説明

白血球分類計数用試料調製方法

【目的】 フローサイトメータによって白血球を分類計数するための血液学的試料を調製する。
【構成】 血液学的試料に、pHを酸性域にする緩衝剤からなる低浸透圧の第1水溶液と浸透圧補償剤と染色に適したpHにする緩衝剤からなる第2水溶液とを加え、あるいはさらに、水溶液中でイオンに解離して水溶液の電気伝導度を好適に保つ塩類を添加して、白血球の形態を損なうことなく赤血球の影響を除去するとともに、該試料中の赤芽球の細胞膜に損傷を与え、アストラゾンイエロー3Gとニュートラルレッドとを含む少なくとも4種類の色素で染色することによって、測定用試料を調製する。
【効果】 1つの測定用試料をフローサイトメータで測定することにより、血液学的試料中の白血球を少なくとも幼若顆粒球からなる2つの群、赤芽球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球、好中球の8つ、あるいはさらに芽球を加えた9つに分類計数できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、臨床検査分野における血球の分類計数に用いる測定用試料の調製方法に関するものであり、さらに詳しくはフローサイトメーターを用いて血球を光学的あるいは光学と電気的に測定し、白血球を分類計数するための測定用試料の調製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常、健常人の末梢血液は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球の5種類の白血球を含む。
【0003】これらの白血球は、各々その機能が異なっており、末梢血液中の白血球を種類別に分類計数することは、種々の病気を診断するうえで有用である。
【0004】一方、白血病、溶血性貧血、癌などの疾患患者の末梢血液には、この5種類以外に、通常骨髄に存在し、末梢血液中には存在しない幼若顆粒球、芽球、赤芽球が出現することが知られている。以下この3つの細胞を異常球とよぶ。この異常球を検出し、分類計数することは、疾患を診断するうえで極めて重要である。
【0005】白血球を分類計数するために、従来より最も良く実施されている方法は、血液像鑑定(用手法、視算法)と呼ばれる方法である。この方法は、血液をスライドグラス上に塗抹し、血液を固定染色した標本を作製したのち、顕微鏡で観察し、1つ1つの白血球の形態的特徴や染色度合いから観察者が何れの血球であるかを判定し、分類計数する方法である。通常の検査室では、100−200個の白血球を分類計数し白血球全体の数の中に占める各々の白血球の百分率を分類計数値としている。この方法は、標本作製操作が煩雑であること、顕微鏡を用いた分類は熟練を必要とし測定者間の測定差が少なからずあること、計数する白血球数が少ないことにより大きな統計学的誤差があること、さらに、測定者に大きな負担を強いる方法である等の問題がある。
【0006】この為、多数の白血球を自動的に分類計数することにより、測定精度を高め、省力化を図る測定方法が強く求められている。近年、この問題を解決するために、フローシステムを用いた自動化装置が市販されている。これらの自動化装置は、測定原理によって主に3種類の装置に分られる。
【0007】第1の装置は、主に3系統の溶解剤と3種類の検出部からなるものであり、第1のステップは、第1の溶解剤で血液試料中の白血球以外の細胞を溶解し、残った白血球のRF信号及びDC信号を測定し、その信号強度差によって白血球をリンパ球、単球、顆粒球の3つに分類する。
【0008】第2のステップは、第2の溶解剤で血液試料中の好酸球以外の細胞を溶解し、残った細胞のDC信号を測定し、その信号強度差によって好酸球のみを分類計数する。
【0009】ここで、RF信号及びDC信号は次のように説明される。
【0010】微細孔をはさんで設けられた、電極間に直流(DC)電流を供給し、粒子が微細孔を通過する際のインピーダンス変化に基づき発生した信号をDC信号といい、電極間に数+MHZの高周波(RF)電流を供給し、粒子が微細孔を通過する際のインピーダンス変化に基づき発生した信号をRF信号という。
【0011】もちろん、両電流を同時に供給し、DC信号とRF信号の両方を検出することができる。
【0012】第3ステップは、第3の溶解剤で血液試料中の好塩基球以外の細胞を溶解し、残った細胞のDC信号測定し、その信号強度差によって好塩基球のみを分類計数する。最後に第1のステップで求めた顆粒球から、第2のステップで求めた好酸球と第3のステップでもとめた好塩基球を減ずることにより、好中球を算出する方法である。
【0013】第2の装置は、1系統の試薬系と1種類の検出部からなるものであり、公開平1−502533に詳細が述べられているように、白血球を損なうこと無く白血球以外の血液を溶解する溶解剤で血液試料を処理した後に、RF、DC、散乱光の3つの信号を同時に測定し、各信号を適当に組み合わせることにより、白血球を5つに分類計数する方法である。
【0014】第3の装置は、2系統の試薬系と2種類の検出部からなるものであり、先ず、溶解剤の作用によって血液試料中の白血球以外の血球を溶解し、さらに染色液によって、ペルオキシターゼ染色を行った後に、各白血球の吸光度、散乱光信号を測定し、その強度差によって白血球をリンパ球、単球、好中球,好酸球の4つに分類計数する。次に、もう1系統の好塩基球以外の細胞を溶解する溶解剤で血液試料を処理したのちに、2種類の散乱光を測定し、その信号強度差によって好塩基球を分類計数する方法である。
【0015】これらの、自動化のための方法はすべて、前述の用手法の問題を一応解決しており、特に精度の点では用手法の精度を遙に上回る結果が得られており、臨床検査の分野においてはほぼ満足のいく性能を有している。
