料は、青色系発光素子を作成した場合に、その青色発光の半値幅が60nm以上となる材料である。以下に好適に使用されるホスト材料の具体例を示す。
【化1】



【0017】
青色ドーパントは、特に限定されないが、スチリルアミン、アミン置換スチリル化合物、アミン置換縮合芳香族環及び縮合芳香族環含有化合物より選択される少なくとも一種類の化合物が好ましい。
スチリルアミン及びアミン置換スチリル化合物としては、例えば、式(3−1)及び(3−2)で示される化合物が、縮合芳香族環含有化合物としては、例えば、式(3−3)で示される化合物が挙げられる。
【0018】
【化2】

[式中、Ar1’’、Ar2’’及びAr3’’は、それぞれ独立に、炭素数6〜40の置換若しくは無置換の芳香族基を示し、それらの中の少なくとも一つはスチリル基を含み、pは1〜3の整数を示す。]
芳香族基の具体例としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナンスリル基、2−フェナンスリル基、3−フェナンスリル基、4−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基等が挙げられる。
【0019】
【化3】

[式中、Ar4’’及びAr5’’は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリーレン基、E1及びE2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリール基若しくはアルキル基、水素原子又はシアノ基を示し、qは1〜3の整数を示す。U及び/又はVはアミノ基を含む置換基であり、該アミノ基がアリールアミノ基であると好ましい。]
【0020】
アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基等が挙げられる。
【0021】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
【0022】
アリーレン基の具体例としては、上記アリール基から水素原子を1つ除いた例が挙げられる。
【0023】
【化4】

[式中、Aは、置換若しくは無置換の炭素数1〜16のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリール基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、又は炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールアミノ基、Bは炭素数10〜40の縮合芳香族基を示し、rは1〜4の整数を示す。]
アルキル基、アリール基及び縮合芳香族基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
アルコキシ基は−OYと表され、Yの例としては、前記アルキル基と同様のものが挙げられる
アルキルアミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等が挙げられる。
上述した青色ドーパントは、国際公開第02/20459号パンフレット等に記載の方法で製造することができる。
【0024】
青色系発光層中に含まれる青色ドーパントの割合は、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは2.5〜5重量%である。
【0025】
黄色〜赤色計発光層は、好ましくはホスト材料と黄色〜赤色系ドーパントからなる。黄色〜赤色系発光層に含まれるホスト材料は、上述した青色系ホスト材料と同じであることが好ましい。
【0026】
黄色〜赤色系発光層の膜厚は、5nm以上が好ましく、さらに好ましくは10〜50nm、特に好ましくは20〜50nm、最も好ましくは、30〜50nmである。黄色〜赤色系発光層の膜厚が5nm以上であれば発光効率が低下することがなく、50nm以下であれば駆動電圧が上昇する恐れがない。
【0027】
黄色〜赤色ドーパントは、好ましくはフルオランテン骨格を有する化合物である。さらに、黄色〜赤色ドーパントは540〜700nmの蛍光ピーク波長を示す化合物であると好ましい。
フルオランテン骨格を有する化合物の具体例を以下に例示する。
【0028】
【化5】



【0029】
[式中、X〜X20は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐若しくは環状の炭素原子数1〜20のアルキル基、直鎖、分岐若しくは環状の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜30のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキルアミノ基又は置換若しくは無置換の炭素原子数8〜30のアルケニル基であり、隣接する置換基及びX〜X20は、結合して環状構造を形成していてもよい。隣接する置換基がアリール基のときは、置換基は同一であってもよい。]
アルキル基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アリールアミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジビフェニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルアミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等が挙げられる。
アリールアルキルアミノ基の具体例としては、メチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、プロピルフェニルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、メチルビフェニルアミノ基等が挙げられる。
アルケニル基としては、アルキル基の具体例が二重結合を有するものが挙げられる。
また、上記例示化合物は、アミノ基又はアルケニル基を含有すると好ましい。
【0030】
【化6】