【0016】しかし、これらの方法は全て、異常球のみを特徴的に分類計数する方法を持たないために、異常球の出現している試料においては分類結果が不正確になる、または、異常球の存在そのものを検出できないという問題を有している。市販されている装置においては、異常球の出現によって生じるスキャッタグラムの異常を検出し、アブノーマル、あるいはサスペクトフラグ等の警告を発することにより、測定者に用手法による再検査を促すようになっており、異常の見逃しを極力減少するよう努力されている。但し、この場合は検査を再度行う必要があり、省力化の目的が完全に達成されていないという問題がある。
【0017】一方、これらの方法とは別に、血液学的試料に蛍光染色を施した測定用試料中の各々の白血球の蛍光あるいは、散乱光をフローサイトメーターで測定し、白血球分類を行う方法が幾つか報告されている。これらのうち主なものは、特公昭59−853号公報、特開昭50−20820号公報、特開昭63−70166号である。
【0018】一般に、図1に示すような市販されているフローサイトメーターで、適当な方法により血液学的試料から白血球以外の血球成分の影響を除去した測定用試料を測定した場合、図3に示すようなスキャッタグラムが得られ、主に側方散乱光の強度差によって、白血球はリンパ球1′、単球2′、顆粒球3′からなる3つの分画に分離され、個々の分画を容易に分類計数できることは、既知の事実である。
【0019】さらに、前述の蛍光染色法を組み合わせることにより、顆粒球を好酸球、好塩基球、好中球に分画することも、既に可能である。我々もまた、すでに特開昭63−134958号において、フローサイトメーターを用いて白血球を5つに分類計数するための方法および試薬を開示している。
【0020】さらに、我々は、特開昭63−134957号において、好酸球を特異的に染色する色素ニュートラルレッド好塩基球を特異的に染色する色素アストラゾンオレンジGを組み合わせることにより、白血球を5分類する方法を開示している。これら方法においてもまた、異常球を特異的に検出することはできなかった。
【0021】ちなみに、異常球を含む全ての白血球をベイシックオレンジ(Basic Orange)21で蛍光染色した。のちに、蛍光顕微鏡をもちいる用手法で、白血球分類計数を行う方法が米国特許第4,500,509号に開示されているが、この方法は、前述した用手法の問題を解決しておらず、自動化測定方法を提供するものではない。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、本発明は、従来の自動化法では実施不可能であった異常球を特徴的に検出し、異常球を分類計数すること、ならびに、異常球の分類計数を含む白血球分類を行うためのフローサイトメーター測定用試料の調製方法を提供することを課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明の測定用試料調製工程は、大きく分けて2つの工程からなる。1つは、血液学的試料に存在する赤血球の影響を除去して、白血球の散乱光強度あるいは散乱光強度と細胞体積を正確に測定出来るようにする工程と、もう1つは、白血球と赤芽球とを特異的に染色する工程である。
【0024】通常、血液学的試料中には白血球の1000倍程度の個数の赤血球が存在し、フローサイトメーターで測定した散乱光信号においては、リンパ球と赤血球の信号強度は等価であり、リンパ球と赤血球との分離が困難であり、正確な白血球分類結果を得ることは困難である。さらに、多量に存在する赤血球は、フローサイトメーターの検出部において、白血球と同時通過することにより、白血球の散乱光信号強度を不正確にし、側方散乱光によるリンパ球、単球、好中球の分離を困難にする。また、抵抗式測定原理を用いた装置では多数の赤血球の存在下で細胞体積を測定することはできない。これらの問題を解決するためには、何らかの方法によって血液学的試料中の赤血球を除去する必要がある。
【0025】血液学的試料中に存在する赤血球の影響を除去する工程は、以下の工程からなる。白血球染色に影響を与えることなく赤血球を溶解する工程であって、以下の工程で血液学的試料を処理する。まず、血液学的試料を酸性の低浸透圧条件下におくことにより、赤血球はゴースト化され、次いで、断片化される。赤血球の断片化が終了した時点で、pH、浸透圧を白血球に損傷を与えない条件にすることにより、白血球に損傷を与えること無く赤血球を断片化することができる。この結果赤血球散乱光強度は、リンパ球の1/2〜1/3となり、事実上赤血球と白血球の同時通過は、無視しうるものとなり、フローサイトメーターによる散乱光の測定は正確に行える。
【0026】一方、血液学的試料中の芽球を測定するためには、抵抗式検出原理による細胞体積の測定を正確に行う必要がある。断片化しただけの赤血球は、白血球と同時通過して、白血球の細胞体積を不正確なものにする。この影響を除去するためには、断片化した赤血球をさらに小さくする必要がある。このために、断片化した赤血球のみを溶解するノニオン性界面活性剤によって断片化した赤血球を溶解する工程を加える。
【0027】次に白血球と赤芽球を染色する工程は、4つの色素の作用によって説明される。先ず、本発明独自の特異染色は、3つの色素の作用によって説明される。まず、アストラゾンイエロー3Gとニュートラルレッドの共存下で、血液学的試料を蛍光染色した場合、アストラゾンイエロー3Gは好塩基球と幼若顆粒球のみを特異的に蛍光染色する。好酸球はニュートラルレッドによって特異的に赤蛍光染色される。
【0028】損傷を受けた細胞の核のみを染色する第3の蛍光色素は、上述の赤血球を断片化する工程によって、細胞膜が溶解されほとんど核のみの状態になった、赤芽球の核のみを特異的に染色する。次に、少なくとも白血球の核と細胞質を染色する色素である第4の色素は、アストラゾンイエロー3Gとニュートラルレッドと第3の色素で染色されない他の白血球を染色し、血液学的試料中に存在する他の細胞との分離を可能とする。
【0029】また、通常フローサイトメーターによる光学的パラメーターの測定においては、調製した測定用試料の電気伝導度を調整する必要はないが、抵抗式測定原理で細胞体積を測定するためには、測定用試料の電気伝導度を、抵抗式測定原理で細胞体積を測定するのに適した電気伝導度に調整する必要がある。この場合には、水溶液中でイオンに解離する塩類を適当量添加すればよい。
【0030】なお、ここで細胞体積を測定するのに適した電気伝導度とは、5〜25mS/cmの範囲にあることが好適である。さらに好適には、10〜20mS/cmの範囲にあることが望ましい。
【0031】まず、本発明でいう血液学的試料とは、動物特にヒトの末梢血液あるいは、骨髄穿刺液等の主に血液細胞からなる生物学的試料であって、好ましくは、抗凝固剤処理のなされた静脈採血血液である。上記、血液学的試料から、適当な方法、例えば、密度勾配遠心法などによって白血球以外の血球を除去した血液学的試料も好適な試料である。リンパ球、単球、好中球、好塩基球、好酸球は、一般の臨床検査室で行われるロマノフスキー染色を用いた用手法で同定される細胞と同一である。
【0032】幼若顆粒球とは、用手法によって同定される前骨髄球、骨髄球、後骨髄球からなる群である。また2つの幼若顆粒球群とは、用手法によって1次顆粒(アズール顆粒)の存在が同定される幼若顆粒球であって、主に前骨髄球からなる幼若顆粒球群1と、1次顆粒の存在が殆ど同定されない幼若顆粒球であって、主に骨髄球と後骨髄球からなる幼若顆粒球群2の2つをいう。
【0033】赤芽球とは、幼若な赤血球で細胞中に核を有する赤血球系細胞をいう。
【0034】芽球とは、リンパ球、単球、顆粒球のもっとも幼若な細胞であって、用手法で芽球と判定される細胞のうち、大きさがリンパ球よりも大きいものをいう。
【0035】フローサイトメーターとは、図1に示されるような、少なくとも赤蛍光、緑蛍光、側方散乱光の3つ好ましくは前方散乱光を含む4つの光学的情報を測定できる装置であって、少なくとも4つの光学的情報を用いて細胞種の解析ができる装置をいう。さらに、細胞の大きさを測定するためには図2に示すような電気抵抗式測定原理を搭載することによって細胞体積を同時測定できるフローサイトメーターはさらに好適である。
【0036】本発明の最も好ましい実施態様は、血液学的試料中の細胞を染色するのに十分な量の(1)少なくとも好塩基球と幼若顆粒球を特異的に染色する色素であるアストラゾンイエロー3Gと、(2)少なくとも、好酸球を特異的に染色するニュートラルレッドと、(3)細胞膜に損傷を受けた細胞の核を染色する色素と、(4)白血球の核あるいは細胞質あるいはその両方を染色する色素と、(5)水溶液のpHを酸性にするために十分な量の緩衝剤からなる低浸透圧の第一の水溶液と血液学的試料を混合する。赤血球の断片化と、赤芽球の細胞膜の損傷が終了し、白血球の損傷が起こる前に(6)第一の水溶液中の酸を中和し、さらに、pHを染色に適したpHにするために十分な量の緩衝剤と(7)白血球を損傷することなく保つために浸透圧を調整するのに十分な量の浸透圧補償剤と(8)断片化した赤血球を溶解するのに十分な量のノニオン性界面活性剤を(6)〜(8)からなる第二の水溶液を添加して赤血球を溶解し、染色を行う。
【0037】なお、電気抵抗式測定原理による細胞体積の測定をしない場合は、(8)の成分は、必要な構成要素ではない。
【0038】好塩基球と幼若顆粒球を特異的に染色するのに十分なアストラゾンイエロー3Gの量とは、水溶液中に50mg/l以上の濃度である。上限は実験によって1000mg/lの濃度まで、本発明の効果を得ることができることが確認されているが、これ以上の濃度で本発明の効果がなくなることを意味するわけではない。
【0039】好適球を特異的に染色するのに十分なニュートラルレッドの濃度は、水溶液中に1mg/l以上の濃度であり、さらに好適には、アストラゾンイエロー3Gの濃度の1/50〜1/10の範囲の濃度である。アストラゾンイエロー3Gのニュートラルレッドの染色は競合反応であり、アストラゾンイエロー3Gの濃度に比べ著しく高い濃度のニュートラルレッドの存在はアストラゾンイエロー3Gによる幼若顆粒球の特異的染色をも阻害する。
【0040】細胞膜に損傷を受けた細胞の核を染色する色素とは、以下の群の中らか選ばれた少なくとも1つの蛍光色素である。
【0041】
(1)エチジウム ブロマイド(2)プロピジウム アイオダイド(3)N−メチル−4−(1−ピレン)ビニル−ピリジニウム アイオダイド細胞膜に損傷を受けた細胞の核を染色するのに十分な量とは、フローサントメーターでの測定において、赤芽球を他の細胞と分離するのに十分な強度の蛍光を発生させるのに十分な量であって、使用する色素によって最適な濃度がことなり、実験によって最適な濃度が決定される。例えばエチジウムブロマイドであれば、10mg/l以上の濃度が好適である。
【0042】細胞膜に損傷を受けた細胞の核を染色する色素は上記に記載した3種の色素は、実験によってその効果が確認されたものであり、これらの色素に限定されるわけではなく、細胞膜に損傷を受けた細胞の核のみを染色する色素であれば、使用可能である。
【0043】白血球の核あるいは細胞質あるいはその両方を染色する色素とは以下の群の中から選ばれた少なくとも1つの蛍光色素である。
【0044】