[式中、X21〜X24は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリール基であり、X21とX22及び/又はX23とX24は、炭素−炭素結合又は−O−、−S−を介して結合していてもよい。X25〜X36は、水素原子、直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1〜20のアルキル基、直鎖、分岐若しくは環状の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数7〜30のアリールアルキルアミノ基又は置換若しくは無置換の炭素数8〜30のアルケニル基であり、隣接する置換基及びX25〜X36は結合して環状構造を形成していてもよい。各式中の置換基X25〜X36の少なくとも一つがアミン又はアルケニル基を含有すると好ましい。]
アルキル基等の各基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられ、アルケニル基としては、アルキル基の具体例が二重結合を有するものが挙げられる。
【0031】
また、上記のようなフルオランテン骨格を有する蛍光性化合物は、高効率及び長寿命を得るために電子供与性基を含有することが好ましく、好ましい電子供与性基は置換若しくは無置換のアリールアミノ基である。さらに、フルオランテン骨格を有する蛍光性化合物は、縮合環数5以上が好ましく、6以上が特に好ましい。これは、蛍光性化合物が540〜700nmの蛍光ピーク波長を示し、青色系発光材料と蛍光性化合物からの発光が重なって白色を呈するからである。特に好ましい蛍光性化合物は、電子供与性基とフルオランテン骨格又はペリレン骨格を有し、540〜700nmの蛍光ピーク波長を示すものである。
上述した赤色ドーパントは、国際公開第01/23497号パンフレット等に記載の方法で製造することができる。
【0032】
赤色系発光層中に含まれる赤色ドーパントの割合は、好ましくは0.25〜25重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0033】
本発明の白色系有機EL素子では、陽極と発光層の間に、正孔注入層、正孔輸送層、有機半導体層等を設けることができる。正孔注入層及び正孔輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。正孔注入層は、エネルギーレベルの急な変化を緩和する等、エネルギーレベルを調整するために設ける。このような正孔注入層及び正孔輸送層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば、10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−6cm/V・秒であるものが好ましい。正孔注入層及び正孔輸送層を形成する材料としては、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0034】
このような正孔注入層及び正孔輸送層の形成材料としては、具体的には、例えば、トリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物(特開昭63−2956965号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)、芳香族第三級アミン化合物、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4’’−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等を挙げることができる。さらに、p型Si、p型SiC等の無機化合物も使用することができる。
【0035】
正孔注入層又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる一層で構成されてもよいし、また、別種の化合物からなる正孔注入層又は正孔輸送層を積層したものであってもよい。
正孔注入層又は正孔輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、20〜200nmである。
【0036】
有機半導体層は、発光層への正孔注入又は電子注入を助ける層であって、10−10S/cm以上の導電率を有するものが好適である。このような有機半導体層の材料としては、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に記載の含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等を用いることができる。
有機半導体層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、10〜1,000nmである。
【0037】
本発明の白色系有機EL素子では、陰極と発光層の間に、電子注入層、電子輸送層、付着改善層等を設けることができる。電子注入層及び電子輸送層は、発光層への電子の注入を助ける層であって、電子移動度が大きい。電子注入層は、エネルギーレベルの急な変化を緩和する等、エネルギーレベルを調整するために設ける。尚、付着改善層は、この電子注入層の中で、特に陰極との付着がよい材料からなる層をいう。
【0038】
電子注入層又は電子輸送層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、オキサジアゾール誘導体が好適である。
【0039】
上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に、8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)等を用いることができる。
【0040】
オキサジアゾール誘導体としては、下記式で表わされる電子伝達性化合物が挙げられる。
【化7】

[式中、Ar、Ar、Ar、Ar11、Ar12、Ar15は、それぞれ置換又は無置換のアリール基を示し、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Ar10、Ar13、Ar14は、置換又は無置換のアリーレン基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
【0041】
ここで、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基等が挙げられる。また、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基等が挙げられる。また、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。この電子伝達化合物は、薄膜形成性のものが好ましい。
【0042】
上記電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化8】