(1)アストラゾンオレンジR(2)アストラバイオレット(CI No.48070、Basic Red12)
(3)ローダミン6G(GI No.45160)
(4)ローダミン19(5)ローダミンB(CI No.45170、Basic Violet 10)
(6)ローダミン3GO(CI No.45210、Basic Red 3)
(7)ピロニンB(CI No.45010)
(8)シアノシン(9)3,3′−ジメチルチオカルボシアニン アイオダイド(10)3,3′−ジエチルチオカルボシアニン アイオダイド(11)3,3′−ジプロピルオキサカルボシアニン アイオダイド(12)3,3′−ジヘキシルオキサカルボシアニン アイオダイド(13)3,6−ビス(ジメチルアミノ)−10−ドデシルアクリジニウム プロマイド(14)7−ベンジルアミノ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール(15)7−フルオロ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール(16)アストラゾンレッド6B(CI No.48020、Basic Violet 7)
白血球の核あるいは細胞質あるいはその両方を染色するのに十分な量とは、フローサイトメーターでの測定において、白血球を他の細胞と分離するのに十分な強度の蛍光を発生させるのに十分な量であって、使用する色素によって最適な濃度がことなり、実験によって最適な濃度が決定される。例えばアストラゾンオレンジRであれば、100mg/l以上の濃度が好適に使用される。上記の16種類の色素は、我々が実験においてその効果を確認した色素であってこれら以外の色素の効果を否定するものではない。前述の条件を満たす色素であれば、使用可能である。
【0045】第一液の酸性とは、pH2.0−4.0が好適であり、さらに好適には2.0−3.5である。第一液で用いられる緩衝剤は特に限定されず、酸解離定数pKa3.0±2.0の緩衝剤が好適に使用される。緩衝剤の濃度は混合物のpHを2.0−4.0の範囲に維持するのに必要な量であり、好適には、5−50mM/lの濃度である。
【0046】pHが2.0以下になった場合、白血球の染色は、明らかに妨げられる、またpH4.0以上では、赤血球を断片化する作用が明らかに妨げられる。低浸透圧とは、100mOsm/kg以下の浸透圧をいい浸透圧が100mOsm/kg以上では赤血球を断片化する作用が明らかに妨げられる。
【0047】赤血球の断片化を完了するのに必要な第一液と血液学的試料の反応時間は、幾分温度依存性があるが、室温(18−25℃)の場合は、5−20秒程度で完了する。濃度が高い場合は幾分短い、温度が低い場合は幾分長い時間を必要とする。
【0048】血液学的試料と、第一の水溶液との混合体積比は特に限定されないが、フローサイトメーターでの測定において、1:5〜1:200の混合比率が好適に使用される。
【0049】染色に適したpHとは、pH7.0−11.0である。さらに好適には、7.5−10.0である。pHが7.0以下の場合、好塩基球と幼若顆粒球を特異的に染色する効果が得にくくなる。pHが11.0以上の場合、白血球が損傷を受けやすくなる。
【0050】第二液に用いられる緩衝剤の種類は特に制限はなく、pKa(酸解離定数)が9.0±2.0付近にある緩衝剤が好適に用いられる。緩衝剤種の濃度は特に限定されないが、通常5〜100mM/lの濃度が好適に用いられる。
【0051】染色を完了するのに必要な時間は、幾分温度依存性があるが、室温(18−25℃)の場合は、10−40秒程度で完了する。温度が高い場合は幾分短い、温度が低い場合は幾分長い時間を必要とする。
【0052】白血球の損傷を抑制し、少なくともリンパ球、単球、好中球を散乱光によって分離するために必要な形態に保持するためには、混合物の浸透圧が100〜500mOsm/kgの範囲内にあることが好適である。さらに好適には、200〜400mOsm/kgの範囲にあることが好ましい。混合物の浸透圧がこの範囲を外れる場合には、水溶液に浸透圧補償剤を含むことが好適である。浸透圧補償剤の種類は、特に限定されないがアルカリ金属あるいは、糖類など、通常生物学的細胞を生理的浸透圧に保つための物質が好適に使用される。また、電気抵抗式の測定原理を搭載したフローサイトメーターで細胞体積を測定するためには、最終的に調製される測定用試料の電気伝導度を調整することが好適である。通常は、シース液と同一の電気伝導度となるように、調整することが好適である。
【0053】通常は、第一液あるいは第二液に含まれる緩衝剤がイオンに解離することによって、適度な電気伝導度となるため調整は不要である。ただし、水溶液中でイオンに解離し、水溶液に電気伝導度を付与する塩類を第二液に添加しておくことによって電気伝導度を細胞体積を測定するのに好適な値に調整することは、好適に行われる。使用される塩類は特に限定されないが、アルカリ金属塩類が特に好適である。
【0054】断片化した赤血球を溶解するためのノニオン線界面活性剤とは、分子構造中の親水基にポリオキシエレンを有する界面活性剤であって、ポリオキシエチレンの平均重合度が20以上のものが好適である。さらに好適には、平均重合度25以上のものが好適である。平均重合度20以下のものは、白血球を損傷する効果があり使用は困難である。
【0055】ノニオン性界面活性剤は、第一の水溶液、第二の水溶液のいずれか一方または、両方に含むことができる。第二の水溶液にのみ含むことは、好適である。
【0056】本法において用いられる色素の構造は、以下に示される。
【0057】アストラゾンイエロー3G(CI No.48,055、CI Basic Yellow 11)
【0058】