【0043】
さらに、電子注入層及び電子輸送層に用いられる材料として、以下のものも用いることができる。
下記式で表される含窒素複素環誘導体
【化9】

[式中、A〜Aは、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子である。
Ar16は、置換若しくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基、又は置換若しくは無置換の核炭素数3〜60のヘテロアリール基であり、Ar17は、水素原子、置換若しくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換の核炭素数3〜60のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。ただし、Ar16及びAr17のいずれか一方は、置換若しくは無置換の核炭素数10〜60の縮合環基、又は置換若しくは無置換の核炭素数3〜60のモノヘテロ縮合環基である。
及びLは、それぞれ独立に、単結合、置換若しくは無置換の核炭素数6〜60のアリーレン基、置換若しくは無置換の核炭素数3〜60のヘテロアリーレン基、又は置換若しくは無置換のフルオレニレン基である。
Rは、水素原子、置換若しくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換の核炭素数3〜60のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、mは0〜5の整数であり、mが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、また、隣接する複数のR基同士で結合して、炭素環式脂肪族環又は炭素環式芳香族環を形成していてもよい。]
アルキル基等の各基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0044】
下記式で表される含窒素複素環誘導体
HAr−L−Ar18−Ar19
[式中、HArは、置換基を有していてもよい炭素数3〜40の含窒素複素環であり、
は、単結合、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素数3〜60のヘテロアリーレン基又は置換基を有していてもよいフルオレニレン基であり、
Ar18は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の2価の芳香族炭化水素基であり、
Ar19は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜60のヘテロアリール基である。]
アリール基等の各基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0045】
特開平09−087616号公報に示されている、下記式で表されるシラシクロペンタジエン誘導体を用いた電界発光素子
【化10】

[式中、Q及びQは、それぞれ独立に炭素数1〜6の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環又はQとQが結合して飽和又は不飽和の環を形成した構造であり、R13〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アゾ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、スルフィニル基、スルフォニル基、スルファニル基、シリル基、カルバモイル基、アリール基、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、ホルミル基、ニトロソ基、ホルミルオキシ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、若しくはシアノ基又は隣接した場合には置換若しくは無置換の環が縮合した構造である。]
【0046】
特再2000−040586号公報に示されている下記式で表されるボラン誘導体
【化11】

[式中、R17〜R24及びQは、それぞれ独立に、水素原子、飽和若しくは不飽和の炭化水素基、芳香族基、ヘテロ環基、置換アミノ基、置換ボリル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示し、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、飽和若しくは不飽和の炭化水素基、芳香族基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示し、QとQの置換基は、相互に結合して縮合環を形成してもよく、iは1〜3の整数を示し、iが2以上の場合、Qは異なってもよい。但し、iが1、Q、Q及びR18がメチル基であって、R24が水素原子又は置換ボリル基の場合、及びiが3でQがメチル基の場合を含まない。]
【0047】
特開平10−088121号公報に示されている下記式で示される化合物
【化12】

[式中、Q、Qは、それぞれ独立に、下記式(I)で示される配位子を表し、Lは、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、−OR25(R25は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基である。)又は−O−Ga−Q(Q10)(Q及びQ10は、Q及びQと同じ意味を表す。)で示される配位子を表す。
【化13】