【0059】ニュートラルレッド(CI No.50,040、CI Basic Red5)
【0060】


【0061】アストラゾンオレンジR(CI No.48,040、CI Basic Orange 22)
【0062】


【0063】アストラバイオレット(CI No.48,070、Basic Red 12)
【0064】


【0065】ローダミン6G(CI No.45,160)
【0066】


【0067】ピロニンB(CI No.45,010)
【0068】


【0069】シアノシン
【0070】


【0071】3,3′−ジメチルチオカルボシアニン アイオダイド
【0072】


【0073】式(II)中R1 :−CH32 :−S−3,3′−ジエチルチオカルボシアニン アイオダイド式(II)中R1 :−C252 :−S−3,3′−ジプロピルオキサカルボシアニン アイオダイド式(II)中R1 :−C372 :−O−3,3′−ジヘキシルオキサカルボシアニン アイオダイド式(II)中 R1 :−C6132 :−O−3,6−ビス(ジメチルアミノ)−10−ドデシルアクリジニウム ブロマイド
【0074】


【0075】7−ベンジルアミノ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール
【0076】


【0077】7−フルオロ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール
【0078】


【0079】アストラゾンレッド6B(CI No.48,020、BaslcViolet 7)
【0080】


【0081】エチジウムブロマイド
【0082】


【0083】プロピジウワアイオダイド
【0084】


【0085】N−メチル−4−(1−ピレン)ビニルピリジニウムアイオダイド
【0086】


【0087】以下に本発明を実施するために用いられるフローサイトメーターについて説明する。図1は一般のフローサイトメーターの構成を図示した概略図である。1は、フローサイトメーターの光源を示し、少なくともアストラゾンイエロー3Gと、ニュートラルレッドで染色された少なくとも好酸球、好塩基球、幼若顆粒球から、特異的な蛍光を励起するのに適した波長の光を放出する光源であり、波長、400−520nm付近の光を放出するアルゴンイオンレーザ、水銀アークランプなどが好適に用いられる。光源からの光は、レンズ2によって粒子の流領域20に偏平円形状に集束され、そこを通過する細胞等の粒子13に照射される。このとき、粒子13からは前方に前方散乱光21、側方に赤蛍光22緑蛍光23、側方散乱光24が発せられる。
【0088】なお、粒子は、ノズル17から吐出され、シース液供給口14から供給されるシース液につつまれ、フローセル内でシースフローを形成する。前方散乱光21はビームストーパー5によって直接光が除去され、散乱光が集光レンズ4によって光検出部6に送られる。
【0089】側方に発せられた光22,23,24は集光レンズ3によって集められ、光検出部に送られる。
【0090】側方散乱光24はダイクロイックミラー10によって反射され光検出部7におくられる。
【0091】赤蛍光22はダイクロイックミラー11によって反射され、光検出部8に送られる。
【0092】緑蛍光23はダイクロイックミラー11を通過し、光検出部9に送られる。
【0093】光検出部6,7,8,9に送られた光は、それぞれ電気信号に変換され、信号処理部15によって増幅され、解析部16に送られ、解析される。
【0094】本発明において前方散乱光とは、検出部を通過する細胞から光源の放射軸に対して0°に近い狭い角度で放射された散乱光である。側方散乱光とは、検出部の細胞から光源の放射軸に対してほぼ90°方向に放射された散乱光である。赤蛍光とは検出部の細胞から全方向に放射される蛍光のうち、波長560nm以上の蛍光をいう。通常のフローサイトメータでは、装置構成の都合上光源の放射軸にたいしてほぼ0°あるいはほぼ90°の蛍光が集光される。
【0095】緑蛍光とは検出部の細胞から全方向に放射される蛍光のうち、波長520nm−560nm付近の蛍光をいう。通常のフローサイトメータでは、装置構成の都合上光源の放射軸にたいしてほぼ0°あるいはほぼ90°の蛍光が集光される。図2は、本発明の方法に使用される、光学的信号と電気抵抗式信号を同時に測定可能とするフローサイトメータの概略図である。光学的信号検出についての説明は、図1について述べたと同様である。一方、電気抵抗信号の検出については、フローセル18は電気抵抗式測定を実施する為のオリフィス18aを備えている。光源1から放出される光はレンズ2によりオリフィス18aの中心付近に集光される。よく知られている様に、ある大きさの細胞がオリフィス18aを通過する際、電極20a,20b間の抵抗値の変化を測定することにより細胞の正確な体積を測定することが可能である。本発明においては、電気抵抗式の信号と光学的信号の検出を同時に行うことを可能にしている。
【0096】光学的信号の検出と同様に、測定試料はノズル17からセル18の中に導入される。また、シース液供給口14からシース液が供給され、フローセル18では層流状態が形成され粒子13は1個ずつオリフィス部18aを通過する。この際、電気抵抗式原理に基づいた信号と光学的信号とが同時に獲得される。
【0097】電気抵抗式原理で検出された信号は検出部19により細胞の体積に比例した高さを持つ電気パルス信号に変換される。検出部6,7,8,9,19に検出された各信号は信号処理部15により増幅等の処理がなされた後、解析部16にて所定の解析がなされる。
【0098】
【実施例】次に具体的な実施例によって、本発明の処理工程について述べる。この実施例に使用した試薬系は、一般に市販されている試薬級の化学原料から調製した。
【0099】実施例1組成例1試薬第1級アストラゾンイエロー3G 300mgニュートラルレッド 20mgエチジウムブロマイド 50mgアストラゾンオレンジR 300mgクエン酸−水塩 2.10g(pH2.62)
精製水 1l(pH2.62、浸透圧 約10mOsm/kg)
試薬第2液タウリン 300mMNaCl 58.4gNaOH 400mM精製水 1l組成例1の試薬第1液0.90mlと異常球(赤芽球、幼若顆粒球)の出現した末梢血液0.05mlを混合し5秒以上経過した後に、試薬第2液0.10mlを加えさらに10秒以上おくことにより、測定用試料が調製できる。白血球の分類計数は、例えば、図1に示すフローサイトメーターで個々の細胞の赤蛍光、緑蛍光、側方散乱光、前方散乱光を測定する。次に、まず、図4に示す赤蛍光強度と緑蛍光強度を座標軸とするスキャッタグラムを描くと、白血球は、赤芽球〔NRBC〕、好酸球〔Eo〕その他の白血球〔Al〕、白血球以外の細胞〔A2〕の副集団に分離される。全ての白血球をウィンド1〔W1〕によって囲み白血球のみの数を計数し、全白血球数を計数する。次に、ウィンド2〔W2〕によって好酸球〔Eo〕を、ウィンド3〔W3〕によって赤芽球〔NRBC〕を囲み細胞数を計数する。ウィンド4〔W4〕によってその他の白血球〔A1〕をゲーティングして取り出し図5に示すように、側方散乱光強度と緑あるいは赤蛍光強度のスキャッタグラムを描くと、リンパ球〔Lym〕、単球〔Mono〕好中球〔Neut〕、好塩基球〔Ba〕、幼若顆粒球群1〔Im1〕、幼若顆粒球群2〔Im2〕は個々にその細胞のみからなる副集団に分離される。この集団を個々にウィンドで囲んで計数することによりその数を求め上述の全白血球数で除算することにより、個々の白血球の比率を求めることができる。
【0100】実施例2組成例2第一の水溶液アストラゾンイエロー3G 300mgニュートラルレッド 20mgエチジウムブロマイド 50mgアストラゾンオレンジR 300mgクエン酸−水塩 2.10g(pH2.62)
精製水 1l(pH2.62、浸透圧 約10mOsm/kg)