[式中、環A及びAは、置換基を有してよい互いに縮合した6員アリール環構造である。]]
【0048】
この金属錯体は、n型半導体としての性質が強く、電子注入能力が大きい。さらには、錯体形成時の生成エネルギーも低いために、形成した金属錯体の金属と配位子との結合性も強固になり、発光材料としての蛍光量子効率も大きくなっている。
【0049】
上記式の配位子を形成する環A及びAの置換基の具体的な例を挙げると、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基等の置換若しくは無置換のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、3−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−フルオロフェニル基、3−トリクロロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、3−ニトロフェニル基等の置換若しくは無置換のアリール基、メトキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基、6−(パーフルオロエチル)ヘキシルオキシ基等の置換若しくは無置換のアルコキシ基、フェノキシ基、p−ニトロフェノキシ基、p−tert−ブチルフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェニル基、3−トリフルオロメチルフェノキシ基等の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、フェニルチオ基、p−ニトロフェニルチオ基、p−tert−ブチルフェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオ基等の置換若しくは無置換のアリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のモノ又はジ置換アミノ基、ビス(アセトキシメチル)アミノ基、ビス(アセトキシエチル)アミノ基、ビス(アセトキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトキシブチル)アミノ基等のアシルアミノ基、水酸基、シロキシ基、アシル基、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等のカルバモイル基、カルボン酸基、スルフォン酸基、イミド基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基等のアリール基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、インドリニル基、キノリニル基、アクリジニル基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、ピペリジニル基、モルフォリジニル基、ピペラジニル基、トリアチニル基、カルバゾリル基、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、プラニル基等の複素環基等がある。また、以上の置換基同士が結合してさらなる6員アリール環若しくは複素環を形成してもよい。
【0050】
電子注入層又は電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる一層で構成されてもよいし、また、別種の化合物からなる電子注入層又は電子輸送層を積層したものであってもよい。
電子注入層又は電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜100nmである。
【0051】
本発明の白色系有機EL素子では、電子を輸送する領域又は陰極と有機層の界面領域に、還元性ドーパントを含有してもよい。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元できる物質と定義される。従って、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0052】
好ましい還元性ドーパントの具体例としては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、Rb及びCsであり、最も好ましいのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb又はCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0053】
本発明においては、陰極と有機層の間に、絶縁体や半導体で構成される電子注入層、電子輸送層をさらに設けてもよい。これらの層を設けることにより、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。また、この絶縁体や半導体の無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeFといったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0054】
また、半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0055】
本発明の白色系有機EL素子では、発光層又は発光層と陽極の間の有機層が、酸化剤を含むことが好ましい。好ましい酸化剤としては、電子吸引性又は電子アクセプターである。例えば、ルイス酸、各種キノン誘導体、ジシアノキノジメタン誘導体、芳香族アミンとルイス酸で形成された塩類が挙げられる。ルイス酸としては、塩化鉄、塩化アンチモン、塩化アルミニウム等が挙げられる。
【0056】
本発明の白色系有機EL素子では、発光層又は発光層と陰極の間の有機層が、還元剤を含むことが好ましい。好ましい還元剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、希土類ハロゲン化物、アルカリ金属と芳香族化合物で形成される錯体である。特に好ましいアルカリ金属はCs、Li、Na、Kである。
【0057】
発光層を含む各有機層及び無機化合物層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法を適用することができる。また、得られる有機EL素子の特性が均一となり、また、製造時間が短縮できることから、電子注入層と発光層とは同一方法で形成することが好ましく、例えば、電子注入層を蒸着法で製膜する場合には、発光層も蒸着法で製膜することが好ましい。
【0058】
陽極としては、仕事関数の大きい(例えば、4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的には、インジウムチンオキサイド(ITO)、インジウムジンクオキサイド、スズ、酸化亜鉛、金、白金、パラジウム等の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
陽極の厚さは、特に制限されないが、10〜1,000nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
【0059】
陰極には、仕事関数の小さい(例えば、4.0eV未満)金属、合金、電気電導性化合物又はこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、銀等の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
陰極の厚さは、特に制限されないが、10〜1,000nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
【0060】
陽極又は陰極の少なくとも一方は、発光層から放射された光を外部に有効に取り出すことができるように、光透過率が10%以上の値であることが好ましい。
【0061】
電極は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、CVD法、MOCVD法、プラズマCVD法等により製造できる。
【実施例】
【0062】
実施例1
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmに下記化合物(HI1)(以下「HI1膜」と略記する。)を成膜した。このHI1膜は、正孔注入層として機能する。HI1膜の成膜に続けて、このHI1膜上に膜厚20nmに下記化合物(TBDB)(以下「TBDB膜」と略記する。)を成膜した。このTBDB膜は正孔輸送層として機能する。さらに、TBDB膜の成膜に続けて、膜厚10nmにてホスト化合物として非対称アントラセン系化合物である化合物(BH1:半値幅108nm)と青色系ドーパントとして下記化合物(BD1)を40:2の重量比で蒸着し成膜し、青色系発光層とした。次いで、膜厚30nmにてBH1と黄色〜赤色系ドーパントとして化合物(RD1)(蛍光ピーク波長:548nm)を40:1の重量比で蒸着し成膜し、黄色〜赤色系発光層とした。この膜上に電子輸送層として膜厚10nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウム膜(以下「Alq膜」と略記する。)を成膜した。この後、LiFを電子注入層として1nm蒸着し、さらにAlを陰極として150nm蒸着し、有機EL素子を作製した。
【0063】
【化14】

BH1の発光スペクトルの半値幅は、青色発光層の膜厚を40nmとする以外は実施例1と同様にして青色発光素子を作成し、10mA/cmで発光させた時の青色発光スペクトルの半値幅を観測した。
【0064】
得られた素子について、初期性能及び半減寿命、耐熱試験を行った。それらの結果を表1に示す。
初期性能は、5.5Vの電圧印加時の発光効率(電流密度辺りの発光輝度)、色度座標を測定した。
尚、色度座標(CIE1931色度座標)及び発光輝度はミノルタ社製分光輝度放射計CS−1000を用いて測定した。
半減寿命は初期輝度1000nitで室温、定電流駆動し、輝度が半減するまでの時間を測定したものである。
耐熱試験は、初期輝度300nitで定電流、85℃,500時間駆動後の輝度の保持率、色度座標変化量を測定したものである。
【0065】
実施例2−4
実施例1において、BH1の代わりに、下記化合物BH2、BH3、BH4を用いたこと以外は全く同様にして有機EL素子を作製し、得られた素子について、実施例1と同様にして初期性能及び半減寿命、耐熱試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【0066】
【化15】