試薬第2液Taurine 300mMNacl 58.4gNaOH 400mMポリオキシエチレンセチルエーテル 50g精製水 1l組成例2の試薬第1液0.90mlと末梢血液0.05mlを混合し5秒以上経過した後に、試薬第2液0.10mlを加えさらに10秒以上おくことにより、測定用試料が調製できる。白血球の分類計数は、例えば、第2図に示す電気抵抗式測定原理を搭載したフローサイトメーターで個々の細胞の赤蛍光、緑蛍光、側方散乱光、前方散乱光、細胞体積を測定し、次に、図6に示す、赤蛍光強度と緑蛍光強度を座標軸とするスキャッタグラムを描くと白血球は、赤芽球〔NRBC〕好酸球〔Eo〕、その他の白血球〔A3〕の3つに分離される。まずウィンド5〔W5〕によって白血球のみを囲んで、白血球数を計数し、全白血球数を求める。次にウィンド6〔W6〕よって好酸球〔Eo〕を分類計数し、ウィンド7によって赤芽球〔NRBC〕を分類計数する。ウィンド8〔W8〕によってその他の白血球〔A3〕をゲーティングして図7に示すように、側方散乱光強度と緑あるいは赤蛍光強度のスキャッタグラムを描くと、リンパ球と芽球〔Lym+Blast〕、単球〔Mono〕、好中球〔Neut〕、好塩基球〔Ba〕、幼若顆粒球群1〔Im1〕、幼若顆粒球群2〔Im2〕は個々にその細胞の副集団を形成する。この集団を個々にウィンドで囲んで計数することにより、個々の白血球の数を計数する事が出来る。リンパ球と芽球は、ウィンド9〔W9〕によってゲーティングし、図8に示すように、側方散乱光強度と電気抵抗式測定原理によって測定した細胞体積を座標軸にして描くと、リンパ球〔Lym〕と芽球〔Blast〕の2つの副集団に分離される。個々の細胞をウィンドで囲んで、計数することにより、個々の白血球数を求める。個々に求めた白血球数を全白血球数で除算することにより、個々の白血球の比率を求めることができる。
【0101】
【発明の効果】1.血液学的試料を本発明の方法で処理して、フローサイトメータ測定用試料を作製することにより、幼若顆粒球赤芽球を特異的に染色し、分離することができる。
【0102】この結果1つの測定用試料をフローサイトメータで測定するだけで少なくとも、白血球を8つに分類計数する事が可能となる。
【0103】2.さらに電気抵抗式測定原理を搭載したフローサイトメータで測定することにより、芽球を分離することができる。
【0104】この結果1つの測定用試料をフローサイトメータで測定するだけで、少なくとも白血球を9つに分類計数する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般のフローサイトメータの構成を示した概略図である。
【図2】本発明の方法に使用される光学的信号と電気抵抗式信号を同時に測定できるフローサイトメータの概略図である。
【図3】血液学的試料から白血球以外の血球成分の影響を除外した測定用試料を一般のフローサイトメータで測定した場合に得られるスキャッタグラムである。
【図4】実施例1において得られた血液学的試料の赤蛍光強度と緑蛍光強度を座標軸とするスキャッタグラムである。
【図5】実施例1において得られた血液学的試料の側方散乱光強度と緑あるいは赤蛍光強度のスキャッタグラムである。
【図6】実施例2において得られた血液学的試料の赤蛍光強度と緑蛍光強度とを座標軸とするスキャッタグラムである。
【図7】実施例2において得られた血液学的試料の側方散乱光強度と緑あるいは赤蛍光強度のスキャッタグラムである。
【図8】実施例2において得られた血液学的試料の側方散乱光強度と電気抵抗式測定原理によって測定した細胞体積とを座標軸とするスキャッタグラムである。
【符号の説明】
1 光源
2 レンズ
3 集光レンズ
4 集光レンズ
5 ビームストーパー
6〜9 光検出部
10〜11 ダイクロイックミラー
13 粒子
14 供給口
15 信号処理部
16 解析部
17 ノズル
18 フローセル
18a オリフィス
19 検出部
20 粒子の流領域
20a,b 電極
21 前方散乱光
22 赤蛍光
23 緑蛍光
24 側方散乱光
1′ リンパ球
2′ 単球
3′ 顆粒球
〔NRBC〕 赤芽球
〔Eo〕 好酸球
〔A1〕 白血球
〔A2〕 白血球以外の細胞
〔W1〕 ウィンド1
〔W2〕 ウィンド2
〔W3〕 ウィンド3
〔Lym〕 リンパ球
〔Mono〕 単球
〔Neut〕 好中球
〔Ba〕 好塩基球
〔Im1〕 幼若顆粒球群1
〔Im2〕 幼若顆粒球群2