【0067】
比較例1
実施例1において、実施例1の青色系発光層及び黄色〜赤色系発光層を形成する代わりに、TBDB膜の上に、膜厚10nmにて下記アントラセン誘導体DPVDPANと青色系ドーパントとして化合物(BD1)を40:1の重量比で蒸着し青色系発光層とし、さらに膜厚30nmにてアントラセン誘導体DPVDPANと赤色系ドーパントとして化合物(rd1)を40:1の重量比で蒸着し成膜し、黄色〜赤色系発光層としたこと以外は同様にして有機EL素子を作製し、得られた素子について、実施例1と同様にして初期性能及び半減寿命、耐熱試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【化16】

【0068】
比較例2
実施例1において、化合物(BH1)の代わりに、下記化合物(bh1)を用いたこと以外は全く同様にして有機EL素子を作製し、得られた素子について、実施例1と同様にして初期性能及び半減寿命、耐熱試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【化17】

【0069】
比較例3
実施例1において、化合物(BH1)の代わりに、下記化合物(bh2)を用いたこと以外は全く同様にして有機EL素子を作製し、得られた素子について、実施例1と同様にして初期性能及び半減寿命、耐熱試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【化18】

【0070】
比較例4
実施例1において、非対称アントラセン系化合物として化合物(BH1)の代わりに、下記化合物(bh3)を用いたこと以外は全く同様にして有機EL素子を作製し、得られた素子について、実施例1と同様にして初期性能及び半減寿命、耐熱試験を行った。それらの結果を表1に示す。
【化19】

【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の白色系有機EL素子は、高輝度、高効率、長寿命であるため、フルカラーディスプレイ、情報表示機器、車載表示機器、照明器具として極めて実用的かつ有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極及び陽極と、
これらに挟持される少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有し、
前記発光層が青色系発光層と黄色〜赤色系発光層との積層からなり、少なくとも一方の発光層由来の発光波長の半値幅が60nm以上である白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
発光波長の半値幅が60nm以上である発光層が、青色系発光層である請求項1記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記青色系発光層が、青色系ホスト材料及び青色系ドーパントからなる請求項1又は2記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記青色系ドーパントが、スチリルアミン、アミン置換スチリル化合物、アミン置換縮合芳香族環及び縮合芳香族環含有化合物より選択される少なくとも一種類の化合物である請求項1〜3いずれか一項記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記青色系ホスト材料が、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、ジベンゾアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ベンゾピレン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾフルオレン誘導体、フルオランテン誘導体、ベンゾフルオランテン誘導体、ジベンゾフルオランテン誘導体、ナフチルフルオランテン誘導体、アセナフチルフルオランテン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体より選択される少なくとも一種類の化合物である請求項1〜4いずれか一項記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
陽極、青色系発光層、黄色〜赤色系発光層及び陰極を、この順に含み、前記黄色〜赤色系発光層が、前記青色系発光層と同じホスト材料と、黄色〜赤色系ドーパントとを含む請求項1〜5いずれか一項記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記黄色〜赤色系ドーパントが、フルオランテン骨格あるいはベンゾフルオランテン骨格を有する化合物である請求項6記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記黄色〜赤色系ドーパントが、540nm〜700nmの蛍光ピーク波長を示す化合物である請求項6又は7に記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記黄色〜赤色系ホスト材料が、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、ジベンゾアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ベンゾピレン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾフルオレン誘導体、フルオランテン誘導体、ベンゾフルオランテン誘導体、ジベンゾフルオランテン誘導体、ナフチルフルオランテン誘導体、アセナフチルフルオランテン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体より選択される少なくとも一種類の化合物である請求項6〜8いずれか一項記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記青色系発光層及び黄色〜赤色系発光層の膜厚が、それぞれ5nm以上である請求項1〜9いずれか一項記載の白色系有機エレクトロルミネッセンス素子。