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1つの測定用試料をフローサイトメータで測定することにより、血液学的試料中の白血球を少なくとも幼若顆粒球からなる2つの群、赤芽球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球、好中球の8つを分類計数するための測定用試料を調製するための方法であって、以下の工程からなることを特徴とする方法:(1)血液学的試料から白血球の形態を損なうこと無しに赤血球の影響を除去する工程と赤芽球の細胞膜に損傷を与える工程であって、i)溶液のpHを酸性域に保つための緩衝剤からなる低浸透圧の第1の水性溶液と血液学的試料を混合することにより、血液学的試料中の赤血球を断片化し、赤芽球の膜に損傷を与え、ii)i)の溶液に、白血球の形態を損なうこと無しに保つための浸透圧補償剤と、第1の水性溶液中の酸を中和し、染色に適したpHにするための緩衝剤からなる第2の溶液を添加することからなる工程;および(2)血液学的試料に含まれる白血球を、i)少なくとも好塩基球と幼若顆粒球を染色する色素であるアストラゾンイエロー3Gとii)少なくとも好酸球を染色する色素であるニュートラルレッドとiii )少なくとも白血球の核あるいは細胞質あるいはその両方を染色する色素とiv)損傷を受けた細胞の核のみを染色する蛍光色素との少なくとも4種類の色素で染色する工程。
【請求項2】 少なくとも白血球の細胞質あるいは核を染色するための色素が(1)アストラゾンオレンジR(2)アストラバイオレット(3)ローダミン6G(4)ローダミン19(5)ローダミンB(6)ローダミン3GO(7)ピロニンB(8)シアノシン(9)3,3′−ジメチルチオカルボシアニン アイオダイド(10)3,3′−ジエチルチオカルボシアニン アイオダイド(11)3,3′−ジプロピルオキサカルボシアニン アイオダイド(12)3,3′−ジヘキシルオキサカルボシアニン アイオダイド(13)3,6−ビス(ジメチルアミノ)−10−ドデシルアクリジニウム プロマイド(14)7−ベンジルアミノ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール(15)7−フルオロ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール(16)アストラゾンレッド6Bからなる群の中から選ばれた少なくとも1種類の色素である請求項1項記載の測定用試料調製方法。
【請求項3】 損傷を受けた細胞の核のみを染色する蛍光色素が(1)エチジウムブロマイド(2)プロピジウムアイオダイド(3)N−メチル−4−(1−ピレン)ビニル−プロピジウム アイオダイドからなる群の中から選ばれた少なくとも1種類の色素である請求項1項記載の測定用試料調製方法。
【請求項4】 1つの測定用試料をフローサイトメータで測定することにより、血液学的試料中の白血球を少なくとも幼若顆粒球からなる2つの群、赤芽球、芽球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球、好中球の9つに分類計数するための測定用試料を調製するための方法であって、以下の工程からなることを特徴とする方法:(1)血液学的試料から白血球の形態を損なうこと無しに、赤血球の影響を除去する工程と赤芽球膜に損傷をあたえる工程であって、i)溶液のpHを酸性域に保つための緩衝剤からなる低浸透圧の第1の水性溶液と血液学的試料を混合することにより、血液学的試料中の赤血球を断片化し、ii)i)の溶媒に、白血球の形態を損なうこと無しに保つための浸透圧補償剤と、第1の水性溶液中の酸を中和し、染色に適したpHにするための緩衝剤からなる第2の溶液を添加し、iii )i)あるいはii)において、断片化した赤血球をノニオン性界面活性剤で溶解し、iv)最終的に調製される試料に水溶液中でイオンに解離して水溶液の電気伝導性を好適に保つ塩類を添加することにより、該試料の電気伝導度を電気抵抗式測定原理を用いた測定装置で測定できるようにし、細胞の大きさを正確に測定できるようにする工程;および(2)血液学的試料に含まれる白血球を、色素で染色する工程であって、i)少なくとも好塩基球と幼若顆粒球を接触する色素であるアストラゾンイエロー3Gとii)少なくとも好線球を染色する色素であるニュートラルレッドとiii )少なくとも白血球の核あるいは細胞質あるいはその両方を染色する色素とiv)損傷を受けた細胞の核のみを染色する蛍光色素との少なくとも4種類の色素で染色する工程。
【請求項5】 断片化した赤血球を溶解するノニオン性界面活性剤が、分子構造中の親水基にポリオキシエチレンを含む界面活性剤であって、ポリオキシエチレンの重合度が20以上のノニオン性界面活性剤である請求項4項の測定用試料調製方法。
【請求項6】 少なくとも白血球の細胞質あるいは核を染色するための色素が(1)アストラゾンオレンジR(2)アストラバイオレット(3)ローダミン6G(4)ローダミン19(5)ローダミンB(6)ローダミン3GO(7)ピロニンB(8)シアノシン(9)3,3′−ジメチルチオカルボシアニン アイオダイド(10)3,3′−ジエチルチオカルボシアニン アイオダイド(11)3,3′−ジプロピルオキサカルボシアニン アイオダイド(12)3,3′−ジヘキシルオキサカルボシアニン アイオダイド(13)3,6−ビス(ジメチルアミノ)−10−ドデシルアクリジニウム プロマイド(14)7−ベンジルアミノ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール(15)7−フルオロ−4−ニトロベンゾオキサジアゾール(16)アストラゾンレッド6Bからなる群の中から選ばれた少なくとも1種類の色素である請求項4項記載の測定用試料調製方法。
【請求項7】 損傷を受けた細胞の核のみを染色する蛍光色素が(1)エチジウムブロマイド(2)プロピジウムアイオダイド(3)N−メチル−4−(1−ピレン)ビニル−ピリジニウム アイオダイドからなる群の中から選ばれた少なくとも1種類の色素である請求項4項記載の測定用試料調製方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−34251
【公開日】平成5年(1993)2月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−188969
【出願日】平成3年(1991)7月29日
【出願人】(390014960)東亜医用電子株式会社 (810)